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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B65D1/02 221
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047542
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021113090
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020006350
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 剛志
(72)【発明者】
【氏名】石井 玲太
(72)【発明者】
【氏名】小宮 温
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-240728(JP,A)
【文献】特開2016-108016(JP,A)
【文献】特開2017-013845(JP,A)
【文献】特開2018-039522(JP,A)
【文献】特開2014-028643(JP,A)
【文献】特開2015-221682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部、及び底部を備える合成樹脂製容器であって、
前記胴部に、横幅方向中央部が最も深く容器内方に陥入する複数の凹部が、周方向に沿って設けられており、
前記凹部の横幅に対する中心角が、20~70°であり、
前記凹部の横幅に対する横幅方向中央の深さの比が、0.07~0.4であり、
前記凹部を含む範囲に装着されるシュリンクラベルが前記凹部の端縁間に張架され、前記シュリンクラベルと前記凹部との間に形成される空隙内の空気が断熱作用を発揮することを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記凹部の横幅に対する中心角が、35~70°である請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記凹部の横幅に対する横幅方向中央の深さの比が、0.15~0.4である請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記凹部が、輪郭が正方形状又は矩形状に設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
周方向に隣接する前記凹部間の間隔に対する中心角が、10~45°である請求項1~4のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形や圧縮成形などによって有底筒状のプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形によってボトル状に成形してなる合成樹脂製容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容液とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
また、このような合成樹脂製容器にあっては、市場の要求に応えるべく各種の機能を備えたものが提案されており、例えば、特許文献1には、保温、保冷効果を高めた容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-40357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、ポタージュスープ、コンソメスープ、みそ汁等のインスタントスープ食品が、従前より知られている。このようなインスタントスープ食品にあっては、粉末状又はペースト状などに加工されたスープの素が収容された包装体が、カップ状の断熱容器に封入された状態で市場に提供され、これを購入したユーザーが、当該包装体を取り出して開封し、断熱容器内に戻したスープの素に熱湯を注いで喫食できるようにしたものも知られている。
【0006】
本発明者らは、このようなインスタントスープ食品に用いられるカップ状の断熱容器に代えて、前述したような合成樹脂製容器を利用できるようにすべく検討を重ねてきた。そのような検討の過程で、特許文献1のように、容器に縦溝状の凹凸を設けてシュリンクラベルとの間に空隙を設けただけでは、熱湯などの高温の内容液に対しては十分な断熱作用が発揮されず、内容液の温度が高いと容器が熱すぎて把持できないという不具合を解消できないことを見出し、さらなる検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部、肩部、胴部、及び底部を備える合成樹脂製容器であって、前記胴部に、横幅方向中央部が最も深く容器内方に陥入する複数の凹部が、周方向に沿って設けられており、前記凹部の横幅に対する中心角が、20~70°であり、前記凹部の横幅に対する横幅方向中央の深さの比が、0.07~0.4であり、前記凹部を含む範囲に装着されるシュリンクラベルが前記凹部の端縁間に張架され、前記シュリンクラベルと前記凹部との間に形成される空隙内の空気が断熱作用を発揮する構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内容液の温度が高くても、容器が熱すぎて把持できないというような不具合を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
図3図2のA-A端面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す斜視図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す正面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す斜視図である。
図7】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す正面図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す斜視図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す正面図である。
図10図9のD-D端面図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。
図12】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
図13】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す平面図である。
図14図12のE-E端面図である。
図15】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す斜視図である。
図16】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す正面図である。
図17】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す平面図である。
図18図16のF-F端面図である。
図19】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す斜視図である。
図20】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す正面図である。
図21】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の他の変形例の概略を示す平面図である。
図22図20のG-G端面図である。
図23】実施例1~7、比較例1におけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した部位を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図、図2は、同正面図である。図3は、図2のA-A端面図であり、図3では、端面にあらわれる肉厚を省略している。
【0012】
これらの図に示す容器1は、例えば、ポタージュスープ、コンソメスープ、みそ汁等のインスタントスープ食品として、粉末状又はペースト状などに加工されたスープの素が収容された包装体が、容器内に封入された状態で市場に提供され、これを購入したユーザーが、当該包装体を容器内から取り出して開封し、容器内に戻したスープの素に熱湯を注いで喫食するといった用途に好適に利用できるように構成した一例を示している。
なお、スープの素が、包装体に収容されずに、容器内にそのまま封入されている場合にも好適に利用できるのはいうまでもない。
【0013】
また、これらの図に示す容器1は、熱可塑性樹脂を使用して射出成形や圧縮成形などにより有底筒状のプリフォームを成形し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などにより所定の容器形状に成形することによって製造することができる。
【0014】
使用する熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステルが使用でき、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが、好適に使用される。これらの樹脂は二種以上混合してもよく、他の樹脂をブレンドしてもよい。ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用できる。プリフォームは、単層に成形するに限らず、容器1に求められる特性に応じて、ガスバリヤー層などを含む多層に成形することもできる。
【0015】
図示する例において、容器1は、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備え、口部2から包装体が取り出されることや、口部2に口をつけて熱いスープを喫食することなどを考慮して、円筒状の口部2の口径が、比較的大径となるように成形されている。
なお、口部2は、高温になることによる変形を防ぐために、結晶化されていてもよい。
【0016】
口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのねじ山20が設けられており、螺着により口部2に着脱可能とされた蓋体によって、容器1を再封止できるようにしている。これにより、例えば、熱湯を注いでから再封止された容器1を振るなどして、スープの素が溶け易くなるように攪拌することができる。一度に喫食しきれないような場合に、容器1を都度再封止して、時間をかけながら喫食したり、持ち運んだりすることもできる。
【0017】
口部2の下端は、胴部4に向かって拡径して口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3に連接されている。図示する例において、肩部3は、概ね円錐台状に成形されているが、肩部3の形状は、図示する例には限定されない。
【0018】
胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占める部位であり、上端が肩部3に連接し、下端が底部5に連接している。
【0019】
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(図2に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
また、図2には、中心軸Cを一点鎖線で示しているが、特に断りのない限り、中心軸Cに直交する面で切断した断面を横断面というものとする。
【0020】
本実施形態において、胴部4には、容器内方に陥入する複数の凹部40が、周方向に沿って設けられている。図示する例では、四つの凹部40が、周方向に沿って等角度間隔で配設されている。
【0021】
胴部4に設けられる凹部40のそれぞれは、その輪郭が、正方形状又は矩形状となるように設けるのが好ましい。図1図3に示す例では、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれが、横幅方向を短辺とし、かつ、長辺が胴部4の上端側から下端側に至る矩形状となるように設けられている。正方形状又は矩形状となるように凹部40を設ける場合、凹部40は、正面から見たときの形状が、概ね、正方形状又は矩形状とみなせるように設けられていればよく、次のように設けることもできる。
【0022】
例えば、図4及び図5に示すように、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれが、図1図3に示す例に対して、高さ方向中央に形成された仕切り部41によって、上下に二分されるように設けることもできる。
また、図6及び図7に示すように、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれが、図1図3に示す例に対して、凹部40の下方側に隆起するように形成された隆起部42によって、長辺側の長さが短くなるように設けることもできる。
なお、図4は、本実施形態の変形例の概略を示す斜視図、図5は、同正面図であり、図6は、本実施形態の他の変形例の概略を示す斜視図、図7は、同正面図である。図5のB-B端面図、図7のC-C端面図は、それぞれ図3と同一にあらわれるため、図3を兼用する。
【0023】
成形性、成形後の型開き、離型性などを考慮すると、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれは、横幅方向中央を底部とし、かかる底部に向かって、各端縁から傾斜しながら容器内方に陥入するように左右対称に設けるのが好ましい。
【0024】
また、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれは、所定の横幅wを以て設けられている。凹部40の横幅wは、凹部40の横幅wに対する中心角θ、すなわち、横断面において、凹部40の横幅方向両端縁のそれぞれと、中心軸Cとを結ぶ線のなす角度θ図3参照)が、20~70°、好ましくは、35~70°となるように定めることができる。
なお、図示する例では、当該中心角θを45°としている。
【0025】
また、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれは、所定の深さを以て設けられている。凹部40の深さは、横断面における、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが、0.07~0.4、好ましくは、0.1~0.4、より好ましくは、0.15~0.4となるように定めることができる。
なお、図示する例では、当該比d/wを0.203としている。
【0026】
容器1には、通常、所望の印刷が施された熱収縮性のフィルム材を筒状にして被せ、これを加熱して容器1の周面に密着するように収縮させることによって装着される、いわゆるシュリンクラベルLが装着される。このようなシュリンクラベルLを容器1に装着するに際し、凹部40が設けられた部位では、シュリンクラベルLは、凹部40の端縁間に張架され、容器1に密着せずに、凹部40との間に空隙を形成するようにして装着される(図1参照)。
【0027】
したがって、本実施形態によれば、前述した用途において、容器1に熱湯を注いだときに、シュリンクラベルLと凹部40との間に形成された空隙内の空気の断熱作用によって、シュリンクラベルLへの熱伝導を抑制することができる。このため、容器1に装着されたシュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分に、手指を添えるように容器1を把持すれば、容器1が熱すぎて把持できないというような不具合を有効に回避することができる。
【0028】
図1では、シュリンクラベルLを鎖線で示しており、肩部3の上端側から、胴部3の下端側にわたる範囲に、シュリンクラベルLが装着されているが、シュリンクラベルLが装着される範囲は、これに限定されない。凹部40を含む範囲にシュリンクラベルLが装着され、シュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分への熱伝導を抑制することができればよい。
【0029】
また、シュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分には、目印となるような印刷を施すなどしてもよい。このようにすることで、容器1を把持する際に、シュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分に手指を添えるように、ユーザーを意識づけることで、容器1が熱すぎて把持できないというような不具合をより有効に回避することができるため好ましい。
【0030】
成形性などを考慮すると、凹部40のコーナー部にはRをつけるのが好ましいが、コーナー部のRが大きくなると、シュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分、すなわち、シュリンクラベルLの熱伝導が抑制された部分の面積を減じてしまう。このため、凹部40のコーナー部は、成形に支障が生じない範囲で角張っているのが好ましい。
【0031】
また、凹部40の端縁は、シュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分の面積を大きく減じてしまわない程度に、内側又は外側に湾曲させてもよい。凹部40の横幅方向両端縁を内側に湾曲させた場合には、その最小幅を凹部40の横幅wとする。凹部40の横幅方向両端縁を外側に湾曲させた場合には、その最大幅を凹部40の横幅wとする。
【0032】
シュリンクラベルLの凹部40の端縁間に張架された部分の面積を確保する上で、凹部40は、正方形状又は矩形状となるように設けるのが好ましいが、当該部分の面積が十分に確保できれば、円形状、楕円形状、多角形状となるように設けてもよい。
【0033】
シュリンクラベルLへの熱伝導を抑制するには、シュリンクラベルLと凹部40との間に形成された空隙内の空気の容積、特に、横断面に沿った容積が一定以上となるように、凹部40を設ける必要がある。このような観点から、凹部40の横幅wに対する中心角θと、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wとが定められる。これらが上記範囲に満たないと、シュリンクラベルLと凹部40との間に、十分な断熱作用が得られるだけの空隙が確保できなくなり、シュリンクラベルLへの熱伝導が抑制され難くなってしまう。
【0034】
また、例えば、胴部4が概ね円筒状又は円筒に近似する角筒状に成形される場合には、凹部40の横幅wに対する中心角θが大きくなるほど、凹部40の端縁間に張架されるシュリンクラベルLの位置が、容器内方に寄った位置となる。このような場合に、凹部40の横幅wに対する中心角θが上記範囲を超えると、シュリンクラベルLと凹部40との間に、十分な断熱作用が得られるだけの空隙が確保し難くなってしまう。
【0035】
また、凹部40の横幅wに対する中心角θが大きくなると、十分な横延伸倍率が確保し難くなり、胴部4に偏肉が生じ易くなってしまったり、胴部4の賦形性が悪くなってしまったりするというような不具合が生じる虞もある。
【0036】
また、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが上記範囲を超えて、凹部40が深くなるように設けると、成形性、成形後の型開き、離型性を良好にする上で不利になり、容器1の容量を確保する上でも不利になる。
【0037】
また、複数の凹部40を周方向に沿って胴部4に設けるにあたり、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θ、すなわち、横断面において、周方向に隣接する一方の凹部40の横幅方向端縁と他方の凹部40の横幅方向端縁のそれぞれと、中心軸Cとを結ぶ線のなす角度θ図3参照)が、10~45°となるように、凹部40を配設するのが好ましい。
なお、図示する例では、当該中心角θを45°としている。
【0038】
当該中心角θが上記範囲に満たないと、凹部40の間の部位の強度を十分に確保できなくなってしまったり、胴部4の賦形性が悪くなってしまったりするというような不具合が生じる虞がある。一方、当該中心角θが上記範囲を超えると、凹部40の横幅wの長さを十分に確保できなくなってしまう虞がある。
【0039】
図1図3に示す例に対して、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θを小さくし、それに応じて凹部40の横幅wを長くした例を図8図10に示す。
【0040】
図8は、本実施形態の他の変形例の概略を示す斜視図、図9は、同正面図である。図10は、図9のD-D端面図であり、図10では、端面にあらわれる肉厚を省略している。
【0041】
図8図10に示す例では、凹部40の横幅wに対する中心角θが68°、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが0.141とされ、図1図3に示す例に対して、高さ方向の長さを同じにしたまま、横幅wを長くした矩形状の凹部40が設けられている。そして、そのように設けられた四つの凹部40が、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θが22°となるように、周方向に沿って配設されている。
【0042】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図11は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図、図12は、同正面図、図13は、同平面図である。図14は、図12のE-E端面図であり、図14では、端面にあらわれる肉厚を省略している。
【0043】
本実施形態において、容器1は、胴部4の上端寄りの部位が括れるとともに、肩部3の上端側から、胴部4の下端側に至るように、高さ方向に沿って延在する谷部43が、周方向に沿って所定の間隔で設けられ、周方向に隣接する谷部43の間が尾根部44とされた、概ね円筒状の容器形状に成形されている。図11図14に示す例では、八つの谷部43と、八つの尾根部44とが、周方向に沿って等角度間隔で交互に配設されている。
【0044】
そして、本実施形態では、胴部4の上端側の括れた部位における谷部43のそれぞれに対応して配設されるように、容器内方に陥入する正方形状又は矩形状の複数の凹部40が、周方向に沿って設けられている。
【0045】
図11図14に示す例では、凹部40の横幅wに対する中心角θが34°、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが0.184とされた、横幅方向を短辺とする矩形状の凹部40が設けられている。そして、そのように設けられた八つの凹部40が、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θが11°となるように、胴部4の上端側の括れた部位における谷部43のそれぞれに対応して配設されている。
なお、本実施形態において、凹部40の高さ方向の長さは、一般的な人の手指の大きさを考慮して、手指一本分程度の長さとすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、周方向に沿って交互に配設される谷部43と尾根部44の数を増減して、谷部43の幅を調整することにより、それに応じて凹部40の横幅wを調整することができる。
【0047】
図15図18に示す例では、九つの谷部43と、九つの尾根部44とが、周方向に沿って等角度間隔で交互に配設されるようにして、谷部43の幅を狭めることにより、それに応じて凹部40の横幅wが短くなるようにしている。
【0048】
図15は、本実施形態の変形例の概略を示す斜視図、図16は、同正面図、図17は、同平面図である。図18は、図16のF-F端面図であり、図18では、端面にあらわれる肉厚を省略している。
【0049】
図15図18に示す例では、凹部40の横幅wに対する中心角θが20°、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが0.281とされ、図11図14に示す例に対して、高さ方向の長さを同じにしたまま、横幅wを短くした矩形状の凹部40が設けられている。そして、そのように設けられた九つの凹部40が、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θが20°となるように、胴部4の上端側の括れた部位における谷部43のそれぞれに対応して配設されている。
【0050】
また、本実施形態では、例えば、図19図22に示すように、周方向に隣接する尾根部44間の間隔を変更して、周方向に沿って一つおきに、谷部43の幅を広げるとともに、幅が広げられた谷部43のそれぞれに対応して、凹部40が配設されるようにすることもできる。このようにすることで、広げられた谷部43の幅に応じて、凹部40の横幅wを長くすることができる。
【0051】
図19は、本実施形態の他の変形例の概略を示す斜視図、図20は、同正面図、図21は、同平面図である。図22は、図20のG-G端面図であり、図22では、端面にあらわれる肉厚を省略している。
【0052】
図19図22に示す例では、凹部40の横幅wに対する中心角θが46°、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが0.07とされ、図11図14に示す例に対して、高さ方向の長さを同じにしたまま、横幅wを長くした矩形状の凹部40が設けられている。そして、そのように設けられた四つの凹部40が、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θが44°となるように、胴部4の上端側の括れた部位における幅が広げられた谷部43のそれぞれに対応して配設されている。
【0053】
以上、本実施形態は、上記の点で、前述した第一実施形態と異なっているが、これ以外の構成は、前述した第一実施形態と共通するため、重複する説明は省略する。
【実施例
【0054】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0055】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート系樹脂を用い、重量約26gのプリフォームを射出成形した。成形したプリフォームを加熱して軟化させた後、ブロー成形型にセットして、二軸延伸ブロー成形により図1図3に示す容器形状となるように、容器1を作製した。次いで、図1に示すように、肩部3の上端側から、胴部3の下端側にわたってシュリンクラベルLを装着した。
なお、容器1の容量は、約280mL、高さは、約130mm、最大胴径は、約66mmであった。 また、プリフォームの重量から算出した容器1の平均肉厚は、約0.23mmであった。
【0056】
シュリンクラベルLが装着された容器1に、電気ポットから熱湯を注ぎ、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に示す。
なお、測定時の室温は20℃、電気ポットの設定温度は80℃であり、測定時の容器1内の液温の実測値を表1に併せて示す。
【0057】
【表1】
※評価:低温熱傷が発症する温度と接触時間との関係に基づいて、シュリンクラベルLの表面温度が、凹部40の端縁間に張架された部分で53℃未満であるものを「◎」、53℃以上55℃未満であるものを「〇」、55℃以上60℃未満であるものを「△」、60℃以上であるものを「×」とした。
【0058】
[実施例2]
図4及び図5に示す容器形状となるように、容器1を作製した以外は、実施例1と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0059】
[実施例3]
図6及び図7に示す容器形状となるように、容器1を作製した以外は、実施例1と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0060】
[実施例4]
図8図10に示す容器形状となるように、容器1を作製した以外は、実施例1と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0061】
[実施例5]
図11図14に示す容器形状となるように、容器1を作製した以外は、実施例1と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0062】
[実施例6]
図15図18に示す容器形状となるように、容器1を作製した以外は、実施例1と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0063】
[実施例7]
図19図22に示す容器形状となるように、容器1を作製した以外は、実施例1と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0064】
[比較例1]
実施例5に対して、谷部43と尾根部44とを十二ずつ、周方向に沿って等角度間隔で交互に配設し、凹部40の横幅wに対する中心角θが15°、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが0.164とされ、実施例4に対して、高さ方向の長さを同じにしたまま、横幅wを短くした矩形状の十二の凹部40を、周方向に隣接する凹部40間の間隔に対する中心角θが15°となるように、胴部4の上端側の括れた部位における谷部43のそれぞれに対応して配設した以外は、実施例5と同様にして、図23に示す部位a~cにおけるシュリンクラベルLの表面温度を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0065】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0066】
例えば、本発明に係る合成樹脂製容器の用途は、前述した用途には限定されない。店頭に設置されたホットウォーマーなどの加温機により、内容液を加温して販売する、いわゆる加温販売用の用途にも利用できる。
また、本発明に係る合成樹脂製容器の容量は特に限定されないが、150~500mL程度の容量の容器に特に好適に適用できる。
【0067】
要するに、本発明に係る合成樹脂製容器は、胴部4に設けられる凹部40のそれぞれが、凹部40の横幅wに対する中心角θが、20~70°、凹部40の横幅wに対する横幅方向中央の深さdの比d/wが、0.07~0.4とされていれば、これ以外の細部の構成は、前述した実施形態に限定されることなく適宜変更することができる。容器1の表面には、例えば、ブロー成形型のキャビティ面をローレット状又は網目状に凹凸に加工して、これを転写してなる加飾を施すなどしてもよい。これにより、装着されたシュリンクラベルの表面温度をさらに低下させることが期待できる。
【符号の説明】
【0068】
1 容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
40 凹部
w 凹部の横幅
d 凹部の横幅方向中央の深さ
L シュリンクラベル
図1
図2
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