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  • 特許-点検用飛行体 図1
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  • 特許-点検用飛行体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】点検用飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20231212BHJP
   B61B 7/00 20060101ALI20231212BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20231212BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20231212BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20231212BHJP
   B64U 101/26 20230101ALN20231212BHJP
【FI】
B64C39/02
B61B7/00 A
B64D47/08
B64U10/13
B64U20/87
B64U101:26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020009164
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021115913
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 知樹
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 史登
(72)【発明者】
【氏名】宮島 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆久
(72)【発明者】
【氏名】阪上 知己
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-046118(JP,A)
【文献】特開2018-127867(JP,A)
【文献】特開2015-184251(JP,A)
【文献】特開2019-084948(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230818(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/058041(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第1853873(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 7/00
B64C 39/02
B64D 47/08
B64U 10/13
B64U 20/87
B64U 101/26
G01R 31/08-31/11
H02G 1/02- 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地線または電線の点検に用いられる点検用飛行体であって、
撮影部を有する本体と、
前記本体の進行方向に配列された2つ以上の枠と、
を備え、
前記枠は、
開閉可能であり、前記地線または前記電線を囲っていて、
前記地線または前記電線の支持部材を通過するときに開き、該支持部材を該枠の内側を通過させ、
後方の前記枠が開く前に前方の前記枠が閉じることを特徴とする点検用飛行体。
【請求項2】
前記枠の開閉はモータ駆動であることを特徴とする請求項1に記載の点検用飛行体。
【請求項3】
前記枠はバネ式で開閉することを特徴することを特徴とする請求項1に記載の点検用飛行体。
【請求項4】
前記枠は前記本体の上側または下側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の点検用飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地線または電線の点検に用いられる点検用飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄塔に張架される地線や電線の状態を点検する際に飛行体いわゆるドローンが用いられている。しかしながら、単に飛行体を飛行させていると、飛行自由度は高いが、突風が吹いた際に飛行体が落下してしまうおそれがある。そこで例えば特許文献1には、電線にぶら下がりながら飛行して電線を撮影するドローンが開示されている。特許文献1によれば、ドローンはアームによって電線に支持された状態で飛行することとなるため、ドローンの落下を好適に防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9753461号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、突風によるドローンの落下を好適に防ぐことができる。しかしながら、特許文献1のようにアームが電線にぶら下がりながら飛行する場合、ドローンの荷重がアームを介して電線にかかる。すると、万が一、素線切れ等によって地線や電線が損傷していた場合、ドローンの荷重によって損傷が更に進行してしまうおそれがある。
【0005】
また特許文献1のようなアームは、地線や電線上に存在するカウントウェイト等の障害物や、鉄塔を乗り越えることができない。すると、アームが障害物や鉄塔に至った際には、一度アームを電線から外してドローンを飛行させた後に再度アームによって電線を把持する必要がある。このため、点検時のドローンの操作が煩雑になってしまい、電線からアームを外した際に突風が吹くとドローンが墜落してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、地線や電線を損傷させることなく電線の状態を観察することができ、且つ障害物や鉄塔を乗り越えながら安全に飛行させることが可能な点検用飛行体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる点検用飛行体の代表的な構成は、地線または電線の点検に用いられる点検用飛行体であって、撮影部を有する本体と、本体の進行方向に配列された2つ以上の枠と、を備え、枠は、開閉可能であり、地線または電線を囲っていて、地線または電線の支持部材を通過するときに開き、後方の枠が開く前に前方の枠が閉じることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、点検用飛行体は、2つ以上の枠の内部に地線または電線が配置され、それらに沿って飛行する。このとき、枠は地線または電線を囲っているだけであるため、本体の荷重は地線や電線にはかからない。したがって、地線や電線を損傷させることなく、それらの状態を観察することができる。
【0009】
また枠は、開閉可能であり、地線または電線の支持部材を通過するときに開く。これにより、障害物や鉄塔を乗り越えながら点検用飛行体を飛行させることができる。そして、後方の枠が開く前に前方の枠が閉じることにより、どちらかの枠は必ず閉じている状態となる。したがって、障害物や鉄塔を乗り越える際に突風が吹いたとしても、点検用飛行体の落下を好適に防ぐことができる。
【0010】
上記枠の開閉はモータ駆動であるとよい。これにより、枠を電動で開閉することが可能となる。また上記枠はバネ式で開閉してもよい。これにより、障害物や鉄塔によって押されることで枠を開閉することが可能となる。
【0011】
上記枠は本体の上側または下側に配置されているとよい。かかる構成によれば、枠を本体の上側に配置することにより、電線の状態を観察することができ、枠を本体の下側に配置することにより、地線の状態を観察することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地線や電線を損傷させることなく電線の状態を観察することができ、且つ障害物や鉄塔を乗り越えながら安全に飛行させることが可能な点検用飛行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態にかかる点検用飛行体の全体斜視図である。
図2】本実施形態の点検用飛行体の使用態様図である。
図3】本実施形態の点検用飛行体の使用態様図である。
図4】本実施形態の点検用飛行体のバリエーションを説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる点検用飛行体100の全体斜視図である。図1に示すように、本実施形態の点検用飛行体100は、鉄塔10に張架された地線12(または電線)の点検に用いられる装置であり、本体110および2つの枠120(前方枠120aおよび後方枠120b)を備える。本体110には撮影部112が設けられている。また本体110には、点検用飛行体100を浮遊させるためのプロペラ114が接続されている。
【0016】
図1に示すように、2つの枠120である前方枠120aおよび後方枠120bは、本体110の進行方向に配列されている。枠120(前方枠120aおよび後方枠120b)はそれぞれ、内輪122および内輪122が挿通可能な外輪124を組み合わせて構成されている。これにより、内輪122が外輪124に収容されることで、枠120が開閉可能となる。また内輪122が外輪124の外側に位置することにより、地線12(または電線)が枠120によって囲われた状態となる。
【0017】
なお、本実施形態では、点検用飛行体100は2つの枠120を備える構成を例示しているが、これに限定するものではなく、3以上の枠を備えてもよい。このとき、本体の前方に設けられる枠と本体の後方に設けられる枠の数を同一とすることにより、飛行時の点検用飛行体の姿勢を安定させることができる。本体の前方に設けられる枠と本体の後方に設けられる枠の数が異なる場合には、前方または後方のうち枠の数が少ない方に錘を設けて重量を調節することが好ましい。
【0018】
本実施形態の点検用飛行体100では、枠120は本体110の下側に配置されている。これにより、地線12の状態を観察することが可能となる。ただし、これに限定するものではなく、枠120は本体110の上側に配置されていてもよい。これにより、地線12や電線の状態を観察することが可能となる。以下、点検用飛行体100によって鉄塔10に張架された地線12の状態を点検する場合を想定して説明する。
【0019】
図2および図3は、本実施形態の点検用飛行体100の使用態様図である。図2(a)に示すように、本実施形態の点検用飛行体100は、鉄塔10に張架された地線12の状態を観察する。点検用飛行体100によって地線12の状態を観察する際には、図1に示すように、枠120によって地線12を囲った状態で、点検用飛行体100を地線12に沿って飛行させ、撮影部112によって地線12の状態を観察する。
【0020】
点検用飛行体100が地線12の支持部材である鉄塔10を通過する際には、まず図2(a)に示すように前方枠120aの内輪122を外輪124に収容することにより、前方枠120aを開状態とする。このとき、後方枠120bは閉状態である。これにより、図2(b)に示すように前方枠120aが鉄塔10を通過可能となる。前方枠120aが鉄塔10を通過したら、図2(c)に示すように、前方枠120aを閉状態とする。
【0021】
その後、図3(a)に示すように後方枠120bの内輪122を外輪124に収容することより、後方枠120bを開状態とする。このとき、前方枠120aは閉状態である。これにより、図3(b)に示すように後方枠120bが鉄塔10を通過可能となる。後方枠120bが鉄塔10を通過したら、図3(c)に示すように、後方枠120bを閉状態とする。
【0022】
上記説明したように、本実施形態の点検用飛行体100によれば、枠120の内部に地線12(または電線)が配置されるため、枠120は地線12に接触せずにそれを囲っている状態となる。仮にこれらが接触することがあったとしても、一時的に軽くこすれる程度である。このため、本体110の荷重は地線12や電線にはかからない。したがって、地線12や電線を損傷させることなく、それらの状態を観察することができる。
【0023】
また本実施形態の点検用飛行体100では、枠120は、開閉可能であり、地線12(または電線)の支持部材である鉄塔10を通過するときに開く。これにより、障害物や鉄塔10を乗り越えながら点検用飛行体100を飛行させることができる。そして、後方枠120bが開く前に前方枠120aが閉じることにより、点検用飛行体100が鉄塔10を通過する際にはどちらかの枠は必ず閉じている状態となる。したがって、障害物や鉄塔10を乗り越える際に突風が吹いたとしても、点検用飛行体100の落下を好適に防ぐことができる。
【0024】
特に本実施形態では、図1に示すように、点検用飛行体100には枠120体を開閉させるためのモータ126が搭載されている。これにより、枠120の開閉をモータ駆動によって行うことができる。したがって、枠120の開閉時の操作性を高めることが可能となる。
【0025】
図4は、本実施形態の点検用飛行体のバリエーションを説明する模式的な断面図である。図1に示す点検用飛行体100では、枠120は環状であった。これに対し、図4(a)に示す点検用飛行体200では、枠220は、断面がコの字状の2つの部材222・224を組み合わせて構成される。このように、枠220の全体が四角形状であっても点検用飛行体100と同様の効果を得ることが可能である。
【0026】
また図4(b)に示す点検用飛行体300では、コの字状の枠322の端部に、バネ326を介して一対のバー324が接続されている。これにより、点検用飛行体300が鉄塔10を通過する際には、鉄塔10によって押されたバー324が水平方向すなわち点検用飛行体300の進行方向に移動することにより、枠322が開状態となる。モータ駆動をアクティブ方式と呼ぶなら、このように鉄塔10で押されて開く方式はパッシブ方式と呼ぶことができる。このように、枠322がバネ式で開閉することによっても、点検用飛行体100と同様の効果を得ることが可能である。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、地線または電線の点検に用いられる点検用飛行体として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10…鉄塔、12…地線、100…点検用飛行体、110…本体、112…撮影部、114…プロペラ、120…枠、120a…前方枠、120b…後方枠、122…内輪、124…外輪、126…モータ、200…点検用飛行体、220…枠、222…部材、224…部材、300…点検用飛行体、322…枠、324…バー、326…バネ
図1
図2
図3
図4