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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】回転角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20231212BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01L3/10 305
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020005283
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113692
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】外山 祐一
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252840(JP,A)
【文献】特開2007-232617(JP,A)
【文献】特開2006-29937(JP,A)
【文献】特開2008-128961(JP,A)
【文献】特開2005-94864(JP,A)
【文献】特開2007-183121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 - 5/252
G01D 5/39 - 5/62
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に対して一体回転可能に設けられている主動歯車と噛み合う従動歯車である補正対象従動歯車と、
前記補正対象従動歯車の回転に基づき電気信号を生成するセンサと、
前記センサによって生成される電気信号に基づいて、前記補正対象従動歯車の回転角度である従動側回転角度を演算する演算部と、を備え、
前記補正対象従動歯車の歯数は、前記主動歯車の歯数を整数で割った歯数をなしており、
前記演算部は、前記従動側回転角度を演算する際に当該従動側回転角度を補正するために用いる補正角度を記憶しており、
前記補正角度は、前記補正対象従動歯車を前記整数の回数回転させてその角度領域全域で前記従動側回転角度を求め、求めた前記従動側回転角度と実際の前記補正対象従動歯車の回転角度との偏差を角度領域全域で求め、角度領域全域での偏差を0から360度の角度領域での偏差となるように、前記整数の回数回転させることによって得られる相対的に同じ回転角度に対応した個数の偏差を平均した平均値として求めたものである回転角度検出装置。
【請求項2】
前記補正対象従動歯車とは別の、前記主動歯車と噛み合う従動歯車である補正対象外従動歯車と、
前記センサとは別の、前記補正対象外従動歯車の回転に基づき電気信号を生成する第2センサとを備え、
前記補正対象従動歯車と前記補正対象外従動歯車とは、互いに歯数が異なっており、
前記演算部は、前記第2センサによって生成される電気信号に基づいて、前記補正対象外従動歯車の回転角度を演算するとともに、前記補正対象外従動歯車の回転角度に対しては前記補正角度に基づいた補正を行わない請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記従動歯車を前記主動歯車へ向けて付勢する付勢部材を備える請求項1または2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記回転軸に作用するトルクを検出するトルクセンサを備える請求項1~3のいずれか一項に記載の回転角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸の回転角を検出する回転角検出装置が開示されている。特許文献1に記載の回転角検出装置は、回転軸と一体的に回転する主動歯車としての第1の歯車と、第1の歯車に噛み合う従動歯車としての第2の歯車と、第2の歯車に噛み合う従動歯車としての第3の歯車とを有している。2つの従動歯車の歯数は主動歯車の歯数よりも少なく設定されている。また、2つの従動歯車の歯数が互いに異なっており、主動歯車が回転したときに2つの従動歯車の回転角度が互いに異なるようにされている。演算部は、2つの従動歯車にそれぞれ対応して設けられたセンサにより従動歯車の回転角度を検出し、これら検出される回転角度に基づいて主動歯車の回転角度、すなわち回転軸の回転角度を演算するようにしている。
【0003】
センサの出力の電気的な誤差や歯車の機械的な誤差によって、主動歯車の回転角度の演算精度は低下する。そこで、特許文献1に記載の回転角検出装置では、そうした誤差によって生じる、実際の主動歯車の回転角度と演算した主動歯車の回転角度との偏差を補正角度として記憶しており、主動歯車の回転角度の演算の際に、当該補正角度を用いて主動歯車の回転角度を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-29937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従動歯車の回転角度を演算する演算部には、検出する従動歯車の回転角度を0から360度の角度領域で補正する機能が付加されたものがある。当該演算部は、0から360度の角度領域で偏差を求めて、当該偏差を補正角度として記憶している。しかし、従動歯車が1回転以上回転した場合の360度を超える角度領域では、記憶した補正角度を用いて従動歯車の回転角度を補正しても、従動歯車の回転角度の検出精度を高めることが困難であった。例えば、演算部は、従動歯車のある回転角度である180度と当該回転角度から従動歯車をさらに1回転させたときの回転角度である540度、すなわち相対的には同じ180度とで、同じ補正角度を用いて従動歯車の回転角度を補正するようにしている。しかし、1回転目と2回転目とでは、従動歯車の相対的な回転角度が同じ180度であったとしても、主動歯車と従動歯車とが噛み合う位置が異なることから、従動歯車の回転角度をそれぞれ異なる補正角度で補正するべきときがある。この場合、記憶した補正角度を用いて従動歯車の回転角度を補正すると、補正する前の従動歯車の回転角度と実際の従動歯車の回転角度との乖離よりも、補正した後の従動歯車の回転角度と実際の従動歯車の回転角度との乖離の方が大きくなることがあり、従動歯車の回転角度の検出精度が低下することがある。このため、検出する従動歯車の回転角度をより適切に補正して、従動歯車の回転角度の検出精度を高めることができる回転角度検出装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する回転角度検出装置は、回転軸に対して一体回転可能に設けられている主動歯車と噛み合う従動歯車である補正対象従動歯車と、前記補正対象従動歯車の回転に基づき電気信号を生成するセンサと、前記センサによって生成される電気信号に基づいて、前記補正対象従動歯車の回転角度である従動側回転角度を演算する演算部と、を備え、前記補正対象従動歯車の歯数は、前記主動歯車の歯数を整数で割った歯数をなしており、前記演算部は、前記従動側回転角度を演算する際に当該従動側回転角度を補正するために用いる補正角度を記憶しており、前記補正角度は、前記補正対象従動歯車を前記整数の回数回転させてその角度領域全域で前記従動側回転角度を求め、求めた前記従動側回転角度と実際の前記補正対象従動歯車の回転角度との偏差を角度領域全域で求め、角度領域全域での偏差を0から360度の角度領域での偏差となるように、前記整数の回数回転させることによって得られる相対的に同じ回転角度に対応した個数の偏差を平均した平均値として求めたものである。
【0007】
演算部で記憶している補正角度は、相対的に同じ回転角度に対応した整数個の偏差を平均した平均値である。補正角度を求める際には、0から360度の角度領域での偏差だけでなく、360度を超える角度領域での偏差を考慮して補正角度を求めるようにしている。360度を超える角度領域の偏差も考慮して求めた補正角度に基づいて従動側回転角度を補正していることから、0から360度の角度領域の偏差のみで求めた補正角度に基づいて従動側回転角度を補正する場合と比べて、全体として従動側回転角度をより適切に補正することができる。例えば、従動歯車の回転角度が540度のときの補正角度は、従来であれば、従動歯車の回転角度が540度のときの偏差を考慮せずに、従動歯車の回転角度が180度のときの偏差に基づいて設定されたものであった。一方、上記構成では、従動歯車の回転角度が540度のときの補正角度は、従動歯車の回転角度が180度のときの偏差に加えて、従動歯車の回転角度が540度のときの偏差を考慮している。このため、補正前の従動側回転角度と実際の従動歯車の回転角度との乖離よりも、補正後の従動側回転角度と実際の従動歯車の回転角度との乖離の方が大きくなることを抑えることができる。これにより、従動側回転角度をより適切に補正することができる。
【0008】
上記の回転角度検出装置において、前記補正対象従動歯車とは別の、前記主動歯車と噛み合う従動歯車である補正対象外従動歯車と、前記センサとは別の、前記補正対象外従動歯車の回転に基づき電気信号を生成する第2センサとを備え、前記補正対象従動歯車と前記補正対象外従動歯車とは、互いに歯数が異なっており、前記演算部は、前記第2センサによって生成される電気信号に基づいて、前記補正対象外従動歯車の回転角度を演算するとともに、前記補正対象外従動歯車の回転角度に対しては前記補正角度に基づいた補正を行わないことが好ましい。
【0009】
上記構成では、補正対象従動歯車と歯数の異なる補正対象外従動歯車を備えることによって、主動歯車の回転角度や回転数を求める場合の情報を提供することが可能になる。これらの情報により、主動歯車の回転角度を絶対角度で求めることができるようになる。
【0010】
上記の回転角度検出装置は、前記従動歯車を前記主動歯車へ向けて付勢する付勢部材を備えるものに好適である。
従動歯車を主動歯車へ向けて付勢することによって、主動歯車と従動歯車との間の噛み合いを好適に確保することができる。しかし、付勢部材を備える回転角度検出装置では、従動歯車を主動歯車へ向けて付勢することによって従動歯車におけるヒステリシスの発生が抑えられるため、主動歯車の歯の状態から従動側回転角度の演算が受ける影響が大きくなりやすい。従動歯車を主動歯車へ向けて付勢した場合には、従動歯車を主動歯車へ向けて付勢しない場合と比べて、例えば、0から360度の角度領域では、補正前の従動側回転角度が実際の補正対象従動歯車の回転角度よりも大となる乖離が生じる一方、360度を超える角度領域では、補正前の従動側回転角度が実際の補正対象従動歯車の回転角度よりも小となる乖離が生じることがある。この場合、従来であれば、0から360度の角度領域の偏差のみで求めた補正角度に基づいて従動側回転角度を補正することから、0から360度の角度領域では、補正前の従動側回転角度が実際の補正対象従動歯車の回転角度よりも大となる乖離を抑えるように従動側回転角度を補正する。しかし、360度を超える角度領域でも同様の補正角度で従動側回転角度を補正することから、補正前の従動側回転角度が実際の補正対象従動歯車の回転角度よりも小となる乖離に対して、小となる乖離をより大きく乖離するように補正することになる。付勢部材を備えた回転角度検出装置ではこうした事情があるため、360度を超える角度領域の偏差も考慮した補正角度を用いることで従動側回転角度をより適切に補正できるという作用を好適に享受することができる。
【0011】
上記の回転角度検出装置において、前記回転軸に作用するトルクを検出するトルクセンサを備えることが好ましい。
上記構成によれば、従動側回転角度だけでなく、回転軸に作用するトルクについての情報を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転角度検出装置によれば、検出する従動歯車の回転角度をより適切に補正して、従動歯車の回転角度の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ピニオン軸の軸心と直交する線を含み、かつ支持部材とカバーとの間の面に沿って切断した検出装置の断面図。
図2】ピニオン軸の軸心を含み、第1従動歯車の軸心と第2従動歯車の軸心との中間位置の線を含む面に沿って切断した検出装置の断面図。
図3】トルクセンサの概略斜視図。
図4】各センサ、マイクロコンピュータ、制御装置の概略構成を示すブロック図。
図5】第1従動側回転角度及び第2従動側回転角度とピニオン軸の絶対角度との関係を示すグラフ。
図6】補正前の第1従動側回転角度と補正角度との関係を0から360度の角度領域で示すグラフ。
図7】補正前の第1従動側回転角度と実際の第1従動歯車の回転角度との関係を角度領域全域で示すグラフ。
図8】補正前の第1従動側回転角度と実際の第1従動歯車の回転角度との偏差を角度領域全域で求めたグラフ。
図9】本実施形態の場合を実線で示し、0から360度の角度領域の偏差のみで求めた補正角度に基づいて補正した第1従動側回転角度を補正した従来の場合を破線で示しており、補正後の第1従動側回転角度と実際の第1従動歯車の回転角度との偏差を角度領域全域で求めたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
検出装置の一実施形態について図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、検出装置1は、例えば車両の操舵装置に搭載されるものである。回転軸としてのピニオン軸2は、ステアリングホイールに連結されたステアリング軸を構成するものである。検出装置1は、ステアリングホイールのステアリング操作を通じてピニオン軸2に加わるトルクを操舵トルクとして検出するトルクセンサと、ピニオン軸2の360度を超える多回転にわたる回転角度である絶対角度θpaを検出する回転角センサとが組み合わせられてなるトルクアングルセンサ装置である。
【0015】
検出装置1は、センサハウジング10を有している。センサハウジング10は、ピニオン軸2を収容するギヤハウジング3に取り付けられている。センサハウジング10は、互いに連通する挿通部11と収容部12とを有している。挿通部11は、筒状をなしており、その軸線がピニオン軸2の軸方向Xに延びている。挿通部11には、ピニオン軸2が挿通されている。ピニオン軸2は、ステアリングホイール側の入力軸、ステアリングホイールと反対側である転舵輪側の出力軸、及びこれら入力軸と出力軸とを連結するトーションバーを有している。収容部12は、箱状体をなしており、挿通部11の軸方向Xに対して交わる方向の側面から突出している。収容部12は、軸方向Xに対して交わる方向へ向けて開口している。収容部12の開口部12aは、カバー13によって閉塞されている。
【0016】
図2に示すように、センサハウジング10の内部には、トルクセンサ20及び回転角度センサ30が設けられている。
図3に示すように、トルクセンサ20は、第1磁気ヨーク21、第2磁気ヨーク22、第1集磁リング23、第2集磁リング24、第1トルク検出用磁気センサ25、第2トルク検出用磁気センサ26、及び多極磁石27を有している。
【0017】
多極磁石27は、ピニオン軸2の入力軸に一体回転可能に固定されている。多極磁石27は、筒状をなしており、その周方向に沿ってS極とN極とが交互に設けられている。
ピニオン軸2の出力軸は筒状をなしている部分を有しており、当該筒状をなしている部分がピニオン軸2の入力軸を覆うようにピニオン軸2の入力軸側へ向けて延びている。第1磁気ヨーク21及び第2磁気ヨーク22は、ピニオン軸2の出力軸の筒状をなしている部分に固定されている。第1磁気ヨーク21及び第2磁気ヨーク22の径方向内側には、多極磁石27が位置している。第1磁気ヨーク21及び第2磁気ヨーク22は、多極磁石27の磁界に応じた磁気回路を形成する。
【0018】
第1磁気ヨーク21は、円環板状の環状部21a及び板状の複数の歯21bを有している。複数の歯21bは、環状部21aの内周縁に沿って等間隔で設けられている。複数の歯21bは、ピニオン軸2の軸方向Xに沿って延びている。第2磁気ヨーク22は、第1磁気ヨーク21と同様に、円環板状の環状部22aおよび複数の歯22bを有している。複数の歯22bは、環状部22aの内周縁に沿って等間隔で設けられている。複数の歯22bは、ピニオン軸2の軸方向Xに沿って延びている。第1磁気ヨーク21の歯21bと第2磁気ヨーク22の歯22bとは、ピニオン軸2の軸方向Xにおいて互いに反対側へ向けて延び、かつ円周方向において交互に位置している。
【0019】
第1集磁リング23及び第2集磁リング24は、ピニオン軸2の軸方向Xにおいて並んで設けられる。第1集磁リング23及び第2集磁リング24は、センサハウジング10の内部に取り付けられる。第1集磁リング23は、第1磁気ヨーク21の周囲を囲むかたちで設けられている。第2集磁リング24は、第2磁気ヨーク22の周囲を囲むかたちで設けられている。第1集磁リング23は、第1磁気ヨーク21からの磁束を誘導する。第2集磁リング24は、第2磁気ヨーク22からの磁束を誘導する。
【0020】
第1集磁リング23は、第1リング部23a及び第1集磁部23bを有している。第1リング部23aは、第1磁気ヨーク21の外周面に沿って湾曲するC字状に設けられている。第1集磁部23bは、2つの固定部23c,23d、連結部23e、及び2つの第1集磁突部23f,23gを有している。2つの固定部23c,23dは、第1リング部23aの外周面に取り付けられる部分である。2つの固定部23c,23dは、第1リング部23aの外周面に沿って湾曲している。連結部23eは、2つの固定部23c,23dを連結する部分である。連結部23eの第1リング部23a側の面と第1リング部23aの外周面との間には隙間が設けられている。2つの第1集磁突部23f,23gは、連結部23eにおける第2集磁リング24側の端部に設けられている。2つの第1集磁突部23f,23gは、第1リング部23aの径方向外側に延びている。
【0021】
第2集磁リング24は、第2リング部24a及び2つの第2集磁突部24b,24cを有している。第2リング部24aは、第2磁気ヨーク22の外周面に沿って湾曲するC字状に設けられている。2つの第2集磁突部24b,24cは、第2リング部24aの径方向外側へ向けて延びている。2つの第2集磁突部24b,24cは、ピニオン軸2の軸方向Xにおいて、第1集磁リング23の2つの第1集磁突部23f,23gと対向している。第1トルク検出用磁気センサ25は、第1集磁突部23fと第2集磁突部24bとの間に介在されている。第2トルク検出用磁気センサ26は、第1集磁突部23gと第2集磁突部24cとの間に介在されている。第1トルク検出用磁気センサ25及び第2トルク検出用磁気センサ26は、後述の基板35に設けられている。第1トルク検出用磁気センサ25及び第2トルク検出用磁気センサ26は、第1集磁リング23及び第2集磁リング24に誘導される磁束を検出する磁気センサである。第1トルク検出用磁気センサ25及び第2トルク検出用磁気センサ26としては、例えばホールセンサが採用されている。
【0022】
ステアリングホイールの操作を通じてピニオン軸2のトーションバーが捩れ変形すると、多極磁石27と第1磁気ヨーク21との回転方向における相対位置、ならびに多極磁石27と第2磁気ヨーク22との回転方向における相対位置が変化する。これに伴い、多極磁石27から第1磁気ヨーク21を通じて第1集磁リング23に導かれる磁束密度が変化する。多極磁石27から第2磁気ヨーク22を通じて第2集磁リング24に導かれる磁束密度も変化する。
【0023】
図4に示すように、第1トルク検出用磁気センサ25は、第1トルク検出用演算部25aに接続されている。第2トルク検出用磁気センサ26は、第2トルク検出用演算部26aに接続されている。第1トルク検出用磁気センサ25は、磁束密度に応じた電気信号St1を生成する。第1トルク検出用演算部25aは、第1トルク検出用磁気センサ25が生成した電気信号St1に基づいてトーションバーに作用するトルクを第1操舵トルクTh1として演算する。また、第2トルク検出用磁気センサ26は、磁束密度に応じた電気信号St2を生成する。第2トルク検出用演算部26aは、第2トルク検出用磁気センサ26が生成した電気信号St2に基づいてトーションバーに作用するトルクを第2操舵トルクTh2として演算する。
【0024】
図1及び図2に示すように、回転角度センサ30は、主動歯車31、第1従動歯車32、第2従動歯車33、支持部材34、基板35、付勢部材36、第1回転角度検出用磁気センサ37、及び第2回転角度検出用磁気センサ38を有している。
【0025】
主動歯車31は、ピニオン軸2の入力軸に対して一体回転可能に設けられている。主動歯車31は、円筒状に形成されていて、外周面には複数の歯31aが形成されているとともに内周面にはピニオン軸2の入力軸が嵌め込まれている。主動歯車31の外周面に形成された歯31aの歯数は、例えば48歯に設定されている。
【0026】
基板35は、センサハウジング10の収容部12の内底面に取り付けられている。支持部材34は、第1従動歯車32及び第2従動歯車33を回転可能に支持する。支持部材34は、センサハウジング10の収容部12の内底面に取り付けられている。支持部材34の中央部分と収容部12の内底面との間には隙間が形成されており、基板35は支持部材34と収容部12の内底面との間に挟み込まれている。支持部材34は、矩形板状に形成されている。支持部材34の長側面34aは、主動歯車31と対向している。支持部材34には、第1支持穴50及び第2支持穴51が形成されている。第1支持穴50及び第2支持穴51は、支持部材34においてピニオン軸2の軸方向Xに延びている穴である。第1支持穴50は、支持部材34における一方の第1短側面34bと主動歯車31側の長側面34aとが交わる第1角部の近傍に設けられている。第2支持穴51は、支持部材34における他方の第2短側面34cと主動歯車31側の長側面34aとが交わる第2角部の近傍に設けられている。第1支持穴50及び第2支持穴51は、ピニオン軸2の軸方向Xから見た場合、主動歯車31の半径方向に沿って延びる長穴状をなしている。第1支持穴50と第2支持穴51との間の離間長さは、主動歯車31側が最も短くなるとともに、その離間長さは、主動歯車31から遠ざかるほど長くなる。
【0027】
第1従動歯車32は、円板状の歯車部61及び円柱状の軸部62を有している。歯車部61の外周面には複数の歯61aが設けられている。歯車部61の歯61aは、主動歯車31の歯31aと噛み合っている。歯車部61の外周面に形成された歯61aの歯数は、例えば24歯に設定されている。すなわち、第1従動歯車32の歯61aの歯数は、主動歯車31の歯31aの歯数の1/2の歯数をなしている。軸部62は、その一端面が歯車部61における基板35側の面の中央に接続されている。軸部62の外径は、歯車部61の外径よりも小さく設定されている。軸部62における基板35側の他端面には、凹部62aが設けられている。凹部62aは、軸部62を軸方向Xと直交する方向に切断した断面において、円状をなしている。凹部62aには、円板状の第1永久磁石62bが配置されている。第1永久磁石62bは、周方向に異なる極性の磁極が交互に並ぶように着磁されている。主動歯車31が回転すると、主動歯車31と噛み合う第1従動歯車32に設けられた第1永久磁石62bは回転する。特許請求の範囲で記載した補正対象従動歯車は、第1従動歯車32に対応している。
【0028】
第2従動歯車33は、円板状の歯車部63及び円柱状の軸部64を有している。歯車部63の歯63aは、主動歯車31の歯31aと噛み合っている。歯車部63の外周面に形成された歯63aの歯数は、第1従動歯車32の歯車部61の歯61aの歯数と異なり、例えば26歯に設定されている。軸部64における基板35側の他端面には、凹部64aが設けられている。凹部64aは、軸部62を軸方向Xと直交する方向に切断した断面において、円状をなしている。凹部64aには、円板状の第2永久磁石64bが配置されている。第2従動歯車33の歯車部63の歯63aの歯数と第1従動歯車32の歯車部61の歯61aの歯数とが異なることを除いて、第1従動歯車32と第2従動歯車33とは同一形状をなしている。主動歯車31が回転すると、主動歯車31と噛み合う第2従動歯車33に設けられた第2永久磁石64bは回転する。特許請求の範囲で記載した補正対象外従動歯車は、第2従動歯車33に対応している。
【0029】
支持部材34には、板状のストッパ53が装着されている。ストッパ53は、支持部材34における基板35と反対側の面を覆っている。第1従動歯車32及び第2従動歯車33の基板35と反対側への移動は、歯車部61及び歯車部63がストッパ53に当接することにより規制される。
【0030】
図1に示すように、支持部材34における基板35と反対側の面には、円柱状の柱部52が設けられている。柱部52は、支持部材34の長手方向において第1支持穴50と第2支持穴51との間の位置、かつ支持部材34の短手方向において第1支持穴50及び第2支持穴51よりも主動歯車31から離れた位置に設けられている。付勢部材36は、柱部52に装着されることで支持部材34に支持されている。付勢部材36としては、金属製のねじりコイルばねが採用されている。
【0031】
付勢部材36は、全体として略V字形状をなしている。付勢部材36は、その中央部に複数回巻かれてなるコイル部36aが設けられているとともに、その両端部には直線状に延びる第1腕部36b及び第2腕部36cが設けられている。円環状をなすコイル部36aは、柱部52に挿入されることで装着されている。第1腕部36bはコイル部36aの一端部に接続されているとともに、第2腕部36cはコイル部36aの他端部に接続されている。第1腕部36bは、軸部62における主動歯車31と反対側の部位に当接している。第2腕部36cは、軸部64における主動歯車31と反対側の部位に当接している。第1腕部36b及び第2腕部36cは、コイル部36aを中心として第1腕部36bと第2腕部36cとの間の角を狭めるように弾性変形する。軸部62及び軸部64は、付勢部材36の弾性力によって、主動歯車31に近接する方向へ向けて常に付勢されている。
【0032】
図2に示すように、基板35における第1従動歯車32側の面には、第1回転角度検出用磁気センサ37が実装されている。第1回転角度検出用磁気センサ37は、軸方向Xにおいて、第1永久磁石62bと対向している。基板35における第2従動歯車33側の面には、第2回転角度検出用磁気センサ38が実装されている。第2回転角度検出用磁気センサ38は、軸方向Xにおいて、第2永久磁石64bと対向している。第1回転角度検出用磁気センサ37及び第2回転角度検出用磁気センサ38は、第1永久磁石62b及び第2永久磁石64bからの磁束を検出する磁気センサである。第1回転角度検出用磁気センサ37及び第2回転角度検出用磁気センサ38としては、例えばホールセンサが採用されている。特許請求の範囲で記載した補正対象従動歯車の回転に基づき電気信号を生成するセンサは、第1回転角度検出用磁気センサ37に対応しており、補正対象外従動歯車の回転に基づき電気信号を生成する第2センサは、第2回転角度検出用磁気センサ38に対応している。
【0033】
図4に示すように、第1回転角度検出用磁気センサ37は、第1回転角度検出用演算部37aに接続されている。第1回転角度検出用磁気センサ37は、第1永久磁石62bから入力された磁束密度に応じた電気信号Sg1を生成する。第1回転角度検出用演算部37aは、第1回転角度検出用磁気センサ37によって生成される電気信号Sg1に基づいて、第1従動歯車32の回転角度である第1従動側回転角度θg1を演算する。第2回転角度検出用磁気センサ38は、第2回転角度検出用演算部38aに接続されている。第2回転角度検出用磁気センサ38は、第2永久磁石64bから入力された磁束密度に応じた電気信号Sg2を生成する。第2回転角度検出用演算部38aは、第2回転角度検出用磁気センサ38によって生成される電気信号Sg2に基づいて、第2従動歯車33の回転角度である第2従動側回転角度θg2を演算する。第1トルク検出用演算部25a、第2トルク検出用演算部26a、第1回転角度検出用演算部37a、及び第2回転角度検出用演算部38aによって、マイクロコンピュータ100が構成されている。特許請求の範囲で記載した回転角度検出装置は、検出装置1の一部に対応している。特許請求の範囲で記載した回転角度検出装置は、第1従動側回転角度θg1を演算する際に当該第1従動側回転角度θg1を補正するものであって、検出装置1のうち、第1従動歯車32、第1回転角度検出用磁気センサ37、及びマイクロコンピュータ100を備えるものである。また、特許請求の範囲で記載した演算部は、マイクロコンピュータ100に対応している。
【0034】
マイクロコンピュータ100は、制御装置110に接続されている。マイクロコンピュータ100は、演算した第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2を制御装置110に提供する。制御装置110は、マイクロコンピュータ100により演算された第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2を取得する。制御装置110は、第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2に基づいて、主動歯車31の回転角度、すなわちピニオン軸2の回転角度を、絶対角度θpaとして演算する。詳しくは、制御装置110は、第1従動側回転角度θg1からアークタンジェントを求めた値、及び第2従動側回転角度θg2からアークタンジェントを求めた値を用いて、ピニオン軸2の絶対角度θpaを演算する。制御装置110における絶対角度θpaの演算を、図5を参照して説明する。
【0035】
図5に示すグラフの縦軸は第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2を示し、横軸はピニオン軸2の絶対角度θpaを示している。実線は第1従動側回転角度θg1の遷移を示し、破線は第2従動側回転角度θg2の遷移を示している。なお、第1回転角度検出用磁気センサ37及び第2回転角度検出用磁気センサ38は、それぞれ同じ1倍の軸倍角を有している。第1従動歯車32の歯61aの歯数と第2従動歯車33の歯63aの歯数との違いにより、実線で示す第1従動側回転角度θg1の波形の位相と破線で示す第2従動側回転角度θg2の波形の位相とは、ピニオン軸2の回転とともにずれていく。なお、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2とは、それぞれ相対角度センサである第1回転角度検出用磁気センサ37及び第2回転角度検出用磁気センサ38が検出することのできる角度領域、すなわち0から360度の角度領域で示される相対角度である。このため、第1従動側回転角度θg1のみ、あるいは第2従動側回転角度θg2のみだけでは、第1従動歯車32及び第2従動歯車33の回転角度が何回転目の回転角度であるのかを認識することができず、ピニオン軸2の多回転の回転角度である絶対角度θpaを求めることができない。
【0036】
制御装置110は、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差を演算する。図5のグラフの太い実線は、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差の絶対値を示している。
【0037】
制御装置110は、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差の値に基づき、図示しないテーブルを参照することにより、第1従動歯車32の回転数γを演算する。回転数γは、第1回転角度検出用磁気センサ37により生成される電気信号の何周期目か、すなわち第1回転角度検出用磁気センサ37の検出することのできる角度領域を何回繰り返しているかを示す整数値である。テーブルには、3つの項目、すなわち第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差、当該角度差の許容範囲、及び第1従動歯車32の回転数γの関係が規定されている。テーブルには、絶対角度θpaを演算する角度領域の全域において、第1回転角度検出用磁気センサ37が検出することのできる角度領域である360度毎に前述の3つの項目が規定されている。制御装置110は、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差の値に基づき、テーブルにおける当該角度差が属する項目を判定し、当該項目に対応する回転数γを検出する。
【0038】
制御装置110は、第1従動歯車32の第1従動側回転角度θg1、及び第1従動歯車32の回転数γに基づいて、絶対角度θpaを演算する。このような、ピニオン軸2の360度を超える多回転にわたる回転角度である絶対角度θpaは、例えば次式(1)に基づき求められる。
【0039】
θpa=mα/z+(m/z)Ωγ …(1)
「m」は第1従動歯車32の歯61aの歯数、「z」は主動歯車31の歯31aの歯数、「Ω」は第1回転角度検出用磁気センサ37が検出することのできる角度領域、「α」は第1従動側回転角度θg1である。本実施形態では、「m」は24、「z」は48、「Ω」は360度である。「mα/z」は、第1回転角度検出用磁気センサ37の検出範囲Ωにおける第1従動歯車32の第1従動側回転角度θg1に対する主動歯車31の回転角度を示している。制御装置110は、式(1)に基づいて、絶対角度θpaを演算する。
【0040】
制御装置110は、マイクロコンピュータ100により演算された第1操舵トルクTh1、第2操舵トルクTh2を取得する。制御装置110は、絶対角度θpa、第1操舵トルクTh1、及び第2操舵トルクTh2に基づいて、例えば、車両の操舵装置に設けられたモータに対する通電制御を実行する。
【0041】
マイクロコンピュータ100の第1回転角度検出用演算部37aには、第1従動側回転角度θg1を0から360度の角度領域で補正する機能が付加されている。一方、マイクロコンピュータ100の第2回転角度検出用演算部38aには、第2従動側回転角度θg2を0から360度の角度領域で補正する機能が付加されていない。第1従動歯車32は主動歯車31の回転角度を演算するために用いられるものであり、第2従動歯車33は主動歯車31の回転数を演算するために用いられるものである。
【0042】
第1回転角度検出用演算部37aは、第1従動側回転角度θg1を演算する際に、補正角度θcを用いて当該第1従動側回転角度θg1を補正している。第1回転角度検出用演算部37aは、第1従動側回転角度θg1を補正するために用いる補正角度θcを記憶している。
【0043】
図6には、第1回転角度検出用演算部37aに記憶されている補正角度θcが実線で示されている。第1回転角度検出用演算部37aは、補正角度θcを0から360度の角度領域で記憶している。補正角度θcを0から360度の角度領域で記憶しているのは、第1回転角度検出用磁気センサ37が0から360度の角度領域で第1従動歯車32の第1従動側回転角度θg1を検出する相対角度センサであることに対応している。
【0044】
図5に示すように、第1回転角度検出用演算部37aは、電気信号Sg1に基づいて補正前の第1従動側回転角度θg1を演算し、当該第1従動側回転角度θg1に対応する補正角度θcを当該第1従動側回転角度θg1に加算することで補正し、補正後の第1従動側回転角度θg1を演算する。第1回転角度検出用演算部37aは、補正後の第1従動側回転角度θg1を制御装置110に対して提供する。
【0045】
補正角度θcの求め方について説明する。補正角度θcの第1回転角度検出用演算部37aに対する記憶は、工場出荷時等に行われる。
補正角度θcを求める際には、まず、第1従動歯車32を2回回転させてその角度領域全域で第1従動側回転角度θg1を求める。第1従動歯車32を2回回転させるのは、第1従動歯車32の歯61aの歯数が主動歯車31の歯31aの歯数を2で割った歯数をなしているためである。第1従動歯車32が2回転したときに主動歯車31が1回転する関係を有していることから、第1従動歯車32と主動歯車31との間の噛み合いは、第1従動歯車32の1回転目と3回転目とで同じであり、2回転目と4回転目とで同じである。第1従動歯車32を2回転させている間に、第1従動歯車32と主動歯車31との間の全ての噛み合わせが生じることから、補正角度θcを求める際には、第1従動歯車32を2回回転させてその角度領域全域で第1従動側回転角度θg1を求めている。なお、第1従動側回転角度θg1を求める際に第1従動歯車32を回転させる回数であり、後述の偏差の平均を求める際に用いる偏差の数である「2」は、ピニオン軸2の回転に関係する各構成要素のうち最も周期の長い構成要素であるピニオン軸2が1回転するのに対応する回数に設定されている。言い換えると、当該「2」は、ピニオン軸2の入力軸に対して一体回転可能に設けられている主動歯車31の歯31aの歯数と第1従動歯車32の歯61aの歯数との最小公倍数の歯数を、第1従動歯車32の歯61aの歯数で割った数に設定されている。
【0046】
図7では、補正角度θcを求める際に演算することによって求めた第1従動側回転角度θg1を実線で示しており、実際の第1従動歯車32の回転角度を破線で示している。実際の第1従動歯車32の回転角度とは、設計上の第1従動歯車32の回転角度ではなく、第1従動歯車32が現実になしている回転角度を理想的に求めた場合の理想角度のことである。図7では、第1従動歯車32を2回転させたとき、すなわち0から720度の角度領域全域で求めた第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度とを図示している。図7に示したように、求めた第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度とは、完全に一致するわけではなく、これらの間には乖離が生じている。
【0047】
次に、求めた第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との偏差を角度領域全域で求める。
図8では、求めた第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との偏差を実線で示している。この偏差は、0から360度の角度領域と360から720度の角度領域とで同じになることもあるが、図8に示したように、0から360度の角度領域と360から720度の角度領域とで異なることがある。図8において、0から360度の角度領域では、補正前の第1従動側回転角度θg1が実際の第1従動歯車32の回転角度よりも大となる乖離が生じている状況が多いことから、全体として偏差が負となる状況が多い。これに対して、図8において、360度から720度の角度領域では、0から360度の角度領域よりも、補正前の第1従動側回転角度θg1が実際の第1従動歯車32の回転角度よりも小となる乖離が生じている状況が多くなっており、全体として偏差が正となる状況が多くなっている。なお、乖離が生じる要因としては、センサの出力の電気的な誤差や歯車の機械的な誤差が挙げられる。センサの出力の電気的な誤差としては、入力される磁束密度に応じて生成される電気信号Sg1,Sg2のばらつきが挙げられる。歯車の機械的な誤差としては、主動歯車31の歯31a及び第1従動歯車32の歯61aの欠けや摩耗等が挙げられる。
【0048】
次に、0から720度の角度領域全域での偏差が0から360度の角度領域での偏差となるように、各偏差を平均している。0から360度の角度領域での偏差となるようにする必要があるのは、第1回転角度検出用磁気センサ37が0から360度の角度領域で第1従動歯車32の第1従動側回転角度θg1を検出する相対角度センサであることに対応している。
【0049】
図6には、0から360度の角度領域での偏差を1点鎖線で示しており、360から720度の角度領域での偏差を2点鎖線で示しており、0から360度の角度領域での偏差と360から720度の角度領域での偏差との中間線、すなわちこれらの偏差の平均値を実線で示している。すなわち、0から720度の角度領域全域での偏差が0から360度の角度領域での偏差となるように、相対的に同じ回転角度に対応した2個の偏差を平均した平均値として求めたものを実線で示している。相対的に同じ回転角度での、0から360度の角度領域での偏差と360から720度の角度領域での偏差との総和を2で割ることで、これら2つの偏差を平均した平均値を求めている。本実施形態でいう平均は相加平均であり、平均値は相加平均値である。相対的に同じ回転角度として例えば180度での平均値は、絶対的な回転角度が180度のときの偏差と絶対的な回転角度が540度のときの偏差とを用いて求めている。第1回転角度検出用演算部37aは、このようにして求めた偏差の平均値を補正角度θcとして記憶している。
【0050】
本実施形態の作用を説明する。
マイクロコンピュータ100の第1回転角度検出用演算部37aで記憶している補正角度θcは、相対的に同じ回転角度に対応した、2個の偏差を平均した平均値である。補正角度θcを求める際には、0から360度の角度領域での偏差だけでなく、360度を超える角度領域での偏差を考慮して補正角度を求めるようにしている。360度を超える角度領域の偏差も考慮して求めた補正角度θcに基づいて第1従動側回転角度θg1を補正していることから、0から360度の角度領域の偏差のみで求めた補正角度に基づいて第1従動側回転角度θg1を補正する場合と比べて、全体として第1従動側回転角度θg1をより適切に補正することができる。
【0051】
例えば第1従動歯車32の回転角度が540度のときの補正角度は、従来であれば、第1従動歯車32の回転角度が540度のときの偏差を考慮せずに、第1従動歯車32の回転角度が180度のときの偏差に基づいて設定されたものであった。しかし、180度のときと540度のときとでは、第1従動歯車32の相対的な回転角度が同じ180度であったとしても、主動歯車31と第1従動歯車32とが噛み合う位置が異なることから、第1従動歯車32の回転角度をそれぞれ異なる補正角度で補正するべきである。
【0052】
図9では、0から360度の角度領域の偏差のみで求めた補正角度に基づいて第1従動側回転角度θg1を補正した場合における、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離を破線で示している。この場合、0から360度の角度領域では、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離は小さくなるものの、360度を超える角度領域では、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離は大きくなっている。
【0053】
本実施形態では、図8に示すように、0から360度のときの偏差及び360度を超える偏差の双方を考慮して第1従動歯車32の第1従動側回転角度θg1を補正するようにしている。例えば、本実施形態では、第1従動歯車32の回転角度が540度のときの補正角度θcは、第1従動歯車32の回転角度が180度のときの偏差と、第1従動歯車32の回転角度が540度のときの偏差との平均値に設定されている。すなわち、第1従動歯車32の回転角度が540度のときの補正角度θcは、第1従動歯車32の回転角度が180度のときの偏差に加えて、第1従動歯車32の回転角度が540度のときの偏差を考慮している。このため、補正前の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離よりも、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離の方が大きくなることを抑えることができる。
【0054】
図9では、補正角度θcに基づいて第1従動側回転角度θg1を補正した場合における、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離を実線で示している。この場合、破線の場合と比べて、360度を超える角度領域では、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離が大きくなることが抑えられている。すなわち、0から360度の角度領域での乖離と360度を超える角度領域での乖離とを比べたとき、360度を超える角度領域での乖離が0から360度の角度領域での乖離に比べて大きく乖離していることを抑制できる。このため、全体として、補正した後の第1従動歯車32の回転角度が実際の第1従動歯車32の回転角度から乖離することを抑えることができる。これにより、全体として第1従動側回転角度θg1をより適切に補正することができる。
【0055】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第1従動側回転角度θg1をより適切に補正することができるため、第1従動側回転角度θg1の検出精度を高めることができる。
【0056】
(2)第1従動歯車32と歯数の異なる第2従動歯車33を備えることによって、主動歯車31、すなわちピニオン軸2の回転角度や回転数を求める場合の情報を提供することが可能になる。
【0057】
(3)第2従動歯車33は、第1従動歯車32の回転数を求めるために用いられるものである。第2従動歯車33については、第1従動歯車32の回転数を判別できる程度に回転角度を求めることができればよく、補正角度に基づいた補正を行うか否かが、主動歯車31の回転角度の検出精度を高めることに対して大きな影響を与えない。このため、マイクロコンピュータ100の第2回転角度検出用演算部38aには、検出する第2従動側回転角度θg2を補正する機能を付加しないようにしている。これにより、第2従動側回転角度θg2を第1従動側回転角度θg1と同様に補正する場合と比べて、マイクロコンピュータ100の演算負荷が増大することを抑制することができる。
【0058】
(4)第1従動歯車32及び第2従動歯車33を主動歯車31へ向けて付勢することによって、主動歯車31と第1従動歯車32及び第2従動歯車33との間の噛み合いを好適に確保することができる。しかし、付勢部材36を備える検出装置1では、第1従動歯車32及び第2従動歯車33を主動歯車31へ向けて付勢することによって、第1従動歯車32及び第2従動歯車33におけるヒステリシスの発生が抑えられる。このため、主動歯車31の歯61aの状態から第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2の演算が受ける影響が大きくなりやすい。第1従動歯車32を主動歯車31へ向けて付勢した場合には、第1従動歯車32を主動歯車31へ向けて付勢しない場合と比べて、状況(A)、(B)が発生しやすい。状況(A)は、0から360度の角度領域では、補正前の第1従動側回転角度θg1が実際の第1従動歯車32の回転角度よりも大となり、360度を超える角度領域では、補正前の第1従動側回転角度θg1が実際の第1従動歯車32の回転角度よりも小となる状況である。状況(B)は、0から360度の角度領域では、補正前の第1従動側回転角度θg1が実際の第1従動歯車32の回転角度よりも小となり、360度を超える角度領域では、補正前の第1従動側回転角度θg1が実際の第1従動歯車32の回転角度よりも大となる状況である。このような状況が発生した場合には、上記作用において図9の破線を用いて説明したとおり、従来であれば、360度を超える角度領域では、補正後の第1従動側回転角度θg1と実際の第1従動歯車32の回転角度との乖離が大きくなる。付勢部材36を備えた検出装置1ではこうした事情があるため、360度を超える角度領域の偏差も考慮した補正角度θcを用いることで第1従動側回転角度θg1をより適切に補正できるという作用を享受することができる。
【0059】
(5)第1従動側回転角度θg1のみならず、ピニオン軸2に作用するトルクについての情報を提供することが可能になる。
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0060】
・マイクロコンピュータ100は、制御装置110の機能を果たすものであってもよい。すなわち、マイクロコンピュータ100は、電気信号Sg1、Sg2を受け取り、第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2を演算し、これら第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2に基づいて絶対角度θpaを演算するようにしてもよい。マイクロコンピュータ100は、第1従動側回転角度θg1を演算するとともに第1従動側回転角度θg1を演算する際に当該第1従動側回転角度θg1を補正する部分を有していればよく、その他の機能を有する部分は適宜変更可能である。
【0061】
・制御装置110は、第1従動側回転角度θg1及び第2従動側回転角度θg2から回転数γを求め、式(1)に基づき第1従動側回転角度θg1及び回転数γから絶対角度θpaを求めたが、これに限らない。図5に示すように、絶対角度θpaが大きくなるほど、角度差の絶対値は絶対角度θpaに比例して大きくなる。このため、例えば制御装置110は、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差の絶対値に対する絶対角度θpaの関係を示すマップを記憶している。そして、制御装置110は、第1従動側回転角度θg1と第2従動側回転角度θg2との角度差を演算し、当該角度差から絶対角度θpaを演算するようにしてもよい。
【0062】
・本実施形態では、偏差を平均した平均値を求める際に、相加平均を用いて平均したが、これに限らない。例えば、偏差を平均した平均値を求める際に、相加平均に代えて、相乗平均を用いて平均してもよいし、幾何平均を用いて平均してもよい。
【0063】
・本実施形態では、マイクロコンピュータ100の第1回転角度検出用演算部37aに第1従動側回転角度θg1を補正する機能を付加したが、マイクロコンピュータ100の別の部分に第1従動側回転角度θg1を補正する機能を付加してもよい。
【0064】
・本実施形態では、マイクロコンピュータ100の第1回転角度検出用演算部37aに補正角度θcを記憶していたが、マイクロコンピュータ100の別の部分に補正角度θcを記憶するようにしてもよい。
【0065】
・本実施形態では、マイクロコンピュータ100には、検出する第2従動側回転角度θg2を補正する機能が付加されていなかったが、付加するようにしてもよい。
・主動歯車31の歯31a、第1従動歯車32の歯61a、及び第2従動歯車33の歯63aの歯数は、適宜変更可能である。
【0066】
・本実施形態では、第1従動歯車32の歯61aの歯数は、主動歯車31の歯31aの歯数を2で割った歯数をなしていたが、これに限らない。第1従動歯車32の歯61aの歯数は、主動歯車31の歯31aの歯数を3以上の整数で割った歯数をなしていてもよい。
【0067】
・回転角度センサ30として、単一の従動歯車を備える構成を採用してもよいし、3つあるいはそれ以上の従動歯車を備える構成を採用してもよい。すなわち、回転角度センサ30は、主動歯車31の歯31aの歯数を整数で割った歯数の歯を有する従動歯車を1つ以上備えていればよい。
【0068】
・本実施形態では、第1従動歯車32及び第2従動歯車33を主動歯車31に対して付勢する付勢部材36としてねじりコイルばねを採用したが、これに限らず、付勢部材として板ばねや他のコイルばね等を採用してもよい。例えば、第1従動歯車32を主動歯車31に対して付勢する付勢部材と、第2従動歯車33を主動歯車31に対して付勢する付勢部材とを、互いに別個の付勢部材で構成してもよい。
【0069】
・本実施形態では、第1従動歯車32及び第2従動歯車33を主動歯車31に対して付勢する付勢部材36が設けられたが、付勢部材36は設けなくてもよい。この場合、第1従動歯車32及び第2従動歯車33は、例えば支持部材34に形成された第1支持穴50及び第2支持穴51に対して回転可能に支持されるようにすればよい。
【0070】
・本実施形態において、検出装置1は、トルクセンサ20を削除した回転角度センサ30であってもよい。この回転角度センサ30においても、検出装置1と同様の課題を有する。
【0071】
・本実施形態では、検出装置1の搭載先として車両の操舵装置を例に挙げたが、回転軸を有する他の車載装置に適用してもよい。また、検出装置1は、車載用途に限らない。
【符号の説明】
【0072】
1…検出装置
2…ピニオン軸
20…トルクセンサ
30…回転角度センサ
31…主動歯車
32…第1従動歯車
33…第2従動歯車
36…付勢部材
37、38…第1、第2回転角度検出用磁気センサ
37a、38a…第1、第2回転角度検出用演算部
100…マイクロコンピュータ
θc…補正角度
θg1、θg2…第1、第2従動側回転角度
θpa…絶対角度
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9