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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】磁壁移動素子及び磁気記録アレイ
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20231212BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20231212BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20231212BHJP
   H10N 50/80 20230101ALI20231212BHJP
【FI】
H10B61/00
H01L29/82 Z
H10N50/10 P
H10N50/10 Z
H10N50/80 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020012694
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2020141132
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019030434
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】芦田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 竜雄
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113748(WO,A1)
【文献】特開2013-175598(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057504(WO,A1)
【文献】特開2013-239520(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 61/00
H01L 29/82
H10N 50/10
H10N 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1強磁性層と、
前記第1強磁性層に対して第1方向に位置し、第2方向に延びる磁気記録層と、
前記第1強磁性層と前記磁気記録層との間に位置する非磁性層と、
前記磁気記録層の前記非磁性層と反対側に位置し、前記第1方向において前記磁気記録層の一部とそれぞれ重なる第1電極と第2電極と、を備え、
前記第1電極は、前記第1強磁性層の磁化の向きと異なる方向に磁化が配向した磁性体を含み、
前記磁気記録層は、前記第1電極及び前記第1強磁性層と前記第1方向において重なる第1領域と、前記第2電極及び前記第1強磁性層と前記第1方向において重なる第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とに挟まれる第3領域とを有し、
前記第1領域の前記第1電極と対向する第1部分の面積は、前記第2領域の前記第2電極と対向する第2部分の面積より広く、
前記第1強磁性層は、前記第1方向において前記第1電極及び前記第2電極の一部と重なり、
前記磁気記録層の前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の中心を通り、前記第1方向及び前記第2方向に広がる切断面において、
前記第1電極は、第1側面と、前記第1側面より前記第2電極の近くに位置する第2側面と、を有し、
前記第1側面は、前記第2側面の前記第1方向に対する傾斜角より大きな傾斜角を有する部分を有する、磁壁移動素子。
【請求項2】
第1強磁性層と、
前記第1強磁性層に対して第1方向に位置し、第2方向に延びる磁気記録層と、
前記第1強磁性層と前記磁気記録層との間に位置する非磁性層と、
前記磁気記録層の前記非磁性層と反対側に位置し、前記第1方向において前記磁気記録層の一部とそれぞれ重なる第1電極と第2電極と、を備え、
前記第1電極は、前記第1強磁性層の磁化の向きと異なる方向に磁化が配向した磁性体を含み、
前記磁気記録層は、前記第1電極及び前記第1強磁性層と前記第1方向において重なる第1領域と、前記第2電極及び前記第1強磁性層と前記第1方向において重なる第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とに挟まれる第3領域とを有し、
前記第1領域の前記第1電極と対向する第1部分の面積は、前記第2領域の前記第2電極と対向する第2部分の面積より広く、
前記第1強磁性層は、前記第1方向において前記第1電極及び前記第2電極の一部と重なり、
前記磁気記録層の前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の中心を通り、前記第1方向及び前記第2方向に広がる切断面において、
前記第1電極は、第1側面と、前記第1側面より前記第2電極の近くに位置する第2側面と、を有し、
前記第1側面は、前記第1方向に対する傾きが不連続に変化する部分を有する、磁壁移動素子。
【請求項3】
前記第2電極は、前記第1強磁性層の磁化の向きと同じ方向に磁化が配向した磁性体を含む、請求項1又は2に記載の磁壁移動素子。
【請求項4】
基板をさらに有し、
前記第1強磁性層は、前記磁気記録層より前記基板の近くに位置する、請求項1又は2に記載の磁壁移動素子。
【請求項5】
前記磁気記録層の前記第3領域を覆う絶縁層をさらに有する、請求項に記載の磁壁移動素子。
【請求項6】
基板をさらに有し、
前記第1強磁性層は、前記磁気記録層より前記基板から遠い位置にある、請求項1又は2に記載の磁壁移動素子。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の磁壁移動素子を複数有する、磁気記録アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁壁移動素子及び磁気記録アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
微細化に限界が見えてきたフラッシュメモリ等に代わる次世代の不揮発性メモリに注目が集まっている。例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistance Randome Access Memory)、PCRAM(Phase Change Random Access Memory)等が次世代の不揮発性メモリとして知られている。
【0003】
MRAMは、磁化の向きの変化によって生じる抵抗値変化をデータ記録に利用している。記録メモリの大容量化を実現するために、メモリを構成する素子の小型化、メモリを構成する素子一つあたりの記録ビットの多値化が検討されている。
【0004】
特許文献1には、磁壁の移動を利用した磁気抵抗効果素子が記載されている。特許文献1に記載の磁気抵抗効果素子は、磁壁の位置によって情報をアナログに記録する。特許文献1に記載の磁気抵抗効果素子は、磁化固定部によって磁壁が移動できる範囲を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5598697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁壁移動素子は、非磁性層を挟む2つの強磁性体の磁化の相対角の違いに応じて抵抗値が変化する。磁壁移動素子は、抵抗値に基づいてデータを記憶する。磁壁移動素子は、磁壁の消滅を防ぐために、磁壁が移動する磁気記録層に磁化固定部を設ける場合がある。また複数の磁壁移動素子の集積度を上げるために、磁化固定部を含む磁気記録層の一面に、抵抗変化の基準となる参照層を積層する場合がある。磁化固定部は磁化の方向が固定され、磁化固定部の磁化と参照層の磁化との相対角は変化しない。したがって、磁化固定部は、磁壁移動素子の抵抗値変化を生み出さず、磁化固定層と参照層とが平面視重なる分だけ、抵抗の変化幅が小さくなる。抵抗値の変化幅が大きいと、例えば、磁壁移動素子が記録するデータがノイズにより変動することを抑制できる。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、抵抗変化幅の広く安定な磁壁移動型磁気記録素子及び磁気メモリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の態様にかかる磁壁移動素子は、第1強磁性層と、前記第1強磁性層に対して第1方向に位置し、第2方向に延びる磁気記録層と、前記第1強磁性層と前記磁気記録層との間に位置する非磁性層と、前記磁気記録層の前記非磁性層と反対側に位置し、前記第1方向において前記磁気記録層の一部とそれぞれ重なる第1電極と第2電極と、を備え、前記第1電極は、前記第1強磁性層の磁化の向きと異なる方向に磁化が配向した磁性体を含み、前記磁気記録層は、前記第1電極及び前記第1強磁性層と前記第1方向において重なる第1領域と、前記第2電極及び前記第1強磁性層と前記第1方向において重なる第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とに挟まれる第3領域とを有し、前記第1領域の前記第1電極と対向する第1部分の面積は、前記第2領域の前記第2電極と対向する第2部分の面積より広く、前記第1強磁性層は、前記第1方向から見て、前記第1電極及び前記第2電極の一部と重なる。
【0009】
(2)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第2電極は、前記第1強磁性層の磁化の向きと同じ方向に磁化が配向した磁性体含んでもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる磁壁移動素子は、基板をさらに有し、前記第1強磁性層は、前記磁気記録層より前記基板の近くに位置してもよい。
【0011】
(4)上記態様にかかる磁壁移動素子は、前記磁気記録層の前記第3領域を覆う絶縁層をさらに有してもよい。
【0012】
(5)上記態様にかかる磁壁移動素子は、基板をさらに有し、前記第1強磁性層は、前記磁気記録層より前記基板から遠い位置にあってもよい。
【0013】
(6)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記磁気記録層の前記第2方向の側面は、前記第1方向に対して傾斜してもよい。
【0014】
(7)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第1電極は、前記第1方向に対して傾斜する第1傾斜部を有してもよい。
【0015】
(8)上記態様にかかる磁壁移動素子の前記磁気記録層の前記第1方向及び前記第2方向に直交する前記第3方向の中心を通り、前記第1方向及び前記第2方向に広がる切断面において、前記第1電極は、第1側面と、前記第1側面より前記第2電極の近くに位置する第2側面と、を有し、前記第1側面は、前記第2側面の前記第1方向に対する傾斜角より大きな傾斜角を有する部分を有してもよい。
【0016】
(9)上記態様にかかる磁壁移動素子の前記磁気記録層の前記第1方向及び前記第2方向に直交する前記第3方向の中心を通り、前記第1方向及び前記第2方向に広がる切断面において、前記第1電極は、第1側面と、前記第1側面より前記第2電極の近くに位置する第2側面と、を有し、前記第1側面は、前記第1方向に対する傾きが不連続に変化する部分を有してもよい。
【0017】
(10)第2の態様にかかる磁気記録アレイは、上記態様にかかる磁壁移動素子を複数有してもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記態様にかかる磁壁移動素子及び磁気記録アレイによれば、抵抗変化幅を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図2】第1実施形態に係る記憶素子の断面図である。
図3】第1実施形態に係る記憶素子の平面図である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の記憶素子の第1変形例の平面図である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の記憶素子の第2変形例の断面図である。
図6】第1実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の第3変形例の断面模式図である。
図7】第1実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の第3変形例の平面模式図である。
図8】第1実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の第4変形例の断面模式図である。
図9】第1実施形態にかかる記憶素子の第5変形例の断面模式図である。
図10】第2実施形態にかかる半導体装置の断面模式図である。
図11】第2実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の断面模式図である。
図12】第2実施形態にかかる記憶素子の第6変形例の断面模式図である。
図13】第3実施形態にかかる磁気記録アレイの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
まず方向について定義する。x方向及びy方向は、後述する基板60の一面と略平行な方向である。x方向は、後述する磁気記録層20が延びる方向である。x方向は、第2方向の一例である。y方向は、x方向と直交する方向である。z方向は、x方向及びy方向と直交する方向である。z方向は第1方向の一例である。また本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。
【0022】
[第1実施形態]
<半導体装置>
図1は、第1実施形態にかかる半導体装置の断面図である。図1は、磁気記録層20のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。半導体装置200は、複数の記憶素子100と、記憶素子100に接続された半導体素子(例えばトランジスタ)と、を有する。図1では、便宜上、一つの記憶素子100にフォーカスし、記憶素子100に接続された3つのトランジスタを図示している。半導体装置200は、第1強磁性層10と磁気記録層20と非磁性層30と第1電極40と第2電極50と基板60と第3電極70と複数の絶縁層80と複数の導電部90と第1配線Cmと第2配線Wpと第3配線Rpと複数のゲート電極G1,G2,G3と複数のゲート絶縁膜GI1,GI2,GI3とを有する。第1強磁性層10と磁気記録層20と非磁性層30と第1電極40と第2電極50とを記憶素子100と称する。記憶素子100は、磁壁移動素子の一例である。図1に示す半導体装置200は、磁気記録層20が第1強磁性層10より基板60の近くに位置するトップピン構造である。
【0023】
「基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜」
基板60は、例えば、半導体基板である。基板60は、複数のソース領域S1,S2,S3及び複数のドレイン領域D1,D2,D3を有する。複数のソース領域S1,S2,S3及び複数のドレイン領域D1,D2,D3は、基板60に不純物が注入された領域である。ソース領域S1、ドレイン領域D1、ゲート電極G1、ゲート絶縁膜GI1は、第1トランジスタTr1となる。ソース領域S2、ドレイン領域D2、ゲート電極G2、ゲート絶縁膜GI2は、第2トランジスタTr2となる。ソース領域S3、ドレイン領域D3、ゲート電極G3、ゲート絶縁膜GI3は、第3トランジスタTr3となる。
【0024】
「絶縁層」
絶縁層80は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層80は、基板60、第1配線Cm、第2配線Wp、第3配線Rp及び記憶素子100のそれぞれを、導電部90を除いて、電気的に分離する。
【0025】
絶縁層80には、半導体デバイス等で用いられているものと同様の材料を用いることができる。絶縁層80は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)等である。
【0026】
「配線」
第1配線Cmは、共通配線である。共通配線は、データの書き込み時及び読み出し時の両方で用いられる配線である。第2配線Wpは、書き込み配線である。書き込み配線は、データの書き込み時に用いられる配線である。第3配線Rpは、読み出し配線である。読み出し配線は、データの読み出し時に用いられる配線である。第1トランジスタTr1及び第3トランジスタTr3がオンになると、第2配線Wpと第1配線Cmとが電気的に繋がり、記憶素子100に書き込み電流が流れる。第2トランジスタTr1及び第3トランジスタTr3がオンになると、第3配線Wpと第1配線Cmとが電気的に繋がり、記憶素子100に読み出し電流が流れる。
【0027】
「導電部」
導電部90は、第1配線Cm、第2配線Wp、第3配線Rp、記憶素子100のそれぞれと基板60とを電気的に接続する。導電部90は、導電性を有する材料を含む。導電部91は、第2配線Wpと第1トランジスタTr1のソース領域S1とを電気的に繋ぐ。導電部92は、第2電極50と第1トランジスタTr1のドレイン領域D1とを電気的に繋ぐ。導電部93は、第3配線Rpと第2トランジスタTr2のソース領域S2とを電気的に繋ぐ。導電部94は、配線71と第2トランジスタTr2のドレイン領域D2とを電気的に繋ぐ。導電部95は、第1配線Cmと第3トランジスタTr3のソース領域S3とを電気的に繋ぐ。導電部96は、第1電極40と第3トランジスタTr3のドレイン領域D3とを電気的に繋ぐ。導電部91,92,93,94,95,96は、z方向に延びる。
【0028】
「第3電極」
第3電極70は、記憶素子100に読み出し電流を流すための電極である。第3電極70は、導電性を有する材料を含む。第3電極70と導電部94との間は、配線71で接続されている。
【0029】
「記憶素子」
図2は、第1実施形態に係る半導体装置の記憶素子100の近傍を拡大した断面図である。図3は、第1実施形態に係る半導体装置の記憶素子100の平面図である。記憶素子100は、第1強磁性層10と磁気記録層20と非磁性層30と第1電極40と第2電極50とを有する。図2は、記憶素子100を磁気記録層のy方向の中心を通るxz平面(図3におけるA-A面)で切断した断面図である。図2では、簡単のため、磁気記録層20、非磁性層30及び第1強磁性層10の周囲の絶縁層80を省略している。
【0030】
「第1電極、第2電極」
第1電極40及び第2電極50は、磁気記録層20を基準に非磁性層30と反対側に位置する。第1電極40及び第2電極50は、絶縁層80の内部にある。第1電極40は磁気記録層20と導電部96との間に位置し、第2電極50は磁気記録層20と導電部92との間に位置する。第1電極40の少なくとも一部は、z方向において磁気記録層20と重なる。第2電極50の少なくとも一部は、z方向において磁気記録層20と重なる。
【0031】
z方向からの第1電極40及び第2電極50の平面視形状は、特に問わない。例えば、図3に示す第1電極40及び第2電極50は、z方向からの平面視で矩形である。
【0032】
第1電極40は、磁性体を含む。第1電極40は、例えば、一方向に配向した磁化M40を有する。第1電極40の磁化M40の向きは、第1強磁性層10の磁化M10の向きと異なる。図2に示す磁化M40は、例えば、-z方向に配向する。第1電極40の保磁力は、後述する磁気記録層20の第3領域R3の保磁力より大きい。第3領域R3の保磁力は、第1電極40及び第2電極50を有さない絶縁層80上に磁気記録層20を形成した場合の磁気記録層20の保磁力と略一致する。
【0033】
第1電極40と第3領域R3との間の保磁力差は、第1電極40を構成する材料と磁気記録層20を構成する材料とを選択して調整できる。また第1電極40をシンセティック反強磁性構造(SAF構造)としてもよい。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。二つの磁性層はそれぞれ磁化が固定されており、固定された磁化の向きは反対である。例えば、図1に示す第1電極40の下方に、非磁性層と強磁性層とを設ける。第1電極40と強磁性層とがカップリングすることで、第1電極40の保磁力が高まる。
【0034】
第1電極40は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を含む。第1電極40は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe等である。
【0035】
第2電極50は、導体である。第2電極は、例えば、導電性に優れるAl、Cu、Ag等である。
【0036】
「磁気記録層」
磁気記録層20は、第1電極40、第2電極50のz方向に位置する。磁気記録層20は、第1面40a、50aに跨って形成されている。磁気記録層20は、第1面40a、50aに直接接続されていてもよいし、間に層を介して接続されていてもよい。
【0037】
磁気記録層20は、内部の磁気的な状態の変化により情報を記録できる層である。磁気記録層20は、非磁性層30より第1電極40及び第2電極50側に位置する磁性層である。磁気記録層20は、x方向に延びる。図2に示す磁気記録層20は、z方向からの平面視で、x方向が長軸、y方向が短軸の矩形である。
【0038】
磁気記録層20は、内部に第1磁区28と第2磁区29とを有する。第1磁区28の磁化M28と第2磁区29の磁化M29とは、反対方向に配向する。第1磁区28と第2磁区29との境界が磁壁27である。磁気記録層20は、磁壁27を内部に有することができる。図2に示す記憶素子100は、第1磁区28の磁化M28が+z方向に配向し、第2磁区29の磁化M29が-z方向に配向する。以下、磁化がz軸方向に沿って配向した例を用いて説明するが、磁気記録層20及び第1強磁性層10の磁化はx軸方向に沿って配向してもよいし、xy面内のいずれかの方向に配向していてもよい。
【0039】
記憶素子100は、磁気記録層20の磁壁27の位置によって、データを多値又は連続的に記録する。磁気記録層20に記録されたデータは、読み出し電流を印加した際に、記憶素子100の抵抗値変化として読み出される。
【0040】
磁気記録層20における第1磁区28と第2磁区29との比率は、磁壁27が移動すると変化する。第1強磁性層10の磁化M10は、第1磁区28の磁化M28と同じ方向(平行)であり、第2磁区29の磁化M29と反対方向(反平行)である。磁壁27が+x方向に移動し、z方向からの平面視で第1強磁性層10と重畳する部分における第1磁区28の面積が広くなると、記憶素子100の抵抗値は低くなる。反対に、磁壁27が-x方向に移動し、z方向からの平面視で第1強磁性層10と重畳する部分における第2磁区29の面積が広くなると、記憶素子100の抵抗値は高くなる。
【0041】
磁壁27は、磁気記録層20のx方向に書き込み電流を流す、又は、外部磁場を印加することによって移動する。例えば、磁気記録層20の+x方向に書き込み電流(例えば、電流パルス)を印加すると、磁壁27が移動する。この時、電子は、電流と逆の-x方向に流れる。第1磁区28から第2磁区29に向って電流が流れる場合、第2磁区29でスピン偏極した電子は、第1磁区28の磁化M28を磁化反転させる。第1磁区28の磁化M28が磁化反転することで、磁壁27が移動する。
【0042】
磁気記録層20は、異なる複数の領域に区分できる。以下、複数の領域を便宜上、第1領域R1と第2領域R2と第3領域R3と称する。磁気記録層20は、z方向からの平面視で、その一部が第1電極40及び第2電極50と重なる。z方向から見て第1電極40及び第1強磁性層10と重なる領域を第1領域R1と称する。第1領域R1は、例えば、磁気記録層20のうち第1電極40の上面及び第1強磁性層10の下面と重なる領域であり、例えば磁気記録層20と第1電極40とが接する領域のうちz方向に第1強磁性層10と重なる領域である。z方向から見て第2電極50及び第1強磁性層10と重なる領域を第2領域R2と称する。第2領域R2は、例えば、磁気記録層20のうち第2電極50の上面及び第1強磁性層10の下面と重なる領域であり、例えば磁気記録層20と第2電極50とが接する領域のうちz方向に第1強磁性層10と重なる領域である。第1領域R1と第2領域R2に挟まれた領域を第3領域R3と称する。第3領域R3は、例えば、第1領域R1及び第2領域R2を除く領域である。第1領域R1は、第1電極40の磁化M40により磁化の向きが固定されている。第2領域R2は磁化が固定されていない。しかしながら、第2領域R2は第2電極50と接しているため、第2領域R2の電流密度は第3領域R3の電流密度より小さく、第3領域R3から第2領域R2に至る際の電流密度の変化量は、第3領域内を流れる電流の電流密度の変化量に対して大きい。そのため、磁壁27は、第3領域R3から第2領域R2に侵入しにくくなり、磁壁27の移動範囲が制限される。
【0043】
第1領域R1は、第1部分R1aを有する。第1部分R1aは、第1領域R1において第1電極40と対向する面である。第1部分R1aは、例えば、第1領域R1において第1電極40と接する面である。第2領域R2は、第2部分R2aを有する。第2部分R2aは、第2領域R2において、第2電極50と対向する面である。第2部分R2aは、例えば、第2領域R2において第2電極50と接する面である。第1部分R1aの面積は、第2部分R2aの面積より広い。図3に示す例では、第1部分R1aと第2部分R2aのy方向の幅wは同じであり、第1部分R1aのx方向の幅wx1は、第2部分R2aのx方向の幅wx2より広い。
【0044】
磁気記録層20は、磁性体により構成される。磁気記録層20を構成する磁性体は、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feが挙げられる。
【0045】
磁気記録層20は、Co、Ni、Pt、Pd、Gd、Tb、Mn、Ge、Gaからなる群から選択される少なくとも一つの元素を有することが好ましい。磁気記録層20に用いられる材料として、例えば、CoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜、MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料が挙げられる。MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料等のフェリ磁性体は飽和磁化が小さく、磁壁を移動するために必要な閾値電流が小さくなる。またCoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜は、保磁力が大きく、磁壁の移動速度が遅くなる。
【0046】
「非磁性層」
非磁性層30は、第1強磁性層10と磁気記録層20との間に位置する。非磁性層30は、磁気記録層20の第2面20bに積層される。第2面20bは、第1面20aと対向する面である。
【0047】
非磁性層30は、例えば、非磁性の絶縁体、半導体又は金属からなる。非磁性の絶縁体は、例えば、Al、SiO、MgO、MgAl、およびこれらのAl、Si、Mgの一部がZn、Be等に置換された材料である。これらの材料は、バンドギャップが大きく、絶縁性に優れる。非磁性層30が非磁性の絶縁体からなる場合、非磁性層30はトンネルバリア層である。非磁性の金属は、例えば、Cu、Au、Ag等である。さらに、非磁性の半導体は、例えば、Si、Ge、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se等である。
【0048】
非磁性層30の厚みは、20Å以上であることが好ましく、30Å以上であることがより好ましい。非磁性層30の厚みが厚いと、記録素子100の抵抗面積積(RA)が大きくなる。記録素子100の抵抗面積積(RA)は、1×10Ωμm以上であることが好ましく、1×10Ωμm以上であることがより好ましい。記録素子100の抵抗面積積(RA)は、一つの記録素子100の素子抵抗と記録素子100の素子断面積(非磁性層30をxy平面で切断した切断面の面積)の積で表される。
【0049】
「第1強磁性層」
第1強磁性層10は、非磁性層30の+z方向に位置する。第1強磁性層10は、非磁性層30に面する。第1強磁性層10は、z方向から見て、第1電極40及び第2電極50の一部と重なる部分を有する。第1強磁性層10は、z方向から見て、第1領域R1及び第2領域R2と一部で重なる。
【0050】
第1強磁性層10は、一方向に配向した磁化M10を有する磁化固定層である。磁化M10の配向方向は、第1電極40の磁化M40の配向方向と反対である。磁化固定層は、所定の外力が印加された際に磁化の向きが磁気記録層20よりも変化しにくい。所定の外力は、例えば外部磁場により磁化に印加される外力や、スピン偏極電流により磁化に印加される外力である。
【0051】
第1強磁性層10は、強磁性体を含む。第1強磁性層10を構成する強磁性材料としては、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feが挙げられる。
【0052】
第1強磁性層10を構成する材料は、ホイスラー合金でもよい。ホイスラー合金はハーフメタルであり、高いスピン分極率を有する。ホイスラー合金は、XYZ又はXYZの化学組成をもつ金属間化合物であり、Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金として例えば、CoFeSi、CoFeGe、CoFeGa、CoMnSi、CoMn1-aFeAlSi1-b、CoFeGe1-cGa等が挙げられる。
【0053】
第1強磁性層10の膜厚は、第1強磁性層10の磁化容易軸をz方向とする(垂直磁化膜にする)場合は、1.5nm以下とすることが好ましく、1.0nm以下とすることがより好ましい。第1強磁性層10の膜厚を薄くすると、第1強磁性層10と他の層(非磁性層30)との界面で、第1強磁性層10に垂直磁気異方性(界面垂直磁気異方性)を付加できる。第1強磁性層10の磁化が、z方向に配向しやすくなる。
【0054】
第1強磁性層10の磁化は、一例としてz方向に固定される。z方向に磁化を固定する際には、第1強磁性層10をCo、Fe、Niからなる群から選択された強磁性体とPt、Pd、Ru、Rhからなる群から選択された非磁性体と積層体とすることが好ましく、中間層としてIr、Ruからなる群から選択された非磁性体を積層体のいずれかの位置に挿入することがより好ましい。強磁性体と非磁性体を積層すると垂直磁気異方性を付加することができ、中間層を挿入することによって第1強磁性層10の磁化はより強く垂直方向に固定することができる。
【0055】
第1強磁性層10は、SAF構造でもよい。第1強磁性層10の非磁性層30と反対側の面に、スペーサ層を介して、反強磁性層を有してもよい。第1強磁性層10と反強磁性層とが反強磁性カップリングすると、第1強磁性層10の保磁力が大きくなる。反強磁性層は、例えば、IrMn,PtMn等である。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0056】
第1実施形態にかかる半導体装置は、各層を積層し、各層を所定の形状に加工して得られる。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。
【0057】
第1実施形態にかかる記憶素子100において、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広くなると、記憶素子100の抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)が広がる。
【0058】
記憶素子100は、非磁性層30を挟む2つの強磁性体(第1強磁性層10及び磁気記録層20)の磁化の相対角の違いに基づき、抵抗値が変化する。第1強磁性層10は、z方向からの平面視で、第1領域R1及び第2領域R2まで至る。したがって、記憶素子100の抵抗値は、第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3の磁化の向きによって決まる。一方で、上述のように、磁壁27は、第1領域R1及び第2領域R2には侵入しにくい。つまり、磁化の方向が固定された第1領域R1及び第2領域R2は、記憶素子100において“0”及び“1”のデータの基準抵抗には大きな影響を及ぼすが、記憶素子100の抵抗変化に与える影響は第3領域R3と比較して小さい。
【0059】
記憶素子100は、磁壁27が第1領域R1に近づくほど抵抗値は小さくなり、磁壁27が第2領域R2に近づくほど抵抗値は大きくなる。磁気記録層20における第1領域R1が占める面積が大きくなると、記憶素子100の最小の抵抗値が大きくなる。また、磁気記録層20における第2領域R2が占める面積が大きくなると、記憶素子100の最大の抵抗値が小さくなる。記憶素子100は、最大の抵抗値が小さくなる場合より、最小の抵抗値が大きくなる場合の方が、抵抗変化幅を大きくできる。
【0060】
以下、具体的な一例を示し、説明する。まず仮定条件として、磁壁27が無く、第1強磁性層10の磁化M10と磁気記録層20の磁化M28とが全領域において完全平行な場合に記憶素子100が示す抵抗値を100Ω、磁壁27が無く、第1強磁性層10の磁化M10と磁気記録層20の磁化M29とが全領域において完全反平行な場合に記憶素子100が示す抵抗値を200Ωとする。この場合、記憶素子100は、最大で100Ωの抵抗変化幅を有する。一方で、第1領域R1及び第2領域R2が存在する場合、磁壁27の移動範囲は第3領域R3に限定されているため、第1強磁性層10の磁化M10と磁気記録層20の磁化M28、M29とが、完全平行及び完全反平行の状態は取り得ない。すなわち、記憶素子100の抵抗変化幅は、100Ωを下回る。
【0061】
まず比較例1として、第1領域R1及び第2領域R2がそれぞれ磁気記録層20の10%ずつの領域を占める場合における記憶素子100の抵抗変化幅を求める。記憶素子100は、磁壁27が第1領域R1と第3領域R3との境界にある場合に最小の抵抗値を示し、磁壁27が第2領域R2と第3領域R3との境界にある場合に最大の抵抗値を示す。記憶素子100が最小の抵抗値を示す際、磁気記録層20の90%の磁化M28は第1強磁性層10の磁化M10と平行となり、磁気記録層20の10%の磁化M29は第1強磁性層10の磁化M10と反平行となる。記憶素子100が示す最小抵抗値は、105.3Ωである。一方で、記憶素子100が最大の抵抗値を示す際、磁気記録層20の10%の磁化M28は第1強磁性層10の磁化M10と平行となり、磁気記録層20の90%の磁化M29は第1強磁性層10の磁化M10と反平行となる。記憶素子100が示す最大抵抗値は、181.8Ωである。記憶素子100の抵抗変化幅は76.6Ωであり、記憶素子100のMR比は72.7である。
【0062】
次いで、比較例2として、第1領域R1が磁気記録層20の5%の領域を占め、第2領域R2が磁気記録層20の15%の領域を占める場合における記憶素子100の抵抗変化幅を求める。記憶素子100が最小の抵抗値を示す際、磁気記録層20の95%の磁化M28は第1強磁性層10の磁化M10と平行となり、磁気記録層20の5%の磁化M29は第1強磁性層10の磁化M10と反平行となる。記憶素子100が示す最小抵抗値は、102.6Ωである。一方で、記憶素子100が最大の抵抗値を示す際、磁気記録層20の15%の磁化M28は第1強磁性層10の磁化M10と平行となり、磁気記録層20の85%の磁化M29は第1強磁性層10の磁化M10と反平行となる。記憶素子100が示す最大抵抗値は、173.9Ωである。記憶素子100の抵抗変化幅は71.3Ωであり、記憶素子100のMR比は69.6である。
【0063】
最後に、実施例1として、第1領域R1が磁気記録層20の15%の領域を占め、第2領域R2が磁気記録層20の5%の領域を占める場合における記憶素子100の抵抗変化幅を求める。記憶素子100が最小の抵抗値を示す際、磁気記録層20の85%の磁化M28は第1強磁性層10の磁化M10と平行となり、磁気記録層20の15%の磁化M29は第1強磁性層10の磁化M10と反平行となる。記憶素子100が示す最小抵抗値は、105.3Ωである。一方で、記憶素子100が最大の抵抗値を示す際、磁気記録層20の5%の磁化M28は第1強磁性層10の磁化M10と平行となり、磁気記録層20の95%の磁化M29は第1強磁性層10の磁化M10と反平行となる。記憶素子100が示す最大抵抗値は、190.5Ωである。記憶素子100の抵抗変化幅は82.4Ωであり、記憶素子100のMR比は76.2である。
【0064】
実施例1、比較例1及び比較例2に示すように、磁気記録層20における第1領域R1が占める割合と第2領域R2が占める割合とを変動させると、記憶素子100の抵抗変化幅及びMR比が変動する。実施例1は、磁気記録層20における第1領域R1が占める割合が、第2領域R2が占める割合より大きいため、比較例1及び比較例2より記憶素子100の抵抗変化幅及びMR比が大きい。この関係は、この例に限られるものではなく、磁気記録層20における第1領域R1の占める割合が第2領域R2の占める割合より多いという前提の上で、第1領域R1及び第2領域R2が占めるパーセンテージを変動させた場合、及び、仮定条件として設定した抵抗値の値を変動しても変わらない。
【0065】
すなわち、第1実施形態にかかる記憶素子100は、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、記憶素子100の抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)が広い。
【0066】
記憶素子100は、“1”と“0”のデジタル信号ではなく、アナログにデータを記録できる。そのため、半導体装置200は、脳を模倣したニューロモロフィックデバイスとして機能する。
【0067】
記憶素子100の第1強磁性層10、磁気記録層20、第1電極40のそれぞれの磁化の向きは、例えば磁化曲線を測定することにより確認できる。磁化曲線は、例えば、MOKE(Magneto Optical Kerr Effect)を用いて測定できる。MOKEによる測定は、直線偏光を測定対象物に入射させ、その偏光方向の回転等が起こる磁気光学効果(磁気Kerr効果)を用いることにより行う測定方法である。
【0068】
例えば、磁気記録層20の第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3のそれぞれの磁化の配向方向を測定する場合を例に、具体的に説明する。まず記憶素子100をz方向から研削し、第1強磁性層10を除去する。非磁性層30は、磁気記録層20の磁化の配向方向に与える影響が大きいため、非磁性層30の一部を残す。次いで、磁気記録層20の磁化M28,M29が一方向に配向するのに十分な磁場を所定の方向に印加する。そして、印加磁場を少しずつ小さくしながら、磁化曲線を測定する。測定箇所は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3のそれぞれのxy平面における中心位置とする。測定した磁化曲線において、最初に印加磁場がゼロとなった時点における磁化の正負によって磁化の向きを特定できる。第1強磁性層10及び第1電極40の磁化の向きも、同様に行うことで測定できる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0070】
(第1変形例)
図4は、第1実施形態にかかる半導体装置の第1変形例の平面模式図である。図4に示す記憶素子100Aは、第1電極41及び第2電極51のz方向からの平面視形状が円形である点が、図3に示す記憶素子100と異なる。その他の構成は、図3に示す記憶素子100と同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0071】
磁気記録層20は、z方向からの平面視で、第1電極41及び第2電極51と重なる。図4に示す第1部分R1aの面積は、第2部分R2aの面積より広い。図4に示す例では、第1部分R1aと磁気記録層20とが重なる部分のx方向の最大の幅wx1が、第2部分R2aと磁気記録層20とが重なる部分のx方向の最大の幅wx2より広い。第1変形例にかかる記憶素子100Aにおいても、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、記憶素子100Aの抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。また第1電極41及び第2電極51のz方向からの平面視形状は、図3に示す矩形、図4に示す円形に限られず、種々の形状を選択できる。
【0072】
(第2変形例)
図5は、第1実施形態にかかる半導体装置の第2変形例の断面模式図である。図5に示す記憶素子100Bは、第2電極52が磁性体である点が、図2に示す記憶素子100と異なる。その他の構成は、図1に示す記憶素子100と同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0073】
第2電極52は、磁性体を含む。第2電極52は、例えば、一方向に配向した磁化M52を有する。第2電極52の磁化M52の向きは、第1強磁性層10の磁化M10の向きと同一であり、第1電極40の磁化M40の向きと反対である。図5に示す磁化M52は、+z方向に配向する。第2電極52の保磁力は、磁気記録層20の第3領域R3の保磁力より大きい。
【0074】
第2電極52は、第1電極40と同様の構成、材料を用いることができる。例えば、第2電極は、シンセティック反強磁性構造でもよい。
【0075】
第2変形例にかかる記憶素子100Bにおいても、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、半導体装置100Bの抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。第2電極52の磁化M52は、磁気記録層20の第2領域R2の磁化を固定する。第2領域R2の磁化が固定されることで、磁壁27が第2領域R2に侵入することをより抑制できる。
【0076】
(第3変形例)
図6は、第1実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の第3変形例の断面模式図である。図7は、第1実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の第3変形例の平面模式図である。図6は、図7のA-A面で記憶素子をxz平面で切断した断面図である。記憶素子100Cは、記憶素子のx方向の側面の形状が異なる点が、図1に示す記憶素子100と異なる。その他の構成は、図1に示す記憶素子100と同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0077】
第1強磁性層11は、磁化M11を有し、x方向に第1側面11S1と第2側面11S2とを有する。非磁性層31は、x方向に第1側面31S1と第2側面31S2とを有する。磁気記録層21は、x方向に第1側面21S1と第2側面21S2とを有する。第1側面11S1、31S1、21S1は、第1強磁性層11、非磁性層31、磁気記録層21のそれぞれのx方向の二つの側面のうち第1電極43に近い側面である。第2側面11S2、31S2、21S2は、第1強磁性層11、非磁性層31、磁気記録層21のそれぞれのx方向の二つの側面のうち第2電極53に近い側面である。第1側面11S1、31S1、21S1及び第2側面11S2、31S2、21S2は、z方向に対して傾斜している。第1側面11S1、31S1、21S1の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角θ1を有する。第2側面11S2、31S2、21S2の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角θ2を有する。また傾斜角θ1及びθ2は、接線を引く接点の位置によらず一定でも、接線を引く接点の位置によって変化してもよい。図6に示す傾斜角θ1、θ2は、接線を引く位置によって変化する。
【0078】
第1電極43は、磁化M43を有する。第1電極43は、磁気記録層20のy方向の中心を通りxz平面で切断した切断面において、x方向に第1側面43S1と第2側面43S2とを有する。第2側面43S2は、第1側面43S1より第2電極53に近い位置にある。第1側面43S1は、第1傾斜部43p1と第2部43p2とを有する。第1傾斜部43p1は、z方向に対して傾斜する。第1傾斜部43p1の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角φ1を有する。第1傾斜部43p1は、第2側面43S2よりz方向に対する傾斜角が大きい。第1側面43S1は、第1傾斜部43p1と第2部43p2との境界で不連続に変化する。
【0079】
第1側面11S1、31S1、21S1及び第1傾斜部43p1は、連続する。例えば、XZ平面において、第1側面11S1、31S1、21S1及び第1傾斜部43p1を、連続する直線又は曲線で漸近線を描ける場合は、連続的に変化しているとみなせる。
【0080】
第2電極53は、磁気記録層20のy方向の中心を通りxz平面で切断した切断面において、x方向に第1側面53S1と第2側面53S2とを有する。第2側面53S2は、第1側面53S1より第1電極43に近い位置にある。第1側面53S1は、第1傾斜部53p1と第2部53p2とを有する。第1傾斜部53p1は、z方向に対して傾斜する。第1傾斜部53p1の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角φ2を有する。第1傾斜部53p1は、第2側面53S2よりz方向に対する傾斜角が大きい。第1側面53S1は、第1傾斜部53p1と第2部53p2との境界で不連続に変化する。第2側面11S2、31S2、21S2及び第1傾斜部53p1は、連続する。
【0081】
第1側面11S1、31S1、21S1、第2側面11S2、31S2、21S2及び第1傾斜部43p1、53p1は、磁気記録層20、非磁性層30及び第1強磁性層10を順に積層したのち、これらのx方向の端部の一部を除去して形成される。端部の加工は、イオンミリング、フォトリソグラフィー等で行う。磁化は、一般に結晶粒、表面状態、段差、エッチングダメージ等により状態が異なる領域では値が異なり、相互に影響を及ぼし合う。x方向の端部の除去された後に露出する部分は、ダメージを受ける。ダメージを受けた部分は、表面状態等が変化するため、ピニングサイトとなる場合がある。ピニングサイトは、磁化が動きにくくなる部分である。ダメージにより磁化が動きにくくなるピニングサイトは、隣接する領域に影響を及ぼし磁化をより強く固定する効果を持つ。磁気記録層20の第1側面21S1は、ピニングサイトとなり、第1領域R1の磁化をより固定する。第1電極43の第1傾斜部43p1は、ピニングサイトとなり、第1電極43の磁化M43をより固定する。磁気記録層20の第1側面21S1は、ピニングサイトとなり、第1領域R1の磁化をより固定する。磁気記録層20の第2側面21S2は、ピニングサイトとなり、第2領域R2の磁化をより固定する。すなわち、第1電極43、第1領域R1及び第2領域R2の磁化は、第1傾斜部43p1、第1側面21S及び第2側面21S2を有さない場合と比較して、反転しにくくなる。第1領域R1及び第2領域R2の磁化の固定がより強くなる(磁化が反転しにくくなる)ことで、磁壁27は第1領域R1及び第2領域R2へ侵入しづらくなる。
【0082】
第3変形例にかかる記憶素子100Cにおいても、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、記憶素子100Cの抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。
【0083】
なお、第3変形例では、記憶素子100Cのx方向の両方の側面が傾斜している場合を示したが、いずれか一方の側面のみが傾斜していてもよい。また第2電極53は、磁性体を含んでもよい。
【0084】
(第4変形例)
図8は、第1実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の第4変形例の断面模式図である。図8に示す記憶素子100Dは、第1側面11S1、31S1、21S1と第1傾斜部43p1とが不連続であり、第2側面11S2、31S2、21S2と第1傾斜部53p1とが不連続である点が、図8に示す第3変形例にかかる記憶素子100Cと異なる。その他の構成は、図8に示す第3変形例にかかる記憶素子100Cと同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0085】
エッチングレートの違いにより第1側面11S1、31S1、21S1と第1傾斜部43p1とは、不連続になる場合がある。同様に第2側面11S2、31S2、21S2と第1傾斜部53p1とは、不連続になる場合がある。
【0086】
第4変形例にかかる記憶素子100Dにおいても、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、記憶素子100Dの抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。
【0087】
また磁気記録層20の第1側面21S1、第2側面21S2及び第1傾斜部43p1は、ピニングサイトとなる。第1領域R1及び第2領域R2の磁化の固定がより強くなる(磁化が反転しにくくなる)ことで、磁壁27は第1領域R1及び第2領域R2へ侵入しづらくなる。
【0088】
また第4変形例では、記憶素子100Dのx方向の両方の側面が傾斜している場合を示したが、いずれか一方の側面のみが傾斜していてもよい。また第2電極53は、磁性体を含んでもよい。
【0089】
(第5変形例)
図9は、第1実施形態にかかる記憶素子の第5変形例の断面模式図である。図9に示す記憶素子100Eは、第1電極44及び第2電極54の形状が、図6に示す第3変形例にかかる記憶素子100Cと異なる。その他の構成は、図6に示す第3変形例にかかる記憶素子100Cと同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0090】
第1電極44は、磁化M44を有する。第1電極44は、磁気記録層20のy方向の中心を通りxz平面で切断した切断面において、x方向に第1側面44S1と第2側面44S2とを有する。第2側面44S2は、第1側面44S1より第2電極54に近い位置にある。第1側面44S1は、第1傾斜部44p1と第2傾斜部44p2とを有する。第1傾斜部44p1及び第2傾斜部44p2は、z方向に対して傾斜する。第1傾斜部44p1の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角φ3を有する。第2傾斜部44p2の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角φ4を有する。第1傾斜部44p1は、第2側面44S2よりz方向に対する傾斜角が大きい。第1側面44S1は、第1傾斜部44p1と第2傾斜部44p2との境界で不連続に変化する。
【0091】
第2電極54は、xz平面で切断した切断面において、x方向に第1側面54S1と第2側面54S2とを有する。第2側面54S2は、第1側面54S1より第1電極44に近い位置にある。第1側面54S1は、第1傾斜部54p1と第2傾斜部54p2とを有する。第1傾斜部54p1及び第2傾斜部54p2は、z方向に対して傾斜する。第1傾斜部54p1の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角φ5を有する。第2傾斜部54p2の接線は、例えば、z方向に対して傾斜角φ6を有する。第1傾斜部54p1は、第2側面54S2よりz方向に対する傾斜角が大きい。第1側面54S1は、第1傾斜部54p1と第2傾斜部54p2との境界で不連続に変化する。
【0092】
第5変形例にかかる記憶素子100Eにおいても、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、記憶素子100Eの抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。
【0093】
また磁気記録層20の第1側面21S1、第2側面21S2及び第1傾斜部44p1は、ピニングサイトとなる。第1領域R1及び第2領域R2の磁化の固定がより強くなる(磁化が反転しにくくなる)ことで、磁壁27の第1領域R1及び第2領域R2への侵入しづらくなる。
【0094】
また第5変形例では、記憶素子100Eのx方向の両方の側面が傾斜している場合を示したが、いずれか一方の側面のみが傾斜していてもよい。また第1電極44及び第2電極54のxz切断面における形状は、+z方向の上底の長さが-z方向の下底の長さより短い台形に限られず、+z方向の上底の長さが-z方向の下底の長さより長い台形でもよい。また第2電極54は、磁性体を含んでもよい。
【0095】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態にかかる半導体装置の断面模式図である。図10に示す半導体装置201は、第1強磁性層10が磁気記録層20より基板60の近くに位置するボトムピン構造である点が、第1実施形態にかかる半導体装置200と異なる。その他の構成は、図1に示す半導体装置200と同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0096】
図11は、第2実施形態にかかる半導体装置の記憶素子の断面模式図である。半導体装置101は、第1強磁性層10と磁気記録層20と非磁性層30と第1電極40と第2電極50とを有する。第1電極40と第2電極50の間には、絶縁層81が設けられている。
【0097】
絶縁層81は、第1実施形態における絶縁層80と同様のものが用いられる。絶縁層81は、磁気記録層20の非磁性層30側の面と反対側の面に形成されている。絶縁層81は、磁気記録層20の第3領域R3を覆う。絶縁層81は、キャップ層としても機能する。キャップ層は、磁気記録層20の磁化の配向性を高め、磁気記録層20を保護するための層である。キャップ層が絶縁体であることで、磁壁27を駆動するための電流が絶縁層81側に分流することが避けられる。
【0098】
ボトムピン構造の半導体装置101は、以下の手順で作製される。まず基板60上に第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、第3トランジスタTr3、第1配線Cm、第2配線Wp及び第3配線Rpを絶縁層80を介して形成する。そして、絶縁層80の一面に、第1強磁性層10、非磁性層30及び磁気記録層20を順に積層し、それぞれの層を所定の形状に加工する。そして第1強磁性層10、非磁性層30及び磁気記録層20の周囲を更に絶縁層80で覆う。磁気記録層20及び絶縁層80の表面を平坦化した後、第1電極40及び第2電極50を形成する。そして第1電極40及び第2電極50の間を絶縁層81で埋めることで、半導体装置201が得られる。
【0099】
第2実施形態にかかる記憶素子101においても、第1領域R1の第1部分R1aの面積が第2領域R2の第2部分R2aの面積より広いため、記憶素子101の抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。
【0100】
第2実施形態にかかる記憶素子101は、第1実施形態にかかる記憶素子100と同様の変形例を選択できる。
【0101】
(第6変形例)
図12は、第2実施形態にかかる記憶素子の第6変形例の断面模式図である。図12に示す記憶素子101Bは、第1電極45及び第2電極55の形状、磁壁移動層20の第1部分R1a’及び第2部分R2a’の形状、及び、第1電極45及び第2電極55と絶縁層81との関係が、図11に示す第2実施形態にかかる記憶素子101と異なる。その他の構成は、図11に示す第2実施形態にかかる記憶素子101と同様であり、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
【0102】
磁壁移動層20の第1領域R1は、第1部分R1a’を有する。第1部分R1a’は、第1領域R1において第1電極45と対向する面である。第1部分R1a’は、例えば、第1領域R1において第1電極45と接する面である。磁壁移動層20の第2領域R2は、第2部分R2a’を有する。第2部分R2a’は、第2領域R2において、第2電極50と対向する面である。第2部分R2a’は、例えば、第2領域R2において第2電極55と接する面である。第1部分R1a’の面積は、第2部分R2a’の面積より広い。第1部分R1a’及び第2部分R2a’は、z方向に対してx方向に傾斜している。磁壁移動層20のz方向の表面である第1面20aと第1部分R1a’及び第2部分R2a’は、不連続である。第1部分R1a’及び第2部分R2a’は、絶縁層81の一部を除去する際に磁壁移動層20の一部がミリングされ、形成される。
【0103】
また磁気記録層20の第1部分R1a’及び第2部分R2a’は、ピニングサイトとなる。第1領域R1及び第2領域R2の磁化の固定がより強くなる(磁化が反転しにくくなる)ことで、磁壁27の第1領域R1及び第2領域R2への侵入しづらくなる。
【0104】
第1電極45及び第2電極55は、磁気記録層20のy方向の中心を通るxz平面で切断した切断面において、表面45a、55aが円弧状の凸形状である。第1電極45及び第2電極55は、表面張力により表面が円弧状に形成される場合がある。
【0105】
絶縁層81の表面81aは、第1電極45及び第2電極55の表面45a、55aの少なくとも一部より-z方向に位置する。絶縁層81のx方向の2つの側面81S1、81S2は、z方向に対してx方向に傾斜している。側面81S1、81S2は、ミリングにより形成される。
【0106】
第6変形例にかかる記憶素子101Bにおいても、第1領域R1の第1部分R1a’の面積が第2領域R2の第2部分R2a’の面積より広いため、記憶素子101Bの抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。
【0107】
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態にかかる磁気記録アレイの構成図である。磁気記録アレイ300は、記憶素子100と、第1配線Cm1~Cmnと、第2配線Wp1~Wpnと、第3配線Rp1~Rpnと、第1スイッチング素子110と、第2スイッチング素子120と、第3スイッチング素子130とを備える。図1に示す第1配線Cmは、図12に示す第1配線Cm1~Cmnのうちの一つである。図1に示す第2配線Wpは、図12に示す第2配線Wp1~Wpnのうちの一つである。図1に示す第3配線Rpは、図12に示す第3配線Rp1~Rpnのうちの一つである。第1スイッチング素子110は、例えば、図1に示す第3トランジスタTr3である。第2スイッチング素子120は、例えば、図1に示す第1トランジスタTr1である。第3スイッチング素子130は、例えば、図1に示す第2トランジスタTr2である。また記憶素子100は、図1に示すものに限られず、その他の変形例、その他の実施形態の構成でもよい。
【0108】
<第1配線、第2配線、第3配線>
第1配線Cm1~Cmnは、共通配線である。共通配線は、データの書き込み時及び読み出し時の両方で用いられる配線である。第1配線Cm1~Cmnは、基準電位と電気的に接続されている。例えば、第1配線Cm1~Cmnが接地されている場合、基準電位はグラウンドとなる。また第1配線Cm1~Cmnは、複数の記憶素子100のうち少なくとも一つの記憶素子100に接続されている。第1配線Cm1~Cmnは、複数の記憶素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の記憶素子100に亘って設けられてもよい。
【0109】
第2配線Wp1~Wpnは、書き込み配線である。第2配線Wp1~Wpnは、複数の記憶素子100のうち少なくとも2つ以上の記憶素子100と電気的に接続されている。第2配線Wp1~Wpnは、磁気記録アレイ300の使用時に、電源と接続される。
【0110】
第3配線Rp1~Rpnは、読み出し配線である。第3配線Rp1~Rpnは、複数の記憶素子100のうち少なくとも1つ以上の記憶素子100と電気的に接続されている。第3配線Rp1~Rpnは、磁気記録アレイ300の使用時に、電源と接続される。
【0111】
<第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子>
第1スイッチング素子110は、記憶素子100のそれぞれと第1配線Cm1~Cmnとの間に接続されている。第2スイッチング素子120は、記憶素子100のそれぞれと第2配線Wp1~Wpnとの間に接続されている。第3スイッチング素子130は、記憶素子100のそれぞれと第3配線Rp1~Rpnとの間に接続されている。
【0112】
第1スイッチング素子110及び第2スイッチング素子120をONにすると、所定の記憶素子100に接続された第1配線Cm1~Cmnと第2配線Wp1~Wpnとの間に書き込み電流が流れる。第1スイッチング素子110及び第3スイッチング素子130をONにすると、所定の記憶素子100に接続された第1配線Cm1~Cmnと第3配線Rp1~Rpnとの間に読み出し電流が流れる。
【0113】
第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130は、電流の流れを制御する素子である。例えば、第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130として、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用したもの、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用したもの、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用したもの、原子位置の変化に伴い伝導性が変化するもの等を用いることができる。
【0114】
第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130は、一つの第2配線Wp1~Wpn又は一つの第3配線Rp1~Rpnに接続された記憶素子100で、共用してもよい。例えば、いずれかの第2配線Wpnの上流側に一つの第2スイッチング素子120を設けてもよい。また例えば、いずれかの第3配線Rpnの上流側に一つの第3スイッチング素子130を設けてもよい。各記憶素子100に接続された第1スイッチング素子110のON/OFFを切り替えることで、特定の記憶素子100を選択できる。
【0115】
磁気記録アレイ300は、記憶素子100が複数集積されている。それぞれの記憶素子100の抵抗変化の幅(ダイナミックレンジ)は広い。したがって、それぞれの記憶素子100が記録するデータのノイズによる影響が抑制され、磁気記録アレイ300のデータの信頼性がより高まる。
【符号の説明】
【0116】
10、11 第1強磁性層
20、21 磁気記録層
27 磁壁
28 第1磁区
29 第2磁区
30、31 非磁性層
40、41、43、44、45 第1電極
50、51、52、53、54、55 第2電極
60 基板
70 層間絶縁膜
80 絶縁層
100、100A、100B、100C、100D、100E、101 半導体装置
110 第1スイッチング素子
120 第2スイッチング素子
130 第3スイッチング素子
200 磁気記録アレイ
20a、40a、50a、60a 第1面
20b 第2面
11S1、21S1、31S1、43S1、44S1、53S1、54S1 第1側面
11S2、21S2、31S2、43S2、44S2、53S2、54S2 第2側面
43p1、44p1、53p1、54p1 第1傾斜部
43p2、53p2 第2部
44p2、54p2 第2傾斜部
R1 第1領域
R1a、R1a’ 第1部分
R2a、R2a’ 第2部分
R2 第2領域
R3 第3領域
10、M11、M28、M29、M40、M43、M44、M52 磁化
Cm1~Cmn 第1配線
Wp1~Wpn 第2配線
Rp1~Rpn 第3配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13