(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231212BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 605
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2020021607
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-311956(JP,A)
【文献】特開2018-114713(JP,A)
【文献】特開2019-055493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列された複数の個別流路と、
それぞれ前記第1方向に延びかつ前記複数の個別流路に連通する第1共通流路及び第2共通流路と、を備え、
前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、圧力室と、前記圧力室に接続する一端と前記ノズルに接続する他端とを有する接続流路と、前記第1共通流路に連通する一端と前記圧力室に連通する他端とを有する第1連通流路と、前記接続流路に連通する一端と前記第2共通流路に連通する他端とを有する第2連通流路と、を含み、
前記第1方向に沿ったノズル面に、複数の前記ノズルが形成されており、
前記第1方向と直交する第1面において、前記接続流路の前記一端から前記他端に向かう第1ベクトルであって前記接続流路の前記他端を終点とする第1ベクトルと、前記第2連通流路の前記一端から前記他端に向かう第2ベクトルであって前記第2連通流路の前記一端を始点とする第2ベクトルとのなす第1角度が、90°未満であり、
前記ノズル面と平行な第2面において、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとのなす第2角度が、90°未満であることを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1角度が45°以上75°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2角度が30°以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記接続流路は、前記一端を有しかつ前記ノズル面と直交する第2方向に延びる直交部と、前記直交部に接続しかつ前記他端を有する傾斜部であって、前記第2方向に対して傾斜しかつ前記第1ベクトルの方向に延びる傾斜部とを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第2共通流路は、入口と、前記第1方向に前記入口から離隔した出口とを有し、
前記第2ベクトルは、前記第1方向に沿って前記第2共通流路の前記入口から前記出口に向かう第3ベクトルの成分を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2面において、前記第2ベクトルと前記第3ベクトルとのなす第3角度が、15°以上45°以下であることを特徴とする、請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1共通流路は、入口と、前記第1方向に前記入口から離隔した出口とを有し、
前記第1連通流路の前記一端から前記他端に向かう第4ベクトルは、前記第1方向に沿って前記第1共通流路の前記入口から前記出口に向かう第5ベクトルの成分を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第2面において、前記第4ベクトルと前記第5ベクトルとのなす第4角度が、15°以上45°以下であることを特徴とする、請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1共通流路と前記第2共通流路とが、前記ノズル面と直交する第2方向に並び、
前記第2面において、前記第1連通流路と前記第2連通流路とが、互いに平行に配置されていることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1共通流路と前記第2共通流路とが、前記ノズル面と平行でかつ前記第1方向と直交する第3方向に並び、
前記第2面において、前記第1連通流路と前記第2連通流路とが、前記第1方向及び前記第3方向に交差する方向に沿った仮想直線上に配置されていることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の個別流路と第1及び第2共通流路とを備えた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(
図5~
図7)には、Y方向に配列された複数のイジェクタ(個別流路)と、それぞれY方向に延びかつ複数のイジェクタに連通する共通供給路支流(第1共通流路)及び共通排出路支流(第2共通流路)とを備えたインクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)が示されている。各イジェクタは、ノズルと、圧力室と、圧力室とノズルとを接続する通路(接続流路)と、圧力室と共通供給路支流とを連通させる供給路(第1連通流路)と、通路と共通排出路支流とを連通させる排出路(第2連通流路)とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(
図6、
図7)では、圧力室とノズルとを接続する通路(接続流路)が、排出路(第2連通流路)に対して垂直に延びている。この場合、接続流路と第2連通流路との境界部分において、液体の流れのベクトルの方向が急変することで速度差が発生し、淀みや気泡の滞留が生じ易くなる。
【0005】
本発明の目的は、接続流路と第2連通流路との境界部分における淀みや気泡の滞留を抑制可能な液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の個別流路と、それぞれ前記第1方向に延びかつ前記複数の個別流路に連通する第1共通流路及び第2共通流路と、を備え、前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、圧力室と、前記圧力室に接続する一端と前記ノズルに接続する他端とを有する接続流路と、前記第1共通流路に連通する一端と前記圧力室に連通する他端とを有する第1連通流路と、前記接続流路に連通する一端と前記第2共通流路に連通する他端とを有する第2連通流路と、を含み、前記第1方向に沿ったノズル面に、複数の前記ノズルが形成されており、前記第1方向と直交する第1面において、前記接続流路の前記一端から前記他端に向かう第1ベクトルであって前記接続流路の前記他端を終点とする第1ベクトルと、前記第2連通流路の前記一端から前記他端に向かう第2ベクトルであって前記第2連通流路の前記一端を始点とする第2ベクトルとのなす第1角度が、90°未満であり、前記ノズル面と平行な第2面において、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとのなす第2角度が、90°未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接続流路と第2連通流路との境界部分における淀みや気泡の滞留を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ったヘッド1の断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るヘッド201の平面図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿ったヘッド201の断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るヘッド301の平面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿ったヘッド301の断面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係るヘッド401の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
先ず、本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の全体構成について説明する。
【0010】
x方向、y方向、z方向は、互いに直交し、それぞれ、本発明の「第1方向」「第3方向」「第2方向」に該当する。本実施形態において、z方向は鉛直方向であり、z方向の一方(
図1の紙面手前側)は上方、z方向の他方(
図1の紙面奥側)は下方である。
【0011】
プリンタ100は、
図1に示すように、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1xと、プラテン3と、搬送機構4と、制御部5とを備えている。
【0012】
ヘッドユニット1xは、x方向に長尺であり、位置が固定された状態で用紙9に対してインクを吐出するライン式である。4つのヘッド1は、それぞれx方向に長尺であり、x方向に千鳥状に配列されている。
【0013】
プラテン3は、ヘッドユニット1xに対してz方向の他方に配置された板状の部材である。プラテン3のz方向の一方の面(即ち、上面)に、用紙9が支持される。
【0014】
搬送機構4は、y方向にヘッドユニット1xおよびプラテン3を挟む2つのローラ対41,41と、ローラ対41,42を回転させる搬送モータ(図示略)とを含む。制御部5の制御により搬送モータが駆動されると、ローラ対41,42が用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が搬送方向に搬送される。搬送方向は、y方向に沿った方向であり、y方向の一方(
図1の上方)から他方(
図1の下方)に向かう方向である。
【0015】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。ROMには、CPUが各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。CPUは、外部装置(パーソナルコンピュータ等)や入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づいて、ROMやRAMに記憶されているプログラムやデータにしたがい、各ヘッド1のドライバIC及び搬送モータ(共に図示略)を制御し、用紙9上に画像を記録させる。
【0016】
次いで、ヘッド1の構成について具体的に説明する。
【0017】
ヘッド1は、
図3に示すように、流路ユニット11と、アクチュエータユニット12とを含む。
【0018】
流路ユニット11は、z方向に積層されかつ互いに接着された15枚のプレート11a~11oで構成されている。各プレート11a~11oには、流路を構成する貫通孔や凹部が形成されている。当該流路は、複数の個別流路20、供給流路31及び帰還流路32を含む。
【0019】
複数の個別流路20は、
図2に示すように、x方向に配列されている。
【0020】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれ、本発明の「第1共通流路」「第2共通流路」に該当し、x方向に延び、かつ、複数の個別流路20に連通している。
【0021】
本実施形態において、供給流路31と帰還流路32とは、
図2及び
図3に示すように、z方向に並んでいる。供給流路31及び帰還流路32は、x方向の長さ、y方向の長さ及びz方向の長さが、互いに略同じである。
【0022】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれのx方向の一端(
図2の上端)に設けられた開口31x,32xを介して、サブタンク(図示略)に連通している。供給流路31及び帰還流路32は、それぞれのx方向の他端(
図2の下端)に設けられた連結部33において、互いに連結されている。
【0023】
開口31xは、本発明における「第1共通流路の入口」に該当する。開口32xは、本発明における「第2共通流路の出口」に該当する。連結部33は、本発明における「第1共通流路の出口」「第2共通流路の入口」に該当し、x方向に開口31x,32xから離隔している。
【0024】
サブタンクは、インクを貯留するメインタンクに連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。サブタンク内のインクは、制御部5の制御によりポンプ(図示略)が駆動されることで、開口31xから供給流路31に流入する。供給流路31に流入したインクは、供給流路31内をx方向の一端(
図2の上端)から他端(
図2の下端)に向かって移動しつつ、各個別流路20に供給される。供給流路31のx方向の他端(
図2の下端)、即ち連結部33に到達したインク、及び、各個別流路20から流出したインクは、帰還流路32に流入する。帰還流路32に流入したインクは、帰還流路32内をx方向の他端(
図2の下端)から一端(
図2の上端)に向かって移動し、開口32xを介してサブタンクに戻される。
【0025】
供給流路31は、
図3に示すように、プレート11cの下面に形成された凹部とプレート11d~11gに形成された貫通孔とで構成されている。帰還流路32は、プレート11iの下面に形成された凹部とプレート11j~11lに形成された貫通孔とプレート11mの上面に形成された凹部とで構成されている。z方向において供給流路31と帰還流路32との間には、ダンパ室35が設けられている。ダンパ室35は、プレート11hの下面に形成された凹部で構成されている。
【0026】
各個別流路20は、
図3に示すように、ノズル21と、圧力室22と、ノズル21と圧力室22とを接続する接続流路23と、圧力室22と供給流路31とを連通させる流入流路24と、接続流路23と帰還流路32とを連通させる流出流路25とを含む。流入流路24及び流出流路25は、圧力室22の幅(x方向の長さ)よりも小さい幅を有し、絞りとして機能する。流入流路24及び流出流路25は、それぞれ、本発明の「第1連通流路」「第2連通流路」に該当する。
【0027】
ノズル21は、プレート11oに形成された貫通孔で構成され、流路ユニット11のz方向の他方の面(即ち、下面)11xに開口している。下面11xは、本発明の「ノズル面」に該当し、z方向と直交しかつx方向及びy方向に沿った面である。下面11xに、複数のノズル21が形成されている。
【0028】
圧力室22は、プレート11aに形成された貫通孔で構成され、流路ユニット11のz方向の一方の面(即ち、上面)に開口している。
【0029】
接続流路23は、圧力室22のy方向の一端から下方に延びる円柱状の流路であり、プレート11b~11nに形成された貫通孔で構成されている。接続流路23の直下に、ノズル21が配置されている。
【0030】
接続流路23は、圧力室22に接続する一端23aと、ノズル21に接続する他端23bとを有する。一端23aは、圧力室22の下面に接続している。他端23bは、ノズル21の上面に接続している。
【0031】
流入流路24は、供給流路31に接続する一端24aと、圧力室22に接続する他端24bとを有する。一端24aは、供給流路31の上面に接続している。他端24bは、圧力室22の下面に接続している。
【0032】
流出流路25は、接続流路23に接続する一端25aと、帰還流路32に接続する他端25bとを有する。一端25aは、接続流路23の側面に接続している。他端25bは、帰還流路32の下面に接続している。
【0033】
なお、連結部33に加え、流入流路24の一端24aも、本発明における「第1共通流路の出口」に該当する。また、連結部33に加え、流出流路25の他端25bも、本発明における「第2共通流路の入口」に該当する。これら一端24a及び他端25bは、x方向に開口31x,32xから離隔している。
【0034】
供給流路31を通るインクは、
図3に矢印で示すように、流入流路24の一端24aから、各個別流路20に供給される。当該インクは、流入流路24を通って圧力室22に流入し、圧力室22内を略水平に移動して、接続流路23に流入する。当該インクは、接続流路23を通って下方に移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが流出流路25を通り、流出流路25の他端25bから帰還流路32に流出する。
【0035】
このようにサブタンクと流路ユニット11との間でインクを循環させることで、流路ユニット11に形成された供給流路31及び帰還流路32、さらには個別流路20における、気泡の排出やインクの増粘防止が実現される。
【0036】
ここで、
図3に示すように、接続流路23は、z方向に平行な方向ではなく、z方向に対して傾斜した方向(y方向及びz方向に交差する方向)に延びている。流出流路25は、y方向に平行に延びている。yz平面(本発明の「第1面」)において、第1ベクトルV1(接続流路23の一端23aから他端23bに向かうベクトルであって、接続流路23の他端23bを終点とするベクトル)と、第2ベクトルV2(流出流路25の一端25aから他端25bに向かうベクトルであって、流出流路25の一端25aを始点とするベクトル)とのなす第1角度θ1は、90°未満である。
【0037】
また、
図2に示すように、接続流路23は、y方向に平行な方向ではなく、y方向に対して傾斜した方向(x方向及びy方向に交差する方向)に延びている。流出流路25も、接続流路23と同様に、y方向に平行な方向ではなく、y方向に対して傾斜した方向(x方向及びy方向に交差する方向)に延びている。xy平面(本発明の「第2面」)において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とは、互いに平行である(即ち、これらベクトルV1,V2のなす第2角度θ2は、0°である)。
【0038】
流入流路24も、流出流路25と同様に、y方向に平行な方向ではなく、y方向に対して傾斜した方向(x方向及びy方向に交差する方向)に延びている。xy平面において、流入流路24と流出流路25とは、互いに平行に配置されている。
【0039】
第2ベクトルV2は、帰還流路32内のインクの流れ方向(即ち、x方向に沿って、帰還流路32の入口となる連結部33や流出流路25の他端25bから、帰還流路32の出口となる開口32xに向かう、第3ベクトルV3)の成分を含む。xy平面において、第2ベクトルV2と第3ベクトルV3とのなす第3角度θ3は、15°以上45°以下(本実施形態では、略30°)である。
【0040】
第4ベクトルV4(流入流路24の一端24aから他端24bに向かうベクトル)は、供給流路31内のインクの流れ方向(即ち、x方向に沿って、供給流路31の入口となる開口31xから、供給流路31の出口となる連結部33や流入流路24の一端24aに向かう、第5ベクトルV5)の成分を含む。xy平面において、第4ベクトルV4と第5ベクトルV5とのなす第4角度θ4は、15°以上45°以下(本実施形態では、略30°)である。
【0041】
なお、
図2のIII-III線は、y方向と平行であり、流入流路24及び流出流路25を通らないが、
図3では1つの個別流路20の空間(流入流路24及び流出流路25を含む。)を示している。
【0042】
アクチュエータユニット12は、下から順に、振動板12a、共通電極12b、複数の圧電体12c及び複数の個別電極12dを含む。
【0043】
振動板12a及び共通電極12bは、流路ユニット11の上面(プレート11aの上面)に配置され、プレート11aに形成された全ての圧力室22を覆っている。一方、圧電体12c及び個別電極12dは、圧力室22毎に設けられており、圧力室22のそれぞれと鉛直方向に重なっている。
【0044】
共通電極12b及び複数の個別電極12dは、ドライバIC(図示略)と電気的に接続されている。ドライバICは、共通電極12bの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極12dの電位を変化させる。具体的には、ドライバICは、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12dに付与する。これにより、個別電極12dの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板12a及び圧電体12cにおいて個別電極12dと圧力室22とで挟まれた部分(アクチュエータ12x)が、圧力室22に向かって凸となるように変形することにより、圧力室22の容積が変化し、圧力室22内のインクに圧力が付与され、ノズル21からインクが吐出される。アクチュエータユニット12は、圧力室22のそれぞれに対応する複数のアクチュエータ12xを有する。
【0045】
以上に述べたように、本実施形態によれば、
図3に示すyz平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とのなす第1角度θ1が90°未満であり、かつ、
図2に示すxy平面において第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とのなす第2角度θ2が90°未満である。この場合、角度θ1,θ2が90°以上の場合に比べ、接続流路23と流出流路25との境界部分において、インクの流れのベクトルの方向が緩やかに変化し、速度差の発生が抑制される。これにより、接続流路23と流出流路25との境界部分における淀みや気泡の滞留を抑制できる。
【0046】
第2角度θ2は、30°以下(本実施形態では、0°)である(
図2参照)。この場合、第2角度θ2が30°を超える場合に比べ、接続流路23と流出流路25との境界部分において、インクの流れのベクトルの方向が、より確実に、緩やかに変化する。これにより、境界部分における流速の低下を、より確実に抑制できる。
【0047】
第2ベクトルV2は、帰還流路32内のインクの流れ方向(即ち、x方向に沿って、帰還流路32の入口となる連結部33や流出流路25の他端25bから、帰還流路32の出口となる開口32xに向かう、第3ベクトルV3)の成分を含む(
図2参照)。第2ベクトルV2が第3ベクトルV3の成分を含まない場合(例えば、第3ベクトルV3が
図2の上から下に向かう方向の場合)、流出流路25から帰還流路32に流入したインクが、帰還流路32内のインクの流れ方向とは逆方向に流れようとするため、流出流路25から帰還流路32、さらに帰還流路32の出口となる開口32xに向かって、インクがスムーズに流れず、気泡の排出が円滑に行われない問題が生じ得る。この点、本実施形態によれば、第2ベクトルV2が第3ベクトルV3の成分を含むため、流出流路25から帰還流路32に流入したインクが、帰還流路32の出口となる開口32xに向かってスムーズに流れ、気泡の排出が促進される。
【0048】
xy平面において、第2ベクトルV2と第3ベクトルV3とのなす第3角度θ3は、15°以上45°以下(本実施形態では、略30°)である(
図2参照)。流出流路25の長さ及び他端25bの位置を変更しないという条件の下、xy平面において、第3角度θ3を15°未満とすると、接続流路23が帰還流路32と重なり得るため、第3角度θ3を15°未満とする構成は採用し難い。xy平面において、第3角度θ3が45°を超える場合、第2ベクトルV2に含まれる第3ベクトルV3の成分が小さくなり、上記効果(流出流路25から帰還流路32に流入したインクが、帰還流路32の出口となる開口32xに向かってスムーズに流れ、気泡の排出が促進されるという効果)を得難くなる。この点、本実施形態によれば、xy平面において、第3角度θ3が15°以上45°以下であるため、接続流路23が帰還流路32と重なるという事態を回避でき、かつ、上記効果(流出流路25から帰還流路32に流入したインクが、帰還流路32の出口となる開口32xに向かってスムーズに流れ、気泡の排出が促進されるという効果)を確実に得ることができる。
【0049】
第4ベクトルV4は、供給流路31内のインクの流れ方向(即ち、x方向に沿って、供給流路31の入口となる開口31xから、供給流路31の出口となる連結部33や流入流路24の一端24aに向かう、第5ベクトルV5)の成分を含む(
図2参照)。第4ベクトルV4が第5ベクトルV5の成分を含まない場合(例えば、第5ベクトルV5が
図2の下から上に向かう方向の場合)、供給流路31から流入流路24に流入したインクが、圧力室22に向かって、供給流路31内のインクの流れ方向とは逆方向に流れなければならず、流れ方向の急変により、気泡が発生し得る。この点、本実施形態によれば、第4ベクトルV4が第5ベクトルV5の成分を含むため、供給流路31から流入流路24に流入したインクが、圧力室22に向かってスムーズに流れ、気泡の発生を抑制できる。
【0050】
xy平面において、第4ベクトルV4と第5ベクトルV5とのなす第4角度θ4は、15°以上45°以下(本実施形態では、略30°)である(
図2参照)。xy平面において、第4角度θ4を15°未満とすると、x方向に互いに隣接する流入流路24同士が重なり得るため、第4角度θ4を15°未満とする構成は採用し難い。xy平面において、第4角度θ4が45°を超える場合、第4ベクトルV4に含まれる第5ベクトルV5の成分が小さくなり、上記効果(供給流路31から流入流路24に流入したインクが、圧力室22に向かってスムーズに流れ、気泡の発生を抑制できるという効果)を得難くなる。この点、本実施形態によれば、xy平面において、第4角度θ4が15°以上45°以下であるため、x方向に互いに隣接する流入流路24同士が重なるという事態を回避でき、かつ、上記効果(供給流路31から流入流路24に流入したインクが、圧力室22に向かってスムーズに流れ、気泡の発生を抑制できるという効果)を確実に得ることができる。
【0051】
供給流路31と帰還流路32とがz方向に並び、xy平面において、流入流路24と流出流路25とが互いに平行に配置されている(
図2参照)。この場合、xy平面において、第4ベクトルV4と第2ベクトルV2とが平行になり、第3角度θ3と第4角度θ4とが互いに同じになる。これにより、供給流路31から流入流路24に流入し、圧力室22を通り、流出流路25から帰還流路32へと向かう、インクの流れがスムーズになる。
【0052】
<第2実施形態>
続いて、
図4及び
図5を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。
【0053】
第1実施形態(
図2)では、xy平面において、第2ベクトルV2と第3ベクトルV3とのなす第3角度θ3、及び、第4ベクトルV4と第5ベクトルV5とのなす第4角度θ4が、共に略30°であるが、第2実施形態(
図4)では、y平面において、第2ベクトルV2と第3ベクトルV3とのなす第3角度θ3、及び、第4ベクトルV4と第5ベクトルV5とのなす第4角度θ4が、共に略60°である。
【0054】
xy平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とは、第1実施形態と同様、互いに平行である(即ち、これらベクトルV1,V2のなす第2角度θ2は、0°である)。
【0055】
さらに、第1実施形態(
図3)では、接続流路23の全体がz方向に対して傾斜しているが、第2実施形態(
図5)では、接続流路23の他端23b近傍のみが、z方向に対して傾斜している。
【0056】
第2実施形態(
図5)において、接続流路23は、一端23aを有しかつz方向に延びる直交部23xと、直交部23xに接続しかつ他端23bを有する傾斜部23yであって、z方向に対して傾斜した傾斜部23yとを含む。
【0057】
第1ベクトルV1は、接続流路23の一端23aから他端23bに向かい、かつ、接続流路23の他端23bを終点とするベクトルである。第1実施形態(
図3)では、第1ベクトルV1が、接続流路23の全体(一端23aから他端23bまで)で定義されるが、第2実施形態(
図5)では、第1ベクトルV1が、接続流路23の傾斜部23yで定義される。換言すると、傾斜部23yが、第1ベクトルV1の方向に延びている。
【0058】
また、yz平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とのなす第1角度θ1が、第1実施形態(
図3)に比べて小さく、45°以上75°以下(本実施形態では、略60°)である。
【0059】
なお、
図4のV-V線は、y方向と平行であり、流入流路24及び流出流路25を通らないが、
図5では1つの個別流路220の空間(流入流路24及び流出流路25を含む。)を示している。
【0060】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1角度θ1が45°以上75°以下である(
図5参照)。第1角度θ1が45°未満の場合、第1ベクトルV1の始点となる部分(本実施形態では、直交部23xと傾斜部23yとの境界部分。第1実施形態では、接続流路23と圧力室22との境界部分)において、インクの流れのベクトルの方向が急変してしまう。第1角度θ1が75°を超える場合、接続流路23と流出流路25との境界部分における、インクの流れのベクトルの方向の変化を穏やかにするという効果が低下し得る。この点、本実施形態では、第1角度θ1が45°以上75°以下であるため、上記の各問題を抑制できる。
【0061】
また、接続流路23が、直交部23xと、傾斜部23yとを含む(
図5参照)。この場合、接続流路23の全体がz方向に対して傾斜する場合(
図3参照)に比べ、直交部23xがz方向に対して傾斜しない分、直交部23xの側方の空間を確保できる。これにより、流路31,32(特に供給流路31)の幅を大きくすることができる。
【0062】
<第3実施形態>
続いて、
図6及び
図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。
【0063】
第1実施形態(
図2及び
図3)では、供給流路31及び帰還流路32がz方向に並んでいるが、第2実施形態(
図6及び
図7)では、供給流路31及び帰還流路32がy方向に並んでいる。
【0064】
供給流路31は、x方向の一端(
図6の上端)に設けられた開口31xを介して、サブタンク(図示略)に連通している。帰還流路32は、x方向の他端(
図6の下端)に設けられた開口32xを介して、サブタンク(図示略)に連通している。供給流路31及び帰還流路32は、x方向に配列された複数の個別流路320を介して、互いに連通している。
【0065】
本実施形態では、開口31xが本発明における「第1共通流路の入口」に該当し、流入流路24の一端24aが本発明における「第1共通流路の出口」に該当し、流出流路25の他端25bが「第2共通流路の入口」に該当し、開口32xが「第2共通流路の出口」に該当する。開口31xは、各個別流路320の一端24aからx方向に離隔している。開口32xは、各個別流路320の他端25bからx方向に離隔している。
【0066】
x方向に沿って、帰還流路32の入口となる流出流路25の他端25bから、帰還流路32の出口となる開口32xに向かう、第3ベクトルV3は、第1実施形態(
図2)とは逆で、
図6の上から下に向かう方向である。
【0067】
図6に示すように、xy平面において、第2ベクトルV2と第3ベクトルV3とのなす第3角度θ3、及び、第4ベクトルV4と第5ベクトルV5とのなす第4角度θ4が、共に略30°である点、xy平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とが互いに平行である(即ち、これらベクトルV1,V2のなす第2角度θ2は、0°である)点、また
図7に示すように、yz平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とのなす第1角度θ1が90°未満である点は、第1実施形態と同様である。
【0068】
本実施形態では、
図6に示すように、xy平面において、圧力室22、接続流路23、流入流路24及び流出流路25が、y方向に対して傾斜した方向(x方向及びy方向に交差する方向)に延びている。圧力室22、接続流路23、流入流路24及び流出流路25が延びる方向は、互いに平行である。圧力室22、接続流路23、流入流路24及び流出流路25は、x方向及びy方向に交差する方向に沿った仮想直線L上に配置されている。
【0069】
以上に述べたように、本実施形態によれば、供給流路31と帰還流路32とがy方向に並び、xy平面において、流入流路24と流出流路25とが、x方向及びy方向に交差する方向に沿った仮想直線L上に配置されている。この場合、供給流路31から流入流路24に流入し、圧力室22を通り、流出流路25から帰還流路32へと向かう、インクの流れがスムーズになる。
【0070】
<第4実施形態>
続いて、
図8を参照し、本発明の第4実施形態に係るヘッド401について説明する。
【0071】
第4実施形態(
図8)は、第3実施形態(
図6)の変形例であり、xy平面において、第2ベクトルV2と第3ベクトルV3とのなす第3角度θ3、及び、第4ベクトルV4と第5ベクトルV5とのなす第4角度θ4が、第3実施形態よりも大きく、共に略60°である。
【0072】
xy平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とが互いに平行である(即ち、これらベクトルV1,V2のなす第2角度θ2は、0°である)点等は、第3実施形態と同様である。
【0073】
また、第3実施形態と同様、各個別流路420において、圧力室22、接続流路23、流入流路24及び流出流路25が、y方向に対して傾斜した方向(x方向及びy方向に交差する方向)に延びている。圧力室22、接続流路23、流入流路24及び流出流路25が延びる方向は、互いに平行である。圧力室22、接続流路23、流入流路24及び流出流路25は、x方向及びy方向に交差する方向に沿った仮想直線L’上に配置されている。
【0074】
以上に述べたように、本実施形態によれば、角度θ3,θ4の大きさが異なるものの、その他同様の構成を有することにより、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0076】
上述の実施形態(
図2、
図4、
図6、
図8)では、第2角度θ2が0°であるが、90°未満(好ましくは、30°以下)であればよい。つまり、xy平面において、第1ベクトルV1と第2ベクトルV2とが、互いに交差してもよい。この場合において、例えば
図2の第1ベクトルV1を、時計回り及び反時計回りのいずれに回転させてもよい。
【0077】
上述の実施形態(
図2、
図4、
図6、
図8)では、第3角度θ3及び第4角度θ4が、互いに同じであるが、互いに異なってもよい。
【0078】
第1実施形態(
図2)及び第2実施形態(
図4)では、流入流路24と流出流路25とが互いに平行に配置されているが、これに限定されない。例えば、第3角度θ3及び第4角度θ4が互いに異なり、流入流路24と流出流路25とが互いに平行に配置されなくてもよい。
【0079】
第3実施形態(
図6)及び第4実施形態(
図8)では、流入流路24と流出流路25とが仮想直線L,L’上に配置されているが、これに限定されない。例えば、第3角度θ3及び第4角度θ4が互いに異なり、流入流路24と流出流路25とが仮想直線L,L’上に配置されなくてもよい。
【0080】
液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(ノズル面と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0081】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0082】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0083】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1;201;301;401 ヘッド(液体吐出ヘッド)
11x 下面(ノズル面)
20;220;320;420 個別流路
21 ノズル
22 圧力室
23 接続流路
23a 一端
23b 他端
23x 直交部
23y 傾斜部
24 流入流路(第1連通流路)
24a 一端(第1共通流路の出口)
24b 他端
25 流出流路(第2連通流路)
25a 一端
25b 他端(第2共通流路の入口)
31 供給流路(第1共通流路)
31x 開口(第1共通流路の入口)
32 帰還流路(第2共通流路)
32x 開口(第2共通流路の出口)
33 連結部(第1共通流路の出口、第2共通流路の入口)
L;L’ 仮想直線
V1 第1ベクトル
V2 第2ベクトル
V3 第3ベクトル
V4 第4ベクトル
V5 第5ベクトル
θ1 第1角度
θ2 第2角度
θ3 第3角度
θ4 第4角度