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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ガラス繊維補強コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 14/42 20060101AFI20231212BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C04B14/42 C
C04B28/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020005935
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021113142
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西堀 真治
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1037983(KR,B1)
【文献】特開2019-094238(JP,A)
【文献】特開平11-268970(JP,A)
【文献】特開2002-068810(JP,A)
【文献】特開2015-163570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のガラスフィラメントを含むガラスストランドと、セメントと、骨材と、急結剤と、を含み、
前記ガラスストランドの番手が80tex以上、600tex以下であり、
気乾比重が1.5以上である、ガラス繊維補強コンクリート。
【請求項2】
前記ガラスストランドの番手が100tex以上、500tex以下である、請求項1に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【請求項3】
前記セメント100質量部に対して、前記急結剤が、3質量部以上、30質量部以下である、請求項1又は2に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【請求項4】
前記ガラスストランドの強熱減量が1質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【請求項5】
気乾比重が1.5以上、2.5以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【請求項6】
前記骨材100質量部に対して、前記セメントが、50質量部以上、200質量部以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【請求項7】
前記ガラスフィラメントがZrOを含有しており、前記ガラスフィラメントにおけるZrOの含有量が、質量%で14%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【請求項8】
前記ガラスフィラメントがLiO、NaO及びKOからなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、前記ガラスフィラメントにおけるLiO、NaO及びKOの含有量の合量が、質量%で14%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラス繊維補強コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維補強コンクリート(GRC:Glassfiber Reinforced Concrete)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維(ガラスフィラメント)を束ねたガラスストランドを補強材として含有させたGRCは、土木、建築等において広く用いられている。ガラスストランドによる補強は、脆性を補い、引張強度、曲げ強度、衝撃強度を向上させる有効な手段として一般に認識されている。
【0003】
下記の特許文献1には、ガラス繊維を含有する路面舗装補修用モルタル組成物の一例が開示されている。特許文献1においては、繊維の含有量及び長さが規定されている。セメント等の混練においてファイバーボールを生じ難くするために、繊維の含有量を0.2~2.0質量%とし、繊維の長さを1~20mmとする旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-100503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セメント系マトリックスに繊維を含有させることにより、コンクリートの衝撃強度や曲げ強度を向上させることはできる。しかし、これらの強度は、セメントの水和反応が進行するにつれて小さくなる傾向にある。これはセメントの水和反応で析出する水和物により、繊維が拘束されるためである。繊維の中でもガラス繊維は、水和物との親和性が高く、ガラス繊維と水和物とが接着しやすいために、より拘束される。そのため、高温・多湿のような水和物が生成しやすい環境や、長期に亘り潤沢に水分が供給され、水和物が生成しやすい状況であると、特にガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度が低くなる傾向にあり、コンクリートの耐久性を高めることは困難である。また、特許文献1に記載のようにガラス繊維の含有量や長さを調整したとしても、ガラス繊維補強コンクリートの耐久性を確実に高めることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、長期的に靭性を維持し衝撃強度を高めることができ、耐久性を高めることができる、ガラス繊維補強コンクリートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス繊維補強コンクリートは、複数本のガラスフィラメントを含むガラスストランドと、セメントと、骨材と、急結剤と、を含み、ガラスストランドの番手が80tex以上、600tex以下であることを特徴とする。
【0008】
ガラスストランドの番手が100tex以上、500tex以下であることが好ましい。
【0009】
セメント100質量部に対して、急結剤が、3質量部以上、30質量部以下であることが好ましい。
【0010】
ガラスストランドの強熱減量が1質量%以上であることが好ましい。
【0011】
気乾比重が1以上、2.5以下であることが好ましい。
【0012】
骨材100質量部に対して、セメントが、50質量部以上、200質量部以下であることが好ましい。
【0013】
ガラスフィラメントがZrOを含有しており、ガラスフィラメントにおけるZrOの含有量が、質量%で14%以上であることが好ましい。
【0014】
ガラスフィラメントがLiO、NaO及びKOからなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、ガラスフィラメントにおけるLiO、NaO及びKOの含有量の合量が、質量%で14%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長期的に靭性を維持し衝撃強度を高めることができ、耐久性を高めることができる、ガラス繊維補強コンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
(ガラス繊維補強コンクリート)
本発明に係るガラス繊維補強コンクリートは、セメントと、骨材と、急結剤と、ガラスストランドとを含有している。
【0018】
ガラス繊維補強コンクリートは、セメント、骨材及び急結剤を混錬し、これらの成分が混錬された後にガラスストランドを添加してさらに混練し、この混練体を型枠に流し込むこと等により製造されるが、混練体が分離することを抑制するために、水及び混和材を添加して混練し、その後にガラスストランドを加えてさらに混練するとともに、これらの混練体を型枠に流し込むことが好ましい。
【0019】
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、シリカセメント等を用いることができる。これらの中でも特に、早強ポルトランドセメントを用いることが好ましい。
【0020】
ガラスストランドは、複数本のガラスフィラメントと、ガラスフィラメントの表面に形成された被膜とを有する。ガラスフィラメントには、耐アルカリガラス繊維を用いることが好ましい。この場合には、ガラスストランドの耐アルカリ性を良好とすることができるため、セメントに含まれるアルカリ成分により、ガラスストランドが浸食され難い。よって、長期に亘って、ガラスストランドによる補強効果を維持することができる。
【0021】
ガラスフィラメントは、例えばガラス組成として、質量%で、SiO 54%~65%、ZrO 12%~24%、MgO+CaO 0%~10%、TiO 0%~10%、Al 0%~2%、LiO+NaO+KO 10%~30%含有するものが挙げられる。なお、上記において、例えば「A+B+C」は、A、B及びCの含有量の合量を示す。
【0022】
ガラスフィラメントにおけるZrOの含有量は、質量%で14%以上であることが好ましく、16%以上であることがより好ましい。この場合には、セメントに含まれるアルカリ成分による浸食をより一層抑制することができる。
【0023】
ガラスフィラメントは、LiO、NaO及びKOからなる群から選択される少なくとも1種を含有していることが好ましい。ガラスフィラメントにおけるLiO、NaO及びKOの含有量の合量は、質量%で14%以上であることが好ましく、15%以上であることが好ましい。この場合には、ガラスフィラメントの紡糸温度を好適に低くすることができる。
【0024】
また、ガラスフィラメントは、ZrOの含有量が、質量%で14%以上であり、かつ、LiO、NaO及びKOからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、LiO、NaO及びKOの含有量の合量が、質量%で14%以上であることが好ましい。
【0025】
ガラスストランドの被膜は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル及びポリフェニレンスルフィド樹脂の群から選択された1種以上の熱可塑性樹脂、又は、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂の群から選択された1種以上の熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
【0026】
ガラスストランドの長さは、6mm以上であることが好ましく、13mm以上であることがより好ましい。この場合には、ガラス繊維強化コンクリートの強度を好適に高めることができる。ガラスストランドの長さは、30mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましく、19mm以下であることがさらに好ましい。この場合には、セメント等とガラスストランドとの混練時や型枠への流し込み時において、セメントの流動性を低下させ難いため、作業性を高めることができる。
【0027】
本発明においては、ガラスストランドの番手は80tex以上、600tex以下である。なお、ガラスストランドの番手は、100tex以上、500tex以下であることが好ましい。
【0028】
ガラスストランドの強熱減量は、1質量%以上、あるいは2質量%以上であることが好ましい。ガラスストランドの強熱減量の上限値は、ガラスストランドの加工性の観点から、例えば、3.5質量%とすることができる。なお、本明細書における強熱減量は、JIS R 3420:2013に記載の方法で測定された強熱減量である。
【0029】
骨材としては、例えば、珪砂、川砂等の細骨材や、川砂利、砕石等の粗骨材を用いることができる。細骨材及び粗骨材のうちの一方を用いてもよく、あるいは細骨材及び粗骨材の双方を用いてもよい。骨材の平均粒径は、例えば、0.5mm以上、25mm以下であることが好ましい。
【0030】
急結剤は、セメントの凝結硬化を促進させる。急結剤には、例えば、カルシウムアルミネート系又はカルシウム-サルファーアルミネート系の急結剤を用いることができる。急結剤としては、他の成分を添加せずにセメントの凝結硬化を促進できる自己硬化性のあるものが好ましい。ガラス繊維補強コンクリートにおいて、セメント100質量部に対し、急結剤が3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。それによって、セメントの凝結硬化を好適に促進させることができる。セメント100質量部に対し、急結剤が30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。それによって、セメントの凝結硬化が促進されすぎることを抑制でき、成形等の作業性を高めることができる。
【0031】
混和材は、ポゾラン材料を含むことが好ましい。ポゾラン材料としては、シリカヒューム、フライアッシュ又はスラグ等を挙げることができる。ポゾラン材料はセメントの水和の際に生成されるアルカリ成分と反応するため、ガラスストランドがアルカリ成分に浸食されることを抑制できる。よって、ガラスストランドによる補強の効果を効果的に維持することができる。
【0032】
ガラス繊維補強コンクリートは、セメント100質量部に対し、ポゾラン材料を5質量部以上、50質量部以下含むことが好ましく、10質量部以上、30質量部以下含むことがより好ましい。
【0033】
ガラス繊維補強コンクリートは、減水剤を含んでいてもよい。減水剤は界面活性剤として機能し、セメントを分散させる。減水剤を用いることにより、セメント等の混練に際し加える水の量を少なくしても、セメントの流動性を高めることができる。
【0034】
ガラス繊維補強コンクリートは、遅延剤を含んでいてもよい。遅延剤はセメントの凝結硬化を遅延させる。遅延剤を急結剤と共に用いることにより、セメントの凝結速度を調整することができる。それにより、セメントの凝結硬化を促進しつつ、成形のための時間を調整することができる。遅延剤は、例えば、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、アルキルアミノホスホン酸等の有機酸及びその塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
【0035】
本発明に係るガラス繊維補強コンクリートの特徴は、ガラスストランド及び急結剤を含み、かつガラスストランドの番手が80tex以上、600tex以下であるという構成にある。それによって、長期間において靱性を維持し衝撃強度を高めることができ、耐久性を高めることができる。
【0036】
本発明のガラス繊維補強コンクリートおいて耐久性を高められるのは、以下の理由であると考えられる。ガラスストランドは高い強度・弾性率を有するため、コンクリート内にガラスストランドを含ませることにより、ガラスストランドが高い引張強度を維持しながら、ガラス繊維補強コンクリートにひびが発生した場合に、ガラスストランドもひびの発生に追従して引き抜けるために、ひびが発生した場合でもコンクリートの靱性を保つことができる。しかしながら、コンクリートにおけるセメントの水和に際しては水和物が生じる。このような水和物は、コンクリート内のガラスストランドの表面周辺にも生じ、水和の進行と共にガラスストランドを拘束する。この拘束がガラスストランドの引張強度以上に達すると、上記引き抜け挙動は発現せずにガラスストランドが切断されてしまい、衝撃強度は低くなる。そのため、時間が経つにつれてコンクリート内でガラスストランドの拘束力が高くなると、コンクリートの衝撃強度が低下する。
【0037】
これに対して、本発明のガラス繊維補強コンクリートにおいては、急結剤が含まれており、かつガラスストランドの番手が80tex以上である。急結剤を含むことにより、エトリンガイトのような水和物を急速にガラスストランド近傍に生成させ、ガラスストランドを拘束させる。しかし、エトリンガイドが生成されることにより、それ以上他の水和物がガラスストランド近傍に生成されにくくなるため、ガラスストランドの拘束がこれ以上高くなりにくい。
【0038】
さらに、ガラスストランドの番手、すなわち太さを、急結剤によって初期材令で生成した水和物による拘束力よりも高い引張強度となるように調整することで、長期的にコンクリートの靭性を確保することができる。つまり、本発明ではセメント系マトリックスへの急結剤添加量に適したガラスストランドが選択されており、その結果、長期的にコンクリートの靭性が確保でき、衝撃強度を維持することができる。
【0039】
なお、ガラスストランドの番手を600tex以下とすることにより、ガラス繊維補強コンクリート単位質量当たりのガラスストランドの本数を適量とすることができ、コンクリートを効果的に補強することができる。従って、長期的に衝撃強度を高めることができ、ガラス繊維補強コンクリートの耐久性を高めることができる。
【0040】
さらに、ガラス繊維補強コンクリートの気乾比重は、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。この場合には、ガラス繊維補強コンクリートの強度を好適に高めることができる。ガラス繊維補強コンクリートの気乾比重は、2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。気乾比重が高すぎる場合には、セメントの比率が高くなりすぎることがある。そのため、ガラスストランドの表面周辺に存在するセメントの比率が高くなりすぎることがある。この場合には、ガラスストランド近傍により多くの水和物が発生するため、ガラスストランドの拘束が強くなりすぎる場合があり、ガラスストランドによる補強の効果が損なわれ、ガラス繊維補強コンクリートの靱性が劣化するおそれがある。なお、気乾比重とは、20℃、60%RHの環境下で28日間保管した後のガラス繊維補強コンクリートの比重をいう。
【0041】
骨材の質量をM、セメントの質量をMとしたときに、質量比M/Mが0.5以上、2以下であることが好ましい。すなわち、骨材100質量部に対して、セメントを50質量部以上、200質量部以下とすることが好ましい。それによって、ガラス繊維補強コンクリートの強度を効果的に高めることができる。
【0042】
本発明の効果のさらなる詳細を、実施例及び比較例を比較することにより、以下において説明する。
【0043】
<実施例>
(実施例1)
普通ポルトランドセメントが100質量部、混和材としてのシリカヒュームが10質量部、混和材としてのフライアッシュが10質量部、骨材として珪砂5号が100質量部、急結剤が20質量部、水が38質量部、減水剤(エヌエムビー社製、「SP-8N」)が1.5質量部、遅延剤が1質量部の比率となるように混練することにより、混練物を得た。次に、得られた混練物に、番手が140texであり、長さが19mであるガラスストランド(日本電気硝子社製、「ACS19PH-950X」)を、上記混練物に対するガラスストランドの量が3質量%となるように添加して、さらに混練した。そして、この混練体を型枠に流し込み、20℃、60%RHの環境下で24時間保管することにより、長さ140mm、幅40mm、厚み10mmのガラス繊維補強コンクリートを得た。
【0044】
(実施例2)
急結剤を10質量部とし、遅延剤を0.8質量部としたこと以外においては、実施例1と同様にしてガラス繊維補強コンクリートを得た。
【0045】
(実施例3)
ガラスストランドとして、番手が225texであり、長さが19mであるガラスストランド(日本電気硝子社製、「ACS19PH-950XW」)を用いたこと以外においては、実施例2と同様にしてガラス繊維補強コンクリートを得た。
【0046】
(実施例4)
実施例4においては、ガラスストランドとして、番手が480texであり、長さが19mであるガラスストランド(日本電気硝子社製、「ACS19TH-980W」)を用い、ガラスストランドの含有量を4質量%とした。上記以外においては、実施例2と同様にしてガラス繊維補強コンクリートを得た。
【0047】
(比較例1)
急結剤、遅延剤及び混和材を添加していないこと及び水を32質量部としたこと以外においては、実施例1と同様にしてガラス繊維補強コンクリートを得た。
【0048】
(比較例2)
ガラスストランドとして、番手が40texであり、長さが13mであるガラスストランド(日本電気硝子社製、「ACS13H-950Y」)を用いたこと以外においては、実施例2と同様にしてガラス繊維補強コンクリートを得た。実施例1~4並びに比較例1及び2の各条件を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(GRCフローの測定)
実施例1~4並びに比較例1及び2で得られた、ガラスストランドを含む混練体のGRCフローを、JIS R 5201:2015に準じて測定した。なお、GRCフローの測定は、混錬体を得た直後に行った。GRCフローの測定の結果を表1に示す。
【0051】
表1に示すように、GRCフローは実施例1~4並びに比較例1及び2において、160mm~175mm程度であり、ガラス繊維補強コンクリートの成形性(作業性)に問題が無いことがわかる。
【0052】
(衝撃強度の評価)
実施例1~4並びに比較例1及び2の、材令28日のガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度を測定した。さらに、材令28日のガラス繊維補強コンクリートを70℃の温水に7日間浸漬させたガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度をそれぞれ測定した。なお、衝撃強度の測定は、JIS K 7061:1992に準じて行った。
【0053】
なお、材令28日のガラス繊維補強コンクリートとは、得られたガラス繊維補強コンクリートを20℃、60%RHの環境下で28日間保管したガラス繊維補強コンクリートをいう。
【0054】
表2に示すように、実施例1~4のガラス繊維補強コンクリートは、材令28日のガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度及び70℃の温水に7日間浸漬させたガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度が、それぞれ17.4kgf・cm/cm以上、16.4kgf・cm/cm以上であり、十分な衝撃強度を有していた。一方、比較例1及び2のガラス繊維補強コンクリートは、材令28日のガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度及び70℃の温水に7日間浸漬させたガラス繊維補強コンクリートの衝撃強度が、それぞれ14.8kgf・cm/cm以下、11.3kgf・cm/cm以下であり、十分な衝撃強度を有していない。
【0055】
さらに、実施例1~4のガラス繊維補強コンクリートは、(70℃温水浸漬7日の衝撃強度)÷(令材28日の衝撃強度)が0.90以上であり、水分による悪影響がほとんど見られなかった。一方、比較例1、2のガラス繊維補強コンクリートは、(70℃温水浸漬7日の衝撃強度)÷(令材28日の衝撃強度)が0.76以下であり、水分による悪影響が顕著に見られた。
【0056】
【表2】