(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】走行支援制御装置、駐停車頻度分布モデル作成方法、走行支援制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/137 20060101AFI20231212BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20231212BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20231212BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20231212BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G08G1/137
G08G1/01 A
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
G01C21/26 C
(21)【出願番号】P 2020035131
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 碧
(72)【発明者】
【氏名】武藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一仁
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-76074(JP,A)
【文献】特開2016-122393(JP,A)
【文献】特開2016-189084(JP,A)
【文献】特開2018-181024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記抽出部で抽出された前記駐停車可能区間候補に関する情報を、駐停車可能区間候補毎の一覧として表示する表示部(78B)をさらに有する請求項1記載の走行支援制御装置。
【請求項4】
自動運転中の車両からの路上への駐車要求及び停車要求に対して、駐車可能位置及び停車可能位置までの車両の走行を支援する走行支援制御装置で実行される駐停車頻度分布モデル作成方法であって、
前記走行支援制御装置が、
自動運転情報に含まれ、車両位置を特定するバウンディングボックス画像から他車両を検知し、当該他車両の走行軌跡に基づいて、特定の区間に駐停車している候補となるか否かを判定し、
駐停車している候補となると判定された他車両の駐停車位置を測定することを繰り返すことで、複数の他車両の各基準点の車幅方向の駐停車位置分布特性を生成し、
当該駐停車位置分布特性に基づいて、駐停車している候補となると判定された他車両が予め定めた路側幅に干渉して駐停車しているか否かを、駐停車位置分布に基づく確率を用いて導出し、
他車両の位置を特定する前記バウンディングボックス画像における、路側幅側の2点の角部から当該路側幅に向けて垂線を引き、この垂線と前記路側幅とが交差する2点の間を、自車両の駐停車可能区間候補として抽出し、
抽出された前記駐停車可能区間候補に関する情報を、登録、破棄、及び編集するか否かの妥当性判断要素として利用し得るように、駐停車可能区間候補毎の一覧として表示する、
駐停車頻度分布モデル作成方法。
【請求項5】
コンピュータを、
請求項1~請求項3の何れか1項記載の走行支援制御装置の各部として動作させる、
走行支援制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転中の車両からの路上への駐車要求及び停車要求に対して、駐車可能位置及び停車可能位置までの車両の走行を支援するための走行支援制御装置、駐停車頻度分布モデル作成方法、走行支援制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転に関する開発が進められている。特に、車載システムが車両の加速、操舵、制動の全てを自動的に行い、システムから要請があった場合にのみ運転手が手動で車両を運転する自動運転車両の開発が活発になっている。
【0003】
このような自動運転車両の開発に伴い、定常時及び緊急時を問わず、自動運転中に車両側が要求する位置への駐車及び停車(以下、駐停車という)が可能であるか否かの判断が必要な場合がある。
【0004】
特許文献1には、路上の好適な場所に車両を駐車させることを目的とし、自動運転車両を含む車両から収集した走行軌跡を含むプローブ情報から駐停車実績を収集し駐停車可能区間を判定することが記載されている。
【0005】
すなわち、特許文献1は、道路上の駐停車可能な区間の情報である駐車可能情報を有する地図データを作成する情報処理装置であって、取得部が車両に設けられたセンサが検出した車両周囲の検出情報及び当該車両の位置情報を取得し、判定部が検出情報に基づいて、位置情報が示す位置又は当該位置情報が示す位置の周囲の位置が駐停車可能か否か判定し、設定部が駐停車可能と判定された位置を含む区間に対して、駐停車のためのコスト情報を駐停車可能情報に設定することが記載されている。
【0006】
また、特許文献1には、自動運転中の車両や他車両の駐車実績を蓄積して、その駐停車実績に基づいて駐停車可能か否かを判定してもよいことが記載されている(特許文献1の段落番号0041参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術では、自動運転の市場投入の早い段階では車両数が少なく、実際の駐停車実績だけでその区間を広げてゆくには限界がある。そこで、一台の自動運転車両の他車両検出結果を用いて、他車両の駐停車実績を算出することが考えられるが、他車両の駐停車判定をすることは難しい。
【0009】
本発明は、駐停車可能区間データを蓄積することで、定常時及び緊急時を問わず、自動運転中に車両側が要求する位置への駐車及び停車が可能か否かを適切に判定することができる走行支援制御装置、駐停車頻度分布モデル作成方法、走行支援制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る走行支援制御装置は、自動運転情報に含まれ、車両位置を特定するバウンディングボックス画像から他車両を検知し、当該他車両の走行軌跡に基づいて、特定の区間に駐停車している候補となるか否かを判定する車両駐停車判定部と、前記車両駐停車判定部で駐停車している候補となると判定された他車両の駐停車位置を測定することを繰り返すことで、複数の他車両の各基準点の車幅方向の駐停車位置分布特性を生成し、当該駐停車位置分布特性に基づいて、駐停車している候補となると判定された他車両が予め定めた路側幅に干渉して駐停車しているか否かを、駐停車位置分布に基づく確率を用いて導出する駐停車車両候補導出部と、前記駐停車車両候補導出部で駐停車していると導出した場合に、他車両の位置を特定する前記バウンディングボックス画像における、路側幅側の2点の角部から当該路側幅に向けて垂線を引き、この垂線と前記路側幅とが交差する2点の間を、自車両の駐停車可能区間候補として抽出する抽出部と、を有している。
【0011】
本発明に係る駐停車頻度分布モデル作成方法は、自動運転中の車両からの路上への駐車要求及び停車要求に対して、駐車可能位置及び停車可能位置までの車両の走行を支援する走行支援制御装置で実行される駐停車頻度分布モデル作成方法であって、前記走行支援制御装置が、自動運転情報に含まれ、車両位置を特定するバウンディングボックス画像から他車両を検知し、当該他車両の走行軌跡に基づいて、特定の区間に駐停車している候補となるか否かを判定し、駐停車している候補となると判定された他車両の駐停車位置を測定することを繰り返すことで、複数の他車両の各基準点の車幅方向の駐停車位置分布特性を生成し、当該駐停車位置分布特性に基づいて、駐停車している候補となると判定された他車両が予め定めた路側幅に干渉して駐停車しているか否かを、駐停車位置分布に基づく確率を用いて導出し、他車両の位置を特定する前記バウンディングボックス画像における、路側幅側の2点の角部から当該路側幅に向けて垂線を引き、この垂線と前記路側幅とが交差する2点の間を、自車両の駐停車可能区間候補として抽出し、抽出された前記駐停車可能区間候補に関する情報を、登録、破棄、及び編集するか否かの妥当性判断要素として利用し得るように、駐停車可能区間候補毎の一覧として表示する、ことを特徴としている。
【0012】
本発明に係る走行支援制御プログラムは、コンピュータを、上記の走行支援制御装置の各部として動作させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駐停車可能区間データを蓄積することで、定常時及び緊急時を問わず、自動運転中に車両側が要求する位置への駐車及び停車が可能か否かを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係る車両の自動運転における走行を支援する走行支援制御装置を含む走行支援システムの概略図である。
【
図2】本実施の形態に係る走行支援システムで実行する駐停車可能区間候補抽出のための概要を示し、(A)は車両走行中の上面図、(B)は(A)における駐停車可能区間候補が設定された場合の上面図、(C)は走行支援制御装置の外観図である。
【
図3】駐停車可能区間候補を選別する走行支援制御装置を主体として構築される、走行支援システムの機能ブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る走行支援制御装置の車両駐停車判定部で実行される処理を示し、(A)は車両検知処理を説明するための他車両の走行中の上面図、(B)は車両軌跡算出処理を説明するための他車両の走行中の上面図、(C)は駐停車判定処理を説明するための他車両の走行中の上面図である。
【
図5】本実施の形態に係る走行支援制御装置の駐停車車両候補導出部で実行される処理を示し、(A)は候補位置測定処理を説明するための他車両の上面図であり、(B)は基準点算出処理に用いる走行幅に対する距離xの分布特性図、(C)は確率導出処理に用いる路側幅に対する距離xの正規化分布特性図である。
【
図6】本実施の形態に係る走行支援制御装置の駐停車可能区間候補抽出部で実行される処理を説明するための他車両の上面図である。
【
図7】(A)は本実施の形態に係る走行支援制御装置のユーザインターフェイスとして適用されるモニタの正面図、(B)はモニタに表示されたメイン画面の正面図である。
【
図8】
図7(A)のモニタに表示されたサブ画面の正面図であり、(A)はカメラ映像、(B)は高精度地図上面図である。
【
図9】本実施の形態に係る駐停車可能区間候補抽出制御のための処理の流れ説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本実施の形態に係る車両10の自動運転における走行を支援する走行支援制御装置12を含む走行支援システムの概略図である。
【0016】
車両10には、車両制御装置14及び自動運転制御装置20が搭載されている。
【0017】
車両制御装置14は、車両10が走行しているときの駆動系統(エンジン制御等)及び電気系統(各部の状態検出センサによる故障診断等)を含む制御を実行する。
【0018】
車両制御装置14には、車両10の周囲を撮影するカメラ群(
図1では、一例として、前方向カメラ16A、左前方向カメラ16B、左後方向カメラ16C、右前方向カメラ16D、右後方向カメラ16E、及び後方向カメラ16Fを図示)が接続されている(総称する場合、「カメラ群16」という)。また、車両制御装置14には、複数のミリ波レーダ及びLIDARを備えたレーダ群18が接続されている。
【0019】
自動運転制御装置20は、車両制御装置14から自動運転に必要な情報(例えば、上記カメラ群16及びレーダ群18からの検出情報)に基づき、目的地への運転操作を確定し、車両制御装置14へ指示する。
【0020】
自動運転制御装置20は、ネットワーク22の無線通信装置22Aを介して、走行支援制御装置12と通信可能となっている。
【0021】
走行支援制御装置12では、各車両10からの自動運転による走行履歴情報等が集約され、必要に応じて、オペレータ23により走行支援の指示を行うようになっている。このため、走行支援制御装置12は、必要に応じて、ネットワーク22を介して、リアルタイム地図管理システム24から、リアルタイムの道路情報を取得することが可能となっている。
【0022】
リアルタイム地図管理システム24は、道路等に設置されたカメラ等のインフラ、車両10等に設けられた道路情報発信デバイスからの情報が集約され、現在の道路状況(道路規制、路上駐車等を含む)を解析する機能を有している。
【0023】
(本実施の形態の特徴)
【0024】
図2(A)に示される如く、本実施の形態では、自動運転中の車両10のカメラ群16による撮影範囲(実線円A参照)と、レーダ群18による検出範囲(点線円B参照)とから走行中の周囲の上方を取得し、
図2(B)に示される如く、駐停車している他車両11をバウンディングボックス11Aにより認識して、
図2(C)に示される如く、走行支援制御装置12へ通知することで、走行支援制御装置12における解析で、路側26における、駐停車可能区間候補26Aを抽出することが特徴となっている。
【0025】
図3は、駐停車可能区間候補の抽出制御を実行するための機能ブロック図である。
【0026】
(自動運転制御装置20)
【0027】
他車両情報監視部50には、車両制御装置14からのダイアグコード(CAN(Controller Area Network)信号)が入力され、カメラ群16又はレーダ群18の検出情報の中から自車両の周囲を走行している他車両11の情報(他車両情報)を監視する。他車両情報とは、現在位置情報、現在時刻情報、他車両11を時系列に検出した検出情報を含む。
【0028】
他車両情報監視部50は、通信I/F52の他車両情報送信部52Aに接続されており、取得した他車両情報を走行支援制御装置12の通信I/F56の他車両情報受信部56Aへ送信する。
【0029】
ここで、自動運転制御装置20の通信I/F52は、自動運転情報受信部52Bを備えている。自動運転情報受信部52Bには、走行支援制御装置12の通信I/F56の自動運転情報送信部56Bから、自動運転情報を受信する。一例として、
図3の一点鎖線で示すように、オペレータ23から運転指示を出力する場合がある。
【0030】
受信した自動運転情報は、走行計画部54に送出され、走行計画部54で計画された走行計画に基づき、車両制御装置14の駆動系統及び電気系統を制御して、自動運転による走行を実行する。
【0031】
なお、本実施の形態の特徴は、駐停車可能区間候補26A(
図2参照)を抽出し、蓄積しておくことが主たる目的であるため、走行支援制御装置12側から自動運転制御装置20側への通信は必須ではない。
【0032】
しかし、駐停車可能区間候補26Aの蓄積量が必要十分になった場合は、自動運転情報の1つとして、駐停車可能区間候補26Aに関する情報を、例えば、走行支援制御装置12側のオペレータ23から提供することになる。
【0033】
(走行支援制御装置12)
【0034】
図3に示される如く、走行支援制御装置12は、車両駐停車判定部58を備えており、自動運転車両走行ログ管理データベース82から過去の自動運転情報を取得する。
【0035】
本実施の形態において、駐停車可能区間候補の抽出制御を実現する場合、膨大な運転情報が必要である。自動運転車両走行ログ管理データベース82には、現在までに実行した、膨大な自動運転の走行ログデータが格納されており、短期間で他車両11の駐停車に関する所謂ビッグデータを取得することができる。
【0036】
なお、通信I/F56の他車両情報受信部56Aで受信した、リアルタイムの他車両情報を取得することも可能である。
【0037】
車両駐停車判定部58は、車両検知処理部60、車両軌跡算出処理部62、及び駐停車判定処理部64を備えている。車両駐停車判定部58の各処理は、車両検知処理(
図4(A)参照)→軌跡算出処理(
図4(B)参照)→駐停車判定処理(
図4(C)参照)の手順で時系列に実行される
【0038】
図4(A)に示される如く、車両検知処理部60では、ディープラーニングを始めとする車両検知AIを用いて、車両(ここでは、他車両11)を検知して、当該他車両11のバウンディングボックス11Aを生成する。
【0039】
図4(B)に示される後藤、車両軌跡算出処理部62では、検出された走行中の他車両11の各バウンディングボックス11Aの中心点を設定し、各時刻における他車両11の走行軌跡Lを算出する。
【0040】
図4(C)に示される如く、駐停車判定処理部64では、算出された走行軌跡Lを基に、以下に示す処理を実行する。
【0041】
(処理1) 各中心点に、時系列に時刻t-2、t-1、t0、t1、t2を付与し、ある時刻t0におけるバウンディングボックス11Aの中心点とする半径Rの円Rt0を設定する。
【0042】
(処理2) 時刻t0からΔt経過したt1におけるバウンディングボックス11Aの中心が円Rt0に入っているか否かを確認する。
【0043】
(処理3) 処理2を一定期間Tの間繰り返し(最低3回程度)、中心が円Rt0に入り続けていれば、他車両11の移動量が少ない(又は移動していない)と判断し、当該バウンディングボックス11Aで囲まれている他車両11が停止していると判定する。
【0044】
なお、円Rt0の半径R及び一定期間Tは、マップマッチングの精度や車両認識精度誤差によって決定されるものである。
【0045】
図3に示される如く、車両駐停車判定部58による判定結果は、駐停車車両候補導出部66に送出されるようになっている。
【0046】
駐停車車両候補導出部66は、候補位置測定処理部68、基準点算出処理部70、及び確率導出処理部72を備えている。駐停車車両候補導出部66の各処理は、候補位置測定処理(
図5(A)参照)→基準点算出処理(
図5(B)参照)→確率導出処理(
図5(C)参照)の手順で時系列に実行される。
【0047】
図5(A)に示される如く、候補位置測定処理部68では、速度が0km/hとなっている全ての他車両11について、当該他車両11のバウンディングボックス11Aの枠線の内、道路境界線Dに最も近い点までの距離をxとする。距離xのデータは、他車両11の数だけ収集されていくことになる。
【0048】
図5(B)は、
図5(A)で収集されたデータ(距離x)について、横軸を車線幅、縦軸を距離xの累積数とした場合の距離xの分布特性図である。
【0049】
図5(B)に示す分布特性図では、路側幅内と、走行路幅内とにそれぞれ極大点P1、P2を持つ分布となっている。この内、走行路幅内にある極大点P2は、渋滞等によって道路上で停車した他車両11の距離xの集合であることが予測される。
【0050】
一方、路側幅内にある極大点P1は、駐停車することによって蓄積された他車両11の距離xの集合であることが予測される。
【0051】
言い換えれば、2つの極大点の間に、走行中の他車両11と、駐停車している他車両11とを分類する基準点があるということができる。
【0052】
本実施の形態では、2つの極大点の間にある極小点x0を基準点として求める。すなわち、
図5(B)の分布特性図の微分値をとり、極小点となる内の道路境界線Dに最も近い極小点をx0に設定し、基準点x0とする。
【0053】
図5(C)に示される如く、
図5(B)で設定した基準点x0を用いて、x=0~x0の区間を駐停車区間と定義する。
【0054】
この駐停車区間において、
図5(B)の分布特性図を正規化したものが、
図5(C)に示す分確率性図となる。すなわち、
図5(B)は、横軸が車線幅(基準点x0まで)、縦軸が確率である。確率特性図のピーク値は、確率1よりも小さいのは、例えば、速度を落として、又は一旦停車して、車庫、駐車場、又はガソリンスタンド等の店舗に入るために道路境界線Dに接近した可能性もあることを考慮したものである。
【0055】
ここで、車両駐停車判定部58において、新たに検知した他車両11の距離xが、基準点x0よりも小さい距離x’とすると、
図5(C)の分布特性図を用いて、当該新たなに検知した他車両11が駐停車車両か否かの確率Rを導出し、距離x0よりも小さい距離x’及び確率R(導出情報)を、駐停車可能区間候補抽出部74(
図3及び
図6参照)へ送出する。
【0056】
図6に示される如く、駐停車可能区間候補抽出部74では、駐停車車両候補導出部66の確率導出処理部72から受け付けた導出情報に基づいて、他車両11のバウンディングボックス11Aの四隅の頂点の内、道路境界線Dに近い2点から、道路境界線Dに向けて垂線を引き、この垂線と道路境界線Dと交差する2点の間を、駐停車可能区間候補122として抽出する。
【0057】
図3に示される如く、駐停車可能区間候補抽出部74は、オペレータ操作アプリケーション制御部76に接続されており、抽出した駐停車可能区間候補122に関する情報を、オペレータ操作アプリケーション制御部76に送出する。
【0058】
オペレータ操作アプリケーション制御部76では、ユーザインターフェイス78を操作するオペレータ23が介入することで、抽出した駐停車可能区間候補122等が妥当か否かを判断する。
【0059】
オペレータ操作アプリケーション制御部76には、高精度地図データベース80及び自動運転車両走行ログ管理データベース82に接続されている。自動運転車両走行ログ管理データベースは、自動運転中の車両10から逐次自動運転情報が格納されるようになっており、必要に応じて格納された情報を読み出し、駐停車可能区間候補122等が妥当か否かの判断材料とする。
【0060】
駐停車可能区間候補122等が妥当と判断された場合は、駐停車可能区間候補122に関する情報が、逐次、高精度地図データベース80に格納される。
【0061】
(オペレータ23による登録判定処理)
【0062】
図7(A)に示される如く、ユーザインターフェイス78は、入力デバイス78A(キーボード、マウス等)及び出力デバイス78B(モニタ等)備えており、例えば、出力デバス78Bであるモニタに、自動運転中の車両10の運転状況等が表示され、表示内容をオペレータ23が目視で確認し、必要に応じて、入力デバイス78Aによる入力操作で、当該自動運転中の車両10に対して、自動運転情報がオペレータ操作アプリケーション制御部76を介して通知されるようになっている。
【0063】
本実施の形態における、駐停車可能区間候補122に関する情報も自動運転情報を1つであるが、自動運転情報とする前に、オペレータ23による判定を行うようにしている。
【0064】
図7(B)は、ユーザインターフェイス78の出力デバイス78Bであるモニタに表示される、駐停車可能区間候補122に関する情報を表示するときのメイン画面100である。
【0065】
図7(B)に示される如く、メイン画面100は、基本情報項目欄102、カメラ映像項目欄104、上面図項目欄106、及び登録情報項目欄108に分類されて、列方向(横方向)に帯状に並んだ各項目が1回分の他車両駐停車情報とされ、以下、行方向(縦方向)に、各他車両駐停車情報がスクロール表示可能となっている。
【0066】
メイン画面100では、駐停車可能区間候補抽出部74(
図3参照)で抽出された結果を、地点毎に、基本情報、カメラ映像、上面図(鳥瞰図でもよい)、及び登録情報が一覧表示される。
【0067】
登録情報項目欄108の画面枠には、登録の要否を決める登録チェックボックス110が存在しており、オペレータ23が、当該一覧で登録の可否を判断することができるのであれば、当該登録チェックボックス110を操作する。
【0068】
また、オペレータ23が、当該一覧で登録の可否を判断することができない場合は、登録情報項目欄108の画面枠に設定された登録情報編集チェックボックス112を操作することで、図示は省略したが、登録内容の詳細を編集可能な画面を表示することができる。
【0069】
ここで、カメラ映像項目欄104の画面枠には、映像確認チェックボックス114が設定されており、映像確認チェックボックス114を操作することで、メイン画面100から、
図8(A)に示すサブ画面116に切り替えて映像を確認することができる。
【0070】
図8(A)に示すサブ画面116には、自動運転車両走行ログ管理データベース82(
図3参照)に格納されているログデータから該当のカメラ映像118と、LiDAR等の3D点群情報群映像120が表示されている。
【0071】
さらに、サブ画面116には、他車両11、バウンディングボックス11A、推定される駐停車可能区間候補画像122、及び駐停車車両確率情報欄124が表示される。
【0072】
図8(A)のサブ画面116では、カメラ映像118が動画(又はコマ送りの静画)であり、巻き戻し、再生、早送り等の操作が可能である。
【0073】
この
図8(A)のサブ画面に表示された情報を基に、オペレータ23は、本当に駐停車車両であるか、また、抽出した駐停車車両候補区間が妥当か否かを目視で判断し、その結果に基づいて、「停車車両である」又は「停車車両でない」の何れかのチェックボックス126、128を操作する(停車車両である又は停車車両でない)。さらに、抽出された駐停車可能区間候補画像122が間違っている等の場合は、「検出結果修正」のチェックボックス130を操作して、バウンディングボックス11Aのサイズや位置を修正する。
【0074】
図7(B)に示される如く、上面図項目欄106の画面枠には、区間編集HDマップチェックボックス132が設定されており、この区間編集HDマップチェックボックス132を操作することで、
図8(B)に示すサブ画面134に切り替えて映像を確認することができる。
【0075】
図8(B)に示すサブ画面134には、オペレータ23向けに、自動運転中の車両10を中心とした上面図が高精度地図の道路データ画像136が表示される。
【0076】
さらに、サブ画面134には、自動運転中の車両10、車両10の走行軌跡138、カメラ映像の範囲140、他車両11及びバウンディングボックス11A及び推定される駐停車可能区間候補画像122が重ねて表示される。さらに、推定される駐停車可能区間候補画像122を変更可能なアイコン142、144も表示される。
【0077】
オペレータ23は、このサブ画面134を目視して、推定駐停車区間が妥当と判断すれば、「駐停車区間登録」のチェックボックス146を操作して、現状の駐停車可能区間を高精度地図データベース80(
図3参照)に格納する。
【0078】
また、推定駐停車区間が妥当ではないと判断すれば、「駐停車区間修正」のチェックボックス148を操作して、アイコン142、144を操作して推定される駐停車可能区間候補領域画像122を変更する、或いは、「駐停車区間破棄」のチェックボックス150を操作して、現状の駐停車可能区間を破棄する。
【0079】
以下に、本実施の形態の作用を、
図9のフローチャートに従い説明する。
【0080】
図9は、本実施の形態に係る駐停車可能区間候補抽出制御のための処理の流れ説明するフローチャートである。
【0081】
ステップ200では、自動運転情報を取得する。自動運転情報は、自動運転車両走行ログ管理データベース82に格納されている過去の自動運転情報が主体であるが、自動運転制御装置20からリアルタイムの自動運転情報を取得するようにしてもよい。本実施の形態の駐停車可能区間候補抽出制御の運用が開始された場合は、自動運転制御装置20からリアルタイムの自動運転情報を取得する方が主体となる場合もある。
【0082】
次のステップ202では、取得した自動運転情報から他車両11を検知する(
図4(A)参照)。次いで、ステップ204では、検知した他車両11の軌跡を算出し(
図4(B)参照)、ステップ206へ移行して、他車両11が駐停車車両か否かを判断する(
図4(C)参照)。
【0083】
このステップ206で否定判定された場合は、ステップ200へ戻り、上記工程を繰り返す。また、ステップ206で肯定判定された場合は、ステップ208へ移行して、駐停車車両の候補位置として、道路境界線Dに最も近いバウンディングボックス11Aの角部までの距離xを測定する(
図5(A)参照)。
【0084】
次のステップ210では、今回測定した距離xを、車線幅-距離x分布特性図に追加する(
図5(B)参照)。
【0085】
次のステップ212では、車線幅-距離x分布特性図を解析するのに十分なデータがそろっているか(データ数が所定以上か)否かを判断する。このステップ212で否定判定された場合は、ステップ200へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0086】
これは、解析初期段階で車線幅-距離x分布特性図を生成するまでに所定以上のデータ数が必要であるため、所定以上のデータ数となるまで、車線幅-距離x分布特性図の生成を行う。
【0087】
一方、ステップ212で肯定判定されると、所定以上のデータ数となったと判断し、ステップ214へ移行して、距離xの分布特性(
図5(B)参照)から、基準点x0を算出し、次いでステップ216へ移行して距離0から基準点x0までの距離データxを用いて、正規化する(
図5(C)参照)。これにより、縦軸を確率Rとして捉えることができる。
【0088】
次のステップ218では、今回測定した距離xが基準点x0以下か否か(路側幅に属するか否か)判断する。このステップ218で否定判定された場合は、ステップ200へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0089】
また、ステップ218で肯定判定された場合は、ステップ220へ移行して、
図5(C)の正規化分布特性図から、今回の距離xの確率Rを読み取り、ステップ222へ移行する。
【0090】
ステップ222では、距離x及び確率Rに基づき、駐停車可能区間候補を抽出する。
【0091】
抽出された駐停車可能区間候補に関する情報は、高精度地図データベース80に登録することで、自動運転情報の1つとして判定されることになる。
【0092】
ところで、本実施の形態では、駐停車可能区間候補に関する情報は、高精度地図データベース80に登録するとき、駐停車可能区間候補が妥当か否かを選別するようにした。
【0093】
次のステップ224では、オペレータ操作アプリケーション制御部76へ、当該駐停車可能区間候補に関する情報を送出し、ステップ200へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0094】
オペレータ操作アプリケーション制御部76では、ユーザインターフェイス78からの入力操作に基づいて、抽出された駐停車可能区間候補が妥当か否かを判断し、最終的に、高精度地図データベース80に格納する。
【0095】
以上説明したように本実施の形態では、主として、自動運転車両走行ログ管理データベース82から、過去の自動運転情報を取得して他車両11を検知すると共に、当該他車両11の走行軌跡から駐停車の状況を判断し、道路上の駐停車可能区間候補を抽出するようにした。さらに、抽出した駐停車可能区間候補の妥当性を判断し、高精度地図データベース80に格納することで、今後の自動運転における駐停車要求に対して、適切なアドバイスを行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
A 実線円、B 点線円、10 車両、11 他車両、11A バウンディングボックス、12 走行支援制御装置、14 車両制御装置、16 カメラ群、16A 前方向カメラ、16B 左前方向カメラ、16C 左後方向カメラ、16D 右前方向カメラ、16E 右後方向カメラ、16F 後方向カメラ、18 レーダ群、20 自動運転制御装置、22 ネットワーク、22A 無線通信装置、23 オペレータ、24 リアルタイム地図管理システム、26 路側、26A 駐停車可能区間候補、50 他車両情報監視部、52 通信I/F、52A 他車両情報送信部、52B 自動運転情報受信部、54 走行計画部、56 通信I/F、56A 他車両情報受信部、56B 自動運転情報送信部、58 車両駐停車判定部、60 車両検知処理部、62 車両軌跡算出処理部、64 駐停車判定処理部、66 駐停車車両候補導出部、68 候補位置測定処理部、70 基準点算出処理部、72 確率導出処理部、74 駐停車可能区間候補抽出部、76 オペレータ操作アプリケーション制御部、78 ユーザインターフェイス、78A 入力デバイス、78B 出力デバイス、80 高精度地図データベース、82 自動運転車両走行ログ管理データベース、100 メイン画面、102 基本情報項目欄、104 カメラ映像項目欄、106 上面図項目欄、108 登録情報項目欄、110 登録チェックボックス、112 登録情報編集チェックボックス、114 映像確認チェックボックス、116 サブ画面、118 カメラ映像、120 3D点群情報群映像、122 駐停車可能区間候補画像、124 駐停車車両確率情報欄、126、128 チェックボックス、130 「検出結果修正」のチェックボックス、132 区間編集HDマップチェックボックス、134 サブ画面、136 高精度地図の道路データ画像、138 走行軌跡、140 カメラ映像の範囲、142、144 アイコン、146 「駐停車区間登録」のチェックボックス、148 「駐停車区間修正」のチェックボックス、150 「駐停車区間破棄」のチェックボックス