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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】イオン交換樹脂の充填装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 47/024 20170101AFI20231212BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231212BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B01J47/024
H01M8/04 Z
B01J8/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020039942
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137771
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮太
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119067(JP,A)
【文献】特開2004-209310(JP,A)
【文献】特開2005-262161(JP,A)
【文献】実開昭54-045256(JP,U)
【文献】特開2017-159235(JP,A)
【文献】特開2018-006203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0233134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00 - 49/90
8/00 - 8/46
C02F 1/42
1/28
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成されて内部にイオン交換樹脂を保持するためのケースと、前記開口部を覆うように前記ケースに取り付けられる取付部材と、を備えるカートリッジに適用されるものであり、定められた重量のイオン交換樹脂を前記カートリッジのケース内に充填するイオン交換樹脂の充填装置において、
前記開口部を上方に向けた状態となるよう前記ケースが載せられる重量測定器と、
前記重量測定器に載せられた前記ケースの上端部における前記開口部の壁面を覆うためのマスキング部材と、
前記マスキング部材の重量を受圧面で受けることによって同マスキング部材を前記ケースの上端部の上側で支持しており、且つ、昇降することが可能となっている支持アームと、
前記支持アームに対する前記マスキング部材の上下方向についての相対移動をガイドするガイドバーと、を備え、
前記マスキング部材は、前記支持アームの下降に伴って前記ケースの前記開口部に向けて下降することにより、前記ケースの内側に入り込んで前記開口部の内側壁面を覆うものであることを特徴とするイオン交換樹脂の充填装置。
【請求項2】
前記重量測定器には、前記開口部を上方に向けた状態となるよう前記ケースが載せられたとき、前記ケースが重量測定器に対し水平方向に変位しないよう同ケースの位置決めを行う位置決めピンが設けられている請求項1に記載のイオン交換樹脂の充填装置。
【請求項3】
前記重量測定器は、前記支持アームによって支持された前記マスキング部材の下方に位置しており、且つ、昇降することが可能とされており
前記マスキング部材の下方であって且つ前記重量測定器の上方には、それらマスキング部材と重量測定器との間の第1位置と、同第1位置から水平移動した位置である第2位置との間で移動することが可能とされている搬送装置が設けられており、
前記搬送装置は、前記第1位置と前記第2位置との間で水平移動するベース部材と、そのベース部材の上側に設けられ、前記ケースが開口部を上方に向けた状態で載せられて位置決めされるセット治具と、を備えており、
前記ベース部材には前記セット治具の重量を受ける受圧面が設けられており、
前記セット治具には前記ベース部材をクリアランスを持って上下方向に貫通することにより同ベース部材に対し上下方向に相対移動することが可能となっているガイドロッドが形成されており、
前記ガイドロッドの下端には上昇する前記重量測定器に載せられたときに同重量測定器の前記位置決めピンと係合して位置決めされる係合部材が設けられている請求項2に記載のイオン交換樹脂の充填装置。
【請求項4】
前記ケースの内部には、そのケースと同じ方向に延びるチューブ部材が固定されており、
前記マスキング部材及び前記支持アームは、第1マスキング部材及び第1支持アームであり、
前記ケースの前記開口部のうち、前記チューブ部材の端部全体を覆うための第2マスキング部材が設けられ、
前記第2マスキング部材の重量を受圧面で受けることによって同第2マスキング部材を前記ケースの上端部の上側で支持しており、且つ、昇降することが可能となっている第2支持アームが設けられ、
前記ガイドバーとは別に、前記第2支持アームに対する前記第2マスキング部材の上下方向についての相対移動をガイドするガイドバーが設けられ、
前記第2マスキング部材は、前記第2支持アームの下降に伴って前記ケースの前記開口部に向けて下降することにより、前記開口部のうちの前記チューブ部材の端部外周面を含む端部全体を覆うものである請求項1~3のいずれか一項に記載のイオン交換樹脂の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂の充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に燃料電池を搭載する場合、発電時における燃料電池の温度上昇を抑制することを目的に、燃料電池を冷却するための冷却液を流す冷却回路が設けられる。こうした冷却回路では、冷却液中のイオンの濃度が高くなることによって、冷却回路における金属部分の腐食を招いたり、冷却液の電気電導率が上がって燃料電池の機能低下を招いたりするおそれがある。このため、冷却回路には、冷却液に含まれるイオンをイオン交換樹脂によるイオン交換を通じて取り除くイオン交換器が設けられる。
【0003】
イオン交換器としては、例えば特許文献1に示されるものが知られている。同文献のイオン交換器では、イオン交換樹脂を内部に充填したカートリッジが、イオン交換器のハウジングに対し取り外し可能に取り付けられている。カートリッジは、開口部が形成されて内部にイオン交換樹脂を保持するためのケースと、上記開口部を覆うようにケースに取り付けられる取付部材とを備えている。そして、イオン交換器のハウジング内に流入した冷却液は、カートリッジ(ケース)の内部におけるイオン交換樹脂の周囲を通過してイオンが取り除かれた後、ハウジング外に流出する。
【0004】
イオン交換器のイオン交換樹脂を新しいものに交換する際には、カートリッジをハウジングから取り外した後、新しいイオン交換樹脂が充填されている別のカートリッジがハウジングに取り付けられる。このようにイオン交換樹脂をカートリッジごと新しいものに交換することにより、イオン交換器のイオン交換樹脂を簡単に新しいものに交換することができる。
【0005】
ところで、イオン交換器のカートリッジに対するイオン交換樹脂の充填を効率よく行うことを意図して、その充填のために充填装置を用いることが考えられる。同装置では、開口部が上方を向くようにカートリッジのケースをセットした状態で、定められた重量のイオン交換樹脂を開口部からケース内に投入することにより、同ケースの内部へのイオン交換樹脂の充填が行われる。そして、ケースの内部へのイオン交換樹脂の充填が行われた後、その開口部を覆うように取付部材がケースに対し取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-159235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記充填装置を用いてカートリッジのケース内にイオン交換樹脂を充填する際、ケースの開口部の壁面にイオン交換樹脂が付着すると、その開口部を覆うように取付部材をケースに対し取り付ける際、開口部の壁面と取付部材との間に上記イオン交換樹脂が噛み込んでしまい、取付部材をケースに対し適正に取り付けられなくなるおそれがある。
【0008】
こうしたことを抑制するため、ケースにおける開口部の壁面にイオン交換樹脂が付着しないよう、開口部からケースの内部へのイオン交換樹脂の投入を行おうとすると、その投入を少しずつゆっくりと行う等の対策をとらなければならず、それによってケースに対するイオン交換樹脂の充填の効率が低下してしまう。ひいては、定められた重量のイオン交換樹脂が充填されたカートリッジを製造するにあたり、その製造の効率が低下することになる。
【0009】
本発明の目的は、定められた重量のイオン交換樹脂が充填されたカートリッジを製造する際の製造効率の低下を抑制することができるイオン交換樹脂の充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するイオン交換樹脂の充填装置は、開口部が形成されて内部にイオン交換樹脂を保持するためのケースと、開口部を覆うようにケースに取り付けられる取付部材と、を備えるカートリッジに適用されるものであり、定められた重量のイオン交換樹脂を前記カートリッジのケース内に充填する。この充填装置は、開口部を上方に向けた状態となるようケースが載せられる重量測定器と、重量測定器に載せられたケースの上端部における開口部の壁面を覆うためのマスキング部材と、を備える。更に、同装置は、マスキング部材の重量を受圧面で受けることによって同マスキング部材を上記ケースの上端部の上側で支持しており、且つ、昇降することが可能となっている支持アームと、支持アームに対するマスキング部材の上下方向についての相対移動をガイドするガイドバーと、を備える。
【0011】
上記構成によれば、イオン交換樹脂をカートリッジのケース内に充填する際、開口部を上方に向けた状態でケースが重量測定器に載せられる。このとき、上記ケースの上側にはマスキング部材が位置しており、そのマスキング部材を支持アームが支持している。この状態のもと、支持アームを下降させることによってマスキング部材が上記ケースの上端部における開口部の壁面を覆うようになる。
【0012】
そして、更に支持アームを下降させると、マスキング部材の重量を受けていた支持アームの受圧面が同マスキング部材側から離れ、そのマスキング部材の重量全体がケース及び重量測定器に作用する。なお、このときにはマスキング部材が支持アーム側から離間するよう同支持アームに対し上下方向に相対移動するが、そうした相対移動はガイドバーによってガイドされる。支持アームの受圧面がマスキング部材側から離れたとき、マスキング部材は、支持アームに対して自身の重量を作用させない、いわゆるフローティング状態となる。
【0013】
そして、マスキング部材が上記ケースの上端部における開口部の壁面を覆った状態で、同開口部からケースの内部にイオン交換樹脂が投入される。ケースの内部に投入されたイオン交換樹脂の重量は重量測定器で測定することが可能であり、その測定された重量が定められた値になったときにイオン交換樹脂の投入を終了することによって、定められた重量のイオン交換樹脂がケース内に充填される。なお、ケースの内部にイオン交換樹脂が充填された後には、支持アームの上昇を通じて同支持アームの受圧面でマスキング部材が持ち上げられ、それによってケースの上端の開口部からマスキング部材が外される。
【0014】
ケースの内部へのイオン交換樹脂の投入は、マスキング部材が上記ケースの上端部における開口部の壁面を覆った状態で行われるため、投入されるイオン交換樹脂がケースの開口部の壁面に付着することはない。このため、開口部からケースの内部へのイオン交換樹脂の投入を少しずつゆっくりと行う等、ケースにおける開口部の壁面にイオン交換樹脂が付着しないようにするための対策をとらなくてもよくなり、そうした対策の実施に起因してケースに対するイオン交換樹脂の充填の効率が低下することもなくなる。従って、定められた重量のイオン交換樹脂が充填されたカートリッジを製造するにあたり、その製造の効率が低下することを抑制できる。
【0015】
また、ケースの内部にイオン交換樹脂を投入するとき、ケースの上端部における開口部の壁面を覆うマスキング部材は、支持アームに対してフローティング状態となる、言い換えれば自身の重量全体をケース及び重量測定器に作用させた状態となる。仮に、マスキング部材が支持アームに対してフローティング状態となっておらず、マスキング部材の重量の一部を支持アームで受けている状態で、ケース内へのイオン交換樹脂の投入が行われたとすると、投入されたイオン交換樹脂の重量を重量測定器で正確に測定することができなくなる。これは、マスキング部材の重量全体のうち重量測定器で受けている分がどの程度であるのかが分からないためである。
【0016】
そして、ケース内に投入されたイオン交換樹脂の重量を重量測定器によって正確に測定することができないと、ケース内へのイオン交換樹脂の投入終了タイミングを適切に定めることができず、ケース内に充填されるイオン交換樹脂の重量が不適切な値となる可能性が高くなる。その結果、定められた重量のイオン交換樹脂が充填されたカートリッジを製造するにあたり、イオン交換樹脂の充填量が適正値と異なる不良品が多くなるため、上記カートリッジの製造の効率が低下するという問題が生じる。しかし、マスキング部材は、ケース内にイオン交換樹脂が投入されるとき、支持アームに対してフローティング状態となるため、上述した問題が生じることは抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、定められた重量のイオン交換樹脂が充填されたカートリッジを製造する際の製造効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】イオン交換器及びカートリッジを示す断面図。
図2】カートリッジのケースを示す斜視図。
図3】充填装置を示す略図。
図4】充填装置における搬送装置及びチャックの移動態様を示す略図。
図5】充填装置の動作態様を示す略図。
図6】充填装置の動作態様を示す略図。
図7】第1マスキング部材及び第2マスキング部材によるケース開口部の壁面の被覆態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、イオン交換樹脂の充填装置の一実施形態について、図1図7を参照して説明する。
図1に示すイオン交換器1では、イオン交換樹脂2を内部に充填したカートリッジ3が、イオン交換器1のハウジング4に対し取り外し可能に取り付けられている。ハウジング4の下端部における径方向(図1の左右方向)の一方側(図1の左側)には、冷却液を流入させる流入口4aが形成されている。一方、ハウジング4の下端部における径方向の他方側には、冷却液をハウジング4内から流出させる流出口4bが形成されている。そして、流入口4aを介してハウジング4内に流入した冷却液は、カートリッジ3の内部におけるイオン交換樹脂2の周囲を通過してイオンが取り除かれた後、流出口4bを介してハウジング4外に流出する。
【0020】
上記カートリッジ3は、イオン交換樹脂2を保持するための図1の下方に向けて開口する筒状のケース5を備えている。ケース5の内部には、チューブ部材6が上下方向に延びるように設けられている。そして、チューブ部材6の上端部で水平方向に突出するように形成されたリング部7の外周部をケース5の内周面の上端部に嵌め込むことにより、チューブ部材6がケース5の内部に固定されている。このときには、チューブ部材6の上端と、ケース5の天井面(内面の上端)との間に、所定の大きさの隙間が存在するようにされる。
【0021】
チューブ部材6の下端部には、水平方向に突出するリング部材8が取り外し可能に取り付けられている。そして、リング部材8がチューブ部材6の下端部の外周面に取り付けられたとき、そのリング部材8の外周部がケース5の内周面の下端部に嵌め込まれる。これにより、リング部材8がケース5の開口部を覆うように取り付けられる。このリング部材8は、ケース5の開口部を覆うように取り付けられる取付部材としての役割を担う。リング部7及びリング部材8はそれぞれ、冷却液を上下方向に通過させることが可能となっている。リング部7とリング部材8との間、且つ、チューブ部材6の外周面とケース5の内周面との間には、上記イオン交換樹脂2が設けられている。
【0022】
リング部7の下面、すなわちチューブ部材6の上端側とは反対側の面には、冷却液の通過を許容しつつイオン交換樹脂2の通過を規制するメッシュ7aが固定されている。また、リング部材8の上面、すなわちチューブ部材6の下端側とは反対側の面には、冷却液の通過を許容しつつイオン交換樹脂2の通過を規制するメッシュ8aが固定されている。これらメッシュ7a,8aにより、ケース5内で上記イオン交換樹脂2がリング部7よりも上側に移動したり、リング部材8よりも下側に移動したりしないようにされる。
【0023】
イオン交換器1において、流入口4aを介してハウジング4内に流入した冷却液は、図1に矢印で示すように、カートリッジ3のメッシュ7a、リング部7、イオン交換樹脂2、メッシュ8a、リング部7、及びチューブ部材6を通過した後、流出口4bを介してハウジング4外に流出する。また、流入口4aを介してハウジング4内に流入した冷却液の一部は、カートリッジ3を通過することなく、直接的に流出口4bを介してハウジング4外に流出する。
【0024】
図2は、図1のカートリッジ3のうちのケース5をその開口部が上方を向くように配置した状態、言い換えればケース5を図1と上下逆向きに配置した状態を示している。図2にから分かるように、ケース5の内周面には、複数の突起9が周方向に等間隔をおいてケース5の軸線方向に延びるように形成されている。これら突起9におけるケース5の開口部側の端部は、ピン状に形成されており、上記開口部からケース5の外に向けて突出している。図1に示すように、ケース5の開口部を覆うように取り付けられるリング部材8において、ケース5の突起9(図2)におけるピン状の上記端部に対応する部分には、その端部を嵌め込み可能な凹部が形成されている。そして、リング部材8をケース5の開口部に取り付けると、リング部材8の上記凹部にケース5の突起9の上記端部が嵌め込まれる。その状態のもとで、上記凹部と上記端部とを溶着すれば、リング部材8をケース5に対し固定することができる。
【0025】
次に、カートリッジ3のケース5内にイオン交換樹脂2を充填するための充填装置について説明する。
図3は、こうした充填装置の構造を概略的に示している。同装置は、ケース5の重量を測定するための重量測定器11と、その重量測定器11の上方に位置する第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と、それら第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13を支持するための第1支持アーム14及び第2支持アーム15と、を備えている。重量測定器11は、第1支持アーム14によって支持された第1マスキング部材12及び第2支持アーム15によって支持された第2マスキング部材13の下方に位置しており、且つ、昇降することが可能とされている。
【0026】
充填装置において、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13の下方であって且つ重量測定器11の上方には、ケース5を搬送するための搬送装置16が設けられている。この搬送装置16は、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と重量測定器11との間の第1位置(図3の位置)と、同第1位置から水平移動した位置である第2位置(この例では、図3の紙面と直交する方向についての紙面手前側の位置)との間で移動することが可能とされている。
【0027】
搬送装置16は、上記第1位置と上記第2位置との間で水平移動するベース部材17と、そのベース部材17の上側に設けられたセット治具18と、を備えている。セット治具18は、開口部を上方に向けた状態のケース5を載せるためのものであって、同ケース5をその軸線と直交する方向(水平方向)に変位しないよう位置決めする。セット治具18におけるケース5における径方向の両側にはそれぞれ、ケース5を挟み込んでセンタリングするために上記径方向に移動可能とされているクランプ19が設けられている。ベース部材17の上面において、セット治具18に対する上記径方向の両側にはそれぞれ、上記一対のクランプ19を互いに接近する方向に押圧するための移動機構20が設けられている。移動機構20は、ベース部材17の上面で水平方向において互いに接近離間することが可能となっている。
【0028】
上記ベース部材17には同ベース部材17を上下方向に貫通する複数(この例では二つ)の貫通孔21が形成されている。貫通孔21のセット治具18側の部分には、セット治具18に近づくほど径が拡大するテーパ状の受圧面22が形成されている。受圧面22は、セット治具18の重量を受けるためのものである。上記セット治具18におけるベース部材17の貫通孔21に対応する部分には、上記受圧面22に対応して下方に向かうほど径が縮小するテーパ状の突部23が形成されている。セット治具18には、突部23から下方に突出することにより、ベース部材17の貫通孔21を上下方向に貫通するガイドロッド24が形成されている。ガイドロッド24は、所定のクリアランスを持って貫通孔21を貫通しており、ベース部材17に対して上下方向に相対移動可能となっている。
【0029】
ガイドロッド24の下端には係合部材25が設けられている。この係合部材25は、重量測定器11に対応して位置している。重量測定器11の上面には一対の位置決めピン26が形成されており、係合部材25には位置決めピン26を差し込むことが可能な差し込み穴27が形成されている。そして、重量測定器11を上昇させると、その重量測定器11の上に係合部材25が載せられる。このときには、重量測定器11の位置決めピン26が係合部材25の差し込み穴27に差し込まれ、それによって係合部材25が位置決めピン26と係合して重量測定器11に対し水平方向に変位しないよう位置決めされる。更に、このときには、ケース5がセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25を介して重量測定器11の位置決めピン26によって位置決めされた状態にもなる。位置決めピン26は、開口部を上方に向けた状態でセット治具18に載せられたケース5の位置決めを行うための位置決め部として機能する。
【0030】
この状態のもと、重量測定器11を更に上昇させると、搬送装置16におけるセット治具18(ガイドロッド24及び係合部材25を含む)の重量を受けていたベース部材17の受圧面22から、セット治具18の突部23が上方に離れ、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25等の重量全体が重量測定器11に作用するようになる。なお、このときには、重量測定器11の上昇に伴い、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25がベース部材17に対し上方に相対移動するが、そうした相対移動がガイドロッド24によってガイドされる。ベース部材17の受圧面22から上述したように離れたセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25は、ベース部材17に対して自身の重量を作用させない、いわゆるフローティング状態となる。
【0031】
ベース部材17に対しセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25をフローティング状態としたときには、セット治具18に載せられたケース5が同セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25を介して重量測定器11に載せられた状態となる。この状態のとき、ベース部材17の上面に設けられている移動機構20を互いに接近するよう水平移動させると、移動機構20の押圧部20aによって一対のクランプ19が互いに接近するよう押圧される。これよりセット治具18に載せられたケース5が一対のクランプ19で挟み込まれ、そうした挟み込みを通じてケース5のセンタリングが行われる。また、上述したように移動機構20を互いに接近させたときには、移動機構20の支持面20bがセット治具18の下面の下側に入り込み、その支持面20bでセット治具18からの荷重を受けることが可能となる。
【0032】
充填装置において、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13の下方であって且つ搬送装置16の上方には、同装置16のセット治具18に対しケース5を受け渡しするためのチャック28が設けられている。チャック28は、搬送装置16(ベース部材17)の第1位置と第2位置との間での移動方向と直交する方向且つ水平方向、すなわち図3の左右方向に移動することが可能となっている。チャック28には、図3の左右方向に互いに間隔をおいた一対の回転軸29が上下方向に延びるように設けられており、且つ、それら回転軸29周りに回動することが可能な一対の把持片30が設けられている。チャック28による搬送装置16のセット治具18に対するケース5の受け渡しは、搬送装置16(ベース部材17)が第1位置に移動した状態で行われる。
【0033】
詳しくは、セット治具18に載せられたケース5をチャック28で受け取る際には、第1位置にある搬送装置16のセット治具18を、重量測定器11の上昇を通じてフローティング状態とする。その後、チャック28における一対の把持片30を互いに接近するよう回動させることにより、セット治具18に載せられたケース5をチャック28における一対の把持片30で把持する。この状態で、重量測定器11の下降を通じてセット治具18を下方に移動させると、ケース5とセット治具18とが離されて同ケース5をチャック28と共に図3の左右方向に水平移動させることが可能となる。
【0034】
チャック28における一対の把持片30で把持されたケース5を搬送装置16のセット治具18に渡す際には、同チャック28を第1位置にある搬送装置16の上方に移動させた後、セット治具18を重量測定器11の上昇を通じてフローティング状態とする。これにより、一対の把持片30で把持されているケース5の下端部にセット治具18がセットされ、その状態で一対の把持片30を互いに離れる方向に回動させることによりセット治具18にケース5が載せられる。その後、重量測定器11の下降を通じて、セット治具18及びケース5を図3に示す位置に移動させる。
【0035】
図4は、充填装置での搬送装置16及びチャック28によるケース5の移動態様を示している。図4から分かるように、搬送装置16は第1位置P1と第2位置P2との間で矢印Y1方向に移動することが可能であり、チャック28は第1位置P1に対応する位置とその位置から離れた位置との間で矢印Y2方向に移動することが可能となっている。なお、矢印Y1方向と矢印Y2方向とは両方ともが水平方向になり、且つ、互いに直交している。
【0036】
充填装置では、ケース5を搬送装置16により矢印Y1方向において第1位置P1に対応する位置まで移動させ、その位置でケース5の内部にイオン交換樹脂2を充填した後、同ケース5をチャック28により矢印Y2方向において別の位置に移動させる。また、ケース5をチャック28により矢印Y2方向において第1位置P1に対応する位置まで移動させ、その位置でケース5の内部にイオン交換樹脂2を充填した後、同ケース5を搬送装置16で矢印Y1方向において第2位置P2に対応する位置に移動させるようにしてもよい。
【0037】
次に、充填装置の第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13、並びに、第1支持アーム14及び第2支持アーム15について詳しく説明する。
図3に示すように、充填装置において、重量測定器11の上方に位置する第1マスキング部材12の上側には、セット治具18に載せられたケース5の上方から内部に向けてイオン交換樹脂2を投入するための樹脂投入部35が設けられている。第1マスキング部材12は、セット治具18に載せられたケース5(図2)の上端の開口部のうち、同ケース5の側壁の外側壁面及び内側壁面、並びに突起9のピン状に形成された部分を覆うための筒部31を備えている。この筒部31の上端部には、上方に向かうほど径が拡大するガイド部31aが形成されている。第1マスキング部材12は、筒部31でケース5の上端の開口部を覆うとき、樹脂投入部35から投入されたイオン交換樹脂2を筒部31及びガイド部31aでケース5内に案内する。
【0038】
第1マスキング部材12における筒部31の下端には、その筒部31よりも大径の鍔部32が形成されている。鍔部32は第1支持アーム14の下側に位置している。第1マスキング部材12は、上記ケース5の上端部の上側で第1支持アーム14によって支持されている。第1支持アーム14は、アクチュエータ34の駆動を通じて昇降することが可能となっている。また、第1支持アーム14には、同第1支持アーム14を上下方向に貫通する貫通孔36が形成されている。貫通孔36の第1マスキング部材12の鍔部32と反対側の部分には、鍔部32に近づくほど径が縮小するテーパ状の受圧面37が形成されている。受圧面37は、第1マスキング部材12の重量を受けるためのものである。
【0039】
第1マスキング部材12の鍔部32における第1支持アーム14の貫通孔36に対応する部分には、上方に向けて突出するガイドバー38が固定されている。ガイドバー38は、第1支持アーム14の貫通孔36を所定のクリアランスを持って上下方向に貫通しており、第1支持アーム14に対する第1マスキング部材12の上下方向についての相対移動をガイドする。ガイドバー38の上端部には、上記受圧面37に対応して上方に向かうほど径が拡大するテーパ状の拡径部39が形成されている。そして、第1マスキング部材12がケース5の上端部よりも上側に位置するときには、第1支持アーム14の受圧面37は、第1マスキング部材12の重量をガイドバー38の拡径部39を介して受けることにより、その重量を第1支持アーム14に作用させる。
【0040】
充填装置における第1マスキング部材12の筒部31の内側には、第2マスキング部材13が設けられている。第2マスキング部材13は、セット治具18に載せられたケース5の上端の開口部のうち、チューブ部材6の端部全体を覆うためのものである。第2マスキング部材13は、上記ケース5の上端の上側で第2支持アーム15によって支持されている。第2支持アーム15は、アクチュエータ42の駆動を通じて昇降することが可能となっている。また、第2支持アーム15には、同第2支持アーム15を上下方向に貫通する貫通孔43が形成されている。
【0041】
第2支持アーム15の上側には支持ブロック44が設けられており、その支持ブロック44には下方に向けて突出して第2支持アーム15の貫通孔43を所定のクリアランスを持って貫通するガイドバー45が固定されている。ガイドバー45の下端部は第2マスキング部材13に繋がっており、同ガイドバー45によって第2支持アーム15に対する第2マスキング部材13の上下方向についての相対移動がガイドされる。そして、第2マスキング部材13がケース5(チューブ部材6)の上端部よりも上側に位置するときには、第2支持アーム15の上面15aが、第2マスキング部材13の重量を受ける受圧面となり、その重量を第2支持アーム15に作用させる。
【0042】
充填装置における第1マスキング部材12の筒部31の上側には、樹脂投入部35からケース5内に投入されたイオン交換樹脂2を、上方から抑え込むための抑え部材46が昇降可能に設けられている。抑え部材46は、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13でケース5の上端の開口部を覆った状態のもと、同ケース5内に向けて下降させることができるようになっている。こうしたケース5内に向けた抑え部材の下降により、同ケース5内のイオン交換樹脂2が抑え部材46によって上方から抑え込まれるようになる。
【0043】
次に、ケース5内にイオン交換樹脂2を充填する際の充填装置の動作について説明する。
充填装置を用いてカートリッジ3のケース5内にイオン交換樹脂を充填する際には、そのケース5を例えば次のように充填装置の第1位置P1(図4)に対応する位置に移動させる。すなわち、開口部を上に向けた状態のケース5を、図4の第2位置P2に位置する搬送装置16のセット治具18に載せ、搬送装置16を第2位置P2から第1位置P1に水平移動させることにより、上記ケース5を第1位置P1に対応する位置に移動させる。なお、ケース5は、セット治具18に載せられたとき、同セット治具18に対し水平方向に変位しないよう位置決めされる。
【0044】
搬送装置16(ベース部材17)を第1位置P1に移動させた状態で、図3に示す重量測定器11を上昇させると、その重量測定器11の上に搬送装置16の係合部材25が載せられ、その係合部材25が重量測定器11の位置決めピン26によって位置決めされる。このときには、ケース5がセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25を介して重量測定器11の位置決めピン26によって、水平方向に変位しないよう位置決めされた状態となる。
【0045】
この状態のもと、図5に示すように重量測定器11を更に上昇させると、ケース5を載せたセット治具18(ガイドロッド24及び係合部材25を含む)が重量測定器11によって持ち上げられる。その結果、上記セット治具18等の重量を受けていたベース部材17の受圧面22から、同セット治具18の突部23が上方に離れ、ケース5を載せたセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25等の重量全体が重量測定器11に作用するようになる。なお、このときには、重量測定器11の上昇に伴い、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25が、ガイドロッド24によってガイドされつつベース部材17に対し上方に相対移動する。ベース部材17の受圧面22から上述したように離れたセット治具18(ケース5)、ガイドロッド24、及び係合部材25は、ベース部材17に対して自身の重量を作用させない、いわゆるフローティング状態となる。
【0046】
ベース部材17に対しセット治具18等をフローティング状態とした後、ベース部材17の上面に設けられている移動機構20が互いに接近する方向、すなわち図5に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に向かう方向に水平移動される。これにより、移動機構20の押圧部20aによって一対のクランプ19が互いに接近するよう押圧され、それらクランプ19によってセット治具18に載せられたケース5のセンタリングが行われる。また、上述したように移動機構20を互いに接近させることにより、移動機構20の支持面20bがセット治具18の下面の下側に入り込む。
【0047】
このときには、上記ケース5の上側に第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13が位置しており、それら第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13を第1支持アーム14及び第2支持アーム15が支持している。そして、第1支持アーム14を下降させることにより、第1マスキング部材12の筒部31が図6及び図7に示すように上記ケース5の上端の開口部のうち、同ケース5の側壁の外側壁面及び内側壁面、並びに突起9のピン状に形成された部分を覆うようになる。
【0048】
このように第1マスキング部材12の筒部31が上記ケース5の上端の開口部の壁面を覆った状態で、図6に示すように更に第1支持アーム14を下降させると、第1マスキング部材12の重量を受けていた第1支持アーム14の受圧面37が第1マスキング部材12側(拡径部39)から下方に離れる。その結果、第1マスキング部材12の重量全体がケース5に作用する。なお、このときには、第1マスキング部材12側(拡径部39)が第1支持アーム14の受圧面37に対し離間するよう、第1マスキング部材12と第1支持アーム14とが上下方向に相対移動するが、そうした相対移動はガイドバー38によってガイドされる。第1支持アーム14の受圧面37が第1マスキング部材12側(拡径部39)から離れたとき、第1マスキング部材12は、第1支持アーム14に対して自身の重量を作用させない、いわゆるフローティング状態となる。
【0049】
その後、第2支持アーム15を下降させることにより、図7に示すように、第2マスキング部材13が上記ケース5の上端の開口部のうちのチューブ部材6の端部外周面を含む端部全体を覆うようになる。第2マスキング部材13がチューブ部材6の端部全体を覆った状態で、第2支持アーム15を下降させると、第2マスキング部材13の重量を受けていた第2支持アーム15の上面15aが第2マスキング部材13側(支持ブロック44)から離れ、第2マスキング部材13の重量全体がケース5に作用する。なお、このときには、第2マスキング部材13側(支持ブロック44)が第2支持アーム15の上面15aに対し離間するよう、第2マスキング部材13と第2支持アーム15とが上下方向に相対移動するが、そうした相対移動はガイドバー45によってガイドされる。第2支持アーム15の上面15aが第2マスキング部材13側(支持ブロック44)から離れたとき、第2マスキング部材13は、第2支持アーム15に対して自身の重量を作用させない、いわゆるフローティング状態となる。
【0050】
その後、ベース部材17の上面に設けられている移動機構20を互いに離間するよう水平移動させる。すなわち、移動機構20を図6に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に向かう方向に水平移動させる。これにより、セット治具18に載せられたケース5に対する一対のクランプ19による挟み込みが解除されるとともに、移動機構20の支持面20bがセット治具18の下面の下側から退避され、その支持面20bに対しセット治具18からの荷重が作用することはなくなる。
【0051】
このときには、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13の重量全体が、ケース5、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25の重量と共に重量測定器11に作用する。そして、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13が上記ケース5の上端の開口部の壁面等(チューブ部材6の端部外周面を含む)を覆った状態のもとで、樹脂投入部35から上記開口部を介してケース5の内部にイオン交換樹脂2が投入される。イオン交換樹脂2の投入の終了は、重量測定器11で測定されたイオン交換樹脂2の重量が定められた値になったときになされる。これにより、定められた重量のイオン交換樹脂2がケース5内に充填される。
【0052】
このようにイオン交換樹脂2がケース5内に充填された後、移動機構20を図6に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に水平移動させることにより、一対のクランプ19でのケース5のセンタリングを行うとともにセット治具18の下面の下側に移動機構20の支持面20bを入り込ませる。この状態で、抑え部材46を下降させることにより、ケース5内のイオン交換樹脂2が抑え部材46によって上方から抑え込まれる。その後、抑え部材46、第2支持アーム15、及び第1支持アーム14を順番に上昇させることにより、抑え部材46、第1マスキング部材12、及び第2マスキング部材13が上方に向けてケース5から離される。
【0053】
なお、このときには、第1支持アーム14の上昇を通じて、同第1支持アーム14の受圧面37により、第1マスキング部材12が拡径部39及びガイドバー38を介して持ち上げられる。これにより、ケース5の上端の開口部から第1マスキング部材12が外される。また、第2支持アーム15の上昇を通じて、同第2支持アーム15の上面15aにより、第2マスキング部材13が支持ブロック44及びガイドバー45を介して持ち上げられる。これにより、ケース5の上端の開口部(チューブ部材6の端部)から第2マスキング部材13が外される。
【0054】
その後、移動機構20を図6に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に水平移動させ、チャック28でケース5を把持してから重量測定器11を下降させることにより、同ケース5がチャック28に渡される。このようにケース5が渡されたチャック28は、図4の矢印Y2方向における第1位置P1に対応する位置から離れる方向に移動される。これにより、ケース5がチャック28を用いて第1位置P1に対応する位置から水平方向に他の位置に向けて移動されるようになる。
【0055】
次に、イオン交換樹脂の充填装置の作用について説明する。
充填装置によってケース5内にイオン交換樹脂2を充填する際には、重量測定器11にセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25が載せられるとともに、同セット治具18に載せられたケース5の上端部に第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13が載せられた状態となる。
【0056】
このときには、上記セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25が、搬送装置16のベース部材17に対しフローティング状態となる。更に、第1マスキング部材12が第1支持アーム14に対しフローティング状態になるとともに、第2マスキング部材13が第2支持アーム15に対しフローティング状態となる。従って、重量測定器11には、セット治具18(ケース5を含む)、ガイドロッド24、及び係合部材25、並びに、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13における重量全体が作用するようになる。
【0057】
また、上述したようにケース5の上端部に第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13が載せられたときには、第1マスキング部材12の筒部31が、ケース5の上端の開口部のうち、同ケース5の側壁の外側壁面及び内側壁面、並びに突起9のピン状に形成された部分を覆う。更に、第2マスキング部材13が、ケース5の上端の開口部のうち、チューブ部材6の端部外周面を含む端部全体を覆う。
【0058】
このため、樹脂投入部35からケース5の上端の開口部を介して同ケース5内にイオン交換樹脂2を投入する際、そのイオン交換樹脂2がケース5の上端の開口部の壁面に付着することはない。詳しくは、ケース5の側壁の外側壁面及び内側壁面、並びに突起9のピン状に形成された部分に上記イオン交換樹脂2が付着したり、チューブ部材6の端部外周面及び内周面に上記イオン交換樹脂2が付着したりすることはない。このため、ケース5の内部へのイオン交換樹脂2の投入を少しずつゆっくりと行う等、ケース5の上端における開口部の壁面にイオン交換樹脂2が付着しないようにするための対策をとらなくてもよくなる。
【0059】
ケース5内にイオン交換樹脂2が投入されるとき、ケース5の内部に投入されたイオン交換樹脂2の重量は重量測定器11で測定される。そして、その測定された重量が定められた値になったときにイオン交換樹脂2の投入を終了することによって、定められた重量のイオン交換樹脂2がケース5内に充填される。ケース5の内部に投入されたイオン交換樹脂2の重量を重量測定器11で測定するとき、その重量測定器11に載せられているセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25、並びに、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13はそれぞれ、上述したようにフローティング状態とされている。言い換えれば、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25、並びに、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13は、自身の重量全体をケース5及び重量測定器11に作用させた状態となっている。
【0060】
仮に、上記フローティング状態が実現できていないとすると、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25の重量の一部を搬送装置16のベース部材17で受けていたり、第1マスキング部材12の重量の一部を第1支持アーム14で受けていたり、第2マスキング部材13の受領の一部を第2支持アーム15で受けていたりする。こうした状態でケース5内へのイオン交換樹脂2の投入が行われたとすると、投入されたイオン交換樹脂2の重量を重量測定器11で正確に測定することができなくなる。これは、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25、並びに、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13の重量全体のうち、重量測定器11で受けている分がどの程度であるのかが分からないためである。
【0061】
そして、ケース5内に投入されたイオン交換樹脂2の重量を重量測定器11によって正確に測定することができないと、ケース5内へのイオン交換樹脂2の投入終了タイミングを適切に定めることができず、ケース5内に充填されるイオン交換樹脂2の重量が不適切な値となる可能性が高くなる。その結果、定められた重量のイオン交換樹脂2が充填されたカートリッジ3を製造するにあたり、イオン交換樹脂2の充填量が適正値と異なる不良品が多くなるため、上記カートリッジ3の製造の効率が低下するという問題が生じる。しかし、ケース5内にイオン交換樹脂2が投入されるときには、セット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25、並びに、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13が上記フローティング状態となるため、上述した問題が生じることは抑制される。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)定められた重量のイオン交換樹脂2が充填されたカートリッジ3を製造する際の製造効率の低下を抑制することができる。
【0063】
(2)搬送装置16のセット治具18には開口部を上方に向けた状態となるようケース5が載せられ、それによってケース5の位置決めが行われるようになる。そして、重量測定器11の上昇を通じて係合部材25、ガイドロッド24、及び上記セット治具18が、重量測定器11に載せられて持ち上げられると、その重量測定器11の位置決めピン26によって係合部材25が位置決めされる。このときには、ケース5がセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25を介して、重量測定器11の位置決めピン26によって位置決めされた状態となる。
【0064】
このようにケース5が重量測定器11の位置決めピン26によって位置決めされることにより、ケース5の上側で第1支持アーム14及び第2支持アーム15によって支持されている第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13の位置が、上記ケース5の開口部に対し適正な位置となる。詳しくは、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13の位置が、ケース5の上端における開口部の壁面を第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13で覆ううえで適正な位置となる。従って、ケース5の上端における開口部の壁面の形状が、突起9やチューブ部材6等によって複雑になっていたとしても、第1支持アーム14及び第2支持アーム15を下降させることにより、ケース5の上端における開口部の壁面を適切に第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13で覆うことができる。
【0065】
(3)ケース5の上端における開口部の壁面が第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13で覆われた状態で、ケース5の上端の開口部を介して同ケース5内にイオン交換樹脂2が投入される。このため、投入されるイオン交換樹脂2がケース5の上端の開口部の壁面に付着することはなく、ケース5の内部へのイオン交換樹脂2の投入を少しずつゆっくりと行う等、ケース5の上端における開口部の壁面にイオン交換樹脂2が付着しないようにするための対策をとらなくてもよくなる。従って、そうした対策の実施に起因して、ケース5に対するイオン交換樹脂2の充填の効率が低下することもなくなる。その結果、定められた重量のイオン交換樹脂が充填されたカートリッジを製造する際の製造効率の低下を抑制することができるようになる。
【0066】
(4)第1マスキング部材12は、ケース5における上端の開口部の壁面を覆う筒部31と、その筒部31の上端部に形成されて上方に向かうほど径が拡大するガイド部31aと、を備えている。この第1マスキング部材12により、樹脂投入部35からケース5の上端の開口部に向けて投入されたイオン交換樹脂2を、ケース5の外にこぼれることなく同ケース5内に案内することができる。
【0067】
(5)充填装置では、搬送装置16やチャック28を用いて、ケース5を第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と重量測定器11との間の位置(第1位置P1に対応する位置)と、その位置以外の位置との間で水平移動させることができる。
【0068】
そして、ケース5内にイオン交換樹脂2を投入する際には、第1位置P1にある搬送装置16のセット治具18にケース5を載せた状態とされる。その状態のもとでケース5が載せられたセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25が重量測定器11に載せられるとともに、上記ケース5の上端の開口部に第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13が載せられる。これらセット治具18、ガイドロッド24、及び係合部材25、並びに、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13をフローティング状態として、定められた重量のイオン交換樹脂2が上記ケース5内に投入される。
【0069】
定められた重量のイオン交換樹脂2がケース5内に充填された後には、そのケース5を搬送装置16やチャック28で第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と重量測定器11との間の位置(第1位置P1に対応する位置)から、水平方向に移動させることが可能となる。この実施形態では、上記ケース5をチャック28で把持した状態で重量測定器11を下降させることにより、同チャック28を用いてケース5を第1位置P1に対応する位置から水平方向に移動させることが可能となるようにしている。なお、チャック28を用いてケース5を水平方向に移動させる代わりに、搬送装置16を用いて移動させることも可能である。この場合、重量測定器11を下降させてセット治具18及びケース5をベース部材17(受圧面22)で支持されるようにすることで、搬送装置16を用いて上記ケース5を第1位置P1に対応する位置から水平方向(第2位置P2に対応する位置に向かう方向)に移動させることが可能となる。
【0070】
このようにケース5を搬送装置16やチャック28により、充填装置における第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と重量測定器11との間の位置(第1位置P1に対応する位置)と、その位置から水平方向に離れた位置との間で搬送するとしても、ケース5を重量測定器11に対して上述したように位置決めすることができる。このため、ケース5における上端の開口部の壁面を覆うように第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13を、ケース5の上端部に対し適切に取り付けることができる。
【0071】
従って、第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と重量測定器11との間の位置と、その位置から水平方向に離れた位置との間で、ケース5の搬送装置やチャック28による搬送を行いながらも、定められた重量のイオン交換樹脂2をケース5内に充填することができる。このため、定められた重量のイオン交換樹脂2が充填されたカートリッジ3を製造するにあたり、ケース5の上記搬送を行うことができる分、カートリッジ3の製造の効率が向上するようになる。
【0072】
(6)ベース部材17の受圧面22は、セット治具18等の重量が作用する方向と逆方向(上方)に向かうほど、径が拡大するテーパ状態に形成されている。一方、受圧面22に対しセット治具18等の重量を作用させる突部23は、受圧面22に対応して下方に向かうほど径が縮小するテーパ状に形成されている。このため、セット治具18等の重量が突部23を介してベース部材17の受圧面22に作用するとき、セット治具18がベース部材17に対し水平方向について一定の位置に変位するようになる。従って、そのときのベース部材17に対する水平方向についてのセット治具18の位置を適正な位置に設定すれば、セット治具18等の重量が突部23を介してベース部材17の受圧面22に作用するとき、セット治具18を適正な位置に変位させることができる。
【0073】
(7)第1支持アーム14の受圧面37は、第1マスキング部材12の重量が作用する方向(下方)に向かうほど、径が縮小するテーパ状に形成されている。一方、受圧面37に対し第1マスキング部材12の重量を作用させる拡径部39は、受圧面37に対応して上方に向かうほど径が拡大するテーパ状に形成されている。このため、第1マスキング部材12の重量が拡径部39を介して第1支持アーム14の受圧面37に作用するとき、第1マスキング部材12が第1支持アーム14に対し水平方向について一定の位置に変位するようになる。従って、そのときの第1支持アーム14に対する水平方向についての第1マスキング部材12の位置を適正な位置に設定すれば、第1マスキング部材12の重量が拡径部39を介して第1支持アーム14の受圧面37に作用するとき、第1マスキング部材12を適正な位置に変位させることができる。そして、この状態の第1マスキング部材12を第1支持アーム14の下降を通じてケース5の上端に載せることにより、同ケース5の上端の開口部の壁面を第1マスキング部材12の筒部31で覆うことができる。
【0074】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1マスキング部材12には、必ずしもガイド部31aが形成されている必要はない。
【0075】
・第1マスキング部材12及び第1支持アーム14と、第2マスキング部材13及び第2支持アーム15とのうち、一方のみを設けるようにしてもよい。
・必ずしもチャック28を設ける必要はなく、搬送装置16のみでケース5を第1マスキング部材12及び第2マスキング部材13と重量測定器11との間の位置(第1位置P1に対応する位置)と、その位置以外の位置との間で水平移動させるようにしてもよい。
【0076】
・搬送装置16を省略し、ロボットアームやチャック等を用いて、ケース5を重量測定器11の適正位置に載せたり、同重量測定器11からケース5を移動させたりするようにしてもよい。この場合、重量測定器11に上記ケース5を位置決めするための位置決め部を設ければ、重量測定器11に載せられたケース5をより確実に適正な位置に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0077】
3…カートリッジ
5…ケース
6…チューブ部材
7…リング部
7a…メッシュ
8…リング部材
8a…メッシュ
11…重量測定器
12…第1マスキング部材
13…第2マスキング部材
14…第1支持アーム
15…第2支持アーム
15a…上面
16…搬送装置
17…ベース部材
18…セット治具
21…貫通孔
22…受圧面
23…突部
24…ガイドロッド
25…係合部材
26…位置決めピン
27…差し込み穴
31…筒部
31a…ガイド部
32…鍔部
35…樹脂投入部
36…貫通孔
37…受圧面
38…ガイドバー
39…拡径部
43…貫通孔
44…支持ブロック
45…ガイドバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7