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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】水受け部材および洗浄水タンク装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/34 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
E03D1/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020012972
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116670
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 碩樹
(72)【発明者】
【氏名】柏村 英明
(72)【発明者】
【氏名】羽生 亜矢子
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-070374(JP,U)
【文献】特開2013-040452(JP,A)
【文献】特開2002-167836(JP,A)
【文献】特開2019-218760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水タンク内に設けられ前記洗浄水タンクの満水水位を超えた洗浄水を便器本体へ排出するオーバーフロー管に取り付け可能な水受け部材であって、
前記オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられるとともに、前記オーバーフロー管の周囲に設けられた吐水部から吐水される補給水を受け、受けた補給水を前記オーバーフロー管へ流入させる水受け皿部と、
前記水受け皿部を前記オーバーフロー管に固定する固定部と
を備え、
前記水受け皿部は、
補給水を受ける底面部と、
前記底面部の周縁部から立設される側壁部と、
前記側壁部に形成される開口部と
を備え、
前記底面部は、
前記オーバーフロー管の内側まで延在するように形成されること
を特徴とする水受け部材。
【請求項2】
前記側壁部は、
前記オーバーフロー管の外周より内側まで延在するように形成されること
を特徴とする請求項に記載の水受け部材。
【請求項3】
前記側壁部は、
前記側壁部の上端に形成され、前記側壁部の他の部位に対して高さが低い段差部
を備えることを特徴とする請求項またはに記載の水受け部材。
【請求項4】
洗浄水タンク内に設けられ前記洗浄水タンクの満水水位を超えた洗浄水を便器本体へ排出するオーバーフロー管に取り付け可能な水受け部材であって、
前記オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられるとともに、前記オーバーフロー管の周囲に設けられた吐水部から吐水される補給水を受け、受けた補給水を前記オーバーフロー管へ流入させる水受け皿部と、
前記水受け皿部を前記オーバーフロー管に固定する固定部と
を備え、
前記固定部は、
前記オーバーフロー管の上端に係止する係止部
を備えることを特徴とする水受け部材。
【請求項5】
前記固定部は、
前記水受け皿部と前記オーバーフロー管の上端の外周側とを接続する外周接続部と、
前記水受け皿部と前記オーバーフロー管の上端の内周側とを接続する内周接続部と
を有する二重構造であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の水受け部材。
【請求項6】
前記外周接続部は、
前記オーバーフロー管の周方向に沿って前記内周接続部より長くなるように形成されるとともに、対応する前記内周接続部が存在しない領域に切欠き部が形成されること
を特徴とする請求項に記載の水受け部材。
【請求項7】
前記水受け皿部は、
補給水を受ける底面部が前記オーバーフロー管の中心方向へ向けて下り傾斜となるように形成されること
を特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の水受け部材。
【請求項8】
洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンク内に設けられ、前記洗浄水タンクの満水水位を超えた洗浄水を便器本体へ排出するオーバーフロー管と、
前記オーバーフロー管の周囲に設けられ、補給水を吐水する吐水部と、
前記オーバーフロー管に取り付け可能な水受け部材と
を備え、
前記水受け部材は、
前記オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられるとともに、前記オーバーフロー管の周囲に設けられた吐水部から吐水される補給水を受け、受けた補給水を前記オーバーフロー管へ流入させる水受け皿部と、
前記水受け皿部を前記オーバーフロー管に固定する固定部と
を備え、
前記水受け皿部は、
補給水を受ける底面部と、
前記底面部の周縁部から立設される側壁部と、
前記側壁部に形成される開口部と
を備え、
前記底面部は、
前記オーバーフロー管の内側まで延在するように形成されること
を特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項9】
洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンク内に設けられ、前記洗浄水タンクの満水水位を超えた洗浄水を便器本体へ排出するオーバーフロー管と、
前記オーバーフロー管の周囲に設けられ、補給水を吐水する吐水部と、
前記オーバーフロー管に取り付け可能な水受け部材と
を備え、
前記水受け部材は、
前記オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられるとともに、前記オーバーフロー管の周囲に設けられた吐水部から吐水される補給水を受け、受けた補給水を前記オーバーフロー管へ流入させる水受け皿部と、
前記水受け皿部を前記オーバーフロー管に固定する固定部と
を備え、
前記固定部は、
前記オーバーフロー管の上端に係止する係止部
を備えることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水受け部材および洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水タンク装置は、洗浄水タンク内にオーバーフロー管を備える。オーバーフロー管は、洗浄水タンク内の洗浄水の水位がオーバーフロー管の上端の高さ位置を上回って満水水位を超えた場合に、超えた分の洗浄水を便器本体へ排出する。
【0003】
また、洗浄水タンク装置にあっては、例えば便器本体の洗浄時あるいは洗浄後に、便器本体のトラップ部に封水を形成するため、補給水を上記したオーバーフロー管へ吐水する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-190230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術に係る洗浄水タンク装置にあっては、吐水部から吐水される補給水を受けてオーバーフロー管へ流入させる水受け部を備える。かかる水受け部は、オーバーフロー管の外周の全周に亘って設けられるとともに、オーバーフロー管と一体に形成される。
【0006】
また、便器本体および洗浄水タンク装置の設置現場の状況によっては、便器本体において封水の不足が発生し易い場合がある。かかる場合に、従来技術に係る水受け部をオーバーフロー管に設けようとすると、水受け部はオーバーフロー管と一体に形成されるため、オーバーフロー管自体を交換する必要がある。このように、従来技術にあっては、水受け部をオーバーフロー管に容易に取り付けることができず、改善の余地があった。
【0007】
実施形態の一態様は、オーバーフロー管へ容易に取り付けることができ、取り付けたときのオーバーフロー管の排水性能に対する影響を低減することができる水受け部材および洗浄水タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る水受け部材は、洗浄水タンク内に設けられ前記洗浄水タンクの満水水位を超えた洗浄水を便器本体へ排出するオーバーフロー管に取り付け可能である。水受け部材は、前記オーバーフロー管の周囲に設けられた吐水部から吐水される補給水を受け、受けた補給水を前記オーバーフロー管へ流入させる水受け皿部と、前記水受け皿部を前記オーバーフロー管に固定する固定部とを備え、前記水受け皿部は、前記オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられることを特徴とする。
【0009】
これにより、水受け部材をオーバーフロー管へ容易に取り付けることができ、取り付けたときのオーバーフロー管の排水性能に対する影響を低減することができる。
【0010】
すなわち、水受け部材は、オーバーフロー管とは別体であり、オーバーフロー管に取り付け可能に構成されることから、例えば従来技術のようなオーバーフロー管の全周にわたって設けられた水受け部を後付けするような場合に比べて、オーバーフロー管の排水性能に対する影響を低減し、オーバーフロー管に容易に取り付けることができる。
【0011】
また、水受け部材の水受け皿部は、オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられることから、例えばオーバーフロー管の上端の全周に亘って設けられる場合に比べ、取り付けたときのオーバーフロー管の排水性能に対する影響を低減することができる。
【0012】
また、前記固定部は、前記水受け皿部と前記オーバーフロー管の上端の外周側とを接続する外周接続部と、前記水受け皿部と前記オーバーフロー管の上端の内周側とを接続する内周接続部とを有する二重構造であることを特徴とする。
【0013】
これにより、固定部は、外周接続部と内周接続部とを有する二重構造により、オーバーフロー管を挟むことが可能となり、よって水受け皿部をオーバーフロー管に確実に固定することができる。
【0014】
また、水受け皿部は、吐水部から吐水される補給水を受けるため、補給水による下向きの力や洗浄水タンクの水位上昇に伴う上向きの力が作用するが、固定部の二重構造によりオーバーフロー管に確実に固定されていることから、下向きや上向きの力が作用した場合であっても、水受け部材におけるがたつきの発生などを抑制することができる。
【0015】
また、前記外周接続部は、前記オーバーフロー管の周方向に沿って前記内周接続部より長くなるように形成されるとともに、対応する前記内周接続部が存在しない領域に切欠き部が形成されることを特徴とする。
【0016】
これにより、例えば、オーバーフロー管の内部や上方に存在する部品を切欠き部から通過させた後、水受け部材をオーバーフロー管の上端へ取り付けることができる。従って、例えばオーバーフロー管の内部や上方に存在する部品を一度外す作業を行うことなく、水受け部材をオーバーフロー管に取り付けることができ、よって水受け部材のオーバーフロー管に対する組み付け性をより向上させることができる。
【0017】
また、前記水受け皿部は、補給水を受ける底面部が前記オーバーフロー管の中心方向へ向けて下り傾斜となるように形成されることを特徴とする。
【0018】
これにより、水受け皿部の底面部にあっては、例えば上面で受けた補給水をオーバーフロー管へ向けて流入し易くすることができる。
【0019】
また、前記水受け皿部は、補給水を受ける底面部と、前記底面部の周縁部から立設される側壁部と、前記側壁部に形成される開口部とを備え、前記底面部は、前記オーバーフロー管の内側まで延在するように形成されることを特徴とする。
【0020】
これにより、水受け皿部は、底面部で受けた補給水をオーバーフロー管へ向けてより一層流入し易くすることができる。
【0021】
また、前記側壁部は、前記オーバーフロー管の外周より内側まで延在するように形成されることを特徴とする。
【0022】
これにより、水受け部材は、例えば側壁部で囲まれた空間に一旦貯留された補給水を、オーバーフロー管の内側まで導くことができ、よって補給水をオーバーフロー管へ確実に流入させることが可能になる。
【0023】
また、前記側壁部は、前記側壁部の上端に形成され、前記側壁部の他の部位に対して高さが低い段差部を備えることを特徴とする。
【0024】
これにより、水受け部材が洗浄水タンク装置内の他の部品と干渉することを抑制することが可能になる。
【0025】
また、前記固定部は、前記オーバーフロー管の上端に係止する係止部を備えることを特徴とする。
【0026】
これにより、固定部は、水受け皿部をオーバーフロー管に位置決めしつつ固定することが可能になる。
【0027】
また、実施形態の一態様に係る洗浄水タンク装置は、洗浄水を貯留する洗浄水タンクと、前記洗浄水タンク内に設けられ、前記洗浄水タンクの満水水位を超えた洗浄水を便器本体へ排出するオーバーフロー管と、前記オーバーフロー管の周囲に設けられ、補給水を吐水する吐水部と、前記オーバーフロー管に取り付け可能な水受け部材とを備え、前記水受け部材は、前記オーバーフロー管の周囲に設けられた吐水部から吐水される補給水を受け、受けた補給水を前記オーバーフロー管へ流入させる水受け皿部と、前記水受け皿部を前記オーバーフロー管に固定する固定部とを備え、前記水受け皿部は、前記オーバーフロー管の上端の外周の一部に設けられることを特徴とする。
【0028】
これにより、洗浄水タンク装置において、水受け部材をオーバーフロー管へ容易に取り付けることができ、取り付けたときのオーバーフロー管の排水性能に対する影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0029】
実施形態の一態様によれば、水受け部材をオーバーフロー管へ容易に取り付けることができ、取り付けたときのオーバーフロー管の排水性能に対する影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る洗浄水タンク装置の斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る洗浄水タンク装置の平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図5図5は、第2吐水部やオーバーフロー管付近を拡大して示す斜視図である。
図6図6は、水受け部材およびオーバーフロー管の分解斜視図である。
図7図7は、水受け部材の平面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。
図9図9は、図7のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水受け部材および洗浄水タンク装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0032】
<1.水洗大便器の構成>
まず、実施形態に係る洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器の構成について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成を示す断面図である。なお、図1および図2以降に示す図は、いずれも模式図である。
【0033】
図1においては、説明の便宜上、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、他の図においても図示する場合がある。また、以下では、X軸正方向を「左方」、X軸負方向を「右方」と規定し、Y軸正方向を「前方」、Y軸負方向を「後方」と規定する。従って、以下では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。言い換えると、図1は、実施形態に係る水洗大便器の構成を示す前後方向の断面図である。
【0034】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、外装カバー3と、洗浄水タンク装置4とを備える。便器本体2は、トイレ室の床面に設置され、外装カバー3は、便器本体2の上部に設置される。また、洗浄水タンク装置4は、外装カバー3の内部に配置される。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。また、洗浄水タンク装置4は、便器本体2から離れた場所に設置されてもよい。
【0035】
便器本体2は、ボウル部21と、導水路22と、排水トラップ管路23とを備える。ボウル部21は、汚物を受けることが可能なボウル状に形成される。導水路22は、洗浄水タンク装置4から供給される洗浄水や補給水をボウル部21へ導く。
【0036】
例えば、ボウル部21には、導水路22から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口24および第2吐水口25が形成される。第1吐水口24は、ボウル部21の上部に形成される。これにより、第1吐水口24から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部21を洗浄する。第2吐水口25は、ボウル部21の下部に形成される。これにより、第2吐水口25から吐水された洗浄水は、ボウル部21の下部に貯留された洗浄水を、上下方向に旋回させる旋回流を生じさせる。なお、ボウル部21における吐水口の数は上記した2つに限定されるものではなく、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0037】
排水トラップ管路23は、ボウル部21内の汚物を排水管(図示せず)へ排出するとともに、トラップ部を構成する。具体的には、排水トラップ管路23は、入口部23aと、上昇管路23bと、下降管路23cとを備える。
【0038】
入口部23aは、ボウル部21の下部と連続するように設けられ、ボウル部21からの洗浄水を排水トラップ管路23へ流入させる。上昇管路23bは、入口部23aから斜め上方へ向けて延びるように形成される。下降管路23cは、上昇管路23bから下方へ向けて延びるように形成される。また、下降管路23cの下端には、排水管が接続される。
【0039】
従って、便器洗浄が行われる場合、ボウル部21の洗浄水は、排水トラップ管路23の入口部23a、上昇管路23bおよび下降管路23cを介して排水管へと排水される。
【0040】
排水トラップ管路23は、上記のように構成されることで、所定量の洗浄水が溜まる形状とされる。すなわち、排水トラップ管路23は、洗浄水が溜まって封水として機能することで、排水管からの臭気等がボウル部21側へ逆流することを防止する。
【0041】
洗浄水タンク装置4は、外部の給水源から供給される洗浄水を貯留する洗浄水タンク5(図2参照)等を有し、洗浄水タンク5に貯留された洗浄水は、排水口511を介して便器本体2の導水路22に供給される。洗浄水タンク装置4は、外装カバー3によって覆われている。そのため、使用者から洗浄水タンク装置4が視認されないようになっており、水洗大便器1の意匠性を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る洗浄水タンク装置4にあっては、排水トラップ管路23において封水を確実に形成するために、言い換えると、破封の発生を抑制するために、便器洗浄時あるいは便器洗浄後、補給水を便器本体2へ供給するように構成されるが、これについては後述する。
【0043】
<2.洗浄水タンク装置の構成>
次に、洗浄水タンク装置4の構成について図2図4を参照して説明する。図2は、実施形態に係る洗浄水タンク装置4の斜視図である。図3は、実施形態に係る洗浄水タンク装置4の上方向の平面図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。
【0044】
図2図4に示すように、洗浄水タンク装置4は、洗浄水タンク5と、給水装置6と、排水装置7と、回動装置8と、水受け部材9とを備える。
【0045】
洗浄水タンク5は、タンク本体51と、蓋52とを備える。タンク本体51は、後述する給水装置6から供給される洗浄水を貯留する。タンク本体51の底部には、排水口511(図4参照)が設けられる。蓋52は、タンク本体51の上部に設けられ、タンク本体51の上方開口を覆う。蓋52には、タンク本体51の内部と連通する開口521が設けられる。
【0046】
給水装置6は、外部の給水源(図示せず)に給水管L(図2参照)を介して接続され、給水源から供給される洗浄水や補給水をタンク本体51の上方から蓋52の開口521を介してタンク本体51の内部に吐水する。
【0047】
例えば、給水装置6は、一次側給水流路部61(図4参照)と、二次側給水流路部62と、中間流路部63と、第1吐水部64と、第2吐水部65とを備える。
【0048】
一次側給水流路部61は、上下方向に延在し、下端部において給水管L(図2参照)に接続される。二次側給水流路部62は、先端(下流端)が塞がれた円筒形状に形成され、蓋52に設けられた開口521に向かって水平方向(ここでは、左右方向)に延在する。詳しくは、二次側給水流路部62は、図3などに示すように、平面視において洗浄水タンク5内の排水装置7付近、具体的には、後述するオーバーフロー管71付近まで延在する。
【0049】
中間流路部63は、一次側給水流路部61と二次側給水流路部62との間に設けられ、一次側給水流路部61と二次側給水流路部62とを接続する。中間流路部63は、電磁弁装置66(図2,3参照)を備える。電磁弁装置66は、例えば、タンク本体51内の水位に応じて、一次側給水流路部61から二次側給水流路部62への吐水と止水とを切り替える。また、中間流路部63には、機械式開閉弁装置67(図3,4参照)が接続され、タンク本体51内の水位に連動して上下動するフロートによって一次側給水流路部61から二次側給水流路部62への吐水と止水とを切り替え可能に構成される。これにより、給水装置6は、停電時や、電磁弁装置66が故障した場合であっても、タンク本体51に洗浄水などを供給し、水洗大便器1を利用することができる。
【0050】
第1吐水部64および第2吐水部65は、二次側給水流路部62に設けられる。例えば、第1吐水部64は、二次側給水流路部62の途中であって、洗浄水タンク5のタンク本体51において洗浄水を貯留する部位を臨む位置に設けられる。これにより、給水装置6は、図4に矢印A1で示すように、洗浄水を二次側給水流路部62から第1吐水部64を介して洗浄水タンク5へ供給することができる。
【0051】
第2吐水部65は、二次側給水流路部62の洗浄水を、便器本体2において封水を形成するための補給水として吐水する。なお、第2吐水部65は、吐水部の一例である。
【0052】
例えば、第2吐水部65は、二次側給水流路部62の先端(下流端)付近であって、オーバーフロー管71の周囲に位置するように設けられる。ここで、第2吐水部65の位置などについて図5を参照して説明する。図5は、第2吐水部65やオーバーフロー管71付近を拡大して示す斜視図である。
【0053】
図5に示すように、第2吐水部65は、オーバーフロー管71の上方付近に位置するように設けられる。具体的には、第2吐水部65は、オーバーフロー管71に取り付けられる水受け部材9の上方、より具体的には、水受け部材9の水受け皿部91(後述)の上方に位置するように設けられる。なお、オーバーフロー管71の真上には、各種の部品、詳しくは回動装置8の部品(例えば取付部821(後述))が配置されることから、第2吐水部65は、かかる部品と干渉しない位置に設けられる。
【0054】
これにより、給水装置6は、図5に矢印A2で示すように、補給水を第2吐水部65から水受け部材9(正確には水受け皿部91)へ吐水することができる。なお、水受け部材9は、水受け皿部91で受けた補給水をオーバーフロー管71へ流入させることで、便器本体2において封水が確実に形成されるが、これについては後述する。
【0055】
図2図4の説明に戻ると、排水装置7は、タンク本体51の内部に配置される。排水装置7は、排水口511を開放することにより、タンク本体51に貯留された洗浄水を導水路22(図1参照)に流出させることで、洗浄水が導水路22からボウル部21(図1参照)へ流れ、便器洗浄が行われる。
【0056】
具体的には、排水装置7は、オーバーフロー管71と、排水弁72と、ガイド73とを備える。オーバーフロー管71は、上下方向に延びる円筒状の管部材であり、洗浄水タンク5内に設けられる。オーバーフロー管71は、排水口511に連通しており、タンク本体51内の洗浄水の水位がオーバーフロー管71の上端71aの高さ位置を上回って満水水位を超えた場合に、超えた分の洗浄水を、オーバーフロー管71、排水口511を介して導水路22に流出させ、便器本体2へ排出する。
【0057】
排水弁72は、オーバーフロー管71の下端部に設けられており、排水口511を閉塞する。ガイド73は、オーバーフロー管71を取り囲むように設けられており、後述する回動装置8によるオーバーフロー管71の上下動をガイドする。なお、排水弁72は、オーバーフロー管71の下端部全周に設けられており、排水口511を閉塞した状態であってもオーバーフロー管71と排水口511とは、連通している。
【0058】
回動装置8は、オーバーフロー管71を上下動させることにより排水弁72を開閉する。例えば、回動装置8は、駆動部81と、軸部82と、接続部材83とを備える。
【0059】
駆動部81は、回転力を発生させることができる。駆動部81としては、例えばDCモータ等を用いることができる。軸部82は、駆動部81から水平に突出し、駆動部81の回転力によって回動する。また、軸部82の先端には、取付部821が設けられ、接続部材83が取り付けられる。なお、取付部821は、オーバーフロー管71の真上に位置するように配置される。
【0060】
接続部材83は、軸部82とオーバーフロー管71とを接続する部材である。接続部材83としては、例えば玉鎖等を用いることができる。具体的には、接続部材83は、一端が軸部82の先端の取付部821に取り付けられる一方、他端がオーバーフロー管71の下端部に取り付けられる。上記したように、取付部821は、オーバーフロー管71の真上に位置することから、接続部材83は、オーバーフロー管71の内部を通るように設けられる(図5参照)。
【0061】
上記のように構成された回動装置8にあっては、駆動部81が接続部材83を上方に引き上げるように軸部82を回動させると、オーバーフロー管71およびオーバーフロー管71に設けられた排水弁72が接続部材83とともに上昇して、排水口511が開放される。これにより、タンク本体51に貯留された洗浄水が排水口511から導水路22に供給される。導水路22に供給された洗浄水は、導水路22からボウル部21へ流れ、便器洗浄が行われる。
【0062】
また、駆動部81が接続部材83を下方に引き下げる方向へ軸部82を回動させると、オーバーフロー管71および排水弁72が接続部材83とともに下降する。これにより、排水口511が排水弁72によって閉塞されることで、タンク本体51から導水路22への給水が停止する。
【0063】
なお、回動装置8は、軸部82を手動で回動させるためのレバー84を備える。これにより、使用者は、例えば停電時において、レバー84を操作することにより、排水弁72の開閉を手動にて行うことができる。
【0064】
ここで、本実施形態に係る洗浄水タンク装置4は、排水装置7のオーバーフロー管71を利用して便器本体2(図1参照)の封水を形成することができる。例えば、洗浄水タンク装置4は、便器洗浄時あるいは便器洗浄後に、便器本体2の封水を形成するため、補給水をオーバーフロー管71から導水路22に流出させ、便器本体2へ供給する。
【0065】
具体的には、上記した給水装置6は、便器洗浄時あるいは便器洗浄後、タンク本体51内の水位がオーバーフロー管71の上端71aの高さ位置を所定時間超えるように、洗浄水を供給することができる。これにより、オーバーフロー管71の上端71aを超えた洗浄水(溢水)が、補給水としてオーバーフロー管71から導水路22へ流出し、便器本体2へ供給されて封水を形成する。
【0066】
ところで、便器本体2の設置現場の状況によっては、便器本体2において封水の不足が発生し易い場合がある。具体的に説明すると、便器本体2に接続される排水管は、設置現場によって配管ルートや配管形状などの状況が異なる。そのため、便器本体2の設置現場の状況によっては、便器洗浄時、便器本体2の排水トラップ管路23から排水管へ過度の量の洗浄水が流れ込み、排水トラップ管路23に残留する洗浄水が少なくなり、結果として封水の不足が発生し易い場合がある。
【0067】
そこで、本実施形態に係る洗浄水タンク装置4は、水受け部材9を備え、水受け部材9がオーバーフロー管71に取り付けられるようにした。そして、上記したように、給水装置6は、補給水を水受け部材9へ吐水し、水受け部材9で受けた補給水をオーバーフロー管71へ流入させる。これにより、補給水がオーバーフロー管71から導水路22へ流出し、便器本体2へ供給されて封水を形成する。
【0068】
このように、本実施形態にあっては、例えば便器本体2の設置現場の状況によって便器本体2の封水の不足が発生し易い場合であっても、水受け部材9からオーバーフロー管71を介して供給される補給水により、便器本体2の封水を確実に形成することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る水受け部材9は、例えば便器本体2の設置現場の状況が便器本体2の封水の不足が発生し易い状況である場合に、オーバーフロー管71に後付けで取り付けられてもよい。
【0070】
なお、上記のように、水受け部材9がオーバーフロー管71に後付けで取り付けられる構成の場合、取り付け前の状態では、給水装置6は、補給水を水受け部材9へ吐水する必要がないため、第2吐水部65を備えていないことがある。そのため、本実施形態に係る給水装置6は、第2吐水部65を有する二次側給水流路部62が中間流路部63に対して着脱可能に構成されるようにしてもよい。これにより、例えば、水受け部材9がオーバーフロー管71に後付けで取り付けられた場合、作業者は、二次側給水流路部62を、第2吐水部65を有するものに交換して中間流路部63に取り付けるようにする。これにより、オーバーフロー管71に後付けされた水受け部材9に対し、第2吐水部65から補給水を吐水することが可能になる。
【0071】
なお、上記では、水受け部材9がオーバーフロー管71に対して後付けで取り付けられる例を挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば洗浄水タンク装置4の出荷時などにおいて、既に取り付けられるようにしてもよい。
【0072】
<3.水受け部材の具体的構成>
以下、上記した水受け部材9の具体的な構成について、図5以降を参照して詳しく説明する。図6は、水受け部材9およびオーバーフロー管71の分解斜視図である。図7は、水受け部材9の平面図である。なお、図7以降では、理解の便宜のため、オーバーフロー管71を二点鎖線で示した。
【0073】
図5図7に示すように、水受け部材9は、オーバーフロー管71とは別体であり、オーバーフロー管71に取り付け可能に構成される。従って、例えば上記のように水受け部材9を後付けする場合に、水受け部材9をオーバーフロー管71に容易に取り付けることができる。
【0074】
例えば、水受け部材9は、水受け皿部91と、固定部96とを備える。なお、水受け部材9は、例えば樹脂製であるが、これに限定されるものではない。
【0075】
水受け皿部91は、オーバーフロー管71の周囲(例えばオーバーフロー管71の上方または上方付近)に設けられた第2吐水部65(図5参照)から吐水される補給水を受ける。そして、水受け皿部91は、受けた補給水をオーバーフロー管71へ流入させる。固定部96は、水受け皿部91をオーバーフロー管71に固定する。
【0076】
以下、水受け皿部91および固定部96についてさらに詳しく説明する。まず、水受け皿部91について説明すると、水受け皿部91は、オーバーフロー管71の上端71aの外周71bの一部に設けられる。逆に言えば、水受け皿部91は、オーバーフロー管71の上端71aの全周に亘って設けられないように構成される。
【0077】
具体的には、水受け皿部91は、例えばオーバーフロー管71の上端71aの外周71bのうちの所定範囲αに設けられる(図7参照)。所定範囲αは、例えばオーバーフロー管71の軸方向の中心Cに対して90度から120度の間の値、より具体的には120度に設定される。ここで、所定範囲αが大きい方が水受け皿部91も大きくなるため、補給水を受け取りやすくなる。その引き換えとして、後述するようにオーバーフロー管71の排水性能に影響を与えてしまう。所定範囲αが90度より小さいと、水受け皿部91において補給水を受けづらく、所定範囲αが120度より大きいとオーバーフロー管71の排水性能に影響を与えてしまう。なお、上記では、所定範囲αについて具体的な数値を挙げたが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定することができる。
【0078】
このように、水受け皿部91は、オーバーフロー管71の上端71aの外周71bの一部に設けられることから、例えば、オーバーフロー管71に取り付けたとき、オーバーフロー管71の排水性能に対する影響を低減することができる。また、水受け皿部91の高さは、オーバーフロー管71の排水性能に対する影響が低いため、水受け皿部91の高さ位置を自由に選択することができる。そのため、第2吐水部65の配置の自由度を確保することができる。これにより、水受け皿部91と第2吐水部65との距離を近づけることで、水跳ねを抑制することもできる。
【0079】
すなわち、例えば仮に、水受け皿部91がオーバーフロー管71の上端71aの全周に亘って設けられると、満水水位を超えた水のオーバーフロー管71への流れが変化したり、オーバーフロー管71の上端71aの高さ位置が変わったりし、結果として洗浄水タンク5の満水水位を超えた分の洗浄水を便器本体2へ排出するという、オーバーフロー管71の排水性能に対して影響を及ぼすおそれがある。そのため、水受け皿部91の高さ位置を自由に選択することができず、第2吐水部65の配置も制限されることとなる。
【0080】
本実施形態に係る水受け皿部91は、上記のように構成することで、オーバーフロー管71の上端71aのうち、水受け皿部91が設けられていない部位では高さ位置が変わらないため、オーバーフロー管71の排水性能に対する影響を低減することができる。
【0081】
また、水受け皿部91は、オーバーフロー管71の外周71bの一部に設けられることから、取り付けに必要な空間が小さいため、例えばオーバーフロー管71の外周71b付近の他の部品の配置を変更することなく、水受け部材9をオーバーフロー管71へ取り付けることが可能となり、設置現場での対応が容易となる。
【0082】
水受け皿部91は、底面部92と、側壁部93と、開口部94とを備える。底面部92は、第2吐水部65(図5参照)から吐水される補給水を受ける。例えば、底面部92は、平面視において略矩形状に形成されるが、形状はこれに限定されるものではない。
【0083】
図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。図8に示すように、底面部92は、上面92aがオーバーフロー管71の中心C方向へ向けて下り傾斜となるように形成される(矢印B参照)。
【0084】
これにより、底面部92にあっては、例えば上面92aで受けた補給水をオーバーフロー管71へ向けて流入し易くすることができる。
【0085】
また、底面部92は、オーバーフロー管71の内側まで延在するように形成される。詳しくは、水受け部材9がオーバーフロー管71に取り付けられた状態において、底面部92は、オーバーフロー管71の上端71aを超えて、オーバーフロー管71の内側まで延在するように形成される。
【0086】
言い換えると、水受け皿部91は、図7に示すように、底面部92が平面視においてオーバーフロー管71の外方(外側)に位置され、底面部92の一部が平面視においてオーバーフロー管71の内側に位置するように形成される。
【0087】
このように、底面部92はオーバーフロー管71の内側まで延在することから、底面部92で受けた補給水をオーバーフロー管71へ向けてより一層流入し易くすることができる。
【0088】
側壁部93は、図5図7に示すように、底面部92の周縁部92bから立設され、底面部92を囲むように形成される。開口部94は、側壁部93に形成される。具体的には、開口部94は、側壁部93のうち、平面視においてオーバーフロー管71の内側に位置する部位に形成される(図7参照)。すなわち、側壁部93は、底面部92を部分的に囲むように形成される。
【0089】
これにより、水受け部材9は、例えば底面部92で受けた補給水を側壁部93で囲まれた空間に一旦貯留しつつ、開口部94からオーバーフロー管71へ流入させることができ、よって便器本体2の封水の形成に十分な補給水の量を確保することが可能になる。また、水受け部材9は、側壁部93を設けることで、底面部92で受けた補給水の水跳ねによる補給水の減少を抑制することができ、封水の形成に十分な補給水の量を確保することができる。
【0090】
また、側壁部93は、図7によく示すように、オーバーフロー管71の外周71bより内側まで延在するように形成される。具体的には、側壁部93は、開口部94側の端部93aが、平面視においてオーバーフロー管71の外周71bより内側に位置するように形成される。
【0091】
これにより、水受け部材9は、例えば側壁部93で囲まれた空間に一旦貯留された補給水を、オーバーフロー管71の内側まで導くことができ、よって補給水をオーバーフロー管71へ確実に流入させることが可能になる。
【0092】
また、側壁部93は、第1段差部931と、第2段差部932とを備える。なお、第1段差部931および第2段差部932は、段差部の一例である。
【0093】
第1段差部931および第2段差部932は、側壁部93の上端に形成され、側壁部93の他の部位(例えば、図6に符号933で示す部位)に対して高さが低くなるように形成される。すなわち、側壁部93は、第1段差部931および第2段差部932により、高さが部分的に低くなるように形成される。
【0094】
図7に示すように、第1段差部931は、側壁部93のうち、例えば平面視において給水装置6の二次側給水流路部62に重なる位置に形成される。第2段差部932は、側壁部93のうち、例えば平面視において回動装置8の軸部82に重なる位置に形成される。なお、図7では、理解の便宜のため、二次側給水流路部62および軸部82を破線で示している。
【0095】
これにより、本実施形態にあっては、水受け部材9が洗浄水タンク装置4内の他の部品(例えば、給水装置6の二次側給水流路部62や回動装置8の軸部82)と干渉することを抑制することができる。
【0096】
詳しく説明すると、オーバーフロー管71は、上記したように、便器洗浄時に上下動して排水弁72(図4参照)を開閉する。従って、オーバーフロー管71に取り付けられる水受け部材9も、オーバーフロー管71に伴って上下動する。ここで、水受け部材9の上方、正確には水受け皿部91の側壁部93の上方には、他の部品(例えば二次側給水流路部62や軸部82)が位置することがある。そのため、例えば水受け部材9が上昇したときに、側壁部93の上端が他の部品に干渉するおそれがある。
【0097】
本実施形態に係る水受け部材9にあっては、上記したように、他の部品と対応する位置に第1段差部931や第2段差部932を備えることから、上昇したときに、側壁部93の上端が他の部品と干渉することを抑制することができ、側壁部93の高さを水撥ねによる補給水の減少を抑制できる高さまで自由に設計することができる。
【0098】
次に、固定部96について説明する。図8に示すように、固定部96は、外周接続部97と、内周接続部98とを有する二重構造である。
【0099】
外周接続部97は、図6図8に示すように、オーバーフロー管71の外周71b側に位置し、外周71bに沿って湾曲するように形成される。言い換えると、外周接続部97は、略環状となるように形成される。
【0100】
また、外周接続部97において水受け皿部91の下方に位置する所定部位は、図8に示すように、水受け皿部91の底面部92から下方に向けて延在するように形成される。詳しくは、外周接続部97の所定部位は、底面部92においてオーバーフロー管71の外周71bの上方付近に対応する位置から、下方に向けて延在するように形成される。
【0101】
そして、上記のように構成された外周接続部97は、水受け部材9がオーバーフロー管71に取り付けられたとき、水受け皿部91とオーバーフロー管71の上端71aの外周71b側とを接続する。
【0102】
内周接続部98は、オーバーフロー管71の内周71c側に位置し、内周71cに沿って湾曲するように形成される。また、内周接続部98は、水受け皿部91の下方にのみ位置するように形成される。具体的には、内周接続部98は、例えばオーバーフロー管71の内周71cのうち、水受け皿部91が設けられる所定範囲α(図7参照)に形成される。
【0103】
例えば、内周接続部98は、図8に示すように、水受け皿部91の底面部92から下方に向けて延在するように形成される。詳しくは、内周接続部98は、底面部92においてオーバーフロー管71の内周71cの上方付近に対応する位置から、下方に向けて延在するように形成される。
【0104】
そして、上記のように構成された内周接続部98は、水受け部材9がオーバーフロー管71に取り付けられたとき、水受け皿部91とオーバーフロー管71の上端71aの内周71c側とを接続する。
【0105】
従って、固定部96は、外周接続部97と内周接続部98とを有する二重構造により、オーバーフロー管71を挟むことが可能となり、よって水受け皿部91をオーバーフロー管71に確実に固定することができる。
【0106】
また、水受け皿部91は、上記したように第2吐水部65(図5参照)から吐水される補給水を受けるため、補給水による下向きの力や洗浄水タンク5の水位上昇に伴う上向きの力が作用する。本実施形態に係る固定部96にあっては、水受け皿部91と対応する部分が二重構造となってオーバーフロー管71に確実に固定されていることから、下向きや上向きの力が作用した場合であっても、水受け部材9におけるがたつきの発生などを抑制することができる。
【0107】
また、固定部96の外周接続部97および内周接続部98は、水受け皿部91から下方に向けて延在するように形成されるため、水受け部材9をオーバーフロー管71に対してガイドしつつ上から容易に取り付けることが可能となり、水受け部材9の組み付け性を向上させることができる。
【0108】
また、図8に示すように、内周接続部98の長さは、外周接続部97の長さに比べて所定距離D1短くなるように設定される。具体的には、内周接続部98の下方の端部98aは、外周接続部97の下方の端部97aより所定距離D1上方に位置するように形成される。
【0109】
これにより、本実施形態に係る水受け部材9にあっては、例えば内周接続部98に作用する力に対する強度を向上させることができる。すなわち、例えば、水受け部材9のオーバーフロー管71への組み付け時に水受け部材9が動くと、内周接続部98には、オーバーフロー管71の内周71cから不要な力が作用する場合がある。また、水受け部材9の取り付け後も、外部から内周接続部98に対して予期しない大きな力が発生する場合もある。このような場合、内周接続部98が比較的長いと、内周接続部98が変形したり欠けたりすることがある。そうすると、内周接続部98の破片がオーバーフロー管71の内部や排水口511に詰まり、排水性能に影響を与えてしまう可能性がある。本実施形態に係る内周接続部98にあっては、外周接続部97の長さに比べて短くなるようにしたことから、例えば内周接続部98に作用する不要な力に対する強度を向上させることができる。
【0110】
また、外周接続部97は、図7に示すように、オーバーフロー管71の周方向に沿って内周接続部98より長くなるように形成される。詳しくは、外周接続部97は、オーバーフロー管71の軸方向の中心Cに対して所定範囲αだけ形成される内周接続部98より、オーバーフロー管71の周方向に長くなるように形成される。
【0111】
従って、外周接続部97には、対応する内周接続部98が存在しない領域、言い換えると、所定範囲α以外の範囲であって二重構造となっていない領域がある。そして、外周接続部97には、対応する内周接続部98が存在しない領域に切欠き部971が形成される。すなわち、外周接続部97は、一部が切り欠かれて平面視において略C字状となるように形成される。
【0112】
これにより、水受け部材9のオーバーフロー管71に対する組み付け性をより向上させることができる。また、内周接続部98の存在する領域を小さくすることができるため、内周接続部98の破損のリスクを減らすことができる。
【0113】
具体的に説明すると、例えばオーバーフロー管71の内部には、上記したように、玉鎖などの接続部材83が存在し、また、オーバーフロー管71の上方には、回動装置8の軸部82などが存在する(図5参照)。そのため、例えば仮に、切欠き部971を有していない水受け部材9をオーバーフロー管71に後付けで取り付ける場合、接続部材83や軸部82などを一度外す作業が必要になるなど、水受け部材9の組み付け性が低下するおそれがある。
【0114】
本実施形態に係る水受け部材9にあっては、外周接続部97に切欠き部971が形成されるため、例えば、接続部材83を切欠き部971から通過させた後、オーバーフロー管71の上端71aへ上から取り付けることができる。すなわち、本実施形態にあっては、接続部材83や軸部82などを一度外す作業を行うことなく、水受け部材9をオーバーフロー管71に取り付けることができ、よって水受け部材9のオーバーフロー管71に対する組み付け性をより向上させることができる。
【0115】
固定部96は、さらに係止部99を備える。係止部99は、オーバーフロー管71の上端71aに係止することで、水受け皿部91をオーバーフロー管71に位置決めしつつ固定することができる。
【0116】
係止部99は、外周接続部97の上端97bの適宜位置に複数個(例えば3個)形成される。例えば、係止部99は、外周接続部97において、対応する内周接続部98が存在しない領域、言い換えると、所定範囲α以外の範囲であって二重構造となっていない領域の上端97bに形成される。
【0117】
一例として、係止部99は、図7に示すように、外周接続部97において切欠き部971側のそれぞれの端部97cの上端97b、および、一方の端部97cから周方向に所定角度(例えば180度)間隔離間した上端97bに形成される。なお、係止部99が形成される位置は、上記に限定されるものではない。また、係止部99の個数も複数個に限定されるものではなく、1個であってもよい。
【0118】
係止部99の説明を続ける前に、ここでオーバーフロー管71の上端71aの形状について説明する。図6に示すように、オーバーフロー管71の上端71aには、凹部71dが複数個(例えば4個)形成される。
【0119】
凹部71dは、平面視においてオーバーフロー管71の外方に向けて開口する凹状の部位である。かかる凹部71dには、後述するように係止部99が係止される。従って、例えば作業者は、水受け皿部91をオーバーフロー管71に取り付ける際、水受け部材9の係止部99をオーバーフロー管71の凹部71dに位置させることで、水受け皿部91をオーバーフロー管71に対して位置決めすることができる。
【0120】
なお、図6の例では、凹部71dが4個である例を示したが、これは例示であって限定されるものではない。すなわち、凹部71dは、任意の個数に設定でき、例えば係止部99と同じ個数であってもよいし、1個であってもよい。
【0121】
係止部99の説明を続ける。図9は、図7のIX-IX線断面図であり、具体的には水受け部材9の係止部99付近を拡大して示す図である。
【0122】
図9に示すように、係止部99は、支柱部99aと、爪部99bとを備える。支柱部99aは、外周接続部97の上端97bから上方に向けて立設される。また、支柱部99aの高さは、例えば、水受け部材9をオーバーフロー管71に組み付けたときに、オーバーフロー管71の上端71aが側面視において露出する高さに設定される。
【0123】
爪部99bは、オーバーフロー管71の上端71a(正確には凹部71d(図6参照))に係止可能な形状に形成される。例えば、爪部99bは、支柱部99aの上端からオーバーフロー管71の内側に向けて延在した後に、下方へ延在する形状(例えば略L字状)に形成される。
【0124】
係止部99は、上記のように構成されることで、水受け皿部91をオーバーフロー管71に位置決めしつつ固定することができる。
【0125】
また、支柱部99aが上記のように構成されることで、水受け部材9がオーバーフロー管71に組み付けられたとき、オーバーフロー管71の上端71aは側面視において露出する。これにより、本実施形態に係る水受け部材9がオーバーフロー管71に取り付けられた状態でも、オーバーフロー管71の上端71aの高さ位置が変わらないため、オーバーフロー管71の排水性能に対する影響をより一層低減することができる。
【0126】
上述してきたように、実施形態に係る水受け部材9は、洗浄水タンク5内に設けられ洗浄水タンク5の満水水位を超えた洗浄水を便器本体2へ排出するオーバーフロー管71に取り付け可能である。水受け部材9は、水受け皿部91と、固定部96とを備える。水受け皿部91は、オーバーフロー管71の周囲に設けられた第2吐水部65から吐水される補給水を受け、受けた補給水をオーバーフロー管71へ流入させる。固定部96は、水受け皿部91をオーバーフロー管71に固定する。また、水受け皿部91は、オーバーフロー管71の上端71aの外周71bの一部に設けられる。これにより、水受け部材9をオーバーフロー管71へ容易に取り付けることができ、取り付けたときのオーバーフロー管71の排水性能に対する影響を低減することができる。
【0127】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
4 洗浄水タンク装置
5 洗浄水タンク
65 第2吐水部
71 オーバーフロー管
9 水受け部材
91 水受け皿部
92 底面部
93 側壁部
931 第1段差部
932 第2段差部
94 開口部
96 固定部
97 外周接続部
971 切欠き部
98 内周接続部
99 係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9