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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231212BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20231212BHJP
   E05B 83/18 20140101ALI20231212BHJP
   E05B 83/24 20140101ALI20231212BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20231212BHJP
   B60N 2/005 20060101ALN20231212BHJP
   B60N 2/30 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
B60N2/90
E05B83/00 D
E05B83/18
E05B83/24 Z
B62D25/12 N
B60N2/005
B60N2/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020018763
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123252
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】武田 徳英
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 健
(72)【発明者】
【氏名】坂 昌寛
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079857(JP,A)
【文献】特開平10-212850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
E05B 83/00
E05B 83/18
E05B 83/24
B62D 25/12
B60N 2/005
B60N 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを保持するストライカ保持位置と、前記ストライカを解放するストライカ解放位置とに動作可能なフックと、
前記ストライカ保持位置から前記ストライカ解放位置への前記フックの移動を規制するロック位置と、前記ストライカ保持位置から前記ストライカ解放位置への前記フックの移動を許すロック解除位置とに動作可能なポールと、
前記ポールが前記ロック位置にあるときに、前記フックを前記ストライカ保持位置に保持させる押さえ部材と、
を備え、
前記ポールが前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動するとき、前記ポールと前記押さえ部材の一方が他方を押圧し、前記他方が前記フックを前記ストライカ保持位置から前記ストライカ解放位置に向けて押圧し、
前記ポールと前記押さえ部材は、同軸で回動可能に支持されていることを特徴とするロック装置。
【請求項2】
前記ポールは、
前記ロック位置で前記フックを前記ストライカ保持位置に係止させる係止部と、
前記ロック位置から前記ロック解除位置に回転するときに、前記押さえ部材に当接して力を伝達する連係部と、を有し、
前記ポールの回転中心からの前記係止部の突出量よりも前記連係部の突出量の方が大きいことを特徴とする請求項に記載のロック装置。
【請求項3】
前記フックは、前記ストライカ保持位置で前記ストライカが進入するストライカ保持溝と、前記ストライカ保持溝の両側に位置する一対のアーム部とを有し、
前記一対のアーム部の一方の外面に、前記押さえ部材による前記押圧を受ける被押圧部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや車両の開閉体(ボンネットやトランクリッドなど)をロックさせるものとして、ストライカを保持するフック(ラッチなどとも呼ばれる)と、ストライカを保持した状態のフックに係止するポール(ラチェットなどとも呼ばれる)とを備えたロック装置が広く用いられている(例えば、特許文献1)。この種のロック装置では、ストライカを解放してロック解除するストライカ解放位置に向けてフックを付勢しており、ポールがフックを係止することで、付勢力に抗してフックをストライカ保持位置に維持させてロック状態にする。ロック解除の操作力がポールに入力されると、ポールが回動してフックへの係止を解除し、付勢力によってフックがストライカ解放位置に向けて回動してロック解除状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2006-516502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロック装置において、フックを付勢する付勢手段(バネなど)の付勢力だけでは、ロック解除時におけるストライカ保持位置からストライカ解放位置に向けてのフックの動作(ロック解除動作)を確実に実行できないおそれがあった。例えば、車両用シートのロック装置で、座席の重さなどによってフックに大きい動作抵抗が作用して、ポールによる係止を解除しても、フックがストライカ解放位置へスムーズに動作しない場合があった。
【0005】
ロック装置には、ロック状態でストライカが当接するダンパ部材を備えるタイプがある。ダンパ部材は弾性体からなり、ロック状態ではストライカにより押圧されて弾性変形する。そして、ロック解除動作の際に、ダンパ部材が弾性変形から復元しようとする力によってストライカを押圧し、ロック解除動作がアシストされる。しかし、このようなダンパ部材を備えないタイプのロック装置では、ダンパ部材によるロック解除動作のアシストが得られない。
【0006】
以上のような問題に対して、フック用の付勢手段の付勢力を大きくして、ロック解除時のフックの動作の確実性を高めるという対応が考えられる。しかし、付勢手段の付勢力を大きくしてしまうと、ロック状態にさせるときに、ストライカ保持位置へのフックの動作抵抗となるおそれがある。また、設置スペースの制約などによって、大型で強力な付勢手段を用いることが難しい場合もある。そのため、付勢手段の増強以外の手法による、ロック解除時のフックの動作性向上が望まれていた。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でロック解除時の動作性に優れるロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロック装置は、ストライカを保持するストライカ保持位置と、ストライカを解放するストライカ解放位置とに動作可能なフックと、ストライカ保持位置からストライカ解放位置へのフックの移動を規制するロック位置と、ストライカ保持位置からストライカ解放位置へのフックの移動を許すロック解除位置とに動作可能なポールと、ポールがロック位置にあるときに、フックをストライカ保持位置に保持させる押さえ部材と、を備え、ポールがロック位置からロック解除位置に移動するとき、ポールと押さえ部材の一方が他方を押圧し、ポールと押さえ部材の他方がフックをストライカ保持位置からストライカ解放位置に向けて押圧し、ポールと押さえ部材は、同軸で回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0010】
ポールが、ロック位置でフックをストライカ保持位置に係止させる係止部と、ロック位置からロック解除位置に回転するときに、押さえ部材に当接して力を伝達する連係部と、を有する場合、ポールの回転中心からの係止部の突出量よりも連係部の突出量の方が大きい構成にすることで、フックを効率的に押圧することができる。
【0011】
フックは、ストライカ保持位置でストライカが進入するストライカ保持溝と、ストライカ保持溝の両側に位置する一対のアーム部とを有し、一対のアーム部の一方の外面に、押さえ部材による押圧を受ける被押圧部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、ポールと押さえ部材を介して、ロック解除時にフックをストライカ解放位置に向けて押圧することにより、フックを確実にストライカ解放位置へ移動させて、ロック解除時の動作性を向上させることができる。ロック状態でのフックの係止や保持を行うポールと押さえ部材を、ロック解除時のフックの押圧にも利用するので、部品点数が少なく簡単な構成で効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ロック装置を備えた車両用シートの側面図であり、(A)はロック装置のロック状態を示し、(B)はロック装置がロック解除されてシートを跳ね上げるときの状態を示す。
図2】第1の実施形態のロック装置の分解斜視図である。
図3】第1の実施形態のロック装置のロック状態を示す図である。
図4】第1の実施形態のロック装置でロック解除動作の途中状態を示す図である。
図5】第1の実施形態のロック装置のロック解除状態を示す図である。
図6】第1の実施形態のロック装置でポールをオーバーストローク位置まで動作させた状態を示す図である。
図7】第2の実施形態のロック装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。図1に示す車両用シート1は、前方に跳ね上げ可能なタンブルシートであり、座面部分であるシートクッション2と、背もたれ部分であるシートバック3とを有する。図示を省略するリクライニング装置によって、シートクッション2に対してシートバック3を前後に傾動させることが可能である。
【0015】
シートクッション2の前部は、ヒンジ機構4を介して車両の床面5に対して回動可能に支持されている。シートクッション2の後部は、ロック装置10を介して床面5に支持されている。床面5側には、ストライカ13が固定されている。図1(A)に示すロック装置10のロック状態では、ロック装置10がストライカ13を保持して、車両用シート1の跳ね上げが規制される。図1(B)に示すように、シートバック3を前傾させると、ロック装置10がロック解除状態になってストライカ13の保持を解除し、ヒンジ機構4を介して車両用シート1を回動させて前方に跳ね上げることができる。
【0016】
図2から図6を参照して、第1の実施形態であるロック装置10について説明する。図2に示すように、ロック装置10は、シートクッション2の下部に固定されるベースプレート11及びカバープレート12を有し、ベースプレート11とカバープレート12に対して、フック20、ポール30、押さえ部材40などを組み付けて構成される。
【0017】
ベースプレート11には支持穴11a,11bが形成され、カバープレート12には支持穴12a,12bが形成されている。支持穴11aと支持穴12aに対して軸ピン14が固定され、支持穴11bと支持穴12bに対して軸ピン15が固定される。カバープレート12には、床面5側に固定されたストライカ13が進入可能なストライカ進入溝12cが形成されている。
【0018】
軸ピン14を中心として回動可能にフック20が設けられる。フック20の回転方向のうち、図3に矢印S1で示す方向をストライカ解放方向とし、矢印S2で示す方向をストライカ引き込み方向とする。
【0019】
フック20は、軸ピン14により軸支される軸穴21と、ストライカ13を内部に保持可能なストライカ保持溝22を有している。ストライカ保持溝22の両側には、第1アーム23と第2アーム24が設けられている。フック20にはさらに、第1アーム23及び第2アーム24とは回転方向に位置を異ならせて、軸穴21を中心とする半径方向に突出する係止部25とバネ掛け部26が設けられている。
【0020】
第1アーム23と第2アーム24は、ストライカ保持溝22に沿って延びる片持ち状の突出部であり、ストライカ保持溝22の最奥部からの突出量(先端までの長さ)は、第2アーム24よりも第1アーム23の方が大きい。第1アーム23は、ストライカ保持溝22に対してストライカ引き込み方向S2側に位置し、第2アーム24は、ストライカ保持溝22に対してストライカ解放方向S1側に位置する。
【0021】
第1アーム23の先端付近には、先端側に進むにつれて第2アーム24から離れる方向に湾曲する導入面23aが形成されている。導入面23aよりも奥側のストライカ保持溝22の内部では、第1アーム23と第2アーム24の間隔が、ストライカ13の直径と略同じになっている。
【0022】
第1アーム23にはさらに、被押圧部23b,23cが形成されている。被押圧部23bは、第1アーム23の先端付近にあり、ストライカ保持溝22に面する導入面23aとは反対の外面側に形成されている。被押圧部23bは、第1アーム23の基端側に進むにつれて導入面23aとの間隔を大きくする傾斜面である。被押圧部23cは、被押圧部23bに続いて第1アーム23の外面側に形成されており、被押圧部23bとは逆方向に傾斜する傾斜面である。
【0023】
フック20は、フック付勢バネ27によって、ストライカ解放方向S1に向けて回転付勢されている。フック付勢バネ27は引張バネであり、一端がフック20のバネ掛け部26に掛けられ、他端がカバープレート12のバネ掛け部12dに掛けられる。
【0024】
軸ピン15を中心として回動可能にポール30が設けられる。ポール30の回転方向のうち、図3に矢印T1で示す方向を係止方向とし、矢印T2で示す方向を係止解除方向とする。
【0025】
ポール30は、軸ピン15により軸支される軸穴31を有している。また、ポール30は、軸穴31の周囲からそれぞれ異なる方向に突出する係止部32と、牽引アーム33と、連係部34とを有する。係止部32と連係部34は、軸穴31を挟んで概ね反対方向に突出しており、軸穴31からの係止部32と連係部34の突出量(先端までの長さ)は、概ね等しい。牽引アーム33の先端付近には、伝達穴33aが形成されている。また、伝達穴33aの形成箇所から側方へ突出するバネ掛け部35が設けられている。
【0026】
ポール30は、ポール付勢バネ36によって、係止方向T1に向けて回転付勢されている。ポール付勢バネ36は引張バネであり、一端がポール30のバネ掛け部35に掛けられ、他端がカバープレート12のバネ掛け部12dに掛けられる。
【0027】
牽引アーム33の伝達穴33aに操作部材37(図2参照)が挿入される。操作部材37にはケーブル(図示略)が接続している。車両用シート1のシートバック3を前傾させると(図1参照)、ケーブルが牽引されて操作部材37から牽引アーム33に力が伝わり、ポール付勢バネ36の付勢力に抗してポール30が係止解除方向T2に回転する。
【0028】
軸ピン15を中心として回動可能に押さえ部材40が設けられる。つまり、ポール30と押さえ部材40は同軸上に支持されている。押さえ部材40の回転方向は、ポール30の回転方向と同様に、係止方向(図3に矢印T1で示す方向)と係止解除方向(図3に矢印T2で示す方向)として表現する。
【0029】
押さえ部材40は、軸ピン15により軸支される軸穴41を有している。また、押さえ部材40は、軸穴41の周囲からそれぞれ異なる方向に突出する押さえ部42と、バネ掛けアーム43と、連係部44とを有する。押さえ部42と連係部44は、軸穴41を挟んで概ね反対方向に突出している。
【0030】
押さえ部材40は、押さえ部材付勢バネ45によって、係止方向T1に向けて回転付勢されている。押さえ部材付勢バネ45は引張バネであり、一端が押さえ部材40のバネ掛けアーム43に掛けられ、他端がベースプレート11のバネ掛け部11cに掛けられる。
【0031】
図2に示すように、ポール30と押さえ部材40はそれぞれ板状の部材であり、軸ピン15の軸線に沿って重なるように配置される。なお、ポール30の方が押さえ部材40よりも、軸ピン15の軸線方向における肉厚が大きい。押さえ部材40の連係部44は途中で屈曲しており、ポール30の連係部34と押さえ部材40の連係部44(屈曲した先端側の部分)が、軸ピン15の軸線方向で同じ位置にある。従って、ポール30と押さえ部材40は、回転方向の互いの位置関係の変化に応じて、連係部34と連係部44を当接させたり離間させたりできる。
【0032】
以上の構成からなるロック装置10の動作を説明する。図3は、ロック装置10のロック状態を示している。ロック状態では、フック20は、ストライカ保持溝22内に進入したストライカ13を保持するストライカ保持位置にある。ストライカ保持位置では、フック20のストライカ保持溝22が、カバープレート12のストライカ進入溝12cに対して略垂直な向きになり、ストライカ進入溝12cの開口側へのストライカ13の移動を第2アーム24が規制する。
【0033】
ロック装置10のロック状態では、ポール30はロック位置にある。ポール30のロック位置では、係止部32の先端が、フック20の係止部25の側面に対して、ストライカ解放方向S1に対向(近接)して位置している。ポール30は、ポール付勢バネ36による係止方向T1への付勢力によって、ロック位置に保持される。フック20はフック付勢バネ27によってストライカ解放方向S1へ付勢されているが、係止部25が係止部32に当接することにより、ストライカ解放方向S1への回転が阻止される。従って、フック20は、ストライカ保持位置を維持する。
【0034】
ロック装置10のロック状態ではさらに、押さえ部材40が、押さえ部材付勢バネ45による係止方向T1への付勢力によって、押さえ部42をフック20の係止部25に押し付けた位置(押さえ位置とする)にある。図3に示すように、フック20の係止部25とポール30の係止部32との間には、ロック状態において所定のクリアランスがある。また、ロック装置10は、ロック状態において、ストライカ13やフック20が当接する弾性体(ダンパ部材)を設けていない。しかし、押さえ部材40の押圧によって、フック20がストライカ保持位置に安定して保持(固定)され、ストライカ13とフック20の間の振動やガタつきなどを防ぐことができる。
【0035】
ロック状態で、ストライカ解放方向S1へのフック20の回転を規制するのはポール30である。そのため、ポール30は、肉厚を大きく設定して剛性を高くして、フック20を確実に係止できるように構成されている。一方、押さえ部材40は、ロック状態でフック20を補助的に安定させる役割であり、ポール30に比べて肉厚を小さく設定している。
【0036】
ロック装置10のロック状態において、車両用シート1のリクライニング装置をロック解除してシートバック3を前傾させると(図1(A)参照)、ケーブル(図示略)が牽引される。牽引されるケーブルを介してロック解除操作力が操作部材37(図2)に伝達されると、図4に示すように、ポール付勢バネ36の付勢力に抗して、ポール30が軸ピン15を中心として係止解除方向T2に回転する。すると、ポール30の係止部32が、フック20の係止部25の回転軌跡上から離脱して、ポール30がフック20を係止しないロック解除位置になる。
【0037】
ポール30がロック解除位置へ回転して、ポール30によるフック20の係止が解除されると、ストライカ解放方向S1に回転可能になったフック20が、図5に示すストライカ解放位置へ回転する。ストライカ解放位置へフック20を回転させる力は、フック付勢バネ27の付勢力によって与えられるが、さらにポール30と押さえ部材40がフック20の回転を補助するように機能する。
【0038】
より詳しくは、図3に示すロック装置10のロック状態では、軸ピン15を中心とする回転方向において、押さえ部材40の連係部44に対して、係止方向T1側にポール30の連係部34が位置し、係止解除方向T2側にフック20の第1アーム23が位置する。そして、ポール30の連係部34と押さえ部材40の連係部44との間に隙間があり(離間しており)、押さえ部材40の連係部44とフック20の第1アーム23との間に隙間がある(離間している)。
【0039】
ロック状態では、ポール30と押さえ部材40はそれぞれ、係止部32と押さえ部42をフック20に当接させて、係止方向T1(ポール付勢バネ36の付勢方向、押さえ部材付勢バネ45の付勢方向)へのそれ以上の回転が規制される。そのため、ロック状態では、連係部34と連係部44が離間した関係と、連係部44と被押圧部23bが離間した関係がそれぞれ維持される(図3参照)。
【0040】
図3のロック状態から、操作部材37を介した操作によってポール30が係止解除方向T2に回転すると、連係部34が連係部44に接近する。係止解除方向T2へのポール30の回転の初期段階では、押さえ部材40は、ポール30からの回転力が伝達されずに、図3に示す押さえ位置を保っている。また、ポール30の係止部32がフック20の係止部25を係止可能な状態を維持しており、フック20は、ストライカ保持位置に保持された状態が続く。
【0041】
ポール30が単独で係止解除方向T2へ所定量回転した後、ポール30の連係部34が、押さえ部材40の連係部44に当接する。すると、連係部34が連係部44を押圧して、係止解除方向T2へのポール30の回転力が押さえ部材40に伝達される。これにより、押さえ部材40が、押さえ部材付勢バネ45の付勢力に抗して、ポール30と共に係止解除方向T2へ回転するようになる。
【0042】
ポール30と押さえ部材40が共に係止解除方向T2へ所定量回転すると、押さえ部材40の連係部44がフック20の被押圧部23bに当接して、連係部44が被押圧部23bを係止解除方向T2へ押し込む。この連係部44から被押圧部23bへの押圧力は、フック20をストライカ解放方向S1に回転させる力として働く。
【0043】
図4は、係止解除方向T2に回転してロック解除位置に達したポール30の係止部32が、フック20の係止部25から離間した直後の状態を示している。このとき、押さえ部材40は、ポール30のロック解除位置に対応する押さえ解除位置に達しており、押さえ部42がフック20の係止部25から離間している。つまり、ポール30によるフック20の係止可能な状態と、押さえ部材40によるフック20の押さえが、それぞれ解除された直後の状態である。この図4の状態では、係止解除方向T2に回転するポール30及び押さえ部材40からの押圧力と、フック付勢バネ27による付勢力によって、フック20がストライカ保持位置からストライカ解放方向S1へ向けて僅かに回転している。
【0044】
すなわち、ポール30がフック20の係止を解除した時点では、ポール30及び押さえ部材40からの押圧力が、既にフック20に伝達される状態になっている。このように動作タイミングを設定することで、ポール30の係止が解除されてフック20がストライカ保持位置への回転を開始する最初期段階から、ポール30及び押さえ部材40による押圧力のアシストを機能させることができる。
【0045】
図4に示すフック20のストライカ解放方向S1への回転の最初期段階では、押さえ部材40の連係部44が、フック20の第1アーム23のうち被押圧部23bに当接している。そして、フック20がストライカ解放方向S1に向けて回転して第1アーム23と押さえ部材40との位置関係が変化すると、連係部44が当接する対象がフック20の被押圧部23cに変化し、被押圧部23cに対して、ポール30及び押さえ部材40からの押し込み力が作用する。
【0046】
なお、本実施形態とは異なり、押さえ部材40の連係部44がフック20を押し込んでストライカ解放方向S1へ回転させる際に、連係部44が被押圧部23bの領域だけを押し込み、被押圧部23cに対して連係部44が接触しない(被押圧部23cが連係部44に対向する段階では、第1アーム23が連係部44から離間する)ように構成してもよい。
【0047】
フック20がさらにストライカ解放方向S1に向けて回転すると、フック20の第1アーム23が押さえ部材40の連係部44から離れる。そして、フック20は、図5に示すストライカ解放位置まで回転して、ストライカ保持溝22からストライカ13が離脱し、ロック装置10がロック解除状態になる。図5に示すように、ロック解除状態では、ポール30の係止部32と押さえ部材40の押さえ部42のそれぞれの側面が、フック20の係止部25の先端部分に対向しており、係止方向T1へのポール30と押さえ部材40の回転が、フック20によって規制される。
【0048】
ポール30は、図4及び図5に示すロック解除位置よりもさらに係止解除方向T2に進んだオーバーストローク位置(図6)まで回転可能である。シートバック3を前傾させたときに、ポール30がオーバーストローク位置まで回転するように、ケーブル及び操作部材37による牽引量を設定している。これにより、部品の精度や組み付けに誤差がある場合でも、ポール30を確実にロック解除位置まで動作させてロック解除させることができる。
【0049】
ロック装置10が図5図6に示すロック解除状態になると、図1(B)のように、ヒンジ機構4を介して車両用シート1を回動させて前方に跳ね上げることができる。
【0050】
車両用シート1を前方へ跳ね上げた状態から戻して、ロック装置10を設けたシート後部が床面5に近づくと、ストライカ13がカバープレート12のストライカ進入溝12cに進入し、フック20の導入面23aに当接する(図5参照)。ストライカ13により導入面23aを押圧されたフック20は、フック付勢バネ27の付勢力に抗してストライカ引き込み方向S2へ回転する。
【0051】
フック20がストライカ引き込み方向S2へ所定量回転すると、フック20の係止部25の先端が、ポール30の係止部32と押さえ部材40の押さえ部42のそれぞれの側面に対向しなくなり、ポール30と押さえ部材40が係止方向T1へ回転可能になる。そして、フック20が図3に示すストライカ保持位置に達すると、ポール付勢バネ36の付勢力によってポール30がロック位置まで回転し、押さえ部材付勢バネ45の付勢力によって押さえ部材40が押さえ位置まで回転し、ロック装置10が上述したロック状態になる。
【0052】
以上のように、ロック装置10では、ロック解除動作でフック20をストライカ保持位置からストライカ解放位置に回転させるときに、フック付勢バネ27の付勢力に加えて、係止解除方向T2に回転するポール30及び押さえ部材40からの押圧力を、フック20に対して付与している。これにより、ロック装置10に作用する負荷が大きい場合でも、フック20を確実にストライカ解放位置まで動作させて、ロック解除させることができる。
【0053】
例えば、ストライカ13は車両の床面5に対して固定の位置にあり、ロック装置10のロック解除時には、ロック装置10を含む車両用シート1の後部を僅かに持ち上げながら、ストライカ13をストライカ保持溝22から離脱させる。このとき、フック20には車両用シート1の後部の重さがかかっており、当該負荷に抗してフック20をストライカ解放方向S1へ回転させる必要がある。そして、操作部材37からのロック解除操作を受けたポール30及び押さえ部材40による押し込み力によって、フック20の回転をアシストすることにより、フック20を回転させながら車両用シート1の後部を持ち上げる形態のロック解除動作であっても、確実に動作させることができる。
【0054】
上述の通り、ロック装置10では、ポール30及び押さえ部材40によるフック20への押圧力を、ロック解除動作の初期段階で付与するように構成している。ロック解除動作では、ストライカ保持位置で停止した状態のフック20をストライカ解放方向S1に回転開始させる初期段階で最も大きな力を要するため、この初期段階でポール30及び押さえ部材40の押圧によるアシストを行うことが、スムーズなロック解除動作の実現に極めて有効である。
【0055】
なお、ポール30及び押さえ部材40によってフック20を押圧するタイミングは、任意に選択できる。例えば、フック20を押圧するタイミングの終期の設定として、ストライカ解放方向S1へのフック20の回転の初期段階だけでなく、より長い期間に亘って、フック20を押圧するように構成してもよい。
【0056】
一方、ポール30及び押さえ部材40によってフック20を押圧する開始時期の設定については、早すぎないことが望ましい。ポール30や押さえ部材40によってフック20をストライカ保持位置に保持させているロック状態では、フック20をストライカ解放方向S1へ押圧してもフック20を回転させることができず、係止解除方向T2へのポール30や押さえ部材40の進行自体が妨げられてしまうおそれがある。そのため、フック20の押圧を開始するタイミングは、本実施形態のように、ポール30がフック20の係止解除を行う直前に設定することが好ましい。あるいは、ポール30によるフック20の係止解除と同時又は係止解除後に、フック20の押圧を開始させてもよい。
【0057】
ポール30と押さえ部材40は、軸ピン15によって同軸で支持されている。従って、ロック解除時に押圧力を順次伝達してフック20を押し込む2つの部材(ポール30、押さえ部材40)が、スペース効率良く配置される。また、共通の軸ピン15でポール30と押さえ部材40を軸支するので、部品点数を少なくすることができる。
【0058】
以上のロック装置10では、ポール30における軸穴31からの係止部32と連係部34の突出量(先端までの長さ)は、概ね等しい。押さえ部材40の連係部44は、軸穴41からの突出量(先端までの長さ)が、ポール30の連係部34と同程度に設定されている。図3から図6に示すように、連係部34や連係部44の先端に近い位置にカバープレート12の壁面が位置しており、連係部34や連係部44を、カバープレート12の壁面に干渉しない突出量に設定することで、ロック装置10の小型化を図っている。
【0059】
一方、ロック解除時にフック20を押し込むという機能に関しては、ポール30から押さえ部材40に力を伝達する箇所や、押さえ部材40からフック20に力を伝達する箇所は、軸ピン15に軸支される回転中心からの距離が大きいほど、フック20を効率的に押し込むことができる。この点に着目して構成した第2の実施形態のロック装置50を、図7に示した。ロック装置50では、フック20の第1アーム28、ポール30の連係部38、押さえ部材40の連係部46が、上述したロック装置10の各部とは異なっており、それ以外の部分はロック装置10と共通している。図7では、フック20、ポール30、押さえ部材40以外の図示を省略している。
【0060】
ロック装置50におけるポール30の連係部38は、係止部32よりも、軸穴31からの突出量(先端までの長さ)が大きい。押さえ部材40の連係部46は、押さえ部42よりも、軸穴41からの突出量(先端までの長さ)が大きい。フック20の第1アーム28は、第1の実施形態の第1アーム23よりも、ストライカ保持溝22の最奥部からの突出量(先端までの長さ)が大きい。第1アーム28における導入面28a、被押圧部28b,28cは、第1の実施形態の導入面23a、被押圧部23b,23cと同様の機能を有する。
【0061】
ロック装置50のロック解除動作時には、係止解除方向T2へ回転するポール30の連係部38から、押さえ部材40の連係部46に押圧力が伝わり、連係部46からフック20の第1アーム28(被押圧部28b,28c)に押圧力が伝わる。図7の状態は、第1の実施形態のロック装置10における図4の状態に対応するものであり、ポール30及び押さえ部材40からの押圧力を受けたフック20が、ストライカ解放方向S1に回転を開始する初期段階を示している。第1の実施形態のロック装置10に比べて、連係部38が連係部46に当接する位置と、連係部46が被押圧部28b(28c)に当接する位置が、ポール30及び押さえ部材40の回転中心(軸ピン15)から離れている。これにより、ポール30及び押さえ部材40の単位回転角あたりのフック20への押し込み量が大きくなり、フック20のストライカ解放位置への回転をアシストする効果が高くなる。
【0062】
以上の各実施形態のロック装置10,50は、ロック解除時に、ポール30の連係部34(38)が押さえ部材40の連係部44(46)を押圧し、押さえ部材40の連係部44(46)がフック20の被押圧部23b,23c(28b,28c)を押圧するという順序で動作する。これとは異なる変形例として、押さえ部材40の連係部44(46)がポール30の連係部34(38)を押圧し、ポール30の連係部34(38)がフック20の被押圧部23b,23c(28b,28c)を押圧するという順序で動作させることもできる。
【0063】
具体的には、軸ピン15を中心とする回転方向において、ポール30の連係部34(38)と押さえ部材40の連係部44(46)の位置を入れ替えて、ポール30の連係部34(38)の係止方向T1側に押さえ部材40の連係部44(46)が位置し、係止解除方向T2側にフック20の第1アーム23(26)が位置するように構成する。また、上記実施形態の操作部材37に相当する操作部材からの操作力が、押さえ部材40に入力されるように構成する。
【0064】
このように、本発明のロック装置は、ロック解除時にフック20に対してストライカ解放方向S1への力を与える部材を、押さえ部材40とポール30のいずれにすることも可能である。つまり、本発明のロック装置は、ポール30がロック位置からロック解除位置に移動(回転)してフック20に対する移動規制を解除するときに、ポール30と押さえ部材40の一方が他方を押圧し、ポール30と押さえ部材40の他方がフック20をストライカ保持位置からストライカ解放位置に向けて押圧するものである。
【0065】
図示のロック装置10(50)では、フック20、ポール30、押さえ部材40などを付勢する付勢手段としてコイルバネ(引張バネ)を用いているが、異なる付勢手段を用いても良い。例えば、付勢手段としてトーションバネを用いることも可能である。
【0066】
図示のロック装置10(50)では、ポール30と押さえ部材40を同軸で支持している。上述のように、当該構成は、省スペースに部品配置を行い、部品点数を少なくできるという利点がある。しかし、ポールと押さえ部材を異なる軸位置で支持した構成に本発明を適用することも可能である。
【0067】
図示のロック装置10(50)は、車両用シート1のフロアロック用に適用したものであるが、本発明のロック装置は、シートのフロアロック用には限定されず、フックとポールを備えるタイプのロック装置に広く適用が可能である。例えば、シートのバックロック用のロック装置や、車両におけるボンネットやトランクリッドなどの開閉体をロックするロック装置などにも適用できる。
【0068】
また、本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【符号の説明】
【0069】
1 :車両用シート
10 :ロック装置
11 :ベースプレート
12 :カバープレート
13 :ストライカ
14 :軸ピン
15 :軸ピン
20 :フック
22 :ストライカ保持溝
23 :第1アーム(アーム部)
23b :被押圧部
23c :被押圧部
24 :第2アーム(アーム部)
25 :係止部
27 :フック付勢バネ
28 :第1アーム(アーム部)
28b :被押圧部
28c :被押圧部
30 :ポール
32 :係止部
34 :連係部
36 :ポール付勢バネ
37 :操作部材
38 :連係部
40 :押さえ部材
42 :押さえ部
44 :連係部
45 :押さえ部材付勢バネ
46 :連係部
50 :ロック装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7