(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】軌道生成装置、軌道生成方法、軌道生成プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20231212BHJP
B60W 30/165 20200101ALI20231212BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231212BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20231212BHJP
B60W 40/072 20120101ALI20231212BHJP
B60W 40/109 20120101ALI20231212BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W30/165
B60W40/04
B60W40/06
B60W40/072
B60W40/109
(21)【出願番号】P 2020016458
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】川北 幸治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 啓吾
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/138769(WO,A1)
【文献】特開2003-228800(JP,A)
【文献】特開2018-095143(JP,A)
【文献】特開2017-137001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/10
B60W 30/165
B60W 40/04
B60W 40/06
B60W 40/072
B60W 40/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線(4a)から分岐車線(4b)へ向かう自車両(3)の軌道(X)として
の分岐走行軌道(Xb)を、
前記自車両が前記本線から前記分岐車線へ進入するタイミングに分岐走行軌道(Xb)を生成する軌道生成装置(1)であって、
前記分岐車線における他車両(6)の存在有無を判定する判定部(120)と、
前記存在有無の判定結果に応じて、前記分岐走行軌道の緩急を調整する調整部(140)と、を備え、
前記分岐車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐走行軌道は、前記自車両
が前記他車両に追従
する状態となる分岐追従軌道(Xbf)と定義され、
前記分岐車線における前記他車両の存在無判定が下される走行シーンでの前記分岐走行軌道は、前記自車両
が前記他車両に追従
する状態からは解放
されている状態となる分岐解放軌道(Xbr)と定義され、
前記調整部は、前記分岐追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する軌道生成装置。
【請求項2】
前記分岐車線は、前記本線と並行な並行車線(4bp)と、前記本線から前記並行車線までを接続する接続車線(4bc)と、を含み、
前記接続車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐追従軌道は、接続追従軌道(Xbfc)と定義され、
前記調整部は、前記接続追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する請求項1に記載の軌道生成装置。
【請求項3】
前記接続車線における前記他車両の存在無判定且つ前記並行車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐追従軌道は、並行追従軌道(Xbfp)と定義され、
前記調整部は、前記接続追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記並行追従軌道を、生成する請求項2に記載の軌道生成装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記並行追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する請求項3に記載の軌道生成装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記分岐車線への前記自車両の車線変更が完了する完了位置(Pe)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整し、
前記完了位置は、
前記接続車線及び前記並行車線における前記他車両の存在無判定が下される走行シーンでの前記並行車線において前記本線と並行する走行を前記自車両が開始する位置(Pd)と、
前記接続車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンにおいて前記接続車線が前記並行車線へ移行する位置(Pm)と、
前記接続車線における前記他車両の存在無判定且つ前記並行車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記並行車線において前記他車両への追従を前記自車両が開始する位置(Ps)と、を含む請求項3又は4に記載の軌道生成装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記分岐車線へ進入する前記自車両が描くカーブの曲率(C)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項1~5のいずれか一項に記載の軌道生成装置。
【請求項7】
前記調整部は、前記分岐車線へ進入する前記自車両の進入方向が前記本線の車線方向に対してなす方位角(θ)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項1~6のいずれか一項に記載の軌道生成装置。
【請求項8】
前記調整部は、前記分岐車線へ進入する前記自車両に生じる最大遠心加速度(α)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項1~7のいずれか一項に記載の軌道生成装置。
【請求項9】
前記調整部は、前記分岐車線へ進入する前記自車両に生じる最大遠心加速度(α)の時間変化率(R)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項1~8のいずれか一項に記載の軌道生成装置。
【請求項10】
前記調整部は、前記分岐車線へ進入する前記自車両の進入限界位置(Pl)を、制約条件として前記分岐走行軌道に与える請求項1~9のいずれか一項に記載の軌道生成装置。
【請求項11】
プロセッサ(12)により実行され、本線(4a)から分岐車線(4b)へ向かう自車両(3)の軌道(X)として
の分岐走行軌道(Xb)を、
前記自車両が前記本線から前記分岐車線へ進入するタイミングに生成する軌道生成方法であって、
前記分岐車線における他車両(6)の存在有無を判定する判定プロセス(S101,S102)と、
前記存在有無の判定結果に応じて、前記分岐走行軌道の緩急を調整する調整プロセス(S103,S104,S105)と、を含み、
前記分岐車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐走行軌道は、前記自車両
が前記他車両に追従
する状態となる分岐追従軌道(Xbf)と定義され、
前記分岐車線における前記他車両の存在無判定が下される走行シーンでの前記分岐走行軌道は、前記自車両
が前記他車両に追従
する状態からは解放
されている状態となる分岐解放軌道(Xbr)と定義され、
前記調整プロセスは、前記分岐追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する軌道生成方法。
【請求項12】
前記分岐車線は、前記本線と並行な並行車線(4bp)と、前記本線から前記並行車線までを接続する接続車線(4bc)と、を含み、
前記接続車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐追従軌道は、接続追従軌道(Xbfc)と定義され、
前記調整プロセスは、前記接続追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する請求項11に記載の軌道生成方法。
【請求項13】
前記接続車線における前記他車両の存在無判定且つ前記並行車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐追従軌道は、並行追従軌道(Xbfp)と定義され、
前記調整プロセスは、前記接続追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記並行追従軌道を、生成する請求項12に記載の軌道生成方法。
【請求項14】
前記調整プロセスは、前記並行追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する請求項13に記載の軌道生成方法。
【請求項15】
前記調整プロセスは、前記分岐車線への前記自車両の車線変更が完了する完了位置(Pe)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整し、
前記完了位置は、
前記接続車線及び前記並行車線における前記他車両の存在無判定が下される走行シーンでの前記並行車線において前記本線と並行する走行を前記自車両が開始する位置(Pd)と、
前記接続車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンにおいて前記接続車線が前記並行車線へ移行する位置(Pm)と、
前記接続車線における前記他車両の存在無判定且つ前記並行車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記並行車線において前記他車両への追従を前記自車両が開始する位置(Ps)と、を含む請求項13又は14に記載の軌道生成方法。
【請求項16】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両が描くカーブの曲率(C)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項11~15のいずれか一項に記載の軌道生成方法。
【請求項17】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両の進入方向が前記本線の車線方向に対してなす方位角(θ)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項11~16のいずれか一項に記載の軌道生成方法。
【請求項18】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両に生じる最大遠心加速度(α)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項11~17のいずれか一項に記載の軌道生成方法。
【請求項19】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両に生じる最大遠心加速度(α)の時間変化率(R)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整する請求項11~18のいずれか一項に記載の軌道生成方法。
【請求項20】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両の進入限界位置(Pl)を、制約条件として前記分岐走行軌道に与える請求項11~19のいずれか一項に記載の軌道生成方法。
【請求項21】
本線(4a)から分岐車線(4b)へ向かう自車両(3)の軌道(X)として
の分岐走行軌道(Xb)を、
前記自車両が前記本線から前記分岐車線へ進入するタイミングに生成するためにプロセッサ(12)に実行させる命令を、含む軌道生成プログラムであって、
前記分岐車線における他車両(6)の存在有無を判定する判定プロセス(S101,S102)と、
前記存在有無の判定結果に応じて、前記分岐走行軌道の緩急を調整する調整プロセス(S103,S104,S105)と、を実行させる前記命令を含み、
前記分岐車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐走行軌道は、前記自車両
が前記他車両に追従
する状態となる分岐追従軌道(Xbf)と定義され、
前記分岐車線における前記他車両の存在無判定が下される走行シーンでの前記分岐走行軌道は、前記自車両
が前記他車両に追従
する状態からは解放
されている状態となる分岐解放軌道(Xbr)と定義され、
前記調整プロセスは、前記分岐追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成する軌道生成プログラム。
【請求項22】
前記分岐車線は、前記本線と並行な並行車線(4bp)と、前記本線から前記並行車線までを接続する接続車線(4bc)と、を含み、
前記接続車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐追従軌道は、接続追従軌道(Xbfc)と定義され、
前記調整プロセスは、前記接続追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成させる請求項21に記載の軌道生成プログラム。
【請求項23】
前記接続車線における前記他車両の存在無判定且つ前記並行車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記分岐追従軌道は、並行追従軌道(Xbfp)と定義され、
前記調整プロセスは、前記接続追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記並行追従軌道を、生成させる請求項22に記載の軌道生成プログラム。
【請求項24】
前記調整プロセスは、前記並行追従軌道よりも緩やかに前記自車両を前記分岐車線へ案内する前記分岐解放軌道を、生成させる請求項23に記載の軌道生成プログラム。
【請求項25】
前記調整プロセスは、前記分岐車線への前記自車両の車線変更が完了する完了位置(Pe)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整させ、
前記完了位置は、
前記接続車線及び前記並行車線における前記他車両の存在無判定が下される走行シーンでの前記並行車線において前記本線と並行する走行を前記自車両が開始する位置(Pd)と、
前記接続車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンにおいて前記接続車線が前記並行車線へ移行する位置(Pm)と、
前記接続車線における前記他車両の存在無判定且つ前記並行車線における前記他車両の存在有判定が下される走行シーンでの前記並行車線において前記他車両への追従を前記自車両が開始する位置(Ps)と、を含む請求項23又は24に記載の軌道生成プログラム。
【請求項26】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両が描くカーブの曲率(C)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整させる請求項21~25のいずれか一項に記載の軌道生成プログラム。
【請求項27】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両の進入方向が前記本線の車線方向に対してなす方位角(θ)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整させる請求項21~26のいずれか一項に記載の軌道生成プログラム。
【請求項28】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両に生じる最大遠心加速度(α)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整させる請求項21~27のいずれか一項に記載の軌道生成プログラム。
【請求項29】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両に生じる最大遠心加速度(α)の時間変化率(R)により、前記分岐走行軌道の緩急を調整させる請求項21~28のいずれか一項に記載の軌道生成プログラム。
【請求項30】
前記調整プロセスは、前記分岐車線へ進入する前記自車両の進入限界位置(Pl)を、制約条件として前記分岐走行軌道に与えさせる請求項21~29のいずれか一項に記載の軌道生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自車両の軌道を生成する軌道生成技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、本線から分岐車線へ向かう自車両の軌道を生成する軌道生成技術を、開示している。この技術は、分岐車線への進入箇所付近から道路形状に応じた軌道を、生成可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2018/138769号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に分岐車線のうち、本線から擦り付け状に接続される接続車線では、軌道が本線から横方向へとカーブさせられる。そのため、分岐車線への進入箇所付近における軌道は、分岐車線の道路形状に沿わされることで、自車両に対して大きな横方向変化を与え易くなる。こうした大きな横方向変化は、自車両の挙動において横加速度又はヨーレートを不要に発生させるおそれがある。
【0005】
そこで、横方向変化の小さな軌道を生成することが、想定される。しかし、横方向変化の小さな軌道は、例えば渋滞等により分岐車線に停滞している他車両を追い越して、分岐車線での他車両の走行に干渉するおそれがある。
【0006】
本開示の課題は、自車両の走行シーンに適した軌道を生成する軌道生成装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、自車両の走行シーンに適した軌道を生成する軌道生成方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、自車両の走行シーンに適した軌道を生成する軌道生成プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
本開示の第一態様は、
本線(4a)から分岐車線(4b)へ向かう自車両(3)の軌道(X)としての分岐走行軌道(Xb)を、自車両が本線から分岐車線へ進入するタイミングに生成する軌道生成装置(1)であって、
分岐車線における他車両(6)の存在有無を判定する判定部(120)と、
存在有無の判定結果に応じて、分岐走行軌道の緩急を調整する調整部(140)と、を備え、
分岐車線における他車両の存在有判定が下される走行シーンでの分岐走行軌道は、自車両が他車両に追従する状態となる分岐追従軌道(Xbf)と定義され、
分岐車線における他車両の存在無判定が下される走行シーンでの分岐走行軌道は、自車両が他車両に追従する状態からは解放されている状態となる分岐解放軌道(Xbr)と定義され、
調整部は、分岐追従軌道よりも緩やかに自車両を分岐車線へ案内する分岐解放軌道を、生成する。
【0009】
本開示の第二態様は、
プロセッサ(12)により実行され、本線(4a)から分岐車線(4b)へ向かう自車両(3)の軌道(X)としての分岐走行軌道(Xb)を、自車両が本線から分岐車線へ進入するタイミングに生成する軌道生成方法であって、
分岐車線における他車両(6)の存在有無を判定する判定プロセス(S101,S102)と、
存在有無の判定結果に応じて、分岐走行軌道の緩急を調整する調整プロセス(S103,S104,S105)と、を含み、
分岐車線における他車両の存在有判定が下される走行シーンでの分岐走行軌道は、自車両が他車両に追従する状態となる分岐追従軌道(Xbf)と定義され、
分岐車線における他車両の存在無判定が下される走行シーンでの分岐走行軌道は、自車両が他車両に追従する状態からは解放されている状態となる分岐解放軌道(Xbr)と定義され、
調整プロセスは、分岐追従軌道よりも緩やかに自車両を分岐車線へ案内する分岐解放軌道を、生成する。
【0010】
本開示の第三態様は、
本線(4a)から分岐車線(4b)へ向かう自車両(3)の軌道(X)としての分岐走行軌道(Xb)を、自車両が本線から分岐車線へ進入するタイミングに生成するためにプロセッサ(12)に実行させる命令を、含む軌道生成プログラムであって、
分岐車線における他車両(6)の存在有無を判定する判定プロセス(S101,S102)と、
存在有無の判定結果に応じて、分岐走行軌道の緩急を調整する調整プロセス(S103,S104,S105)と、を実行させる命令を含み、
分岐車線における他車両の存在有判定が下される走行シーンでの分岐走行軌道は、自車両が他車両に追従する状態となる分岐追従軌道(Xbf)と定義され、
分岐車線における他車両の存在無判定が下される走行シーンでの分岐走行軌道は、自車両が他車両に追従する状態からは解放されている状態となる分岐解放軌道(Xbr)と定義され、
調整プロセスは、分岐追従軌道よりも緩やかに自車両を分岐車線へ案内する分岐解放軌道を、生成する。
【0011】
これら第一~第三態様によると、本線から分岐車線へ向かう自車両の分岐走行軌道として、分岐追従軌道及び分岐解放軌道は、分岐車線における他車両の存在有無の判定結果に応じて緩急を調整される。このとき、分岐車線における他車両の存在有判定が下される走行シーンでは、分岐追従軌道により自車両が他車両への追従を優先されることになるので、分岐車線における他車両への走行干渉を抑制することができる。一方、分岐車線における他車両の存在無判定が下される走行シーンでは、他車両への追従から自車両が解放されることで、分岐追従軌道よりも緩やかに自車両を案内する分岐解放軌道の横方向変化は、小さくなる。このように小さな横方向変化は、自車両の挙動における横加速度又はヨーレートの発生を抑制することができる。以上によれば、自車両の走行シーンに適した分岐走行軌道を、生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による軌道生成装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態による軌道生成装置が生成する走行軌道を説明するための模式図である。
【
図3】一実施形態による軌道生成装置の詳細構成を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態による制約条件を説明するための模式図である。
【
図5】一実施形態による制約条件を説明するための模式図である。
【
図6】一実施形態による分岐解放軌道を説明するための模式図である。
【
図7】一実施形態による分岐追従軌道のうち接続追従軌道を説明するための模式図である。
【
図8】一実施形態による分岐追従軌道のうち並行追従軌道を説明するための模式図である。
【
図9】一実施形態による分岐走行軌道を対比するための模式図である。
【
図10】一実施形態による分岐走行軌道の緩急調整を説明するためのグラフである。
【
図11】一実施形態による分岐走行軌道の緩急調整を説明するための模式図である。
【
図12】一実施形態による分岐走行軌道の緩急調整を説明するためのグラフである。
【
図13】一実施形態による分岐走行軌道の緩急調整を説明するためのグラフである。
【
図14】一実施形態による分岐走行軌道の緩急調整を説明するためのグラフである。
【
図15】一実施形態による軌道生成方法を示すフローチャートである。
【
図16】変形例よる軌道生成方法を示すフローチャートである。
【
図17】変形例よる分岐走行軌道の生成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す一実施形態の軌道生成装置1は、走行路7の走行車線4における車両3の将来走行に関して、軌道X(
図2参照)を生成する。このために軌道生成装置1は、走行制御装置2と共に、車両3に搭載される。走行制御装置2は、軌道生成装置1の生成した軌道Xに従う走行制御を、車両3に対して実行する。車両3は、走行制御装置2からの走行制御を受けることで定常的若しくは一時的に自動走行可能となる、例えば自動運転車両又は高度運転支援車両等である。以下の説明では、軌道生成装置1及び走行制御装置2の搭載される車両3が、自車両3と表記される。
【0015】
自車両3には、軌道生成装置1及び走行制御装置2に加えて、センサ系5が搭載される。センサ系5は、軌道生成装置1による軌道生成及び走行制御装置2による走行制御に活用可能な各種情報を、取得する。
図3に示すようにセンサ系5は、外界センサ50及び内界センサ52を含んで構成される。
【0016】
外界センサ50は、自車両3の周辺環境となる外界の情報を、生成する。外界センサ50は、自車両3の外界に存在する物体を検知することで、外界情報を生成してもよい。この検知タイプの外界センサ50は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサ50は、自車両3の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星又はITS(Intelligent Transport Systems)の路側機から信号受信することで、外界情報を生成してもよい。この受信タイプの外界センサ50は、例えばGNSS受信機、及びテレマティクス受信機等のうち、少なくとも一種類である。
【0017】
内界センサ52は、自車両3の内部環境となる内界の情報を、生成する。内界センサ52は、自車両3の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を生成してもよい。この検知タイプの内界センサ52は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、ジャイロ及び舵角センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0018】
こうしたセンサ系5の取得情報に基づくことで、軌道生成装置1により生成されて走行制御装置2へと出力される軌道Xは、将来走行における自車両3の運動物理量を時系列に規定する。そこで
図2に示すように、現在位置Ppから設定経路長先の将来予定位置Pfに至る区間を軌道生成区間として、軌道Xが生成される。軌道Xは、自車両3の各種運動物理量のうち特定の運動物理量に関して、軌道生成区間における複数時系列点でのベクトル値又はスカラー値を規定する。軌道Xにより規定される自車両3の運動物理量は、例えば走行車線4に対する相対的な横位置又はヨー角、走行速度、加速度、走行距離及び舵角等のうち、当該横位置を含んだ少なくとも一種類である。尚、走行車線4に対する相対的な横位置は、走行車線4の横方向(即ち、幅方向)において中央位置からの相対位置として定義され、以下の説明では単に横位置と表記される。
【0019】
軌道生成装置1が軌道Xを生成する走行シーンは、走行車線4として本線4a及び分岐車線4bが並ぶ走行路7での車線変更シーンを、少なくとも含む。自車両3が本線4aから分岐車線4bへ向かって車線変更する車線変更シーンでの軌道Xは特に、分岐走行軌道Xbと定義される。ここで分岐車線4bには、接続車線4bc及び並行車線4bpが含まれる。接続車線4bcは、本線4aから並行車線4bpまでを直線的又は曲線的な擦り付け状に接続する、本線4aから分岐の走行車線4である。並行車線4bpは、本線4aとの間を接続車線4bcにより接続されて本線4aと並行に延伸する、接続車線4bcよりも先の走行車線4である。尚、
図2において符号Pbの付された二点鎖線は、接続車線4bcが本線4aから分岐する分岐位置Pbを、仮想的に表している。
図2において符号Pmの付された二点鎖線は、接続車線4bcが並行車線4bpへ移行する移行位置Pmを、仮想的に表している。
【0020】
図1に示す軌道生成装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータから構成される。軌道生成装置1を構成する専用コンピュータは、自車両3の高度運転支援又は自動運転制御を統括する統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。軌道生成装置1を構成する専用コンピュータは、自車両3の高度運転支援又は自動運転制御に利用されるロケータECUであってもよい。軌道生成装置1を構成する専用コンピュータは、自車両3の運転をナビゲートするナビゲーションECUであってもよい。軌道生成装置1を構成するECUは、自車両3と外界との間の通信を制御する通信ECUであってもよい。これらのECUは、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介して走行制御装置2及びセンサ系5に接続される。一方、軌道生成装置1を構成する専用コンピュータは、走行制御装置2として自車両3の少なくとも操舵を制御する操舵ECUであってもよい。この操舵ECUは、例えばLAN、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系5に接続される。
【0021】
このような軌道生成装置1は、メモリ10及びプロセッサ12を少なくとも一つずつ含む。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に格納又は記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0022】
プロセッサ12は、メモリ10に格納された軌道生成プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより軌道生成装置1は、軌道Xを生成するための機能ブロックを、複数構築する。即ち軌道生成装置1では、軌道Xを生成するためにメモリ10に格納された軌道生成プログラムが複数の命令をプロセッサ12に実行させることで、複数の機能ブロックが構築される。軌道生成装置1により構築される複数の機能ブロックには、
図3に示すように制約ブロック100、判定ブロック120及び調整ブロック140が含まれる。
【0023】
制約ブロック100は、本線4aから分岐車線4bへの自車両3の進入に対して制約を与える制約条件を、抽出する。具体的には、
図4,5に示すように本線4aからの分岐車線4bの分岐位置Pbが軌道生成区間内へ入ると、制約ブロック100が制約条件を抽出する。即ち、自車両3の現在位置Ppから設定距離以下にまで分岐位置Pbが接近すると、制約条件が抽出される。このときの抽出処理は、外界センサ50による外界情報のうち、他車両6に関する運動情報と、内界センサ52による内界情報のうち、走行車線4に関する地図情報及び自車両3に関する運動情報とに、少なくとも基づき実行される。
【0024】
制約条件は、本線4aから分岐車線4bへ進入する自車両3の進入限界位置Plを、少なくとも含む。本実施形態の進入限界位置Plは、本線4aと分岐車線4bとの境界線属性を表す走行制限位置Plr及び障害存在位置Ploのうち、自車両3の現在位置Ppに近い一方に設定される。
図4に示すように走行制限位置Plrとは、本線4aにおける現在位置Ppからの制約区間内のうち、構造的又は法律的に分岐車線4bへの車線変更走行が制限される制限領域の開始位置(即ち、最も手前の位置)を、意味する。一方、
図5に示すように障害存在位置Ploとは、本線4aにおける現在位置Ppからの制約区間内のうち、分岐車線4bへの車線変更の障害となる障害速度範囲内の走行速度をもって唯一又は最後尾に存在する他車両6の後端位置を、意味する。ここで制約区間は、自車両3が分岐車線4bへの車線変更を完了して本線4aと並行走行するのに必要な経路長を、現在位置Ppから空けるように設定される。障害速度範囲は、自車両3の車線変更に干渉する他車両6の走行速度として零速度から設定速度以下又は設定速度未満の範囲に、設定される。
【0025】
図3に示す判定ブロック120は、分岐車線4bにおける他車両6の存在有無を判定する。具体的には、
図6~8に示すように本線4aからの分岐車線4bの分岐位置Pbが軌道生成区間内へ入ると、判定ブロック120が他車両6の存在有無を判定する。即ち、自車両3の現在位置Ppから設定距離以下にまで分岐位置Pbが接近すると、他車両6の存在有無が判定される。このときの判定処理は、外界センサ50による外界情報のうち、他車両6に関する運動情報と、内界センサ52による内界情報のうち、走行車線4に関する地図情報及び自車両3に関する運動情報とに、少なくとも基づき実行される。
【0026】
図6,8に示すように、分岐車線4bのうち接続車線4bcにおいて他車両6が存在していない場合、判定ブロック120が接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定を下す。一方で
図7に示すように、分岐車線4bのうち接続車線4bcにおいて唯一又は最後尾に判定速度範囲内の走行速度をもった他車両6が存在している場合、判定ブロック120が接続車線4bcにおける他車両6の存在有判定を下す。但し、分岐車線4bのうち接続車線4bcにおいて、唯一又は最後尾に判定速度範囲外の走行速度をもった他車両6が存在している場合、本実施形態では接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定が下される。
【0027】
接続車線4bcでの存在有無の判定基準となる判定速度範囲は、自車両3の追従を必要とする他車両6の走行速度として零速度から設定速度以下又は設定速度未満の範囲に、設定される。この設定により、自車両3の追従を必要とする他車両6に関して、存在有無が判定されることになるため、走行速度が判定速度範囲外の他車両6に対しては、上述の存在無判定が下されるようになっている。
【0028】
図6,7に示すように、分岐車線4bのうち並行車線4bpにおいて移行位置Pmからの判定区間内に他車両6の後端が存在していない場合、判定ブロック120が並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定を下す。一方で
図8に示すように、分岐車線4bのうち並行車線4bpにおいて判定区間内の唯一又は最後尾に判定速度範囲内の走行速度をもった他車両6の後端が存在している場合、判定ブロック120が並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定を下す。但し、分岐車線4bのうち並行車線4bpにおいて、判定区間内の唯一又は最後尾に判定速度範囲外の走行速度をもった他車両6の後端が存在している場合、本実施形態では並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定が下される。また、分岐車線4bのうち並行車線4bpにおいて、判定区間よりも先に他車両6の後端が存在していても、本実施形態では並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定が下される。
【0029】
並行車線4bpでの存在有無の判定基準となる判定速度範囲は、自車両3の追従を必要とする他車両6の走行速度として零速度から設定速度以下又は設定速度未満の範囲に、設定される。この設定により、自車両3の追従を必要とする他車両6に関して、存在有無が判定されることになるため、走行速度が判定速度範囲外の他車両6に対しては、上述の存在無判定が下されるようになっている。尚、並行車線4bpでの存在有無に関して判定速度範囲の上限を決める設定速度は、接続車線4bcでの存在有無に関する判定速度範囲に対して、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
並行車線4bpでの存在有無の判定基準となる判定区間は、自車両3が分岐車線4bへの車線変更を完了して本線4aと並行に走行するまでに必要な経路長を、移行位置Pmから空けるように設定される。この設定により、車線変更完了までに自車両3の追従を必要とする他車両6に関して、存在有無が判定されることになるため、判定区間よりも先の他車両6に対しては、上述の存在無判定が下されるようになっている。
【0031】
以上により判定ブロック120は、接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定を下す
図6の場合には、分岐車線4bにおける他車両6の存在無判定も下す。一方で判定ブロック120は、接続車線4bc又は並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定を下す
図7,8の場合には、分岐車線4bにおける他車両6の存在有判定も下す。
【0032】
図3に示す調整ブロック140は、
図6~8に示すように生成する分岐走行軌道Xbの緩急を、判定ブロック120による存在有無の判定結果に応じて、調整する。具体的には、分岐車線4bにおける他車両6の存在無判定が下される場合、即ち接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定が下される場合に調整ブロック140は、分岐走行軌道Xbのうち、
図6に示す軌道Xbrを生成する。ここで軌道Xbrは、分岐車線4bにおいて他車両6への追従から自車両3を解放する、分岐解放軌道Xbrと定義される。一方、分岐車線4bにおける他車両6の存在有判定が下される場合、即ち接続車線4bc又は並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定が下される場合に調整ブロック140は、分岐走行軌道Xbのうち、
図7,8に示す軌道Xbfを生成する。ここで軌道Xbfは、分岐車線4bにおいて他車両6に自車両3を追従させる、分岐追従軌道Xbfと定義される。
【0033】
本実施形態の分岐追従軌道Xbfとしては、大別して二種類が生成される。まず、並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定及び存在無判定のいずれが下されるかに拘らず、接続車線4bcにおける他車両6の存在有判定が下される場合の分岐追従軌道Xbfは、
図7に示すように接続車線4bcでの追従を実現するための、接続追従軌道Xbfcと定義される。これに対して、接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定且つ並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定が下される場合の分岐追従軌道Xbfは、
図8に示すように並行車線4bpでの追従を実現するための、並行追従軌道Xbfpと定義される。
【0034】
以上の軌道定義下にて調整ブロック140は、
図6~9に示すように分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpよりも緩やか(即ち、滑らか)に、本線4aから自車両3を分岐車線4bへと案内する分岐解放軌道Xbrを、生成する。換言すれば、分岐解放軌道Xbrよりも急変化する接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpを、調整ブロック14は生成する。このときさらに調整ブロック140は、
図7~9に示すように接続追従軌道Xbfcよりも緩やか(即ち、滑らか)に、本線4aから自車両3を分岐車線4bへと案内する並行追従軌道Xbfpを、生成する。換言すれば、並行追従軌道Xbfpよりも急変化する接続追従軌道Xbfcを、調整ブロック14は生成する。
【0035】
こうした分岐走行軌道Xbの緩急調整処理は、外界センサ50による外界情報のうち、他車両6に関する運動情報と、内界センサ52による内界情報のうち、走行車線4に関する地図情報及び自車両3に関する運動情報とに、少なくとも基づき実行される。このとき、制約ブロック100により抽出された進入限界位置Plを含む制約条件が、軌道Xbr,Xbfc,Xbfpに対して与えられる。
【0036】
ここで分岐走行軌道Xbの緩急は、
図6~8に示すように本線4aから分岐車線4bへの自車両3の車線変更が完了する完了位置Peにより、調整されてもよい。このとき、接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定が下される走行シーンでの完了位置Peは、並行車線4bpにおいて本線4aに並行する走行を自車両3が開始する、
図6の走行開始位置Pdに設定される。この走行開始位置Pdは、例えば自車両3の全体が並行車線4bpに進入して並行車線4bpの車線変更を向く位置等である。一方、接続車線4bcにおける他車両6の存在有判定が判下される走行シーンでの完了位置Peは、接続車線4bcが並行車線4bpへと移行する、
図7の移行位置Pmに設定される。この移行位置Pmは、例えば地図情報の表すリンク点の位置等である。また一方、接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定且つ並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定が下される走行シーンでの完了位置Peは、並行車線4bpにおいて他車両6への追従を自車両3が開始する、
図8の追従開始位置Psに設定される。この追従開始位置Psは、例えば他車両6の後方に自車両3が追従可能に、それら各車両3,6の車長関係が考慮された位置等である。
【0037】
これらの設定により、
図6~8に示すように分岐解放軌道Xbrを規定する完了位置Pe(即ち、位置Pd)は、分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpを規定する完了位置Pe(即ち、位置Pm,Ps)よりも、分岐位置Pbから遠方に離間する。また、
図7~8に示すように並行追従軌道Xbfpを規定する完了位置Pe(即ち、位置Ps)は、接続追従軌道Xbfcを規定する完了位置Pe(即ち、位置Pm)よりも、分岐位置Pbから遠方に離間する。尚、このような軌道Xbr,Xbfc,Xbfpを含む分岐走行軌道Xbは、例えば直線及びスプライン曲線のうち、少なくとも一種類により自車両3の現在位置Ppから完了位置Peまでを繋ぐことで、少なくとも横位置を規定可能となる。
【0038】
分岐走行軌道Xbの緩急は、本線4aから分岐車線4bへと進入する自車両3が描くカーブの、
図10に示す曲率Cにより、調整されてもよい。このとき分岐位置Pbからの調整区間内では、分岐解放軌道Xbrを規定する曲率Cが、分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpを規定する曲率Cよりも、小さく設定される。また調整区間内では、並行追従軌道Xbfpを規定する曲率Cが、接続追従軌道Xbfcを規定する曲率Cよりも、小さく設定される。
【0039】
分岐走行軌道Xbの緩急は、
図11に示すように本線4aから分岐車線4bへと進入する自車両3の進入方向Dbが本線4aの車線進行方向Daに対してなす角度としての、
図12に示す方位角θにより、調整されてもよい。このとき分岐位置Pbからの調整区間内では、分岐解放軌道Xbrを規定する方位角θが、分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpを規定する方位角θよりも、小さく設定される。また調整区間内では、並行追従軌道Xbfpを規定する方位角θが、接続追従軌道Xbfcを規定する方位角θよりも、小さく設定される。
【0040】
分岐走行軌道Xbの緩急は、本線4aから分岐車線4bへと進入する自車両3に生じる、
図13に示す最大遠心加速度αにより、調整されてもよい。このとき分岐位置Pbからの調整区間内において想定される走行速度毎に、分岐解放軌道Xbrを規定する最大遠心加速度αが、分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpを規定する最大遠心加速度αよりも、小さく設定される。また調整区間内において想定される走行速度毎に、並行追従軌道Xbfpを規定する最大遠心加速度αが、接続追従軌道Xbfcを規定する最大遠心加速度αよりも、小さく設定される。尚、最大遠心加速度αが小さく設定されると、自車両3に搭乗した乗員の感じる乗り心地は、向上傾向を示す。
【0041】
分岐走行軌道Xbの緩急は、本線4aから分岐車線4bへと進入する自車両3に生じる、
図14に示す最大遠心加速度αの時間変化率Rにより、調整されてもよい。このとき分岐位置Pbからの調整区間内において想定される走行速度毎に、分岐解放軌道Xbrを規定する時間変化率Rが、分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpを規定する時間変化率Rよりも、小さく設定される。また調整区間内において想定される走行速度毎に、並行追従軌道Xbfpを規定する時間変化率Rが、接続追従軌道Xbfcを規定する時間変化率Rよりも、小さく設定される。尚、時間変化率Rが小さく設定されると、自車両3に搭乗した乗員の感じる乗り心地は、向上傾向を示す。
【0042】
このような分岐走行軌道Xbの緩急調整に当たっては、完了位置Pe、曲率C、方位角θ、最大遠心加速度α及び時間変化率Rのうち、少なくとも一種類が軌道Xbr,Xbfc,Xbfpの生成に利用される。このとき、軌道生成に利用される少なくとも一種類が制約条件下にて与えられる調整区間は、分岐走行軌道Xbの緩急調整に必要な経路長を、分岐位置Pbから空けるように設定される。
【0043】
以上により緩急調整された分岐走行軌道Xbとしての軌道Xbr,Xbfc,Xbfpは、
図3に示す調整ブロック140から、走行制御装置2へと入力される。走行制御装置2は、入力された軌道Xbr,Xbfc,Xbfpに従って、自車両3の少なくとも操舵を制御する。このときの制御処理は、外界センサ50による外界情報と、内界センサ52による内界情報とに基づき、実行される。
【0044】
ここまで説明した機能ブロック100,120,140の共同により、軌道生成装置1が軌道Xを生成する軌道生成方法のフローを、
図15に従って以下に説明する。尚、本フローは、本線4aからの分岐車線4bの分岐位置Pbが軌道生成区間内へ入ると、即ち自車両3の現在位置Ppから設定距離以下にまで分岐位置Pbが接近すると、開始される。また、本フローにおいて「S」とは、軌道生成プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、意味する。
【0045】
S100において制約ブロック100は、本線4aから分岐車線4bへの自車両3の進入に対して制約を与える制約条件を、抽出する。具体的に制約ブロック100は、本線4aから分岐車線4bへ進入する自車両3の進入限界位置Plを少なくとも含んで、制約条件を抽出する。このとき制約ブロック100は、走行制限位置Plrと障害存在位置Ploとのうち、自車両3の現在位置Ppに近い一方に進入限界位置Plを設定する。
【0046】
S101において判定ブロック120は、分岐車線4bにおける他車両6の存在有無を判定する。その結果、分岐車線4bにおける他車両6の存在無判定が下された場合、即ち続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定が下された場合には、本フローがS103へ移行する。一方、分岐車線4bにおける他車両6の存在有判定が下された場合、即ち接続車線4bc又は並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定が下された場合には、本フローがS102へ移行する。
【0047】
S102において判定ブロック120は、他車両6の存在有判定が下された分岐車線4bが接続車線4bc及び並行車線4bpのいずれであるかを、判定する。このとき判定ブロック120は、他車両6の後端が移行位置Pmを到達又は超過したか否かにより、他車両6の存在する分岐車線4bが接続車線4bcから並行車線4bpへ移行したか否かを、判断してもよい。こうした結果、他車両6の存在有判定が下された分岐車線4bが接続車線4bcである場合には、本フローがS104へ移行する。一方、他車両6の存在有判定が下された分岐車線4bが並行車線4bpである場合には、本フローがS105へ移行する。
【0048】
S103,S104,S105により調整ブロック140は、生成する分岐走行軌道Xbの緩急を、S101,S102による存在有無の判定結果に応じて、調整する。具体的にS103において調整ブロック140は、分岐車線4bにおける自車両3を他車両6への追従から解放するための分岐走行軌道Xbとして、分岐解放軌道Xbrを生成する。一方、S104において調整ブロック140は、分岐車線4bのうち接続車線4bcにおける他車両6に自車両3を追従させるための分岐走行軌道Xbとして、分岐追従軌道Xbfのうち接続追従軌道Xbfcを生成する。また一方、S105において調整ブロック140は、分岐車線4bのうち並行車線4bpにおける他車両6に自車両3を追従させるための分岐走行軌道Xbとして、分岐追従軌道Xbfのうち並行追従軌道Xbfpを生成する。
【0049】
S103,S104,S105による分岐走行軌道Xbの緩急調整に当たって調整ブロック140は、完了位置Pe、曲率C、方位角θ、最大遠心加速度α及び時間変化率Rのうち、少なくとも一種類を軌道Xbr,Xbfc,Xbfpの生成に利用する。このとき調整ブロック140は、S100により抽出された進入限界位置Plを含む制約条件を、軌道Xbr,Xbfc,Xbfpに対して与えることになる。
【0050】
以上により、S103において調整ブロック140は、接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpの双方よりも緩やか(即ち、滑らか)に変化する分岐解放軌道Xbrを、生成する。一方、S104において調整ブロック140は、接続追従軌道Xbfcよりも緩やか且つ分岐解放軌道Xbrよりも急に変化する並行追従軌道Xbfpを、生成する。また一方、S105において調整ブロック140は、並行追従軌道Xbfp及び分岐解放軌道Xbrよりも急に変化する接続追従軌道Xbfcを、生成する。こうして軌道Xbr,Xbfc,Xbfpの生成が完了すると、本フローは終了する。
【0051】
このように本実施形態では、判定ブロック120が「判定部」に相当し、調整ブロック140が「調整部」に相当する。また本実施形態では、S101,S102が「判定プロセス」に相当し、S103,S104,S105が「調整プロセス」に相当する。
【0052】
(作用効果)
ここまで説明した本実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0053】
本実施形態によると、本線4aから分岐車線4bへ向かう自車両3の分岐走行軌道Xbとして、分岐追従軌道Xbf及び分岐解放軌道Xbrは、分岐車線4bにおける他車両6の存在有無の判定結果に応じて緩急を調整される。このとき、分岐車線4bにおける他車両6の存在有判定が下される走行シーンでは、分岐追従軌道Xbfにより自車両3が他車両6への追従を優先されることになるので、分岐車線4bにおける他車両6への走行干渉を抑制することができる。一方、分岐車線4bにおける他車両6の存在無判定が下される走行シーンでは、他車両6への追従から自車両3が解放されることで、分岐追従軌道Xbfよりも緩やかに自車両3を案内する分岐解放軌道Xbrの横方向変化は、小さくなる。このように小さな横方向変化は、自車両3の挙動における横加速度又はヨーレートの発生を抑制することができる。以上によれば、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbを、生成することが可能となる。
【0054】
本実施形態によると、分岐車線4bのうち、本線4aから並行車線4bpまで接続の接続車線4bcにおける他車両6の存在有判定が下される走行シーンでは、分岐追従軌道Xbfとしての接続追従軌道Xbfcにより自車両3が他車両6への追従を優先される。故に、接続車線4bcにおける他車両6への走行干渉を抑制することができる。また一方、接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定が下される走行シーンでは、他車両6への追従から自車両3が解放されることで、接続追従軌道Xbfcよりも緩やかに自車両3を案内する分岐解放軌道Xbrの横方向変化は、小さくなる。このように小さな横方向変化は、自車両3の挙動における横加速度又はヨーレートの発生を抑制することができる。以上によれば、接続車線4bcにおける他車両6の存在有無の判定結果が異なる走行シーン毎に、それぞれ適した分岐走行軌道Xbの生成が可能となる。
【0055】
本実施形態によると、接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定且つ並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定が下される走行シーンでは、接続追従軌道Xbfcよりも緩やかに自車両3を案内して他車両6に追従させる並行追従軌道Xbfpの横方向変化が、接続追従軌道Xbfcよりは小さくなる。これにより並行追従軌道Xbfpは、並行車線4bpにおける他車両6への走行干渉抑制と、接続車線4bcにおける横加速度又はヨーレートの発生抑制とを、トレードオフして達成することができる。以上によれば、接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在有無の判定結果が異なる走行シーン毎に、それぞれ適した分岐走行軌道Xbの生成が可能となる。
【0056】
本実施形態による分岐解放軌道Xbrは、並行追従軌道Xbfpよりも緩やかに自車両3を分岐車線4bへと案内する。これにより、分岐解放軌道Xbrよりは自車両3の案内が急となる並行追従軌道Xbfpは、可及的に小さな横方向変化であっても、他車両6に対する自車両3の追従信頼性が高くなる。故に並行追従軌道Xbfpは、接続車線4bcにおける横加速度又はヨーレートの発生抑制下でも、並行車線4bpにおける他車両6への走行干渉抑制効果を高めることができる。以上によれば、接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在有無の判定結果が異なる走行シーン毎に、それぞれ最適化した分岐走行軌道Xbの生成が可能となる。
【0057】
本実施形態によると、分岐車線4bへの自車両3の車線変更が完了する完了位置Peは、接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在無判定が下される走行シーンでの並行車線4bpにおいて本線4aに並行する走行を自車両3が開始する位置Pdを、含む。また完了位置Peは、接続車線4bcにおける他車両6の存在有判定が下される走行シーンにおいて接続車線4bcが並行車線4bpへ移行する位置Pmを、含む。さらにまた完了位置Peは、接続車線4bcにおける他車両6の存在無判定且つ並行車線4bpにおける他車両6の存在有判定が下される走行シーンでの並行車線4bpにおいて他車両6への追従を自車両3が開始する位置Psを、含む。これらのことから分岐走行軌道Xbには、走行シーン毎の完了位置Peにより、それぞれの走行シーンに合わせた緩急を適正に与えることができる。故に、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbの生成を、担保することが可能である。
【0058】
本実施形態による分岐走行軌道Xbには、分岐車線4bへ進入する自車両3が描くカーブの曲率Cにより、走行シーンに合わせた緩急を適正に与えることができる。故に、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbの生成を、担保することが可能である。
【0059】
本実施形態による分岐走行軌道Xbには、分岐車線4bへ進入する自車両3の進入方向Dbが本線4aの車線方向Daに対してなす方位角θにより、走行シーンに合わせた緩急を適正に与えることができる。故に、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbの生成を、担保することが可能である。
【0060】
本実施形態による分岐走行軌道Xbには、分岐車線4bへ進入する自車両3に生じる最大遠心加速度αにより、走行シーンに合わせた緩急を適正に与えることができる。故に、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbの生成を、担保することが可能である。
【0061】
本実施形態による分岐走行軌道Xbには、分岐車線4bへ進入する自車両3に生じる最大遠心加速度αの時間変化率Rにより、走行シーンに合わせた緩急を適正に与えることができる。故に、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbの生成を、担保することが可能である。
【0062】
本実施形態による分岐走行軌道Xbは、分岐車線4bへ進入する自車両3の進入限界位置Plを制約条件として与えられた上で、緩急を調整される。これによれば、自車両3の走行シーンに適した分岐走行軌道Xbに対する信頼度を、高めることが可能となる。
【0063】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0064】
変形例において軌道生成装置1を構成する専用コンピュータは、自車両3との間にて通信可能な少なくとも一つの外部センターコンピュータであってもよい。変形例において軌道生成装置1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして含んでいてもよい。ここでデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0065】
変形例において制約ブロック100によるS100は、省略されてもよい。変形例において判定ブロック120によるS101,S102は、判定対象の接続車線4bc及び並行車線4bpにおける他車両6の存在有無の判定を、他車両6の走行速度に加えて又は代えて、例えば自車両3及び他車両6の将来位置等に基づき実行してもよい。
【0066】
変形例において判定ブロック120によるS101では、並行車線4bp及び接続車線4bcが区別されずに、分岐車線4bにおける他車両6の存在有無が判定されてもよい。この変形例において判定ブロック120によるS102は、
図16に示すように省略されてもよい。また、この変形例において調整ブロック140によるS104,S105は、
図16に示すS107により代替されてもよい。ここで変形例のS107において調整ブロック140は、分岐解放軌道Xbrよりも急変化する分岐追従軌道Xbfを、生成する。したがって、この変形例のS103において調整ブロック140は、分岐追従軌道Xbfよりも緩やか(即ち、滑らか)に変化する分岐解放軌道Xbrを、生成することとなる。
【0067】
変形例において調整ブロック140によるS103,S104,S105では、
図17に示すように分岐走行軌道Xbとして、軌道Xbr,Xbfc,Xbfpの複数候補が生成されてから、走行シーンに合わせた一本の軌道Xbr,Xbfc,Xbfpが選択されてもよい。尚、
図17は、分岐解放軌道Xbrの場合に、複数候補を細実線、選択される一本を太実線により、それぞれ例示している。変形例において調整ブロック140によるS103,S105では、分岐解放軌道Xbr及び並行追従軌道Xbfpの緩急が実質同じに調整されてもよい。変形例において調整ブロック140によるS104,S105では、接続追従軌道Xbfc及び並行追従軌道Xbfpの緩急が実質同じに調整されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:軌道生成装置、3:自車両、4a:本線、4b:分岐車線、4bc:接続車線、4bp:並行車線、6:他車両、10:メモリ、12:プロセッサ、120:判定ブロック、140:調整ブロック、α:最大遠心加速度、θ:方位角、C:曲率、Pd:走行開始位置、Pe:完了位置、Pl:進入限界位置、Pm:移行位置、Ps:追従開始位置、R:時間変化率、X:軌道、Xb:分岐走行軌道、Xbf:分岐追従軌道、Xbfc:接続追従軌道、Xbfp:並行追従軌道、Xbr:分岐解放軌道