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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】モータ、および電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/08 20060101AFI20231212BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20231212BHJP
   H02K 5/16 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K5/08 A
H02K11/30
H02K5/16 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019227571
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021097500
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】本間 和博
(72)【発明者】
【氏名】長田 佐智
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-186706(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082665(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115775(WO,A1)
【文献】特開2010-142075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/08
H02K 11/30
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータと、
ステータコアおよび前記ステータコアに取り付けられた複数のコイルを有し、前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、
前記ステータの軸方向一方側に配置された回路基板と、
前記回路基板の軸方向他方側の面に取り付けられた電子部品と、
前記コイルを内側に封止する封止樹脂部と、
を備え、
前記封止樹脂部は、前記ステータコアよりも軸方向一方側に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記突出部の軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪む凹部を有し、
前記凹部には、前記電子部品の少なくとも一部が収容され、
前記ステータよりも軸方向一方側において前記ロータを回転可能に支持するベアリングと、
前記ステータと前記回路基板との軸方向の間に配置され、前記ベアリングを保持するベアリングホルダと、
をさらに備え、
前記ベアリングホルダは、前記ベアリングホルダを軸方向に貫通するホルダ貫通孔を有し、
前記突出部は、前記ホルダ貫通孔に挿入された挿入部を有し、
前記凹部は、前記挿入部に設けられ、
前記電子部品の少なくとも一部は、前記ホルダ貫通孔内において前記凹部に挿入されている、モータ。
【請求項2】
前記ロータ、前記ステータ、および前記封止樹脂部を収容するハウジングをさらに備え、
前記ベアリングホルダは、前記ハウジングに固定され、
前記ハウジングおよび前記ベアリングホルダは、金属製である、請求項に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータに電気的に接続されたバスバーをさらに備え、
前記バスバーは、少なくとも一部が前記封止樹脂部に埋め込まれて保持されている、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ステータは、周方向に並ぶ複数の分割ステータを有し、
前記分割ステータは、
周方向に延びる分割コアバックおよび前記分割コアバックから径方向内側へ延びるティースを有する分割コアと、
前記ティースに装着された前記コイルと、
前記コイルと前記ティースとの間に位置するインシュレータと、
を有し、
前記封止樹脂部の熱伝導率は、前記インシュレータの熱伝導率よりも大きい、請求項1からのいずれか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータは、周方向に並ぶ複数の分割ステータを有し、
前記封止樹脂部は、複数の分割樹脂部が周方向に連結されて構成され、
各前記分割樹脂部は、各前記分割ステータにそれぞれ設けられている、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項6】
前記突出部は、前記中心軸を中心とする周方向に延びている、請求項1からのいずれか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記凹部は、前記突出部の周方向の一部を径方向に貫通している、請求項に記載のモータ。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のモータと、
前記モータの前記ロータに連結されたポンプ機構と、
を備える、電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、および電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルを内側に封止する封止樹脂を備えたモータが知られている。例えば、特許文献1には、そのようなモータとして、樹脂モールド体がモータの外殻を構成するモータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/186813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータにおいては、例えば、コイルの熱が封止樹脂を介してモータの外部に放出される。そのため、封止樹脂の体積を大きくする等によって封止樹脂の表面積を大きくし、封止樹脂から熱が放出されやすくすることが好ましい。しかし、単に封止樹脂を大きくすると、モータ全体が大型化しやすい問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、大型化することを抑制しつつ、放熱性を向上できる構造を有するモータ、および電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータと、ステータコアおよび前記ステータコアに取り付けられた複数のコイルを有し、前記ロータと隙間を介して径方向に対向するステータと、前記ステータの軸方向一方側に配置された回路基板と、前記回路基板の軸方向他方側の面に取り付けられた電子部品と、前記コイルを内側に封止する封止樹脂部と、を備える。前記封止樹脂部は、前記ステータコアよりも軸方向一方側に突出する突出部を有する。前記突出部は、前記突出部の軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪む凹部を有する。前記凹部には、前記電子部品の少なくとも一部が収容されている。
【0007】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、上記のモータと、前記モータの前記ロータに連結されたポンプ機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、モータが大型化することを抑制しつつ、モータの放熱性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態のモータを示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のステータおよび封止樹脂部を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態の分割ステータを示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態の封止樹脂部を上側から見た図である。
図5図5は、第2実施形態のモータを示す断面図である。
図6図6は、第2実施形態のステータおよび封止樹脂部を示す斜視図である。
図7図7は、第2実施形態の他の例におけるモータの一部を示す斜視図である。
図8図8は、変形例における封止樹脂部の一部を上側から見た図である。
図9図9は、他の変形例における封止樹脂部の一部を上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図に適宜示すZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す仮想軸である中心軸Jの軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、特に断りのない限り、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
なお、以下の各実施形態において上側は、軸方向一方側に相当する。下側は、軸方向他方側に相当する。また、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の電動ポンプ1は、水およびオイルなどの流体を吸入して、吐出する。電動ポンプ1は、例えば、流体を流路に循環させる機能を有する。流体がオイルの場合、電動ポンプ1は、電動オイルポンプと言い換えてもよい。特に図示しないが、電動ポンプ1は、例えば車両の駆動装置に搭載される。つまり電動ポンプ1は、車両に搭載される。
【0013】
図1に示すように、電動ポンプ1は、モータ10と、ポンプ機構90と、を備える。モータ10は、ハウジング11と、モータ本体部20と、バスバー81と、ベアリングホルダ56と、インバータ基板40と、封止樹脂部100と、を備える。ポンプ機構90は、ポンプ部90aと、ポンプカバー95と、を有する。ポンプ機構90は、圧送される流体がオイルである場合には、オイルポンプ機構である。
【0014】
ハウジング11は、モータ本体部20と、バスバー81と、ベアリングホルダ56と、インバータ基板40と、封止樹脂部100と、ポンプ部90aと、収容している。すなわち、本実施形態においてハウジング11は、モータハウジングとポンプハウジングとを兼ねている。本実施形態においてハウジング11は、金属製である。ハウジング11は、ハウジング本体12と、カバー13と、を有する。
【0015】
ハウジング本体12は、上側に開口する筒状である。ハウジング本体12は、例えば、中心軸Jを中心とする円筒状である。本実施形態においてハウジング本体12は、金属製である。ハウジング本体12は、単一の部材により構成されている。ハウジング本体12は、例えば、ダイカストによって成形されている。本実施形態においてハウジング本体12は、モータ本体部20およびポンプ部90aを収容している。ハウジング本体12は、収容筒部12aと、鍔部12bと、ポンプ収容部12cと、ベアリング保持筒部12dと、底壁部12eと、を有する。
【0016】
収容筒部12aは、軸方向に延びる筒状である。収容筒部12aは、例えば、中心軸Jを中心とする円筒状である。収容筒部12aには、モータ本体部20が収容されている。鍔部12bは、収容筒部12aの上側の端部における外周面から径方向外側に突出している。鍔部12bは、上側を向く面に、上側に開口して軸方向に延びるネジ穴を有する。鍔部12bのネジ穴には、カバー13をハウジング11に固定する締結ネジ18が締め込まれている。
【0017】
底壁部12eは、収容筒部12aの下側の端部から径方向内側に広がっている。底壁部12eは、収容筒部12aの下側の開口を塞いでいる。底壁部12eは、後述するステータ26の下側に離れて位置する。底壁部12eは、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0018】
ポンプ収容部12cは、底壁部12eの内周縁部から上側に延びている。ポンプ収容部12cは、上部に頂壁を有する筒状である。ポンプ収容部12cは、中心軸Jを中心とする円筒状である。ポンプ収容部12cは、収容筒部12aの径方向内側に配置されている。ポンプ収容部12cは、底壁部12eの内周縁部から上側へ凹むポンプ収容穴12fを有する。ポンプ収容穴12fには、ポンプ部90aが収容されている。ポンプ収容穴12fは、軸方向に見て、底壁部12eの中央に配置されている。ポンプ収容穴12fは、例えば、軸方向に見て、中心軸Jを中心とする円穴状である。
【0019】
ベアリング保持筒部12dは、ポンプ収容部12cの頂壁から上側に延びる筒状である。ベアリング保持筒部12dは、例えば、中心軸Jを中心とし、上側に開口する円筒状である。ベアリング保持筒部12dは、モータ本体部20の後述する第2ベアリング37を保持している。第2ベアリング37は、モータ本体部20において軸方向に互いに間隔をあけて配置される複数のベアリングのうち、後述するロータコア23の下側に位置するベアリングである。第2ベアリング37は、ベアリング保持筒部12dの内周面に嵌合している。
【0020】
ベアリング保持筒部12dは、第2ベアリング37とともにオイルシール32を保持している。オイルシール32は、例えば、中心軸Jを中心とする環状である。オイルシール32は、ベアリング保持筒部12d内において、第2ベアリング37の下側に位置する。オイルシール32は、後述するシャフト22の外周面に接触し、ポンプ部90aからモータ本体部20へのオイルの侵入を抑制する。オイルシール32は、必要に応じて配置される。
【0021】
カバー13は、ハウジング本体12の上側の端部に固定されている。カバー13は、ハウジング本体12の上側の開口を塞いでいる。カバー13は、インバータ基板40を上側から覆っている。カバー13の下面は、軸方向において、インバータ基板40の上面と隙間を空けて対向している。カバー13の下面には、上側に窪むカバー凹部13aが設けられている。本実施形態においてカバー13は、金属製である。カバー13は、単一の部材により構成されている。カバー13は、例えば、ダイカストによって成形されている。
【0022】
モータ本体部20は、ベアリング保持筒部12dの上側に位置する。モータ本体部20は、ロータ21と、ステータ26と、第1ベアリング36と、第2ベアリング37と、を有する。すなわち、モータ10は、ロータ21と、ステータ26と、第1ベアリング36と、第2ベアリング37と、を備える。ロータ21、ステータ26、第1ベアリング36、および第2ベアリング37は、ハウジング11に収容されている。
【0023】
ロータ21は、中心軸Jを中心として回転可能である。ロータ21は、シャフト22と、ロータコア23と、マグネット24と、マグネットホルダ25と、を有する。シャフト22は、中心軸Jに沿って延びている。シャフト22は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト22は、中心軸Jを中心として回転する。シャフト22は、第1ベアリング36および第2ベアリング37により中心軸J回りに回転自在に支持されている。つまり第1ベアリング36および第2ベアリング37は、シャフト22を回転自在に支持している。第1ベアリング36および第2ベアリング37は、例えばボールベアリングである。第1ベアリング36は、ステータ26よりも上側においてロータ21を回転可能に支持するベアリングである。第1ベアリング36は、シャフト22のうちロータコア23よりも上側に位置する部分を支持している。第2ベアリング37は、ステータ26よりも下側においてロータ21を回転可能に支持するベアリングである。第2ベアリング37は、シャフト22のうちロータコア23よりも下側に位置する部分を支持している。
【0024】
ロータコア23は、シャフト22の外周面に固定されている。ロータコア23は、例えば、中心軸Jを中心とする環状である。ロータコア23は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア23は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。
【0025】
マグネット24は、ロータコア23の径方向外側面に配置されている。マグネット24は、複数設けられている。複数のマグネット24は、ロータコア23の径方向外側面に、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。なお、マグネット24は、例えば1つの円筒状のリングマグネットでもよい。
【0026】
マグネットホルダ25は、ロータコア23およびマグネット24を内側に収容するカバー部材である。マグネットホルダ25は、ロータコア23に対してマグネット24を固定している。マグネットホルダ25は、ロータコア23の径方向外側を向く面および上側を向く面に配置される。マグネットホルダ25は、マグネット24を径方向外側および上側から押さえている。マグネットホルダ25は、マグネット24を径方向外側から押さえる円筒状の胴部分と、中心軸Jを中心とする環状でありマグネット24の上側に位置する蓋部分と、を有する。
【0027】
ステータ26は、ロータ21の径方向外側に位置する。ステータ26は、ロータ21と隙間を介して径方向に対向している。ステータ26は、周方向の全周にわたって、ロータ21を径方向外側から囲っている。ステータ26は、ステータコア27と、インシュレータ28と、複数のコイル29と、を有する。
【0028】
ステータコア27は、ロータ21の径方向外側に配置されている。ステータコア27は、中心軸Jを中心とする円環状である。ステータコア27は、ロータ21を囲んでいる。ステータコア27は、ロータ21と径方向に隙間をあけて対向している。ステータコア27は、環状のコアバック27aと、コアバック27aの径方向内側面から径方向内側に延びる複数のティース27bと、を有する。
【0029】
コアバック27aは、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。コアバック27aの径方向外側面は、収容筒部12aの内周面に固定されている。コアバック27aは、例えば、焼き嵌め、または圧入によって収容筒部12aの内周面に固定されている。これにより、ステータコア27がハウジング11の内側に固定されている。ハウジング11に対するステータコア27の軸方向の位置決めは、例えば、ステータコア27を固定する際に、治具によって行われる。なお、ステータコア27の下端部をハウジング11の内周面に設けられた段差部に上側から突き当てることによって、ステータコア27がハウジング11に対して軸方向に位置決めされてもよい。
【0030】
図示は省略するが、複数のティース27bは、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。複数のティース27bは、周方向に沿って一周にわたって等間隔に配置されている。ティース27bは、例えば、12個設けられている。ティース27bの径方向内側面は、例えば、ロータ21の径方向外側面と径方向に隙間をあけて対向している。ティース27bは、マグネット24の径方向外側に位置する。
【0031】
インシュレータ28は、ステータコア27に装着されている。本実施形態においてインシュレータ28は、ティース27bごとに設けられている。各インシュレータ28は、各ティース27bを覆う部分を有する。インシュレータ28は、コイル29とティース27bとの間に位置する。インシュレータ28の材料は、絶縁性樹脂である。
【0032】
コイル29は、インシュレータ28を介してステータコア27に取り付けられている。より詳細には、複数のコイル29のそれぞれは、各インシュレータ28を介して各ティース27bに装着されている。各コイル29は、各ティース27bに、インシュレータ28を介して巻線が巻き回されることによりそれぞれ構成されている。コイル29は、例えば、12個設けられている。
【0033】
図2に示すように、本実施形態においてステータ26は、周方向に並ぶ複数の分割ステータ126を有する。本実施形態の場合、ステータ26は、周方向に並ぶ12個の分割ステータ126を有する。ステータ26は、複数の分割ステータ126が周方向に連結されて構成されている。図3に示すように、分割ステータ126は、分割コア127と、インシュレータ28と、コイル29と、を有する。
【0034】
分割コア127は、軸方向に見て概ねT形である。本実施形態において分割コア127は、軸方向に見て概ねT形の複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。複数の分割ステータ126における分割コア127が周方向に連結されることによって、ステータコア27が構成されている。分割コア127は、周方向に延びる分割コアバック127aと、分割コアバック127aから径方向内側へ延びるティース27bと、を有する。分割コアバック127aは、中心軸Jを中心とする円弧状である。複数の分割コアバック127aが周方向に連結されることにより、コアバック27aが構成されている。
【0035】
個々の分割コア127には、それぞれ1つずつのインシュレータ28とコイル29とが装着されている。なお、1つの分割コア127に、複数のコイル29が取り付けられていてもよい。例えば、1つのティース27bに、異なる相のコイル29が装着されていてもよい。また分割コア127が複数のティース27bを有する場合には、それぞれのティース27bにコイル29が装着される。
【0036】
図1に示すように、バスバー81は、ステータ26の上側に位置する。本実施形態においてバスバー81は、少なくとも一部が封止樹脂部100に埋め込まれて保持されている。そのため、バスバー81を保持するホルダを別途設ける必要がなく、モータ10の部品点数を低減できる。本実施形態では、バスバー81は、図2に示す端子81aを除いた全体が封止樹脂部100に埋め込まれて保持されている。図示は省略するが、バスバー81のうち封止樹脂部100に埋め込まれている部分は、コイル29と電気的に接続されている。これにより、バスバー81は、ステータ26に電気的に接続されている。
【0037】
本実施形態においてバスバー81は、複数設けられている。バスバー81は、例えば、3つ設けられている。各バスバー81の端子81aは、封止樹脂部100から上側に突出している。各バスバー81の端子81aは、周方向に間隔を空けて配置されている。図示は省略するが、端子81aは、ベアリングホルダ56に設けられたホルダ貫通孔56aを介してベアリングホルダ56よりも上側に突出している。端子81aは、後述する回路基板41と接続されている。
【0038】
図1に示すように、ベアリングホルダ56は、ステータ26の上側に位置する。本実施形態においてベアリングホルダ56は、ステータ26と後述する回路基板41との軸方向の間に配置されている。ベアリングホルダ56は、径方向に広がっている。ベアリングホルダ56は、ロータ21およびステータ26を上側から覆っている。本実施形態においてベアリングホルダ56は、例えば、金属製の単一部材である。ベアリングホルダ56は、例えば、ダイカストによって成形されている。ベアリングホルダ56は、軸方向に見た中央部に、第1ベアリング36を保持する筒部56bを有する。これにより、ベアリングホルダ56は、第1ベアリング36を保持している。筒部56bは、中心軸Jを中心とし、下側に開口する円筒状である。筒部56bの内部には、ウェーブワッシャ57が配置されている。
【0039】
ウェーブワッシャ57は、例えば、中心軸Jを中心とする環状である。ウェーブワッシャ57は、軸方向において、ベアリングホルダ56の頂壁部と第1ベアリング36との間に位置する。ウェーブワッシャ57は、第1ベアリング36の外輪を下側に押すことにより、第1ベアリング36に対して与圧を付与する。
【0040】
ベアリングホルダ56の径方向外周部は、ハウジング本体12の上側の開口部内に、ネジ等により固定されている。これにより、ベアリングホルダ56は、ハウジング11に固定されている。ベアリングホルダ56は、ベアリングホルダ56を軸方向に貫通するホルダ貫通孔56aを有する。本実施形態においてホルダ貫通孔56aは、周方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0041】
インバータ基板40は、ベアリングホルダ56の上側に位置する。インバータ基板40は、ステータ26と電気的に接続されている。インバータ基板40は、図示しない外部電源から供給される電力を、ステータ26に供給する。インバータ基板40は、ステータ26に供給される電流を制御する。
【0042】
インバータ基板40は、回路基板41と、電子部品42と、を有する。すなわち、モータ10は、回路基板41と、電子部品42と、を備える。回路基板41は、板面が軸方向を向く板状である。回路基板41は、ステータ26およびベアリングホルダ56の上側に配置されている。回路基板41は、板面にプリント配線が設けられたプリント基板である。図示は省略するが、回路基板41は、例えば、軸方向に見て多角形状である。回路基板41は、カバー凹部13a内に収容されている。回路基板41は、例えば、ネジ60によってハウジング本体12に固定されている。
【0043】
電子部品42は、回路基板41の下側の面に取り付けられている。電子部品42は、コンデンサ47を含む。コンデンサ47は、例えば、1つのみ設けられている。コンデンサ47は、例えば、電解コンデンサである。本実施形態においてコンデンサ47は、回路基板41の下面から下側に突出する円柱状である。コンデンサ47は、上側からベアリングホルダ56のホルダ貫通孔56a内に挿入されている。この構成によれば、比較的高さのある電子部品42であるコンデンサ47を回路基板41の下面に取り付けた状態で、コンデンサ47がベアリングホルダ56に干渉することを避けつつ、インバータ基板40全体をステータ26に近づけて配置することができる。したがって、モータ10を軸方向に小型化できる。
【0044】
図示は省略するが、インバータ基板40は、回路基板41の上面に実装された複数の電子素子を含む。複数の電子素子は、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor,FET)、プリドライバおよび低損失型リニアレギュレータ(Low Drop-Out regulator,LDO)などである。回路基板41の上面に実装された複数の電子素子は、熱伝導部材46を介してカバー13の下面と接続されている。これにより、電子素子の熱を、熱伝導部材46を介してハウジング11に放出しやすくできる。熱伝導部材46は、例えば、熱伝導シートである。
【0045】
図1に示すように、封止樹脂部100は、ステータ26に設けられている。封止樹脂部100は、ステータ26の少なくとも一部を内側に封止している。より詳細には、封止樹脂部100は、コイル29、コアバック27aの径方向内側部分、ティース27b、およびインシュレータ28を内側に封止している。コイル29、コアバック27aの径方向内側部分、ティース27b、およびインシュレータ28は、封止樹脂部100に埋め込まれている。コアバック27aの外周面は、封止樹脂部100から露出している。
【0046】
なお、本明細書において「封止樹脂部100がコイル29を内側に封止する」とは、複数のコイル29の少なくとも一部が封止樹脂部100の内側に封止されていればよい。本実施形態では、複数のコイル29全体が封止樹脂部100に埋め込まれて封止されている。
【0047】
封止樹脂部100は、中央部分105と、上側突出部101と、下側突出部104と、を有する。中央部分105は、周方向に隣り合うティース27b同士の間に位置する。中央部分105は、例えば、ティース27b同士の隙間全体に充填されている。中央部分105は、コイル29のうちティース27bの周方向両側に位置する部分を内側に封止している。
【0048】
上側突出部101は、封止樹脂部100のうちステータコア27よりも上側に位置する部分である。上側突出部101は、ステータコア27よりも上側に突出する突出部に相当する。上側突出部101の上側の端部は、第1ベアリング36よりも上側に位置する。図2に示すように、本実施形態において上側突出部101は、中心軸Jを中心とする周方向に延びている。上側突出部101は、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。上側突出部101は、コイル29のうちティース27bよりも上側に位置する部分を内側に封止している。上側突出部101の外周面は、例えば、コアバック27aの外周面よりも僅かに径方向内側に位置する。上側突出部101の内周面は、例えば、径方向において、ティース27bの径方向内側の端面と同じ位置に位置する。上側突出部101の上面からは、バスバー81の端子81aが上側に突出している。本実施形態では上側突出部101の上面から3つの端子81aが上側に突出している。
【0049】
上側突出部101は、基部102と、本体部103と、を有する。基部102は、ステータコア27の上側に配置された部分である。基部102は、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。図1に示すように、基部102は、コイル29のうちティース27bよりも上側に位置する部分を内側に封止している。
【0050】
本体部103は、基部102から上側に突出する部分である。本体部103は、ステータ26よりも上側に位置する。図2に示すように、本体部103は、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。本体部103の上側の端部は、封止樹脂部100の上側の端部である。本体部103の外周面は、基部102の外周面よりも径方向内側に位置する。本体部103の内周面は、例えば、基部102の内周面と径方向において同じ位置に配置されている。図1に示すように、本体部103には、バスバー81が埋め込まれている。本実施形態において本体部103には、端子81aを除いたバスバー81の全体が埋め込まれている。本体部103の軸方向の寸法は、基部102の軸方向の寸法よりも大きい。
【0051】
上側突出部101は、上側突出部101の上側の面から下側に窪む凹部106を有する。本実施形態において凹部106は、本体部103の上側の面から下側に窪んでいる。図2に示すように、凹部106の内縁は、例えば、軸方向に見て、円形状である。本実施形態において凹部106は、1つのみ設けられている。図1に示すように、凹部106は、軸方向に見て、ベアリングホルダ56のホルダ貫通孔56aと重なっている。
【0052】
凹部106には、電子部品42の少なくとも一部が収容されている。本実施形態において凹部106には、ベアリングホルダ56のホルダ貫通孔56aに通されたコンデンサ47の下端部が挿入されている。図4に示すように、凹部106の内径は、コンデンサ47の外径よりも大きい。凹部106の内周面は、コンデンサ47の外周面から離れて配置されている。
【0053】
図1に示すように、下側突出部104は、封止樹脂部100のうちステータコア27よりも下側に位置する部分である。下側突出部104は、ステータコア27よりも下側に突出している。下側突出部104は、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。下側突出部104は、コイル29のうちティース27bよりも下側に位置する部分を内側に封止している。下側突出部104の外周面は、例えば、上側突出部101の外周面よりも径方向内側に位置する。下側突出部104の内周面は、例えば、径方向において、上側突出部101の内周面と同じ位置に位置する。上側突出部101と下側突出部104とは、中央部分105によって軸方向に連結されている。
【0054】
本実施形態において封止樹脂部100の全体は、ハウジング11の内側面から僅かに離れて配置され、ハウジング11と接触していない。そのため、ステータ26をハウジング11の内側に焼き嵌めで固定する際に、封止樹脂部100が熱によって溶融することを抑制できる。
【0055】
ここで、電動ポンプ1の動作時において、コイル29は、主要な発熱源である。一方、コイル29は、封止樹脂部100により絶縁性樹脂の内部に封入されている。そのため、コイル29を冷却するには、コイル29の熱を、封止樹脂部100を介してハウジング11またはハウジング11内の空気に放出させるか、またはインシュレータ28を介してステータコア27に伝わらせる必要がある。
【0056】
これに対して、本実施形態によれば、封止樹脂部100がステータコア27よりも上側に突出する上側突出部101を有し、上側突出部101には、電子部品42の少なくとも一部が収容される凹部106が設けられている。そのため、封止樹脂部100を上側に延ばしても、封止樹脂部100が電子部品42と干渉することを抑制できる。これにより、電子部品42の位置を上側に移動させることなく、封止樹脂部100を上側に延ばすことができる。したがって、モータ10が軸方向に大型化することを抑制しつつ、封止樹脂部100の表面積を大きくできる。また、凹部106が設けられていることで、凹部106の内周面の分、封止樹脂部100の表面積をより大きくすることもできる。このように封止樹脂部100の表面積を大きくできることで、封止樹脂部100からハウジング11またはハウジング11内の空気に、コイル29の熱を放出させやすくできる。そのため、コイル29を冷却しやすい。以上により、本実施形態によれば、モータ10が大型化することを抑制しつつ、モータ10の放熱性を向上できる。
【0057】
本実施形態では、封止樹脂部100の全体がハウジング11の内側面から離れて配置されている。そのため、コイル29の熱は、封止樹脂部100からハウジング11内の空気に放出される。封止樹脂部100からハウジング11内の空気に放出された熱の少なくとも一部は、空気を介してハウジング11に伝わり、モータ10の外部に放出される。
【0058】
また、本実施形態によれば、ハウジング11は、金属製である。そのため、封止樹脂部100から放出されたコイル29の熱が、よりハウジング11に伝えられやすい。これにより、コイル29の熱がハウジング11からモータ10の外部へと、より放出されやすい。したがって、モータ10の放熱性をより向上できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、上側突出部101は、中心軸Jを中心とする周方向に延びている。そのため、上側突出部101の表面積を大きくできる。これにより、封止樹脂部100の表面積をより大きくできる。したがって、封止樹脂部100を介してコイル29の熱をより放出させやすくできる。そのため、モータ10の放熱性をより向上できる。特に本実施形態では、上側突出部101は、周方向に沿った環状となっている。これにより、封止樹脂部100の全周からコイル29の熱を放出しやすくできる。したがって、モータ10の放熱性をより向上できる。
【0060】
図2に示すように、本実施形態において封止樹脂部100は、複数の分割樹脂部100aが周方向に連結されることによって構成されている。各分割樹脂部100aは、各分割ステータ126にそれぞれ設けられている。そのため、各分割ステータ126をそれぞれ樹脂で封止してから組み合わせてステータ26を作る方法を採用できる。これにより、分割ステータ126を組み合わせてから樹脂でステータ26全体をまとめて封止する場合に比べて、樹脂をコイル29同士の間に流し込みやすい。分割樹脂部100aは、例えば、分割ステータ126をインサート部材とするインサート成形により作られている。各分割樹脂部100aは、各分割ステータ126におけるコイル29とインシュレータ28とを1つずつ内側に封止している。
【0061】
分割樹脂部100aは、分割上側突出部101aと、分割下側突出部104aと、を有する。分割上側突出部101aは、分割基部102aと、分割本体部103aと、を有する。複数の分割樹脂部100aの各分割上側突出部101aが周方向に連結されることで、上側突出部101が構成されている。複数の分割樹脂部100aの各分割基部102aが周方向に連結されることで、基部102が構成されている。複数の分割樹脂部100aの各分割本体部103aが周方向に連結されることで、本体部103が構成されている。複数の分割樹脂部100aの各分割下側突出部104aが周方向に連結されることで、下側突出部104が構成されている。
【0062】
本実施形態では、複数の分割樹脂部100aの1つに、凹部106が設けられている。より詳細には、1つの分割樹脂部100aの分割本体部103aに凹部106が設けられている。複数の分割樹脂部100aの形状は、1つの分割樹脂部100aに凹部106が設けられている点を除いて同様である。
【0063】
封止樹脂部100の材料は、絶縁性樹脂である。コイル29が絶縁性樹脂からなる封止樹脂部100によって封止されることにより、周方向に隣り合うコイル29の間で短絡が生じることを抑制できる。これにより、隣り合うコイル29同士の間隔を狭くすることができるため、巻線のターン数を増やすことができる。また本実施形態のモータ10では、ステータ26が複数の分割ステータ126からなる構成であることにより、個々の分割ステータ126において、巻線を高い密度でインシュレータ28に巻き回すことができる。以上により、本実施形態のモータ10によれば、コイル29の占積率を高めることができる。
【0064】
封止樹脂部100を構成する樹脂の熱伝導率は、インシュレータ28を構成する樹脂の熱伝導率と異なる。より詳細には、封止樹脂部100を構成する樹脂の熱伝導率は、インシュレータ28を構成する樹脂の熱伝導率よりも大きい。これにより、封止樹脂部100の熱伝導率は、インシュレータ28の熱伝導率よりも大きい。
【0065】
一般的に、樹脂材料の熱伝導率は金属の熱伝導率よりも低く、熱伝導性に優れる樹脂材料は高価である。さらに、封止樹脂部100およびインシュレータ28には、高い絶縁性が要求されるため、熱伝導性と絶縁性の両方に優れる樹脂材料はより高価になりやすい。そこで本実施形態のモータ10では、コスト上昇を抑えつつ放熱性を高めるために、封止樹脂部100とインシュレータ28とで異なる絶縁性樹脂を用い、封止樹脂部100を構成する絶縁性樹脂として、インシュレータ28を構成する絶縁性樹脂よりも高い熱伝導率を有する絶縁性樹脂を用いる構成を採用した。
【0066】
封止樹脂部100は、インシュレータ28と比較してコイル29との接触面積が大きくなりやすく、かつ放熱先であるハウジング11またはハウジング11内の空気との接触面積も大きくなりやすい。そのため、封止樹脂部100の熱伝導率を高めることで、コイル29を効率よく冷却でき、モータ10の放熱性をより向上できる。
【0067】
絶縁性の面では、インシュレータ28は、コイル29とステータコア27とを確実に絶縁する必要があるのに対して、封止樹脂部100は隣り合うコイル29同士の直接的な接触を防ぐことができれば十分である。したがって、封止樹脂部100を構成する絶縁性樹脂としては、熱伝導性には優れるが、絶縁性はインシュレータ28よりも低い樹脂材料を用いることができる。また、インシュレータ28を構成する絶縁性樹脂としては、絶縁性に優れる樹脂材料であれば、熱伝導性は封止樹脂部100よりも低い樹脂材料を用いることができる。このように、本実施形態によれば、封止樹脂部100とインシュレータ28とのそれぞれに要求される性能を優先して樹脂材料を選択することで、モータ10のコスト上昇を抑制しつつ、モータ10の放熱性と絶縁性を向上させることができる。
【0068】
封止樹脂部100の熱伝導率は、インシュレータ28の熱伝導率の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。この構成によれば、封止樹脂部100を介してコイル29の熱をより放出させやすくできる。したがって、モータ10の放熱性をより向上できる。
【0069】
より詳細な具体例を挙げるならば、封止樹脂部100を構成する絶縁性樹脂として、熱伝導率が1W/(m・K)程度の樹脂材料を用いることができる。インシュレータ28を構成する絶縁性樹脂として、熱伝導率が0.3W/(m・K)程度の樹脂材料を用いることができる。
【0070】
本実施形態において、封止樹脂部100の線膨張係数と、インシュレータ28の線膨張係数は、ほぼ同等であることが好ましい。具体的には、封止樹脂部100の線膨張係数は、インシュレータ28の線膨張係数の0.7倍以上1.3倍以下であることが好ましく、0.8倍以上1.2倍以下であることがより好ましい。この構成によれば、温度変化に伴う膨張収縮によって封止樹脂部100とインシュレータ28との界面に作用する力が小さくなるので、封止樹脂部100の破損が抑制される。
【0071】
より詳細な具体例を挙げるならば、封止樹脂部100を構成する絶縁性樹脂として、線膨張係数が1.7×10-5~4.7×10-5(-40℃~125℃)である樹脂材料を用いることができる。インシュレータ28を構成する絶縁性樹脂として、線膨張係数が1.8×10-5~5.0×10-5(-40℃~125℃)である樹脂材料を用いることができる。
【0072】
上記の熱伝導率と線膨張係数の範囲を満たす樹脂材料としては下記の材料が挙げられる。封止樹脂部100の材料としては、ポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS)、およびエポキシ系樹脂などを用いることができる。インシュレータ28の材料としては、ポリフタルアミド系樹脂(PPA)、ポリアミド系樹脂(PA)、およびポリフェニレンサルファイド系樹脂(PPS)などを用いることができる。上記樹脂材料は、ガラス繊維などの絶縁性繊維を含む複合材であってもよい。
【0073】
本実施形態において、封止樹脂部100の線膨張係数は、インシュレータ28の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。封止樹脂部100は、インシュレータ28と比較してコイル29との接触面積が大きく、温度上昇しやすい。インシュレータ28よりも封止樹脂部100の線膨張係数が小さい構成とすることで、温度上昇時に、封止樹脂部100とインシュレータ28の界面にかかる力を低減できる。
【0074】
図1に示すように、ポンプ機構90は、ロータ21に連結されている。ポンプ機構90は、ロータ21の下側に位置する。ポンプ機構90のポンプ部90aは、モータ10の動力により駆動される。ポンプ部90aは、オイル等の流体を吸入し、吐出する。ポンプ部90aは、電動ポンプ1の下側部分である。図示は省略するが、ポンプ部90aは、車両の駆動装置等に設けられるオイル等の流体の流路と繋がる。
【0075】
本実施形態では、ポンプ部90aが、トロコイドポンプ構造を有する。ポンプ部90aは、インナーロータ91と、アウターロータ92と、を有する。図示は省略するが、インナーロータ91およびアウターロータ92は、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ91とアウターロータ92とは、互いに噛み合っている。インナーロータ91は、シャフト22の下側の端部に連結されている。なお、インナーロータ91とシャフト22とは、中心軸J回りの相対的な回動が、所定範囲において許容されていてもよい。アウターロータ92は、インナーロータ91の径方向外側に配置されている。アウターロータ92は、インナーロータ91を径方向外側から、周方向の全周にわたって囲んでいる。
【0076】
ポンプカバー95は、ハウジング本体12の下側の端部に固定されている。ポンプカバー95は、ポンプ部90aを下側から覆っている。ポンプカバー95は、図示しない車両の部材と固定される。ポンプカバー95は、吸入口96aと、吐出口96bと、を有する。吸入口96aおよび吐出口96bは、それぞれポンプ部90aと繋がっている。吸入口96aおよび吐出口96bは、例えば、ポンプカバー95を軸方向に貫通する貫通孔により構成されている。吸入口96aは、ポンプ部90aに流体を吸入させる。すなわち、ポンプ部90aは、吸入口96aを通して電動ポンプ1の外部から流体を吸入する。吐出口96bは、ポンプ部90aから流体を吐出させる。すなわち、ポンプ部90aは、吐出口96bを通して電動ポンプ1の外部に流体を吐出する。
【0077】
本実施形態のようにポンプ機構90がロータ21の下側に位置する場合、ハウジング11内のうちモータ本体部20の下側に、空間が設けられやすい。具体的に本実施形態では、ポンプ収容部12cをハウジング11に設けるために、ポンプ収容部12cの径方向外側に空間Sが設けられている。空間Sは、ステータ26の下側に位置する。空間Sは、例えば、中心軸Jを中心とする円環状である。空間Sには、封止樹脂部100の下側突出部104が配置されている。言い換えれば、ポンプ機構90をロータ21の下側に配置することによって設けられた空間Sを、下側突出部104を設ける空間として利用することができる。これにより、モータ10が軸方向に大型化することを抑制しつつ、下側突出部104の突出高さを大きくしやすい。例えば、空間Sを利用して、下側突出部104を図1に示すよりも下側に突出させることもできる。この場合、封止樹脂部100の表面積をより大きくできる。したがって、モータ10の放熱性をより向上できる。
【0078】
以上のように、ロータ21に対してポンプ機構90が配置される側と同じ側、すなわち本実施形態では下側に、下側突出部104を突出させることで、空間Sに下側突出部104を配置しやすく、かつ、下側突出部104の突出高さを大きくしやすい。したがって、モータ10が軸方向に大型化することを抑制しつつ封止樹脂部100の表面積を大きくしやすく、モータ10の放熱性をより向上できる。
【0079】
<第2実施形態>
図5および図6に示すように、本実施形態の電動ポンプ2のモータ210において、封止樹脂部200は、中央部分105と、上側突出部201と、下側突出部104と、を有する。上側突出部201は、ステータコア27よりも上側に突出する突出部である。上側突出部201は、第1実施形態の上側突出部101よりも上側に突出している。上側突出部201は、基部102と、本体部203と、を有する。本体部203は、第1実施形態の本体部103よりも上側に突出している。
【0080】
図6に示すように、本実施形態において本体部203は、周方向に延びる円弧状である。本体部203は、周方向に沿って複数設けられている。図6では、3つの本体部203が周方向に間隔を空けて配置されている。1つの本体部203の上面からは、3つの端子81aが上側に突出している。
【0081】
複数の本体部203が周方向に間隔を空けて配置されていることで、上側突出部201は、周方向に隣り合う本体部203同士の間に凹部207を有する。凹部207は、上側突出部201の上側の面から下側に窪んでいる。凹部207は、径方向の両側に開口している。すなわち、凹部207は、上側突出部201の周方向の一部を径方向に貫通している。図示は省略するが、複数の凹部207のうちの少なくとも1つの内部には、ベアリングホルダ56の一部が径方向に通されている。
【0082】
図5に示すように、本体部203の上側の端部は、ホルダ貫通孔56aに下側から挿入されている。すなわち、上側突出部201は、ホルダ貫通孔56aに挿入された挿入部として本体部203を有する。そのため、上側突出部201を、ベアリングホルダ56との干渉を避けつつ、より上側に延ばすことができる。これにより、封止樹脂部200の表面積をより大きくでき、モータ210の放熱性をより向上できる。また、ベアリングホルダ56の軸方向位置を変える必要がないため、モータ210が大型化することも抑制できる。また、本体部203のホルダ貫通孔56aに挿入された部分から放出される熱が、ホルダ貫通孔56aの内周面からベアリングホルダ56へと放出されやすい。そのため、コイル29の熱を本体部203から、ベアリングホルダ56およびハウジング11を介して、モータ210の外部に放出しやすい。したがって、モータ210の放熱性をより向上できる。
【0083】
特に、本実施形態では、ハウジング11およびベアリングホルダ56は、金属製である。そのため、本体部203から放出される熱が、ベアリングホルダ56およびハウジング11に伝わりやすい。これにより、モータ210の放熱性をより向上できる。本体部203のうちホルダ貫通孔56aに挿入された部分は、ホルダ貫通孔56aの内周面と接触している。そのため、本体部203からベアリングホルダ56へとより熱が伝わりやすい。したがって、モータ210の放熱性をより向上できる。なお、本体部203のうちホルダ貫通孔56aに挿入された部分は、ホルダ貫通孔56aの内周面から離れて配置されていてもよい。
【0084】
図6に示すように、本実施形態において凹部206は、挿入部である本体部203に設けられている。凹部206は、複数設けられている。凹部206は、例えば、2つ設けられている。凹部206は、3つの本体部203のうち上面から端子81aが突出していない2つの本体部203にそれぞれ1つずつ設けられている。凹部206の軸方向に見た形状および大きさは、第1実施形態の凹部106と同様である。図5に示すように、凹部206の上側の端部は、ホルダ貫通孔56a内に位置する。
【0085】
本実施形態においてコンデンサ47の一部は、ホルダ貫通孔56a内において凹部206に挿入されている。すなわち、電子部品42の少なくとも一部は、ホルダ貫通孔56a内において凹部206に挿入されている。ここで、例えば、挿入部である本体部203が挿入されるホルダ貫通孔56aと、電子部品42が通されるホルダ貫通孔56aとが異なる場合、ベアリングホルダ56に設けられるホルダ貫通孔56aの数が多くなりやすい。これに対して、同じホルダ貫通孔56aに対して本体部203と電子部品42とが挿入される構成とすることで、ホルダ貫通孔56aの数を少なくしやすい。これにより、ベアリングホルダ56の強度を好適に維持しやすい。また、電子部品42から凹部206の内側面およびホルダ貫通孔56aの内周面を介して、電子部品42の熱をベアリングホルダ56へと放出しやすい。
【0086】
本実施形態においてコンデンサ47は、複数設けられている。コンデンサ47は、例えば、2つ設けられている。2つのコンデンサ47は、2つの凹部206のそれぞれに挿入されている。
【0087】
図6に示すように、本実施形態において封止樹脂部200は、複数の分割樹脂部100aと、複数の分割樹脂部200aと、を有する。分割樹脂部200aは、分割樹脂部100aに対して、分割上側突出部101aを有していない点が異なる。本実施形態では、3つの分割樹脂部100aが連結された連結体と分割樹脂部200aとが周方向に沿って交互に連結されて、封止樹脂部200が構成されている。上側突出部201における各本体部203は、3つの分割樹脂部100aの分割上側突出部101aが周方向に連結されてそれぞれ構成されている。
【0088】
なお、図7に示すように、本実施形態においてコンデンサ47は、凹部207に上側から挿入されていてもよい。この場合、凹部207は、電子部品42の少なくとも一部を収容する凹部に相当する。
【0089】
以上に説明した各実施形態の電動ポンプ1,2は、オイルポンプまたはウォーターポンプとして用いることができる。本実施形態によれば、放熱性に優れるモータ10,210を備えることで、信頼性に優れる電動ポンプ1,2が提供される。
【0090】
各実施形態の電動ポンプ1,2を電動オイルポンプとして用いる場合、ステータ26が樹脂封止されているため、ハウジング11内にオイルが入り込む態様での使用が可能である。このような使用形態では、封止樹脂部100,200が高い熱伝導率を有することで、コイル29の熱を、封止樹脂部100,200を介してオイルにも放出させることができ、効率よくモータ10,210を冷却可能である。
【0091】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成を採用することもできる。電子部品の少なくとも一部が収容される凹部は、突出部の軸方向一方側の面から軸方向他方側に窪んでいるならば、どのような形状であってもよい。凹部は、図8に示す凹部306および図9に示す凹部406のような形状であってもよい。図8に示すように、上側突出部301の本体部303における凹部306は、径方向内側に開口している。この構成によれば、コンデンサ47の位置が径方向内側にずれた場合であっても、コンデンサ47が上側突出部301に干渉することを抑制できる。凹部306の内縁は、例えば、軸方向に見て径方向に長い長方形状である。凹部306は、本体部303を構成する1つの分割本体部303aに設けられている。
【0092】
図9に示すように、上側突出部401の本体部403における凹部406は、径方向両側に開口している。すなわち、凹部406は、上側突出部401の周方向の一部を径方向に貫通している。この構成によれば、コンデンサ47の位置が径方向内側または径方向外側にずれた場合であっても、コンデンサ47が上側突出部401に干渉することを抑制できる。凹部406の内縁は、例えば、軸方向に見て径方向に長い長方形状である。凹部406は、本体部403を構成する1つの分割本体部403aに設けられている。
【0093】
凹部に収容される電子部品の種類は、特に限定されない。凹部に収容される電子部品は、例えば、抵抗、およびチョークコイル等であってもよい。電子部品は、全体が凹部に収容されていてもよいし、一部のみが凹部に収容されていてもよい。1つの凹部に複数の電子部品が収容されていてもよい。凹部の数は、特に限定されない。
【0094】
封止樹脂部は、ハウジングの内側面に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。封止樹脂部がハウジングの内側面に接触している場合、コイルの熱を封止樹脂部からハウジングの内側面に放出させやすくできる。そのため、モータの放熱性をより向上できる。封止樹脂部は、複数の分割樹脂部を有さずに、一体成形されていてもよい。封止樹脂の熱伝導率は、インシュレータの熱伝導率より小さくてもよいし、インシュレータの熱伝導率と同じであってもよい。封止樹脂部は、バスバーを保持しなくてもよい。この場合、バスバーを保持するバスバーホルダを別途設けてもよい。
【0095】
ハウジングは、金属製でなくてもよい。ベアリングホルダは、金属製でなくてもよい。ステータは、分割ステータを有しなくてもよい。インシュレータは、コイルの巻線を径方向に整列する複数の溝を有する構成としてもよい。この構成によれば、巻線を整列状態で巻き回せるため、巻線の密度を高めることができ、コイルの占積率をさらに高めることができる。
【0096】
本発明が適用されるモータの用途は、特に限定されない。モータは、例えば、車両に搭載される電動アクチュエータに用いられてもよい。モータは、車両以外の機器に搭載されてもよい。モータを備える電動ポンプは、車両以外の機器に搭載されてもよい。なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0097】
1,2…電動ポンプ、10,210…モータ、11…ハウジング、21…ロータ、26…ステータ、27…ステータコア、27a…コアバック、27b…ティース、28…インシュレータ、29…コイル、36…第1ベアリング(ベアリング)、41…回路基板、42…電子部品、56…ベアリングホルダ、56a…ホルダ貫通孔、81…バスバー、90…ポンプ機構、100,200…封止樹脂部、100a,200a…分割樹脂部、101,201,301,401…上側突出部(突出部)、106,206,207,306,406…凹部、126…分割ステータ、127…分割コア、127a…分割コアバック、203…本体部(挿入部)、J…中心軸
図1
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