(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電気泳動装置、電気泳動システム、および電気泳動装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01N27/447 301Z
(21)【出願番号】P 2020012402
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英郷
(72)【発明者】
【氏名】荒井 昭博
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-029814(JP,A)
【文献】特開平06-180302(JP,A)
【文献】特開2013-134140(JP,A)
【文献】特開2015-010961(JP,A)
【文献】特表2013-536439(JP,A)
【文献】特開平09-072910(JP,A)
【文献】特開平07-159414(JP,A)
【文献】特開平01-224657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動装置であって、
試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、
前記電気泳動機構を制御する制御装置と、
試料が配置されるプレートとを備え、
前記制御装置は、
複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、
前記複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、前記複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、
前記スケジュールで規定された前記複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、
前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで前記電気泳動機構に実行させ、
前記停止信号を受信した場合、前記記憶装置に記憶されている前記第1情報と、前記複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の前記第2情報との記憶を維持
し、
前記電気泳動装置は、前記電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーをさらに備え、
前記制御装置は、電気泳動処理の実行中に、前記カバーによる前記開口の開放を不可能とし、
電気泳動処理は、
デバイスを用いて試料を電気泳動させる第1処理と、
前記第1処理の後に、前記デバイスを洗浄する第2処理とを含み、
前記制御装置は、前記第1処理が終了したときに前記カバーを開閉可能とする、電気泳動装置。
【請求項2】
電気泳動装置であって、
試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、
前記電気泳動機構を制御する制御装置と、
試料が配置されるプレートとを備え、
前記制御装置は、
複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、
前記複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、前記複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、
前記スケジュールで規定された前記複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、
前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで前記電気泳動機構に実行させ、
前記停止信号を受信した場合、前記記憶装置に記憶されている前記第1情報と、前記複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の前記第2情報との記憶を維持し、
前記電気泳動装置は、前記電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーをさらに備え、
前記制御装置は、電気泳動処理の実行中に、前記カバーによる前記開口の開放を不可能とし、
電気泳動処理は、
デバイスを用いて試料を電気泳動させる第1処理と、
前記第1処理の後に、前記デバイスを洗浄する第2処理とを含み、
前記制御装置は、前記第1処理および前記第2処理が終了したときに前記カバーを開閉可能とする、電気泳動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで実行した後、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を前記電気泳動機構に実行させることが可能である、請求項1
または請求項2に記載の電気泳動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理の全てが終了した後、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を前記電気泳動機構に実行させることが可能である、請求項1
~請求項3のいずれか1項に記載の電気泳動装置。
【請求項5】
前記プレートは、ユーザにより試料が配置可能となる位置まで、前記カバーが閉じた状態でスライド可能である、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電気泳動装置。
【請求項6】
電気泳動装置と、情報処理装置とを備え、
前記電気泳動装置は、
試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、
前記電気泳動機構を制御する制御装置と、
各々に試料が配置される複数の領域を含むプレートとを備え、
前記制御装置は、
複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、
前記複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果に関する第1情報と、前記複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、
前記スケジュールで規定された前記複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、
前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで前記電気泳動機構に実行させ、残りの電気泳動処理を実行させず、
前記停止信号を受信した場合、前記記憶装置に記憶されている前記第1情報と、前記複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の前記第2情報との記憶を維持し、
前記情報処理装置は、停止ボタンを表示し、
前記制御装置は、ユーザにより前記停止ボタンが操作された場合、前記情報処理装置から前記停止信号を受信する、
前記電気泳動装置は、前記電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーをさらに備え、
前記制御装置は、実行中の電気泳動処理が終了したときに、前記カバーを開閉可能とし、
前記情報処理装置は、ユーザにより前記停止ボタンが操作された場合、前記カバーが開閉可能となるタイミングを示す情報を表示する、電気泳動システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記複数の領域のうちユーザにより試料が配置可能な領域を表示する、請求項6
に記載の電気泳動システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、前記複数の領域のうちユーザにより試料が配置不可能な領域を表示する、請求項6
または請求項7に記載の電気泳動システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記複数の領域のうちユーザにより新たな試料が配置された領域を表示する、
請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の電気泳動システム。
【請求項10】
前記制御装置は、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の設定に関する前記第2情報を、ユーザの前記情報処理装置の操作により設定する、
請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の電気泳動システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の順序を、ユーザの前記情報処理装置への操作により変更する、
請求項6~請求項10のいずれか1項に記載の電気泳動システム。
【請求項12】
電気泳動装置の制御方法であって、
複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定するステップと、
前記複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、前記複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させるステップと、
前記スケジュールで規定された前記複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信するステップと、
前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させるステップと、
前記停止信号を受信した場合、前記記憶装置に記憶されている前記第1情報と、前記複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の前記第2情報との記憶を維持するステップとを備え
、
前記電気泳動装置は、前記電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーを備え、
前記制御方法は、電気泳動処理の実行中に、前記カバーによる前記開口の開放を不可能とするステップをさらに備え、
電気泳動処理は、
デバイスを用いて試料を電気泳動させる第1処理と、
前記第1処理の後に、前記デバイスを洗浄する第2処理とを含み、
前記制御方法は、前記第1処理が終了したときに前記カバーを開閉可能とするステップをさらに備える、電気泳動装置の制御方法。
【請求項13】
電気泳動装置の制御方法であって、
複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定するステップと、
前記複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、前記複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させるステップと、
前記スケジュールで規定された前記複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信するステップと、
前記停止信号を受信した場合、前記複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させるステップと、
前記停止信号を受信した場合、前記記憶装置に記憶されている前記第1情報と、前記複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の前記第2情報との記憶を維持するステップとを備え、
前記電気泳動装置は、前記電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーを備え、
前記制御方法は、電気泳動処理の実行中に、前記カバーによる前記開口の開放を不可能とするステップをさらに備え、
電気泳動処理は、
デバイスを用いて試料を電気泳動させる第1処理と、
前記第1処理の後に、前記デバイスを洗浄する第2処理とを含み、
前記制御方法は、前記第1処理および前記第2処理が終了したときに前記カバーを開閉可能とするステップをさらに備える、電気泳動装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動装置、電気泳動システム、および電気泳動装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動装置は、マイクロチップまたはキャピラリなどのデバイスを用いて、電気泳動法により試料の分離を行なうことにより、試料を分析するものである。例えば、特開平1-224657号公報(特許文献1)には、試料の分析の実行中にユーザが新たな試料を追加して該新たな試料を分析する電気泳動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電気泳動装置では、電気泳動装置の電源がオフされた後に、ユーザにより新たな試料が追加され、電源がオンにされた後に、新たな試料の分析を実行する。特許文献1に記載の電気泳動装置では、予め定められた順序で複数の試料を分析する場合において、新たな試料が追加される場合には、電源がオフにされることから、未だ実行されていない分析の設定が消去されてしまう。未だ実行されていない分析の設定が消去されてしまうと、ユーザは、再度、分析の設定を行う必要があり、ユーザの負担が増大する。
【0005】
本開示の目的は、ユーザの負担を増大させることなく、試料の分析中に、新たな試料の分析を追加できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う電気泳動装置は、試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、電気泳動機構を制御する制御装置と、試料が配置されるプレートとを備え、制御装置は、複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させ、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。
【0007】
本開示の別の局面に従う電気泳動システムは、電気泳動装置と、情報処理装置とを備え、電気泳動装置は、試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、電気泳動機構を制御する制御装置と、各々に試料が配置される複数の領域を含むプレートとを備え、制御装置は、複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果に関する第1情報と、複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させ、残りの電気泳動処理を実行させず、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。
【0008】
本開示の別の局面に従う電気泳動装置の制御方法は、複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定するステップと、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させるステップと、スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信するステップと、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させるステップと、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持するステップとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、停止信号を情報処理装置から受信した場合に、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の設定に関する第2情報の記憶を維持することから、ユーザの負担を増大させることなく、試料の分析中に、新たな試料の分析を追加できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】電気泳動装置等の全体構成を概略的に示す図である。
【
図3】電気泳動装置の要部の構成を概略的に示す図である。
【
図6】分離バッファ部の空気供給口とマイクロチップとの接続状態を概略的に示す図である。
【
図8】ディスプレイが表示する画面の一例を示す図である。
【
図9】ディスプレイが表示する画面の一例を示す図である。
【
図10】ディスプレイが表示する画面の一例を示す図である。
【
図11】ディスプレイが表示する画面の一例を示す図である。
【
図12】ディスプレイが表示する画面の一例を示す図である。
【
図14】新たなサンプルの分析処理を他のサンプルよりも優先的に電気泳動装置に実行させる場合を示す図である。
【
図15】新たなサンプルの分析処理を、ユーザにより設定されたスケジュールで規定されている複数のサンプルの分析処理の後に電気泳動装置に実行させる場合を示す図である。
【
図16】コントローラの機能構成例を示す図である。
【
図18】電気泳動装置の処理の流れを示す処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。以下では、マイクロ電気泳動装置を、単に、「電気泳動装置」という。
【0012】
[電気泳動装置の外観]
図1は、電気泳動システム300の構成例を示す図である。
図1を参照して、電気泳動システム300は、電気泳動装置150と、情報処理装置70とを備える。情報処理装置70は、本開示の「情報処理装置」に対応する。電気泳動装置150は、本体部100と、カバー102とを有する。カバー102は、ユーザ等により、本体部100の開口100Xを開放および閉塞するものである。電気泳動装置150が、カバー102を駆動するようにしてもよい。ユーザは、カバー102を開放した状態で、本体部100にサンプルおよび分離バッファ等を電気泳動装置150にセット可能である。本体部100には、引出部103が設置されている。引出部103にはプレート12が載置されている。プレート12に、サンプルが配置される。引出部103は、ユーザにより本体部100から引き出し可能であり、かつユーザにより本体部100に収納可能である。引出部103に載置されたプレート12は、ユーザによりサンプルが配置可能となる位置まで、引き出し可能である。また、開口100Xが開放されている状態、および開口100Xが閉塞されている状態のいずれであるかに関わらず、引出部103は、ユーザにより引き出し可能である。したがって、プレート12は、ユーザによりサンプル等が配置可能となる位置まで、カバー102が閉じた状態でスライド可能である。よって、ユーザの利便性を向上させることができる。電気泳動装置150は、情報処理装置70が接続されている。情報処理装置70は、例えば、PC(personal computer)である。
【0013】
[マイクロチップ電気泳動装置の全体構成]
図2は、本発明の実施の形態に係る電気泳動装置150等の全体構成を概略的に示す図である。
図3は、
図2に示した電気泳動装置150の要部の構成を概略的に示す図である。
図2を参照して、電気泳動装置150は、分注部2と、シリンジポンプ4と、分離バッファ部16と、ポンプ部23と、電源部26と、測定部31と、コントローラ38とを備える。
【0014】
図3を参照して、電気泳動装置150は、複数(例えば2個)のマイクロチップ5-1,5-2と、保持部7と、プレート12とをさらに備える。マイクロチップの数は、1個としてもよく、3個以上としてもよい。
【0015】
マイクロチップ5-1,5-2の各々は、1サンプルを処理するための1つの電気泳動流路が形成されたものである。サンプルは、例えば、核酸、タンパク、糖鎖等である。サンプルを「試料」と称する場合がある。分析操作中、マイクロチップ5-1,5-2は保持部7に保持されている。以下、マイクロチップ5-1,5-2を総称してマイクロチップ5という場合がある。マイクロチップ5は洗浄されることにより繰り返し使用できる。
【0016】
分注部2は、マイクロチップ5-1,5-2に分離バッファとサンプルとを分注するように構成される。分離バッファは「分離媒体」としても使用されるものであり、例えばpH緩衝剤および水溶性高分子(セルロース系高分子など)の少なくとも一方を含む。分注部2は、分注すべき液の吸入位置とマイクロチップ5上の分注位置との間で分注プローブ8を移動させる「移動機構」を構成する。具体的には、分注部2は、分注プローブ8と、シリンジポンプ4と、少なくとも1種類の洗浄液を保持する少なくとも1つの容器10と、三方電磁弁6とを有する。
【0017】
分注プローブ8は、分注ノズルを有する。シリンジポンプ4は、主に、分離バッファ、サンプル、洗浄液、およびクリーニング液の吸引と吐出とを行なう。分注プローブ8と少なくとも1つの容器10とは三方電磁弁6を介してシリンジポンプ4に接続されている。
【0018】
サンプルは、プレート12上のウェル121A等に収容されて、分注部2によりマイクロチップ5-1,5-2に分注される。分離バッファは図示しない容器に収容され、分注部2によりマイクロチップ5-1,5-2に分注される。
図3では、プレート12は、簡略化して記載されている。
【0019】
分離バッファ部16およびポンプ部23は、マイクロチップ5の電気泳動流路に分離バッファを充填するバッファ液充填機構を構成する。バッファ液充填機構は、本開示の「注入機構」に対応する。分離バッファ部16は、電気泳動流路の1つのリザーバに一定量の分離バッファを注入し、その注入された分離バッファをそのリザーバから空気圧により電気泳動流路に充填する。分離バッファ部16は、空気供給口18およびノズル22を有する。ポンプ部23は、他のリザーバに溢れた不用な分離バッファを排出する。分離バッファ部16およびポンプ部23は、2つのマイクロチップ5-1,5-2について共通に備えられる。
【0020】
分注部2は、三方電磁弁6を分注プローブ8とシリンジポンプ4とが接続される方向に接続することにより、分離バッファまたはサンプルを分注プローブ8に吸引する。分注部2は、分注プローブ8をマイクロチップ5-1,5-2上へ移動させると、シリンジポンプ4によりマイクロチップ5-1,5-2のいずれかの電気泳動流路のリザーバに分離バッファまたはサンプルを吐出する。
【0021】
洗浄部14は、分注プローブ8を洗浄するためのものであり、洗浄液が充填されている。
【0022】
分注部2は、分注プローブ8を洗浄する際、三方電磁弁6をシリンジポンプ4と洗浄液用の容器10とを接続する方向に切り替え、シリンジポンプ4に洗浄液を吸引する。次に、分注部2は、分注プローブ8を洗浄部14の洗浄液に浸し、三方電磁弁6をシリンジポンプ4と分注プローブ8とを接続する側に切り替えて分注プローブ8の内部から洗浄液を吐出することにより、分注プローブ8を洗浄する。
【0023】
マイクロチップ5-1,5-2の電気泳動流路を洗浄するときには、分注部2は、三方電磁弁6およびシリンジポンプ4と容器10とを接続する方向に切り替え、シリンジポンプ4に洗浄液を吸引する。分注部2は、分注プローブ8をマイクロチップ5-1,5-2のリザーバへ移動させ、所定量の洗浄液をそのリザーバへ分注する。リザーバに分注された洗浄液は、毛細管現象により電気泳動流路に入っていく。
【0024】
分離バッファ部16は、電気泳動流路に洗浄液が入った状態で所定時間保持した後、その洗浄液を排出する際にも使用される。
【0025】
電気泳動流路に分離バッファを充填するとき、分離バッファ部16は、マイクロチップ5-1,5-2上へ移動し、マイクロチップ5-1,5-2の電気泳動流路の一端のリザーバ(分離バッファが分注されたリザーバ)上に空気供給口18を気密に保って押し付けるとともに、他のリザーバにノズル22を挿入する。この状態で、空気供給口18から空気を吹き込んで分離バッファを電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから溢れた分離バッファをノズル22からポンプ部23により吸引して外部へ排出する。電気流動流路内の洗浄液を排出するときも同様であり、マイクロチップ5-1,5-2の一端のリザーバ上に空気供給口18を気密に保って押し付けるとともに、他のリザーバにノズル22を挿入する。この状態で、空気供給口18から空気を吹き込んで洗浄液を電気泳動流路に押し込むとともに、他のリザーバから溢れた洗浄液をノズル22からポンプ部23により吸引して外部へ排出する。
【0026】
電源部26は、マイクロチップ5-1,5-2の電気泳動流路に独立して電気泳動用の電圧を印加するために、マイクロチップ5ごとに独立した複数(例えば2個)の高圧電源26-1,26-2を有する。
【0027】
測定部31は、マイクロチップ5-1,5-2の各々の分離流路55で電気泳動分離されたサンプル成分を検出するように構成される。具体的には、測定部31は、複数(例えば2個)のLED(Liquid Emitting Diode)30-1,30-2と、複数(例えば2個)の光ファイバ32-1,32-2と、複数(例えば2個)のフィルタ34-1,34-2と、光電子倍増管36とを有する。
【0028】
LED30-1,30-2は、それぞれ、マイクロチップ5-1,5-2の電気泳動流路の一部に励起光を照射する。光ファイバ32-1,32-2は、電気泳動流路を移動するサンプル成分がLED30-1,30-2からの励起光によりそれぞれ励起されて発生した蛍光を受光する。フィルタ34-1,34-2は、光ファイバ32-1,32-2からの蛍光から励起光成分を除去し、蛍光成分のみを透過させる。光電子倍増管36は、フィルタ34-1,34-2を透過した蛍光成分を受光する。
【0029】
本実施の形態では、フィルタ34-1,34-2は互いに異なる蛍光を透過させる。したがって、マイクロチップ5-1,5-2間で互いに異なる蛍光を検出できる。
【0030】
また、マイクロチップ5-1,5-2で同じ蛍光を検出する場合には1つのフィルタを共通に使用できる。LED30-1,30-2を互いに時間をずらして発光させることにより、1つの光電子倍増管36で複数のマイクロチップ5-1,5-2からの蛍光を識別して検出できる。なお、励起光の光源としては、LEDに限定されず、LD(Laser Diode)を用いてもよい。
【0031】
コントローラ38は、1つの電気泳動流路への分離バッファ充填およびサンプル注入が終了すると、次の電気泳動流路への分離バッファ充填およびサンプル注入に移行するように、分注部2の動作を制御する。コントローラ38は、サンプル注入が終了した電気泳動流路で泳動電圧を印加して電気泳動を起こさせるように電源部26(高圧電源26-1,26-2)の動作を制御する。コントローラ38は、測定部31による検出動作を制御する。コントローラ38はさらに、マイクロチップ5を繰り返して使用するために、前のサンプルの分析が終了した電気泳動流路への分離バッファを充填する前にその電気泳動流路の洗浄動作を制御する。
【0032】
コントローラ38は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)160と、プログラムおよびデータを格納する記憶部と、通信I/F(Interface)168とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0033】
記憶部は、ROM(Read Only Memory)162、RAM(Random Access Memory)164およびHDD(Hard Disk Drive)166を含む。ROM162は、CPU160にて実行されるプログラムを格納できる。RAM164は、CPU160におけるプログラムの実行により生成されるデータ、および通信I/F168を経由して入力されたデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD166は、不揮発性の記憶装置であり、測定部31による検出結果など電気泳動装置150で生成された情報を格納できる。あるいは、HDD166に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0034】
通信I/F168は、情報処理装置70を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。通信I/F168は、アダプタまたはコネクタなどによって実現される。なお、通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)または無線LAN(Local Area Network)などの無線通信であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信であってもよい。
【0035】
情報処理装置70は、電気泳動装置150と通信接続され、電気泳動装置150との間でデータをやり取りする。情報処理装置70は、電気泳動装置150の動作を制御するとともに、測定部31が取得したデータを取り込んで処理するように構成される。
【0036】
具体的には、情報処理装置70は、演算処理部であるCPU72を主体として構成される。情報処理装置70には、例えばパーソナルコンピュータなどを利用できる。情報処理装置70は、CPU72と、記憶部(ROM76、RAM74およびHDD78)と、通信I/F84と、入力部82と、ディスプレイ80とを有する。
【0037】
ROM76は、CPU72にて実行されるプログラムを格納できる。RAM74は、CPU72におけるプログラムの実行により生成されるデータおよび、通信I/F84または入力部82を介して入力されたデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD78は、不揮発性の記憶装置であり、情報処理装置70で生成された情報を格納できる。あるいは、HDD78に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0038】
通信I/F84は、情報処理装置70が電気泳動装置150を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。入力部82は、測定者からの電気泳動装置150に対する指示を含む入力操作を受け付ける。入力部82は、キーボード、マウスおよびディスプレイ80の表示画面と一体的に構成されるタッチパネルなどを含む。入力部82は、後述するように、複数のサンプルを順番に分析するための分析スケジュールの登録を受け付けるとともに、マイクロチップ5の洗浄工程のタイミングについての指示を受け付ける。分析スケジュールは、複数の電気泳動処理(分析処理)の順序が規定されたものである。
【0039】
ディスプレイ80は、分析スケジュールを登録する際に、分析スケジュールの入力画面を表示できる。ディスプレイ80は、マイクロチップ5の洗浄工程のタイミングを指示する際に、洗浄工程のタイミングの入力画面を表示できる。分析測定中または測定後において、ディスプレイ80は、測定部31による検出データおよびサンプルごとの分析結果などを表示できる。
【0040】
[マイクロチップ5の構成例]
図4および
図5は、マイクロチップ5の一例を示す図である。本願明細書において、「マイクロチップ」は基板内に電気泳動流路が形成された電気泳動用のデバイスを意味しており、必ずしもサイズの小さいものに限定されるものではない。
【0041】
図4(A)はマイクロチップ5が有する透明基板51の平面図であり、
図4(B)はマイクロチップ5が有する透明基板52の平面図であり、
図4(C)はマイクロチップ5の正面図である。
【0042】
図4(C)を参照して、マイクロチップ5は、一対の透明基板51,52を有する。透明基板51,52は、例えば石英ガラスその他のガラス基板または樹脂基板である。透明基板51と透明基板52とは重ねられて接合されている。
【0043】
図4(B)に示すように、透明基板52の表面には、互いに交差するキャピラリ溝54,55が形成されている。キャピラリ溝55は、サンプルの電気泳動分離用の分離流路55を構成する。キャピラリ溝54は、分離流路55にサンプルを導入するためのサンプル導入流路54を構成する。サンプル導入流路54および分離流路55は「電気泳動流路」を構成する。サンプル導入流路54および分離流路55は交差位置56で交差する。
【0044】
図4(A)に示すように、透明基板51には、キャピラリ溝54,55の端部に対応する位置に4つの貫通孔が形成されている。4つの貫通孔はリザーバ53-1~
53-4をそれぞれ構成する。以下、リザーバ53-1~53-4を総称してリザーバ53という場合がある。
【0045】
マイクロチップ5は基本的には
図4に示した構成を有するが、取り扱いを容易にするために、
図5に示すように、マイクロチップ5上には、泳動電圧を印加するための電極端子を形成できる。
図5は、マイクロチップ5の平面図である。
【0046】
図5を参照して、4つのリザーバ53-1~53-4は電気泳動流路54,55に電圧を印加するためのポートを構成する。ポート#1(リザーバ53-1)とポート#2(リザーバ53-2)とはサンプル導入流路54の両端に位置する。ポート#3(リザーバ53-3)とポート#4(リザーバ53-4)とは分離流路55の両端に位置する。ポート#1~#4のそれぞれに電圧を印加するために、マイクロチップ5(透明基板51)の表面に4つの電極パターン61~64が形成されている。電極パターン61~64は、対応するポートからマイクロチップ5の測端部に延びるように形成されており、高圧電源26-1,26-2(
図3参照)にそれぞれ接続される。
【0047】
図6は、分離バッファ部16の空気供給口18とマイクロチップ5との接続状態を概略的に示す図である。
【0048】
図6を参照して、空気供給口18の先端にはOリング20が設けられている。空気供給口18をマイクロチップ5の1つのリザーバ53上に押し当てることにより、気密を保ちながら、マイクロチップ5の電気泳動流路54,55に対して空気供給口18を取り付けることができる。これにより、空気供給口18から空気を加圧して電気泳動流路54,55内に送り出すことができる。他のリザーバ53にはノズル22が挿入され、電気泳動流路54,55から溢れだした不用な分離バッファ、洗浄液、およびクリーニング液を吸入して排出する。
【0049】
電気泳動機構50(
図16参照)は、マイクロチップ5を用いて、サンプルを電気泳動させる機構である。電気泳動機構50は、サンプルを電気泳動させる全ての構成部を含む。電気泳動機構50は、例えば、電源部26と、測定部31と、分注部2と、分離バッファ部16と、ポンプ部23とを含む。コントローラ38の制御により、電気泳動機構50は、電気泳動による分析工程を繰り返し実行する。分析工程は、主に、(1)空の電気泳動流路に分離バッファを充填するバッファ液充填工程、(2)サンプル供給用のリザーバにサンプルを分注するサンプル分注工程、(3)複数のリザーバ間に泳動電圧を印加することにより、分離流路でのサンプルの電気泳動分離を行なう泳動分離工程、および(4)1つのリザーバから加圧気体を供給し、他のリザーバから分離バッファを吸引することにより電気泳動流路およびリザーバ内の分離バッファを除去するバッファ液除去工程を有する。
【0050】
[プレートの構成例]
図7は、プレート12の構成例を示す図である。
図7を参照して、プレート12は、平坦部材に、第1ウェル群121と、第2ウェル群122とが設けられたものである。第1ウェル群121は、複数(96個)のウェル121Aを含む。第2ウェル群122は、複数(36個)のウェル122Aを含む。複数(96個)のウェル121Aおよび複数(36個)のウェル122Aはそれぞれアレイ状に形成される。ウェル121Aおよびウェル122Aは、本開示の「サンプルが配置される領域」に対応する。1つのウェル121Aまたは1つのウェル122Aに1つのサンプルが収容される。つまり、プレート12には、分析対象のサンプルが配置される。第1ウェル群121と、第2ウェル群122との間には、ウェルが形成されていない平坦部123が形成されている。
【0051】
電気泳動装置150が分析スケジュールで規定されている複数の電気泳動処理の途中であっても、ユーザは、新たなサンプルの電気泳動処理を電気泳動装置150に実行させることができる。典型的には、ユーザが入力した分析スケジュールで分析させるサンプルは、第1ウェル群121のいずれかのウェルにユーザによりサンプルがセットされる。また、複数の電気泳動処理の途中で電気泳動処理を実行させるサンプルは、第2ウェル群122のいずれかのウェルにユーザによりサンプルがセットされる。
【0052】
また、
図2に示すプレート12は、ユーザにより試料が配置可能となる位置まで、カバー102が閉じた状態で引出部103によりスライド可能である。よって、ユーザはカバー102を開放しなくても、電気泳動装置150にサンプルをセットできることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0053】
[ユーザによる設定]
次に、分析スケジュールなどのユーザによる設定を説明する。
図8~
図12は、分析スケジュールなどのユーザによる設定を説明するための図である。
図8~
図12の画面は、ディスプレイ80の表示領域402Aに表示される。
【0054】
図8は、ユーザが分析スケジュールを登録するための画面の一例を示す図である。
図8の例では、第1画像202と、第2画像210と、開始ボタン206と、一時停止ボタン208と、スケジュール画像200とが表示される。
【0055】
第1画像202は、第1ウェル群121を示す画像である。第1画像202は、96個のウェルを示す画像を含む。第2画像210は、第2ウェル群122を示す画像である。第2画像210は、36個のウェルを示す画像を含む。
図8~
図12の例では、96個のウェルおよび36個のウェルをユーザが識別可能とするために、縦軸にはアルファベットが表示され、横軸には数字が表示される。
図8の例では、縦軸のアルファベットとして、A~Hおよび
X、Y、Zが表示される。また、横軸の数字として、1~12が表示される。例えば、96個のウェルのうちの左上のウェルに対しては、アルファベットとしてのAと、数字としての1とが表示されていることから、「A1のウェル」というように、ユーザは識別できる。
【0056】
開始ボタン206は、電気泳動処理を開始させるためのボタンである。一時停止ボタン208は、電気泳動処理を一時停止させるためのボタンである。スケジュール画像200は、ユーザにより入力されたスケジュールを示す画像である。
【0057】
次に、ユーザによる分析スケジュールの設定の手法を説明する。(1)ユーザは、
図7に示すプレート12のうちの132個のウェルのうちの所望のウェルにサンプルをセットする。(2)その後、ユーザは、サンプルがセットされたウェルに対応するウェル画像202Aを指定する。工程(1)と工程(2)とは逆であってもよい。ウェル画像202Aの指定は、例えば、入力部82により実現される。
【0058】
ユーザは、分析スケジュールの登録とともに、該スケジュールで規定されている複数のサンプルの分析処理のそれぞれの分析条件を設定画面(特に図示せず)で設定できる。分析スケジュールは、複数の電気泳動処理(分析処理)の順序と、該複数のサンプルの分析処理のそれぞれの分析条件とを含む。複数のサンプルの分析処理のそれぞれの分析条件は、本開示の「複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報」に対応する。また、「複数のサンプルの分析処理のそれぞれの分析条件」は、「複数のサンプルの分析処理のそれぞれの分析方法」としてもよい。第2情報は、例えば、使用される試薬の種別、使用される分離バッファの種別、マイクロチップ5に印加される電圧の大きさなどを含む。
【0059】
図9は、ユーザによりウェル画像202Aが指定された場合の画面の一例を示す図である。
図9の例では、A1~A6のウェル画像202A、B1~B6のウェル画像202A、C1~C6のウェル画像202A、およびD1~D6のウェル画像202Aがユーザにより指定された場合の画面
が示されている。1以上のサンプルがセットされ、かつ該1以上のサンプルがセットされたウェルに対応するウェル画像202Aを指定された後に、ユーザにより開始ボタン206が操作されたときに、電気泳動装置150は、該1以上のサンプルに対して電気泳動処理(分析処理)を開始する。電気泳動装置150は、電気泳動処理(分析処理)の実行中では、カバー102を
開放可能としないようにカバー102にロックをかける。換言すれば、電気泳動装置150は、電気泳動処理(分析処理)の実行中に、カバー102による開口100Xの開放を不可能とするようにカバー102にロックをかける。仮に、電気泳動処理(分析処理)の実行中に、カバー102が開放可能となる場合には、ユーザが、カバー102を開放してしまう場合がある。この場合には、外光が、本体部100に進入してしまい、光ファイバ32-1,32-2の受光量が不正確なものとなってしまう。そこで、電気泳動装置150は、電気泳動処理(分析処理)の実行中に、カバー102による開口100Xの開放を不可能とするようにカバー102にロックをかける。したがって、電気泳動装置150は、光ファイバ32-1,32-2の受光量が不正確なものとなることを防止できる。
【0060】
電気泳動装置150は、電気泳動処理(分析処理)の実行中では、引出部103を引出可能としないように引出部103にロックをかける。電気泳動装置150は、2つのマイクロチップ(マイクロチップ5-1およびマイクロチップ5-2)を用いることにより、2つのサンプルの分析処理(電気泳動処理)を並行して実行できる(
図13参照)。
【0061】
電気泳動装置150は、セットされた1以上のサンプルを所定の順序で電気泳動を実行する。例えば、A1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、B1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、C1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、・・・H1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、A2のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、B2のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル・・・H2のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、A3のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、B3のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル・・・H12のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプルという順序で、サンプルの電気泳動処理が実行される。
【0062】
図9の例では、電気泳動装置150は、A1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、B1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、C1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、D1のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、・・・A2のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、・・・D6のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプルという順序で、サンプルの電気泳動処理を実行する。
【0063】
ディスプレイ80は、ユーザにより指定されたウェル画像202Aを、ユーザにより指定されていないウェル画像202Aとを異なる態様で表示する。
図9の例では、ユーザにより指定されたウェル画像202Aは、黒丸で表示され、ユーザにより指定されていないウェル画像202Aは、白丸で表示される。
【0064】
図9のスケジュール画像200は、電気泳動処理が実行されるサンプルの順序を表示する。
図9の例では、サンプルS1、サンプルS1、サンプルS1、サンプルS1、サンプルS2、サンプルS2・・・の順序で電気泳動処理が実行されることが示されている。
図9の例では、24個のサンプルがセットされていることから、スケジュール画像200でも、24個のサンプルが表示される。
図9の例では、例えば、ユーザによるスクロール操作により、セットされている全てのサンプルの順序が表示される。
【0065】
図10は、複数のサンプルの分析処理の実行中の画面の一例を示す図である。ディスプレイ80は、分析処理が実行されているサンプルがセットされているウェル121Aに対応するウェル画像
202Bを、分析処理が実行されていないサンプルがセットされているウェル121Aに対応するウェル画像202Aとは異なる態様で、表示する。
図10の例では、ディスプレイ80は、分析処理が実行されているサンプルがセットされているウェル121Aに対応するウェル画像
202Bを点滅する態様で表示する。一方、ディスプレイ80は、分析処理が実行されていないサンプルがセットされているウェル121Aに対応するウェル画像202Aを点滅しない態様で表示する。
【0066】
ユーザは、電気泳動装置150による1以上のサンプルの分析処理の途中において、新たなサンプルの分析処理を電気泳動装置150に実行させることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。電気泳動装置150が、1以上のサンプルの分析処理の途中において、ユーザにより所定操作が実行されたときに、電気泳動装置150は、新たなサンプルの分析処理を受付可能となる。所定操作は、如何なる操作であってもよいが、本実施の形態では、所定操作は、一時停止ボタン208への操作であるとする。
【0067】
ユーザにより一時停止ボタン208が操作されると、電気泳動装置150は、現在実行中のサンプルの分析処理についての分析結果が出力されるまで、該分析処理を継続する。その後、電気泳動装置150は、全てのマイクロチップ5の洗浄を実行する。その後、電気泳動装置150は、カバー102のロックおよび引出部103のロックを解除する。この解除により、カバー102の開放および引出部103の引出がユーザによる可能となる。その後、カバー102が開放される等の状態で、新たなサンプルがユーザにより電気泳動装置150にセットされる。その後、残りのサンプルの分析処理が残存している状態で、電気泳動装置150は、該新たなサンプルの分析処理を実行する。
【0068】
図11は、A2のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプル、およびB2のウェル画像202Aに対応するウェル121Aにセットされたサンプルの実行途中で、一時停止ボタン208がユーザにより操作されたときの画面の一例を示す図である。一時停止ボタン208がユーザにより操作された場合には、電気泳動装置150は、直ぐには、カバー102のロックおよび引出部103のロックを解除しない。一時停止ボタン208がユーザにより操作された場合には、電気泳動装置150は、実行途中の分析処理における分析結果が出力され(つまり、実行中の分析処理が最後まで実行され)、かつ全てのマイクロチップ5の洗浄が終了したときにカバー102のロックおよび引出部103のロックを解除する。
【0069】
図11に示すように、ディスプレイ80は、一時停止ボタン208が操作されたときには、インジケータ216を表示する。
図11では、一時停止ボタン208が操作されたことを明確にするように、一時停止ボタン208にハッチングを付して表示している。インジケータ216は、カバー102のロックおよび引出部103のロックが解除されるタイミング、つまり、カバー102が開閉可能となるタイミングおよび引出部103が引出可能となるタイミングを示す情報である。インジケータ216は、時間の経過に応じて、表示態様が変化するゲージ216Aを含む。
図11の例では、紙面の右から左に向かう方向(
図11の矢印αの方向)に沿って、時間の経過に応じて、ゲージ216Aは減少するように更新する。ディスプレイ80は、インジケータ216を表示することにより、カバー102のロックが解除されるタイミングおよび引出部103が引出可能となるタイミングをユーザに認識させることができる。
【0070】
図12は、電気泳動装置150が、カバー102のロックおよび引出部103のロックが解除された後において、ユーザによりX1のウェル画像210Aが指定された場合の画面の一例を示す図である。ユーザによりX1のウェル画像210Aに対応するウェル122Aに新たなサンプルがセットされた後、またはユーザによりX1のウェル画像210Aに対応するウェル122Aに新たなサンプルがセットされる前に、ユーザによりX1のウェル画像210Aが指定される。ユーザにより、新たなサンプルがセットされたウェルに対応するウェル画像210Aが指定されることにより、該ウェル画像210Aは、他のウェル画像とは異なる態様で表示される。
図12では、異なる態様で表示されるウェル画像210Aにハッチングが付されている。
【0071】
コントローラ38は、情報処理装置70のディスプレイ80は、
図8~
図12の画面を表示する。
図8の例では、ディスプレイ80は、白色のウェル画像を表示することにより、複数のウェルのうちユーザによりサンプルが配置可能なウェルを表示する。したがって、ユーザは、サンプルが配置可能なウェルを直感的に認識することができる。
【0072】
図8の例では、ディスプレイ80は、黒色のウェル画像を表示することにより、複数のウェルのうちユーザによりサンプルが配置不可能なウェルを表示する。配置不可能なウェルは、サンプルが既に配置されていることから、新たにサンプルが配置できないということである。したがって、ユーザは、サンプルが配置不可能なウェルを直感的に認識することができる。
【0073】
図12の例では、ディスプレイ80は、ハッチングの色のウェル画像を表示することにより、複数のウェルのうちユーザにより新たなサンプルが配置されたウェルを表示する。したがって、ユーザは、新たなサンプルが配置されたウェルを直感的に認識することができる。
【0074】
[分析スケジュールについて]
図13~
図15は、分析スケジュールを示す図である。電気泳動装置150は、1つのサンプルについて、前処理と、本処理とを実行する。前処理は、分離バッファのマイクロチップ5への充填、およびサンプルのマイクロチップ5への注入等を含む。本処理は、前処理で充填された分離バッファを用いて、前処理で充填されたサンプルを分析して分析結果を出力させる処理(電気泳動させる処理)である。本実施の形態では、前処理が実行される期間と、本処理が実行される期間とは定められている。典型的には、前処理が実行される期間は、40秒であり、本処理が実行される期間は、120秒である。
【0075】
図13~
図15では、電気泳動装置150がマイクロチップ5-1と、マイクロチップ5-2とを用いて、3つのサンプルを分析する場合が示されている。3つのサンプルは、サンプル1と、サンプル2と、サンプル3とである。
図13~
図15では、サンプル1、サンプル2、サンプル3の順序で、電気泳動装置150が、分析処理を実行する場合を説明する。
図13~
図15では、マイクロチップ5-1と、マイクロチップ5-2とをそれぞれ「チップ1」および「チップ2」と示す。
【0076】
図13は、サンプルの分析中に、一時停止ボタン208が操作されずに全てのサンプルの分析が終了する場合を示す図である。
図13の例では、タイミングT0において、開始ボタン206がユーザにより操作されることにより、電気泳動装置150は、サンプル1の前処理を開始する。タイミングT1において、サンプル1の前処理が終了すると、電気泳動装置150は、サンプル1の本処理を開始するとともに、サンプル2の前処理を開始する。
【0077】
その後のタイミングT2において、サンプル2の前処理が終了すると、電気泳動装置150は、サンプル2の本処理を開始する。その後のタイミングT3において、サンプル1の本処理が終了すると、電気泳動装置150は、サンプル3の前処理を開始する。その後のタイミングT4において、サンプル3の前処理が終了すると、電気泳動装置150は、サンプル3の本処理を開始する。
【0078】
その後のタイミングT5において、サンプル3の本処理が終了する。タイミングT5において、全てのサンプルの分析処理が終了すると、電気泳動装置150は、全てのマイクロチップ5の洗浄処理を開始する。洗浄処理が実行される期間は、一定の期間としてもよい。また、電気泳動装置150は、マイクロチップ5の状態(例えば、分注されたサンプルの残存量など)に応じて、洗浄時間を変更するようにしてもよい。
図13の例では、マイクロチップ5-1と、マイクロチップ5-2とで洗浄時間は同一である。
【0079】
「本処理」は、本開示の「デバイス(マイクロチップ5)を用いて試料を電気泳動させる第1処理」に対応する。「洗浄処理」は、「第1処理の後に、デバイス(マイクロチップ5)を洗浄する第2処理」に対応する。
【0080】
ユーザは、サンプルの分析中において、新たなサンプルの分析をユーザが所望のタイミングで電気泳動装置150に実行させることができる。例えば、ユーザは、新たなサンプルの分析処理を他のサンプルよりも優先的に電気泳動装置150に実行させることができる。他のサンプルは、「ユーザにより設定されたスケジュールで規定されている複数のサンプルのうち未だ分析処理が実行されていないサンプル」である。また、ユーザは、新たなサンプルの分析処理を、ユーザにより設定されたスケジュールで規定されている複数のサンプルの分析処理の後に電気泳動装置150に実行させることができる。新たなサンプルの分析処理を他のサンプルよりも優先的に電気泳動装置150に実行させるか、または、新たなサンプルの分析処理を、ユーザにより設定されたスケジュールで規定されている複数のサンプルの分析処理の後に電気泳動装置150に実行させるかは、例えば、ディスプレイ80により表示される選択画面(図示せず)によりユーザは選択することができる。
【0081】
図14および
図15は、サンプルの分析中において、新たなサンプルの分析がユーザにより入力された場合を示す図である。電気泳動装置150がサンプルの分析中において新たなサンプルの分析を実行する場合には、ユーザにより一時停止ボタン208が操作されることにより、分析処理が一時停止される。
図14および
図15では、「一時停止ボタン208が操作されたこと」が「一時停止操作」と示されている。
図14は、新たなサンプルの分析処理を他のサンプルよりも優先的に電気泳動装置150に実行させる場合を示す図である。
図15は、ユーザは、新たなサンプルの分析処理を、ユーザにより設定されたスケジュールで規定されている複数のサンプルの分析処理の後に電気泳動装置150に実行させる場合を示す図である。
【0082】
図14では、サンプル1の本処理およびサンプル2の本処理の途中であるタイミングT11において、一時停止操作がユーザにより実行されたとする。
【0083】
電気泳動装置150は、実行していたサンプル1の本処理と、実行していたサンプル2の本処理とを最後まで実行する。換言すれば、電気泳動装置150は、実行していたサンプル1の本処理と、実行していたサンプル2の本処理とのそれぞれの分析結果が出力されるまで、これらの本処理を継続する。タイミングT12において、サンプル1の本処理と、サンプル2の本処理とが終了するとともに、電気泳動装置150は、カバー102のロックおよび引出部103のロックを解除する。このロックの解除により、ユーザは、新たなサンプル(以下、「新サンプル」という。)を電気泳動装置150にセットすることができる。また、タイミングT12において、電気泳動装置150は、マイクロチップ5-1およびマイクロチップ5-2の洗浄処理を実行する。
【0084】
タイミングT13において、電気泳動装置150は、ユーザによりセットされた新サンプルの前処理を実行する。次に、タイミングT14において、電気泳動装置150は、マイクロチップ5-1においてサンプル3の前処理を実行するとともに、マイクロチップ5-2において新サンプルの本処理を実行する。
【0085】
次に、タイミングT15において、サンプル3の前処理が終了すると、電気泳動装置150は、サンプル3の本処理を開始する。タイミングT16において、電気泳動装置150は、サンプル3の本処理を終了する、つまり、全てのサンプル(サンプル1~3および新サンプル)の分析処理が終了すると、タイミングT16において、電気泳動装置150は、全てのマイクロチップ5の洗浄処理を開始する。
【0086】
図14に示すように、電気泳動装置150は、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで実行した後、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を電気泳動機構50に実行させる。ユーザが新たなサンプルの電気泳動処理を優先的に実行させたい場合がある。この場合において、電気泳動装置150は、該新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を、残りの電気泳動処理(分析スケジュールで規定された複数の電気泳動処理のうち、未だ実行されていない電気泳動処理)よりも優先して実行することができる。
【0087】
図15では、タイミングT23の後のタイミングT24において、電気泳動装置150は、マイクロチップ5-1においてサンプル3の
本処理を実行する。次に、タイミングT24において、電気泳動装置150は、マイクロチップ5-2において新たなサンプルの前処理を実行するとともに、マイクロチップ5-1においてサンプル3の本処理を実行する。
【0088】
次に、タイミングT25において、新たなサンプルの前処理が終了すると、電気泳動装置150は、新たなサンプルの本処理を開始する。タイミングT26において、電気泳動装置150は、新たなサンプルの本処理を終了する、つまり、全てのサンプル(サンプル1~3および新サンプル)の分析処理が終了すると、タイミングT26において、電気泳動装置150は、全てのマイクロチップ5の洗浄処理を開始する。
【0089】
図15に示すように、電気泳動装置150は、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理の全てが終了した後、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を電気泳動機構に実行させることが可能である。ユーザは、スケジュールで設定された複数の電気泳動処理の終了後に新たなサンプルの電気泳動処理を実行させたい場合(つまり、新たなサンプルの電気泳動処理の優先度が低い場合)がある。この場合には、電気泳動装置150は、複数の電気泳動処理の終了後に該新たな試料の電気泳動処理を実行できる。
【0090】
図14および
図15に示すように、電気泳動装置150は、マイクロチップ5を用いて試料を電気泳動させる本処理と、該本処理の後に実行されるマイクロチップ5の洗浄処理とを実行可能である。電気泳動装置150は、マイクロチップ5を用いて試料を電気泳動させる本処理が実行したときに、カバー102のロックを解除する。したがって、マイクロチップ5の洗浄処理と並行して、ユーザはサンプルをセットできることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0091】
[コントローラの機能構成例]
図16は、コントローラ38の機能構成例を示す図である。コントローラ38は、受信部382と、駆動部384と、記憶制御部386と、記憶装置388と、処理部390との機能を有する。また、コントローラ38には、電気泳動機構50が接続されている。記憶装置388は、例えば、RAM164により構成される。
【0092】
ユーザは、情報処理装置70のディスプレイ80に表示された画面(
図8など参照)から、分析スケジュールが設定されると、該分析スケジュールを示すスケジュール情報がコントローラ38に送信される。コントローラ38の受信部382は、情報処理装置70から送信されたスケジュール情報を受信する。
【0093】
上述のように、受信部382が受信したスケジュール情報には、複数の電気泳動処理(分析処理)の順序が規定される分析スケジュールと、第2情報(複数のサンプルの分析処理のそれぞれの分析条件)とが含まれる。記憶制御部386は、スケジュール情報を記憶装置388に記憶させる。つまり、記憶制御部386は、分析スケジュールと、第2情報とを記憶装置388に記憶させる。換言すると、記憶制御部386は、複数の電気泳動処理の順序を規定する分析スケジュールを設定する。記憶制御部386は、分析スケジュールで規定されている複数のサンプルそれぞれに関連付けて、第2情報を記憶させる。
【0094】
駆動部384は、記憶装置388に記憶されている第2情報および分析スケジュールに基づいて、電気泳動機構50を制御する。駆動部384は、電気泳動機構50に対して駆動信号を出力することにより、電気泳動機構50を制御する。電気泳動機構50は、1のサンプルの電気泳動処理(分析処理)が終了したときに、該電気泳動処理の結果を示す第1情報をコントローラ38に出力する。コントローラ38の記憶制御部386は、第1情報を受信すると、該第1情報を記憶装置388に記憶させる。
【0095】
処理部390は、記憶装置388に記憶されている第1情報を示す画像(つまり、分析結果を示す画像)を、情報処理装置70のディスプレイ80に表示させる。
【0096】
また、情報処理装置70のディスプレイ80に表示された一時停止ボタン208が操作されると、情報処理装置70は、停止信号をコントローラ38に送信する。コントローラ38の受信部382は、情報処理装置70から送信された停止信号を受信する。一時停止ボタン208は、分析スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、ユーザにより操作される。したがって、受信部382は、分析スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置70から受信する。
【0097】
受信部382が、停止信号を受信した場合、
図14および
図15に示すように複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで(つまり、
図14および
図15のタイミングT12まで)電気泳動機構50に実行させる。記憶制御部386は、停止信号を受信した場合、記憶装置388に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。なお、記憶制御部386は、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の第2情報については、消去するようにしてもよい。また、記憶制御部386は、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の第2情報の記憶を維持するようにしてもよい。
【0098】
一般的に電気泳動装置は、マイクロチップまたはキャピラリーといったデバイスを用いて電気泳動を実行する。これらのデバイスとして、ディスポーザブルタイプのデバイス、およびデバイス中の分離バッファを置換することにより再利用が可能なデバイスとがある。ディスポーザブルタイプのデバイスではデバイスに応じて分析できる検体数に限りがある。一方、再利用が可能なデバイスでは、分析したいサンプル数を分析スケジュールに登録することで、電気泳動装置の仕様の最大分析サンプル数まで分析できる。
【0099】
一般的にユーザは、デバイスの仕様または電気泳動装置の仕様によって決定されている最大分析サンプル数のサンプルを電気泳動装置に必ずしも分析させるわけでなく、必要に応じて任意のサンプル数を分析させる。また、電気泳動装置が稼働している間に、新たにサンプルを分析する構成が採用されたとしても、電気泳動装置に登録された分析スケジュールで規定された複数の電気泳動処理が完了するまでユーザは待つ必要がある。
【0100】
例えば、特許文献1記載の電気泳動装置では、電気泳動装置の電源がオフされた後に、ユーザにより新たな試料が追加され、電源がオンにされた後に、新たな試料の分析を実行する。新たな試料が追加される場合には、電源がオフにされることから、未だ実行されていない分析の設定が消去されてしまう。したがって、未だ実行されていない分析の設定が消去されてしまうと、ユーザは、再度、分析の設定を行う必要があり、ユーザの負担が増大する。
【0101】
そこで、本実施の形態の電気泳動装置150は、サンプルの分析中に新たなサンプルの分析を電気泳動装置150に実行させるための一時停止ボタン208が操作された場合には、記憶制御部386は、記憶装置388に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。したがって、電気泳動装置150は、ユーザに再度の分析の設定を行わせることないことからユーザの負担が軽減しつつ、新たなサンプルの分析処理を実行することができる。
【0102】
また、仮に、電気泳動装置150は、停止信号を受信した場合において、実行していた電気泳動処理を終了してしまうと、該終了した電気泳動処理が実行されていたサンプルが無駄になってしまう。電気泳動装置150は、実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構50に実行させることから、サンプルが無駄になってしまうことを防止できる。
【0103】
情報処理装置70は、一時停止ボタン208を表示し、コントローラ38の受信部382は、ユーザにより一時停止ボタン208が操作された場合、情報処理装置70から停止信号を受信する。したがって、情報処理装置70で表示される一時停止ボタン208を操作することにより、新たなサンプルの電気泳動処理を電気泳動装置150に実行させることができる。したがって、ユーザは、簡単な操作で新たなサンプルの電気泳動処理を電気泳動装置150に実行させることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0104】
[電気泳動処理の条件の設定画面]
図17は、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の第2情報を設定するための設定画面の一例を示す図である。上述のように、第2情報は、使用される試薬の種別、使用される分離バッファの種別、マイクロチップ5に印加される電圧の大きさなどを含む。例えば、一時停止ボタン208が操作された後、さらに、該設定画面を表示させるボタン(特に図示せず)が操作された場合に、この設定画面は表示される。つまり、コントローラ38は、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の条件を、ユーザの情報処理装置70の操作により設定する。
【0105】
図17の設定画面は、ディスプレイ80の表示領域402Aに表示される。
図17の設定画面は、「メソッドを入力してください」という文字画像と、メソッドが入力される入力領域252とを含む。
【0106】
ユーザは、入力領域252に、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の設定に関する情報(つまり、上述の第2情報)を入力可能である。ユーザがマウスなどで入力領域252を指定すると、第2情報の複数の候補がタブとして表示される。ユーザは、該複数のメソッドの候補を指定した場合に、該指定されたメソッドが入力される。該入力されたメソッドは、新たにセットされたサンプルの第2情報として記憶装置388に記憶される。
【0107】
図17の設定画面に示すように、電気泳動装置150は、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の第2情報を、ユーザの情報処理装置70の操作により設定する。したがって、電気泳動装置150は、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の設定をユーザに行わせることができることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0108】
[順序の変更]
また、コントローラ38は、停止信号を受信した場合、分析スケジュールで規定されている複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の順序を、ユーザの情報処理装置70への操作により変更するようにしてもよい。例えば、ユーザが、一時停止ボタンを操作した場合には、スケジュール画像200を指定できるようになる。ユーザは、スケジュール画像200で規定されている順序を、例えば、マウスを用いたドラッグアンドドロップ等により、変更することができる。
図9の例では、4番目のサンプルS1の分析処理を、6番目のサンプルS2の分析処理の後にユーザは電気泳動装置150に実行させるようにしてもよい。例えば、ユーザは、4番目のサンプルS1を、6番目のサンプルS2の下に移動させるように、4番目のサンプルS1が示されている情報に対してドラッグアンドドロップを実行する。これにより、4番目のサンプルS1の分析処理を、6番目のサンプルS2の分析処理の後にユーザは電気泳動装置150に実行させることができる。
【0109】
このように、ユーザにより一時停止ボタン208が操作されたときには、スケジュール画像200に対して操作を行うことにより、未だ実行されていない分析処理の順序をユーザは変更できる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0110】
[電気泳動装置の処理フロー]
図18は、電気泳動装置150の処理の流れを示す処理フローである。
図18の例では、新たなサンプルの分析処理を他のサンプルよりも優先的に電気泳動装置150に実行させる場合の処理の流れを示す図である。電気泳動装置150は、例えば、ユーザにより開始ボタン206が操作されることにより、
図18の処理フローを開始する。
図18を参照して、ステップS1において、ユーザにより設定されたスケジュール情報(第2情報および分析スケジュール)を、記憶制御部386は、記憶装置388に記憶させることにより、スケジュール情報を設定する。ステップS1では、駆動部384は、電気泳動機構50の電気泳動処理を開始させる。ステップS1では、電気泳動装置150は、カバー102および引出部103をロックする。
【0111】
次に、ステップS2において、電気泳動装置150は、情報処理装置70からの停止信号を受信したか否かを判断する。電気泳動装置150は、停止信号を受信したと判断するまで、ステップS2の処理を繰り返す(ステップS2でNO)。ステップS2でYESと判断された場合には、処理は、ステップS4に進む。
【0112】
ステップS4において、記憶制御部386は、記憶装置388に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。次に、ステップS6において、電気泳動装置150は、実行中の本処理(
図14および
図15参照)が終了したか否かを判断する。電気泳動装置150は、実行中の本処理が終了したと判断するまでステップS6の処理を繰り返す。ステップS6でYESと判断された場合(つまり、
図14および
図15のタイミングT12に到達した場合)には、処理は、ステップS8に進む。
【0113】
ステップS8では、電気泳動装置150は、マイクロチップ5の洗浄処理を開始させる(
図14および
図15のT12参照)。次に、ステップS10において、電気泳動装置150が、ステップS1で実行されたカバー102および引出部103のロックを解除する。次に、ステップS12において、電気泳動装置150は、洗浄処理が終了したか否かを判断する。電気泳動装置150は、洗浄処理が終了したと判断するまで、ステップS12の処理を繰り返す。ステップS12でYESと判断された場合には、処理は、ステップS14に進む。
【0114】
ステップS14において、駆動部384は、新たにセットされたサンプルに対して前処理および本処理を電気泳動機構50に実行させる。
【0115】
[その他の実施形態]
(1)上述の実施の形態では、
図14および
図15のタイミングT12に示すように、電気泳動装置150は、マイクロチップ5を用いてサンプルを電気泳動させる本処理が終了したときに、カバー102のロックを解除するとして説明した。しかしながら、電気泳動装置150は、本処理および洗浄処理の双方が終了したとき、つまり、タイミングT13またはタイミングT23で、カバー102のロックを解除するようにしてもよい。このような構成であれば、本処理および洗浄処理の双方が終了したときに、ユーザは試料をセットできることから、ユーザに安全に試料をセットさせることができる。
【0116】
(2) 上述の実施の形態では、デバイスとしてマイクロチップを用いた電気泳動装置を例示した。しかしながら、デバイスは、他の物としてもよい。デバイスは、例えば、キャピラリーとしてもよい。
【0117】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0118】
(第1項) 一態様に係る電気泳動装置は、試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、電気泳動機構を制御する制御装置と、試料が配置されるプレートとを備え、制御装置は、複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させ、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。
【0119】
第1項に記載の電気泳動装置によれば、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持することから、ユーザは、再度、分析の設定を行う必要がない。したがって、電気泳動装置は、ユーザの負担を増大させることなく、試料の分析中に、新たな試料の分析を追加できる。
【0120】
(第2項) 第1項に記載の電気泳動装置において、制御装置は、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで実行した後、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を電気泳動機構に実行させることが可能である。
【0121】
第2項に記載の電気泳動装置によれば、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を優先的に実行することができる。
【0122】
(第3項) 第1項または第2項に記載の電気泳動装置において、制御装置は、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理の全てが終了した後、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を電気泳動機構に実行させることが可能である。
【0123】
第3項に記載の電気泳動装置によれば、ユーザにより配置された新たな試料を電気泳動させる電気泳動処理を、複数の電気泳動処理の全てが終了した後に実行することができる。
【0124】
(第4項) 第1項~第3項のいずれか1項に記載の電気泳動装置において、電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーをさらに備え、制御装置は、電気泳動処理の実行中に、カバーによる開口の開放を不可能とする。
【0125】
第4項に記載の電気泳動装置によれば、電気泳動処理の実行中に、カバーによる開口の開放が不可能となることから、外光が、電気泳動装置に進入することを防止できる。したがって、電気泳動装置は、受光量に基づく分析結果が不正確なものとなることを防止できる。
【0126】
(第5項) 第4項に記載の電気泳動装置において、電気泳動処理は、デバイスを用いて試料を電気泳動させる第1処理と、第1処理の後に、デバイスを洗浄する第2処理とを含み、制御装置は、第1処理が終了したときにカバーを開閉可能とする。
【0127】
第5項の電気泳動装置によれば、デバイスが洗浄されているときにカバーが開閉可能となる。したがって、ユーザは、デバイスの洗浄中に試料をセットすることができる。
【0128】
(第6項) 第4項に記載の電気泳動装置において、電気泳動処理は、デバイスを用いて試料を電気泳動させる第1処理と、第1処理の後に、デバイスを洗浄する第2処理とを含み、制御装置は、第1処理および第2処理が終了したときにカバーを開閉可能とする。
【0129】
第6項の電気泳動装置によれば、第1処理および第2処理が終了したときに、ユーザは試料をセットできることから、ユーザに安全に試料をセットさせることができる。
【0130】
(第7項) 第4項~第6項のいずれか1項に記載の電気泳動装置において、プレートは、ユーザにより試料が配置可能となる位置まで、カバーが閉じた状態でスライド可能である。
【0131】
第7項の電気泳動装置によれば、プレートは、ユーザにより試料が配置可能となる位置まで、カバーが閉じた状態でスライド可能である。よって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0132】
(第8項) 電気泳動システムは、電気泳動装置と、情報処理装置とを備え、電気泳動装置は、試料の電気泳動処理を実行する電気泳動機構と、電気泳動機構を制御する制御装置と、各々に試料が配置される複数の領域を含むプレートとを備え、制御装置は、複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定し、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果に関する第1情報と、複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させ、スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信し、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させ、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持する。
【0133】
第8項に記載の電気泳動システムによれば、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持することから、ユーザは、再度、分析の設定を行う必要がない。したがって、電気泳動装置は、ユーザの負担を増大させることなく、試料の分析中に、新たな試料の分析を追加できる。
【0134】
(第9項) 第8項に記載の電気泳動システムにおいて、情報処理装置は、停止ボタンを表示し、制御装置は、ユーザにより停止ボタンが操作された場合、情報処理装置から停止信号を受信する。
【0135】
第9項に記載の電気泳動システムによれば、情報処理装置で表示された停止ボタンを操作することにより、新たなサンプルの電気泳動処理を電気泳動装置に実行させることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0136】
(第10項) 第9項に記載の電気泳動システムにおいて、電気泳動装置は、電気泳動装置の開口を覆い、かつユーザにより開閉可能なカバーをさらに備え、制御装置は、実行中の電気泳動処理が終了したときに、カバーを開閉可能とし、情報処理装置は、ユーザにより停止ボタンが操作された場合、カバーが開閉可能となるタイミングを示す情報を表示する。
【0137】
第10項に記載の電気泳動システムによれば、カバーが開閉可能となるタイミングをユーザに認識させることができることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0138】
(第11項) 第8項~第10項に記載の電気泳動システムにおいて、複数の領域のうちユーザにより試料が配置可能な領域を表示する。
【0139】
第11項に記載の電気泳動システムによれば、ユーザにより試料が配置可能な領域をユーザに認識させることができる。
【0140】
(第12項) 第8項~第11項に記載の電気泳動システムにおいて、情報処理装置は、複数の領域のうちユーザにより試料が配置不可能な領域を表示する。
【0141】
第12項に記載の電気泳動システムによれば、ユーザにより試料が配置不可能な領域をユーザに認識させることができる。
【0142】
(第13項) 第8項~第12項に記載の電気泳動システムにおいて、情報処理装置は、複数の領域のうちユーザにより新たな試料が配置された領域を表示する。
【0143】
第13項に記載の電気泳動システムによれば、ユーザにより配置された新たな試料が配置された領域をユーザに認識させることができる。
【0144】
(第14項) 第8項~第13項に記載の電気泳動システムにおいて、制御装置は、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の設定に関する第2情報を、ユーザの情報処理装置の操作により設定する。
【0145】
第14項に記載の電気泳動システムによれば、ユーザにより配置された新たな試料の電気泳動処理の条件をユーザに設定させることができることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0146】
(第15項) 第8項~第14項に記載の電気泳動システムにおいて、制御装置は、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の順序を、ユーザの情報処理装置への操作により変更する。
【0147】
第15項に記載の電気泳動システムによれば、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の順序を、ユーザの情報処理装置への操作により変更することができることから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0148】
(第16項) 電気泳動装置の制御方法は、複数の電気泳動処理の順序を規定するスケジュールを設定するステップと、複数の電気泳動処理のうち終了した電気泳動処理の結果を示す第1情報と、複数の電気泳動処理の設定に関する第2情報とを記憶装置に記憶させるステップと、スケジュールで規定された複数の電気泳動処理の実行中に、停止信号を情報処理装置から受信するステップと、停止信号を受信した場合、複数の電気泳動処理のうち実行していた電気泳動処理を最後まで電気泳動機構に実行させるステップと、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持するステップとを備える。
【0149】
第16項に記載の電気泳動装置の制御方法によれば、停止信号を受信した場合、記憶装置に記憶されている第1情報と、複数の電気泳動処理のうち実行されていない電気泳動処理の第2情報との記憶を維持することから、ユーザは、再度、分析の設定を行う必要がない。したがって、電気泳動装置は、ユーザの負担を増大させることなく、試料の分析中に、新たな試料の分析を追加できる。
【0150】
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施の形態の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0151】
2 分注部、4 シリンジポンプ、5 マイクロチップ、6 三方電磁弁、7 保持部、8 プローブ、10 容器、12 プレート、12W ウェル、14 第1洗浄部、16 分離バッファ部、18 空気供給口、20 リング、22 ノズル、23 ポンプ部、26 電源部、31 測定部、32 光ファイバ、34 フィルタ、36 光電子倍増管、38 コントローラ、50 電気泳動機構、51,52 透明基板、53 リザーバ、55 分離流路、56 交差位置、61,64 電極パターン、70 情報処理装置、74,164 RAM、76,162 ROM、80 ディスプレイ、82 入力部、92 泳動制御部、100 本体部、100X 開口、102 カバー、103 引出部、121 第1ウェル群、121A,122A ウェル、122 第2ウェル群、123 平坦部、150 電気泳動装置、200 スケジュール画像、202 第1画像、206 開始ボタン、208 一時停止ボタン、210 第2画像、216 インジケータ、216A ゲージ、252 入力領域、300 電気泳動システム、382 受信部、384 駆動部、386 記憶制御部、388 記憶装置、390 処理部、402A 表示領域。