IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-商品収納装置 図1
  • 特許-商品収納装置 図2
  • 特許-商品収納装置 図3
  • 特許-商品収納装置 図4
  • 特許-商品収納装置 図5
  • 特許-商品収納装置 図6
  • 特許-商品収納装置 図7
  • 特許-商品収納装置 図8
  • 特許-商品収納装置 図9
  • 特許-商品収納装置 図10
  • 特許-商品収納装置 図11
  • 特許-商品収納装置 図12
  • 特許-商品収納装置 図13
  • 特許-商品収納装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】商品収納装置
(51)【国際特許分類】
   G07F 9/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G07F9/00 109C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020017974
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124954
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】市原 史基
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-176497(JP,A)
【文献】実開昭54-007699(JP,U)
【文献】実開昭54-078595(JP,U)
【文献】特開2008-129747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/00-11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の前面に形成された商品取出口の上縁部に前後方向に沿って揺動可能に軸支され、かつ後方に向けて揺動する場合に前記商品取出口を開成させる一方、前方に向けて揺動する場合に前記商品取出口を閉成させる商品取出扉と、
前記装置本体の内部に上下方向に沿って複数段設けられ、かつそれぞれが前後方向に沿って商品を収納する複数の商品ラックと、
前記複数の商品ラックの前方域において搬送機構により上下方向に沿って移動可能に設けられた搬送トレイと
を備え、
前記搬送トレイは、該当する商品を収納する商品ラックの前方域に移動して該商品ラックより商品を受容した後、前記商品取出口より該商品が取り出されることを許容する商品取出位置まで移動する商品収納装置であって、
前記搬送トレイの移動経路における前記商品取出口の後方側領域に自身の一部である突部が進出した進出姿勢と、前記突部が前記後方側領域から退行した退行姿勢との間で前記装置本体の内部に揺動可能に設けられた防盗部材を備え、
前記防盗部材は、前記搬送トレイが前記商品取出位置に配置される場合には、前記進出姿勢となる一方、前記搬送トレイが前記商品取出位置から上方に向けて移動する場合には、前記進出姿勢から前記退行姿勢に揺動することを特徴とする商品収納装置。
【請求項2】
前記防盗部材は、前記進出姿勢となる場合には重心が揺動軸の近傍にある一方、前記退行姿勢となる場合には重心が揺動軸よりも後方側上方域にある態様で設けられたバランスウエイトを備えたことを特徴とする請求項1に記載の商品収納装置。
【請求項3】
前記防盗部材は、前記進出姿勢となる場合、前記突部が前記商品取出扉の後方への揺動軌跡から離隔していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の商品収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品収納装置に関し、より詳細には、商品を収納するとともに該商品の販売を行う自動販売機等の商品収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商品の販売を行う自動販売機には、自動販売機本体の内部における収納室の商品ラックに収納された商品を搬送トレイに繰り出した後、搬送トレイによって搬送して所定の商品取出領域に払い出すようにしたものがある。商品取出領域は、商品取出口を介して収納室の外部に連通された空間であり、利用者が商品取出口から手を差し入れれば、購入した商品の取り出しが可能である。
【0003】
通常、この種の自動販売機では、前面を構成する扉体がガラス等の透明な面板によって構成されており、収納室の商品ラックに収納された商品を外部から視認して選択することが可能であり、更に、商品ラックから繰り出された購入商品が搬送トレイによって商品取出領域まで搬送される状態を観察することができる。このように収納室の内部が視認可能な自動販売機によれば、利用者の購買意欲を高めることができる等の利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記自動販売機では、搬送トレイによって搬送した商品を商品取出領域に払い出すようにしていたので、商品によっては損傷等のダメージを受ける虞れがあった。
【0005】
そこで、商品ラックから繰り出された商品を受容した搬送トレイが、商品を載置したまま商品取出位置まで移動し、商品取出口を通じて搬送トレイに載置された商品を取り出すことができる自動販売機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-16834号公報
【文献】特開2015-45947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2に提案されている自動販売機では、商品ラックに収納された商品の多様化や商品の収納数の向上等から、商品取出口の開口面積の拡大化が要請されるともに、最下段の商品ラックが商品取出口に近接する個所に設置される低床化が要請され、搬送トレイが待機状態の時に商品取出位置に配置されていた。
【0008】
そのため、上記自動販売機では、商品取出口を開閉する商品取出扉が該商品取出口を開成する場合には、該商品取出扉の開移動に応じて自動販売機本体の内方に向けて揺動する防盗板が設けられることにより、悪意をもった者が商品取出口から腕等を侵入させて商品ラックの商品を取り出すことを防止していた。
【0009】
しかしながら、上記自動販売機では、防盗板が、商品取出扉の開移動に連動して揺動するので、商品取出扉を開移動させるのに要する力が過大なものとなり、利用者による商品の取り出しを阻害していた。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、利用者による商品の取り出しを阻害することなく、商品の防盗性を確保することができる商品収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る商品収納装置は、装置本体の前面に形成された商品取出口の上縁部に前後方向に沿って揺動可能に軸支され、かつ後方に向けて揺動する場合に前記商品取出口を開成させる一方、前方に向けて揺動する場合に前記商品取出口を閉成させる商品取出扉と、前記装置本体の内部に上下方向に沿って複数段設けられ、かつそれぞれが前後方向に沿って商品を収納する複数の商品ラックと、前記複数の商品ラックの前方域において搬送機構により上下方向に沿って移動可能に設けられた搬送トレイとを備え、前記搬送トレイは、該当する商品を収納する商品ラックの前方域に移動して該商品ラックより商品を受容した後、前記商品取出口より該商品が取り出されることを許容する商品取出位置まで移動する商品収納装置であって、前記搬送トレイの移動経路における前記商品取出口の後方側領域に自身の一部である突部が進出した進出姿勢と、前記突部が前記後方側領域から退行した退行姿勢との間で前記装置本体の内部に揺動可能に設けられた防盗部材を備え、前記防盗部材は、前記搬送トレイが前記商品取出位置に配置される場合には、前記進出姿勢となる一方、前記搬送トレイが前記商品取出位置から上方に向けて移動する場合には、前記進出姿勢から前記退行姿勢に揺動することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記商品収納装置において、前記防盗部材は、前記進出姿勢となる場合には重心が揺動軸の近傍にある一方、前記退行姿勢となる場合には重心が揺動軸よりも後方側上方域にある態様で設けられたバランスウエイトを備えたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記商品収納装置において、前記防盗部材は、前記進出姿勢となる場合、前記突部が前記商品取出扉の後方への揺動軌跡から離隔していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送トレイの移動経路における商品取出口の後方側領域に自身の一部である突部が進出した進出姿勢と、突部が後方側領域から退行した退行姿勢との間で装置本体の内部に揺動可能に設けられた防盗部材を備え、防盗部材が、搬送トレイが商品取出位置に配置される場合には、進出姿勢となる一方、搬送トレイが商品取出位置から上方に向けて移動する場合には、進出姿勢から退行姿勢に揺動するので、搬送トレイが商品取出位置に配置される場合に、防盗部材の突部が後方側領域に進出して商品取出口から侵入された腕等により商品ラックに載置された商品が取り出されることを抑制できる。しかも、防盗部材は搬送トレイの移動によって進出姿勢と退行姿勢との間で揺動するので、商品取出扉の動作により連動しない。よって、利用者による商品の取り出しを阻害することなく、商品の防盗性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態である商品収納装置の外観構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態である商品収納装置の内部構造を模式的に示す断面右側面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態である商品収納装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。
図4図4は、図1及び図2に示した商品取出扉を示す斜視図である。
図5図5は、図2に示した搬送トレイを示す斜視図である。
図6図6は、図2に示した防盗部材を示す斜視図である。
図7図7は、図2に示した防盗部材を示す斜視図である。
図8図8は、図2に示した防盗部材を示す右側面図である。
図9図9は、搬送トレイが商品取出位置に配置された待機状態における防盗部材を示す断面側面図である。
図10図10は、搬送トレイが商品取出位置に配置された待機状態における商品取出扉の動作を示す断面側面図である。
図11図11は、搬送トレイが商品取出位置に配置された待機状態における商品取出扉の動作を示す断面側面図である。
図12図12は、搬送トレイが商品取出位置から上方へ移動する場合の防盗部材を示す断面側面図である。
図13図13は、搬送トレイが商品取出位置から上方へ移動する場合の防盗部材を示す断面側面図である。
図14図14は、防盗部材を構成する前端部の好ましい形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る商品収納装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1図3は、それぞれ本発明の実施の形態である商品収納装置を示すものであり、図1は、商品収納装置の外観構成を示す斜視図であり、図2は、商品収納装置の内部構造を模式的に示す断面右側面図であり、図3は、商品収納装置の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。ここで例示する商品収納装置は、例えば店舗等に設置される自動販売機1であり、本体キャビネット10を備えている。
【0018】
本体キャビネット10は、前面に開口(以下、前面開口ともいう)11を有した直方状の筐体であり、断熱仕切壁部12を介して収納室10aと収容室10bとに区画されている。収納室10aは、断熱仕切壁部12の左方側に配置され、断熱材に囲繞されて断熱構造を有している。この収納室10aには、商品ラック13が上下方向に沿って複数段設けられている。これら商品ラック13は、収納室10aの両側に立設された図示せぬラック支持側板の間に、それぞれ架設されている。
【0019】
かかる商品ラック13は、それぞれ商品を前後方向に沿って収納する複数の商品コラム14が左右に並設されて構成されている。商品コラム14は、従来公知のものであり、前後方向に沿って延在するスパイラル14aの各ピッチ間に商品を拘束して、商品を収納するものである。尚、本実施の形態である商品収納装置を構成する商品コラム14は、スパイラル14aを備えるものであったが、本発明においては、商品コラムは、前後一対のプーリ間に無端状に張設された搬送ベルトの上方側水平延在部分に商品を載置して、商品を収納するものであってもよい。
【0020】
このような収納室10aの前方域は、前面扉20により開閉される。前面扉20は、前面開口11における収納室10aの前方域となる領域を閉塞するのに十分な大きさを有しており、本体キャビネット10の前方側の左側縁部に揺動可能に設けられている。この前面扉20は、断熱構造を有するものであり、外部より内部の視認を可能にする断熱性のガラス板21を備えているとともに、ガラス板21の下方部に矩形状の商品取出口22が形成されている。商品取出口22は、利用者が商品を取り出すための開口であり、商品取出扉23により開閉されるものである。
【0021】
商品取出扉23は、上端部分に取り付けられた取出扉軸部231が、前面扉20の商品取出口22の上縁部に架設されることで軸支されている。この商品取出扉23は、左右方向に沿って延在する取出扉軸部231の中心軸回りに揺動可能である。つまり、商品取出扉23は、商品取出口22の上縁部に前後方向に沿って揺動可能に軸支され、後方に向けて揺動する場合に商品取出口22を開成させる一方、前方に向けて揺動する場合に商品取出口22を閉成させるものである。
【0022】
そして、商品取出扉23は、図示せぬ付勢手段により前方に向けて付勢されており、常態においては商品取出口22を閉成している。この商品取出扉23には、図4に示すように、前方に向けて突出する膨出部232が形成されており、該膨出部232が商品取出口22を通じて前方に露出される態様で商品取出口22を閉成している。
【0023】
かかる商品取出扉23の下端部分には、防盗フラッパ24が軸支されている。防盗フラッパ24は、上端部分が商品取出扉23の下端部分にフラッパ用軸部241を介して設けられており、フラッパ用軸部241の中心軸回りに前後方向に沿って揺動可能である。この防盗フラッパ24は、図4に示す状態が最も後方に揺動した姿勢である。すなわち、防盗フラッパ24は、自身の上下方向の延在方向が、商品取出扉23の上下方向の延在方向と同一直線上となる姿勢が、最も後方に揺動した状態である。よって、防盗フラッパ24は、商品取出扉23が商品取出口22を閉成する姿勢に有る場合、該商品取出扉23よりも鉛直方向下向きに延在した姿勢となっている。
【0024】
上記収納室10aには、蒸発器15aが設けられている。蒸発器15aは、収納室10aの下方域に画成された機械室10cに配設された圧縮機15bや凝縮器15c等と冷媒を循環させる冷却ユニット15を構成しており、自身の図示せぬ冷媒通路を通過する冷媒と、自身の周囲を通過する収納室10aの内部の空気とを熱交換させて該空気を冷却させるものである。
【0025】
蒸発器15aの周囲で冷却された空気は、庫内送風ファンが16が駆動することにより、収納室10aの背面に設置された背面ダクト17の吸込口17aより通風路18に吸い込まれ、この通風路18を通過した後に各吹出口17bから吹き出されることにより、商品ラック13に収納された商品を冷却することになる。
【0026】
上記商品ラック13の前方域には、その両側に左右一対となる態様で搬送レール30が配設されており、これら搬送レール30間を搬送トレイ31が上下方向に沿って移動可能に設けられている。つまり、搬送レール30間には、搬送トレイ31を通過させるための移動経路32が形成されている。この移動経路32は、機械室10cの前方となる商品取出位置33まで延在している。ここで商品取出位置33は、搬送トレイ31により搬送された商品を、該搬送トレイ31に載置された状態のまま、商品取出口22を通じて利用者が取り出すことができる位置である。
【0027】
図5は、図2に示した搬送トレイ31の外観構成を示す斜視図である。ここで例示する搬送トレイ31は、複数の板金を適宜組み合わせることで形成されており、底部311、ガイド部312、規制片部313、側壁部314及びガイド側壁部315を備えて構成されている。
【0028】
底部311は、商品ラック13を構成する商品コラム14から払い出された商品を載置させるためのもので、縦断面がV字状を成している。この底部311は、第1底部構成要素311aと第2底部構成要素311bとを有している。第1底部構成要素311aは、商品ラック13に近接するに従って、すなわち後方に向かうに従って漸次下方に傾斜する部分である。第2底部構成要素311bは、第1底部構成要素311aの後端縁部より商品ラック13に近接するに従って、すなわち後方に向かうに従って漸次上方に傾斜する部分である。これら第1底部構成要素311aと第2底部構成要素311bとの境界部分には、複数の水抜き孔311cが形成されている。これら水抜き孔311cは、左右方向に沿って所定間隔毎に形成されている。
【0029】
ガイド部312は、底部311と同じ板金により構成されており、第2底部構成要素311bの後端縁部より商品ラック13に近接するに従って、すなわち後方に向かうに従って漸次上方に傾斜する部分である。このガイド部312は、水平面に対する傾斜角度が、第2底部構成要素311bの水平面に対する傾斜角度よりも大きくなる態様で形成されている。尚、これら底部311及びガイド部312においては、ビード加工が適宜施されている。
【0030】
規制片部313は、底部311やガイド部312とは異なる別の板金により構成されており、第1底部構成要素311aの前端縁部より上方に向かうに連れて漸次後方に傾斜する態様で延在する部分である。尚、かかる規制片部313を構成する板金のうち、上記水抜き孔311cの下方側となる領域には、該水抜き孔311cを通過した水を例えば毛管現象により吸引して蒸発させる図示せぬ蒸発シートが敷設されている。
【0031】
側壁部314は、底部311の左右両側部分を閉塞する態様で設けられた左右一対のものである。これら側壁部314には、それぞれ複数の検知孔314aが形成されている。
【0032】
ガイド側壁部315は、側壁部314とは異なる別の板金により構成されており、側壁部314の後方側部分よりも外側に設けられている。このガイド側壁部315の後端部分の内面には、上端部と下端部とにトレイローラ315aが回転可能に設けられている。
【0033】
収容室10bは、断熱仕切壁部12の右方側に配置されている。この収容室10bは、左右方向の長さが収納室10aの左右方向の長さよりも十分に小さい常温室である。
【0034】
この収容室10bの前方域は、補助扉40により開閉される。補助扉40は、前面開口11における収容室10bの前方域となる領域を閉塞するのに十分な大きさを有しており、本体キャビネット10の前方側の右側縁部に揺動可能に設けられている。この補助扉40は、本体キャビネット10及び前面扉20とともに装置本体を構成するものであり、その前面に、商品選択部41、硬貨投入口42、紙幣挿入口43、カードリーダ44、硬貨返却口45等が設けられている。
【0035】
商品選択部41は、押釦テンキーや表示器等を有しており、利用者が商品を選択するためのものである。硬貨投入口42は、硬貨を投入する開口である。紙幣挿入口43は、紙幣を挿入するための開口である。カードリーダ44は、いわゆる電子マネーと称される金額情報が格納された記録媒体が所定の通信可能領域に保持される場合に、該記録媒体との間で金銭に関するデータの送受信を行うものである。硬貨返却口45は、投入された硬貨の返却、あるいは釣銭等を返却するための開口である。
【0036】
そのような自動販売機1は、上記構成の他、図3に示したように、払出機構51、搬送機構52、扉ロック機構53、商品検出センサ54、金銭処理ユニット55及び制御部56を備えている。
【0037】
払出機構51は、商品ラック13を構成する商品コラム14毎に設けられており、払出モータ51aを備えている。払出モータ51aは、制御部56から与えられる指令に応じて駆動する駆動源である。これにより、払出機構51は、払出モータ51aが駆動する場合に、該当する商品コラム14のスパイラル14a等を回転させて最前の商品を前方側に払い出させるものである。
【0038】
搬送機構52は、搬送モータ52a及びトレイ検知部52bを備えている。搬送モータ52aは、制御部56から与えられる指令に応じて駆動する駆動源である。トレイ検知部52bは、搬送モータ52aの回転を検知するエンコーダ等により構成されるもので、搬送トレイ31の位置を検知するものである。これにより、搬送機構52は、搬送レール30の間で、搬送トレイ31を上下に移動させるものである。また搬送機構52は、待機状態において、搬送トレイ31を商品取出位置33に配置させるものである。
【0039】
扉ロック機構53は、商品取出口22の近傍に設けられている。この扉ロック機構53は、商品取出口22を閉成する商品取出扉23が閉となる状態を保持させて該商品取出扉23が後方に向けて揺動することを規制するロック状態と、該商品取出扉23が後方に向けて揺動することを許容する解除状態との間で択一的に切替可能なものである。かかる扉ロック機構53は、制御部56から与えられる指令に応じて、ロック状態と解除状態との切り替えを行うものである。
【0040】
商品検出センサ54は、例えば光センサ等のように発光部と受光部とを有して構成されるもので、商品取出位置33の左右両側部分に設けられている。この商品検出センサ54は、商品取出位置33まで移動した搬送トレイ31の検知孔314aを発光部からの光が通過して、該搬送トレイ31に商品が載置されているか否かを検出するもので、その検出結果を制御部56に与えるものである。
【0041】
金銭処理ユニット55は、収容室10bに収容されている。この金銭処理ユニット55は、いわゆるコインメックやビルバリデータと称される処理機を有し、硬貨投入口42から投入された硬貨の金銭処理や、紙幣挿入口43から挿入された紙幣の金銭処理を行うものである。また金銭処理ユニット55は、カードリーダ44で読み込まれた金額情報の減算処理等の金銭処理を行うものである。
【0042】
制御部56は、金銭処理ユニット55と同様に収容室10bに収容されている。この制御部56は、自動販売機1の各部と電気的に接続されており、同じく電気的に接続された記憶部56aに記憶されたプログラムやデータに従って、自動販売機1の販売動作等を統括的に制御するものである。
【0043】
尚、制御部56は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0044】
上記自動販売機1においては、図2に示したように、更に防盗部材60が設けられている。防盗部材60は、複数の板金等を適宜組み合わせることにより構成してあり、左右方向の長さが搬送トレイ31の左右方向の長さと同程度の大きさとなり、該左右方向が長手方向となる長尺状のものである。
【0045】
図6図8は、それぞれ図2に示した防盗部材60を示すものであり、図6及び図7は斜視図であり、図8は右側面図である。尚、図6図8では、防盗部材60を、図9に示すように搬送トレイ31が商品取出位置33に配置される場合の姿勢(後述する進出姿勢)で示しており、かかる姿勢で防盗部材60の各部について説明する。
【0046】
図6図8に示すように、防盗部材60は、基部61と、作用部62と、突部63とを備えて構成されている。基部61は、下方に向かうに連れて漸次後方に傾斜した平板状部分である。この基部61の後面には、軸取付片64及びバランスウエイト取付部65が設けられている。
【0047】
軸取付片64は、基部61の後面の中央部分に後方に突出する態様で設けられている。この軸取付片64には、左右方向に沿って軸用貫通孔64aが形成されており、この軸用貫通孔64aをロッド状の形態を成す防盗軸部66が貫通している。この防盗軸部66は、左右両端部が本体キャビネット10における収納室10aの左右の側壁に架設されている。
【0048】
バランスウエイト取付部65は、2つ設けられており、一方が基部61の後面の左側部分で他方が基部61の後面の右側部分に取り付けられている。これらバランスウエイト取付部65は、基部61の後面に沿って上方に向けて延在する取付基部651と、この取付基部651の上端縁部より基部61から後方に離脱する態様で途中で屈曲しながら上方に向かうに連れて後方に傾斜延在する被取付部652とを有している。取付基部651には、貫通孔651aが形成されており、かかる貫通孔651aを防盗軸部66が貫通している。被取付部652の延在端部には、バランスウエイト67が取り付けられている。
【0049】
作用部62は、基部61の下端部分より下方に向かうに連れて漸次前方に傾斜した平板状部分である。この作用部62の下端部分の前面には、クッション材62aが貼付されている。
【0050】
突部63は、前方傾斜延部631と、前端部632と、後方傾斜延部633と、後端部634とを有している。前方傾斜延部631は、基部61の上端部分より上方に向かうに連れて漸次前方に傾斜する態様で延在する部分である。前端部632は、前方傾斜延部631の延在端部より上方に向けて延在する部分である。後方傾斜延部633は、前端部632の延在端部である上端部分より後方に上方に向かうに連れて漸次後方に傾斜する態様で延在する部分である。後端部634は、後方傾斜延部633の延在端部より下方に向けて延在し、その延在端部の一部がバランスウエイト取付部65の被取付部652に接する部分である。
【0051】
そのような構成を有する防盗部材60は、防盗軸部66の中心軸(揺動軸)回りに揺動可能である。より詳細に説明すると、防盗部材60は、搬送トレイ31の移動経路32における商品取出口22の後方側領域34に突部63が進出した進出姿勢(図9に示す姿勢)と、突部63が後方側領域34から退行した退行姿勢(図2に示す姿勢)との間で本体キャビネット10の内部に揺動可能に設けられている。
【0052】
そして、防盗部材60は、バランスウエイト取付部65に取り付けられたバランスウエイト67により、進出姿勢となる場合には、重心が防盗軸部66の中心軸の近傍にあり、退行姿勢となる場合には、防盗軸部66の中心軸よりも後方側上方域にあるように調整されている。つまり、防盗部材60は、進出姿勢となる場合には重心が揺動軸の近傍となる一方、退行姿勢となる場合には重心が揺動軸よりも後方側上方域となる態様で設けられたバランスウエイト67を備えている。
【0053】
かかる防盗部材60は、搬送トレイ31が商品取出位置33に配置される場合、図9に示したように、下側のトレイローラ315aを介して作用部62が押圧されることにより、進出姿勢となる。防盗部材60が進出姿勢となる場合、突部63における前端部632の上端部分と、搬送トレイ31の第1底部構成要素311aと第2底部構成要素311bとの境界部分とは、例えば260mm~300mm程度離隔している。また突部63における前端部632の上端部分は、最下段の商品ラック13の前端分から例えば150mm~160mm程度離隔している。
【0054】
また防盗部材60は、進出姿勢となる場合、図10に示すように商品取出扉23が後方へ揺動して、図11に示すように商品取出扉23が最大開度状態になるとき、突部63が商品取出扉23から離隔している。つまり、防盗部材60は、進出姿勢となる場合、突部63が商品取出扉23の後方への揺動軌跡から離隔している。
【0055】
以上のような構成を有する自動販売機1においては、商品選択部41を通じて商品が選択されるとともに、金銭処理ユニット55を通じて適正に金銭処理がなされることで、制御部56が搬送モータ52aに指令を与えて搬送機構52を駆動させ、商品取出位置33に配置された搬送トレイ31を所定の商品ラック13の前方域に上方へ移動させる。この場合、図12に示すように、上方へ移動する搬送トレイ31の上側のトレイローラ315aに突部63が当接されて押圧されることで、防盗部材60は、図13に示すように、退行姿勢になる。このように防盗部材60が退行姿勢となる場合、バランスウエイト67により重心が揺動軸よりも後方側上方域にあるように調整されているので、防盗部材60は、退行姿勢を維持し続ける。尚、防盗部材60が退行姿勢になる場合、作用部62が、搬送トレイ31の移動経路32に進出している。
【0056】
制御部56は、トレイ検知部52bにより搬送トレイ31が所定の商品ラック13の前方域に搬送されたことが検知された場合、搬送モータ52aの駆動を停止させ、該当する商品コラム14の払出モータ51aを駆動させる。これにより払出機構51が駆動して該当するスパイラル14aを回転させ、該スパイラル14aの最前のピッチ間に拘束された商品が前方に向けて払い出され、搬送トレイ31が受容する。制御部56は、最前のピッチ間に拘束された商品が前方に払い出された後、払出モータ51aの駆動を停止させ、搬送モータ52aを駆動させる。これにより、搬送トレイ31は、搬送機構52により商品取出位置33に向けて下方へ移動する。
【0057】
このようにして搬送トレイ31が商品取出位置33に向けて下方へ移動することにより、該搬送トレイ31の下側のトレイローラ315aにより移動経路32に進出している作用部62が当接されて押圧される結果、防盗部材60は、退行姿勢から前方に向けて揺動し、図9に示したように、搬送トレイ31が商品取出位置33に配置される際に進出姿勢となる。
【0058】
搬送トレイ31が商品取出位置33に配置されたことがトレイ検知部52bに検知されると、制御部56は、搬送モータ52aの駆動を停止させる。
【0059】
そして、商品検出センサ54により搬送トレイ31に商品が載置されていることが検知された場合、制御部56は、扉ロック機構53をロック状態から解除状態へ切り替え、商品取出扉23が開く方向に揺動されて商品取出口22より商品が取り出されることを許容する。
【0060】
そのような自動販売機1においては、搬送トレイ31が商品取出位置33に配置される場合に、防盗部材60が進出姿勢となるので、悪意のある者によって扉ロック機構53が解除状態にされた状態で商品取出扉23が開く方向に揺動されたとしても、防盗部材60の突部63が後方側領域34に進出しているので、該突部63が邪魔になって商品取出口22から侵入された腕等により商品ラック13に載置された商品が取り出されることを抑制できる。しかも、防盗部材60は搬送トレイ31の移動によって進出姿勢と退行姿勢との間で揺動するので、商品取出扉23の開閉動作により連動しない。よって、本発明の実施の形態である自動販売機1によれば、利用者による商品の取り出しを阻害することなく、商品の防盗性を確保することができる。
【0061】
上記自動販売機1によれば、バランスウエイト67が、防盗部材60が進出姿勢となる場合には重心が揺動軸の近傍にある態様で該防盗部材60に設けられているので、該防盗部材60を進出姿勢から退行姿勢へ揺動させる際の動力を必要最小限の大きさにすることができ、搬送機構52の搬送モータ52aに作用する負荷を低減化させることができ、これにより搬送機構52の使用寿命の長大化を図ることができる。しかも、バランスウエイト67が、防盗部材60が退行姿勢となる場合には重心が揺動軸よりも後方側上方域にある態様で設けられているので、例えばバネ等の付勢手段を用いることなく、防盗部材60を退行姿勢に維持し続けることができる。これにより、部品点数の増大等による製造コストの増大化を抑制することができ、しかも勝手に防盗部材60が退行姿勢から進出姿勢に揺動することで、搬送トレイ31の下方への移動を規制してしまうことを抑制することができる。
【0062】
上記自動販売機1によれば、防盗部材60が、進出姿勢となる場合、突部63が商品取出扉23の後方への揺動軌跡から離隔しているので、これによっても利用者による商品の取り出しを阻害する虞れがない。
【0063】
また上記自動販売機1によれば、防盗部材60が進出姿勢となる場合、突部63を構成する後方傾斜延部633は、前端部632の上端部分より後方に上方に向かうに連れて漸次後方に傾斜する態様で延在している。つまり、後方傾斜延部633は、前方に向かうに連れて漸次下方に傾斜する態様で延在している。そのため、進出状態において、何らかの要因によりいずれかの商品コラム14から商品が移動経路32に払い出された場合、後方傾斜延部633の傾斜に沿って商品を前方に案内して搬送トレイ31に落下させることができる。つまり、防盗部材60の上に商品が配置されてしまうことを抑制でき、防盗部材60の揺動が商品により規制されてしまうことを防止することができる。
【0064】
防盗部材60は、バランスウエイト67により退行姿勢に維持されるものであるが、例えば地震等により自動販売機1の本体キャビネット10に振動が与えられて防盗部材60が退行姿勢から僅かに例えば10°程度前方に揺動してしまうことも考えられる。このように防盗部材60が退行姿勢から僅かに前方に揺動する場合、図14に示すように、突部63の一部が移動経路32に進出してしまうことになるが、該突部63の前端部632は、搬送トレイ31の移動方向(上下方向)に直交する水平面からの傾斜角度αが例えば45°以上になるようその形状が定められていることが好ましい。
【0065】
このように突部63の前端部632の傾斜角度αが45°以上であることにより、商品取出位置33に向けて下方に移動する搬送トレイ31の下側のトレイローラが前端部632に当接した場合、力の分力により、防盗部材60に後方への力が作用する。この結果、防盗部材60が退行姿勢に揺動して、搬送トレイ31が商品取出位置33に移動することを許容し、搬送トレイ31の移動が規制されてしまうことを防止することができる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0067】
上述した実施の形態では、防盗部材60が、基部61、作用部62及び突部63を有するものであったが、本発明においては、防盗部材の形状は特に限定されるものではなく、進出姿勢となる場合に、後方側領域に進出する突部を有していればよい。
【符号の説明】
【0068】
1…自動販売機、10…本体キャビネット、10a…収納室、10b…収容室、13…商品ラック、14…商品コラム、20…前面扉、22…商品取出口、23…商品取出扉、31…搬送トレイ、32…移動経路、33…商品取出位置、34…後方側領域、40…補助扉、41…商品選択部、51…払出機構、52…搬送機構、53…扉ロック機構、54…商品検出センサ、55…金銭処理ユニット、56…制御部、60…防盗部材、61…基部、62…作用部、63…突部、66…防盗軸部、67…バランスウエイト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14