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特許7400568画像プリントシステム及び印画物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】画像プリントシステム及び印画物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20231212BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J21/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047960
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146579
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 賢人
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039841(JP,A)
【文献】特開平10-319214(JP,A)
【文献】特開2007-125751(JP,A)
【文献】特開平11-188866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/325
B41J 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像及び第2画像のデータを取得し、前記第1画像と前記第2画像との差分を抽出し、前記差分を黒、前記差分以外を白とするモノクロ画像を生成する画像処理装置と、
前記画像処理装置から前記第1画像及び前記モノクロ画像を受信し、熱転写シートに設けられた色材層を加熱して被転写体に前記第1画像を形成し、熱転写シートに設けられた保護層を前記被転写体に形成された画像上に転写するプリンタと、
を備え、
前記プリンタは、前記モノクロ画像の白に対応する部分と黒に対応する部分とで、前記保護層の表面状態が異なるように前記画像上に前記保護層を転写することを特徴とする画像プリントシステム。
【請求項2】
前記画像処理装置は、前記第2画像を第1モノクロ画像に変換し、前記第1モノクロ画像のうち、前記差分に相当する部分以外の領域を白に変えて第2モノクロ画像を生成し、前記第2モノクロ画像を前記プリンタへ送信することを特徴とする請求項1に記載の画像プリントシステム。
【請求項3】
前記プリンタは、前記モノクロ画像の白に対応する部分がグロス調、黒に対応する部分が前記グロス調よりも光沢度が低いマット調となるように、前記保護層を転写することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像プリントシステム。
【請求項4】
前記第1画像及び前記第2画像は、異なる情報を示す二次元コード画像であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像プリントシステム。
【請求項5】
第1画像及び第2画像のデータを取得する工程と、
前記第1画像と前記第2画像との差分を抽出する工程と、
前記差分を黒、前記差分以外を白とするモノクロ画像を生成する工程と、
熱転写シートの色材層を加熱し、被転写体に前記第1画像を形成する工程と、
熱転写シートに設けられた保護層を前記被転写体に形成された画像上に転写して印画物を作製する工程と、
を備え、
前記モノクロ画像の白に対応する部分と黒に対応する部分とで、前記保護層の表面状態が異なるように、前記画像上に前記保護層を転写することを特徴とする印画物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像プリントシステム及び印画物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドとプラテンロールとの間に熱転写シート(インクリボン)及び印画紙を挟み込み、サーマルヘッドから熱転写シートに熱を付与して、熱転写シートの色材(染料等)を画像に対応したパターンで印画紙に転写する熱転写プリンタが知られている。
【0003】
色材の転写後、画像を保護するために、透明フィルムからなる保護層が画像上に転写される。印画紙上に転写される保護層は、保護層形成時の転写エネルギーを高くすることで保護層表面が光沢度の低いマット調になり、転写エネルギーを低くすることで保護層表面が光沢度の高いグロス調になることが知られている。従来、ユーザがマット調又はグロス調を選択すると、画像上に一様な表面状態の保護層が形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4142517号公報
【文献】特開2017-65095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光の当たり方で絵柄が変化して見える印画物を製造できる画像プリントシステム及び印画物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による画像プリントシステムは、第1画像及び第2画像のデータを取得し、前記第1画像と前記第2画像との差分を抽出し、前記差分を黒、前記差分以外を白とするモノクロ画像を生成する画像処理装置と、前記画像処理装置から前記第1画像及び前記モノクロ画像を受信し、熱転写シートに設けられた色材層を加熱して被転写体に前記第1画像を形成し、熱転写シートに設けられた保護層を前記被転写体に形成された前記第1画像上に転写するプリンタと、を備え、前記プリンタは、前記モノクロ画像の白に対応する部分と黒に対応する部分とで、前記保護層の表面状態が異なるように前記画像上に前記保護層を転写するものである。
【0007】
本発明の一態様において、前記画像処理装置は、前記第2画像を第1モノクロ画像に変換し、前記第1モノクロ画像のうち、前記差分に相当する部分以外の領域を白に変えて第2モノクロ画像を生成し、前記第2モノクロ画像を前記プリンタへ送信する。
【0008】
本発明の一態様において、前記プリンタは、前記モノクロ画像の白に対応する部分がグロス調、黒に対応する部分が前記グロス調よりも光沢度が低いマット調となるように、前記保護層を転写する。
【0009】
本発明の一態様において、前記第1画像及び前記第2画像は、異なる情報を示す二次元コード画像である。
【0010】
本発明による印画物の製造方法は、第1画像及び第2画像のデータを取得する工程と、前記第1画像と前記第2画像との差分を抽出する工程と、前記差分を黒、前記差分以外を白とするモノクロ画像を生成する工程と、熱転写シートの色材層を加熱し、被転写体に前記第1画像を形成する工程と、熱転写シートに設けられた保護層を前記被転写体に形成された画像上に転写して印画物を作製する工程と、を備え、前記モノクロ画像の白に対応する部分と黒に対応する部分とで、前記保護層の表面状態が異なるように、前記画像上に前記保護層を転写するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像上に、領域毎に表面状態の異なる保護層を形成し、光の当たり方で絵柄が変化して見える印画物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る画像プリントシステムの概略構成図である。
図2】プリンタの概略構成図である。
図3】プリンタで用いられる熱転写シートの平面図である。
図4】画像処理装置の機能を示すブロック図である。
図5】印画物の作製に使用される画像の例を示す図である。
図6】画像の差分抽出の例を示す図である。
図7】印画物の絵柄の見え方の変化例を示す図である。
図8】印画物の絵柄の見え方の変化例を示す図である。
図9】印画物の絵柄の見え方の変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る画像プリントシステムの概略構成図である。画像プリントシステムは、プリンタ1と画像処理装置2とを備える。プリンタ1は、画像処理装置2からデータを受け取り、印画紙に画像を印画して印画物を製造する。
【0015】
プリンタ1は、昇華型熱転写方式の高解像度カラープリンタである。図2は、プリンタ1の概略構成図であり、図3は、プリンタ1で用いられる熱転写シート44(インクリボン)の平面図である。プリンタ1は、熱転写シート44を加熱して、印画紙45上に染料を移行して画像を形成し、画像上に保護層を転写するサーマルヘッド40を備えている。
【0016】
サーマルヘッド40の下流側に、熱転写シート44を巻き付けて形成された供給部42が設けられ、サーマルヘッド40の上流側に回収部41が設けられている。供給部42から繰り出された熱転写シート44は、サーマルヘッド40を通って、回収部41に回収されるようになっている。
【0017】
サーマルヘッド40の下方側には回転自在なプラテンローラ46が設けられている。また、サーマルヘッド40には、サーマルヘッド40をプラテンローラ46に対して昇降自在とさせる昇降手段43が連結されている。
【0018】
熱転写シート44は、一方の面に、イエロー染料層51、マゼンタ染料層52、シアン染料層53、及び保護層54が面順次に形成されている。なお、熱転写シート44には、染料層に加えて、又は染料層に代えて、溶融インキ層など他の色材層を設けてもよい。
【0019】
イエロー染料層51、マゼンタ染料層52、シアン染料層53は、バインダ樹脂に、昇華性染料を溶融又は分散させた材料を用いることが好ましい。保護層54は、透明で、接着性、耐光性等を有する材料を用いることが好ましい。
【0020】
印画紙45上に画像を形成する場合、まず、印画紙45とイエロー染料層51とが位置合わせされる。次に、昇降手段43によりサーマルヘッド40がプラテンローラ46に向けて降下し、印画紙45及び熱転写シート44が、サーマルヘッド40とプラテンローラ46との間に挟み込まれる。
【0021】
次に、印画紙45及び熱転写シート44が後方側(サーマルヘッド40の上流側)へ送られる。この間、カラー画像データに基づいて、サーマルヘッド40によりイエロー染料層51が選択的に順次加熱され、熱転写シート44から印画紙45上にイエロー染料が移行される。
【0022】
昇降手段43によりサーマルヘッド40が上昇し、プラテンローラ46から離れる。次に、印画紙45とマゼンタ染料層52とが位置合わせされる。イエロー染料を移行する方法と同様にして、印画紙45上にマゼンタ染料、シアン染料が順次移行され、印画紙45上にカラー画像が形成される。
【0023】
次に、サーマルヘッド40が熱転写シート44の保護層54を加熱して、画像を覆うように印画紙45上に保護層54を転写する。保護層が転写された印画紙45は切断手段(図示せず)により所定のサイズに切断され、プリント物が作製される。
【0024】
本実施形態では、サーマルヘッド40は、保護層54の転写の際に、後述するマットパターンを示すモノクロ画像に基づいて、領域毎に転写エネルギー(サーマルヘッド40に印加するエネルギー)を変える。保護層転写時の転写エネルギーを高くすることで保護層表面が光沢度の低いマット調になり、転写エネルギーを低くすることで保護層表面が光沢度の高いグロス調になる。
【0025】
例えば、転写後の保護層の表面をマット調とする場合、サーマルヘッド40に印加するエネルギーは、転写後の保護層表面の光沢度が40%以下になるための高エネルギーに調整される。一方、転写後の保護層の表面をグロス調(光沢状態)とする場合、サーマルヘッド40に印加するエネルギーは、転写後の保護層表面の光沢度が70%以上になるための低エネルギーに調整される。
【0026】
画像処理装置2は、CPU、記憶部、通信装置等を備えたコンピュータであり、図4に示すように、画像取得部21、画像変換部22、差分抽出部23及びプリント処理部24の機能を有する。
【0027】
画像取得部21は、スマートフォンやPC等のユーザ端末3から、ネットワークを介して画像データを取得する。あるいはまた、メモリカードやUSBメモリ等の可搬記憶媒体から画像データを読み取ることで、画像データを取得してもよい。
【0028】
取得する画像データは、絵柄を変化させたい画像であり、変化前の第1画像と、変化後の第2画像の2つの画像である。2つの画像は、表情が変わる人物画像など、同一部分の多い画像であることが好ましい。例えば、図5に示すように、変化前の第1画像G1と、変化後の第2画像G2とが取得される。図5の例では、人物の口元が変化している。
【0029】
画像変換部22は、変化後の第2画像をモノクロ変換し、モノクロ画像(第1モノクロ画像)を生成する。
【0030】
差分抽出部23は、2つの画像を比較し、2つの画像の差分、すなわち、第2画像において第1画像から変化した部分を抽出する。そして、差分抽出部23は、画像変換部22により生成されたモノクロ画像のうち、抽出した差分に相当する部分以外の領域を白くする。これにより、2つの画像の差分に相当する部分のみ黒となるモノクロ画像(第2モノクロ画像)が得られる。このモノクロ画像(第2モノクロ画像)がマットパターンを示すものとなる。例えば、図6に示すように、第1画像G1及び第2画像G2から、口元部分のみが黒となるモノクロ画像D(マットパターン)が得られる。
【0031】
差分抽出部23が2つの画像の差分を抽出した後、画像変換部22が差分をモノクロ変換してもよい。
【0032】
プリント処理部24は、第1画像のデータをプリンタ1へ送信し、第1画像の形成を指示する。プリンタ1は、熱転写シート44のイエロー染料層51、マゼンタ染料層52及びシアン染料層53を加熱して、印画紙45に第1画像を形成する。
【0033】
プリント処理部24は、マットパターンを示すモノクロ画像(第2モノクロ画像)をプリンタ1へ送信し、保護層転写を指示する。プリンタ1は、モノクロ画像の黒の部分ではサーマルヘッド40による転写エネルギーを高くして、保護層の表面をマット調にし、モノクロ画像の白の部分ではサーマルヘッド40による転写エネルギーを低くして、保護層の表面をグロス調にする。
【0034】
これにより、第1画像と第2画像とで変化しない部分はグロス調、変化する部分がマット調となるように保護層表面を仕上げた印画物が製造される。印画物への光の当たり方によって、第1画像の色が部分的に見えにくくなり、保護層のマットパターンが強調して見えるようになる。そのため、印画物の絵柄が変化するように見える。例えば、図7に示すように、印画物Pへの光の当て方を変えることで、口元のマット調仕上げの保護層が強調され、表情が変化するように見える。
【0035】
図8は、同様の方法で製造された印画物P1の例を示す。この例では、変化前の画像が眼鏡のレンズを通して目が見えている人物画像、変化後の画像は、眼鏡のレンズが曇った(サングラスになった)ものである。画像処理装置2は、眼鏡のレンズ部分のみ黒となるモノクロ画像(マットパターン)を生成する。プリンタ1は、眼鏡のレンズ部分がマット調、その他の部分はグロス調となるように保護層表面を仕上げて、印画物P1を製造する。印画物P1への光の当て方を変えることで、眼鏡が曇った(サングラスに変化した)ように見える。
【0036】
画像処理装置2は、眼鏡のレンズ部分のみ白、その他の部分が黒となるモノクロ画像(マットパターン)を生成してもよい。プリンタ1は、眼鏡のレンズ部分がグロス調、その他の部分はマット調となるように保護層表面を仕上げて印画物を製造する。このような印画物では、光の当たり方によって、保護層がグロス調になっているレンズ部分で光が強く反射し、サングラスに変化したように見える。
【0037】
図9に示すように、二次元コードの一部が変化するようにしてもよい。画像処理装置2には、異なる情報を示す2つの二次元コード画像が入力される。画像処理装置2は、2つの二次元コード画像の差分を抽出し、マットパターンとなるモノクロ画像を生成する。画像処理装置2は、変化前の二次元コード画像と、差分に相当するモノクロ画像(マットパターン)をプリンタ1へ出力する。
【0038】
プリンタ1は、変化前の二次元コード画像を印画する。そして、プリンタ1は、差分に相当する部分をマット調、その他の部分はグロス調となるように印加エネルギーを調整して保護層を転写して印画物を製造する。この印画物では、一見すると1つの二次元コードのみが印刷されているが、光の当て方を変えることで、二次元コードのデザインが変わり、異なる情報を読み取ることができるようになる。
【0039】
上記実施形態では、染料層と保護層が同一の熱転写シートに面順次に設けられる構成について説明したが、染料層が設けられた熱転写シートと、保護層が設けられた熱転写シートとが別体であってもよい。この場合、プリンタは、染料を印画紙に移行して画像を形成するための第1サーマルヘッドと、印画紙上に保護層を転写するための第2サーマルヘッドとを備える。
【0040】
プリンタ1と画像処理装置2とは同じ筐体内に収容されていてもよい。
【0041】
画像形成及び保護層転写を行う被転写体は、シール紙を含む印画紙でもよいし、カード基材上に受容層が設けられたものであってもよい。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 プリンタ
2 画像処理装置
3 ユーザ端末
21 画像取得部
22 画像変換部
23 差分抽出部
24 プリント処理部
40 サーマルヘッド
41 回収部
42 供給部
43 昇降手段
44 熱転写シート
45 印画紙
46 プラテンローラ
51 イエロー染料層
52 マゼンタ染料層
53 シアン染料層
54 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9