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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20231212BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20231212BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20231212BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
H04N5/74 A
G02B26/08 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020018474
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124624
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】若林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴大
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143989(JP,A)
【文献】特開2015-187678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0370575(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0032268(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0227261(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0166340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
G02B 26/00-26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
前記光変調装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記光変調装置により変調され
た光の光路を変更する光路変更素子と、
前記光変調装置および投射光学装置、を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材には、前記光変調装置により変調された光が通過する開口が設けられ、
前記光路変更素子は、前記光変調装置により変調された光が入射する光学部材と、前記
光学部材を保持する光学部材保持部と、前記光学部材保持部を揺動可能に支持する支持部
材と、を有し
前記光学部材保持部は、前記光学部材に入射する光の光軸と交差する第1揺動軸回りに
揺動可能に支持され、
前記支持部材は、前記光学部材保持部を囲む枠状部材であり、前記保持部材によって前
記光軸と交差し且つ前記第1揺動軸と交差する第2揺動軸回りに揺動可能に支持され、
前記保持部材は、前記光変調装置により変調された光を通過させる開口部を有したベー
ス板を備え、
前記投射光学装置は、前記ベース板の一方側で保持され、
前記光変調装置は、前記ベース板の前記一方側とは反対の他方側で保持され、
前記支持部材は、前記保持部材の前記ベース板の前記開口の縁に接続され、前記光路変
更素子の一部が前記開口の内周側に挿入されることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
前記光学部材の少なくとも一部が前記開口の内周側に配置されることを特徴とする請求
項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記光路変更素子は、磁気駆動機構を備え、
前記磁気駆動機構は、磁石およびコイルを備え、
前記磁石および前記コイルの一方は、前記保持部材に支持され、
前記磁石および前記コイルの他方は、前記支持部材に支持されることを特徴とする請求
項1または2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記保持部材に固定されるヨークを備え、
前記磁石および前記コイルの一方は、ヨークを介して前記保持部材に固定されることを
特徴とする請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記保持部材は、前記光軸方向から見て前記支持部材と重なる度当たり部を備えること
を特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記支持部材は、前記度当たり部と対向する対向部を備え、
前記光路変更素子が駆動して前記対向部が移動する量は、前記度当たり部と前記対向部
との隙間より小さいことを特徴とする請求項に記載のプロジェクター。
【請求項7】
光源と、
前記光源から出射された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
前記光変調装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記光変調装置により変調され
た光の光路を変更する光路変更素子と、
前記光変調装置あるいは投射光学装置、を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材には、前記光変調装置により変調された光が通過する開口が設けられ、
前記光路変更素子は、前記光変調装置により変調された光が入射する光学部材と、前記
光学部材を保持する光学部材保持部と、前記光学部材保持部を揺動可能に支持する支持部
材と、を有し、
前記光学部材保持部は、前記光学部材に入射する光の光軸と交差する第1揺動軸回りに
揺動可能に支持され、
前記支持部材は、前記光学部材保持部を囲む枠状部材であり、前記保持部材によって前
記光軸と交差し且つ前記第1揺動軸と交差する第2揺動軸回りに揺動可能に支持され、
前記保持部材は、前記光軸方向から見て前記支持部材と重なる度当たり部を備え、
前記支持部材は、前記度当たり部と対向する対向部を備え、
前記度当たり部と前記対向部の一方は、他方とは反対側に凹んでいることを特徴とする
プロジェクター。
【請求項8】
光源と、
前記光源から出射された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
前記光変調装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記光変調装置により変調され
た光の光路を変更する光路変更素子と、
前記光変調装置あるいは投射光学装置、を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材には、前記光変調装置により変調された光が通過する開口が設けられ、
前記光路変更素子は、前記光変調装置により変調された光が入射する光学部材と、前記
光学部材を保持する光学部材保持部と、前記光学部材保持部を揺動可能に支持する支持部
材と、を有し、
前記光学部材保持部は、前記光学部材に入射する光の光軸と交差する第1揺動軸回りに
揺動可能に支持され、
前記支持部材は、前記光学部材保持部を囲む枠状部材であり、前記保持部材によって前
記光軸と交差し且つ前記第1揺動軸と交差する第2揺動軸回りに揺動可能に支持され、
前記保持部材は、前記光軸方向から見て前記支持部材と重なる度当たり部を備え、
前記支持部材は、前記度当たり部と対向する対向部を備え、
前記度当たり部は、前記対向部とは反対側に凹んでおり、
前記対向部は、前記度当たり部とは反対側に凹んでいることを特徴とするプロジェクタ
ー。
【請求項9】
前記支持部材は、前記度当たり部と対向する対向部を備え、
前記光路変更素子が駆動して前記対向部が移動する量は、前記度当たり部と前記対向部
との隙間より小さいことを特徴とする請求項7または8に記載のプロジェクター。
【請求項10】
光源と、
前記光源から出射された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
前記光変調装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記光変調装置により変調され
た光の光路を変更する光路変更素子と、
前記光変調装置あるいは投射光学装置、を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材には、前記光変調装置により変調された光が通過する開口が設けられ、
前記光路変更素子は、前記光変調装置により変調された光が入射する光学部材と、前記
光学部材を保持する光学部材保持部と、前記光学部材保持部を揺動可能に支持する支持部
材と、を有し、
前記光学部材保持部は、前記光学部材に入射する光の光軸と交差する第1揺動軸回りに
揺動可能に支持され、
前記支持部材は、前記光学部材保持部を囲む枠状部材であり、前記保持部材によって前
記光軸と交差し且つ前記第1揺動軸と交差する第2揺動軸回りに揺動可能に支持され、
前記保持部材は、前記光軸方向から見て前記支持部材と重なる度当たり部を備え、
前記度当たり部は、前記支持部材の前記光軸方向の両側に配置されることを特徴とする
プロジェクター。
【請求項11】
前記光変調装置および投射光学装置の両方が、前記保持部材に保持されていることを特
徴とする請求項7から10の何れか一項に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路変更素子を備えたプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液晶パネル等の光変調素子で変調された光を拡大投射するプロジェクターが開示される。特許文献1のプロジェクターは、光変調素子と投射光学系との間に配置される画素シフトデバイスを備える。画素シフトデバイスは、入射する光の光路をシフトさせる光路変更素子である。画素シフトデバイスによって光路をシフトさせて画像表示位置を1画素分よりも小さい量ずらすことにより、光変調装置の解像度よりも高い解像度の画像を表示できる。特許文献1の画素シフトデバイスは、光変調素子で変調された光の光路上に配置されるガラス板と、ガラス板を保持する保持部材を備えており、モータによって保持部材を回転させることによってガラス板の向きを変化させて画像光の光路をシフトさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-039995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロジェクターにおいて、光路変更素子(画素シフトデバイス)が設置される位置は光変調素子と投射光学系との隙間である。しかしながら、光変調素子と投射光学系との隙間は狭く、多くの構造部品が集まっているので、空間に余裕がなく、光路変更素子を設置するスペースを確保することが難しい。従って、光路変更素子の設置が難しい。光路変更素子を容易に設置可能なスペースを確保すると、プロジェクターが大型化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るプロジェクターは、光源と、前記光源から出射された光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、前記光変調装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記光変調装置により変調された光の光路を変更する光路変更素子と、前記光変調装置あるいは投射光学装置、を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記光変調装置により変調された光が通過する開口を有し、前記光路変更素子は、前記光変調装置により変調された光が入射する光学部材と、前記光学部材を保持する光学部材保持部と、前記光学部材保持部を揺動可能に支持する支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記保持部材に支持されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係るプロジェクターの光学的な構成を示す説明図である。
図2】画素シフトによる画像表示位置のシフトを示す説明図である。
図3】光変調装置、光路変更素子、および投射光学装置が固定ベースに支持される状態を示す斜視図である。
図4】光路変更素子および固定ベースを光路前段側から見た斜視図である。
図5】光路変更素子および固定ベースを光路後段側から見た斜視図である。
図6】固定ベースを光路前段側から見た斜視図である。
図7】光路変更素子の分解斜視図である。
図8】光変調装置、光路変更素子、および固定ベースをガラス板の中央で切断した断面図である。
図9】度当たり部および外枠の断面構成を模式的に示す説明図である。
図10】変形例1の度当たり部および外枠の断面構成を模式的に示す説明図である。
図11】変形例2の度当たり部および外枠の断面構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。本明細書において、説明の便宜上、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示しており、X軸方向の一方側を+X方向、他方側を-X方向とする。また、Y軸方向の一方側を+Y方向、他方側を-Y方向とし、Z軸方向の一方側を+Z方向、他方側を-Z方向とする。
【0008】
(プロジェクター)
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの光学的な構成を示す説明図である。図1に示すプロジェクター1は、LCD方式のプロジェクターである。プロジェクター1は、外部から入力される映像信号に基づき、スクリーン101に映像を表示する画像表示装置である。プロジェクター1は、光源102と、ミラー104a、104b、104cと、ダイクロイックミラー106a、106bと、液晶表示素子108R、108G、108Bと、ダイクロイックプリズム110と、光路変更素子2と、投射光学装置3とを備える。また、図示はしないが、光源102、ミラー104a、104b、104c、ダイクロイックミラー106a、106b、液晶表示素子108R、108G、108B、ダイクロイックプリズム110、光路変更素子を収納する外装筐体を備える。
【0009】
本実施形態では、液晶表示素子108R、108G、108Bおよびダイクロイックプリズム110は光変調装置4を構成する。図1に示す光変調装置4は、後述するように、透過型の液晶パネルを用いた形態であるが、他の方式の光変調装置を用いることもできる。例えば、反射型の液晶パネルを備えた光変調装置、あるいは、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を備えた光変調装置を用いることもできる。
【0010】
光源102としては、例えば、ハロゲンランプ、水銀ランプ、発光ダイオード(LED)、レーザー光源等が挙げられる。また、光源102としては、白色光が出射するものが用いられる。光源102から出射された光は、例えば、ダイクロイックミラー106aによって赤色光とその他の光とに分離される。赤色光は、ミラー104aで反射された後、液晶表示素子108Rに入射し、その他の光は、ダイクロイックミラー106bによってさらに緑色光と青色光とに分離される。緑色光は、液晶表示素子108Gに入射し、青色光は、ミラー104b、104cで反射された後、液晶表示素子108Bに入射する。
【0011】
液晶表示素子108R、108G、108Bは、それぞれ、画像信号に応じて入射する光を変調する光変調素子である。液晶表示素子108R、108G、108Bは、透過型の液晶パネルであり、例えば、縦1080行、横1920列のマトリクス状に配列した画素を備える。各画素では、入射光に対する透過光の光量が調整され、各液晶表示素子108R、108G、108Bにおいて全画素の光量分布が協調制御される。液晶表示素子108R、108G、108Bによってそれぞれ空間的に変調された光は、ダイクロイックプリズム110で合成され、ダイクロイックプリズム110からフルカラーの映像光LLが出射される。そして、出射された映像光LLは、投射光学装置3によって拡大されてスクリーン101に投射される。
【0012】
本明細書において、Z軸方向は、光変調装置4から出射する映像光LLの光軸Lと一致する。+Z方向は映像光LLの出射方向であり、光路変更素子2は、光変調装置4の+Z方向に配置される。図1に示すように、液晶表示素子108Rは、ダイクロイックプリズム110の+X方向に配置され、液晶表示素子108Bは、ダイクロイックプリズム110の-X方向に配置され、液晶表示素子108Gは、ダイクロイックプリズム110の-Z方向に配置される。
【0013】
光路変更素子2は、ダイクロイックプリズム110と投射光学装置3との間に配置される。プロジェクター1は、光路変更素子2によって映像光LLの光路をシフトさせること(所謂「画素シフト」を行うこと)により、液晶表示素子108R、108G、108Bの解像度よりも高い解像度の画像をスクリーン101に表示できる。例えば、液晶表示素子108R、108G、108Bがフルハイビジョンであれば、4Kの画像を表示できる。
【0014】
次に、光路シフトによる高解像度化の原理について図2を用いて簡単に説明する。図2は、映像光の光路シフトによる画像表示位置のシフトを示す説明図である。後述するように、光路変更素子2は、液晶表示素子108R、108G、108Bにより変調された光を合成した映像光LLが入射する板状の光学部材であるガラス板10を有しており、ガラス板10の姿勢を変更することで、屈折を利用して映像光LLの光路をシフトさせる。
【0015】
光路変更素子2は、ガラス板10を光軸Lと交差する第1揺動軸J1回りの第1揺動方向、および、光軸Lと交差し且つ第1揺動軸J1と交差する第2揺動軸J2回りの第2揺動方向の2方向に揺動させる。ガラス板10が第1揺動方向に揺動すると、ガラス板10に入射する光の光路は第1方向F1にシフトする。ガラス板10が第2揺動方向に揺動すると、ガラス板10に入射する光の光路は第1方向F1と交差する第2方向F2にシフトする。これにより、スクリーン101上に表示される画素Pxは、第1方向F1および第1方向F1と交差する第2方向F2へずらして表示される。
【0016】
プロジェクター1は、第1方向F1の光路のシフトと、第2方向F2の光路のシフトを組み合わせることにより、見かけ上の画素を増加させ、スクリーン101に投影される画像を高解像度化する。例えば、図2に示すように、第1方向F1および第2方向F2にそれぞれ半画素分(すなわち、画素Pxの半分)ずれた位置に画素Pxを移動させる。これにより、スクリーン101上の画像表示位置を、画像表示位置P1から第1方向F1に半画素分ずらした画像表示位置P2、画像表示位置P1から第1方向F1および第2方向F2にそれぞれ半画素分ずらした画像表示位置P3、および、画像表示位置から第2方向F2に半画素分ずらした画像表示位置P4にずらすことができる。
【0017】
図2に示すように、画像表示位置P1、P2、P3、P4にそれぞれ一定時間ずつ画像を表示させるように光路シフト動作を行い、光路シフト動作に同期させて液晶表示素子における表示内容を変化させる。これによって、見かけ上、画素Pxよりも小さいサイズの画素A、B、C、Dを表示させることができる。例えば、画素A、B、C、Dの表示を全体として60Hzの周波数で行う場合には、画像表示位置P1、P2、P3、P4に対応して、液晶表示素子に4倍の速度で表示を実行させる必要がある。つまり、液晶表示素子における表示の周波数、いわゆるリフレッシュレートは240Hzとなる。
【0018】
なお、図2に示す例では、第1方向F1および第2方向F2は互いに直交する方向であり、第1方向F1および第2方向F2は、スクリーン101にマトリクス状に表示される画素Pxの配列方向であるが、第1方向F1と第2方向F2は直交する方向でなくてもよく、画素Pxの配列方向に対して傾いた方向であってもよい。このようなずらし方向であっても、第1方向F1および第2方向F2への画素ずらしを適宜組み合わせることにより、図2に示す画像表示位置P1、P2、P3、P4に画素Pxを移動させることができる。また、画像表示位置のずれ量は、半画素分に限定されず、例えば、画素Pxの1/4であってもよいし、3/4であってもよい。
【0019】
(固定ベース)
図3は、光変調装置4、光路変更素子2、および投射光学装置3が固定ベース5に支持される状態を示す斜視図である。プロジェクター1は、光変調装置4および投射光学装置3を保持する保持部材である固定ベース5を備える。本実施形態では、固定ベース5は、アルミ等の金属からなる。図3に示すように、投射光学装置3は、ズームリングやフォーカスリング等を備えたレンズ鏡筒9によってレンズ群(図示せず)を保持するレンズユニットである。レンズ鏡筒9は、固定ベース5の+Z方向に配置され、Z軸方向(光軸方向)に延びている。レンズ鏡筒9は、固定ベース5に保持される。光変調装置4は、固定ベース5の-Z方向に配置される。光変調装置4は、図示しない支持部材であるプリズムベースに保持され、プリズムベースを介して固定ベース5に保持される。本実施形態において、保持部材である固定ベース5は光変調装置4および投射光学装置3の両方を保持しているが、これに限らず、固定ベース5が光変調装置4および投射光学装置3のどちらか一方のみを保持していてもよい。すなわち、固定ベース5が光変調装置4を保持し、投射光学装置3は、固定ベース5とは別の部材により外装筐体に固定されていてもよいし、固定ベース5が投射光学装置3を保持し、光変調装置4は、プリズムベースを介して外装筐体に固定されていてもよい。あるいは、光変調装置4は、外装筐体の内部において光学部品筐体の内部に配置され、光変調装置4がプリズムベースを介して光学部品筐体に固定されていてもよい。
【0020】
図4は、光路変更素子2および固定ベース5を光路前段側(-Z方向)から見た斜視図である。図5は、光路変更素子2および固定ベース5を光路後段側(+Z方向)から見た斜視図である。図6は、固定ベース5を光路前段側(-Z方向)から見た斜視図である。図6に示すように、固定ベース5は、Z軸方向(光軸方向)から見た形状が略長方形である。固定ベース5は、ベース板5Aと、ベース板5Aの外周を囲むベース枠5Bと、ベース板5Aとベース枠5Bとを接続する接続部5Cを備える。ベース枠5Bはベース板5Aの+Z方向に位置し、接続部5Cはベース板5Aの端部から+Z方向へ屈曲してベース枠5Bに接続される。ベース板5Aには、Z軸方向に貫通する開口50が設けられている。
【0021】
図4図5に示すように、光路変更素子2は、固定ベース5を貫通する開口50と光軸方向(Z軸方向)から見て重なる位置に保持される。光路変更素子2を通過した映像光LLは、開口50の+Z方向に配置されるレンズ鏡筒9の-Z方向の端部から投射光学装置3に入射する。
【0022】
図6に示すように、固定ベース5の開口50はX軸方向に対称な形状である。固定ベース5は、開口50の-Y方向の縁におけるX軸方向の中央部を-Y方向へ切り欠いた第1切り欠き部51を備える。第1切り欠き部51は、-Y方向に向かうに従ってX軸方向の幅が狭まるテーパー部を備える。また、固定ベース5は、開口50の+X方向の縁を矩形に切り欠いた第2切り欠き部52、および、開口50の-X方向の縁を矩形に切り欠いた第3切り欠き部53を備える。開口50の+Y方向の縁におけるX軸方向の中央には、-Y方向へ突出する第1突出部54が形成されている。
【0023】
開口50は、第1突出部54の+X方向の第1領域50A、および、第1突出部54の-X方向の第2領域50Bを備える。第1領域50Aおよび第2領域50Bには、後述するように、光路変更素子2の第2アクチュエーター7が配置される。第1突出部54、第1領域50A、および第2領域50Bの-Y方向に設けられた第3領域50Cには、光路変更素子2のガラス板10が配置される。第1領域50Aおよび第2領域50Bの-Y方向には、開口50の+X方向の縁から突出する第2突出部55、および、開口50の-X方向の縁から突出する第3突出部56が形成されている。第2突出部55および第3突出部56はX軸方向に対向する。
【0024】
固定ベース5は、開口50の+X方向の縁および-X方向の縁に設けられた度当たり部57を備える。度当たり部57は、光路変更素子2の外枠30とZ軸方向(光軸方向)に対向する。本実施形態では、開口50の第3領域50Cを囲むように4か所の度当たり部57が設けられている。度当たり部57は、第2突出部55の先端部における-Y方向の角部、および、第3突出部56の先端部における-Y方向の角部に設けられている。また、第2切り欠き部52の-Y方向の角部、および、第3切り欠き部53の-Y方向の角部に度当たり部57が設けられている。
【0025】
(光路変更素子)
図7は、光路変更素子2の分解斜視図である。図4図7に示すように、光路変更素子2は、矩形のガラス板10と、ガラス板10を保持する光学部材保持部である内枠20と、内枠20を揺動可能に支持する支持部材である外枠30を備える。また、光路変更素子2は、内枠20を揺動させる第1アクチュエーター6と、外枠30を揺動させる第2アクチュエーター7を備える。なお、本実施形態における光学部材保持部は、枠状である内枠20だが、これに限らず、ガラス板10を保持するものであれば枠状でなくてもよい。
【0026】
ガラス板10は、光透過性を有する光学部材である。光路変更素子2は、内枠20に保持されるガラス板10の法線方向と、開口50を通過する映像光LLの光軸Lとが一致する位置(以下、基準位置という)を中心として内枠20およびガラス板10を揺動させる。基準位置では、ガラス板10に対する映像光LLの入射角度が0°である。
【0027】
ガラス板10の構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスのような各種ガラス材料を用いることができる。また、本実施形態では、光学部材としてガラス板10を用いるが、光学部材は、光透過性を有し、映像光LLを屈折させる材料で構成されたものであればよい。すなわち、ガラスの他にも、例えば、水晶、サファイアのような各種結晶材料、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂のような各種樹脂材料等で構成されたものであってもよい。また、ガラス板10の入射面および出射面には反射防止膜が形成されていてもよい。
【0028】
図4図7に示すように、内枠20は、ガラス板10を囲む矩形の枠状部材である。内枠20は、X軸と略平行に延びる第1枠部21および第2枠部22と、Y軸と略平行に延びる第3枠部23および第4枠部24とを備える。内枠20は、第1枠部21、第2枠部22、第3枠部23、第4枠部24に囲まれた矩形の第1開口部25を備える。ガラス板10は第1開口部25に配置され、第1枠部21、第2枠部22、第3枠部23、第4枠部24に固定される。本実施形態では、内枠20は、ステンレスなどの薄板からなり、第1枠部21、第2枠部22、第3枠部23、第4枠部24は、薄板を屈曲させた曲げ部材である。
【0029】
内枠20は、第1軸部26および第2軸部27を備える。第1軸部26は、第3枠部23のY軸方向の中央から+X方向へ突出する。また、第2軸部27は、第4枠部24のY軸方向の中央から-X方向へ突出する。内枠20は、第1軸部26および第2軸部27によって外枠30に接続される。第1軸部26および第2軸部27は、内枠20とは反対側の先端が外枠30に重なっており、外枠30に固定される。これにより、内枠20は、第1軸部26と第2軸部27を結ぶ直線である第1揺動軸J1回りに揺動可能な状態で、外枠30に支持される。第1揺動軸J1は、Z軸方向(光軸方向)およびY軸方向と直交し、X軸方向と平行に延びている。
【0030】
第1アクチュエーター6は、第1磁気駆動機構6Aおよび第2磁気駆動機構6Bを備える。内枠20は、第1枠部21のX軸方向の中央から+Y方向へ突出する第1突出部28、および、第2枠部22のX軸方向の中央から-Y方向へ突出する第2突出部29を備える。第1突出部28の先端側には、第1磁気駆動機構6Aが配置される。また、第2突出部29の先端側には、第2磁気駆動機構6Bが配置される。第1アクチュエーター6は、第1突出部28および第2突出部29を介して内枠20に第1揺動軸J1回りの駆動力を加える。
【0031】
外枠30は、内枠20を囲む枠状部材である。外枠30は、内枠20の+Y方向に配置される第1枠部31と、内枠20の-Y方向に配置される第2枠部32と、内枠20の+X方向に配置される第3枠部33と、内枠20の-X方向に配置される第4枠部34を備える。外枠30は、第1枠部31、第2枠部32、第3枠部33、第4枠部34に囲まれた第2開口部35を備えており、第2開口部35に内枠20が配置される。内枠20と外枠30とを接続する第1軸部26と第2軸部27のうち、第1軸部26は第3枠部33に固定される。また、第2軸部27は第4枠部34に固定される。
【0032】
外枠30は、第1枠部31から+Y方向へ略平行に突出する第1突出部36および第2突出部37を備える。第1突出部36および第2突出部37は、外枠30のX軸方向の中央を基準として対称に配置される。図4に示すように、第1突出部36の+X方向には、第2アクチュエーター7の第3磁気駆動機構7Aが配置される。また、第2突出部37の-X方向には、第2アクチュエーター7の第4磁気駆動機構7Bが配置される。第2アクチュエーター7は、第1突出部36および第2突出部37を介して外枠30に第2揺動軸J2回りの駆動力を加える。
【0033】
第1枠部31は、第1突出部36および第2突出部37の間においてX軸方向と略平行に延びる中央部310を備える。図4に示すように、中央部310と内枠20の第1枠部21との間には、第1アクチュエーター6の第1磁気駆動機構6Aが配置される。また、第2枠部32は、X軸方向の中央部分が-Y方向に突出する屈曲形状である。図4に示すように、第2枠部32のX軸方向の中央部分と、内枠20の第2枠部22との間には、第1アクチュエーター6の第2磁気駆動機構6Bが配置される。
【0034】
外枠30には、第3軸部38および第4軸部39が固定される。第3軸部38および第4軸部39は、外枠30とは別部材からなる。第3軸部38は、外枠30の中央部310に固定され、中央部310から+Y方向へ突出する。また、第4軸部39は、外枠30の第2枠部32のX軸方向の中央部分に固定され、第2枠部32から-Y方向へ突出する。
【0035】
外枠30は、第3軸部38および第4軸部39によって固定ベース5の開口50の縁に接続される。すなわち、第3軸部38の+Y方向の先端は、開口50の+Y方向の縁から突出する第1突出部54の先端に固定される。また、第4軸部39の-Y方向の先端は、開口50の-Y方向の縁に固定される。これにより、外枠30は、第3軸部38と第4軸部39を結ぶ直線である第2揺動軸J2回りに揺動可能な状態で、固定ベース5に支持される。第2揺動軸J2は、Z軸方向(光軸方向)およびX軸方向と直交し、Y軸方向と平行に延びている。第2アクチュエーター7は、外枠30を第2揺動軸J2回りに揺動させる。
【0036】
(固定ベースおよび光路変更素子2の断面構成)
図8は、光変調装置4、光路変更素子2、および固定ベース5をガラス板10の中央で切断した断面図であり、図3のA-A位置で切断した断面図である。図3図8に示すように、光変調装置4は、板金部材40によって保持された液晶表示素子108R、108G、108Bがダイクロイックプリズム110の+X方向、-X方向、-Z方向を囲むように組み立てられている。光変調装置4は、図示しないプリズムベースを介して固定ベース5に固定され、ベース板5Aに形成された開口50の-Z方向に配置される。光変調装置4は、ベース板5Aとの間にZ軸方向の隙間が形成される位置に保持される。光路変更素子2は、光変調装置4の+Z方向に配置され、光路変更素子2の一部が開口50の内周側に挿入される。
【0037】
図5に示すように、光路変更素子2のガラス板10は、開口50の第3領域50Cの内周側に+Z方向から挿入されている。図7図8に示すように、ガラス板10を保持する内枠20は、薄板を屈曲させた屈曲部材であり、ガラス板10は、板厚方向の一部が内枠20の内側に嵌め込まれ、板厚方向の一部は、内枠20から+Z方向に突出する。すなわち、ガラス板10は、内枠20から+Z方向に突出する突出部11を備える。突出部11は、内枠20から開口50へ向けて突出しており、開口50に挿入されている。従って、光路変更素子の一部が開口50の内周側に配置され、ベース板5Aの板厚の範囲内に配置される。
【0038】
図7図8に示すように、内枠20の第1軸部26および第2軸部27は、第3枠部23および第4枠部24の+Z方向の端部からX軸方向に屈曲する。第1軸部26および第2軸部27は、外枠30に対して+Z方向から当接する。従って、内枠20は、外枠30の第2開口部35の内周側に配置される。本実施形態では、内枠20のZ軸方向(光軸方向)の高さよりも外枠30の板厚のほうが小さい。従って、図8に示すように、内枠20のZ軸方向(光軸方向)の高さの範囲内に外枠30が配置される。
【0039】
外枠30は、第3軸部38および第4軸部39を介して、開口50の縁に固定される。より詳細には、ベース板5Aに形成された開口50の+Y方向の縁および-Y方向の縁に対して-Z方向から第3軸部38および第4軸部39が当接する。そして、第3軸部38および第4軸部39に対して-Z方向から外枠30が当接する。従って、外枠30は、開口50の縁に対して-Z方向に離間した位置に配置される。
【0040】
図9は、度当たり部57および外枠30の断面構成を模式的に示す説明図であり、図5のB-B位置の断面構成を模式的に示す説明図である。上記のように、開口50の縁は4か所に度当たり部57を備える。一方、外枠30は、度当たり部57と対向する対向部59を備える。図7に示すように、対向部59は、外枠30における4か所の角部に設けられている。度当たり部57は、所定の隙間を介して、対向部59とZ軸方向に対向する。光路変更素子2は、通常の画素シフト動作を行った場合の対向部59の+Z方向への移動量が、度当たり部57と対向部59との隙間のZ軸方向の高さよりも小さい。従って、度当たり部57は、通常の画素シフト動作では外枠30と衝突しないが、落下等による衝撃が加わったときには、外枠30と衝突して外枠30の移動を規制する。
【0041】
(第1アクチュエーター)
第1アクチュエーター6は、内枠20の+Y方向に配置される第1磁気駆動機構6A、および、内枠20の-Y方向に配置される第2磁気駆動機構6Bを備える。第1磁気駆動機構6Aおよび第2磁気駆動機構6Bは、それぞれ、Y軸方向に所定のギャップをもって対向する磁石61とコイル62を備える。磁石61は内枠20に支持され、コイル62は固定ベース5に支持される。コイル62に通電すると、コイル62に対し、磁石61がZ軸方向に移動する。これにより、磁石61が固定された内枠20に対し、第1揺動軸J1回りの駆動力が加えられる。第1磁気駆動機構6Aのコイル62と第2磁気駆動機構6Bのコイル62とは同期して通電され、内枠20に同一回転方向の駆動力を加える。
【0042】
第1磁気駆動機構6Aの磁石61は、矩形の磁石保持板63を介して、内枠20の第1突出部28の先端に固定される。同様に、第2磁気駆動機構6Bの磁石61は、矩形の磁石保持板63を介して、内枠20の第2突出部29の先端に固定される。第1磁気駆動機構6Aのコイル62は、コイル保持板64を介して、固定ベース5の第1突出部54の先端に固定される。また、第2磁気駆動機構6Bのコイル62は、コイル保持板64を介して、固定ベース5における開口50の-Y方向の縁に固定される。固定ベース5は、第1突出部54の先端、および、開口50の-Y方向の縁から-Z方向に突出する凸部58を備える。コイル保持板64は、コイル62が固定される第1板部641と、第1板部641から-Z方向に屈曲して凸部58の先端面に固定される第2板部642を備える。
【0043】
第1アクチュエーター6において、磁石保持板63およびコイル保持板64は、鉄などの金属からなり、バックヨークとして機能する。これにより、漏れ磁束を少なくすることができ、磁気効率を上げることができる。なお、ステンレス鋼は、曲げ加工により磁性を持たせることができるので、バックヨークとして使用できる。従って、コイル保持板64をステンレス鋼により形成することができる。
【0044】
(第2アクチュエーター)
第2アクチュエーター7は、外枠30の第1突出部36の+X方向に配置される第3磁気駆動機構7A、および、外枠30の第2突出部37の-X方向に配置される第4磁気駆動機構7Bを備える。第3磁気駆動機構7Aおよび第4磁気駆動機構7Bは、それぞれ、X軸方向に所定のギャップをもって対向する磁石71とコイル72を備える。磁石71は外枠30に支持され、コイル72は固定ベース5に支持される。コイル72に通電すると、コイル72に対し、磁石71がZ軸方向に移動する。これにより、磁石71が固定された外枠30に対し、第2揺動軸J2回りの駆動力が加えられる。第3磁気駆動機構7Aのコイル72と第4磁気駆動機構7Bのコイル72とは同期して通電され、外枠30に同一回転方向の駆動力を加える。
【0045】
第3磁気駆動機構7Aの磁石71は、矩形の磁石保持板73を介して、外枠30の第1突出部36に固定される。第1突出部36および第3磁気駆動機構7Aは、固定ベース5の開口50の第1領域50Aに配置される。第3磁気駆動機構7Aのコイル72は、コイル保持板74を介して、開口50の第1領域50Aの+X方向の縁に固定される。同様に、第4磁気駆動機構7Bの磁石71は、矩形の磁石保持板73を介して、外枠30の第2突出部37に固定される。第2突出部37および第4磁気駆動機構7Bは、固定ベース5の開口50の第2領域50Bに配置される。第4磁気駆動機構7Bのコイル72は、コイル保持板74を介して、開口50の第2領域50Bの-X方向の縁に固定される。
【0046】
コイル保持板74は、第1板部741と、第1板部741に対して鋭角をなすように屈曲した第2板部742と、第2板部742に対して鈍角をなすように屈曲した第3板部743を備える。コイル72は第1板部741に固定される。第3磁気駆動機構7Aのコイル保持板74は、第1領域50Aの+X方向の縁に第3板部743が固定される。また、第4磁気駆動機構7Bのコイル保持板74は、第2領域50Bの-X方向の縁に第3板部743が固定される。
【0047】
第2アクチュエーター7において、磁石保持板73およびコイル保持板74は、鉄などの金属からなり、バックヨークとして機能する。これにより、漏れ磁束を少なくすることができ、磁気効率を上げることができる。なお、ステンレス鋼は、曲げ加工により磁性を持たせることができるので、バックヨークとして使用できる。従って、コイル保持板74をステンレス鋼により形成することができる。
【0048】
(光路変更素子の駆動制御)
光路変更素子2は、駆動信号処理回路(図示せず)から第1アクチュエーター6および第2アクチュエーター7へ供給される駆動信号により、ガラス板10および内枠20を第1揺動軸J1回りの第1揺動方向に揺動させるとともに、ガラス板10および内枠20を保持する外枠30を第2揺動軸J2回りの第2揺動方向に揺動させる。各アクチュエーターでは、駆動信号に基づいてコイル62およびコイル72に電流が流れる。その結果、ガラス板10は、第1揺動方向の揺動、および、第2揺動方向の揺動を組み合わせた光路シフト動作を駆動信号に応じた周波数で行う。これにより、プロジェクター1では、映像光LLの光路が変化し、駆動信号に応じた周波数で、画像表示位置P1、P2、P3、P4(図2参照)に画像が表示される。
【0049】
(本実施形態の主な作用効果)
以上のように、本実施形態のプロジェクター1は、光源102と、光源102から出射された光を変調する光変調装置4と、光変調装置4により変調された光を投射する投射光学装置3と、光変調装置4と投射光学装置3との間に配置され、光変調装置4により変調された光の光路を変更する光路変更素子2と、光変調装置4および投射光学装置3を保持する保持部材である固定ベース5とを備える。固定ベース5には、光変調装置4により変調された光が通過する開口50が設けられている。光路変更素子2は、光変調装置4により変調された光が入射する板状の光学部材であるガラス板10と、ガラス板10を保持する光学部材保持部である内枠20と、内枠20を揺動可能に支持する支持部材である外枠30とを有しており、外枠30は固定ベース5に支持される。
【0050】
このように、本実施形態では、光路変更素子2の外枠30が直接、光変調装置4および投射光学装置3を保持する固定ベース5に固定される。従来の光路変更素子2は、外枠30を支持する支持部材を備え、固定ベース5とは別部品の支持部材を備えるため、部品点数が多い分、狭いスペースへの設置が難しい。本実施形態では、固定ベース5を直接、外枠30を支持する支持部材として兼用するため、従来よりも小さい設置スペースで、光変調装置4と投射光学装置3との間に光路変更素子2を設置した構成を成立させることができる。従って、プロジェクター1の小型化に有利である。また、従来よりも部品点数が少なく、組立工数が少ない。
【0051】
本実施形態のプロジェクター1は、上記のように、光変調装置4および投射光学装置3の両方が保持部材である固定ベース5に保持されているが、本発明は、光変調装置4あるいは投射光学装置3のいずれか一方が保持部材である固定ベース5に保持される形態に適用可能である。すなわち、本実施形態のプロジェクター1は、光源102と、光源102から出射された光を変調する光変調装置4と、光変調装置4により変調された光を投射する投射光学装置3と、光変調装置4と投射光学装置3との間に配置され、光変調装置4により変調された光の光路を変更する光路変更素子2と、光変調装置4あるいは投射光学装置3、を保持する保持部材である固定ベース5とを備え、固定ベース5には、光変調装置4により変調された光が通過する開口50が設けられ、光路変更素子2は、光変調装置4により変調された光が入射する板状の光学部材であるガラス板10と、ガラス板10を保持する光学部材保持部である内枠20と、内枠20を揺動可能に支持する支持部材である外枠30とを有しており、外枠30は固定ベース5に支持される形態であってもよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、従来よりも光路変更素子2の設置スペースに余裕ができるので、光変調装置4と光路変更素子2を離すことができる。従って、部品同士が近接することに起因する不都合を回避あるいは抑制できる。例えば、落下時の衝撃などによって部品同士が衝突して破損するおそれを少なくすることができる。また、光路変更素子2と光変調装置4の一方が磁場を発生させる部品を含む場合に、他方に対する磁場の影響を少なくすることができる。
【0053】
本実施形態では、ガラス板10の一部が開口50の内周側に配置される。これにより、ガラス板10の板厚方向の一部がベース板5Aの板厚の範囲内に配置され、光路変更素子2のZ軸方向(光軸方向)の一部が固定ベース5のZ軸方向の配置領域の範囲内に配置される。従って、光路変更素子2を設置するために、固定ベース5と光変調装置4との間に必要な設置スペースの光軸方向の寸法を小さくすることができる。従って、光路変更素子2の設置スペースの確保が容易であり、投射光学装置3と光変調装置4との隙間が狭い場合においても、投射光学装置3と光変調装置4との間に光路変更素子2を配置した構成を成立させることができる。
【0054】
なお、ガラス板10全体を開口50の内周側に配置することもできる。すなわち、ガラス板10の全体をベース板5Aの板厚の範囲内に配置する構成を採用することもできる。これにより、固定ベース5と光変調装置4との間に必要なスペースの光軸方向の寸法をより小さくすることができる。
【0055】
本実施形態では、光路変更素子2の内枠20は、ガラス板10に入射する光の光軸Lと交差する第1揺動軸J1回りに揺動可能に支持される。外枠30は内枠20を囲む枠状部材であり、固定ベース5によって光軸Lと交差し且つ第1揺動軸J1と交差する第2揺動軸J2回りに揺動可能に支持される。このように、内枠20と外枠30を互いに交差する揺動軸回りに揺動させることにより、互いに交差する2方向の画素シフトを行うことができる。また、2方向の画素シフトを行うことができる光路変更素子2でありながら、部品点数を少なくでき、光変調装置4と投射光学装置3との間に設置する際に必要な設置スペースを小さくできる。
【0056】
本実施形態の光路変更素子2は、外枠30を揺動させる第3磁気駆動機構7Aおよび第4磁気駆動機構7Bを備えており、第3磁気駆動機構7Aおよび第4磁気駆動機構7Bは、それぞれ、磁石71およびコイル72を備える。コイル72は固定ベース5に支持され、磁石71は外枠30に支持される。このように、固定ベース5と外枠30との間に磁気駆動機構を構成することにより、外枠30を揺動させる第2アクチュエーターの設置スペースを小さくすることができる。従って、光路変更素子2の設置スペースを小さくできる。
【0057】
本実施形態の第3磁気駆動機構7Aおよび第4磁気駆動機構7Bでは、固定ベース5に固定されるコイル保持板74、および、外枠30に固定される磁石保持板73を備えており、コイル72はコイル保持板74を介して固定ベース5に固定される。また、磁石71は磁石保持板73を介して外枠30に固定される。コイル保持板74および磁石保持板73はバックヨークとして機能するため、漏れ磁束を少なくすることができ、磁気効率を上げることができる。
【0058】
第3磁気駆動機構7Aおよび第4磁気駆動機構7Bは、磁石71とコイル72の配置を逆にすることができる。すなわち、コイル72が外枠30に支持され、磁石61が固定ベース5に支持される構成を採用することもできる。なお、コイル72を固定ベース5に配置した場合には、コイル72が移動しないので、コイル72への配線接続を容易にすることができる。
【0059】
本実施形態では、固定ベース5は、Z軸方向(光軸方向)から見て外枠30と重なる度当たり部57を備える。度当たり部57は、第2揺動軸J2回りに揺動する外枠30のZ軸方向(光軸方向)の移動範囲から外れた位置に配置される。すなわち、度当たり部57と、度当たり部57に対して-Z方向から対向する対向部59とのZ軸方向(光軸方向)の隙間は、通常の画素シフト動作における度当たり部57の-Z方向への移動量よりも大きい。このように、第3磁気駆動機構7Aおよび第4磁気駆動機構7Bによって外枠30を揺動させる通常の画素シフト動作では外枠30に衝突しない位置に度当たり部57を配置することにより、画素シフト動作には影響を与えることなく、落下などの衝撃が加わった際に外枠30の移動範囲を規制できる。従って、衝撃による外枠30の変形や破壊を抑制できる。
【0060】
本実施形態では、固定ベース5に設けられた開口50の縁が、Z軸方向(光軸方向)から見て外枠30の角部と重なっており、度当たり部57と対向する対向部59は、外枠30の角部に設けられている。このように、第2揺動軸J2から離れた角部に度当たり部57と衝突する対向部59を設けることで、衝撃時に第3軸部38および第4軸部39に負荷が加わることを抑制できる。従って、第3軸部38および第4軸部39の変形や破損を抑制できる。また、度当たり部57を複数個所(本実施形態では、4箇所)に備えているので、耐衝撃性を高めることができる。なお、度当たり部57の数は4箇所に限定されるものではなく、他の数でもよい。
【0061】
(変形例1)
図10は、変形例1の度当たり部57および外枠30の断面構成を模式的に示す説明図である。変形例1の度当たり部57は、度当たり部57と対向する対向部59とは反対側に凹んでいる。また、変形例1の外枠30は、対向部59が度当たり部57とは反対側に凹んでいる。従って、度当たり部57と対向部59は、Z軸方向(光軸方向)の板厚が上記形態よりも小さい薄肉部であるため、度当たり部57と対向部59の配置領域のZ軸方向(光軸方向)の高さを小さくすることができる。これにより、外枠30のZ軸方向(光軸方向)の一部が固定ベース5のZ軸方向の配置領域の範囲内に配置される。従って、光路変更素子2を設置するために、固定ベース5と光変調装置4との間に必要な設置スペースの光軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0062】
なお、度当たり部57と対向部59の一方を他方とは反対側に凹んだ形状にして、他方は凹んでいない形状にすることもできる。
【0063】
(変形例2)
図11は、変形例2の度当たり部57および外枠30の断面構成を模式的に示す説明図である。変形例2では、対向部59のZ軸方向(光軸方向)の両側に度当たり部57が配置される。これにより、外枠30の移動をZ軸方向(光軸方向)の両側において規制できるので、複数の方向の衝撃に対する耐衝撃性を高めることができる。なお、変形例2においても、度当たり部57が対向部59とは反対側に凹んでおり、対向部59が度当たり部57とは反対側に凹んでいるが、度当たり部57と対向部59は凹んだ形状でなくてもよく、他の部分と板厚が同じでもよい。また、度当たり部57と対向部59のいずれか一方を凹んだ形状にして、他方は凹んでいない形状にすることもできる。
【0064】
(変形例3)
上記形態および変形例1、2において、度当たり部57は、固定ベース5における開口50の縁に一体に形成されているが、開口50の縁に別部材を取り付けて度当たり部57を設けることもできる。また、対向部59も同様に、外枠30の縁に別部材を取り付けて対向部59を設けることもできる。なお、別部材を取り付ける場合には、度当たり部57や対向部59として用いられる部材とは別に補強部材を加えてもよい。これにより、衝撃時の破損を抑制できる。
【符号の説明】
【0065】
1…プロジェクター、2…光路変更素子、3…投射光学装置、4…光変調装置、5…固定ベース、5A…ベース板、5B…ベース枠、5C…接続部、6…第1アクチュエーター、6A…第1磁気駆動機構、6B…第2磁気駆動機構、7…第2アクチュエーター、7A…第3磁気駆動機構、7B…第4磁気駆動機構、9…レンズ鏡筒、10…ガラス板、11…突出部、20…内枠、21…第1枠部、22…第2枠部、23…第3枠部、24…第4枠部、25…第1開口部、26…第1軸部、27…第2軸部、28…第1突出部、29…第2突出部、30…外枠、31…第1枠部、32…第2枠部、33…第3枠部、34…第4枠部、35…第2開口部、36…第3突出部、37…第4突出部、38…第3軸部、39…第4軸部、40…板金部材、50…開口、50A…第1領域、50B…第2領域、50C…第3領域、51…第1切り欠き部、52…第2切り欠き部、53…第3切り欠き部、54…第1突出部、55…第2突出部、56…第3突出部、57…度当たり部、58…凸部、59…対向部、61…磁石、62…コイル、63…磁石保持板、64…コイル保持板、71…磁石、72…コイル、73…磁石保持板、74…コイル保持板、101…スクリーン、102…光源、104a、104b…ミラー、106a、106b…ダイクロイックミラー、108R、108G、108B…液晶表示素子、110…ダイクロイックプリズム、310…中央部、641…第1板部、642…第2板部、741…第1板部、742…第2板部、743…第3板部、F1…第1方向、F2…第2方向、J1…第1揺動軸、J2…第2揺動軸、L…光軸、LL…映像光、P1、P2、P3、P4…画像表示位置、Px…画素。
図1
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図11