IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-フェーダ装置 図1
  • 特許-フェーダ装置 図2
  • 特許-フェーダ装置 図3
  • 特許-フェーダ装置 図4
  • 特許-フェーダ装置 図5
  • 特許-フェーダ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】フェーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 15/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01H15/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020017348
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021125345
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】夏目 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳博
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173946(JP,A)
【文献】特開2008-226589(JP,A)
【文献】特開2017-174768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 15/00 - 15/24
H01H 36/00 - 36/02
H05F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のシャフトと、
前記シャフトに対して隙間を介して配されると共に前記シャフトの長手方向に移動可能とされた導電性の移動体と、
導電性を有し、前記シャフトと前記移動体とを導通させる導電部と、を備え
前記導電部が、前記シャフトと前記移動体との間に介在し、
前記導電部は、前記移動体に設けられる導電性ブッシュであるフェーダ装置。
【請求項2】
タッチセンス信号を生成する信号生成部と、前記タッチセンス信号に対して前記シャフトと前記移動体との間に生じる静電容量に応じて出力される信号に基づいて前記移動体への接触の有無を検出する検出部と、を備える請求項1に記載のフェーダ装置。
【請求項3】
導電性のシャフトと、
前記シャフトに対して隙間を介して配されると共に前記シャフトの長手方向に移動可能とされた導電性の移動体と、
導電性を有し、前記シャフトと前記移動体とを導通させる導電部と、を備え
タッチセンス信号を生成する信号生成部と、前記タッチセンス信号に対して前記シャフトと前記移動体との間に生じる静電容量に応じて出力される信号に基づいて前記移動体への接触の有無を検出する検出部と、を備えるフェーダ装置。
【請求項4】
前記導電部が、前記シャフトと前記移動体との間に介在する請求項3に記載のフェーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電性を有するシャフト(ガイドバー)と、導電性を有し、シャフトに対してその長手方向に移動可能に設けられた移動体と、を備えるフェーダ装置(スライド操作装置)が開示されている。特許文献1のフェーダ装置では、シャフトと移動体との間に絶縁部材を設けることで、シャフトと移動体との間に隙間(ギャップ)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4301311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電性を有するシャフトと移動体との間に隙間がある場合には、シャフトと移動体との隙間に静電気などに基づく放電(スパーク)が発生することがある。このような放電が発生すると、シャフト及び移動体の周囲には電界や磁界が発生する。発生した電界や磁界は、フェーダ装置やこれを含む各種機器の電気回路に影響を与える可能性がある。特に、発生した磁界は逃がすことが難しいため、電気回路に影響を与えやすい。このため、シャフトと移動体との隙間における放電の発生を抑制することが求められている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、シャフトと移動体との隙間に放電が発生することを抑制できるフェーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、導電性のシャフトと、前記シャフトに対して隙間を介して配されると共に前記シャフトの長手方向に移動可能とされた導電性の移動体と、導電性を有し、前記シャフトと前記移動体とを導通させる導電部と、を備え、前記導電部が、前記シャフトと前記移動体との間に介在し、前記導電部は、前記移動体に設けられる導電性ブッシュであるフェーダ装置である。
本発明の他の態様は、導電性のシャフトと、前記シャフトに対して隙間を介して配されると共に前記シャフトの長手方向に移動可能とされた導電性の移動体と、導電性を有し、前記シャフトと前記移動体とを導通させる導電部と、を備え、タッチセンス信号を生成する信号生成部と、前記タッチセンス信号に対して前記シャフトと前記移動体との間に生じる静電容量に応じて出力される信号に基づいて前記移動体への接触の有無を検出する検出部と、を備えるフェーダ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シャフトと移動体との隙間に放電が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るフェーダ装置を示す斜視図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3図1,2のフェーダ装置においてシャフト、移動体及び導電部を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るフェーダ装置のタッチセンサーを示すブロック図である。
図5図3の変形例を示す断面図である。
図6図3の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~4を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1~3に示すように、本実施形態に係るフェーダ装置1は、シャフト2と、移動体3と、導電部4と、を備える。
【0010】
シャフト2は、導電性を有する棒状に形成されている。本実施形態のフェーダ装置1は、シャフト2を複数(図示例では二つ)備える。複数のシャフト2は、互いに間隔をあけた状態で互いに平行するように配置されている。
【0011】
移動体3は、導電性を有し、シャフト2に対して隙間Gを介して配される。また、移動体3は、シャフト2に対してその長手方向に移動可能とされている。本実施形態の移動体3は、本体部31と、本体部31から延びる操作部32と、を有する。
【0012】
本体部31には、シャフト2を挿通させるための貫通孔33が形成されている。本実施形態の本体部31は、貫通孔33を複数(図示例では二つ)有する。複数の貫通孔33は、互いに平行している。複数の貫通孔33には、前述した複数のシャフト2が個別に挿通される。これにより、移動体3がシャフト2に対してその長手方向に移動可能となる。図3に示すように、シャフト2と移動体3との隙間Gは、シャフト2の外周面と本体部31の貫通孔33の内周面との間に形成される。
図1,2に示す操作部32は、移動体3を操作者の手指で移動させるために、操作者が手指で触れる部分である。操作部32は、本体部31に対してシャフト2の長手方向に直交する方向に延びている。
【0013】
図3に示す導電部4は、導電性を有し、シャフト2と移動体3とを導通させる。導電部4は、シャフト2と移動体3とに常に接触する。これにより、シャフト2と移動体3とが常に導通する。
導電部4は、シャフト2と移動体3との間に介在する。具体的に、導電部4は、シャフト2の外周面と移動体3の貫通孔33の内周面との間に介在する。これにより、シャフト2の外周面と貫通孔33の内周面との間に隙間Gが形成される。
【0014】
本実施形態における導電部4は、移動体3に設けられるリング状の導電性ブッシュ41である。具体的に、導電性ブッシュ41は、貫通孔33の内周面に取り付けられる。導電性ブッシュ41は、貫通孔33(シャフト2)の長手方向に間隔をあけて複数(図示例では二つ)配列されている。図3では、導電性ブッシュ41が長手方向における貫通孔33の両端部に二つ設けられているが、これに限ることはない。複数の導電性ブッシュ41により、シャフト2と移動体3との隙間Gの間隔dを一定に保つことができる。
【0015】
導電性を有するシャフト2と移動体3とが隙間Gを介して配されることで、シャフト2と移動体3とが容量結合されている。シャフト2と移動体3との間の静電容量は、シャフト2と移動体3との隙間Gにおける空気の誘電率、シャフト2と移動体3との間に介在する導電性ブッシュ41(導電部4)の誘電率、シャフト2と移動体3との間隔dなどによって決まる。
【0016】
図1,2に示すように、本実施形態のフェーダ装置1は、位置検出部5と、箱体6と、駆動部7と、をさらに備える。
【0017】
位置検出部5は、シャフト2の長手方向における移動体3の位置を検出する。位置検出部5は、シャフト2に固定されたセンサー基板51と、移動体3に固定されたヘッダー基板52と、を有する。センサー基板51は、箱体6を介してシャフト2に固定される。センサー基板51とヘッダー基板52とは、シャフト2の長手方向に直交する方向に互いに間隔をあけて配される。ヘッダー基板52が移動体3と共にシャフト2の長手方向に移動することで、センサー基板51がシャフト2の長手方向におけるヘッダー基板52(移動体3)の位置を検出する。ヘッダー基板52の位置検出は、例えばセンサー基板51とヘッダー基板52との容量結合を利用してよい。
【0018】
箱体6は、シャフト2及び移動体3を収容する。シャフト2の長手方向の両端部は、箱体6の壁部によって支持されている。箱体6には、シャフト2の長手方向に延びる開口61が形成されている。移動体3の操作部32は、箱体6の開口61を通して箱体6の外側に突出する。箱体6は、例えば導電性を有し、グランドに接続されてよい。
【0019】
駆動部7は、移動体3をモータ71の駆動力によって移動させる。駆動部7は、モータ71の他に、フレーム部72と、駆動プーリ73と、従動プーリ74と、無端ベルト75と、取付部76と、を有する。
フレーム部72は、シャフト2の長手方向に延びる長尺状に形成され、箱体6の開口61を塞ぐように設けられる。フレーム部72には、シャフト2の長手方向に延びて移動体3の操作部32を通すスリット77が形成されている。モータ71、駆動プーリ73及び従動プーリ74は、フレーム部72に取り付けられている。モータ71及び駆動プーリ73は、フレーム部72の長手方向の第一端部に配置されている。駆動プーリ73は、モータ71の回転軸(不図示)に取り付けられている。従動プーリ74は、フレーム部72の長手方向の第二端部に配置されている。無端ベルト75は、駆動プーリ73と従動プーリ74とに巻き回されている。取付部76は、無端ベルト75の周方向の一部に固定されている。取付部76には、移動体3の操作部32が取り付けられている。
【0020】
駆動部7では、モータ71の駆動力によって駆動プーリ73が回転することで、無端ベルト75が駆動プーリ73と従動プーリ74との間で動く。これにより、無端ベルト75に取り付けられた移動体3がシャフト2の長手方向に移動することができる。
【0021】
また、本実施形態のフェーダ装置1は、図4に示すように、操作者の手指の移動体3(操作部32)への接触の有無を検出するタッチセンサー8を備える。タッチセンサー8は、信号生成部81と、検出部82と、を備える。
信号生成部81は、タッチセンス信号を生成する。タッチセンス信号は、例えば所定の時間間隔で生成されるパルス信号である。信号生成部81は、タッチセンス信号を検出部82に出力する。検出部82は、タッチセンス信号に対してシャフト2と移動体3との間に生じる静電容量に応じて出力される信号に基づいて、移動体3への接触の有無を検出する。
【0022】
操作者の手指が移動体3に触れた場合には、移動体3が操作者(人体)を通してグランドに結合するため、操作者が移動体3に触れていない状態に対し、シャフト2と移動体3との間に生じる静電容量が変化する。これに応じて、タッチセンス信号に対して出力される信号にも変化が生じる。これにより、検出部82は移動体3に対する操作者の接触の有無を検出することができる。
【0023】
本実施形態のフェーダ装置1は、操作者やモータ71により移動体3を移動させることで、ボリュームやトーン等などの各種パラメータを調整したり、各種パラメータの調整を視覚化したりする装置として利用可能である。
【0024】
以上説明したように、本実施形態のフェーダ装置1では、互いに隙間Gを介して配されるシャフト2及び移動体3が導電部4によって導通している。これにより、移動体とこれに触れる操作者との間に静電気などに基づく放電が発生する等してシャフト2と移動体3との間に電位差が生じても、シャフト2と移動体3との隙間Gに放電が発生することを抑制できる。
【0025】
また、本実施形態のフェーダ装置1では、導電部4がシャフト2と移動体3との間に介在している。このため、導電部4によって移動体3とシャフト2との間に隙間Gを形成することができる。これにより、移動体3とシャフト2との間に隙間Gを形成するための部材を別途用意する必要がなくなる。したがって、フェーダ装置1の構成部品点数を削減して、フェーダ装置1の構成の簡素化を図ることができる。
【0026】
また、本実施形態のフェーダ装置1では、導電部4が移動体3に設けられた導電性ブッシュ41である。導電性ブッシュ41は、移動体3の貫通孔33の内周面の周方向全体、及び、シャフト2の外周面の周方向全体にそれぞれ接触する。このため、シャフト2と導電部4との接触面積、及び、移動体3と導電部4との接触面積を大きくして、シャフト2と移動体3との導通をより確実に保障することができる。したがって、シャフト2と移動体3との隙間Gに放電が発生することをよりよく抑えることができる。
【0027】
また、本実施形態のフェーダ装置1では、検出部82が、信号生成部81で生成されたタッチセンス信号に対してシャフト2と移動体3との間に生じる静電容量に応じて出力される信号に基づいて移動体3(操作部32)への接触の有無を検出する。これにより、シャフト2と移動体3との隙間Gを利用して、操作者が移動体3に触れているか否かを検出することができる。
【0028】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0029】
本発明のフェーダ装置において、シャフト2と移動体3との間に介在する導電部4は、導電性ブッシュ41に限らず、例えば図5に示すように、移動体3に形成され、移動体3の貫通孔33の内周面からシャフト2の外周面に向けて突出する突起42であってもよい。移動体3に形成される突起42は、例えば貫通孔33の周方向に延びる円弧状又はリング状に形成されてもよいし、シャフト2の長手方向に延びる線状に形成されてもよい。また、突起42は、貫通孔33の周方向やシャフト2の長手方向に互いに間隔をあけて複数配列されてもよい。
【0030】
なお、突起42は、例えばシャフト2に形成され、シャフト2の外周面から移動体3の貫通孔33の内周面に向けて突出してもよい。この場合、突起42は、シャフト2の長手方向に延びる線状に形成されてもよいし、シャフト2の周方向や長手方向に互いに間隔をあけて複数配列されてもよい。
【0031】
本発明のフェーダ装置において、シャフト2と移動体3とを導通させる導電部4は、例えば図6に示すように、シャフト2と移動体3とを接続する電気配線43であってもよい。電気配線43の第一端は長手方向におけるシャフト2の端部に固定され、電気配線43の第二端は移動体3に固定される。電気配線43は、移動体3をシャフト2に対してその長手方向に自在に移動できるように、十分な長さ及び可撓性を有するとよい。図6に示す構成においては、例えばシャフト2と移動体3との間に絶縁性ブッシュなどの絶縁体を介在させることで、シャフト2と移動体3との間に隙間Gを形成してよい。
【0032】
本発明のフェーダ装置では、例えばシャフト2のうち移動体3に対向する外周面が、電気的な絶縁性を有する絶縁体によって構成されてもよい。絶縁体は、例えばシャフト2全体を構成してもよいし、例えば導電性のシャフト本体の外周面を覆う絶縁層であってもよい。このような構成では、シャフト2と移動体3とが隙間Gを介して配されても、シャフト2と移動体3とが絶縁体によって電気的に絶縁される。これにより、フェーダ装置が導電部4を備えなくても、シャフト2と移動体3との隙間Gに放電が発生することを抑制又は防止することができる。
【0033】
本発明のフェーダ装置では、例えば導電性を有するシャフト2と移動体3とが隙間Gを介して配され、シャフト2と移動体3との間隔dが0.4mm以上かつ1.0mm以下であってもよい。シャフト2と移動体3との間隔dが0.4mm以上であることで、フェーダ装置が導電部4を備えなくても、シャフト2と移動体3との隙間Gに放電が発生することを抑制又は防止することができる。また、シャフト2と移動体3との間隔dが1.0mm以下であることで、シャフト2と移動体3とを容量結合することができる。これにより、シャフト2と移動体3との隙間Gを上記実施形態と同様のタッチセンサー8に利用して、操作者が移動体3に触れているか否かを検出することができる。
【0034】
本発明のフェーダ装置では、例えばシャフト2がグランド(例えば箱体6)に直接接続されていてもよい。このような構成では、シャフト2が電気抵抗を有する電気配線を介してグランドに接続される場合と比較して、シャフト2と移動体3との隙間Gに放電が発生することを抑制又は防止することができる。
【0035】
本発明のフェーダ装置において、移動体3は、少なくともシャフト2に対してその長手方向に移動可能とされればよい。このため、移動体3には、貫通孔33が形成される代わりに、例えばシャフト2の少なくとも一部が入り込む溝が形成されてもよい。この場合、移動体3の溝の内面とシャフト2との間に、隙間が形成されればよい。
【符号の説明】
【0036】
1…フェーダ装置、2…シャフト、3…移動体、4…導電部、41…導電性ブッシュ、81…信号生成部、82…検出部、G…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6