(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 26/04 20060101AFI20231212BHJP
B65H 23/038 20060101ALI20231212BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65H26/04
B65H23/038 Z
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2019234112
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】北原 将史
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-292068(JP,A)
【文献】特開2010-018436(JP,A)
【文献】特開2017-056421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 26/04
B65H 23/038
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻き回された印刷媒体を保持する繰出し軸と、
前記繰出し軸から繰り出された前記印刷媒体を搬送方向に搬送する第1搬送ベルトと、
前記搬送方向と交差する交差方向において前記第1搬送ベルトと並んで配置され、前記繰出し軸から繰り出された前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する第2搬送ベルトと、
前記第1搬送ベルトが巻き掛けられた第1駆動ローラー及び第1従動ローラーと、
前記第2搬送ベルトが巻き掛けられた第2駆動ローラー及び第2従動ローラーと、
前記第1駆動ローラーを駆動させる第1駆動部と、
前記第2駆動ローラーを駆動させる第2駆動部と、
前記繰出し軸から前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトへ搬送される前記印刷媒体が巻き掛けられる巻き掛けローラーと、
前記巻き掛けローラーの軸の一方の端部を支持する第1軸受と、
前記巻き掛けローラーの軸の他方の端部を支持する第2軸受と、
前記印刷媒体が前記巻き掛けローラーを介して前記第1軸受に与える負荷を検出する第1検出部と、
前記印刷媒体が前記巻き掛けローラーを介して前記第2軸受に与える負荷を検出する第2検出部と、
前記第1検出部、及び、前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記第1駆動部、及び、前記第2駆動部を制御する制御部と、を備
え、
前記第1駆動部は、前記第1駆動ローラーを駆動させる第1駆動モーターを含み、
前記第1駆動ローラーの軸方向の一端は第1駆動モーターに連結され、他端は回転可能に支持され、
前記第2従動ローラーは、前記第1駆動ローラーに組付けられて前記第1駆動ローラーに回転自在に支持され、
前記第2駆動部は、前記第2駆動ローラーを駆動させる第2駆動モーターを含み、
前記第2駆動ローラーの軸方向の一端は第2駆動モーターに連結され、他端は回転可能に支持され、
前記第1従動ローラーは、前記第2駆動ローラーに組付けられて前記第2駆動ローラーに回転自在に支持される、印刷装置。
【請求項2】
前記第1検出部は、前記交差方向における前記印刷媒体の一方の端部に作用する張力を、前記第1軸受に与える負荷として検出し、
前記第2検出部は、前記交差方向における前記印刷媒体の他方の端部に作用する張力を、前記第2軸受に与える負荷として検出し、
前記制御部は、前記第1検出部、及び、前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記印刷媒体の搬送速度を所定の速度に保ちつつ、前記交差方向における前記印刷媒体の両端部に作用する張力の差が小さくなるように前記第1駆動部及び前記第2駆動部をPID制御する、
請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1検出部、及び、前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記搬送速度を所定の速度に保ちつつ、前記交差方向における前記印刷媒体の両端部にかかる張力の差が小さくなるように前記第1駆動部及び前記第2駆動部を比例制御する、
請求項
2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記巻き掛けローラーへの前記印刷媒体の巻き掛けを補助する第1補助ローラー、及び、第2補助ローラーを備え、
前記第1補助ローラーは、前記搬送方向において前記巻き掛けローラーの上流に配置され、
前記第2補助ローラーは、前記搬送方向において前記巻き掛けローラーの下流に配置される、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1検出部、及び、前記第2検出部は、ロードセルである、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトで搬送される媒体の蛇行を抑制する技術が知られている。例えば、特許文献1は、幅方向に並ぶ2本のベルトコンベアによって金属製のシートを搬送する搬送装置において、2本のベルトコンベアのそれぞれに対して配置された検出器によってシートの先端部を検出し、先に検出した検出器に対応するベルトコンベアを減速して蛇行を抑制する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、搬送する媒体が変形し易い媒体の場合、蛇行によって伸縮やよれ等が生じ得るため、媒体の端部に基づいて蛇行を検出することが難しく蛇行を抑制できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一態様は、ロール状に巻き回された印刷媒体を保持する繰出し軸と、前記繰出し軸から繰り出された前記印刷媒体を搬送方向に搬送する第1搬送ベルトと、前記搬送方向と交差する交差方向において前記第1搬送ベルトと並んで配置され、前記繰出し軸から繰り出された前記印刷媒体を前記搬送方向に搬送する第2搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトが巻き掛けられた第1駆動ローラー及び第1従動ローラーと、前記第2搬送ベルトが巻き掛けられた第2駆動ローラー及び第2従動ローラーと、前記第1駆動ローラーを駆動させる第1駆動部と、前記第2駆動ローラーを駆動させる第2駆動部と、前記繰出し軸から前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトへ搬送される前記印刷媒体が巻き掛けられる巻き掛けローラーと、前記巻き掛けローラーの軸の一方の端部を支持する第1軸受と、前記巻き掛けローラーの軸の他方の端部を支持する第2軸受と、前記印刷媒体が前記巻き掛けローラーを介して前記第1軸受に与える負荷を検出する第1検出部と、前記印刷媒体が前記巻き掛けローラーを介して前記第2軸受に与える負荷を検出する第2検出部と、前記第1検出部、及び、前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記第1駆動部、及び、前記第2駆動部を制御する制御部と、を備える、印刷装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】第1駆動ローラー、及び、第2従動ローラーの斜視図。
【
図7】フィードバック制御部の構成の一例を示す図。
【
図9】第2実施形態に係る搬送ベルト部を上方から見た平面図。
【
図10】第2実施形態に係る第1駆動ローラー及び第2駆動ローラーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態について説明する。なお、各図においては、理解の便宜のため、実物とは異なる尺度で各部材を図示する。
【0008】
図1-
図5、及び、
図9-
図10では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及びZ軸を図示する。印刷装置1の設置状態において、Z軸は鉛直方向に相当し、X軸およびY軸は水平面に沿った方向である。軸方向を図示した各矢印は、先端側が「+側」であり基端側を「-側」としている。
【0009】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、印刷装置1の概略構成図である。
印刷装置1は、印刷媒体2に対してインクを吐出することにより画像を形成するインクジェット式の印刷装置である。
【0010】
印刷装置1で使用される印刷媒体2は、紙や合成樹脂製のシート等、各種の材料を用いることができ、例えば、普通紙、上質紙、及び光沢紙等のインクジェット記録用専用紙を利用できる。以下の説明では、印刷媒体2として、綿やウール等の天然繊維や、ポリエステル等の合成繊維、あるいはこれらを混紡した繊維で構成された布帛を用いる構成を示す。印刷装置1は、印刷媒体2の印刷面にインクを付着させて印刷媒体2の捺染を行う捺染印刷機として機能する。
【0011】
印刷装置1は、媒体搬送部10や、媒体密着部20、印刷部30、乾燥ユニット40、洗浄ユニット50等を備え、これらの各部はフレーム部60に取り付けられる。また、印刷装置1は、上記の各部を制御する制御装置3を備える。
【0012】
媒体搬送部10は、媒体繰出部11、搬送ローラー12、13、蛇行検出部14、搬送ベルト部15、搬送ローラー16、17、及び、媒体巻取部18を備え、印刷媒体2を搬送方向に搬送する。媒体搬送部10が印刷媒体2を搬送する搬送方向は、図に矢印Fで示す方向であり、+X軸方向に相当する。
【0013】
媒体繰出部11は、印刷媒体2を印刷部30側に繰り出す。媒体繰出部11は、円筒状又は円柱状の繰出し軸211と、繰出し軸211を回転可能に支持する軸受部212とを有する。媒体繰出部11は、制御装置3の制御に従って繰出し軸211を動かす不図示の回転駆動部を有する。繰出し軸211には、帯状の印刷媒体2がロール状に巻き回されたロール体が取り付けられ、繰出し軸211の回転により印刷媒体2が搬送方向に繰り出される。繰出し軸211は、軸受部212に着脱可能である。
【0014】
搬送ローラー12、13は、繰出し軸211から繰り出された印刷媒体2を蛇行検出部14まで中継する。
【0015】
蛇行検出部14は、巻き掛けローラー部141、第1補助ローラー142、第2補助ローラー143、及び、2つのロードセル144を備える。本実施形態において、これら各部は、搬送ベルト部15より上方に配置される。上方は、+Z軸方向に相当する。
【0016】
第1補助ローラー142は、巻き掛けローラー部141の巻き掛けローラー1411への印刷媒体2の巻き掛けを補助する補助ローラーであり、搬送方向において搬送ローラー13より下流であって且つ巻き掛けローラー1411より上流に配置される。また、第1補助ローラー142は、巻き掛けローラー1411より下方に配置される。第1補助ローラー142は、印刷媒体2の印刷面と接した状態で、印刷媒体2の巻き掛けを補助する。下方は、-Z軸方向に相当する。
【0017】
第2補助ローラー143は、巻き掛けローラー部141の巻き掛けローラー1411への印刷媒体2の巻き掛けを補助する補助ローラーであり、搬送方向において巻き掛けローラー1411より下流であって且つ後述する押圧ローラー21より上流に配置される。また、第2補助ローラー143は、巻き掛けローラー1411より下方に配置される。第2補助ローラー143は、印刷媒体2の印刷面と接した状態で、印刷媒体2の巻き掛けを補助する。下方は、-Z軸方向に相当する。
【0018】
図2は、巻き掛けローラー部141の構成を示す図である。
図2に示すように、巻き掛けローラー部141は、巻き掛けローラー1411、第1巻き掛けローラー軸受1412、及び、第2巻き掛けローラー軸受1413を備える。第1巻き掛けローラー軸受1412は、第1軸受の一例に対応し、第2巻き掛けローラー軸受1413は、第2軸受の一例に対応する。
【0019】
巻き掛けローラー1411は、円筒状又は円柱状のローラーであり、媒体繰出部11が繰り出した印刷媒体2が巻き掛けられる。巻き掛けローラー1411は、印刷媒体2の搬送に伴って、回転軸1414を中心に回転する。
【0020】
第1巻き掛けローラー軸受1412、及び、第2巻き掛けローラー軸受1413は、巻き掛けローラー1411を回転可能に支持する。第1巻き掛けローラー軸受1412は、巻き掛けローラー1411の回転軸1414の端部のうち、左方の端部を支持する。左方は、+Y軸方向に相当する。また、第2巻き掛けローラー軸受1413は、巻き掛けローラー1411の回転軸1414の端部のうち、右方の端部を支持する。右方は、-Y軸方向に相当する。
【0021】
第1巻き掛けローラー軸受1412の下部には、第1巻き掛けローラー軸受1412と当接して第1ロードセル1441が配置される。第1ロードセル1441は、第1検出部の一例に対応する。第1ロードセル1441は、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411を下方に押す力を、第1巻き掛けローラー軸受1412に与える負荷L1として測定し、測定した負荷L1を示す第1測定信号SG1を制御装置3に出力する。
【0022】
第2巻き掛けローラー軸受1413の下部には、第2巻き掛けローラー軸受1413と当接して第2ロードセル1442が配置される。第2ロードセル1442は、第2検出部の一例に対応する。第2ロードセル1442は、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411を下方に押す力を、第2巻き掛けローラー軸受1413に与える負荷L2を測定し、測定した負荷L2を示す第2測定信号SG2を制御装置3に出力する。
第1巻き掛けローラー軸受1412に与える負荷L1と、第2巻き掛けローラー軸受1413に与える負荷L2とを区別しない場合、「負荷L」と表現する。
【0023】
巻き掛けローラー1411に巻き掛けられた印刷媒体2に作用する張力が変化すると、巻き掛けローラー1411には、印刷媒体2が下方に押す力が変化する。よって、第1ロードセル1441及び第2ロードセル1442は、印刷媒体2に作用する張力を、印刷媒体2が第1巻き掛けローラー軸受1412及び第2巻き掛けローラー軸受1413に与える負荷Lとして測定できる。印刷媒体2に蛇行が発生すると、搬送方向と交差する交差方向における印刷媒体2の両端部では、搬送量が異なるため、作用する張力に差が生じる。そのため、蛇行検出部14は、第1ロードセル1441、及び、第2ロードセル1442が測定する負荷Lの差によって蛇行を検出できる。なお、交差方向は、Y軸方向に相当する。
【0024】
図1の説明に戻り、搬送ベルト部15は、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152によって印刷媒体2を搬送方向に搬送する。
【0025】
図3は、搬送ベルト部15を上方から見た平面図である。
【0026】
搬送ベルト部15は、第1搬送ベルト151、第2搬送ベルト152、第1駆動ローラー153、第2駆動ローラー156、第1従動ローラー155、及び、第2従動ローラー154を備える。
【0027】
第1搬送ベルト151は、帯状のベルトの両端部が接続された無端形状であり、第1駆動ローラー153の大径部153A、及び、第1従動ローラー155に巻き掛けられている。第1搬送ベルト151は、例えば、第1駆動ローラー153の大径部153Aと第1従動ローラー155との間の部分が床面4に対して平行となるように、所定の張力が作用した状態で保持される。第1搬送ベルト151の表面151Aには、印刷媒体2を粘着させる粘着層が設けられる。
【0028】
第2搬送ベルト152は、第1搬送ベルト151と同様に無端形状であり、第2駆動ローラー156の大径部156A、及び、第2従動ローラー154に巻き掛けられている。第2搬送ベルト152は、例えば、第2駆動ローラー156の大径部156Aと第2従動ローラー154との間の部分が床面4に対して平行となるように、所定の張力が作用した状態で保持される。第2搬送ベルト152の表面152Aには、印刷媒体2を粘着させる粘着層が設けられる。
【0029】
印刷媒体2は、蛇行検出部14を経由して搬送ベルト部15の第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152まで搬送され、粘着層の粘着力により表面151A、152Aに密着し、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152に支持或いは保持される。これにより、伸縮性のある布帛などを印刷媒体2として扱うことができる。
【0030】
第1駆動ローラー153の大径部153A、及び、第1従動ローラー155は、第1搬送ベルト151の内周面に接し、内周面との摩擦により第1搬送ベルト151を駆動する。
【0031】
第1駆動ローラー153は、第1駆動ローラー153を回転駆動させる第1駆動モーター157と連結し、第1駆動モーター157の動力により回転する。第1従動ローラー155は、従動ローラーであり、搬送方向において第1駆動ローラー153と並んで配置される。第1従動ローラー155は、第1駆動ローラー153の回転による第1搬送ベルト151の回転に伴って回転する。
【0032】
第1駆動ローラー153には、円筒状の第2従動ローラー154が組付けられている。
図4は、第1駆動ローラー153、及び、第2従動ローラー154の斜視図である。
【0033】
第1駆動ローラー153は、大径部153Aと、大径部153Aより小径の小径部153Bとを有する。大径部153A及び小径部153Bは、円柱状のローラーである。大径部153Aと小径部153Bとは、軸方向において同心に並んでいる。大径部153Aの軸方向の左端は、駆動軸157Aを介して第1駆動モーター157に連結され、小径部の軸方向の右端は、軸受159によって回転可能に支持される。
【0034】
図5は、
図3のIV-IV断面図である。
図5で示すように、小径部153Bは、軸受機構161を介して第2従動ローラー154が組付けられ、回転自在に第2従動ローラー154を支持する。
図5では、軸受機構161としてボールベアリングを例示しているが、軸受機構161は、ボールベアリングに限定されず、ローラーベアリングやスリーブベアリングなどでもよい。第2従動ローラー154は、外径が大径部153Aと略同一である。第2従動ローラー154は、軸受機構161を介して小径部153Bに組付けられることで、第1駆動ローラー153と供回りすることなく、小径部153Bを回転中心として第2駆動ローラー156の回転に伴って回転する。
【0035】
第2駆動ローラー156の大径部156A、及び、第2従動ローラー154は、第1搬送ベルト151の内周面に接し、内周面との摩擦により第2搬送ベルト152を駆動する。
【0036】
第2駆動ローラー156は、第2駆動ローラー156を回転駆動させる第2駆動モーター158と連結し、第2駆動モーター158の動力により回転する。第2従動ローラー154は、搬送方向において第2駆動ローラー156と並んで配置される。第2従動ローラー154は、第2駆動ローラー156の回転による第2搬送ベルト152の回転に伴って回転する。
【0037】
第2駆動ローラー156には、円筒状の第1従動ローラー155が組付けられている。
【0038】
第2駆動ローラー156は、第1駆動ローラー153と同様に、大径部156Aと、大径部156Aより小径の小径部156Bとを有する。大径部156Aと小径部156Bとは、円柱状のローラーである。大径部156Aと小径部156Bとは、軸方向において同心に並んでいる。大径部156Aの軸方向の右端は、駆動軸158Aを介して第2駆動モーター158に連結され、小径部156Bの軸方向の左端は、軸受160によって回転可能に支持される。
【0039】
小径部156Bは、小径部153Bと同様に、軸受機構161を介して第1従動ローラー155が組付けられ、回転自在に第1従動ローラー155を支持する。第1従動ローラー155は、外径が大径部156Aと略同一である。第1従動ローラー155は、軸受機構161を介して小径部156Bに組付けられることで、第2駆動ローラー156と供回りすることなく、小径部156Bを回転中心として第1駆動ローラー153の回転に伴って回転する。
【0040】
このように、第1駆動ローラー153が、第2従動ローラー154を回転自在に支持し、且つ、第2駆動ローラー156が、第1従動ローラー155を回転自在に支持するため、第1従動ローラー155及び第2従動ローラー154の軸方向の端部を回転自在に支持する部材を、交差方向において第1搬送ベルト151と第2搬送ベルト152との間に配置する必要がない。よって、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152の離間距離をできるだけ小さくして、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152を交差方向において並べて配置できる。
【0041】
図1の説明に戻り、印刷部30は、搬送ベルト部15の上方に位置し、搬送ベルト部15の下方には洗浄ユニット50が配置される。なお、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152は、印刷部30に対向する位置では印刷媒体2とともに搬送方向に移動し、洗浄ユニット50と対向する位置では搬送方向とは反対方向に移動する。
【0042】
印刷部30は、印刷媒体2に画像を形成する。搬送ローラー16は、搬送方向において印刷部30、及び、搬送ベルト部15の下流に位置し、印刷媒体2を第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152の粘着層から剥離させる。印刷媒体2は、搬送ローラー16及び搬送ローラー17を経て、媒体巻取部18に搬送される。
【0043】
媒体巻取部18は、印刷媒体2を巻き取る。媒体巻取部18は、円筒状又は円柱状の巻取り軸181と、巻取り軸181を回転可能に支持する軸受部182とを有する。媒体巻取部18は、巻取り軸181を回転駆動させる不図示の回転駆動部を有する。巻取り軸181の回転により、印刷媒体2は巻取り軸181に巻き取られる。巻取り軸181は軸受部182に対して着脱可能である。
【0044】
媒体密着部20は、搬送方向において印刷部30の上流に位置し、印刷媒体2を第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152に密着させる。媒体密着部20は、押圧ローラー21、押圧ローラー駆動部22、及び、ローラー支持部23を有する。押圧ローラー21は、円筒状又は円柱状に形成され、円周方向に回転可能である。ローラー支持部23は、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152を挟んで押圧ローラー21と対向するように、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152の内周面側に配置される。なお、ローラー支持部23は、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152のそれぞれに対して設けられていてもよい。
【0045】
押圧ローラー駆動部22は、押圧ローラー21を下向きに押圧しながら、押圧ローラー21を搬送方向、及び、搬送方向と反対方向に移動させる。押圧ローラー駆動部22の押圧力により、印刷媒体2は、押圧ローラー21とローラー支持部23との間で第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152に押し付けられる。
【0046】
印刷部30は、印刷媒体2にインクを吐出する吐出ヘッド31、吐出ヘッド31が搭載されるキャリッジ32、及び、キャリッジ32を交差方向に移動させるキャリッジ移動部33を有する。吐出ヘッド31は、複数のノズル列34が形成されたノズルプレート35を有する。例えば、ノズルプレート35には、4つのノズル列34が形成され、ノズル列34ごとに異なる色のインクが吐出され、これにより印刷媒体2にカラー印刷が施される。
【0047】
キャリッジ32は、交差方向であるY軸方向に沿って配置された不図示のガイドレールに支持され、キャリッジ移動部33によって、Y軸方向に往復移動する。
【0048】
搬送ローラー16と搬送ローラー17との間には、乾燥ユニット40が設けられる。乾燥ユニット40は、IRヒーター等の加熱機構を備え、印刷媒体2を加熱することにより、印刷媒体2のインクを乾燥させる。
【0049】
洗浄ユニット50は、洗浄部51、押圧部52、及び、移動部53を有する。洗浄部51は、洗浄液を貯留する洗浄槽54、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152に当接して回転する第1洗浄ブラシ55、第2洗浄ブラシ56、及び、ブレード57を備える。第1洗浄ブラシ55及び第2洗浄ブラシ56は、第1搬送ベルト151の表面151A及び第2搬送ベルト152の表面152Aに当接するブラシであり、
図7に示すブラシ駆動モーター90の動力により回転して、洗浄液により表面151A、152Aを洗浄する。ブレード57は、例えば、シリコンゴムなどの可撓性の材料で形成され、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152の回転方向において第2洗浄ブラシ56の下流に配置される。ブレード57は、表面151A、152Aから洗浄液を掻き落とし、表面151A、152Aを、印刷媒体2が密着可能な状態に整える。移動部58は、洗浄ユニット50を床面4に対して移動可能に支持する。押圧部59は、例えば、エアーシリンダー591とボールブッシュ592とで構成された昇降装置であり、洗浄部51の高さの調整および保持を可能とする。
【0050】
図6は、印刷装置1の制御系を示すブロック図である。
印刷装置1は、入力装置70、及び、表示装置80を備え、これらは制御装置3に接続される。入力装置70は、印刷装置1を操作するオペレーターが印刷条件等を入力する装置であり、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスである。入力装置70は、デスクトップ型あるいはラップトップ型のパーソナルコンピューター、タブレット型端末、携帯型端末等であってもよく、印刷装置1と別体で設けられていてもよい。入力装置70は、オペレーターが入力した情報を制御装置3に出力する。表示装置80は、液晶表示パネル等の表示画面を備え、制御装置3の制御に従って各種情報を表示する。
【0051】
制御装置3は、インターフェイス部300、制御部310、駆動回路320、及び、記憶部330を備える。制御部310は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを備え、プロセッサーによりプログラムを実行して、ソフトウェアとハードウェアとの協働により印刷装置1の各部を制御する。制御部310は、記憶部330が記憶する制御プログラム330Aを読み出して実行することにより、フィードバック制御部3100として機能する。
【0052】
インターフェイス部300は、入力装置70、及び、表示装置80に接続され、これら各装置との間でデータを送受信する。
【0053】
駆動回路320は、媒体搬送部10、キャリッジ移動部33、吐出ヘッド31、及び、ブラシ駆動モーター90に接続される。
【0054】
記憶部330は、半導体記憶デバイスや磁気的記録装置を備え、制御部310のプロセッサーにより実行される制御プログラム330Aや、印刷装置1の設定に係る設定データ330B、その他、制御部310により処理されるデータを記憶する。また、記憶部330は、搬送速度データ330Cを記憶する。搬送速度データ330Cは、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152による印刷媒体2の搬送速度を示すデータであり、ユーザー等により予め設定された搬送速度を示す。搬送速度データ330Cが示す搬送速度は、適宜変更可能である。搬送速度データ330Cが示す搬送速度は、所定の速度に相当する。
【0055】
制御装置3は、駆動回路320を制御して、駆動回路320から制御信号を出力させることにより、媒体搬送部10、キャリッジ移動部33、吐出ヘッド31、及び、ブラシ駆動モーター90を動作させる。
【0056】
制御装置3は、媒体搬送部10が備える各モーターを駆動し、印刷媒体2を搬送方向に移動させる。制御装置3は、媒体搬送部10が備える第1駆動部110の第1駆動モーター157、及び、媒体搬送部10が備える第2駆動部120の第2駆動モーター158を駆動し、印刷媒体2を搬送方向に移動させる。第1駆動部110は、第1駆動モーター157の他、第1駆動モーター157の駆動軸157A等の動力伝達機構を含む。第2駆動部120は、第2駆動モーター158の他、第2駆動モーター158の駆動軸158A等の動力伝達機構を含む。
【0057】
制御装置3は、キャリッジ移動部33が備えるモーターを駆動して、キャリッジ32をY軸方向に移動させる。制御装置3は、吐出ヘッド31を駆動して、印刷媒体2に向かってインクを吐出させる。制御装置3は、キャリッジ移動部33及び吐出ヘッド31を制御して、吐出ヘッド31からインクを吐出させながらキャリッジ32を移動させる主走査と、媒体搬送部10を制御して印刷媒体2を搬送方向に搬送させる副走査と、を繰り返す。この制御により、印刷媒体2に画像が形成される。
【0058】
制御装置3は、ブラシ駆動モーター90を駆動して第1洗浄ブラシ55及び第2洗浄ブラシ56を回転させる。なお、図示を省略した印刷装置1の各部が制御装置3に接続され、これらの各部を制御装置3が制御する構成としてもよい。
【0059】
制御装置3には、その他の各種センサーを含む検出器群100が接続され、制御装置3は、検出器群100の検出信号を取得して、駆動回路320による制御に反映させる。本実施形態では、制御装置3は、検出器群100に含まれる第1ロードセル1441から第1測定信号SG1を取得し、また、検出器群100に含まれる第2ロードセル1442から第2測定信号SG2を取得する。そして、制御装置3は、取得した第1測定信号SG1、及び、第2測定信号SG2を駆動回路320によって第1駆動モーター157と第2駆動モーター158との駆動に反映させる。
【0060】
上述した通り、制御部310は、フィードバック制御部3100として機能する。フィードバック制御部3100は、第1駆動モーター157、及び、第2駆動モーター158をフィードバック制御する。また、フィードバック制御部3100は、フィードバック制御により得られた第1駆動モーター157の回転速度を示す第1指示信号SG3、及び、フィードバック制御により得られた第2駆動モーター158の回転速度を示す第2指示信号SG4を、駆動回路320に出力する。駆動回路320は、第1指示信号SG3が入力されると、第1指示信号が示す回転速度で第1駆動モーター157が回転するように、第1駆動モーター157に制御信号を出力する。また、駆動回路320は、第2指示信号SG4が入力されると、第2指示信号SG4が示す回転速度で第2駆動モーター158が回転するように、第2駆動モーター158に制御信号を出力する。
【0061】
図7は、フィードバック制御部3100の構成の一例を示す図である。
図7に示すフィードバック制御は、PID(Proportional-Integral-Differential)制御が用いられる。
【0062】
フィードバック制御部3100は、制御周期ごとに、第1駆動モーター157の回転速度、及び、第2駆動モーター158の回転速度を算出する。そして、フィードバック制御部3100は、制御周期ごとに、第1駆動モーター157、及び、第2駆動モーター158の回転速度をそれぞれ更新する。
図7において「t」は、制御周期の実行タイミングを示す。
【0063】
フィードバック制御部3100は、第1減算器410、比例器420、積分器430、微分器440、第1加算器450、第2減算器460、及び、第2加算器470を有する。
【0064】
第1減算器410は、第1ロードセル1441が出力した第1測定信号SG1が示す負荷L1(t)から、第2ロードセル1442が出力した第2測定信号SG2が示す負荷L2(t)を減じた差分E(t)を算出する。なお、第1減算器410は、差分E(t)の目標値をゼロとしているため、算出する差分E(t)が、目標値とフィードバック値との偏差に相当する。第1減算器410は、算出した差分E(t)を、比例器420、積分器430、及び、微分器440に出力する。
【0065】
比例器420は、入力された差分E(t)から比例成分U1(t)を算出し、算出した比例成分U1(t)を第1加算器450に出力する。積分器430は、入力された差分E(t)から積分成分U2(t)を算出し、算出した積分成分U2(t)を第1加算器450に出力する。また、微分器440は、入力された差分E(t)から微分成分U3(t)を算出し、算出した微分成分U3(t)を第1加算器450に出力する。
【0066】
第1加算器450は、比例器420、積分器430、及び、微分器440の出力を加算し、加算値U(t)を第2減算器460及び第2加算器470に出力する。第2減算器460及び第2加算器470に入力される加算値U(t)は、単位が回転速度を示す。フィードバック制御部3100は、第2減算器460及び第2加算器470に入力される加算値U(t)の物理単位が回転速度となるように、第2減算器460及び第2加算器470の前段において、ロードセル144が測定する負荷Lの物理単位を回転速度に換算する。
【0067】
第2減算器460には、記憶部330が記憶する搬送速度データ330Cが示す搬送速度に対応する回転速度が入力される。以下の説明において、搬送速度データ330Cが示す搬送速度に対応する回転速度を、「目標回転速度」という。第2減算器460は、目標回転速度から、第1加算器450が出力した加算値U(t)を減じた回転速度を算出する。そして、フィードバック制御部3100は、第2減算器460が算出した回転速度を示す第1指示信号SG3を駆動回路320に出力する。これにより、第1駆動モーター157は、第2減算器460が算出した回転速度で回転する。
【0068】
第2加算器470は、目標回転速度が入力される。第2加算器470は、目標回転速度から、第1加算器450が出力した加算値U(t)を加えた回転速度を算出する。そして、フィードバック制御部3100は、第2加算器470が算出した回転速度を示す第2指示信号SG4を駆動回路320に出力する。これにより、第2駆動モーター158は、第2加算器470が算出した回転速度で回転する。
【0069】
なお、
図7に示すフィードバック制御部3100の構成は、第1減算器410が、第1ロードセル1441が出力した第1測定信号SG1が示す負荷L1から、第2ロードセル1442が出力した第2測定信号SG2が示す負荷L2を減じた差分E(t)を算出する構成である。しかしながら、フィードバック制御部3100は、第2ロードセル1442が出力した第2測定信号SG2が示す負荷L2から、第1ロードセル1441が出力した第1測定信号SG1が示す負荷L1を減じた差分E(t)を算出する構成としてもよい。この場合、第2減算器460が算出する回転速度は、第2駆動モーター158の回転速度となり、第2加算器470が算出する回転速度は、第1駆動モーター157の回転速度となる。
【0070】
また、
図7に示すフィードバック制御部3100の構成は、PID制御を用いた場合を例にしているが、比例制御を用いた構成としてもよい。PID制御の場合、比例制御、微分制御、及び、積分制御のそれぞれのゲインを調整することになるが、比例制御の場合、調整するゲインが一種でよく、簡易にフィードバック制御を行える。
【0071】
次に、制御装置3の動作について説明する。
図8は、制御装置3の動作を示すフローチャートである。特に、
図8は、フィードバック制御部3100の動作を示す。
【0072】
フィードバック制御部3100は、制御周期の実行タイミングが到来するたびに、
図8に示すフローチャートの動作を実行する。
【0073】
フィードバック制御部3100は、第1ロードセル1441が出力した第1測定信号SG1が示す負荷L1から、第2ロードセル1442が出力した第2測定信号SG2が示す負荷L2を減じた差分E(t)を算出する(ステップS1)。
【0074】
フィードバック制御部3100は、ステップS1で算出した差分E(t)に基づいて、第1駆動モーター157、及び、第2駆動モーター158のそれぞれの回転速度を算出する(ステップS2)。
【0075】
次いで、フィードバック制御部3100は、ステップS2で算出した回転速度に基づいて、第1指示信号SG3及び第2指示信号SG4を生成して、生成した第1指示信号SG3及び第2指示信号SG4を駆動回路320に出力する(ステップS3)。
【0076】
フィードバック制御部3100の動作により以下の効果を奏する。
例えば、印刷媒体2が右方の端部が左方の端部より搬送方向において先行して搬送されていた、すなわち印刷媒体2が搬送方向を基準に右方に蛇行していたとする。この場合、印刷媒体2の右方の端部が左方の端部に比べ搬送量が大きくなるため、右方の端部に作用する張力が左方の端部に作用する張力より大きくなる。これにより、巻き掛けローラー部141では、印刷媒体2が第2巻き掛けローラー軸受1413を下方に押す力が大きくなり、第2ロードセル1442が検出する負荷L2が増加する。一方、左方の端部は右方の端部に比べ搬送量が小さくなるため、弛みが生じる。これにより、巻き掛けローラー部141では、印刷媒体2が第1巻き掛けローラー軸受1412を下方に押す力が小さくなり、第1ロードセル1441が検出する負荷L2が減少する。フィードバック制御部3100は、フィードバック制御を行うことで、第2駆動モーター158については目標回転速度から減速させ、第1駆動モーター157については目標回転速度から加速させる。これにより、搬送量が小さい左方の端部の搬送量を大きくでき、一方で搬送量が大きい右方の端部の搬送量を小さくでき、右方への蛇行を解消できる。また、フィードバック制御では、目標回転速度を基準に加減速が行われるため、印刷媒体2全体の平均搬送速度はは目標回転速度に対応する搬送速度に保つことができる。
この例では、右方に蛇行している場合であるが、左方に蛇行している場合も同様に搬送量を異なせることで蛇行を解消でき、且つ、印刷媒体2全体の平均搬送速度を目標回転速度に対応する搬送速度に保つことができる。
【0077】
以上、説明したように、印刷装置1は、ロール状に巻き回された印刷媒体2を保持する繰出し軸211と、繰出し軸211から繰り出された印刷媒体2を搬送方向に搬送する第1搬送ベルト151と、交差方向において第1搬送ベルト151と並んで配置され、繰出し軸211から繰り出された印刷媒体2を搬送方向に搬送する第2搬送ベルト152と、を備える。また、印刷装置1は、第1搬送ベルト151が巻き掛けられた第1駆動ローラー153及び第1従動ローラー155と、第2搬送ベルト152が巻き掛けられた第2駆動ローラー156及び第2従動ローラー154と、第1駆動ローラー153を駆動させる第1駆動部110と、第2駆動ローラー156を駆動させる第2駆動部120と、を備える。また、印刷装置1は、搬送方向において第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152より上流に設けられ、繰出し軸211から第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152へ搬送される印刷媒体2が巻き掛けられる巻き掛けローラー1411と、巻き掛けローラー1411の回転軸1414の左方の端部を支持する第1巻き掛けローラー軸受1412と、巻き掛けローラー1411の回転軸1414の右方の端部を支持する第2巻き掛けローラー軸受1413と、を備える。また、印刷装置1は、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411を介して第1巻き掛けローラー軸受1412に与える負荷L1を検出する第1ロードセル1441と、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411を介して第2巻き掛けローラー軸受1412に与える負荷L2を検出する第2ロードセル1442と、を備える。また、印刷装置1は、第1ロードセル1441、及び、第2ロードセル1442の検出結果に基づいて、第1駆動部110、及び、第2駆動部120を制御する制御部310と、を備える。
【0078】
この構成によれば、印刷媒体2の蛇行によって生じる、印刷媒体2が与える第1巻き掛けローラー軸受1412と第2巻き掛けローラー軸受1413との負荷の差に基づいて、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152の駆動制御を行うことができるようになり、印刷媒体2の蛇行を抑制できる。特に、印刷媒体2の端部を検出しなくても蛇行を抑制できるため、変形が生じ易い印刷媒体2でも蛇行を抑制できる。
【0079】
第1駆動ローラー153の軸方向の一端は第1駆動モーター157に連結され、他端は回転可能に支持される。第2従動ローラー154は、第1駆動ローラー153に組付けられ、第1駆動ローラー153に回転自在に支持される。第2駆動ローラー156の軸方向の一端は第2駆動モーター158に連結され、他端は回転可能に支持される。第1従動ローラー155は、第2駆動ローラー156に組付けられ、第2駆動ローラー156に回転自在に支持される。
【0080】
この構成によれば、第1駆動ローラー153が、第2従動ローラー154を回転自在に支持し、且つ、第2駆動ローラー156が、第1従動ローラー155を回転自在に支持するため、第1従動ローラー155、及び、第2従動ローラー154の軸方向の端部を回転自在に支持する部材を、交差方向において第1搬送ベルト151と第2搬送ベルト152との間に配置する必要がない。よって、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152の離間距離をできるだけ小さくして、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152を交差方向において並べて配置できる。よって、印刷装置1は、印刷媒体2の印刷面を一様にした状態で、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152によって印刷媒体2を搬送でき、印刷品質を高めることができる。
【0081】
第1ロードセル1441は、交差方向における印刷媒体2の左方の端部に作用する張力を、第1巻き掛けローラー軸受1412に与える負荷L1として検出する。第2ロードセル1442は、交差方向における印刷媒体2の右方の端部に作用する張力を、第2巻き掛けローラー軸受1413に与える負荷L2として検出する。制御部310は、第1ロードセル1441、及び、第2ロードセル1442の検出結果に基づいて、印刷媒体2の搬送速度を所定の速度に保ちつつ、交差方向における印刷媒体の両端部に作用する張力の差が小さくなるように第1駆動部110及び第2駆動部120をPID制御する。
【0082】
この構成によれば、印刷媒体2の搬送速度を所定の速度に保ちつつ、印刷媒体2の蛇行を抑制できる。また、PID制御によって蛇行を抑制するため定常偏差を減らし且つ応答性良く蛇行を抑制できる。そのため、印刷装置1は、蛇行を精度良く且つ速やかに抑制できる。
【0083】
制御部310は、第1ロードセル1441、及び、第2ロードセル1442の検出結果に基づいて、搬送速度を所定の速度に保ちつつ、交差方向における印刷媒体2の両端部にかかる張力の差が小さくなるように第1駆動部110及び第2駆動部120を比例制御する。
【0084】
この構成によれば、調整するゲインが一種でよいため、印刷媒体2の搬送速度を所定の速度に保ちつつ印刷媒体2の蛇行を抑制する制御を、簡易に行える。
【0085】
印刷装置1は、巻き掛けローラー1411への印刷媒体2の巻き掛けを補助する第1補助ローラー142、及び、第2補助ローラー143を備える。第1補助ローラー142は、搬送方向において巻き掛けローラー1411の上流に配置される。第2補助ローラー143は、搬送方向において巻き掛けローラー1411の下流に配置される。
【0086】
この構成によれば、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411に対して負荷Lを与えることができるように、印刷媒体2を巻き掛けローラー1411に巻き掛けることができる。そのため、第1ロードセル1441、及び、第2ロードセル1442は、印刷媒体2が第1巻き掛けローラー軸受1412及び第2巻き掛けローラー軸受1413に与える負荷Lを確実に測定できる。
【0087】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態の印刷装置1は、第1実施形態と比較して搬送ベルト部15の構成が異なる。
【0088】
図9は、第2実施形態の搬送ベルト部15を上方から見た平面図である。
図10は、第2実施形態の第1駆動ローラー153、及び、第2駆動ローラー156の斜視図である。
【0089】
第2実施形態の搬送ベルト部15は、第1搬送ベルト151、第2搬送ベルト152、第1駆動ローラー153、第2駆動ローラー156、第1従動ローラー155、第2従動ローラー154、及び、板材162を備える。
【0090】
図9及び
図10に示すように、第1駆動ローラー153、及び、第2駆動ローラー156は、円柱状又は円筒状のローラーであり、第1実施形態の第1駆動ローラー153、及び、第2駆動ローラー156と比較して、軸方向において外径が異ならないように構成される。
【0091】
第1搬送ベルト151は、第1駆動ローラー153、及び、第1従動ローラー155に巻き掛けられている。第2搬送ベルト152は、第2駆動ローラー156、及び、第2従動ローラー154に巻き掛けられている。
【0092】
第1駆動ローラー153は、第1駆動モーター157と連結し、第1駆動モーター157の動力により回転する。第1従動ローラー155は、搬送方向において第1駆動ローラー153と並んで配置される。第1駆動ローラー153の軸方向の左端は、駆動軸157Aを介して第1駆動モーター157と連結する。また、第1駆動ローラー153の軸方向の右端は、軸受163によって回転可能に支持される。
【0093】
第2駆動ローラー156は、交差方向において第1駆動ローラー153と並んで配置され、第2駆動モーター158と連結し、第2駆動モーター158の動力により回転する。第2従動ローラー154は、搬送方向において第2駆動ローラー156と並んで配置される。第2駆動ローラー156の軸方向の右端は、駆動軸157Aを介して第2駆動モーター158と連結する。また、第2駆動ローラー156の軸方向の左端は、軸受164によって回転可能に支持される。
【0094】
板材162は、交差方向において第1搬送ベルト151と第2搬送ベルト152との並び、且つ、板材の表面162Aと、第1搬送ベルト151の表面151Aと、第2搬送ベルト152の表面152Aとが面一になるように配置される。これにより、印刷装置1は、印刷媒体2の印刷面を一様にした状態で、第1搬送ベルト151、及び、第2搬送ベルト152によって印刷媒体2を搬送できる。
【0095】
以上説明したように、第2実施形態では、第1駆動ローラー153、及び、第2駆動ローラー156は、交差方向において並んで配置される。第1駆動ローラー153の軸方向の一端は、第1駆動モーター157に連結され、他端は回転可能に支持される。第2駆動ローラー156の軸方向の一端は、第2駆動モーター158に連結され、他端は回転可能に支持される。
【0096】
第1実施形態は、第1駆動ローラー153と第2駆動ローラー156とが交差方向に並んで配置されていない。そのため、第1実施形態は、印刷媒体2を支持或いは保持する第1搬送ベルト151の部分が、第1駆動ローラー153に巻き取られる部分となり、印刷媒体2を支持する或いは保持する第2搬送ベルト152の部分が、第2駆動ローラー156から繰り出される部分となる。第2実施形態では、印刷媒体2を支持或いは保持する第1搬送ベルト151の部分と第2搬送ベルト152の部分とを、ベルトを駆動するローラーに巻き取られる部分へと揃えることができる。よって、印刷媒体2を支持或いは保持する部分の張力を第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152において第1実施形態より確実に揃えることができ、印刷媒体2の印刷面を一様にして搬送できる。よって、第2実施形態は、変形し易い印刷媒体2でも蛇行を抑制でき且つ印刷品質が高めることができる。
【0097】
上記各実施形態は、本発明を適用した一具体例を示したものに過ぎない。本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0098】
例えば、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152は、印刷媒体2を密着させる粘着層を備える構成として説明したが、本発明はこれに限定されず、印刷媒体2を静電気で第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152に吸着させる静電吸着式のベルトであってもよい。
【0099】
また、上述した各実施形態では、蛇行検出部14が搬送ベルト部15より上方に配置される構成を例示したが、搬送ベルト部15の第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152より下方に且つ搬送方向上流に配置されてもよい。この場合、巻き掛けローラー部141は、第1補助ローラー142、及び、第2補助ローラー143より下方に配置される。また、この場合、第1ロードセル1441は、第1巻き掛けローラー軸受1412の上部に当接して配置され、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411を押し上げる力を負荷L1として検出する。また、この場合、第2ロードセル1442は、第2巻き掛けローラー軸受1413の上部に当接して配置され、印刷媒体2が巻き掛けローラー1411を押し上げる力を負荷L2として検出する。
【0100】
また、上記各実施形態では、吐出ヘッド31として、可動のキャリッジ32に搭載されて±Y軸方向に移動しながらインクを吐出するシリアルヘッド式を例示したが、印刷媒体2の幅を含むY軸方向に延在し、固定して配列されたラインヘッド式であってもよい。
【0101】
また、印刷装置1において、無端形状の第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152を搬送する機構におけるローラーやモーターの数や配置は任意であり、第1搬送ベルト151及び第2搬送ベルト152や印刷媒体2のサイズに合わせて適宜に変更可能である。
【0102】
図6に示した機能ブロックのうち少なくとも一部は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現される構成としてもよい。
図8のフローチャートの処理単位は、制御装置3の動作を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであって、図示した処理単位の分割の仕方や名称によって実施形態が制限されることはない。
【符号の説明】
【0103】
1…印刷装置、2…印刷媒体、3…制御装置、10…媒体搬送部、31…吐出ヘッド、33…キャリッジ移動部、70…入力装置、80…表示装置、90…ブラシ駆動モーター、100…検出器群、110…第1駆動部、120…第2駆動部、142…第1補助ローラー、143…第2補助ローラー、144…ロードセル、151…第1搬送ベルト、152…第2搬送ベルト、153…第1駆動ローラー、154…第2従動ローラー、155…第1従動ローラー、156…第2駆動ローラー、157…第1駆動モーター、158…第2駆動モーター、211…繰出し軸、300…インターフェイス部、310…制御部、320…駆動回路、330…記憶部、330A…制御プログラム、330B…設定データ、330C…搬送速度データ、1411…巻き掛けローラー、1412…第1巻き掛けローラー軸受(第1軸受)、1413…第2巻き掛けローラー軸受(第2軸受)、1441…第1ロードセル(第1検出部)、1442…第2ロードセル(第2検出部)、3100…フィードバック制御部、L、L1、L2…負荷、SG1…第1測定信号、SG2…第2測定信号、SG3…第1指示信号、SG4…第2指示信号。