(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池モジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20231212BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20231212BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20231212BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20231212BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/244 Z
H01M50/209
H01M50/264
(21)【出願番号】P 2020035124
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 明史
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0312243(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0344061(US,A1)
【文献】国際公開第2019/151037(WO,A1)
【文献】特開2018-049803(JP,A)
【文献】特開2019-075226(JP,A)
【文献】特開2019-145396(JP,A)
【文献】特開2019-096540(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171469(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方側が開口され孔部が形成されていない箱状の収容ケースと、
水平方向に沿って複数の電池セルが積層され、前記収容ケース内に収容された電池スタックと、
前記電池スタックにおいて前記電池セルの積層方向の両端にそれぞれ設けられたエンドプレートと、
金属の板材で形成され、前記電池セルの積層方向に沿って前記電池スタックを加圧するように
前記エンドプレートと前記収容ケースとの間に緊密に配置されたスペーサと、
を備え、
前記エンドプレートの外面には当該エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成され、前記溝部には、前記電池スタックにおける前記電池セルの積層方向の両端部を把持し当該電池スタックを加圧する把持部材に形成された爪部が挿入可能とされ、前記爪部が挿入された状態で前記エンドプレートの外面が当該爪部の外面よりも外側へ突出するように深さが設定されている電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載された電池モジュールの製造に適用される電池モジュール製造方法であって、
前記電池スタックにおける前記電池セルの積層方向の両端部を把持する把持部材によって、電池スタックの積層方向に沿って当該電池スタックを加圧する加圧工程と、
前記加圧工程により加圧された電池スタックを、前記把持部材と共に前記収容ケースに挿入する電池スタック挿入工程と、
前記電池スタック挿入工程により前記収容ケース内に挿入された前記把持部材に沿って、前記スペーサを前記電池スタックと当該収容ケースの間に挿入するスペーサ挿入工程と、
を有する電池モジュール製造方法。
【請求項3】
前記把持部材は、
前記電池スタックを加圧するための加圧力が作用し、前記スペーサを下方側へ案内する板状の基部と、
前記基部から垂下され前記電池セルの積層方向の両端部を把持する爪部と、
前記基部から前記電池セルの積層方向に沿って延出され、前記爪部が前記電池セルの積層方向の両端部を把持した状態で当該電池スタック側に配置される内側板と、
前記基部から前記電池セルの積層方向に沿って延出され、前記内側板とは反対側に設けられた外側板と、
を含んで構成されている請求項2に記載の電池モジュール製造方法。
【請求項4】
前記電池スタックにおける前記電池セルの積層方向の両端にエンドプレートがそれぞれ設けられ、前記エンドプレートの外面において当該エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成され、
かつ前記基部は、前記外側板が延出された面を外面とし、前記外面に沿って前記スペーサが下方側へ案内可能とされ、
前記爪部が前記溝部に挿入された状態で、前記基部は前記エンドプレートの上方側に配置されると共に、当該基部の外面は、前記エンドプレートの外面よりも外側へ突出するように設定されている請求項3に記載の電池モジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール及び電池モジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電池モジュールにおいて、上部が開口された箱状のモジュールケースと、当該モジュールケースに収容される電池スタックと、を備え、電池スタックの長手方向の両端部には、一対のエンドプレートが設けられた技術が開示されている。
【0003】
この先行技術では、当該エンドプレートとモジュールケースとの間で互いに対向するスタック側対向面とケース側対向面とが、略同じ角度でそれぞれ傾斜しており、モジュールケースの収容空間内に電池スタックを押し込むことによって、電池スタックに対して当該電池スタックの長手方向に沿って所定の荷重(加圧力)を付与できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、モジュールケース(以下、「収容ケース」という)は金属で形成されており、収容ケースの長手方向の寸法のばらつきは小さい。これに対して、電池スタックは一部が樹脂で形成されており、電池スタックの長手方向の寸法のばらつきは、収容ケースよりも大きくなる。
【0006】
上記先行技術では、収容ケース内に電池スタックを圧入することによって、当該電池スタックに対して拘束荷重(加圧力)が付与されるようになっているため、製造誤差によって電池スタックの寸法がばらついた場合、電池スタックに対する加圧力にばらつきが生じる可能性がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、収容ケース、電池スタックにおいて製造誤差が生じても電池スタックを加圧する加圧力のばらつきを容易に抑制することが可能となる電池モジュール及び電池モジュール製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る電池モジュールは、上方側が開口され孔部が形成されていない箱状の収容ケースと、水平方向に沿って複数の電池セルが積層され、前記収容ケース内に収容された電池スタックと、前記電池スタックにおいて前記電池セルの積層方向の両端にそれぞれ設けられたエンドプレートと、金属の板材で形成され、前記電池セルの積層方向に沿って前記電池スタックを加圧するように前記エンドプレートと前記収容ケースとの間に緊密に配置されたスペーサと、を備え、前記エンドプレートの外面には当該エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成され、前記溝部には、前記電池スタックにおける前記電池セルの積層方向の両端部を把持し当該電池スタックを加圧する把持部材に形成された爪部が挿入可能とされ、前記爪部が挿入された状態で前記エンドプレートの外面が当該爪部の外面よりも外側へ突出するように深さが設定されている。
【0009】
請求項1に記載の発明に係る電池モジュールでは、収容ケースと、電池スタックと、エンドプレートと、スペーサと、が含まれている。
【0010】
収容ケースは、上方側が開口され孔部が形成されていない箱状を成しており、電池スタックは、水平方向に沿って複数の電池セルが積層され、収容ケース内に収容されている。このように、収容ケース内に電池スタックが収容された状態で、当該電池スタックにおいて電池セルの積層方向の端部に設けられたエンドプレートと収容ケースの間にはスペーサが配置されており、当該スペーサによって、電池スタックは、電池セルの積層方向に沿って加圧された状態が維持されるようになっている。
【0011】
つまり、本発明では、スペーサの板厚を変えることによって、電池スタックにおける電池セルの積層方向に沿った寸法のばらつきを吸収することができる。
【0012】
このため、本発明では、収容ケース、電池スタックにおいて製造誤差が生じても、電池スタックと収容ケースの間にスペーサを設けることによって、電池スタックを加圧する加圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
【0013】
一方、本発明では、収容ケースに孔部が形成されていないため、電池スタックに対する防水効果を得ることができる。比較例として、例えば、収容ケースに孔部が形成された場合、防水効果を得るため、当該孔部を閉塞させる工程が必要となる。しかし、本発明では、そもそも収容ケースに当該孔部が形成されていないため、孔部を閉塞させる工程は不要である。
【0014】
ここで、当該孔部を閉塞させた場合、孔部が閉塞された閉塞部とそれ以外の部位とは剛性が異なる。このため、閉塞部とそれ以外の部位とで電池スタックを加圧する加圧力においてばらつきが生じる可能性がある。
【0015】
これに対して、本発明では、収容ケースには当該孔部が形成されていない。このため、当該孔部が形成されたことによる、電池スタックに対する加圧力のばらつきは生じない。したがって、本発明では、電池スタックを加圧する加圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
【0017】
また、本発明では、電池スタックにおける電池セルの積層方向の両端にそれぞれエンドプレートが設けられており、エンドプレートの外面には、当該エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成されている。
【0018】
電池スタックにおける電池セルの積層方向の両端部を把持し当該電池スタックを加圧する把持部材には、爪部が形成されており、当該爪部がエンドプレートに形成された溝部内に挿入可能とされる。このため、当該エンドプレートの溝部の深さは、把持部材の爪部がエンドプレートの溝部内に挿入された状態で、エンドプレートの外面が爪部の外面よりも外側へ突出するように設定されている。
【0019】
これにより、本発明では、電池スタックのエンドプレートに形成された溝部内に把持部材の爪部が挿入された状態で、当該把持部材の爪部が収容ケースに干渉することなく、当該電池スタックを収容ケース内に収容させることができる。
【0020】
さらに、本発明では、電池スタックが収容ケース内に収容された状態で、収容ケースと干渉することなく、当該把持部材の爪部を電池スタックのエンドプレートに形成された溝部内から退避させることが可能となる。
【0021】
ここで、「エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成」は、エンドプレートの上端から下端に亘って溝部が形成されてもよいし、エンドプレートの上端からエンドプレートの上下方向の中央部に亘って溝部が形成されてもよく、当該溝部は、少なくともエンドプレートの上端から形成されていればよいという意味である。
【0022】
請求項2に記載の発明に係る電池モジュール製造方法は、請求項1に記載された電池モジュールの製造に適用される電池モジュール製造方法であって、前記電池スタックにおける前記電池セルの積層方向の両端部を把持する把持部材によって電池スタックの積層方向に沿って当該電池スタックを加圧する加圧工程と、前記加圧工程により加圧された電池スタックを、前記把持部材と共に前記収容ケースに挿入する電池スタック挿入工程と、前記電池スタック挿入工程により前記収容ケース内に挿入された前記把持部材に沿って、前記スペーサを前記電池スタックと当該収容ケースの間に挿入するスペーサ挿入工程と、を有している。
【0023】
請求項2に記載の発明に係る電池モジュール製造方法では、加圧工程と、電池スタック挿入工程と、スペーサ挿入工程と、が含まれている。
【0024】
まず、加圧工程では、電池スタックにおける電池セルの積層方向の両端部を把持する把持部材によって、電池スタックが積層方向に沿って加圧される。
【0025】
そして、電池スタック挿入工程では、加圧工程により加圧された電池スタックが、把持部材と共に収容ケースに挿入される。
【0026】
次に、スペーサ挿入工程では、電池スタック挿入工程により収容ケース内に挿入された把持部材に沿って、スペーサが電池スタックと当該収容ケースの間に挿入される。
【0027】
つまり、本発明では、電池スタックと収容ケースの間にスペーサを挿入するに当たって、電池スタックを把持して加圧する把持部材が用いられる。この把持部材によって、電池スタックと収容ケースの間に挿入隙を形成し、当該把持部材に沿って挿入隙にスペーサを挿入できるようにしている。
【0028】
このように、本発明では、収容ケース、電池スタックにおいて製造誤差が生じても、電池スタックと収容ケースの間にスペーサを設けることによって、電池スタックを加圧する加圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
【0029】
そして、本発明では、電池スタックを把持して加圧する把持部材を用いてスペーサ用の挿入隙を形成するため、当該挿入隙を形成するための別部材は不要となる。
【0030】
請求項3に記載の発明に係る電池モジュール製造方法は、請求項2に記載の発明に係る電池モジュール製造方法において、前記把持部材は、前記電池スタックを加圧するための加圧力が作用し、前記スペーサを下方側へ案内する基部と、前記基部から垂下され前記電池セルの積層方向の両端部を把持する爪部と、前記基部から前記電池セルの積層方向に沿って延出され、前記爪部が前記電池セルの積層方向の両端部を把持した状態で当該電池スタック側に配置される内側板と、前記基部から前記電池セルの積層方向に沿って延出され、前記内側板とは反対側に設けられた外側板と、を含んで構成されている。
【0031】
請求項3に記載の発明に係る電池モジュール製造方法では、把持部材は、基部と、爪部と、内側板と、外側板と、を含んで構成されている。
【0032】
当該基部は、板状を成しており、電池スタックを加圧するための加圧力が作用するようになっている。また、基部は、電池スタックと収容ケースの間にスペーサが挿入される際に、当該スペーサを下方側へ案内するようになっている。
【0033】
当該爪部は、当該基部から垂下されており、電池セルの積層方向の両端部を把持するようになっている。
【0034】
また、内側板は、基部から電池セルの積層方向に沿って延出されており、爪部が電池セルの積層方向の両端部を把持した状態で、当該電池スタック側に配置されている。
【0035】
一方、外側板は、基部から電池セルの積層方向に沿って延出されており、内側板とは反対側に設けられている。つまり、外側板は、爪部が電池セルの積層方向の両端部を把持した状態で、当該電池スタックの外側に配置されている。
【0036】
ここで、把持部材には、電池スタックにおける電池セルの積層方向に沿って電池スタックの外側から内側へ向かって加圧力が作用する。このため、把持部材に当該内側板を設けることによって、当該加圧力に対して、把持部材の変形を抑制することが可能となる。
【0037】
そして、把持部材において、基部に内側板及び外側板を設けることによって、把持部材の剛性を向上させ、把持部材全体の変形をさらに抑制することが可能となる。
【0038】
請求項4に記載の発明に係る電池モジュール製造方法は、請求項3に記載の発明に係る電池モジュール製造方法において、前記電池スタックにおける前記電池セルの積層方向の両端にエンドプレートがそれぞれ設けられ、前記エンドプレートの外面において当該エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成され、かつ前記基部は、前記外側板が延出された面を外面とし、前記外面に沿って前記スペーサが下方側へ案内可能とされ、前記爪部が前記溝部に挿入された状態で、前記基部は前記エンドプレートの上方側に配置されると共に、当該基部の外面は、前記エンドプレートの外面よりも外側へ突出するように設定されている。
【0039】
請求項4に記載の発明に係る電池モジュール製造方法では、電池スタックにおける電池セルの積層方向の両端にエンドプレートがそれぞれ設けられており、エンドプレートの外面には、当該エンドプレートの上端から上下方向に沿って溝部が形成されている。一方、把持部材の基部は、外側板が延出された面を外面としており、当該外面でスペーサが案内可能とされる。
【0040】
ここで、把持部材の爪部がエンドプレートの溝部に挿入された状態で、把持部材の基部は当該エンドプレートの上方側に配置されると共に、当該基部の外面は、エンドプレートの外面よりも外側へ突出するように設定されている。
【0041】
前述のように、スペーサは、把持部材の基部の外面に沿って下方側へ案内される。このように、当該基部の外面に沿ってスペーサを下方側へ向かって移動させると、スペーサは把持部材の基部から爪部側へ移動することとなる。このため、本発明では、爪部の外面よりもエンドプレートの外面の方が外側へ突出している。
【0042】
比較例として、例えば、当該エンドプレートの外面が基部の外面よりも突出している場合、スペーサを基部から爪部側へ移動させる際、当該スペーサがエンドプレートの上端と干渉してしまう。
【0043】
このため、本発明では、爪部が溝部に挿入された状態で、当該基部はエンドプレートの上方側に配置されると共に、当該基部の外面は、エンドプレートの外面よりも外側へ突出するように設定されている。
【0044】
これにより、スペーサが把持部材の基部から爪部側(下方側)へ移動する際、スペーサがエンドプレートの上端と干渉しないようにすることができ、当該スペーサを把持部材の基部の外面からエンドプレートの外面側へスムーズに案内することが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
以上説明したように、請求項1に記載の電池モジュールは、収容ケース、電池スタックにおいて製造誤差が生じても電池スタックを加圧する加圧力のばらつきを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0047】
請求項2に記載の電池モジュール製造方法は、当該挿入隙を形成するための別部材を必要とすることなく、電池スタックと収容ケースの間に挿入隙を形成し、当該挿入隙にスペーサを挿入できる、という優れた効果を有する。
【0048】
請求項3に記載の電池モジュール製造方法は、把持部材に加圧力が作用した際に、把持部材の変形を抑制させることができる、という優れた効果を有する。
【0049】
請求項4に記載の電池モジュール製造方法は、電池スタックと収容ケースの間にスペーサをスムーズに挿入させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタック及び収容ケースと電池スタックを把持して加圧する把持部材を斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図3】(A)は、本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックを把持して加圧する把持部材を外面側から見た斜視図であり、(B)は、把持部材を内面側から見た斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックの長手方向の両端部が把持部材にそれぞれ把持された状態を斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図6】
図5で示すA-A線に沿って切断したときの平面図である。
【
図7】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックを収容ケースに挿入する状態を斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックが収容ケースに挿入された状態を斜め上方側から見た斜視図である。
【
図9】
図8の要部が拡大された要部拡大断面図である。
【
図10】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックと収容ケースの間にシムを挿入する状態を斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図12】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックと収容ケースの間にシムを挿入している状態を仮想線で示す
図10の要部が拡大された要部拡大断面図である。
【
図13】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックと収容ケースの間にシムを挿入している状態を示す
図10の要部が拡大された要部拡大断面図である。
【
図14】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックと収容ケースの間にシムを挿入している状態を示す
図10の要部が拡大された要部拡大断面図である。
【
図15】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックと収容ケースの間にシムが挿入された状態を示す
図10の要部が拡大された要部拡大断面図である。
【
図16】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックと収容ケースの間にシムを挿入された状態を示す側面図である。
【
図17】
図16で示すB-B線に沿って切断したときの平面図である。
【
図18】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタックの長手方向の両端部から把持部材を退避させた状態を斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図20】本実施形態に係る電池モジュールの一部を構成する電池スタック及びシムが収容ケース内に収容された状態を斜め上方側から見た斜視図である。
【
図21】比較例として示す
図13に対応する要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施形態に係る電池モジュール10について、図面を用いて説明する。なお、各図中に適宜示される矢印UP、矢印L、矢印Wは、本実施形態に係る電池モジュール10の上方向、長手方向、幅方向をそれぞれ示している。
【0052】
<電池モジュールの構成>
まず、本発明の実施形態に係る電池モジュール10の構成について説明する。
【0053】
図1には、本発明の実施形態に係る電池モジュール10の一部を構成する電池スタック12及び収容ケース14と当該電池スタック12を把持して加圧する把持部材30を斜め上方側から見た分解斜視図が示されており、
図2には、
図1に対応する側面図が示されている。
【0054】
図1に示されるように、電池モジュール10は、樹脂製の電池スタック12と、金属製の収容ケース14と、を含んで構成されている。当該電池スタック12は、複数の電池セル16が水平方向に沿って積層された電池積層体18を含んで構成されている。また、電池スタック12には、当該電池セル16の積層方向(矢印L方向)に沿った電池積層体18の両端部12A、12Bに樹脂製のエンドプレート20、21がそれぞれ設けられている。
【0055】
ここで、電池スタック12は、電池セル16の積層方向を長手方向とする略直方体状に形成されており、エンドプレート20、21は、当該積層方向を板厚方向として略矩形板状を成している。また、各電池セル16は、例えば、充放電可能な二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池であり、扁平な直方体形状の角型電池とされているが、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素二次電池等の他の種類であってもよい。
【0056】
さらに、各電池セル16の上面16Aには、円柱状の正極端子16B及び負極端子16Cが設けられている。正極端子16Bと負極端子16Cは、電池積層体18の長手方向(電池セル16の積層方向)に沿って交互に配置されるように電池セル16は向きを変えて配置されている。そして、電池積層体18の長手方向に沿って隣り合う電池セル16の正極端子16B及び負極端子16Cが、導電性部材である図示しないバスバーを介して互いに接続されている。
【0057】
また、当該電池積層体18は、電池セル16と樹脂枠22とが交互に積層された構成になっている。つまり、電池積層体18では、電池セル16と電池セル16の間に絶縁部材としてそれぞれ樹脂枠22が設けられている。
【0058】
樹脂枠22は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂によって形成されており、電池積層体18の長手方向の両端には、電池セル16が配置されている。そして、電池積層体18の長手方向の両端に配置された電池セル16には、ポリプロピレン等の樹脂で形成されたエンドプレート20、21が接合等により一体化されている。
【0059】
一方、本実施形態では、収容ケース14は、アルミニウム等のダイカストで形成されており、上方側が開口(ここでは、上面全体が開口)された箱状を成し、側壁部14Aには孔部が形成されていない。この収容ケース14内に電池スタック12が収容可能とされる(
図20参照)。
【0060】
また、当該収容ケース14の幅方向の中央部には、区画壁24が設けられており、当該区画壁24によって収容ケース14内が二つに区画されている。これにより、収容部26が二つ設けられ、この二つの収容部26内に電池スタック12がそれぞれ収容可能とされる。
【0061】
なお、収容ケース14と電池スタック12とは、相対移動可能であればよく、収容ケース14に対して電池スタック12を移動させるようにしてもよいし、電池スタック12に対して収容ケース14を移動させるようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、収容ケース14の形状を簡易的に図示しているが、実際には当該収容ケース14自体の剛性を向上させるため、収容ケース14には補強リブ等が設けられている。
【0063】
さらに、ここでは、一つの収容ケース14内に二つの電池スタック12が収容可能とされているが、収容ケースの容積を大きくして、一つの収容ケースに一つの電池スタックが収容されるように設定されてもよい。なお、これらの部材に加え、図示はしないが、収容ケース14の収容部26内に電池セル16を冷却する冷却ファン等の冷却部材が収容されてもよい。
【0064】
一方、
図10には、収容ケース14内に収容された電池スタック12と当該収容ケース14の間にシム28を挿入する状態を斜め上方側から見た分解斜視図が示されている。また、
図20には、収容ケース14内に電池スタック12が収容され、かつ当該電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入された状態を斜め上方側から見た斜視図が示されている。
【0065】
図10、
図20に示されるように、本実施形態では、電池セル16の積層方向に沿って、電池スタック12の長手方向(矢印L方向;電池セル16の積層方向)の他端部12Bに設けられたエンドプレート21と収容ケース14の側壁部14Bの間には、シム28が配置可能とされる。なお、本実施形態では、当該シム28は、金属製(例えば、ステンレス)の板材である。
【0066】
このように、電池セル16の積層方向に沿って電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が配置されることによって、当該シム28による反力によって電池スタック12は電池セル16の積層方向に沿って加圧されることとなる。これにより、電解質の材料粒子間のイオン伝導性は保持され、電池スタック12の電池性能は維持されるようになっている。
【0067】
ところで、
図1に示されるように、電池スタック12のエンドプレート20の外面20A、エンドプレート21の外面21Aには、当該エンドプレート20の上端20B、エンドプレート21の上端21Bからそれぞれ上下方向に沿って溝部29(ここでは4本)が設けられている。
【0068】
本実施形態では、
図4、
図5に示されるように、電池スタック12の長手方向の一端部12Aに設けられたエンドプレート20側を把持する把持部材30と、電池スタック12の長手方向の他端部12Bに設けられたエンドプレート21側を把持する把持部材32とが設けられている。
【0069】
なお、
図4には、電池スタック12及び収容ケース14と当該電池スタック12を把持して加圧する把持部材30を斜め上方側から見た分解斜視図が示されており、
図5には、
図4に対応する側面図が示されている。
【0070】
図4、
図5に示される把持部材30と把持部材32とは、離間距離を変えられるようになっており、把持部材30に対して把持部材32が相対的に移動する。当該把持部材30、32の離間距離が小さくなることによって、本実施形態では、電池スタック12が長手方向に沿って加圧可能とされる。
【0071】
図10に示されるように、把持部材30と把持部材32とは、電池スタック12と収容ケース14の間に、シム28を挿入させるか否かによって形状が異なっている。詳細については後述するが、把持部材32によって、電池スタック12と収容ケース14の間に当該シム28が挿入可能とされる。
【0072】
このため、
図20に示されるように、電池スタック12が収容ケース14内に収容された状態で、電池スタック12の長手方向の一端部12Aに設けられたエンドプレート20側では、当該電池スタック12と収容ケース14の間にシム28は配置されていない。一方、電池スタック12の長手方向の他端部12Bに設けられたエンドプレート21側では、電池スタック12と収容ケース14の間にはシム28が配置されている。
【0073】
なお、本実施形態では、電池スタック12の長手方向の他端部12B側にシム28が設けられるように設定されているが、電池スタック12の長手方向の両端部12A、12B側にシム28が挿入されてもよい。この場合、同じ把持部材32が用いられることとなる。また、シム28の挿入の有無に関係なく、同じ把持部材32が用いられてもよいのは勿論のことである。
【0074】
(把持部材30、32)
ここで、把持部材30、32について説明する。
【0075】
図1に示されるように、把持部材30、32は、電池スタック12の幅方向(矢印W方向)の寸法に合わせて形成されている。また、把持部材30、32は、電池スタック12の長手方向に沿った方向から見て略矩形状を成す基部34、36と、当該基部34、36の下部からそれぞれ垂下された爪部38、40と、を含んでそれぞれ構成されており、当該爪部38と爪部40とは略同じ形状を成している。
【0076】
このため、当該把持部材30、32において、まず、爪部38、40の説明を行い、次に、各把持部材30、32に対応して、基部34、36についての説明をそれぞれ行う。
【0077】
図4、
図5に示されるように、把持部材30は、電池スタック12の長手方向の一端部12Aに設けられたエンドプレート20側を把持し、把持部材32は、電池スタック12の長手方向の他端部12Bに設けられたエンドプレート21側を把持するようになっており、基部34、36には、それぞれ加圧力が作用するようになっている。
【0078】
ここで、
図1に示されるように、把持部材30の爪部38、把持部材32の爪部40には、電池スタック12の幅方向に沿って二つの脚片42、44がそれぞれ設けられている。把持部材30の爪部38、把持部材32の爪部40にそれぞれ設けられた脚片42、44は、電池スタック12のエンドプレート20、21に形成された溝部29内にそれぞれ挿入可能とされている。
【0079】
このため、
図4、
図5に示されるように、把持部材30の爪部38の脚片42、把持部材32の爪部40の脚片44が、エンドプレート20、21の溝部29内にそれぞれ挿入された状態で、把持部材30の基部34、把持部材32の基部36は、当該エンドプレート20、21の上方側にそれぞれ配置される。
【0080】
そして、把持部材30に対して把持部材32が近づくことによって、当該爪部38、40を介して、電池スタック12が長手方向に沿って加圧され圧縮されることとなる。
【0081】
一方、
図14には、
図10の要部が拡大された要部拡大断面図が示されており、電池スタック12が収容ケース14内に収容された状態で、当該電池スタック12の長手方向の他端部12Bに設けられたエンドプレート21側において、把持部材32に沿って電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入される状態が示されている。
【0082】
図1、
図14に示されるように、本実施形態では、把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44は、根本側よりも先端側の方が細くなっており、根本側の肉厚tは、電池スタック12のエンドプレート20、21に形成された溝部29の深さHよりも小さくなるように設定されている。
【0083】
このため、
図4、
図14に示されるように、当該把持部材30の爪部38の脚片42、把持部材32の爪部40の脚片44が、エンドプレート20、21の溝部29内にそれぞれ挿入された状態で、エンドプレート20の外面20A、エンドプレート21の外面21Aが、脚片42の外面42A、脚片44の外面44Aよりも外側へそれぞれ突出するようになっている。
【0084】
そして、
図10、
図14に示されるように、電池スタック12のエンドプレート21側では、当該電池スタック12が収容ケース14内に収容された状態で、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が配置される。
【0085】
(把持部材30の基部34)
ここで、把持部材30側の基部34について説明する。
【0086】
図1に示されるように、把持部材30の基部34は、略直方体状を成しており、基部34の外面34Aの上部には、電池スタック12を加圧するための加圧力F(
図5参照)が把持部材30側へ向かって作用するようになっている。一方、基部34の内面34B側には、基部34の幅方向の両端部34C、34D及び基部34の外面34Aを含む外壁部35を残して、略直方体状の落し込み部46が形成されている。
【0087】
このように、当該落し込み部46を形成させることによって、基部34は、成形時におけるひけを抑制することができる。そして、基部34において、幅方向の両端部34C、34Dを残すと共に外壁部35で端部34Cと端部34Dを繋ぐことによって、これらを互いに補強している。
【0088】
以上のように、把持部材30では、剛性を確保すると共に、基部34の外面34Aに作用する加圧力F(
図5参照)に対して、把持部材30の変形を抑制可能としている。
【0089】
(把持部材32の基部36)
次に、把持部材32側の基部36について説明する。
【0090】
図3(A)には、把持部材32を外面36A側から見た斜視図が示されており、
図3(B)には、把持部材32を内面36B側から見た斜視図が示されている。
【0091】
図1、
図3(A)に示されるように、把持部材32の基部36は、矩形板状を成しており、基部36の外面36Aの上部には、電池スタック12を加圧するための加圧力F(
図5参照)が把持部材30側へ向かって作用するようになっている。
【0092】
当該基部36は、
図10に示されるように、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入される際に、当該シム28を案内可能としている。なお、シム28は、基部36の下部に当接可能とされ、当該基部36の外面36Aに沿って下方側へ案内される。
【0093】
また、
図1、
図3(A)、(B)に示されるように、基部36の内面36Bからは、基部36の幅方向の両端部からそれぞれ内側板48が電池セル16の積層方向に沿って延出されている。また、基部36の外面36Aからは、基部36の幅方向の両端部からそれぞれ外側板50が電池セル16の積層方向に沿って延出されている。
【0094】
つまり、基部36は、平面視でH字状を成している。これにより、把持部材32の剛性を確保し、基部36の外面36Aに作用する加圧力F(
図5参照)に対して、把持部材32の変形を抑制可能としている。
【0095】
なお、本実施形態では、内側板48と外側板50とが、電池セル16の積層方向に沿って同一直線状に形成されているが、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、内側板48は、基部36の幅方向の両端部及び中央部に形成されてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、内側板48と外側板50は略同じ板厚で形成されているが、内側板48と外側板50とで板厚が異なっていてもよい。
【0097】
一方、
図8には、電池スタック12が収容ケース14に挿入された状態の斜視図が示されており、
図9には、
図8の要部が拡大された要部拡大断面図が示されている。
図9は、把持部材32の爪部40がエンドプレート21の溝部29に挿入された状態で、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入される状態が仮想線で示されている。
【0098】
図9に示されるように、本実施形態では、把持部材32の爪部40がエンドプレート21の溝部29に挿入された状態で、当該基部36の外面36Aは、エンドプレート21の外面21Aよりも外側へ突出するように設定されている。
【0099】
ここで、
図14、
図15は、
図10の要部が拡大された要部拡大断面図がそれぞれ示されている。
図14は、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入される状態が示されている。一方、
図15は、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入された状態が示されており、シム28の上部側の図示は省略されている。
【0100】
また、
図18は、電池スタック12のエンドプレート20、21から把持部材30、32を退避させた状態を斜め上方側から見た分解斜視図であり、
図19は、
図18に対応する側面図である。
【0101】
本実施形態では、
図10、
図14、
図15に示されるように、把持部材30の爪部38、把持部材32の爪部40が、エンドプレート20、21の溝部29内にそれぞれ挿入された状態で、把持部材32側において、収容ケース14と電池スタック12の間にシム28が挿入された後、
図18、
図19に示されるように、把持部材30、32は電池スタック12から退避する。
【0102】
<電池モジュールの作用及び効果>
次に、本発明の実施形態に係る電池モジュール10の作用及び効果について、電池モジュール10を製造する製造工程(製造方法)の説明と併せて説明する。
【0103】
本実施形態に係る電池モジュール10は、簡単に説明すると、電池スタック12を加圧する加圧工程と、電池スタック12を測長する測長工程と、電池スタック12を収容ケース14内に挿入する電池スタック挿入工程と、シム28を挿入するシム挿入工程と、を順に経て製造される。
【0104】
(電池スタックの加圧工程)
本実施形態における電池スタック12の加圧工程では、まず、
図4、
図5に示されるように、電池スタック12の長手方向の両端部12A、12Bに設けられたエンドプレート20、21の外面20A、21Aに形成された複数の溝部29内に、把持部材30、32に設けられた爪部38、40をそれぞれ挿入する。
【0105】
そして、把持部材30に対して把持部材32を近づけ、当該把持部材30、32の爪部38、40を介して、電池セル16の積層方向(矢印L方向)に沿って当該電池スタック12を所定の加圧力(F)で加圧する。これにより、電池スタック12は、電池セル16の積層方向に沿って圧縮される。
【0106】
(電池スタックの測長工程)
図5には、電池スタック12の長手方向の両端部12A、12Bが把持部材30、32にそれぞれ把持された状態を示す側面図が示されており、
図6には、
図5において示されるA-A線に沿って切断したときの平面図が示されている。
【0107】
本実施形態における電池スタック12の測長工程では、
図6に示されるように、電池スタック12の長手方向の長さ(L1)及び収容ケース14の収容部26の長手方向の長さ(L2)を測長する。
【0108】
(電池スタック挿入工程)
図7には、電池スタック12を収容ケース14に挿入する状態を斜め上方側から見た分解斜視図が示されている。
【0109】
本実施形態における電池スタック12の挿入工程では、まず、
図7に示されるように、電池スタック12の長手方向の両端部12A、12Bに設けられたエンドプレート20、21に形成された複数の溝部29内に爪部38の脚片42、爪部40の脚片44がそれぞれ挿入され、かつ電池スタック12が電池セル16の積層方向に沿って加圧された状態で、
図8に示されるように、収容ケース14に電池スタック12を挿入する。
【0110】
また、本実施形態では、
図1、
図14に示されるように、把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44は、根本側よりも先端側の方が細くなっており、根本側の肉厚tは、電池スタック12のエンドプレート20、21に形成された溝部29の深さHよりも小さくなるように設定されている(t<H)。
【0111】
このため、本実施形態では、当該把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44が、エンドプレート20、21の溝部29にそれぞれ挿入された状態で、エンドプレート20の外面20A、エンドプレート21の外面21Aが、脚片42の外面42A、脚片44の外面44Aよりも外側へそれぞれ突出するようになっている。
【0112】
つまり、本実施形態では、エンドプレート20、21の溝部29内に把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44がそれぞれ挿入された状態で、当該脚片42の外面42A、脚片44の外面44Aは、エンドプレート20の外面20A、エンドプレート21の外面21Aから突出しない。
【0113】
したがって、本実施形態では、
図7に示されるように、エンドプレート20、21の溝部29内に把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44が挿入された状態で、
図8に示されるように、電池スタック12を収容ケース14内に収容させることができる。
【0114】
(シム挿入工程)
本実施形態におけるシム28の挿入工程では、まず、
図8に示されるように、収容ケース14内に収容(挿入)された電池スタック12において、エンドプレート20、21の溝部29内に把持部材30、32の爪部38、40がそれぞれ挿入された状態で、把持部材30に対して把持部材32を近づける。
【0115】
つまり、当該把持部材30、32の爪部38、40を介して、電池セル16の積層方向(矢印L方向)に沿って当該電池スタック12を所定の加圧力で再加圧する。これにより、
図9に示されるように、収容ケース14と電池スタック12の間に挿入隙sが設けられ、当該挿入隙s内にシム28が挿入(配置)可能とされる。
【0116】
このように、本実施形態では、電池スタック12を把持して加圧する把持部材30、32が用いてシム28用の挿入隙sを形成するため、当該挿入隙sを形成するための別部材は不要となる。
【0117】
ここで、前述のように、
図10には、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28を挿入する状態を斜め上方側から見た分解斜視図が示されている。
図11には、
図10に対応する側面図が示されており、
図12には、把持部材32の基部36に沿ってシム28が電池スタック12と収容ケース14の間に挿入される状態を仮想線で示す
図10の要部が拡大された要部拡大分解斜視図が示されている。また、
図13には、把持部材32の基部36に沿ってシム28が電池スタック12と収容ケース14の間に挿入される状態を示す
図10の要部が拡大された要部拡大断面図が示されている。
【0118】
図9に示されるように、収容ケース14と電池スタック12の間に挿入隙sが設けられた状態で、本実施形態では、
図10~
図12に示されるように、シム28は、基部36の下部に当接可能とされ、
図12、
図13に示されるように、当該基部36において、対向する一対の外側板50の間で基部36の外面36Aに沿って下方側(爪部40側)へ案内されるようになっている。
【0119】
また、本実施形態では、
図9に示されるように、把持部材32の爪部40がエンドプレート21の溝部29に挿入された状態で、把持部材32の基部36は当該エンドプレート21の上方側に配置されるようになっている。さらに、当該基部36の外面36Aは、エンドプレート21の外面21Aよりも外側へ突出するように設定されている。
【0120】
本実施形態では、把持部材32の基部36の外面36Aに沿ってシム28は下方側へ案内される。このため、当該基部36の外面36Aに沿ってシム28を下方側へ向かって移動させると、シム28は把持部材32の基部36から爪部40側へ移動することとなる。
【0121】
比較例として、例えば、図示はしないが、当該エンドプレート21の外面21Aが基部36の外面36Aよりも突出している場合、シム28を基部36から爪部40側へ移動させる際、当該シム28がエンドプレート21の上端と干渉する可能性がある。
【0122】
このため、本実施形態では、
図9に示されるように、当該基部36の外面36Aがエンドプレート21の外面21Aよりも外側へ突出するように設定されることによって、
図14に示されるように、シム28が把持部材32の基部36から爪部40側(下方側)へ移動する際、当該シム28がエンドプレート21の上端と干渉しないようにすることができる。
【0123】
これにより、当該シム28を把持部材32の基部36の外面36Aからエンドプレート21の外面21A側へスムーズに案内することが可能となる。
【0124】
そして、
図15、
図17に示されるように、当該シム28が、収容ケース14と電池スタック12の間に配置されることによって、電池スタック12に対して、当該電池スタック12の長手方向に沿って所定の加圧力が付与されることとなる。
【0125】
したがって、本実施形態では、電池スタック12と収容ケース14の間に設けられた挿入隙sにシム28を挿入する際の当該シム28の挿入性と、収容ケース14内に電池スタック12及びシム28が収容された状態での当該電池スタック12を加圧する加圧力の維持と、の両方を担保することが可能となる。
【0126】
このように、本実施形態では、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28を配置し、当該シム28によって、電池スタック12の長手方向に沿って当該電池スタック12が加圧された状態が維持されるようになっている。つまり、本実施形態では、シム28の板厚を変えることによって、電池スタック12の長手方向に沿った寸法のばらつきを吸収することができる。
【0127】
したがって、本実施形態では、収容ケース14、電池スタック12において製造誤差が生じても、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28を設けることによって、電池スタック12を加圧する加圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
【0128】
ところで、比較例として、例えば、
図21に示されるように、収容ケース102の側壁部104に孔部104Aを形成し、収容ケース102内に電池スタック100が収容された状態で、孔部104A内に加圧棒106を挿入し、当該加圧棒106によって、電池スタック100を長手方向に沿って押圧(圧縮)し、収容ケース102と電池スタック100の間に挿入隙sを設ける方法がある。
【0129】
この方法では、収容ケース102内に電池スタック100が収容された状態で電池スタック100を圧縮させるため、加圧棒106が挿入可能な孔部104Aを収容ケース102に形成する必要がある。
【0130】
このように、収容ケース102に孔部104Aが形成された場合、電池スタック100の防水性を確保するため、挿入隙s内にシム108を挿入した後、当該孔部104Aを閉塞させる必要が生じる。
【0131】
これに対して、本実施形態では、
図8に示されるように、収容ケース14内に電池スタック12及び把持部材30、32が収容された状態で、当該把持部材30に対して把持部材32を近づけることによって、
図9に示されるように、収容ケース14と電池スタック12の間に挿入隙sを設ける。
【0132】
つまり、当該把持部材30、32の爪部38、40を介して、電池セル16の積層方向(矢印L方向)に沿って当該電池スタック12を所定の加圧力F(
図5参照)で再加圧する。これにより、収容ケース14と電池スタック12の間に挿入隙sが設けられ、
図16、
図17に示されるように、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入(配置)される。
【0133】
なお、
図16には、電池スタック12と収容ケース14の間にシム28が挿入された状態を示す側面図が示されており、
図17には、
図16で示すB-B線に沿って切断したときの平面図が示されている。
【0134】
以上のように、本実施形態では、収容ケース14に孔部を形成する必要がないため、当該収容ケース14が形成された状態で電池スタック12に対する防水効果を得ることができる。
【0135】
比較例では、
図21に示されるように、収容ケース102に孔部104Aを形成しなければならないため、防水効果を得るために当該孔部104Aを閉塞させる工程が必要となる。しかし、本実施形態では、
図10に示されるように、収容ケース14に当該孔部が形成されていないため、当該孔部を閉塞させる工程は不要となる。
【0136】
また、比較例として、
図21に示されるように、当該孔部104Aを閉塞させた場合、孔部104Aが閉塞された閉塞部とそれ以外の部位とは剛性が異なる。このため、閉塞部とそれ以外の部位とで電池スタック100を加圧する加圧力のばらつきが生じる可能性がある。
【0137】
これに対して、本実施形態では、
図18に示されるように、収容ケース14には当該孔部が形成されていないため、当該孔部が形成されたことによる、電池スタック12に対する加圧力のばらつきは生じない。したがって、本実施形態では、電池スタック12を加圧する加圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
【0138】
一方、本実施形態では、
図15~
図17に示されるように、収容ケース14と電池スタック12の間にシム28が挿入された後、
図18、
図19に示されるように、把持部材30、32が電池スタック12から退避する。
【0139】
本実施形態では、
図13、
図14に示されるように、当該把持部材30の爪部38の脚片42、把持部材32の爪部40の脚片44が、エンドプレート20、21の溝部29にそれぞれ挿入された状態で、エンドプレート20の外面20A、エンドプレート21の外面21Aが、脚片42の外面42A、脚片44の外面44Aよりも外側へそれぞれ突出するようになっている。
【0140】
このため、本実施形態では、電池スタック12が収容ケース14内に収容された状態で、
図18、
図19に示されるように、収容ケース14と干渉することなく当該把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44を溝部29内から退避させることができる。
【0141】
さらに、後述するが、本実施形態では、電池スタック12が収容ケース14内に収容された状態で、
図18、
図19に示されるように、収容ケース14と干渉することなく当該把持部材30の脚片42、把持部材32の脚片44を溝部29内から退避させることができる。
【0142】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0143】
10 電池モジュール
12 電池スタック
14 収容ケース
16 電池セル
20 エンドプレート
20A 外面(エンドプレートの外面)
20B 上端(エンドプレートの上端)
21 エンドプレート
21A 外面(エンドプレートの外面)
21B 上端(エンドプレートの上端)
28 シム(スペーサ)
29 溝部
30 把持部材
32 把持部材
34A 外面
36 基部
36A 外面(基部の外面)
38 爪部
40 爪部
42 脚片(爪部)
42A 外面(爪部の外面)
44 脚片(爪部)
44A 外面(爪部の外面)
48 内側板
50 外側板
F 加圧力
H 溝部の深さ