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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/51 20060101AFI20231212BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20231212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01J3/51
G01J3/26
B41J2/01 303
B41J2/01 451
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019232798
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101170
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 隆史
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111059(JP,A)
【文献】特開2017-003747(JP,A)
【文献】特開2000-039747(JP,A)
【文献】特開2005-300758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
B41J 2/00-2/525
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、
前記測定対象の前記分光測定部により測定を実施する測定位置に対して、青色ピーク波長、緑色ピーク波長、及び赤色ピーク波長を含む発光スペクトルの光を照射する光源と、
前記測定対象に対して、前記分光測定部を一方向に相対移動させる移動機構と、
前記測定対象がカラーパッチであり、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させた場合に、前記測定位置が前記カラーパッチ内に移動したか否かを判定する制御部と、を備え、
前記発光スペクトルは、前記青色ピーク波長を中心として前記青色ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる青色波長域、前記緑色ピーク波長を中心として前記緑色ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる緑色波長域、及び、前記赤色ピーク波長を中心として前記赤色ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる赤色波長域を含み、
前記青色波長域には、前記青色ピーク波長とは異なる波長であって、前記発光スペクトルの傾きの絶対値が所定値以上となる第一波長が含まれ、
前記緑色波長域には、前記緑色ピーク波長とは異なる波長であって、前記発光スペクトルの傾きの絶対値が前記所定値以上となる第二波長が含まれ、
前記赤色波長域には、前記赤色ピーク波長とは異なる波長であって、前記発光スペクトルの傾きの絶対値が前記所定値以上となる第三波長が含まれ、
前記制御部は、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長に対する測定処理を実施させ、前記測定処理で得られる前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長のそれぞれに対する測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長のそれぞれの測定値の変化量が、前記第一閾値以下の第二閾値を下回った場合に、前記測定位置が前記カラーパッチ内に移動したと判定する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記制御部は、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、前記分光測定部で測定する光の前記分光波長を、前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長に交互に切り替える
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の測定装置において、
前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長のそれぞれの前記測定値は、所定のサンプリング周期交互に測定され、
前記制御部は、前記第一波長に対するn回目に測定される前記測定値と、前記第一波長に対するn-1回目に測定される前記測定値の差の絶対値を、前記第一波長の前記測定値の変化量として算出し、前記第二波長に対するn回目に測定される前記測定値と、前記第二波長に対するn-1回目に測定される前記測定値との差の絶対値を、前記第二波長の前記測定値の変化量として算出し、前記第三波長に対するn回目に測定される前記測定値と、前記第三波長に対するn-1回目に測定される前記測定値との差の絶対値を、前記第三波長の前記測定値の変化量として算出する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項4】
測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象の前記分光測定部により測定を実施する測定位置に対して青色ピーク波長、緑色ピーク波長、及び赤色ピーク波長を含む発光スペクトルの光を照射する光源と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を一方向に相対移動させる移動機構と、を備える測定装置の測定方法であって、
前記光源の発光スペクトルが、前記青色ピーク波長を中心として前記青色ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる青色波長域、前記緑色ピーク波長を中心として前記緑色ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる緑色波長域、及び、前記赤色ピーク波長を中心として前記赤色ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる赤色波長域を含み、前記青色波長域には、前記青色ピーク波長とは異なる波長であって、前記発光スペクトルの傾きの絶対値が所定値以上となる第一波長が含まれ、前記緑色波長域には、前記緑色ピーク波長とは異なる波長であって、前記発光スペクトルの傾きの絶対値が前記所定値以上となる第二波長が含まれ、前記赤色波長域には、前記赤色ピーク波長とは異なる波長であって、前記発光スペクトルの傾きの絶対値が前記所定値以上となる第三波長が含まれ
前記測定対象がカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長に対する測定処理を前記分光測定部により実施し、前記測定処理で得られる前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長のそれぞれに対する測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、前記第一波長、前記第二波長、及び前記第三波長のそれぞれの測定値の変化量が、前記第一閾値以下の第二閾値を下回った場合に、前記分光測定部による前記測定位置が前記カラーパッチ内に移動したと判定する
ことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メディア上に画像を形成する印刷装置として、入力された画像データの色と、印刷ヘッドにより印刷された画像の色とが一致するように、キャリブレーション処理を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の印刷装置は、Y方向にメディアを搬送される搬送機構と、Y方向に直交するX方向に移動可能なキャリッジとを有し、キャリッジに印刷部及び分光器が搭載されている。この印刷装置は、キャリブレーション処理として、まず、メディア上に、X方向に並ぶスタートライン及びカラーパッチを形成する。その後、分光器に、予め設定された所定波長の分光測定処理を実施させながら、キャリッジをホーム位置からX方向に移動させる。このような構成では、分光器がスタートラインを超えるときに、分光器から出力される信号値が閾値以上変化するので、分光器がスタートラインの位置を超えたことを検出することができる。
また、この特許文献1には、分光器が隣り合うカラーパッチを跨ぐ時に、分光器が出力される信号値が線形的に変化し、信号値が一定となったタイミングで分光器がカラーパッチを跨いだことを検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-111059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、隣り合って配置されるカラーパッチの色の差が小さい場合がある。特許文献1に記載の測定方法では、このような場合、カラーパッチを跨いで分光器を移動させても、信号値の変化が小さく、信号値が一定となったタイミングを判定することは困難である。このため、隣り合うカラーパッチが同系色にならないカラーチャートを形成する必要がある等、使用場面が特定されてしまう。
また、上記特許文献1は、印刷装置に関するものであるが、印刷機構が設けられず、カラーパッチの測定のみを行う測定装置においても同様の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様に係る測定装置は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を一方向に相対移動させる移動機構と、前記測定対象がカラーパッチであり、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させた場合に、前記分光測定部による測定位置が前記カラーパッチ内に移動したか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された複数の波長に対する測定処理を実施させ、前記測定処理で得られる前記複数の波長のそれぞれに対する測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、前記複数の波長のそれぞれの測定値の変化量が、前記第一閾値以下の第二閾値を下回った場合に、前記測定位置が前記カラーパッチ内に移動したと判定する。
【0007】
第二態様に係る測定方法は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を一方向に相対移動させる移動機構と、を備える測定装置の測定方法であって、前記測定対象がカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、予め設定された複数の波長に対する測定処理を前記分光測定部により実施し、前記測定処理で得られる前記複数の波長のそれぞれに対する測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、前記複数の波長のそれぞれの測定値の変化量が、前記第一閾値以下の第二閾値を下回った場合に、前記分光測定部による測定位置が前記カラーパッチ内に移動したと判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態のプリンターの概略構成を示す外観図。
図2】本実施形態のプリンターの概略構成を示すブロック図。
図3】本実施形態の分光器の概略構成を示す断面図。
図4】本実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
図5】本実施形態における制御ユニットの機能構成を示したブロック図。
図6】本実施形態のプリンターにおける測定方法を示すフローチャート。
図7】本実施形態におけるカラーチャートの一例を示す図。
図8】本実施形態の光源の発光スペクトルの一例を示す図。
図9】本実施形態で、測定領域をX方向に沿って移動させた際の第一測定値、第二測定値、及び第三測定値の変化を示す図。
図10】X方向に隣り合って配置された第一のカラーパッチの反射スペクトルの一例、及び、第二のカラーパッチの反射スペクトルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。本実施形態では、測定装置を備えたプリンター10について、以下説明する。
【0010】
[プリンター10の概略構成]
図1は、本実施形態のプリンター10の外観の構成例を示す図である。図2は、本実施形態のプリンター10の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プリンター10は、供給ユニット11、搬送ユニット12と、キャリッジ13と、キャリッジ移動ユニット14と、制御ユニット15(図2参照)と、を備えている。このプリンター10は、例えばパーソナルコンピューター等の外部機器20から入力された印刷データに基づいて、各ユニット11,12,14及びキャリッジ13を制御し、媒体A上に画像を印刷する。また、本実施形態のプリンター10は、予め設定された較正用データに基づいて媒体A上の所定位置に測色用のカラーパッチ31(図7等参照)を形成し、かつ当該カラーパッチ31に対する分光測定を行う。これにより、プリンター10は、カラーパッチ31に対する実測値である測定値と、較正用データとを比較して、印刷されたカラーに色ずれがあるか否か判定し、色ずれがある場合は、実測値に基づいて色補正を行う。
以下、プリンター10の各構成について具体的に説明する。
【0011】
供給ユニット11は、画像形成対象となる媒体Aを、画像形成位置に供給するユニットである。この供給ユニット11は、例えば、媒体Aが巻装されたロール体111、図示略のロール駆動モーター、及び図示略のロール駆動輪列等を備える。そして、制御ユニット15からの指令に基づいて、ロール駆動モーターが回転駆動され、ロール駆動モーターの回転力がロール駆動輪列を介してロール体111に伝達される。これにより、ロール体111が回転し、ロール体111に巻装された媒体Aが+Y側に供給される。
なお、本実施形態では、ロール体111に巻装された紙面を供給する例を示すがこれに限定されない。例えば、トレイ等に積載された紙面等の媒体Aをローラー等によって例えば1枚ずつ供給する等、如何なる供給方法によって媒体Aが供給されてもよい。
また、本実施形態の媒体Aは、印刷用紙等の紙の他、フィルムや布等を用いることができる。
【0012】
搬送ユニット12は、供給ユニット11から供給された媒体Aを、+Y側に送り出す。この搬送ユニット12は、搬送ローラー121と、搬送ローラー121と媒体Aを挟んで配置され、搬送ローラー121に従動する図示略の従動ローラーと、プラテン122と、を含んで構成されている。
搬送ローラー121は、図示略の搬送モーターからの駆動力が伝達され、制御ユニット15の制御により搬送モーターが駆動されると、その回転力により回転駆動されて、従動ローラーとの間に媒体Aを挟み込んだ状態でY方向に沿って搬送する。また、搬送ローラー121の+Y側には、キャリッジ13に対向するプラテン122が設けられている。
【0013】
キャリッジ13は、本開示の分光測定部に相当し、媒体Aに対して画像を印刷する印刷部16と、媒体A上の所定の測定領域R(図2参照)の分光測定を行う分光器17と、を備えている。なお、測定領域Rは、本開示の測定位置に相当する。本実施形態では、分光測定部であるキャリッジ13が1つの分光器を備える例を示す。
このキャリッジ13は、キャリッジ移動ユニット14によって、Y方向と交差するX方向に沿って移動可能に設けられている。なお、X方向は、本開示の一方向に相当する。
また、キャリッジ13は、フレキシブル回路131により制御ユニット15に接続されている。キャリッジ13は、制御ユニット15からの指令に基づいて、印刷部16による印刷処理(媒体Aに対する画像形成処理)及び、分光器17による分光測定処理を実施する。
なお、キャリッジ13に搭載される印刷部16及び分光器17の詳細な構成については後述する。
【0014】
キャリッジ移動ユニット14は、本開示の移動機構を構成し、制御ユニット15からの指令に基づいて、キャリッジ13をX方向に沿って往復移動させる。
このキャリッジ移動ユニット14は、例えば、キャリッジガイド軸141と、キャリッジモーター142と、タイミングベルト143と、を含んで構成されている。
キャリッジガイド軸141は、X方向に沿って配置され、両端部がプリンター10の筐体に固定されている。キャリッジモーター142は、タイミングベルト143を駆動させる。タイミングベルト143は、キャリッジガイド軸141と略平行に支持され、キャリッジ13の一部が固定されている。そして、制御ユニット15の指令に基づいてキャリッジモーター142が駆動されると、タイミングベルト143が正逆走行され、タイミングベルト143に固定されたキャリッジ13がキャリッジガイド軸141にガイドされて往復移動する。
【0015】
次に、キャリッジ13に搭載される印刷部16及び分光器17の構成について説明する。
[印刷部16の構成]
印刷部16は、媒体Aと対向して配置され、インクを個別に媒体A上に吐出して、媒体A上に画像を形成する。
この印刷部16は、複数色のインクに対応したインクカートリッジ161が着脱自在に装着されており、各インクカートリッジ161からインクタンク(図示略)にチューブ(図示略)を介してインクが供給される。また、印刷部16の下面(媒体Aに対向する位置)には、インク滴を吐出するノズル(図示略)が、各色に対応して設けられている。これらのノズルには、例えばピエゾ素子が配置されており、ピエゾ素子を駆動させることで、インクタンクから供給されたインク滴が吐出されて媒体Aに着弾し、ドットが形成される。
【0016】
[分光器17の構成]
図3は、分光器17の概略構成を示す断面図である。
分光器17は、図3に示すように、光源部171と、光学フィルターデバイス172、受光部173と、導光部174と、を備えている。
この分光器17は、光源部171から媒体A上に照明光を照射し、媒体Aで反射された光成分を、導光部174により光学フィルターデバイス172に入射させる。そして、光学フィルターデバイス172は、この反射光から所定波長の光を出射(透過)させて、受光部173により受光させる。また、光学フィルターデバイス172は、制御ユニット15の制御に基づいて、透過波長を選択可能であり、可視光における各波長の光の光量を測定することで、媒体A上の測定領域Rの分光測定が可能となる。
【0017】
[光源部171の構成]
光源部171は、光源171Aと、集光部171Bとを備える。この光源部171は、光源171Aから出射された光を媒体Aの測定領域R内に、媒体Aの表面に対する法線方向から照射する。
光源171Aとしては、可視光域の発光スペクトルが、複数のピーク波長を有する光源が好ましく、より好ましくは、複数のピーク波長がそれぞれ80nm以上離間して現れる光源である。このような光源として、例えば、紫外LEDとRGB蛍光体とを組み合わせた白色LED等が例示でき、その他、蛍光灯等の光源を用いてもよい。
集光部171Bは、例えば集光レンズ等により構成され、光源171Aからの光を測定領域Rに集光させる。なお、図3においては、集光部171Bでは、1つのレンズ(集光レンズ)のみを表示するが、複数のレンズを組み合わせて構成されていてもよい。
なお、本実施形態では、分光器17に光源部171が含まれる例を示すがこれに限定されない。例えば、光源部171は、分光器17とは別にキャリッジ13に搭載されていてもよい。
【0018】
[光学フィルターデバイス172の構成]
図4は、光学フィルターデバイス172の概略構成を示す断面図である。
光学フィルターデバイス172は、筐体6と、筐体6の内部に収納された波長可変干渉フィルター5とを備えている。
【0019】
波長可変干渉フィルター5は、波長可変型のファブリーペローエタロン素子であり、図4に示すように、透光性の第一基板51及び第二基板52を備え、これらの第一基板51及び第二基板52が、接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
第一基板51は、エッチングにより形成された第一溝部511、及び第一溝部511より溝深さが浅い第二溝部512を備えている。そして、第一溝部511には、第一電極561が設けられ、第二溝部512には、第一反射膜54が設けられている。
第一電極561は、例えば第二溝部512を囲う環状に形成されており、第二基板52に設けられた第二電極562に対向する。
第一反射膜54は、例えばAg等の金属膜、Ag合金等の合金膜、高屈折層及び低屈折層を積層した誘電体多層膜、又は、金属膜(合金膜)と誘電体多層膜を積層した積層体により構成されている。
【0020】
第二基板52は、可動部521と、可動部521の外に設けられ、可動部521を保持するダイアフラム部522とを備えている。
可動部521は、ダイアフラム部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。この可動部521は、第一電極561の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されており、可動部521の第一基板51に対向する面に、第二電極562及び第二反射膜55が設けられている。
第二電極562は、第一電極561に対向する位置に設けられている。
第二反射膜55は、第一反射膜54に対向する位置に、ギャップGを介して配置されている。この第二反射膜55としては、上述した第一反射膜54と同一の構成の反射膜を用いることができる。
【0021】
ダイアフラム部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このようなダイアフラム部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を第一基板51側に変位させることが可能となる。これにより、第一反射膜54及び第二反射膜55の平行度を維持した状態で、ギャップGのギャップ寸法を変更することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状のダイアフラム部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点を中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
また、第二基板52の外周部(第一基板51に対向しない領域)には、第一電極561や第二電極562と個別に接続された複数の電極パッド57が設けられている。
【0022】
筐体6は、図4に示すように、ベース61と、ガラス基板62と、を備えている。これらのベース61及びガラス基板62は、例えばガラスフリット(低融点ガラス)を用いた低融点ガラス接合、エポキシ樹脂等による接着などを利用でき、これにより、内部に収容空間が形成され、この収容空間内に波長可変干渉フィルター5が収納される。
【0023】
ベース61は、例えば薄板上にセラミックを積層することで構成され、波長可変干渉フィルター5を収納可能な凹部611を有している。波長可変干渉フィルター5は、ベース61の凹部611の例えば側面に固定材64により固定されている。
ベース61の凹部611の底面には、光通過孔612が設けられている。この光通過孔612は、波長可変干渉フィルター5の反射膜54,55と重なる領域を含むように設けられている。また、ベース61のガラス基板62とは反対側の面には、光通過孔612を覆うカバーガラス63が接合されている。
【0024】
また、ベース61には、波長可変干渉フィルター5の電極パッド57に接続される内側端子部613が設けられており、この内側端子部613は、導通孔614を介して、ベース61の外側に設けられた外側端子部615に接続されている。この外側端子部615は、制御ユニット15に電気的に接続されている。
【0025】
[受光部173及び導光部174の構成]
図3に戻り、受光部173は、波長可変干渉フィルター5の光軸上に配置され、当該波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する。そして、受光部173は、制御ユニット15の制御に基づいて、受光量に応じた検出信号を出力する。
受光部173から出力された検出信号は、I-V変換器、増幅器、及びAD変換器により信号処理された後、図示略のサンプルアンドホールド回路で、所定のサンプリング周波数でサンプリングされる。サンプリングされた検出信号の信号値は、制御ユニット15に出力される。
導光部174は、反射鏡174Aと、バンドパスフィルター174Bとを備えている。
この導光部174は、測定領域Rで、媒体Aの表面に対して45°で反射された光を反射鏡174Aにより、波長可変干渉フィルター5の光軸上に反射させる。バンドパスフィルター174Bは、例えば可視光域(例えば380nm~720nm)の光を透過させ、紫外光及び赤外光の光をカットする。これにより、波長可変干渉フィルター5には、可視光域の光が入射されることになり、受光部173において、可視光域における波長可変干渉フィルター5により選択された波長の光が受光される。
【0026】
[制御ユニットの構成]
制御ユニット15は、本開示の制御部であり、図2に示すように、I/F151と、ユニット制御回路152と、記憶部153と、プロセッサー154と、を含んで構成されている。
I/F151は、外部機器20から入力される印刷データをプロセッサー154に入力する。
ユニット制御回路152は、供給ユニット11、搬送ユニット12、印刷部16、光源171A、波長可変干渉フィルター5、受光部173、及びキャリッジ移動ユニット14をそれぞれ制御する制御回路を備えており、プロセッサー154からの指令信号に基づいて、各ユニットの動作を制御する。なお、各ユニットの制御回路が、制御ユニット15とは別体に設けられ、制御ユニット15に接続されていてもよい。
【0027】
記憶部153は、例えば半導体メモリーやハードディスクなどの情報記憶装置であり、プリンター10の動作を制御する各種プログラムや各種データが記憶されている。
各種データとしては、例えば、波長可変干渉フィルター5を制御する際の、静電アクチュエーター56への印加電圧に対する、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長を示したV-λデータ、印刷データとして含まれる色データに対する各インクの吐出量を記憶した印刷プロファイルデータ等が挙げられる。また、光源171Aの各波長に対する発光特性(発光スペクトル)や、受光部173の各波長に対する受光特性(受光感度特性)等が記憶されていてもよい。
【0028】
図5は、プリンター10の制御ユニット15に含まれるCPUの機能構成を示したブロック図である。
プロセッサー154は、記憶部153に記憶された各種プログラムを読み出し実行することで、図5に示すように、走査制御部181、印刷制御部182、フィルター制御部183、測定値算出部184、判定部185、測色部186、及び較正部187等として機能する。
【0029】
走査制御部181は、供給ユニット11、搬送ユニット12、及びキャリッジ移動ユニット14を駆動させる旨の指令信号をユニット制御回路152に出力する。これにより、ユニット制御回路152は、供給ユニット11のロール駆動モーターを駆動させて、媒体Aを搬送ユニット12に供給させる。また、ユニット制御回路152は、搬送ユニット12の搬送モーターを駆動させて、媒体Aの所定領域をプラテン122のキャリッジ13に対向する位置まで、Y方向に沿って搬送させる。また、ユニット制御回路152は、キャリッジ移動ユニット14のキャリッジモーター142を駆動させて、キャリッジ13をX方向に沿って移動させる。
【0030】
印刷制御部182は、例えば外部機器20から入力された印刷データに基づいて、印刷部16を制御する旨の指令信号をユニット制御回路152に出力する。また、本実施形態では、印刷制御部182は、予め設定された所定色のカラーパッチ31を所定位置に形成する旨の較正用データに基づいて、媒体A上にカラーパッチ31を形成する。なお、較正用データとしては、記憶部153に記憶されていてもよく、外部機器20から入力されてもよい。
カラーパッチ31についての詳細な説明は後述する。
印刷制御部182からユニット制御回路152に指令信号が出力されると、ユニット制御回路152は、印刷部16に印刷制御信号を出力し、ノズルに設けられたピエゾ素子を駆動させて媒体Aに対してインクを吐出させる。なお、印刷を実施する際は、キャリッジ13がX方向に沿って移動されて、その移動中に印刷部16からインクを吐出させてドットを形成するドット形成動作と、媒体AをY方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像を媒体Aに印刷する。
【0031】
フィルター制御部183は、波長可変干渉フィルター5を透過させる光の波長に対する静電アクチュエーター56への駆動電圧を、記憶部153のV-λデータから読み出し、ユニット制御回路152に指令信号を出力する。これにより、ユニット制御回路152は、波長可変干渉フィルター5に指令された駆動電圧を印加し、波長可変干渉フィルター5から所望の透過波長の光が透過される。
具体的には、フィルター制御部183は、判定部185により、測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に移動したと判定された場合に、カラーパッチ31に対する分光測定処理(本測定処理)を実施する。この本測定処理は、カラーパッチ31の色を測定するための測定処理であり、例えば380nmから680nmの可視光域で20nm間隔となる各波長に対する光量を測定する測定処理である。
また、フィルター制御部183は、カラーパッチ31に対する本測定処理を実施していない間、測定領域Rの位置を判定するために、分光器17の分光波長を、予め設定された複数の波長に交互に切り替えて測定処理を実施する。
【0032】
測定値算出部184は、分光器17の分光処理により得られる測定値と、分光器17の分光波長とを対応付けて記憶部153に記憶する。
なお、分光器17の分光波長は、フィルター制御部183により設定される、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長である。
本実施形態では、分光器17の分光処理により得られる測定値は、分光器17から出力される検出信号の信号値に基づいて算出される。具体的には、測定値算出部184は、所定のサンプリング時間の間にサンプリングされた所定数の検出信号の代表値を、分光波長の測定値として採用する。この代表値は、信号値の平均値であってもよく、信号値の最頻値であってもよい。例えば、本実施形態では、サンプリング時間に、10個の検出信号がサンプリングされ、これらの検出信号の信号値の平均値を測定値として採用する。
【0033】
判定部185は、分光器17による測定領域Rが、カラーパッチ31の領域内であるか否か、つまり、カラーパッチ31から位置ずれして一部がはみ出ていないかを判定する。
具体的には、判定部185は、分光器17をX方向に沿って移動させる間に、分光器17により、予め設定された複数の波長に対する分光測定処理を実施させる。なお、ここで述べる「複数の波長」とは、カラーパッチ31の色を測定するための本測定処理で用いる波長ではなく、測定領域Rが、測定対象のカラーパッチ31に移動したか否かを判定するために予め設定された、測定領域Rの位置判定用の波長である。
そして、判定部185は、各波長の測定値が、所定のタイミングから同時に変化し、その後、各波長の測定値が、同じタイミングで一定値または略一定値に収束した場合に、測定領域Rが隣り合うカラーパッチ31の境界を跨いで移動し、測定領域Rの全体が移動先のカラーパッチ31に入ったと判定する。つまり、各波長の測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、各波長の測定値の全ての変化量が、第二閾値を下回るように遷移した場合に、測定領域Rが測色を実施する対象であるカラーパッチ31に移動したと判定する。
【0034】
測色部186は、カラーパッチ31に対する測定処理で得られた測定値に基づいて、カラーパッチ31における色度を測定する。
較正部187は、測色部186による測色結果と、較正用データとに基づいて、印刷プロファイルデータを補正(更新)する。
なお、制御ユニット15における各機能構成の詳細な動作については後述する。
【0035】
[測定方法]
次に、本実施形態のプリンター10における分光測定方法について、図面に基づいて説明する。
図6は、プリンター10における分光測定方法を示すフローチャートである。
なお、本実施形態では、測定対象となる波長域は400nmから700nmの可視光域であり、初期波長を700nmとして、20nm間隔となる16個の波長の光の光量に基づいて分光測定を実施する例を示す。
【0036】
本実施形態の測定方法では、まず、プリンター10は、媒体A上にカラーパッチ31を含むカラーチャートを形成する。
これには、走査制御部181は、媒体Aを所定位置にセットする(ステップS1)。すなわち、走査制御部181は、供給ユニット11、搬送ユニット12を制御して、媒体Aを+Y側に搬送し、媒体Aの所定の印刷開始位置をプラテン122上にセットする。また、走査制御部181は、キャリッジ13を、例えば-X側端部に位置する初期位置に移動させる。
【0037】
この後、印刷制御部182は、記憶部153から較正用データを読み出し、走査制御部181による制御と同期して、カラーチャートを媒体A上に印刷する(ステップS2)。
すなわち、走査制御部181は、キャリッジ13を+X側に所定速度で走査させる。印刷制御部182は、走査開始からの時間、または、モーター駆動量に応じて印刷部16の位置を特定し、較正用データに基づく画像形成位置に、較正用データに基づく色のインクを吐出させてドットを形成する。また、走査制御部181は、キャリッジ13が+X側端部まで移動されると、供給ユニット11及び搬送ユニット12を制御して媒体Aを+Y側に搬送する。そして、走査制御部181は、キャリッジ13を-X側に走査させ、印刷制御部182は、較正用データに基づいて、所定位置にドットを形成する。
以上のようなドット形成動作と搬送動作を繰り返すことで、媒体A上にカラーチャートが形成される。
【0038】
図7は、本実施形態において形成されるカラーチャートの一例を示す図である。
本実施形態では、図7に示すように、複数色のカラーパッチ31がX方向に沿って隙間なく配置されることで、カラーパッチ群30を形成する。また、Y方向に沿って、複数のカラーパッチ群30を形成する。これにより、カラーチャート3が形成される。
なお、以降の説明にあたり、カラーパッチ群30は、Y方向にJ行配置されており、測定対象となるカラーパッチ群30の行数を、変数j(jは1~Jの整数)で示す。
【0039】
図6に戻り、ステップS2の後、走査制御部181は、変数jを初期化してj=1を設定する(ステップS3)。
そして、走査制御部181は、搬送ユニット12を制御して、媒体AをY方向に沿って搬送し、カラーパッチ31の第j行目を、プラテン122の走査直線上に移動させ、さらに、キャリッジ13を所定の初期位置(例えば、-X側端部)に移動させる(ステップS4)。この走査直線は、キャリッジ13をX方向に移動させた際に、分光器17による測定領域Rが移動する仮想直線である。
【0040】
ステップS4の後、制御ユニット15は、キャリッジ13をX方向に沿って移動させ、これと同時に、分光器17の分光波長を複数の位置判定用の波長に交互に切り替え、各位置判定用の波長に対する測定値を算出する(ステップS5)。
つまり、走査制御部181は、キャリッジ13をX方向に沿って移動させる。フィルター制御部183は、予め設定された複数の位置判定用の波長に対応する駆動電圧を、静電アクチュエーター56に交互に印加する。そして、測定値算出部184は、分光器17から出力された検出信号をサンプリングし、サンプリングされた所定数の検出信号の信号値に基づいて、各位置判定用の波長に対するそれぞれの測定値を算出する。
【0041】
ここで、予め設定された複数の位置判定用の波長とは、光源171Aの発光スペクトルのピーク波長の近傍の波長である。
図8に、光源171Aの発光スペクトルの一例を示す。図8は、光源171Aとして、紫外LEDとRGB蛍光体を組み合わせた白色LEDを用いる場合の発光スペクトルの例である。
本実施形態では、予め設定された複数の波長として、光源171Aの発光スペクトルのうち、380nmから480nmの青色波長域(B波長域)に含まれる第一波長λ、480nmから580nmの緑色波長域(G波長域)に含まれる第二波長λ、580nmから680nmの赤色波長域(R波長域)に含まれる第三波長λを用いる。
【0042】
より具体的には、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λは、発光スペクトルで、光量が極大値となるピーク波長を中心とした、所定の波長域内の波長である。ピーク波長を中心とした所定の波長域内とは、ピーク波長に対応した光量ピーク値の半値以上の光量が得られる波長域である。つまり、図8に示すように、第一波長λは、B波長域のピーク波長λB0を中心とした波長域Wの範囲内の波長である。第二波長λは、G波長域のピーク波長λG0を中心とした波長域Wの範囲内の波長である。第三波長λは、R波長域のピーク波長λR0を中心とした波長域Wの範囲内の波長である。
また、本実施形態では、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λとして、図8に示すように、ピーク波長λB0,λG0,λR0から僅かにずれた波長を用いる。このようなピーク波長から僅かにずれた第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λでは、発光スペクトルにおける光量変化量は急峻となる。つまり、本実施形態では、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λでの発光スペクトルの傾きの絶対値が、所定値以上となる。
【0043】
したがって、ステップS5では、フィルター制御部183は、波長可変干渉フィルター5のギャップGの寸法を、第一波長λに対応する寸法、第二波長λに対応する寸法、及び第三波長λに対応する寸法に、交互に切り替える。これにより、分光器17の受光部173から、第一波長λの光を受光した検出信号、第二波長λの光を受光した検出信号、第三波長λの光を受光した検出信号が出力される。
なお、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に電圧を印加すると、可動部521が振動する。このため、ギャップGが分光波長に対応した寸法となるまでに時間を要する。そこで、本実施形態では、可動部521の振動が収束する安定化時間を予め測定しておく。そして、測定値算出部184は、静電アクチュエーター56への電圧印加タイミングから、安定化時間が経過した後にサンプリングされた所定数の検出信号の信号値を分光器17から受信して測定値を算出する。
【0044】
ところで、ギャップGが分光波長に対応した寸法となるまでの安定化時間は、十分に短く、例えば数msecとなる。また、検出信号をサンプリングするサンプリング周波数は、例えば1kHzであり、この場合、例えば10個の信号値を取得する時間は、約0.01secである。よって、分光器17の分光波長を第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λに交互に切り替え、各々の波長に対する測定値を取得する場合でも、約0.05sec以下となる。
一方、キャリッジ13をX方向に移動させる移動速度は、分光器17による波長の切り替え速度、及び、検出信号のサンプリング速度に対して、十分に遅い。
したがって、第一波長λの光を測定した測定位置、第二波長λの光を測定した測定位置、及び第三波長λの光を測定した測定位置は、ほぼ同一位置として見なすことができる。
【0045】
次に、判定部185は、第一測定値の変化量ΔV図9参照)、第二測定値の変化量ΔV図9参照)、及び第三測定値の変化量ΔV図9参照)を算出する(ステップS6)。
具体的には、判定部185は、測定値算出部184によって、n回目に測定された第一測定値V1(n)と、n-1回目に測定された第一測定値V1(n-1)とに基づいて、ΔV=|V1(n)-V1(n-1)|により、変化量ΔVを算出する。同様に、判定部185は、n回目に測定された第二測定値V2(n)と、n-1回目に測定された第二測定値V2(n-1)とに基づいて、変化量ΔVをΔV=|V2(n)-V2(n-1)|により算出する。また、判定部185は、n回目に測定された第三測定値V3(n)と、n-1回目に測定された第三測定値V3(n-1)とに基づいて、変化量ΔVをΔV=|V3(n)-V3(n-1)|により算出する。
【0046】
そして、判定部185は、第一測定値の変化量ΔV、第二測定値の変化量ΔV、及び第三測定値の変化量ΔVに基づいて、測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に移動したか否かを判定する(ステップS7)。
【0047】
以下、ステップS7の処理をより詳細に説明する。
図9は、ステップS7の処理を説明するための図であり、測定領域RをX方向に沿って移動させた際の第一測定値、第二測定値、及び第三測定値の変化を示す図である。
図9に示すように、測定領域Rが、カラーパッチ31の境界31Aを跨ぐ場合、第一測定値、第二測定値、及び第三測定値が、増加又は減少する。しかしながら、隣り合うカラーパッチ31の色が同系色である場合、測定値の変化が小さくなることがある。
これに対して、本実施形態では、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λの3つの波長に対する測定値を監視する。このため、隣り合うカラーパッチ31が同系色であっても、第一測定値の変化量、第二測定値の変化量、及び第三測定値の変化量の少なくともいずれかが大きくなる。
【0048】
例えば、図9に示す例では、第二測定値、及び第三測定値は、測定領域Rの移動に伴って変化しているものの、その変化量は、第一閾値Vth1を下回る。よって、第二測定値のみ、及び第三測定値のみで、カラーパッチ31に対する測定領域Rの位置を特定することは困難である。しかしながら、第一測定値の変化量は、カラーパッチ31の境界31Aを跨ぐ時に、第一閾値Vth1を上回る。このため、第一測定値の変化量から、測定領域Rがカラーパッチを跨いだことを検知できる。
なお、第一閾値Vth1は、測定値の変化量が大きいか否かを判断するための基準であり、ユーザーが任意に設定してもよい。例えば、第一閾値Vth1を下げることで、隣り合うカラーパッチ31の色が類似している場合でも、測定領域Rの全体が1つのカラーパッチ31上に位置するか否かの判定精度が向上する。一方、第一閾値Vth1を上げることで、検出信号に含まれるノイズの影響を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態では、第一波長λはB波長域に含まれる波長であり、第二波長λはG波長域に含まれる波長であり、第三波長λはR波長域に含まれる波長である。このように、第一波長λと第二波長λとの差、第二波長λと第三波長λとの差をそれぞれ大きくすることで、隣り合うカラーパッチ31が同系色の場合でも、変化量が第一閾値Vth1を上回る測定値を検出しやすくなる。
図10は、X方向に隣り合って配置された第一のカラーパッチ31の反射スペクトルの一例、及び、第二のカラーパッチ31の反射スペクトルの一例を示す図である。図10において、実線は、第一のカラーパッチ31の反射スペクトルを示し、破線は、第二のカラーパッチ31の反射スペクトルを示している。
例えば、図10に示すような第一のカラーパッチ31から、第二のカラーパッチ31に測定領域Rが移動する場合、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λの全てを、例えば、B波長域内に設定した場合、変化量が第一閾値Vth1を上回る測定値は検出されない。これに対して、本実施形態では、図10に示すような2つのカラーパッチ31が隣り合う場合でも、第三測定値の変化量が第一閾値Vth1を上回る変化量となり、測定領域Rがカラーパッチ31の境界31Aを跨いで移動したことを検知できる。
【0050】
さらに、上述したように、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λは、光源171Aの発光スペクトルのピーク波長近傍の波長である。このため、例えば、発光スペクトルで光量が極小値となるボトム波長近傍の波長を用いる場合に比べて、測定値が大きくなる。この場合、測定値の変化幅も大きくなるので、測定領域Rがカラーパッチ31の境界31Aを跨ぐ際の測定値の変化量が大きくなる。
【0051】
一方、測定領域Rが、媒体A上の同じ色の領域を進む場合、第一測定値の変化量ΔV、第二測定値の変化量ΔV、及び第三測定値の変化量ΔVが小さく、第二閾値Vth2未満となる。
例えば、図9に示す例では、第一測定値の変化量、第二測定値の変化量、及び第三測定値の変化量は、カラーパッチ31内を移動している間、第二閾値Vth2を下回り、測定領域Rが同じ色の部分を移動していることを検知できる。
なお、第二閾値Vth2は、測定値の変化量が一定値となったか否かを判断するための基準であり、第一閾値Vth1と同様、ユーザーが任意に設定してもよい。例えば、第二閾値Vth2を下げることで、測定値の変化が収束したか否かを精度よく判定でき、第二閾値Vth2を上げることで、検出信号に含まれるノイズの影響を抑制できる。第二閾値Vth2は、第一閾値Vth1以下の値であり、例えば、第一閾値と第二閾値Vth2とが同じ値であってもよい。
【0052】
ここで、測定領域Rが、カラーパッチ31の境界31Aを跨ぐ期間、つまり、測定領域R内にカラーパッチ31の境界31Aが含まれる期間を第一期間とする。また、測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に入ったタイミングを第一期間の終了タイミングとし、第一期間の終了タイミングから、測定領域Rがカラーパッチ31内を所定距離だけ進む期間を第二期間とする。
ステップS7では、判定部185は、第一期間で、第一測定値の変化量ΔV、第二測定値の変化量ΔV、及び第三測定値の変化量ΔVのうちの少なくとも1つが第一閾値Vth1を上回り、第一期間の後に続く第二期間で、第一測定値、第二測定値、及び第三測定値の各変化量ΔV,ΔV,ΔVが第二閾値Vth2を下回るか否かを判定する。言い換えると、判定部185は、第一測定値の変化量ΔV、第二測定値の変化量ΔV、及び第三測定値の変化量ΔVのうちの少なくとも1つが第一閾値Vth1を上回る第一期間が検出された後、第一測定値、第二測定値、及び第三測定値の各変化量ΔV,ΔV,ΔVが第二閾値Vth2を下回る第二期間が検出されたか否かを判定する。
【0053】
ステップS7でNOと判定される場合、ステップS5に戻る。つまり、制御ユニット15は、判定部185により、測定領域Rの全体がカラーパッチ31内に移動したと判定されるまで、ステップS5からステップS7の処理を継続する。
ステップS7でYESと判定される場合、測定領域Rの全体が、カラーパッチ31内に位置していることを意味する。この場合は、フィルター制御部183は、カラーパッチ31に対する分光測定処理(本測定処理)を実施する(ステップS8)。
具体的には、フィルター制御部183は、V-λデータに基づいて、静電アクチュエーター56に印加する電圧を順次変更する。これにより、例えば可視光域における16バンドの光に対する検出信号が分光器17から制御ユニット15に出力される。測定値算出部184は、ステップS5と同様、これらの検出信号の信号値を平均して測定値とし、分光器17での分光波長と関連付けて記憶部153に記憶する。
【0054】
この後、制御ユニット15は、第j行目に配置されたカラーパッチ群30における全てのカラーパッチ31の分光測定処理が終了したか否かを判定する(ステップS9)。例えば、制御ユニット15は、ステップS8の実施回数をカウントし、カウント数がカラーパッチ群30に配置されるカラーパッチ31の総数Iとなったか否かを判定する。
ステップS9でNOと判定された場合は、ステップS5に戻る。
【0055】
ステップS9でYESと判定された場合、走査制御部181は、変数jに「1」を加算し(ステップS10)、変数jが最大値Jより大きくなったか否かを判定する(ステップS11)。
ステップS11でNOと判定される場合、ステップS4に戻る。
【0056】
ステップS11でYESと判定された場合は、測色部186は、各カラーパッチ31に対して実施されたステップS8の本測定処理の測定結果に基づいて、各カラーパッチ31の色を算出する(ステップS12)。例えば、測色部186は、各カラーパッチ31の反射率スペクトルを算出する。この後、較正部187は、較正用データと、ステップS12により算出された色とに基づいて、記憶部153に記憶された印刷プロファイルデータを更新する(ステップS13)。
【0057】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態のプリンター10は、測定対象である媒体Aからの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、分光波長を変更可能な分光器17を備えたキャリッジ13と、媒体Aに対して、キャリッジ13をX方向に移動させるキャリッジ移動ユニット14と、を備える。また、プリンター10の制御ユニット15は、キャリッジ13をX方向に移動させながら、分光器17で予め設定された第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λに対する測定処理を実施させる。そして、制御ユニット15は、測定処理により得られた第一測定値の変化量ΔV、第二測定値の変化量ΔV、及び第三測定値の変化量ΔV3の少なくとも1つが、第一閾値Vth1を上回り、その後、第一測定値の変化量ΔV、第二測定値の変化量ΔV、第三測定値の変化量ΔV3が共に第二閾値Vth2を下回った場合に、測定領域Rがカラーパッチ内に移動したと判定する。
【0058】
これにより、隣り合うカラーパッチ31が同系色である場合でも、複数の波長に対する測定の変化量に基づいて、測定領域Rの位置判定を精度よく実施できる。つまり、測定領域Rが、カラーパッチ31の境界31Aを越え、測定すべきカラーパッチ31内に移動したか否かを精度よく判定できる。
【0059】
本実施形態では、制御ユニット15は、キャリッジ13をX方向に移動させながら、分光器17で測定する光の分光波長を、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λに交互に切り替える。
このような構成では、1つの分光器17で、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λの測定値の変化を監視することができ、例えば、キャリッジ13に複数の分光器を設ける構成に比べて、装置の簡略化、キャリッジ13の軽量化を図れる。
【0060】
本実施形態のプリンター10は、分光器17は、測定領域Rに対して光を照射する光源171Aを備える。そして、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λは、光源171Aの発光スペクトルのピーク波長を中心とした所定の波長域内の波長である。また、この所定の波長域とは、ピーク光量の半値以上の光量が得られる波長域である。
これにより、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λとして、ボトム波長近傍の波長を用いる場合に比べて、第一測定値、第二測定値、及び第三測定値を大きくできる。また、第一測定値の変化幅、第二測定値の変化幅、及び第三測定値の変化幅も大きくでき、測定領域Rの位置判定を精度よく実施できる。
【0061】
本実施形態では、第一波長λはB波長域に含まれる波長であり、第二波長λはG波長域に含まれる波長であり、第三波長λはR波長域に含まれる波長である。このため、測定領域Rが、隣り合う同系色のカラーパッチ31の間を移動する場合でも、カラーパッチ31の色系統によらず、適正に測定領域Rの位置判定を行うことができる。
【0062】
本実施形態では、分光器17から出力される検出信号は所定のサンプリング周期でサンプリングされ、測定値算出部184は、サンプリングされた所定数の検出信号の信号値を平均して測定値とする。つまり、第一波長λに対する第一測定値、第二波長λに対する第二測定値、及び第三波長λに対する第三測定値は、それぞれ所定周期で測定される。そして、判定部185は、連続する測定値間の差、つまり、n回目に測定される測定値と、n-1回目に測定される測定値の差の絶対値を、測定値の変化量として算出する。
これにより、測定値が算出される毎に、前回の測定値との差の絶対値が算出され、測定値の変化を適正に求めることができる。
【0063】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0064】
[変形例1]
上記実施形態では、分光測定部であるキャリッジ13が、1つの分光器17を備え、分光器17に設けられる波長可変干渉フィルター5のギャップGを、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λに対応する寸法に交互に切り替えた。
これに対して、分光測定部であるキャリッジ13に、複数の分光器17が設けられる構成とし、各分光器17が、媒体A上の同一の測定領域Rに対する分光測定を行う構成としてもよい。例えば、キャリッジ13に第一分光器、第二分光器、及び第三分光器が設けられる構成としてもよい。この場合、1つの分光器17の分光波長を、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λに交互に切り替える代わりに、第一分光器で第一波長λの光を測定し、第二分光器で第二波長λの光を測定し、第三分光器で第三波長λの光を測定することができる。
また、本測定処理では、3つの分光器のいずれかでカラーパッチ31に対する分光測定処理を実施してもよく、3つの分光器の測定結果の平均値を本測定処理の測定値として採用してもよい。
【0065】
さらに、第一分光器から出力される検出信号の微分信号を出力する第一微分回路、第二分光器から出力される検出信号の微分信号を出力する第二微分回路、及び、第三分光器から出力される検出信号の微分信号を出力する第三微分回路を備える構成としてもよい。この場合、各微分信号は、測定値の変化量を示す信号となるので、ステップS5の処理、つまり、判定部185が測定値の変化量を算出する処理を省略することができる。
【0066】
[変形例2]
上記実施形態では、複数の波長として、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λを例示したが、例えば、第一波長λ及び第二波長λのみであってもよく、4波長以上であってもよい。
【0067】
また、第一波長λがB波長域に含まれ、第二波長λがG波長域に含まれ、第三波長λがR波長域に含まれるとしたが、例えば、B波長域とG波長域の間の480nm近傍の波長、及び、G波長域とR波長域の間の580nm近傍の波長を用いてもよい。
【0068】
さらに、第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λとして、各色領域のピーク波長から僅かにずれ波長を用いたが、各色領域のピーク波長であってもよい。例えば、第一波長λが、B波長域のピーク波長、第二波長λが、G波長域のピーク波長、第三波長λが、R波長域のピーク波長であってもよい。第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λは、ボトム波長近傍の波長であってもよい。
【0069】
さらには、上記実施形態では、位置判定用の複数の波長である第一波長λ、第二波長λ、及び第三波長λは、固定値であるが、例えば、媒体Aの種類や、カラーパッチ31によって変更してもよい。
例えば、較正用データに基づいて、同系色のカラーパッチ31が連続する場合、第一波長、第二波長、及び第三波長の少なくともいずれかを、隣り合うカラーパッチ31で反射率が異なる波長に変更してもよい。
【0070】
[変形例3]
上記実施形態では、測定領域Rが円形スポットとなる例を示したが、これに限定されない。例えば、測定領域Rは、矩形状であってもよい。
【0071】
[変形例4]
上記実施形態では、本開示の移動機構として、キャリッジ13を+X方向に移動させるキャリッジ移動ユニット14を例示したがこれに限定されない。
例えば、キャリッジ13を固定し、媒体Aをキャリッジ13に対して移動させる構成としてもよい。この場合、キャリッジ13の移動に伴う波長可変干渉フィルター5の振動を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の透過波長を安定化させることができる。
また、X方向に沿って複数配置されたカラーパッチ31に対して、測定領域RをX方向に沿って走査させる例を示したが、カラーパッチ31に対して測定領域RをY方向に沿って走査させてもよい。この場合、搬送ユニット12によって媒体AをY方向に送ることで、測定領域Rをカラーパッチ31に対して相対移動させることができる。
【0072】
[変形例5]
上記各実施形態において、X方向に複数のカラーパッチ31が隣接配置されたカラーパッチ群30を例示したが、各カラーパッチ31の間に隙間が設けられる構成などとしてもよい。
第一のカラーパッチ31と、第二のカラーパッチ31とが、隙間を介して隣り合い、隙間の幅が、測定領域RのX方向の幅よりも小さい場合では、測定領域Rの全体が、第二のカラーパッチ31に移動するまで、測定領域Rにいずれかのカラーパッチ31の境界31Aが含まれる。つまり、測定領域Rが第一のカラーパッチ31の境界31Aに差し掛かった後、測定領域Rの全体が第二のカラーパッチ31に入るまで、各波長の測定値が変化し続ける。したがって、上記実施形態と同様の処理により、測定領域Rの全体が第二のカラーパッチ31に入ったか否かを判定することができる。
【0073】
[変形例6]
上記実施形態では、キャリッジ13を+X側に移動させる間に、各カラーパッチ31に対する分光測定処理を実施する例を示したが、キャリッジ13を-X側に移動させる間に、各カラーパッチ31に対する分光測定処理を実施してもよい。
【0074】
[変形例7]
上記実施形態において、測定装置の一例としてプリンター10を例示したが、これに限定されない。例えば、印刷部16を備えず、媒体Aに対する測色処理のみを実施する測定装置であってもよい。
【0075】
[変形例8]
上記実施形態では、キャリッジ13が、X方向に等速移動される例を示したが、これに限定されない。
例えば、分光測定部の相対移動速度が一定とならない構成であってもよく、分光測定部を手動で移動させるハンディタイプの測定装置であってもよい。本発明では、このようなハンディタイプの測定装置であっても、複数の波長に対する測定値の変化に基づいた測定領域Rの位置判定を行う。したがって、分光測定部の相対移動速度によらず、測定領域Rがカラーパッチ内に移動したか否かを適正に判定できる。
【0076】
[変形例9]
上記各実施形態では、分光器17が、測定対象からの光を分光する際の分光波長を変更可能な分光素子としての波長可変干渉フィルター5を含む構成を例示したがこれに限定されない。例えば、分光器17が、波長可変干渉フィルター5の代りに、AOTF(音響光学チューナブルフィルター)やLCTF(液晶チューナブルフィルター)やグレーティング等の分光波長を変更可能な各種の分光素子を含む構成としてもよい。
また、上記実施形態では、分光器17が、媒体Aから入射光を分光する、いわゆる後分光タイプの構成を例示したが、光源部171からの照明光を所定の分光波長に分光して媒体Aに照射する、いわゆる前分光タイプの構成としてもよい。
【0077】
[本開示のまとめ]
本開示の第一態様の測定装置は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を一方向に相対移動させる移動機構と、前記測定対象がカラーパッチであり、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させた場合に、前記分光測定部による測定位置が前記カラーパッチ内に移動したか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、前記分光測定部に予め設定された複数の波長に対する測定処理を実施させ、前記測定処理で得られる前記複数の波長のそれぞれに対する測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、前記複数の波長のそれぞれの測定値の変化量が、前記第一閾値以下の第二閾値を下回った場合に、前記測定位置が前記カラーパッチ内に移動したと判定する。
【0078】
これにより、隣り合うカラーパッチが同系色である場合でも、複数の波長に対する測定の変化量に基づいて、測定位置のカラーパッチに対する位置判定を適正に行える。つまり、測定位置が、カラーパッチの境界を越え、測定すべきカラーパッチ上に移動したか否かを精度よく判定できる。
【0079】
本態様の測定装置では、前記制御部は、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、前記分光測定部で測定する光の前記分光波長を、前記複数の波長に交互に切り替えることが好ましい。
このような構成では、分光測定部は、分光波長を切り替えるための分光素子が1つあればよく、簡素な構成で、複数の波長に対する測定値の変化を監視することができる。
【0080】
本態様の測定装置において、前記測定位置に対して光を照射する光源を備え、前記複数の波長は、前記光源の発光スペクトルのピーク波長を中心とした所定の波長域内の波長であり、前記所定の波長域は、前記ピーク波長に対応するピーク光量の半値以上の光量が得られる波長域であることが好ましい。
これにより、複数の波長として、発光スペクトルのボトム波長近傍の波長を用いる場合に比べて、複数の波長のそれぞれに対する測定値を大きくできる。また、測定値の変化幅も大きくなるので、測定値の変化量が第一閾値を超えるか否かの判定を適正に行うことができる。
【0081】
本態様の測定装置では、前記複数の波長は、青色波長域内の第一波長と、緑色波長域内の第二波長と、赤色波長域内の第三波長とを含むことが好ましい。
このため、測定位置が、隣り合う同系色のカラーパッチの間を移動する場合でも、カラーパッチの色系統によらず、変化量が第一閾値を超える測定値が現れる。これにより、測定位置のカラーパッチに対する位置判定を適正に行える。
【0082】
本態様の測定装置において、前記測定値は、所定周期で測定され、前記制御部は、n回目に測定される前記測定値と、n-1回目に測定される前記測定値の差の絶対値を、前記測定値の変化量とすることが好ましい。
これにより、測定値が算出される毎に、前回の測定値との差の絶対値が算出され、測定値の変化を適正に求めることができる。
【0083】
本開示の第二態様に係る測定方法は、測定対象からの入射光のうち所定の分光波長の光を測定し、かつ、前記分光波長を変更可能な分光測定部と、前記測定対象に対して、前記分光測定部を一方向に相対移動させる移動機構と、を備える測定装置の測定方法であって、前記測定対象がカラーパッチである場合に、前記分光測定部を前記一方向に相対移動させながら、予め設定された複数の波長に対する測定処理を前記分光測定部により実施し、前記測定処理で得られる前記複数の波長のそれぞれに対する測定値の変化量のうち少なくとも1つが、第一閾値を上回った後、前記複数の波長のそれぞれの測定値の変化量が、前記第一閾値以下の第二閾値を下回った場合に、前記分光測定部による測定位置が前記カラーパッチ内に移動したと判定する。
これにより、隣り合うカラーパッチが同系色である場合でも、複数の波長に対する測定の変化量に基づいて、測定位置のカラーパッチに対する位置判定を適正に行える。
【符号の説明】
【0084】
10…プリンター(測定装置)、13…キャリッジ(分光測定部)、14…キャリッジ移動ユニット(移動機構)、15…制御ユニット(制御部)、17…分光器、31…カラーパッチ、31A…境界、153…記憶部、154…プロセッサー、171…光源部、171A…光源、172…光学フィルターデバイス、173…受光部、181…走査制御部、182…印刷制御部、183…フィルター制御部、184…測定値算出部、185…判定部、186…測色部、187…較正部、R…測定領域(測定位置)、Vth1…第一閾値、Vth2…第二閾値、ΔV…第一測定値の変化量、ΔV…第二測定値の変化量、ΔV…第三測定値の変化量、λ…第一波長、λB0…青色波長域のピーク波長、λ…第二波長、λG0…緑色波長域のピーク波長、λ…第三波長、λR0…赤色波長域のピーク波長。
図1
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図10