(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】保護フィルム付き防汚フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/18 20150101AFI20231212BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20231212BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231212BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G02B1/18
G02B1/14
B32B7/06
B32B27/00 101
B32B27/30 D
(21)【出願番号】P 2019518123
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010497
(87)【国際公開番号】W WO2019188327
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018064262
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西尾 明子
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明紀
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057402(WO,A1)
【文献】特開2002-212523(JP,A)
【文献】特開2017-177679(JP,A)
【文献】特開2011-94096(JP,A)
【文献】特開2008-87253(JP,A)
【文献】国際公開第2004/058900(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/068112(WO,A1)
【文献】特開2006-192734(JP,A)
【文献】特開2008-105234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10- 1/18
B32B 1/00-43/00
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムX上に防汚層を有する防汚フィルムの防汚層上に保護フィルムを積層した保護フィルム付き防汚フィルムであって、
保護フィルムを防汚フィルムから剥離した時、防汚フィルムの防汚層に接していた保護フィルムの表面の水の接触角が90°~102°であり、
防汚フィルムの防汚層が、シリコーン系樹脂および/またはフッ素系樹脂を主成分とし、
前記保護フィルムは、樹脂機能層を有し、
前記樹脂機能層は前記防汚層と接して配置され、
前記樹脂機能層を構成する全樹脂分のうち質量濃度60%以上が、環状オレフィン系、非環状オレフィン系、およびフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂である、
保護フィルム付き防汚フィルム。
【請求項2】
前記樹脂機能層の領域表面平均粗さ(Sa)は、50nm以下である、請求項1に記載の保護フィルム付き防汚フィルム。
【請求項3】
防汚フィルムの防汚層と接する保護フィルムの表面が、式1を満たす請求項1又は2に記載の保護フィルム付き防汚フィルム。
|a―b|≦10(°) ・・・式1
a:防汚フィルムの防汚層と積層する前の、防汚フィルムの防汚層と接することとなる保護フィルムの表面の水の接触角(°)
b:防汚フィルムの防汚層から剥離した時、防汚フィルムの防汚層と接していた保護フィルムの表面の水の接触角(°)。
【請求項4】
防汚層面上に保護フィルムを積層した状態で、30℃以上60℃以下の温度で、1日以上エージングを行う請求項1~
3のいずれかに記載の保護フィルム付き防汚フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防汚性を有する保護フィルム付き防汚フィルム、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや携帯電話、スマートフォンなどの携帯端末機器の普及に伴い、汚れやキズなどからこれらの物品を保護する要求が増加している。特にタッチパネルなど、常に触る面であるにもかかわらず、視認性が必要なディスプレイ表面に関しては、防汚性付与が必須となる。一方、防汚性付与の技術は、絵画などの芸術作品や、壁面などの建材、家具など外観が重要視される物品にも応用されてきている。
【0003】
防汚性を物品に付与する方法としては、物品に直接塗布する方法もあるが、簡便な方法として、防汚層を塗布、積層したフィルム材料を貼付する手法が一般的に使用される。防汚層を形成する方法としては、パーフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤を熱処理にて形成する方法が簡便であるが、比較的高い温度での処理になることからフィルムへのダメージが問題となる。そこで近年では、有機溶剤に可溶な、パーフルオロアルキル基を有する化合物を、低温で架橋剤により架橋させる手法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ素含有樹脂を架橋することで防汚性に優れた被膜を簡便に成形できるが、反応速度が遅いため、エージングが必要となる。フッ素含有樹脂は巻き取られた状態でエージングをかけることとなるが、フッ素含有樹脂がフィルム面と接した状態でエージングが進むと防汚性が十分に発現しない問題があった。
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する問題点を解決し、エージング後も防汚性に優れた防汚層を有する保護フィルム付き防汚フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、防汚性の優れた防汚層を得る効果を発現することを見出した。即ち、本発明は以下の構成よりなる。
【0008】
1. 基材フィルムX上に防汚層を有する防汚フィルムの防汚層上に保護フィルムを積層した保護フィルム付き防汚フィルムであって、保護フィルムを防汚フィルムから剥離した時、防汚フィルムの防汚層に接していた保護フィルムの表面の水の接触角が90°~115°である保護フィルム付き防汚フィルム。
2. 防汚フィルムの防汚層が、シリコーン系樹脂および/またはフッ素系樹脂を主成分とする上記第1に記載の保護フィルム付き防汚フィルム。
3. 防汚フィルムの防汚層と接する保護フィルムの表面が、式1を満たす上記第1又は
第2に記載の保護フィルム付き防汚フィルム。
|a―b|≦10(°) ・・・ 式1
a:防汚フィルムの防汚層と積層する前の、防汚フィルムの防汚層と接することとなる保護フィルムの表面の水の接触角(°)
b:防汚フィルムの防汚層から剥離した時、防汚フィルムの防汚層と接していた保護フィルムの表面の水の接触角(°)
4. 保護フィルムが基材フィルムY上に樹脂機能層を有しており、防汚フィルムの防汚層と接する保護フィルムの表面が樹脂機能層であり、樹脂機能層を構成する全樹脂分のうち質量濃度60%以上がシリコーン系、環状オレフィン系、非環状オレフィン系、およびフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂である上記第1~第3のいずれかに記載の保護フィルム付き防汚フィルム。
5. 防汚層面上に保護フィルムを積層した状態で、30℃以上60℃以下の温度で、1日以上エージングを行う上記第1~第4のいずれかに記載の保護フィルム付き防汚フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、エージング後に、防汚フィルムの防汚層から剥離される保護フィルムの表面の水の接触角を制御することにより、防汚層の防汚性を最大限に引き出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の保護フィルム付き防汚フィルムとは、基材フィルムX上に防汚層を塗布し、乾燥した後に保護フィルムと積層される。
【0011】
[防汚フィルムの基材フィルムX]
本発明における防汚層を積層する基材フィルムXとは、素材、形状など、特に限定されるものではない。
【0012】
基材フィルムXを構成するポリマーとしては特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート,シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステル、ネオペンチルグリコール共重合ポリエステル、イソフタル酸共重合ポリエステル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸共重合ポリエステルなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、MXD6などのポリアミド、ポリスチレン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクタムポリウレタンなどのポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、含フッ素ポリマー、さらにシリコーン系ポリマーないしシリコーン含有ポリマーなどといった各種のプラスチックないしエラストマーを単独ないしは複数の混合物として制限なく使用することができ、フィルムの厚みは25~500μmのものが好ましい。
【0013】
基材フィルムXは単独の材料を用いてもよく、ポリマーアロイのような混合系でもよく、もしくは、多素材を複数種積層した構造になっていてもよい。基材フィルムの形状としては、シート状でもロール状であっても特に問題ないが、ロール状の方が生産効率が良く、一般に用いられている。
【0014】
[防汚フィルムの防汚層]
本発明における防汚フィルムの防汚層はシリコーン系樹脂及び/又はフッ素系樹脂を主成分として含む。ここで、本発明における防汚フィルムの防汚層は架橋剤で架橋、硬化された場合を含んでいるが、ここでいう主成分とは、防汚層を形成する塗布液の固形分質量中に、シリコーン系樹脂及び/又はフッ素系樹脂が合計で50質量%以上含まれていることを意味する。
【0015】
シリコーン系防汚剤としては例えば、ジメチルポリシロキサンを主成分とするオルガノポリシロキサンなどを用いることができ、メチル基の一部がフェニル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、水酸基、ビニル基などによって置換されていてもよい。その他、ポリエーテル、ポリエステル、アクリル等の有機官能基を末端に変性したものであってもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
フッ素系防汚剤としては例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキレンエーテル基を含む樹脂などが挙げられる。ジメチルシリコーンなどの有機シロキサンを結合したものなども使用できる。
【0017】
シリコーン系防汚剤とフッ素系防汚剤は、それぞれ単独でも使用できるし、また、二つ以上の防汚剤を混合して使用することもできる。
【0018】
また、防汚層は架橋構造を有していてもよい。防汚層の架橋剤としては例えば、トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ジイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ジイソシアネート類の水添物などの脂環族イソシアネート類などのイソシアネート系架橋剤、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂などのメラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0019】
また、架橋構造の形成を速めるために既知の触媒を使用することもでき、防汚層塗布時の低粘度化などの目的で既知の有機溶剤で希釈することもできる。
【0020】
[防汚層の塗布方法]
基材フィルムXに防汚層を塗布する方法は特に限定されるものではなく、既知の方法で塗布することができる。具体的には、ダイレクトグラビアコーター、マイクログラビアコーター、リバースグラビアコーター、ダイレクトキスコーター、リバースキスコーター、コンマコーター、ダイコーター、バー・ロットタイプの塗布装置等による塗布方法が挙げられる。
【0021】
[防汚層の乾燥]
塗布後の乾燥温度は、80℃以上180℃未満が好ましい。80℃以上では、溶剤の乾燥が不十分となることを防止でき、残留溶剤によりエージング時に保護フィルムとの密着力が上がりすぎ、剥離が重剥離化することを防ぐことができるため、80℃以上が好ましい。また、180℃未満では基材フィルムXが熱により収縮や変形を起こしにくく、平面性を保ったまま乾燥することができるため180℃未満が好ましい。
【0022】
乾燥時間は1秒以上180秒未満が好ましい。1秒以上では、溶剤の乾燥が不十分となることを防止でき、残留溶剤によりエージング時に保護フィルムとの密着力が上がりすぎ、剥離が重剥離化することを防ぐことができるため、1秒以上が好ましい。生産性の面から180秒未満ではコストを抑えることができるため、180秒未満が好ましい。
乾燥後の防汚層の厚さは、0.01μm以上20μm以下が好ましい。0.01μm以上では摩擦に対する耐久性が良くなるため、0.01μm以上が好ましい。20μm以下では、防汚層乾燥工程において残留溶剤が残りにくく、エージング後の剥離が重剥離化しにくいため、20μm以下が好ましい。
【0023】
[積層工程]
後述する保護フィルムを防汚層に積層させる工程は、防汚層を基材フィルムXに塗布、乾燥した後、フィルムをロール状に巻き取るまでの間に行うことが生産性を向上させる意味で好ましい。
積層方法としてはラミネート加工が好ましい。圧着方法としては真空加圧、加圧またはその組合せのいずれでも行なうことができる。圧着時の温度は20℃以上80℃未満が好ましい。20℃以上であれば保護フィルムと防汚層の密着性が良いため好ましい。80℃未満であれば保護フィルムと防汚層の密着が強くなりすぎることを防ぐことができるため好ましい。
【0024】
[エージング]
エージングは基材フィルムX上に防汚層を塗布し、乾燥した後、防汚層が保護フィルムと接した状態でエージングされるが、シート状態、ロール状態を問わず適用できる。ロール状に巻き取った後に、ロール状態でエージングを行う方が生産性に優れ、簡便な方法となる。
【0025】
防汚層が、保護フィルムと接した状態とは、詳しくは、直接的に接した状態のことであり、防汚層と保護フィルムとの間の空気は完全に追い出され、気泡なく密着している状態である。
エージングは30℃以上60℃以下で行われるのが好ましい。30℃以上では、防汚層の架橋反応を促進し、硬化性を高めることができるため好ましい。60℃以下の場合は、防汚層が軟化して、防汚層と接している面の密着が強くなりすぎ、剥離しにくくなるのを防ぐことができるため好ましい。より好ましくは35℃以上55℃以下、更に好ましくは38℃以上52℃以下である。
【0026】
エージング時間は1日以上10日未満が好ましい。1日以上の場合、ロール体の中心部まで十分に熱が伝わるまでに十分な時間であり、巻き芯近くの防汚層まで架橋が不十分となることなく、硬化させられるため好ましい。10日未満であれば、エージング温度が低くても架橋反応は完了しており、生産性が低下することがなく好ましい。
【0027】
[粘着層]
本発明の保護フィルム付き防汚フィルムは、基材フィルムXの防汚層が形成されている面の反対側の面に粘着層を設けてもよい。粘着層を設けることでディスプレイ等に容易に貼り付けることができる。粘着層は、慣用の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、オレフィン系粘着剤(変性オレフィン系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
【0028】
本発明の保護フィルム付き防汚フィルムは、保護フィルムを防汚フィルムの防汚層から剥離した時の保護フィルムの防汚層に接していた面の水の接触角が90°~115°の場合に優れた防汚性を発揮する。水の接触角が90°~110°の場合がより好ましく、95°~105°の場合が最も好ましい。水の接触角が90°以上であると後述する保護フィルムの防汚層と接していた表面が後述の樹脂機能層である場合にも樹脂が転写するおそれがなく、防汚層の防汚性を阻害するおそれがないため好ましい。また水の接触角が115°以下であると、防汚層中の防汚成分が保護フィルムの樹脂機能層に転写するおそれがなく防汚フィルムの防汚性を阻害されるおそれがないため好ましい。
【0029】
また、本発明の保護フィルム付き防汚フィルムは、下記式1を満たす事が好ましい。
|a―b|≦10(°) ・・・ 式1
a:防汚フィルムの防汚層と積層する前の、防汚フィルムの防汚層と接することとなる保護フィルムの表面の水の接触角(°)
b:防汚フィルムの防汚層から剥離した時、防汚フィルムの防汚層と接していた保護フィルムの表面の水の接触角(°)
|a―b|≦10(°)である場合、エージング後、保護フィルムから剥離した後の、防汚フィルムの防汚層の防汚性が低下することを防ぐことができるため好ましい。
【0030】
本発明における保護フィルムは、基材フィルムYの少なくとも片面に樹脂機能層を有する積層フィルムであることが好ましい。基材フィルムYは、ポリエステルフィルムであることが更に好ましく、公知の方法を用いてポリエステル樹脂を溶融押出後延伸されてなるフィルムであって、その厚みが9~250μmのものが好適に用いられる。また、ポリエステル基材フィルムは、各種安定剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、酸化防止剤、及び可塑剤などを含有していてもよい。
【0031】
前記ポリエステル基材フィルムを構成するポリエステル樹脂はホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6- ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT) 等が例示され、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6- ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸( 例えば、P - オキシ安息香酸など) 等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、ジオール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60 モル% 以上、好ましくは80 モル%以上がエチレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリエステルであることが好ましい。
【0032】
本発明においては、保護フィルムの樹脂機能層の接着性を高める目的として、基材フィルムYと樹脂機能層の間には易接着層を設けてもよい。易接着層に使用する樹脂は、特に限定されるわけではないが、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系組成物のいずれか1つもしくは2つ、ないしは3つの組成が含有されていることが好ましく、必要に応じて架橋剤が併用されていてもよい。易接着層を設ける方法としては、基材フィルムYの製膜中に設けるインラインコート法でも、ベースフィルム製膜後に設けるオフラインコート法でもよいが、コストなどの観点からインラインコート法の方が好ましい。
【0033】
保護フィルムには、片面、もしくは両面に樹脂機能層を設けてもよい。樹脂機能層の組成としては、シリコーン系、環状オレフィン系、非環状オレフィン系、およびフッ素系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、主となる樹脂として用いてもよく、もしくはバインダー樹脂の添加剤として使用してもよい。バインダー樹脂としては特に限定はなく、例えば、アクリル基やビニル基、エポキシ基等の官能基をUV照射により硬化することで得られるUV硬化系の樹脂や、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アクリル系等の熱可塑樹脂や、エポキシ系、メラミン系等の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0034】
保護フィルムの樹脂機能層を構成する全樹脂分のうち質量濃度60%以上がシリコーン系、環状オレフィン系、非環状オレフィン系、およびフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であることが好ましい。質量濃度が60%以上であると防汚層と積層する前後の接触角差の絶対値である|a―b|を効果的に10°以下とすることができて好ましい。より好ましくは80質量%以上である。上限は100質量%であっても構わず、98質量%以下でも構わない。
【0035】
シリコーン系樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、反応性硬化型シリコーン樹脂、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0036】
反応性硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。
【0037】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーンニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC752、LTC755、LTC760A、LTC850など)および熱UV硬化型(LTC851、BY24-510、BY24-561、BY24-562など)、信越化学社製の溶剤付加型(KS-774、KS-882、X62-2825など)溶剤付加+UV硬化型(X62-5040、X62-5065、X62-5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62-2835、X62-2834、X62-1980など)などが挙げられる。縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62-7028A/B、X62-7052、X62-7205、X62-7622、X62-7629、X62-7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56-A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF-UV265AMなど)が挙げられる。
【0038】
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することもできる。
【0039】
環状オレフィン系樹脂は、重合成分として環状オレフィンを含む。環状オレフィンは、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンであり、単環式オレフィン、二環式オレフィン、三環以上の多環式オレフィンなどに分類できる。
【0040】
単環式オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状C4-12シクロオレフィン類などが挙げられる。
【0041】
二環式オレフィンとしては、例えば、2-ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネンなどのアルキル基(C1―4アルキル基)を有するノルボルネン類;5-エチリデン-2-ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニル-2-ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5-シアノ-2-ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5-フェニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-5-メチル-2-ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;オクタリン;6-エチル-オクタヒドロナフタレンなどのアルキル基を有するオクタリンなどが例示できる。
【0042】
多環式オレフィンとしては、例えば、ジシクロペンタジエン;2,3-ジヒドロジシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノシクロペンタジエノナフタレン、メタノオクタヒドロシクロペンタジエノナフタレンなどの誘導体;6-エチル-オクタヒドロナフタレンなどの置換基を有する誘導体;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、シクロペンタジエンの3~4量体などが挙げられる。
【0043】
非環状オレフィン系樹脂は、重合成分として非環状オレフィンを含む。非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-イコセン等のアルケン等が挙げられる。
【0044】
ゴムを表面処理用の樹脂として用いることもできる。例えば、ブタジエン、イソプレン等の共重合体が挙げられる。環状オレフィン、非環状オレフィンに関わらず、オレフィン系樹脂は単独で使用してもよく、二種類以上を共重合しても構わない。環状オレフィン系樹脂と非環状オレフィン系樹脂は、部分的に水酸基や酸で変性させてもよい。架橋剤を用いてそれらの官能基と架橋させてもよい。架橋剤は変性基に合わせて適宜選択すればよく、例えば、トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ジイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ジイソシアネート類の水添物などの脂環族イソシアネート類などのイソシアネート系架橋剤の他に、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂などのメラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0045】
フッ素系化合物としては、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキルエーテル基少なくともどちらかを持つ化合物であれば、特に制限はない。フッ素系化合物は一部、酸や水酸基、アクリレート基等により変性してあってもよい。架橋剤を添加して変性部位で架橋してもよい。もしくは、UV硬化系樹脂にパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキルエーテル基少なくともどちらかを持つ化合物を添加し、重合してもよい。もしくは反応性の官能基を持たないパーフルオロアルキル基を持つ化合物をバインダー樹脂に少量添加する形での使用でも構わない。
【0046】
以上の記載した樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合しても構わない。
【0047】
前述の保護フィルムの樹脂機能層に用いられる樹脂は、任意の架橋剤を用いて架橋しても構わない。架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ジイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ジイソシアネート類の水添物などの脂環族イソシアネート類などのイソシアネート系架橋剤の他に、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂などのメラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0048】
前述の保護フィルムの樹脂機能層に用いられる樹脂は、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。
【0049】
樹脂を塗布する方法としては、ダイレクトグラビアコーター、マイクログラビアコーター、リバースグラビアコーター、ダイレクトキスコーター、リバースキスコーター、コンマコーター、ダイコーター、バー・ロットタイプの塗布装置等による塗布が挙げられる。乾燥後の樹脂機能層の厚みとしては10nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上800nm以下がより好ましく、20nm以上500nm以下が最も好ましい。10nm以上であると加圧時の耐久性が保持されて好ましい。1000nm以下であると防汚層との剥離力が低下し過ぎず好ましい。
【0050】
樹脂機能層の領域表面平均粗さ(Sa)は、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、さらに好ましくは10nm以下である。領域表面平均粗さが50nm以下では保護フィルムと防汚層を貼り付けた際に凹凸が転写されてしまい、保護フィルムを剥離した後の防汚フィルムの外観を悪化させるおそれがないため好ましい。なお、前記領域表面平均粗さ(Sa)は、非接触表面形状計測システム(菱化システム社製、VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値で示している。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 936μm×702μm
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
【0051】
樹脂機能層の形成方法や、材料の種類は様々挙げられるが、防汚層の防汚性発現には、保護フィルムの防汚層に接していた面の水の接触角が90°~115°であり、さらに式1の条件を満たすことが好ましく、方法や材料を特に限定されるものではない。
|a―b|<10(°) ・・・ 式1
a:防汚フィルムの防汚層と積層する前の、防汚フィルムの防汚層と接することとなる保護フィルムの表面の水の接触角(°)
b:防汚フィルムの防汚層から剥離した時、防汚フィルムの防汚層と接していた保護フィルムの表面の水の接触角(°)
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[評価方法]
(1)初期接触角(°)
水の接触角の測定は、接触角計(協和界面科学社製の「FACE接触角計CA-X」)を用いて、22℃、60%RHの条件下で、得られた保護フィルムの試料片を樹脂機能層を上にして水平に置き、水で各N=5回測定した接触角の平均値を接触角とした。尚、水の接触角を求める際、滴下量を1.8μLとし1分間静置後の接触角を読み取った。
【0054】
(2)剥離後接触角(°)
剥離後接触角は、防汚層を塗布、乾燥後、対象となる保護フィルムを空気が入らないように防汚層にラミネートし、40℃で72時間エージングした後に保護フィルムを剥離した時の、保護フィルムの剥離面の水の接触角を剥離後の水の接触角とする。なお、防汚フィルムと保護フィルムが積層された保護フィルム付き防汚フィルムが入手された時には、ラミネートまでの工程は不要である。接触角の測定方法は初期接触角の測定と同様にした。また、剥離後の防汚層の水接触角も測定し、合せて表1に記載した。
【0055】
(3)防汚性
防汚性は、防汚フィルムの防汚層に保護フィルムを空気が入らないようにラミネートし、40℃で72時間エージングした後にマジックインキ(M500-T1寺西化学工業社製)のインクのはじき性によって判断した。保護フィルムが樹脂機能層を有する場合は、樹脂機能層を防汚フィルムの防汚層に接するようにラミネートした。はじき性が良く、1
秒未満で描画線が1mm以下になる場合を防汚性○とし、1秒以上5秒未満で描画線が1mm以下になる場合を防汚性△、5秒以上経ってもインクがはじかず、描画線幅が1mm以上である場合を防汚性×とした。
【0056】
[防汚層の樹脂溶解液Aの調製]
防汚層として、フッ素系の樹脂をイソシアネート系の架橋剤で架橋したものを用いた。
フッ素樹脂溶液(固形分30質量%、エフクリアKD270R、 関東電化工業社製)100質量部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(固形分100質量%、デュラネートTPA-100、旭化成社製)8.1重量部をメチルイソブチルケトンで希釈し、固形分20%の樹脂溶解液Aを調製した。
【0057】
[防汚層の樹脂溶解液Bの調製]
防汚層として、シリコーン系の樹脂にフッ素系成分を含有したものを用いた。
フッ素成分含有シリコーン樹脂溶液(固形分100質量%、KR-400F、信越化学工業社製)100質量部をメチルイソブチルケトンで希釈し、固形分20%の樹脂溶解液Bを調製した。
【0058】
(実施例1)
保護フィルムの塗布層として、熱付加型シリコーン(固形分30質量%、LTC752 東レ・ダウコーニング社製)100質量部、硬化触媒(SRX212 東レ・ダウコーニング社製)0.5質量部、密着向上剤(SD7200 東レ・ダウコーニング社製)0.5質量部を、メチルエチルケトン、トルエン、ノルマルヘプタンを質量比で1:1:1となるように混合した混合溶媒で希釈し、固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。保護フィルムの基材フィルムYとしては、厚さ50μmの片面易接着層付二軸ポリエステルフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡社製)を使用した。ポリエステルフィルムの易接着層を有しない面に、固形分1%に調液した塗布液を、乾燥後の塗布層の厚みが50nmとなるように塗布し、130℃で60秒乾燥し、保護フィルムを得た。
【0059】
防汚層を形成する基材フィルムXとして、厚さ125μmの片面易接着層付二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡社製)を使用した。調液した防汚層の樹脂溶解液Aを基材フィルムXであるポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着層を有しない面に、乾燥後の防汚層の厚みが10μmとなるように塗布し、100℃で90秒乾燥し、防汚フィルムAを作成した。乾燥後の防汚層に保護フィルムの樹脂機能層が接するように、ハンドローラーで空気を追い出しながら張り合わせ、真空ラミネーター(エヌ・ピー・シー社製、LM-30×30型)にて真空加圧によりラミネートを行なった(真空3分、真空加圧5分、1気圧)。その後、貼り合わせたままの状態で40℃で72時間エージングを行なった。
【0060】
(実施例2)
フッ素樹脂(固形分30質量%、エフクリアKD270R、関東電化社製)100質量部、硬化剤(固形分100質量%、MR-400 東ソー社製)17量部、硬化触媒(固形分濃度100質量%、ネオスタンU-860、日東化成社製)0.15重量部を、メチルエチルケトン、トルエンを質量比で1:1となるように混合した混合溶媒で希釈し、固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。基材フィルムYに厚みが50nmになるように塗布し130℃で60秒乾燥後、実施例1と同様にして保護フィルムを作成した。その後、実施例1と同様に防汚フィルムAに貼り合わせ、ラミネートとエージングを行った。
【0061】
(実施例3)
環状オレフィン樹脂(固形分100質量%、TOPAS6017S、ポリプラスチックス社製)を、トルエン、テトラヒドロフランを質量比で4:1となるように混合した混合溶媒で希釈し固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。基材フィルムYに厚みが50nmになるように塗布し130℃で60秒乾燥し、保護フィルムを得た。実施例1と同様に前記保護フィルムを防汚フィルムAに張り合わせ、ラミネートとエージングを行った。
【0062】
(実施例4)
非環状オレフィン樹脂(固形分100質量%、GI-1000、日本曹達社製)100質量部、硬化剤(固形分質量100%、MR-400、東ソー社製)17.6質量部、硬化触媒(固形分濃度100質量%、ネオスタンU-860、日東化成社製)0.6重量部を、メチルエチルケトン、トルエンを質量比で1:1となるように混合した混合溶媒で希釈し、固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。基材フィルムYに厚みが50nmになるように塗布し130℃で60秒乾燥し、保護フィルムを得た。実施例1と同様に前記保護フィルムを防汚フィルムAに貼り合わせ、ラミネートとエージングを行った。
【0063】
(実施例5)
実施例1と同一処方にて保護フィルムを得た。防汚層を形成する基材フィルムXとして厚さ125μmの片面易接着層付二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡社製)を使用し、調液した防汚層の樹脂溶解液Bを基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着層を有しない面に、乾燥後の防汚層の厚みが10μmとなるように塗布し、100℃で90秒乾燥し、防汚フィルムBを作成した。乾燥後の防汚層に保護フィルムの樹脂機能層が接するように、ハンドローラーで空気を追い出しながら張り合わせ、真空ラミネーター(エヌ・ピー・シー社製、LM-30×30型)にて真空加圧によりラミネートを行なった(真空3分、真空加圧5分、1気圧)。その後、貼り合わせたままの状態で40℃で72時間エージングを行なった。
【0064】
(比較例1)
ポリエステルウレタン樹脂(固形分33質量%、バイロンUR-1350、東洋紡社製)100質量部、添加剤(固形分質量40%、メガファックRS-75、DIC社製)3質量部を、メチルエチルケトン、トルエンを質量比で1:1となるように混合した混合溶媒で希釈し、固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。基材フィルムYに厚みが50nmになるように塗布し130℃で60秒乾燥し、保護フィルムを得た。前記保護フィルムを防汚フィルムに貼り合わせ、ラミネートとエージングを行った。
【0065】
(比較例2)
アクリル酸エステル(固形分100質量%、NKエステルA-DPH、新中村化学工業社製)100質量部、フッ素化合物(固形分質量100%、オプツールDAC-HP、ダイキン工業社製)1質量部、開始剤(固形分濃度100質量%、OMNIRAD127、IGM Resins社製)10重量部を、メチルエチルケトン、トルエンを質量比で1:1となるように混合した混合溶媒で希釈し、固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。基材フィルムYに厚みが1000nmになるように塗布し90℃で30秒乾燥後、高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2となるように紫外線を照射することで保護フィルムを得た。その後、実施例1と同様に前記保護フィルムを防汚フィルムに貼り合わせ、ラミネートとエージングを行った。
【0066】
(比較例3)
メラミン樹脂(固形分30質量%、スーパーベッカミンL-109-65、DIC社製)100質量部、添加剤(固形分質量5%、メガファックF444、DIC社製)3質量部、添加剤(SD7200 東レ・ダウコーニング社製)1質量部、触媒(固形分量5%、ベッカミンP-198、DIC社製)を3質量部、メチルエチルケトン、トルエンを質量比で1:1となるように混合した混合溶媒で希釈し、固形分1質量%の樹脂機能層の塗布液を作成した。基材フィルムYに厚みが50nmになるように塗布し130℃で60秒乾燥し、保護フィルムを得た。実施例1と同様に前記保護フィルムを防汚フィルムに貼り合わせ、ラミネートとエージングを行った。
【0067】
(比較例4)
比較例1と同一処方にて保護フィルムを得た。また、実施例5と同様にして防汚フィルムBを作成した。乾燥後の防汚層に保護フィルムの樹脂機能層が接するように、ハンドローラーで空気を追い出しながら張り合わせ、真空ラミネーター(エヌ・ピー・シー社製、LM-30×30型)にて真空加圧によりラミネートを行なった(真空3分、真空加圧5分、1気圧)。その後、貼り合わせたままの状態で40℃で72時間エージングを行なった。
【0068】
[評価結果]
実施例1~5は剥離後の保護フィルムの樹脂機能層の水の接触角が90°~115°であり、防汚フィルムの防汚層は優れた防汚性を発現した。比較例1~4は剥離後の水の接触角が90°未満のため、保護フィルムの樹脂機能層の構成成分の一部が防汚フィルムの防汚層へ転写したためか、防汚層の防汚性が低下した。
【0069】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の保護フィルム付き防汚フィルムは、エージング後も優れた防汚性を有し、ディスプレイの保護や、建材、家電、家具等を保護するための防汚フィルムとして好適に用いることができる。