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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231212BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231212BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231212BHJP
   B65H 5/04 20060101ALI20231212BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/21
B41J2/01 451
B41J2/01 307
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B65H5/04
B41J19/18 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019234970
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102316
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】布川 陽平
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004707(JP,A)
【文献】特開2005-254806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 2/21
B41M 5/00
B65H 5/04
B41J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色を使用して媒体に第1画像を形成する第1形成部と、前記第1色とは異なる第2色を使用して前記媒体に第2画像を形成する第2形成部とを備える画像形成ユニットと、
前記媒体が載置される載置部と、
前記載置部を画像形成を行う前に第1方向に移動させ、画像形成を行うときに該第1方向とは逆の第2方向に移動させる移動部と、
前記移動部による前記載置部の移動及び前記画像形成ユニットによる画像形成を制御する制御部と、を備え、
前記移動部は、
前記媒体が前記載置部に載置される第1位置と、
前記画像形成ユニットに対して前記第2方向において前記第1位置と反対側に位置して前記載置部の移動の基準位置となる第2位置と、
に前記載置部を移動可能であり、
前記制御部は、
前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域に移動させ且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記第2方向へ前記載置部を移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させる第1モードと、
前記第1画像を形成させた後、前記載置部を前記第2位置まで移動させ、前記移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第2画像を形成させる第2モードと、
を切り替えて実行する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記第1モードにおいて、前記媒体へ前記第1画像を形成させた後、前記移動方向を変更することなしに、前記媒体へ前記第2画像を形成させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置において、
前記第1画像は、前記第1色としての白色により形成され、
前記第2画像は、前記白色と前記第2色としての前記白色以外の色とにより形成され、
前記第2形成部は、前記第2方向において前記第1形成部よりも下流側に位置する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記画像形成ユニットは、前記第1方向及び前記第2方向と交差する走査方向に移動可能とされ、
前記走査方向における前記第2形成部の一方側及び他方側には、前記第1形成部が位置する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔を測定する測定部と、
前記測定部で測定された値が設定値となるように前記画像形成ユニット又は前記載置部を移動させることで、前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔を調整する調整部と、
が設けられ、
前記制御部は、前記第1位置と前記第2位置との間で前記調整部を動作させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
媒体に第1画像を形成する第1形成部及び該媒体に第2画像を形成する第2形成部を備える画像形成ユニットと、
前記媒体が載置される載置部と、
前記載置部を、画像形成を行う前に第1方向に移動させ、画像形成を行うときに該第1方向とは逆の第2方向に移動させる移動部と、を備え、
前記移動部は、前記媒体が前記載置部に載置される第1位置と、前記画像形成ユニットに対して前記第2方向において前記第1位置と反対側に位置して前記載置部の移動の基準位置となる第2位置と、に前記載置部を移動可能である印刷装置における印刷方法であって、
前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を、前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域を越えて移動させ且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記第2方向へ移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させることと
前記載置部を前記第1位置から前記第2位置まで移動させた後で、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させること、
を切り替えて実行する
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に印刷を行う印刷装置、及び媒体に印刷を行う場合の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の液体吐出装置では、媒体が載るトレイを印刷開始位置まで移動させた後、下地層としての第1画像を白色インクで形成することにより第1画像形成動作を実行し、再びトレイを印刷開始位置まで移動させた後、第2画像をカラーインクで形成することにより第2画像形成動作を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-209797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液体吐出装置において、印刷の画像品質を高めるためには、媒体が載置される載置部の印刷開始時の位置を校正位置として校正を行い、第1画像の位置と第2画像の位置とを精度よく合わせる必要がある。
しかし、印刷の画像品質が要求されていない場合に、毎回、載置部を校正位置に移動させてしまうと、1回の印刷に要する時間が長くなり生産性が低くなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る印刷装置は、第1色を使用して媒体に第1画像を形成する第1形成部と、前記第1色とは異なる第2色を使用して前記媒体に第2画像を形成する第2形成部とを備える画像形成ユニットと、前記媒体が載置される載置部と、前記載置部を画像形成を行う前に第1方向に移動させ、画像形成を行うときに該第1方向とは逆の第2方向に移動させる移動部と、前記移動部による前記載置部の移動及び前記画像形成ユニットによる画像形成を制御する制御部と、を備え、前記移動部は、前記媒体が前記載置部に載置される第1位置と、前記画像形成ユニットに対して前記第2方向において前記第1位置と反対側に位置して前記載置部の移動の基準位置となる第2位置と、に前記載置部を移動可能であり、前記制御部は、前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域に移動させ且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記第2方向へ前記載置部を移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させる第1モードと、前記第1画像を形成させた後、前記載置部を前記第2位置まで移動させ、前記移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第2画像を形成させる第2モードと、を切り替えて実行することを特徴とする。
ここで、「前記移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、…前記媒体へ前記第1画像及び第2画像を形成させる第1モード」において「第1画像及び第2画像を形成させる」とは、前記第1画像を形成させた後、即ち、(i)前記載置部を前記第2方向へ移動させながら前記第1画像を形成し、その後に前記載置部を第1方向に移動させ、前記「載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更」を行い、前記第2方向へ前記載置部を移動させながら前記媒体へ前記第2画像を形成させることと、(ii)前記媒体へ前記第1画像を形成させた後、前記移動方向を変更することなしに、前記媒体へ前記第2画像を形成させることと、の両方を含む。
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明に係る印刷方法は、媒体に第1画像を形成する第1形成部及び該媒体に第2画像を形成する第2形成部を備える画像形成ユニットと、前記媒体が載置される載置部と、前記載置部を、画像形成を行う前に第1方向に移動させ、画像形成を行うときに該第1方向とは逆の第2方向に移動させる移動部と、を備え、前記移動部は、前記媒体が前記載置部に載置される第1位置と、前記画像形成ユニットに対して前記第2方向において前記第1位置と反対側に位置して前記載置部の移動の基準位置となる第2位置と、に前記載置部を移動可能である印刷装置における印刷方法であって、前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を、前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域を越えて移動させ且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記第2方向へ移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させる、或いは、前記載置部を前記第1位置から前記第2位置まで移動させた後で、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させることを特徴とする。
【0007】
なお、本発明に係る印刷装置及び印刷方法において、前記第2モードの印刷には、前記第2位置から印刷を開始して前記第1画像を形成した後で、前記載置部を再び前記第2位置に移動させて、前記第2画像を形成する印刷が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る印刷装置を表す概略斜視図。
図2】実施形態1に係る印刷装置における各部の位置を表す説明図。
図3】実施形態1に係る印刷装置のブロック図。
図4】実施形態1に係る印刷装置の主要部の概略平面図。
図5】実施形態1に係る印刷装置における媒体と印刷ヘッドとの間隔を表す概略側面図。
図6】実施形態1に係る印刷装置のキャリッジを上下させる移動機構部を表す概略側面図。
図7】実施形態1に係る印刷装置の各部の動作状態を表すタイミングチャート。
図8】実施形態1に係る印刷装置において実行される印刷の流れを表すフローチャート。
図9】実施形態1に係る印刷装置のキャリッジと媒体との間隔を調整する状態を表す概略図。
図10】実施形態1に係る印刷装置において媒体に第1画像及び第2画像が印刷される状態を表す概略図。
図11】実施形態2に係る印刷装置のヘッドの配置を表す概略平面図。
図12】実施形態2の変形例に係る印刷装置のヘッドの配置を表す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様に係る印刷装置は、第1色を使用して媒体に第1画像を形成する第1形成部と、前記第1色とは異なる第2色を使用して前記媒体に第2画像を形成する第2形成部とを備える画像形成ユニットと、前記媒体が載置される載置部と、前記載置部を画像形成を行う前に第1方向に移動させ、画像形成を行うときに該第1方向とは逆の第2方向に移動させる移動部と、前記移動部による前記載置部の移動及び前記画像形成ユニットによる画像形成を制御する制御部と、を備え、前記移動部は、前記媒体が前記載置部に載置される第1位置と、前記画像形成ユニットに対して前記第2方向において前記第1位置と反対側に位置して前記載置部の移動の基準位置となる第2位置と、に前記載置部を移動可能であり、前記制御部は、前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域に移動させ且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記第2方向へ前記載置部を移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させる第1モードと、前記第1画像を形成させた後、前記載置部を前記第2位置まで移動させ、前記移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第2画像を形成させる第2モードと、を切り替えて実行することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域まで移動させ、且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記載置部を前記第2方向へ移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させる。これにより、前記載置部を前記第2位置まで移動させないので、その移動のための時間が不要となり、印刷の生産性を上げることができる。更に、前記載置部を、前記第1方向への移動から前記第2方向に変更するまでに移動させる移動距離は、前記媒体における画像形成の開始位置に基づいて定まるので、前記第1モードにおける前記移動距離を少なくすることができ、以って印刷の生産性を上げることができる。
一方、前記制御部は、前記第2モードにおいて、前記載置部を前記第2位置まで移動させ、前記載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第2画像を形成させる。これにより、前記第2位置が、前記載置部の位置を校正するための基準位置となり、前記第1画像及び前記第2画像が前記基準位置を基準として重ねられることになるので、前記第1画像に対する前記第2画像の配置の位置ずれを抑制することができ、以って高品質の画像を形成することができる。また、前記媒体に対する前記第1画像と前記第2画像の配置の位置ずれを抑制することができ、以って高品質の画像を形成することができる。
【0011】
第2の態様に係る印刷装置は、第1の態様において、前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記媒体へ前記第1画像を形成させた後、前記移動方向を変更することなしに、前記媒体へ前記第2画像を形成させる、ことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記媒体へ前記第1画像を形成させた後、前記移動方向を変更することなしに、前記媒体へ前記第2画像を形成させる。これにより、前記媒体に前記第1画像を形成させた後で、前記載置部を前記第2位置へ戻してから前記媒体に前記第2画像を形成する構成に比べて、前記載置部の移動方向の切り替えに伴う画像形成の位置ずれが生じ難くなるので、前記第1画像に対する前記第2画像の配置の位置ずれを抑制することができる。
【0013】
第3の態様に係る印刷装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記第1画像は、前記第1色としての白色により形成され、前記第2画像は、前記白色と前記第2色としての前記白色以外の色とにより形成され、前記第2形成部は、前記第2方向において前記第1形成部よりも下流側に位置する、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第1画像は、前記第1色としての白色により形成され、前記第2画像は、白色と前記第2色としての白色以外の色とにより形成される。言い換えれば、前記第1画像は白色層で構成され、前記第2画像は白色層と、白色以外の色の層とにより構成される。また、前記第1形成部は前記第2形成部よりも上流側に位置する状態で固定されているので、前記第2画像において、白色で形成される画像と、白色以外の色で形成される画像と、が互いに位置がずれない。但し、白色に対応する液体の乾燥速度が白色以外の色に対応する液体の乾燥速度と異なる場合、前記第2画像において、前記白色層と前記白色以外の色の層とが混ざり合う可能性がある。本態様によれば、前記第2方向の上流側で白色の前記第2画像が媒体に形成され、前記第2画像が乾いた後で、前記第2方向の下流側で白色とは異なる色の前記第2画像が形成されるので、前記第2画像の中で白色とそれ以外の色とが混ざり合うのを抑制することができる。
また、前記第2画像を重ねて形成する場合、前記第2方向に前記載置部を移動させながら一の前記第2画像と他の前記第2画像とを形成することができるので、上記に加えて、前記第1画像と、一の前記第2画像と、他の前記第2画像とによる画像形成(3層印刷)の生産性を向上できる。
【0015】
第4の態様に係る印刷装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、前記画像形成ユニットは、前記第1方向及び前記第2方向と交差する走査方向に移動可能とされ、前記走査方向における前記第2形成部の一方側及び他方側には、前記第1形成部が位置することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記第1形成部と前記第2形成部とが前記第2方向において同じ位置に位置するので、前記画像形成ユニットを前記第2方向に小型化することができる。
さらに、前記画像形成ユニットを前記走査方向の一方側、他方側のいずれに移動させた場合でも、前記第1形成部によって前記第1画像が形成された後で、前記第2形成部によって前記第2画像が形成されることになる。これにより、前記画像形成ユニットを前記走査方向の一方側、他方側のどちら側にも移動させることができ、前記画像形成ユニットを毎回、前記走査方向の原点位置に戻す必要が無くなるので、印刷の生産性を上げることができる。
【0017】
第5の態様に係る印刷装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔を測定する測定部と、前記測定部で測定された値が設定値となるように前記画像形成ユニット又は前記載置部を移動させることで、前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔を調整する調整部と、が設けられ、前記制御部は、前記第1位置と前記第2位置との間で前記調整部を動作させることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記載置部が前記第1位置から前記第2位置へ移動する間に、前記測定部が前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔を測定する。そして、前記調整部が、前記測定部で測定された値が設定値となるように、前記画像形成ユニット又は前記載置部を移動させる。このように、前記載置部が前記第1位置から前記第2位置へ移動する間に、前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔が調整されるので、前記載置部が前記第2位置に到達した後で前記媒体と前記画像形成ユニットとの間隔を調整する構成に比べて、前記載置部の移動開始時点から印刷開始時点までの経過時間を短くすることができる。
【0019】
第6の態様に係る印刷方法は、媒体に第1画像を形成する第1形成部及び該媒体に第2画像を形成する第2形成部を備える画像形成ユニットと、前記媒体が載置される載置部と、前記載置部を、画像形成を行う前に第1方向に移動させ、画像形成を行うときに該第1方向とは逆の第2方向に移動させる移動部と、を備え、前記移動部は、前記媒体が前記載置部に載置される第1位置と、前記画像形成ユニットに対して前記第2方向において前記第1位置と反対側に位置して前記載置部の移動の基準位置となる第2位置と、に前記載置部を移動可能である印刷装置における印刷方法であって、前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を、前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域を越えて移動させ且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記第2方向へ移動させながら前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させる、或いは、前記載置部を前記第1位置から前記第2位置まで移動させた後で、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第1画像及び前記第2画像を形成させることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記載置部に載置されている前記媒体における画像形成の開始位置を前記第1位置から前記第1方向へ前記画像形成ユニットの画像形成領域を越えて移動させ、且つ前記載置部を前記第2位置まで移動させずに、前記第1方向を前記第2方向に変更して、前記第2方向への移動中に前記媒体へ前記第1画像及び第2画像を形成させる。これにより、前記載置部を前記第2位置まで移動させないので、その移動のための時間が不要となり、印刷の生産性を上げることができる。更に、前記載置部を、前記第1方向への移動から前記第2方向に変更するまでに移動させる移動距離は、前記媒体における画像形成の開始位置に基づいて定まるので、前記第1モードにおける前記移動距離を無駄なく少なくすることができ、以って印刷の生産性を上げることができる。
一方、前記制御部は、前記第2モードにおいて、前記載置部を前記第1位置から前記第2位置まで移動させた後で、前記載置部の移動方向を前記第1方向から前記第2方向に変更して、前記媒体へ前記第2画像を形成させる。これにより、前記第2位置が、前記載置部の位置を校正するための基準位置となり、前記第1画像及び前記第2画像が前記基準位置を基準として重ねられることになるので、前記第1画像に対する前記第2画像の配置の位置ずれを抑制することができ、以って高品質の画像を形成することができる。
【0021】
なお、上記態様に係る印刷装置及び印刷方法において、前記第2モードの印刷には、前記第2位置から印刷を開始して前記第1画像を形成した後で、前記載置部を再び前記第2位置に移動させて、前記第2画像を形成する印刷が含まれる。
【0022】
[実施形態1]
以下に、本発明に係る印刷装置及び印刷方法の一例としての実施形態1について、添付図面を参照して詳細に説明する。各図において表すX-Y-Z座標系では、後述する印刷装置10について、X軸は装置幅方向すなわちX方向に沿う軸であり、Y軸は装置奥行き方向すなわちY方向と媒体Mが移動する際の移動方向とに沿う軸であり、Z軸は装置高さ方向に沿う軸である。Y方向については、手前側から背面側に向かう方向を-Y方向と称し、背面側から手前側に向かう方向を+Y方向と称する。-Y方向は、第1方向の一例である。+Y方向は、第2方向の一例である。なお、X、Y、Zの各方向に関して、構成の説明において正負の符号に関わらず成り立つ場合は、符号を付けずに例えばX方向のように表現し、これは+X方向または-X方向を意味するものとする。
【0023】
X方向において、正面から見た場合の左側と右側とを区別する場合には、左側を+X側と称し、右側を-X側と称する。Y方向において、手前側と背面側とを区別する場合には、手前側を+Y側と称し、背面側を-Y側と称する。Z方向において、上側と下側とを区別する場合には、上側を+Z側と称し、下側を-Z側と称する。
【0024】
図1には、印刷装置の一例としての印刷装置10が表されている。印刷装置10は、媒体Mに各種の情報を印刷する。
媒体Mとしては、テキスタイル(織物、布等)、紙、塩化ビニル樹脂等、種々の素材のものを用いることができる。
【0025】
印刷装置10は、一例として、本体ユニット12と、媒体Mを支持する支持ユニット14とで構成されている。具体的には、印刷装置10は、像形成ユニット22と、トレイ32と、移動ユニット34と、制御部40とを有する。さらに、印刷装置10は、後述する調整ユニット16(図6)、位置センサー54及び高さセンサー56(図3)を有する。
【0026】
<像形成ユニット>
図2に表す像形成ユニット22は、画像形成ユニットの一例である。また、像形成ユニット22は、媒体Mに印刷(画像形成)を行う印刷ヘッド24と、印刷ヘッド24を保持するキャリッジ28とを有する。なお、キャリッジ28は、本体ユニット12(図1)内に設けられた図示を省略するフレーム部材に対して、Z方向に相対移動可能に設けられている。
図2には、印刷装置10における各部のY方向の位置P1から位置P4までが示されている。位置P1から位置P4までは、-Y方向の上流側から下流側へ、数字の順番通りに並んでいる。なお、位置P1から位置P4までは模式的に示されており、各位置の間隔は、実際の間隔とは異なる場合がある。
【0027】
印刷ヘッド24は、第1形成部の一例としての第1ヘッド25と、第2形成部の一例としての第2ヘッド26とを備えている。第1ヘッド25及び第2ヘッド26は、一例として、それぞれX方向に長いラインヘッドとして構成されている。
「ラインヘッド」とは、媒体Mの移動方向と交差するX方向に形成されたノズルの領域が、X方向における媒体Mの全体をカバー可能なように設けられた印刷ヘッドを意味する。
また、印刷ヘッド24は、媒体Mに対して+Z側に配置されている。また、印刷ヘッド24は、液体の一例としてのインクを-Z側に向けて吐出することで、媒体Mに印刷を行うように構成されている。
【0028】
第1ヘッド25は、下地色又は像形成色としての第1色の一例である白色のインクを使用して、媒体Mに第1画像G1(図10)を形成する。なお、白色のインク層を図示する場合には、該インク層をWで示す。下地色とは、下地となる媒体Mの印刷対象面の色を意味する。像形成色とは、画像を媒体Mにおいて顕在化させるために必要な色を意味する。
第1ヘッド25において、ノズルの吐出口が配置されている領域を、第1画像形成領域N1と称する。
【0029】
第2ヘッド26は、+Y方向における第1ヘッド25よりも下流側に位置している。換言すると、像形成ユニット22では、第1画像G1が形成された後で、第2画像G2が形成されるように構成されている。また、第2ヘッド26は、白色とは異なる色で且つ像形成色としての第2色の一例であるカラーのインク(ブラック、イエロー、シアン及びマゼンタの各色に対応するインクのうち少なくとも一つ)を使用して、媒体Mに第2画像G2(図10)を形成する。なお、カラーのインク層を図示する場合には、該インク層をCLで示す。
また、第2画像G2を重ねて形成する場合には、下層を第2画像G2aと称し、上層を第2画像G2bと称して区別する(図10)。
第2ヘッド26において、ノズルの吐出口が配置されている領域を、第2画像形成領域N2と称する。第1画像形成領域N1と第2画像形成領域N2とをまとめて、像形成ユニット22の画像形成領域Nと称する。
【0030】
<トレイ>
トレイ32は、載置部の一例であり、Z方向を厚さ方向とする板状に形成されている。トレイ32の+Z側の面には、媒体Mの全体が載置されている。また、トレイ32のX方向の両端の側面において、Y方向の中央となる部位には、被検知部32Aが形成されている。被検知部32Aは、一例として、トレイ32から+X側及び-X側に突出されており、後述する位置センサー54からの光を位置センサー54に向けて反射するように構成されている。
【0031】
<移動ユニット>
移動ユニット34は、移動部の一例である。また、移動ユニット34は、図示を省略するステージを支持する支柱35と、支柱35を-Y方向及びY方向に移動させるベルトユニット36と、ベルトユニット36を駆動する搬送モーター37と、搬送モーター37の回転量を検出するエンコーダー38とを含んで構成されている。
ベルトユニット36は、図示を省略するベルト、該ベルトを周回移動可能に支持する回転体及び該回転体に駆動力を伝達させるギアを含んで構成されている。
搬送モーター37は、正回転方向と、逆回転方向とに回転可能とされており、後述する制御部40(図1)からの指示により、前記回転体の回転方向及び回転量が制御される。エンコーダー38で得られた回転量は、制御部40に送られる。
【0032】
移動ユニット34は、制御部40によって移動を制御されるように構成されており、トレイ32を、印刷を行う前に-Y方向に移動させ、印刷を行うときに+Y方向に移動させる。具体的には、移動ユニット34は、トレイ32の位置を被検知部32Aの位置に置き換えて、媒体Mがトレイ32に載置されるときの第1位置(位置P1)と、像形成ユニット22に対して第1位置と反対側(-Y側)に位置してトレイ32の移動の基準位置となる第2位置(位置P4)とに、トレイ32を移動可能に設けられている。第2位置は、-Y方向における第1位置よりも下流側に設定されている。
【0033】
<位置センサー>
位置センサー54は、一例として、キャリッジ28の位置よりも+Y側に配置された前センサー54Aと、-Y側に配置された後センサー54Bとを有する。前センサー54Aは、位置P1が中心位置となるように配置されている。後センサー54Bは、位置P4が中心位置となるように配置されている。
前センサー54A及び後センサー54Bは、トレイ32の被検知部32AとX方向に対向するように配置されている。また、前センサー54A及び後センサー54Bは、一例として、光の出射部及び受光部を有する反射型のセンサーとして構成されており、被検知部32Aからの反射光を受光することで、トレイ32の位置を検知するようになっている。
【0034】
(各部の位置)
予め制御部40(図1)に設定された媒体Mの印刷領域のうち、+Y方向における下流側端となる位置を、画像形成の開始位置Qと称する。開始位置Qは、トレイ32に載置されている媒体Mにおける画像形成の開始位置である。なお、図2では、開始位置Qが点Qで表されている。Y方向における被検知部32Aと開始位置Qとの距離は、制御部40に設定されている。
また、後述する高さセンサー56が設けられた位置を、検知位置P2と称する。検知位置P2は、高さセンサー56のY方向の中央位置に対応する。
【0035】
第1ヘッド25の第1画像形成領域N1において、+Y方向の最も上流側の位置を、画像形成位置P3と称する。また、画像形成位置P3は、-Y方向における検知位置P2よりも下流側にある。
【0036】
このように、像形成ユニット22は、画像形成の開始位置Qが画像形成位置P3と重なったときに、媒体Mへの印刷(画像形成)を開始するように構成されている。なお、印刷装置10では、ベルトユニット36のベルトの伸び及びギアのバックラッシュ等の誤差要因がある。このため、印刷ヘッド24において、印刷後にベルトユニット36を一旦停止させ、移動方向を変更してから再度、印刷を行う重ね印刷の場合には、各画像の位置ずれが生じて、画像の精度が低下する可能性がある。
【0037】
<高さセンサー>
図4に表すように、高さセンサー56は、一例として、光LAを出射する出射部57と、光LAを受光する受光部58とで構成されている。出射部57は、トレイ32に対して+X側に配置されている。受光部58は、トレイ32に対して-X側に配置されている。また、受光部58は、Z方向の位置が異なる複数の受光素子58A(図5)を備えている。
高さセンサー56では、トレイ32の-Y方向への移動において、媒体Mによって光LAの一部が遮られた場合に、一部の受光素子58Aにおいて出力が低下することで、媒体Mの+Z側の上面MAの高さ位置を検出するようになっている。
【0038】
図5には、高さセンサー56を用いて媒体Mの上面の高さ位置を検出する状態が表されている。なお、図5では、媒体Mが模式的に平板状となっているが、実際は媒体Mの上面の高さがY方向で異なっている。また、図5では、受光素子58Aのうち、光を受光したものを白丸で表し、光を受光できなかったものを黒丸で表している。
【0039】
高さセンサー56によって、トレイ32の+Z側の上面33に対する、媒体Mの上面MAのZ方向の高さ位置(高さT〔mm〕)が検出される。
一方、印刷ヘッド24(像形成ユニット22)の-Z側の仮想面を下面27とする。下面27は、一例として、第1ヘッド25の下面と第2ヘッド26の下面との平均高さに位置するものとする。上面33に対する下面27のZ方向の高さ位置(高さH〔mm〕)は、既述のキャリッジモーター52(図3)が駆動されることで、変更可能となっている。
【0040】
ここで、上面MAと下面27との間隔S〔mm〕は、関係式S=H-Tで求められる。つまり、高さセンサー56を用いて上面MAの高さTを求めた後で、キャリッジモーター52を駆動して下面27の高さHを変更することで、間隔Sを変更可能となっている。
【0041】
<制御部>
図3に表す制御部40には、一例として、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、図示を省略するストレージ、入出力部44、ヘッド駆動部45、モーター駆動部46、位置検出部47、間隔測定部48及びバス49が設けられている。なお、制御部40の説明において、図1図2図4及び図5に示された各部材及び部位については、個別の図番の記載を省略する。
【0042】
CPU41は、バス49を介して、ROM42、RAM43、ストレージ、入出力部44、ヘッド駆動部45、モーター駆動部46、位置検出部47及び間隔測定部48と接続されている。
【0043】
入出力部44は、外部入力装置の一例としてのPC(Personal Computer)51から送信された設定情報及び指示情報を受け取り、CPU41に伝える。なお、PC51では、後述する第1モード及び第2モードの一方が選択されるようになっている。
ヘッド駆動部45は、CPU41からの指示に基づいて、印刷ヘッド24を駆動する。
モーター駆動部46は、CPU41からの指示に基づいて、搬送モーター37及びキャリッジモーター52を駆動する。キャリッジモーター52は、キャリッジ28をZ方向に駆動することで、キャリッジ28のZ方向の位置を変更する。
【0044】
位置検出部47は、位置センサー54から送られた情報を、トレイ32及び媒体MのY方向の位置情報に変換することで、開始位置Qの位置を検出する。開始位置Qの位置情報は、CPU41に送られる。
間隔測定部48は、測定部の一例であり、高さセンサー56から送られた情報に基づいて、媒体Mと像形成ユニット22(印刷ヘッド24)との間隔Sを測定する。間隔Sの情報は、CPU41に送られる。
【0045】
制御部40は、移動ユニット34によるトレイ32の移動及び像形成ユニット22による印刷(画像形成)を制御する。具体的には、制御部40は、予め設定された印刷プログラムに基づいて、生産性を上げる第1モードと、印刷品質(画像の位置精度)を高める第2モードとを、PC51からの入力情報に基づいて切り替えて実行するようになっている。
【0046】
制御部40は、第1モードでは、開始位置Qを第1位置(位置P1)から-Y方向へ画像形成領域Nまで移動させ、且つトレイ32を第2位置(位置P4)まで移動させずに、トレイ32の移動方向を-Y方向から+Y方向に変更して、+Y方向への一つの移動中に媒体Mへ第1画像G1及び第2画像G2(図10)を形成させる。言い換えれば、制御部40は、第1モードでは、媒体Mへ第1画像G1を形成させた後、トレイ32の移動方向を変更することなしに、媒体Mへ第2画像G2を形成させる。
なお、制御部40は、第1モードでは、トレイ32を+Y方向へ移動させながら第1画像G1を形成し、その後にトレイ32を-Y方向に移動させ、更にトレイ32の移動方向を-Y方向から+Y方向に変更し、+Y方向へトレイ32を移動させながら媒体Mへ第2画像G2を形成させることもできる。すなわち、制御部40は、第1モードでは、第1画像G1を形成してから第2画像G2を形成するまでの間に、トレイ32の移動方向を変更するか、トレイ32の移動方向を変更しないか、を切り替えて実行できる。
制御部40は、第2モードでは、媒体Mへ第1画像G1を形成させた後、トレイ32を第1位置から第2位置まで移動させた後で、トレイ32の移動方向を-Y方向から+Y方向に変更して、媒体Mへ第2画像G2を形成させる。
【0047】
<調整ユニット>
図6に表すキャリッジ28のX方向の両端部には、調整部の一例としての調整ユニット16が設けられている。調整ユニット16は、本体ユニット12(図1)の内部に設けられた、図示を省略する部材によって支持されている。
調整ユニット16は、一例として、キャリッジ28のZ方向の高さ位置を調整するためのベースプレート17と、スライド部材18と、キャリッジモーター52とを有する。なお、キャリッジ28のX方向の両端部には、X方向に延びる軸部28Aが形成されている。軸部28Aには、軸部28Aに対して相対回転可能な環状部材28Bが設けられている。
【0048】
ベースプレート17は、キャリッジ28のX方向の両外側に配置されている。
スライド部材18は、ベースプレート17に対してY方向にスライド可能に設けられている。スライド部材18には、X方向から見た場合に、Y方向と交差する斜め方向に延びる傾斜面18Aが形成されている。傾斜面18Aには、環状部材28Bの外周面が接触している。
キャリッジモーター52は、回転運動を並進運動に変換する変換機構を介して、スライド部材18をY方向に駆動するようになっている。そして、キャリッジモーター52がスライド部材18をY方向に駆動することで、キャリッジ28のZ方向の高さを変更可能となっている。
このように、調整ユニット16は、間隔測定部48で測定された値が設定値となるように像形成ユニット22(印刷ヘッド24)を移動させることで、媒体Mと像形成ユニット22との間隔を調整する。なお、制御部40は、既述の位置P1と画像形成位置P3との間で、調整ユニット16を動作させる。
【0049】
(タイミングチャート)
図7には、トレイ32(図1)の移動、印刷装置10(図1)の各部の準備動作、印刷ヘッド24(図2)の高さ位置変更及び印刷動作の一例について、ON、OFFのタイミングチャートが示されている。図7では、時点t1、t2、t3、t4、t5〔s〕が示されているが、t1、t2、t3、t4、t5の間隔は、模式的に示したものであり、実際の動作とは異なる場合がある。
なお、トレイ32の移動については、トレイ32を-Y方向に移動させた後で、移動方向を変更して、+Y方向に移動させた場合の動作が示されている。
印刷装置10の各部の準備動作及び印刷ヘッド24の高さ位置変更については、トレイ32を-Y方向に移動させた場合の動作が示されている。
印刷動作については、トレイ32を+Y方向に移動させた場合の動作が示されている。
【0050】
トレイ32の-Y方向の移動について、時点t1で移動が開始され、時点t4で移動が終了される。さらに、時点t5で、トレイ32の+Y方向の移動が開始され、時点t5より後の時点(図示省略)で移動が停止されるように設定されている。
印刷装置10の各部の準備動作(例えば各センサーの動作チェック等)について、時点t1で準備動作が開始され、時点t2で準備動作が終了されるように設定されている。
印刷ヘッド24の高さ位置変更について、時点t2で変更が開始され、時点t3で変更が終了されるように設定されている。
印刷動作について、時点t5で印刷動作が開始され、時点t5より後の時点(図示省略)で印刷動作が終了されるように設定されている。
なお、時点t4から時点t5までは、零であってもよい。すなわち、トレイ32の-Y方向の移動が終了したと同時に印刷動作が開始されてもよい。
【0051】
<実施形態1の動作と効果の説明>
主に図8図9及び図10を用いて、実施形態1の印刷装置10及び印刷方法について説明する。図8は、制御部40(図3)による印刷処理の流れを表すフローチャートである。図9は、トレイ32の移動、間隔S(図5)の調整及び印刷開始状態を表す概略図である。図10は、媒体M上に第1画像G1、第2画像G2が重ねて印刷される状態を表す概略図である。なお、図8を用いた説明では、図1から図7までを参照する場合には、図番の記載を省略する。図9を参照する場合には、図9を参照することを記載する。
【0052】
図8に表す各処理は、CPU41がROM42又はストレージから処理プログラムを読み出して、RAM43に展開して実行することにより行われる。
ステップS10において、CPU41からの指令により、トレイ32は第1位置(位置P1)に配置される。トレイ32には、使用者によって媒体Mが載置される。このとき、印刷ヘッド24は、予め設定された初期位置に位置している。そして、ステップS12に移行する。
ステップS12において、CPU41は、トレイ32上の媒体Mの有無を、図示を省略するセンサーを用いて検知する。そして、ステップS14に移行する。
ステップS14において、CPU41は、検知結果に基づいて、媒体Mの有無を判定する。媒体Mが無い場合には、ステップS12に移行する。このとき、図示を省略する液晶パネル等を用いて、媒体Mが無いことが報知される。一方、媒体Mがある場合には、ステップS16に移行する。
【0053】
ステップS16において、CPU41は、移動ユニット34を動作させることで、トレイ32の-Y方向への移動を開始する(図9の上図)。そして、ステップS18に移行する。
ステップS18において、CPU41は、間隔測定部48を用いて、媒体Mと印刷ヘッド24との間隔Sを測定する。そして、ステップS20に移行する。
ステップS20において、CPU41は、間隔Sが設定値となっているか否かを判定する。間隔Sが設定値となっている場合には、ステップS22に移行する。一方、間隔Sが設定値とは異なる値となっている場合には、ステップS24に移行する。
【0054】
ステップS22において、CPU41は、間隔Sが設定範囲以内となるように、調整ユニット16及びモーター駆動部46を用いて印刷ヘッド24の高さを調整する(図9の中図)。そして、ステップS24に移行する。
ステップS24において、CPU41は、印刷装置10のモード情報(生産性アップモード又は印刷品質を高めるモード)を取得する。モード情報は、一例として、PC51から取得する。そして、ステップS26に移行する。
ステップS26において、CPU41は、第1モードであるか否かを判定する。第1モードである場合には、ステップS28に移行する。一方、第2モードである場合には、ステップS30に移行する。
【0055】
ステップS28において、CPU41は、トレイ32が画像形成位置P3に到達したか否かを判定する。トレイ32が画像形成位置P3に到達した場合には、ステップS36に移行する。一方、トレイ32が画像形成位置P3に到達していない場合には、ステップS28を繰り返す。
ステップS30において、CPU41は、トレイ32が第2位置(位置P4)に到達したか否かを判定する。トレイ32が第2位置に到達した場合には、ステップS32に移行する。一方、トレイ32が第2位置に到達していない場合には、ステップS30を繰り返す。
【0056】
ステップS32において、CPU41は、トレイ32の移動を停止させる。そして、ステップS34に移行する。
ステップS34において、CPU41は、トレイ32の位置をリセットする(原点調整を行う)。原点調整とは、ギアのバックラッシュ解消のために、設定範囲内で搬送モーター37を逆回転させておく調整動作を意味する。そして、ステップS36に移行する。
ステップS36において、CPU41は、トレイ32の+Y方向への移動を開始する(図9の下図)。そして、ステップS38に移行する。
【0057】
ステップS38において、CPU41は、トレイ32の+Y方向への移動の開始に合わせて、予め設定された情報に基づいてヘッド駆動部45を動作させ、媒体Mに第1画像G1及び第2画像G2の印刷を行う。なお、媒体Mへの第1画像G1及び第2画像G2の印刷については、後述する。そして、ステップS40に移行する。
ステップS40において、CPU41は、PC51から入力された情報に基づいて、次の印刷の有無を判定する。印刷が無い場合には、処理プログラムを終了する。一方、印刷がある場合には、ステップS10に移行する。
【0058】
図2に表すように、+Y方向において、第1ヘッド25は、第2ヘッド26よりも上流側に位置している。そして、第1ヘッド25と第2ヘッド26は、+Y方向に並んでいる。
このため、図10の上図及び中図に表すように、媒体Mには、第1画像G1が印刷された後で、第1画像G1に重ねて第2画像G2が形成される。
なお、図10の下図に表すように、第1モード或いは第2モードにおいて、第1画像Gを印刷した後で、印刷ヘッド24(図2)を第2位置に戻してから、再度、第2画像G2a及び第2画像G2bを印刷してもよい。第2画像G2を重ねて形成するとき、第2画像G2aを印刷した後で、印刷ヘッド24(図2)を第2位置に戻してから、第2画像G2bを印刷してもよい。
【0059】
(1)以上説明した通り、実施形態1によれば、制御部40は、第1モードにおいて、トレイ32に載置されている媒体Mにおける画像形成の開始位置Qを第1位置から-Y方向へ像形成ユニット22の画像形成領域Nまで移動させ、且つトレイ32を第2位置まで移動させずに、トレイ32の移動方向を-Y方向から+Y方向に変更して、トレイ32を+Y方向へ移動させながら媒体Mへ第1画像G1及び第2画像G2を形成させる。これにより、トレイ32を第2位置まで移動させないので、その移動のための時間が不要となり、印刷の生産性を上げることができる。更に、トレイ32を-Y方向への移動から+Y方向に変更するまでに移動させる移動距離は、媒体Mにおける画像形成の開始位置Qに基づいて定まるので、第1モードにおけるトレイ32の移動距離を少なくすることができ、以って印刷の生産性を上げることができる。
一方、制御部40は、第2モードにおいて、トレイ32を第2位置まで移動させ、トレイ32の移動方向を-Y方向から+Y方向に変更して、媒体Mへ第2画像G2を形成させる。これにより、第2位置が、トレイ32の位置を校正するための基準位置となり、第1画像G1及び第2画像G2が基準位置を基準として重ねられることになるので、第1画像G1に対する第2画像G2の配置の位置ずれを抑制することができ、以って高品質の画像を形成することができる。また、媒体Mに対する第1画像G1と第2画像G2の配置の位置ずれを抑制することができ、以って高品質の画像を形成することができる。
なお、第2モードにおいて、第1画像G1を形成させた後、トレイ32を第1位置から第2位置まで移動させるのではなく、第1位置より-Y方向の下流の任意の位置から第2位置までトレイ32を移動させてもよい。すなわち、トレイ32を第2位置まで移動させることができるのであれば、トレイ32が第2位置に至る前のスタート位置はどこでもよい。
【0060】
(2)実施形態1によれば、制御部40は、第1モードにおいて、媒体Mへ第1画像G1を形成させた後、移動方向を変更することなしに、媒体Mへ第2画像G2を形成させる。これにより、媒体Mに第1画像G1を形成させた後で、トレイ32を第2位置へ戻してから媒体Mに第2画像G2を形成する構成に比べて、トレイ32の移動方向の切り替えに伴う画像形成の位置ずれが生じ難くなるので、第1画像G1に対する第2画像G2の配置の位置ずれを抑制することができる。
【0061】
(3)第1画像G1は、第1色としての白色により形成され、第2画像G2は、白色と第2色としての白色以外の色とにより形成される。言い換えれば、第1画像G1はW層で構成され、第2画像G2はW層とCL層とにより構成される。また、第1ヘッド25は第2ヘッド26よりも上流側に位置する状態で固定されているので、第2画像G2において、白色で形成される画像と、白色以外の色で形成される画像と、が互いに位置がずれない。但し、白色に対応するインクの乾燥速度が白色以外の色に対応するインクの乾燥速度と異なる場合、第2画像G2において、W層とCL層とが混ざり合う可能性がある。実施形態1によれば、+Y方向の上流側で白色の第2画像G2aが媒体Mに形成され、第2画像G2aが乾いた後で、+Y方向の下流側で白色とは異なる色の第2画像G2bが形成されるので、第2画像G2の中で白色とそれ以外の色とが混ざり合うのを抑制することができる。
また、第2画像G2を重ねて形成する場合、+Y方向にトレイ32を移動させながら第2画像G2aと第2画像G2bとを形成することができるので、上記に加えて、第1画像G1と第2画像G2aと第2画像G2bとによる画像形成(3層印刷)の生産性を向上できる。
【0062】
(4)実施形態1によれば、トレイ32が第1位置から画像形成位置P3へ移動する間に、間隔測定部48が媒体Mと像形成ユニット22(印刷ヘッド24)との間隔Sを測定する。そして、調整ユニット16が、間隔測定部48で測定された間隔Sの値が設定値となるように、像形成ユニット22をZ方向に移動させる。
このように、トレイ32が第1位置から画像形成位置P3へ移動する間に、媒体Mと像形成ユニット22との間隔Sが調整されるので、トレイ32が第2位置に到達した後で媒体Mと像形成ユニット22との間隔Sを調整する構成に比べて、トレイ32の移動開始時点から印刷開始時点までの経過時間を短くすることができる。
【0063】
[実施形態2]
次に、本発明に係る印刷装置及び印刷方法の一例としての実施形態2について説明する。なお、実施形態1と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。また、実施形態1と同様の作用及び効果についても説明を省略する。
【0064】
図11に表すように、印刷装置10において、像形成ユニット22(図2)に代えて、像形成ユニット60を用いてもよい。
像形成ユニット60は、図示を省略するモーター等を用いて、-Y方向及び+Y方向と交差する走査方向の一例としてのX方向に移動可能とされている。具体的には、像形成ユニット60は、媒体Mに印刷(画像形成)を行う印刷ヘッド62と、印刷ヘッド62をX方向に移動可能に保持するキャリッジ64とを有する。
【0065】
印刷ヘッド62は、一例として、2つの第1ヘッド25と、1つの第2ヘッド26とを備えている。X方向における第2ヘッド26の一方側(+X側)及び他方側(-X側)には、それぞれ1つの第1ヘッド25が位置している。言い換えれば、第2ヘッド26は、X方向において2つの第1ヘッド25に挟まれている。このように、印刷ヘッド62は、シリアルヘッドとして構成されており、媒体Mに対して+Z側に配置されている。
「シリアルヘッド」とは、媒体M上を往復移動することで画像を形成する印刷ヘッドを意味する。
また、印刷ヘッド62は、液体の一例としてのインクを-Z側に向けて吐出することで、媒体Mに印刷を行うように構成されている。
【0066】
<実施形態2の動作と効果の説明>
(1)実施形態2によれば、X方向から見た場合に、第1ヘッド25と第2ヘッド26とが+Y方向において同じ位置に位置するので、像形成ユニット60を+Y方向に小型化することができる。
さらに、像形成ユニット60をX方向の一方側、他方側のいずれに移動させた場合でも、第1ヘッド25によって第1画像G1(図10)が形成された後で、第2ヘッド26によって第2画像G2(図10)が形成されることになる。これにより、第1画像G1上に第2画像G2を重ねる場合に、像形成ユニット60がシリアルヘッドの構成となっていても、像形成ユニット60をX方向の一方側、他方側のどちら側にも移動させることができ、像形成ユニット60を毎回、X方向の原点位置に戻す必要が無くなるので、印刷の生産性を上げることができる。
【0067】
〔他の実施形態〕
本発明の実施形態に係る印刷装置10及び印刷方法は、以上述べたような構成及び方法を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0068】
図12には、実施形態2の像形成ユニット60(図11)の変形例として、像形成ユニット70が表されている。なお、像形成ユニット60と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
像形成ユニット70は、図示を省略するモーター等を用いて、X方向に移動可能とされている。具体的には、像形成ユニット70は、媒体Mに印刷(画像形成)を行う印刷ヘッド72と、キャリッジ64とを有する。
【0069】
印刷ヘッド72は、一例として、5つの第1ヘッド25と4つの第2ヘッド26とを備えており、3列に分かれて配置されている。なお、+Y方向における上流側から順番に、1列目、2列目、3列目と称する。
1列目には、1つの第1ヘッド25が配置されている。
2列目には、1列目の第1ヘッド25とY方向に並ぶ1つの第2ヘッド26と、この第2ヘッド26に対して+X側、-X側に位置するそれぞれ1つの第1ヘッド25が配置されている。
【0070】
3列目には、2つの第1ヘッド25と、3つの第2ヘッド26が配置されている。第1ヘッド25は、3つの第2ヘッド26に対して+X側、-X側に1つずつ位置する。3つの第2ヘッド26のうち2つは、2列目の第1ヘッド25とY方向に並ぶ。残り1つの第2ヘッド26は、2列目の第2ヘッド26とY方向に並ぶ。
このように、X方向、Y方向のいずれにおいても、第1ヘッド25を用いて画像形成した後で、第2ヘッド26を用いて画像形成する構成としてもよい。換言すると、像形成ユニット70は、シリアルヘッド、ラインヘッドどちらの方式でも印刷を行うことができる。
【0071】
印刷装置10は、インクジェット方式のものに限らず、電子写真方式のものであってもよい。また、印刷装置10は、媒体MをY方向(水平方向)に移動させるものに限らず、媒体MをZ方向(鉛直方向)に移動させるものであってもよい。
また、印刷装置10は、第1モードと第2モードの切り替えをPC51において行うものに限らず、印刷装置10に選択部(操作部)の一例としての選択ボタンを設けて使用者に選択させ、あるいは印刷装置10に設けたタッチパネルに選択部の一例としての選択ボタンを表示して、使用者に選択させるものであってもよい。
【0072】
印刷装置10において、第1色は、白色に限らず、媒体Mの表面の色に合わせて他の色を用いてもよい。また、既に白色を用いた印刷が終了している媒体Mをトレイ32に載置して固定し、印刷を行ってもよい。
また、印刷装置10において、間隔Sを調整する場合に、像形成ユニット22を移動させずに、トレイ32をZ方向に移動させてもよい。
高さセンサー56は、第1位置と画像形成位置P3との間ではなく、第1位置又は第2位置に位置していてもよい。
【0073】
印刷装置10の他の例として、第1モード(生産性を上げるモード)のみを実行させてもよい。つまり、第2位置を設定せずに、トレイ32を第1位置から画像形成位置P3に移動させてからトレイ32の移動方向を変更し、第1位置に向けてトレイ32を移動させながら印刷を行ってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…印刷装置、12…本体ユニット、14…支持ユニット、16…調整ユニット、
17…ベースプレート、18…スライド部材、18A…傾斜面、22…像形成ユニット、
24…印刷ヘッド、25…第1ヘッド、26…第2ヘッド、27…下面、
28…キャリッジ、28A…軸部、28B…環状部材、32…トレイ、32A…被検知部、
33…上面、34…移動ユニット、35…支柱、36…ベルトユニット、
37…搬送モーター、38…エンコーダー、40…制御部、41…CPU、42…ROM、
43…RAM、44…入出力部、45…ヘッド駆動部、46…モーター駆動部、
47…位置検出部、48…間隔測定部、49…バス、51…PC、
52…キャリッジモーター、54…位置センサー、54A…前センサー、
54B…後センサー、56…高さセンサー、57…出射部、58…受光部、
58A…受光素子、60…像形成ユニット、62…印刷ヘッド、64…キャリッジ、
70…像形成ユニット、72…印刷ヘッド、G1…第1画像、G2…第2画像、
G2a…第2画像、G2b…第2画像、H…高さ、N…画像形成領域、
N1…第1画像形成領域、N2…第2画像形成領域、Q…開始位置、S…間隔、T…高さ
図1
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図12