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特許7400564化粧材用水性インキおよびこれを用いた化粧材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】化粧材用水性インキおよびこれを用いた化粧材
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20231212BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231212BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20231212BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20231212BHJP
   B41M 7/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09D11/102
B32B27/00 E
B32B27/30 101
B41M1/30 D
B41M3/06 Z
B41M7/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020045988
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021147428
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植木 克行
(72)【発明者】
【氏名】竹中 信貴
(72)【発明者】
【氏名】濱田 直宏
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-000973(JP,A)
【文献】特開2019-166724(JP,A)
【文献】特開2007-262248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 27/00
B32B 27/30
B41M 1/30
B41M 3/06
B41M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル基材1、印刷層および塩化ビニル基材2を順次有する化粧材の、印刷層を形成するための、水性バインダー樹脂を含有する化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキであって、
前記水性バインダー樹脂が、水性ウレタン樹脂を含有し、
水性ウレタン樹脂が、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)であり、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、ポリオールに由来する構成単位を含有し、前記ポリオールが、ポリカーボネートポリオールをポリオール全体の40質量%以上含有する、化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキ。
【請求項2】
水性ウレタン樹脂(A)は、酸価15~60mgKOH/gであり、水酸基価が1~15mgKOH/gである、請求項1に記載の化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキ。
【請求項3】
ポリカーボネートポリオールは25℃において液状である請求項1又は2に記載の化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキ。
【請求項4】
水性ウレタン樹脂が、酸性基及び/又は水酸基を有し、
更に、化粧材用水性インキが、前記酸性基及び/又は水酸基と反応する官能基を有する架橋剤を含む請求項1~3いずれかに記載の化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキ。
【請求項5】
架橋剤が、ヒドラジド化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびアジリジン化合物から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項4記載の化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキ。
【請求項6】
塩化ビニル基材1上に、請求項1~5いずれかに記載の水性グラビアまたはフレキソインキを印刷してなる印刷層を有する化粧材用印刷物。
【請求項7】
塩化ビニル基材1、請求項1~5いずれかに記載の化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキを印刷してなる印刷層および塩化ビニル基材2を順次有する化粧材。
【請求項8】
塩化ビニル基材1上に、請求項1~5いずれかに記載の化粧材用水性グラビアまたはフレキソインキを、グラビアまたはフレキソ印刷により印刷して印刷層を得る工程、および、前記印刷層上に、更に塩化ビニル基材2を80~200℃において熱ラミネートにより貼り合わせる工程を含む、化粧材の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材用水性インキに関するものであり、塩化ビニル基材1上に当該インキからなる印刷層を有する印刷物、および印刷物が有する印刷層上に更に塩化ビニル基材2をラミネートしてなる化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建てマンション、アパート等一般住宅、モール、駅ビル等商業施設、病院、学校等の公共施設等の天井、家具、壁、床、キッチンキャビネット、建具や、外壁、ルーバー等の装飾品等の建装材には、集積材や無垢材等を使用することは稀になっており、化粧材を代替することが行われている。化粧材は、プラスチック基材に木目柄、石目柄、抽象柄等を印刷し、更にプラスチック基材と熱ラミネートして、当該熱ラミネートされた積層体を木質基材、鋼鈑基材等に貼り付けることで得られる。なお、上記プラスチック基材としては、従来塩化ビニルを使用することが多い。これは、基材が可塑剤の量により広く柔軟性や加工性を調整出来ること、優れた印刷適性を持つこと、塩化ビニル基材と熱ラミネートするだけで化粧材ができ、生産性が良いこと等のメリットがあるためである。
【0003】
上記柄を通常のポリオレフィン基材等に印刷する場合にはグラビア印刷又はフレキソ印刷等が用いられるのが一般的である。印刷インキは有機溶剤系インキのみでなく水性インキが使用されてきており、近年では、印刷時の有機溶剤排出量削減による環境負荷低減、溶剤火災予防その他の安全性、更に印刷物の残留溶剤低減といった要求の高まりから、水性グラビアインキや水性フレキソインキが特に注目を集めている。
【0004】
一方で、塩化ビニル基材向けの印刷インキには、メインバインダーとして、充分な基材密着性や熱ラミネート積層体の剥離強度を保持するため、アクリル樹脂や塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂等がバインダー樹脂として用いられ、これらは主に有機溶剤が必須となる印刷インキである(特許文献1、2)。しかし上記したように環境面での観点からは水性アクリル樹脂をバインダー樹脂とした塩化ビニル基材向けの水性印刷インキが検討されているが、熱ラミネート積層体の剥離強度を充分に得られない(特許文献3)。
【0005】
したがって化粧材用途として、塩化ビニル基材熱ラミネートした化粧材では、水性印刷インキを用いた場合において充分な剥離強度を得ることは技術的ハードルがあり、更に、経時に於いて紫外線や湿度による剥離強度の低下が見られる等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-286097号公報
【文献】特開平07-024976号公報
【文献】特開平08-113750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基材密着性、熱ラミネート強度が良好である、塩化ビニル基材を用いた化粧材に用いられる、化粧材用水性インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を鑑みて、鋭意検討を行った結果、以下に記載の印刷インキを用いることで当該課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、塩化ビニル基材1、印刷層および塩化ビニル基材2を順次有する化粧材の、印刷層を形成するための、水性バインダー樹脂を含有する化粧材用水性インキであって、
前記水性バインダー樹脂が、水性ウレタン樹脂を含有する、化粧材用水性インキに関する。
【0010】
また、本発明は、水性ウレタン樹脂が、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)である、上記化粧材用水性インキに関する。
【0011】
また、本発明は、水性ウレタン樹脂が、ポリオールに由来する構成単位を含有し、前記ポリオールが、ポリカーボネートポリオールをポリオール全体の10~70質量%含有する、上記化粧材用水性インキに関する。
【0012】
また、本発明は、水性ウレタン樹脂が、酸性基及び/又は水酸基を有し、
更に、化粧材用水性インキが、前記酸性基及び/又は水酸基と反応する官能基を有する架橋剤を含む上記化粧材用水性インキに関する。
【0013】
また、本発明は、架橋剤が、ヒドラジド化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびアジリジン化合物から選ばれる少なくとも一種を含む、上記化粧材用水性インキに関する。
【0014】
また、本発明は、塩化ビニル基材1上に、上記水性インキを印刷してなる印刷層を有する化粧材用印刷物に関する。
【0015】
また、本発明は、塩化ビニル基材1、上記化粧材用水性インキを印刷してなる印刷層および塩化ビニル基材2を順次有する化粧材に関する。
【0016】
また、本発明は、塩化ビニル基材1上に、上記化粧材用水性インキを、グラビアまたはフレキソ印刷により印刷して印刷層を得る工程、および、前記印刷層上に、更に塩化ビニル基材2を80~200℃において熱ラミネートにより貼り合わせる工程を含む、化粧材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、基材密着性、熱ラミネート強度が良好である、塩化ビニル基材を用いた化粧材に用いられる、化粧材用水性インキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に例を挙げて本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する事項は本発明の実施形態の一例ないし代表例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0019】
以下の説明において、水性バインダー樹脂とは、本発明の化粧材用水性インキに使用される水性の結着樹脂を表し、水性バインダー樹脂は水溶性樹脂であってもよいし、水性エマルジョン樹脂であってもよい。水性バインダー樹脂は水溶性樹脂を含むことが好ましい。
【0020】
化粧材用水性インキは、水性グラビアまたはフレキソインキが好ましい。以下の説明において、なお化粧材用水性インキは、それぞれを単に「インキ」「水性インキ」と略記する場合があるが同義である。また、化粧材用水性インキにより印刷して形成された印刷層は「インキ被膜」あるいは「インキ層」と表記する場合があるがいずれも同義である。
【0021】
(ウレタン樹脂)
本発明のインキは、水性ウレタン樹脂を含有する、化粧材用水性インキである。水性ウレタン樹脂を使用することで基材密着性、熱ラミネート性、耐光性、および耐湿熱性、が良化する効果を奏する。水性ウレタン樹脂としては中和される酸価を有することが好ましく、15~60mgKOH/gであることが好ましい。また、水性ウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネート化合物由来の構成単位を有することが好ましく、ポリオールとしてポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールポリカーボネートポリオールのうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0022】
本発明のインキに用いられる水性ウレタン樹脂は、水性となるために、酸性基及び/又は水酸基を有する。水性ウレタン樹脂が、酸性基を有するには、水性ウレタン樹脂の製造原料に後述する酸性基含有ポリオールを使用することで得られる。酸性基は水性ウレタン樹脂の製造過程でほとんどが未反応として残り、当該酸性基の中和により水性化がなされる。また、水性ウレタン樹脂が、水酸基を有するには、ポリオール等を原料とすることで末端部位に水酸基を有することで可能であり、そのほか、後述の水酸基を有するポリアミンにより鎖延長工程を経て製造されることにより可能となる。
【0023】
すなわち水性ウレタン樹脂好ましい形態としてポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂およびポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0024】
(ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A))
本発明において、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は化粧材用水性インキ用の水性バインダー樹脂として機能するものであり、ポリカーボネート由来の構成単位を有する。また、ポリオールおよび酸性基含有ポリオールに由来する構成単位を含有し、前記ポリオールは、ポリカーボネートポリオールを含有する。これにより基材密着性、熱ラミネート強度、耐光性、耐湿熱性が良化、両立することができる。
【0025】
ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、たとえば実施形態において、ポリカーボネートポリオールを含むポリオール、酸性基含有ポリオール、必要に応じてその他ポリオール、およびイソシアネート化合物の反応物であるポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)、
あるいは、ポリカーボネートポリオールを含むポリオール、酸性基含有ポリオール、必要に応じてその他ポリオール、およびイソシアネート化合物の反応物である、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、更にポリアミンで鎖延長されたポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)であることが好ましい。かかる反応物の生成は無溶媒もしくはイソシアネート化合物に対して不活性である溶媒中で好適に行われる。
【0026】
更に、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、中和剤を用いて水中に溶解あるいは分散された態様が好ましい。すなわち、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)分散体として後述のインキ原料に使用されることが好ましい。なお、ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)(以下、「水性ウレタン樹脂(A)」と略記する場合がある)はこれら製造方法に何ら限定されるものではない。
【0027】
上記水性ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)分散体は、固形分として分散体全体の15~40質量%であることが好ましく、分散体の粘度としては10~5000mPa・sであることが好ましい。
【0028】
ここで「固形分」とは組成物における不揮発成分の総質量%をいい、粘度はJISZ8803:2011に記載の方法により得られた値を表し、B型粘度計での25℃における測定値であることが好ましい。
【0029】
イソシアネート化合物に対して不活性である溶媒(有機溶剤)とは、ヒドロキシ基、アミノ基など、イソシアネート基と反応する官能基を有しない有機溶媒である。ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)を中和する工程や、水性インキとして水を追加することから、親水性であることが好ましく、また、有機溶媒を除去する場合は沸点の低い溶媒が好ましい。いずれも満たす溶媒としてアセトン、メチルエチルケトンを使用することが好ましい。
【0030】
(中和剤)
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2―アミノ-2-メチル-1-プロパノール、などが挙げられる。印刷物に残存しにくいという観点からアンモニアを含むことが好ましい。
【0031】
水性ウレタン樹脂(A)の酸価は特に限定されるものではないが、5~100(mgKOH/g)の範囲であればよい。水性ウレタン樹脂(A)の水への分散性を維持するためである。なお、水性ウレタン樹脂(A)の酸価は15~60(mgKOH/g)であることが好ましく、20~55(mgKOH/g)であることがなお好ましく、24~45(mgKOH/g)であることが更に好ましい。
一方、水性ウレタン樹脂(A)の水酸基価は、0.1~30mgKOH/gであることが好ましい。水性ウレタン樹脂(A)の水への溶解性、印刷層の耐水性、更には基材密着性が良好となるためである。なお、1~15mgKOH/gであることがより好ましい。水性ウレタン樹脂(A)に水酸基を導入するには、末端基が水酸基であってもよいし、側鎖に水酸基を有していてもよい。
【0032】
水性ウレタン樹脂(A)の分子量は印刷適性や塗膜の耐性などの観点から重量平均分子量で10000~100000であることが好ましい。15000~50000であることがより好ましい。当該範囲によって、熱ラミネート強度、印刷適性および印刷物の濃度などの特性を良好とするためである。
【0033】
(ポリオール)
ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、ポリオールおよび酸性基含有ポリオールに由来する構成単位を含有する。ポリオールとは水酸基を複数有する化合物をいう。ポリオールは、構造中に繰り返し単位を有することが好ましい。ポリオールが、ポリカーボネートを繰り返し単位とするポリカーボネートポリオールを有することでポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)とすることができる。ポリカーボネートポリオールを使用することで、熱ラミネート強度、耐光性、耐湿熱性が良化、両立することができる。ポリカーボネートポリオールは、ポリオール総質量中に10~70質量%含むことが好ましく、40質量%以上含むことが更に好ましい。ポリカーボネートポリオールを単独で使用してもよいし、その他のポリオールを併用しても構わない。例としてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、などが挙げられる。ただし、ポリオールは酸性基含有ポリオールである場合を除く。
【0034】
ポリカーボネートポリオールは製造方法により限定されるものではないが、例えば、多価アルコールとカーボネート化合物との重縮合反応より得ることができる。
多価アルコールとしては、以下のジオール、トリオール等が好適に挙げられ、例えば、
エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールなどの直鎖ジオール、
プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[別名:ネオペンチルグリコール]、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2、2、4-トリメチル-1、3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどの分岐ジオール、
シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1-フェニル-1,2-エタンジオール、[別名:スチレングリコール]、2,2-イソプロピリデン-4,4’-ジシクロヘキサノール[別名:水素化ビスフェノールA]、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、などの環構造含有ジオール、
グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのトリオール、が好適に挙げられる。
【0035】
上記カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートなどが挙げられる。
【0036】
ポリカーボネートポリオールは、数平均分子量が500~5000であることが好ましく、800~4000であることがなお好ましい。1000~3000であることが更に好ましい。
【0037】
ポリカーボネートポリオールは25℃において液状であることが好ましい。液状のポリカーボネートポリオールを使用することで、塗膜の柔軟性を確保することができるため、熱ラミネート適性が向上する。
【0038】
25℃において液状であるポリカーボネートポリオールとしては、以下のジオールを構成単位として含むことが好ましい。例えば、炭素数が奇数の直鎖ジオールと炭素数が偶数の直鎖ジオールを含むポリカーボネートポリオール、分岐ジオールからなるポリカーボネートポリオールなどがあるが、分岐ジオールからなるポリカーボネートポリオールがより好ましく、3級炭素を有する分岐ジオールからなるポリカーボネートジオールがより好ましい。ここで3級炭素とは、その炭素原子が4つの原子とそれぞれ単結合で共有結合を形成しており、そのうち1つが水素原子、残りの3つが水素以外の原子と結合している炭素原子のことである。また、分岐ジオールと直鎖ジオールを含むポリカーボネートジオールも好ましい。3級炭素を有する分岐ジオールと直鎖ジオールを含むポリカーボネートジオールがなお好ましい。
【0039】
3級炭素を有する分岐ジオールは、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2、2、4-トリメチル-1、3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。この中でも3-メチル-1,5-ペンタンジオールが特に好ましい。
【0040】
柔軟性を制御するために、分岐ジオールとその他のポリオールと併用することができる。このとき分岐ジオールとその他のポリオールは95:5~40:60が好ましく、90:10~50:50がより好ましい。
ポリオールとして、更にポリエーテルポリオールを併用することが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。水分散性などの観点からポリエチレングリコールが好ましい。
【0041】
上記ポリエチレングリコールは数平均分子量が200~5000のものが好ましく、1000~3000のものがより好ましい。また、水性ウレタン樹脂(A)中のポリエチレングリコールの質量比率が1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましい。2~10質量%であることがなお好ましい。なお、樹脂中のポリオール由来の比率は、原料仕込み比率で代用できる。
【0042】
ポリオールとしてポリエステルポリオールを併用することができる。ポリエステルポリオールは製造方法により限定されるものではないが、構造中に繰り返し単位を有しないポリオールとポリカルボン酸との重縮合反応や、構造中に繰り返し単位を有しないポリオールと環状ラクトンの開環重合などで得ることができる。
【0043】
ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。これらの酸無水物を使用することもできる。
環状ラクトンとしてはε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、ラクチドなどが挙げられる。
【0044】
(酸性基含有ポリオール)
ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、ポリオールおよび酸性基含有ポリオールに由来する構成単位を含有する。酸性基含有ポリオールは、同一分子内に酸性基と複数の水酸基を有する化合物をいい、酸性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。酸性基含有ポリオールの具体的な例としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、酒石酸などが挙げられる。反応性などの観点から、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸が好ましい。酸性基含有ポリオールの酸性基はポリウレタン樹脂に酸価を与える。当該酸価は上記中和剤にて中和されて、水性ウレタン樹脂(A)に水への溶解性・分散性を与えると考えられる。
【0045】
なおポリオール以外に、その他ポリオールとしてジオール、トリオールなどを使用することができる。ジオールおよびトリオールポリカーボネートポリオールの記載で列挙したものと同様のものを好適に挙げられる。
【0046】
(イソシアネート化合物)
ポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)は、イソシアネート化合物に由来する構成単位を含有する。イソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。
例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4‘-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。反応性等の面から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0047】
(ポリアミン)
上記ポリアミンは、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’- ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を用いることができ、好ましくは水酸基を有するポリアミンである。水酸基を有することで、水への溶解性を上げることができる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。さらに好ましくは、イソホロンジアミン、及び2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン(2-アミノエチルエタノールアミン)である。
【0048】
<顔料>
本発明の化粧材用水性インキは、顔料を含んでいてもよい。本発明の化粧材用水性インキに使用される顔料としては、一般のインキ、塗料、および記録材などに使用されている有機、無機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。なお、カラーインデックスに収載のC.I.ピグメントとして記載されている顔料を随時使用することができる。
【0049】
これらの顔料は1種類、または2種類以上併用して用いることができる。上記顔料はインキ総質量中に0.05~60質量%含有することが好ましく、有機顔料またはカーボンブラックの場合は0.05~35質量%、酸化チタンや硫酸バリウム等の無機顔料の場合は5~60質量%で含有することが好ましい。酸化チタンは、少なくともシリカまたはアルミナで表面被覆された酸化チタンが好ましい。
【0050】
<有機溶剤>
本発明の化粧材用水性インキはその効果に支障のない範囲で他の有機溶剤を使用してもよく、使用する場合はアルコール系有機溶剤またはグリコール溶剤またはグリコールモノアルキルエーテル溶剤であることが好ましい。かかる有機溶剤はアルコール系有機溶剤としては、例えばエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、t-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等、
グリコール溶剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールその他のアルキレングリコール、
ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールその他のジアルキレングリコール、
トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールその他のトリアルキレングリコール等、
プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルその他のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルその他のジプロピレンモノアルキルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルその他のトリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルその他のジエチレングリコールモノアルキルエーテルなどが好適に挙げられる。
【0051】
本発明の化粧材用水性インキには、添加剤としては、ブロッキング防止剤、増粘剤、レオロジー調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、表面張力調整剤、pH調整剤、ワックスを使用することができる。
【0052】
本発明の化粧材用水性インキはpHが6.5~10.0に調整されていることが好ましい。pHの調整には上記の無機水酸化物またはアミン化合物を使用することが好ましい。
【0053】
<架橋剤>
本発明の化粧材用水性インキにおいては、水性ウレタン樹脂(A)を含む水性バインダー樹脂が有する酸性基及び/又は水酸基と反応する官能基を有する架橋剤を用いて架橋させることでより基材密着性、熱ラミネート強度、耐光性、耐湿熱性を向上することが出来る。酸性基及び/又は水酸基と反応する官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ヒドラジド基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、イソシアノ基などが挙げられる。好ましくは、架橋剤として、ヒドラジド化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物から選ばれる少なくとも一種を好適に選択できる。
【0054】
ヒドラジド系化合物としてはアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドその他のジヒドラジド化合物が好ましい。
【0055】
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド基を有する化合物であり、例えば日清紡ケミカル株式会社製カルボジライトE-02、E-03A、SV-02、V-02、V02-L2、V-04等が挙げられる。
【0056】
オキサゾリン化合物とはオキサゾリン基を含有する化合物であり、例えば株式会社日本触媒製エポクロスK-2010E、WS-700等が挙げられる。
【0057】
エポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物をいい、例えばナガセケムテックス株式会社製デナコールEX614B、三菱ケミカル株式会社製テドラッドX、株式会社ADEKA社製アデカレジンEP-4000、EP-4005、7001などが挙げられる。
【0058】
イソシアネート化合物とは、イソシアネート基を含有する化合物であり、例えば旭化成株式会社製デュラネートWB40-100、東ソー株式会 社製アクアネート105等が挙げられる。
【0059】
アジリジン化合物とは、アジリジン基を含有する化合物であり、例えば株式会社日本触媒PZ-33、DZ-22E等が挙げられる。
【0060】
当該架橋剤は、1種類若しくは複数種類を同時に使用する事ができ、インキ固形分総質量に対して1~30質量%以下で使用することが好ましく、2~20質量%で使用することがより好ましい。また、水性ウレタン樹脂100質量%に対する架橋剤の質量比率(水性ウレタン樹脂:架橋剤)は、100:1~100:50であることが好ましく、100:2.5~100:30重量%以下であることがなお好ましい。熱ラミネート強度において良好となるためである。
【0061】
<化粧材用水性インキの製造方法>
本発明の化粧材用水性インキの製造は、例えば、水性ウレタン樹脂、顔料および水、並びに、規定量の有機溶剤、分散剤を所定量混合したのち、さらにビーズミル等で分散(顔料分散)をする工程を経る。得られた分散体に、必要に応じて消泡剤、水等を配合することにより化粧材用水性インキを製造することができる。上記顔料分散に使用する分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。サンドミル、ガンマミルその他のビーズミルで分散することが好ましい。
【0062】
本発明の化粧材用水性インキの粘度は、本発明の効果を奏する観点から10~1000mPa・sであることが好ましい。当該粘度は、JISZ8803:2011に記載の方法により得られた値を表し、B型粘度計での25℃における測定値であることが好ましい。
【0063】
(印刷)
本発明の化粧材用水性インキは任意の印刷方式で印刷を行うことができ、特段の制限はない。中でもグラビア印刷またはフレキソ印刷における印刷方法が好適に使用可能である。
【0064】
<印刷物>
上記塩化ビニル基材1上に、例えば、上記グラビアまたはフレキソ印刷方式にて、化粧材用水性インキを転移した後、充分な乾燥をし、水及び有機溶剤などの揮発成分を乾燥させることで目的の印刷物を得ることが出来る。
【0065】
<フレキソ印刷方法>(アニロックスロール)
本発明の印刷物が、フレキソ印刷で印刷される場合、フレキソ印刷に使用されるアニロックスとしては、セル彫刻が施されたセラミックアニロックスロール、クロムメッキアニロックスロール等を使用することができる。優れたドット再現性を有する印刷物を得るために印刷する際に使用する版線数の5倍以上好ましくは6倍以上の線数を有するアニロックスロールが使用される。例えば、使用する版線数が75lpiの場合は375lpi以上のアニロックスが必要であり、版線数が150lpiの場合は750lpi以上のアニロックスロールが必要である。アニロックス容量については本発明の水性フレキソインキの乾燥性とブロッキング性の観点から1~8cc/mの容量、好ましくは2~6cc/mのアニロックスロールである。
【0066】
<フレキソ印刷方法>(フレキソ版)
本発明の印刷物が、フレキソ印刷で印刷される場合、フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0067】
<フレキソ印刷方法>(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0068】
<グラビア印刷>(グラビア版)
本発明の印刷物が、グラビア印刷で印刷される場合、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては75線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
【0069】
(印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0070】
<塩化ビニル基材1>
本発明の化粧材に使用される塩化ビニル基材1としては、必要に応じて可塑剤、安定剤、滑剤、充填剤、顔料、染料等の着色剤等を混合してフィルム化した無色透明若しくは着色した塩化ビニル基材が主に使用される。基材の厚みとしては20~1000μmであることが好ましい。なお、軟化温度が60~90℃の硬質塩化ビニル基材、軟化温度が15~50℃の半硬質塩化ビニル基材、軟化温度が-20~0℃の軟質塩化ビニル基材等を用途により好適に選択することが出来るが、特に限定されるものではない。化粧材用インキを塩化ビニル基材1へグラビア印刷又はフレキソ印刷により印刷される場合、印刷に適している。
【0071】
<塩化ビニル基材2>
化粧材を作成する為に、上記印刷物の印刷層上に塩化ビニル基材2を、例えば、熱ラミネートする。当該塩化ビニル基材2としては上記で説明した塩化ビニル基材1と同様のものを用いることが出来るが、印刷層が塩化ビニル基材を通して確認できるように、塩化ビニル基材1及び/または塩化ビニル基材2は透明であることが好ましい。
透明である塩化ビニル基材1又は塩化ビニル基材2を使用し、他方を着色した不透明である塩化ビニル基材にすることで、化粧材にした後貼合する木質又は金属基材等の色ムラ等の影響を受けにくくなる為より好ましい。
【0072】
<化粧材(積層体)>
上記印刷物において、塩化ビニル基材1の印刷層上に、例えば、塩化ビニル基材2を重ね合わせ、熱と圧力を与え貼り合わせる(熱ラミネート)することで化粧材を得ることが出来る。印刷物の巻物を利用し連続して塩化ビニル基材2をラミネートし、後に必要な大きさに裁断する方法や、印刷物を必要な大きさに裁断した後に、その大きさに合わせた塩化ビニル基材2を合わせ、熱と圧力を加えてラミネートする方法などがある。熱ラミネートにおいて温度は、80~200℃、圧力は0.1~100kg/cm、時間は1~3600秒の条件で行われることが好ましい。
上記の方法により得られた化粧材は、接着剤等を介して用途に応じてパーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質基材、アルミニウム鈑、鋼鈑等の金属基材等に貼合され、化粧材となる。
【実施例
【0073】
以下に本発明のより具体的な実施形態を実施例および比較例にて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特段の断りの無い限り実施例および比較例中、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0074】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値。乾燥させた水性ウレタン樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、0.5%の溶液を調製し、Shodex製GPC-104(カラム番号LF-404、分子量測定範囲約300~約200万)により重量平均分子量を測定した。
【0075】
(水酸基価および酸価)
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
【0076】
ポリカーボネートポリオールの一覧を表1に示す。なお比率が記載されているものはすべて対応する化合物のモル比を表す。PC1~PC6は、表1に記載したアルキレングリコールと、カーボネート化合物との重縮合物であるポリカーボネートジオールの意である。例えば、PC6は、1,6-ヘキサンジオールとカーボネート化合物との重縮合物であるポリカーボネートジオールである。
【0077】
(合成例1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PC1を58.3部、PE1を3.0部、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA)を8.4部、及びメチルエチルケトンを63.4部仕込み、撹拌しながら1時間かけてイソホロンジイソシアネート(IPDI)を28.1部滴下し、85℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、その後30℃まで冷却してからメチルエチルケトンを20.6部加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマーに対し、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(AEA)を2.2部、2-プロパノールを20.5部および水を20.5混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、25%アンモニア水3.4部及びイオン交換水208.2部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらにメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行ない、酸価35mgKOH/g、水酸基価12mgKOH/g、重量平均分子量37,000である、固形分29%の水性ウレタン樹脂PU1分散体を得た。
【0078】
(合成例2~11)
表2に示す原料化合物を用いた以外は合成例1と同様にして水性ウレタン樹脂PU2~PU11を得た。
なお、表2中の略称は以下を示す。
DMBA:ジメチロールブタン酸
BD:ブタンジオール
【0079】
上記合成例1~11におけるウレタン樹脂PU1~PU11の分散体は本発明におけるポリカーボネート系水性ウレタン樹脂(A)およびウレタン樹脂の分散体に相当する。
【0080】
(実施例1)(インキS1の製造)
水性ウレタン樹脂(A)分散体としてPU1分散体75部、有機顔料としてフタロシアニン顔料(トーヨーカラー株式会社製 リオノールブルーFG7358G)10部 、分散剤としてサーフィノールGA(日信化学工業株式会社製、固形分78%)1部、消泡剤としてDOWSIL FS ANTIFOAM1277(ダウ・ケミカル日本株式会社製、固形分23%)0.1部、イオン交換水5.9部をディスパーにて撹拌混合後、サンドミルで30分間分散して顔料分散体を得た。なお、架橋剤CL1(日清紡ケミカル株式会社製 カルボジライトE-02 カルボジイミド系架橋剤、固形分40%)を印刷直前に8部添加して水性インキS1とした。
【0081】
(実施例2~22、比較例1~3)(インキS2~S22およびインキR1~R3の製造)
表3に記載した原料および配合比率を使用した以外は実施例1と同様の方法にてインキS2~S22およびインキR1~R3を得た。表中の略称は以下を示す。
(無機顔料)
弁柄顔料:戸田工業株式会社製 トダカラーKNO
(その他水性樹脂)
ネオクリルA-1127:楠本化成工業株式会社製、水性アクリル樹脂 固形分44%
ビニブラン900GT:日信化学工業株式会社製、塩化ビニル系エマルジョン樹脂 固形分40%
アクリル樹脂1水溶液:特開平08-113750号公報の製造例1に記載方法に従って製造したアクリル樹脂の水溶液(固形分25%)
(架橋剤)
架橋剤CL2:東京化成工業株式会社製、アジピン酸ジヒドラジド ヒドラジド系架橋剤固形分100%
架橋剤CL3:株式会社日本触媒製 エポクロスWS-700 オキサゾリン系架橋剤 固形分25%
架橋剤CL4:ナガセケムテックス株式会社 デナコールEX614B エポキシ系架橋剤、固形分100%
架橋剤CL5:旭化成株式会社製、デュラネートWB40-100 イソシアネート系架橋剤 固形分100%
架橋剤CL6:株式会社日本触媒社製 ケミタイトPZ-33アジリジン系架橋剤 固形分100%
【0082】
(実施例1)(インキS1の塩化ビニル基材へのグラビア印刷)
上記水性インキS1を、電子彫刻グラビア版(版線数250LPI)を具備したグラビア印刷機にて、半硬質塩化ビニル基材(厚さ80μm、塩化ビニル樹脂100部に対して可塑剤12部含有する基材)にて速度40m/分、乾燥温度60℃にて印刷を行い、印刷物を得た。
【0083】
(実施例2~22、比較例1~3)(インキS2~S22の半硬質塩化ビニル基材へのグラビア印刷)
インキS1の代わりにインキS2~S22、インキR1~R3を用いたい以外はインキS1の印刷と同様の方法でグラビア印刷を行い、印刷物をそれぞれ得た。
【0084】
(評価)
上記実施例および比較例で得られたインキおよび印刷物を用いて以下の評価を行った。
【0085】
[基材密着性の評価]
上記実施例および比較例で得られた印刷物について、JISK5600-5-6を用いて基材密着性の評価した。
A:基材からのインキの剥離が無い(良好)
B:基材からのインキの剥離面積が5%を上回らない
C:基材からのインキの剥離面積が15%を上回らない(使用可)
D:基材からのインキの剥離面積が15%以下であり剥離時抵抗がある
E:基材からのインキの剥離面積が100%以下であり剥離時抵抗がない
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0086】
(積層体)
上記実施例および比較例で得られた印刷物について、2つの条件で熱ラミネートを行い、積層体を得た。
【0087】
(化粧材の作製(積層体1))
上記実施例および比較例で得られた印刷物の印刷層側に、印刷基材と異なる半硬質塩化ビニル基材(厚さ150μm、塩化ビニル樹脂100部に対して可塑剤12部含有)を合わせ、145℃、2kg/cm、30秒の条件で熱ラミネートを行い、化粧材積層体1を得た。
【0088】
(化粧材の作製(積層体2))
上記実施例および比較例で得られた印刷物の印刷層側に、印刷基材と異なる半硬質塩化ビニル基材(厚さ300μm、塩化ビニル樹脂100部に対して可塑剤12部含有)を合わせ、150℃、24kg/cm、30分の条件で熱ラミネートを行い、化粧材積層体2を得た。
【0089】
(熱ラミネート強度)
上記化粧材(積層体1)の作製及び化粧材(積層体2)の作製で得られた化粧材に関して、引張試験機でラミネート強度を測定した。
A:基材破断する又は剥離強度が15N/15mm以上
B:剥離強度が10N/15mm以上15N/15mm未満
C:剥離強度が5N/15mm以上10N/15mm未満
D:剥離強度が0N/15mmより大きく、5N/15mm未満
E:剥離強度が0N/15mm
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0090】
(耐光性)
上記化粧用材(積層体2)の作製で得られた化粧材(積層体2)に関して、早坂理工株式会社製オートフェードメータを用いブラックパネル温度63℃、槽内湿度35%RH、試料面放射照度500W/mにて100時間耐光試験を行い、引張試験機でラミネート強度を測定した。
A:基材破断する又は剥離強度が15N/15mm以上
B:剥離強度が10N/15mm以上15N/15mm未満
C:剥離強度が5N/15mm以上10N/15mm未満
D:剥離強度が0N/15mmを超え5N/15mm未満
E:剥離強度が0N/15mm
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0091】
(耐湿熱性)
上記化粧用材(積層体2)の作製で得られた化粧材(積層体2)に関して、60℃90%RHの環境下で保管後、引張試験機でラミネート強度を測定した。
A:基材破断する又は剥離強度が15N/15mm以上
B:剥離強度が10N/15mm以上15N/15mm未満
C:剥離強度が5N/15mm以上10N/15mm未満
D:剥離強度が0N/15mmより大きく、5N/15mm未満
E:剥離強度が0N/15mm
なお実用レベルの評価はAまたはBまたはCである。
【0092】
(実施例23)(インキS1の半硬質塩化ビニル基材へのグラビア印刷)
上記水性インキS1を、電子彫刻グラビア版(版線数250LPI)を具備したグラビア印刷機にて、半硬質塩化ビニル基材(厚さ100μm、塩化ビニル樹脂100部に対して可塑剤30部含有)にて速度40m/分、乾燥温度60℃にて印刷を行い、印刷物を得た。上記同様に評価を行ったところ、実施例1と同等の評価であった。
【0093】
本発明により、 基材密着性、熱ラミネート強度に優れた化粧材が得られたが、さらに、
水性ポリカーボネートウレタン樹脂(A)を使用することにより、基材密着性、熱ラミネート強度に加え、耐光性および耐湿熱性の性能バランスに優れた化粧材を得ることができた。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】