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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/08 20060101AFI20231212BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20231212BHJP
   B62J 43/10 20200101ALI20231212BHJP
【FI】
A61G5/08 703
A61G5/04
B62J43/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051094
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146054
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐大
(72)【発明者】
【氏名】安池 重暁
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 清和
(72)【発明者】
【氏名】中村 佑太
(72)【発明者】
【氏名】ラージャー ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌祥
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0245592(US,A1)
【文献】特開2019-011029(JP,A)
【文献】特開2011-217995(JP,A)
【文献】特開2016-168153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/04,5/08,5/12
B62B 3/00,3/02
B62K 15/00
B62J 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動駆動により走行可能に構成される移動ベースと、
前記移動ベース上に配置されるシートと、
前記シートの着座面に対して車両幅方向の外方寄りかつ車両上方寄りに位置するアームレスト本体を有するアームレストと、
前記電動駆動に用いられる電力を供給可能に構成されるバッテリと
を備え、
前記移動ベースが、前輪を有する前側ベースと、後輪を有する後側ベースとを含み、
前記後側ベースが、前記前側ベースに対して車両後方に配置され、
前記移動ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、
前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側ベース及び前記後側ベースを互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、
前記シートが、前記着座面と、前記着座面とは反対側を向く裏面とを有する着座部を含み、
前記シートが、前記着座面を車両上方に向けるように配置した着座位置と、前記着座部を前記着座位置から車両前方に退避させた退避位置との間で移動可能に構成され、
前記シートが、前記拡大状態で前記着座位置に配置可能であり、かつ前記縮小状態で前記退避位置に配置可能となるように構成され、
前記アームレスト本体が車両前方を向く先端部を有する、電動車両であって、
前記バッテリが前記シートの着座部の裏面に配置され、
前記シートが、このシートを前記退避位置に配置した状態で、前記アームレスト本体の先端部よりも車両後方に位置するように構成されている、電動車両。
【請求項2】
前記前側ベースが、車両前方を向く前端部を有し、
前記シートが、このシートを前記退避位置に配置した状態かつ前記移動ベースの縮小状態で、車両側面視にて前記アームレスト本体の先端部における車両上下方向の下端と、前記前側ベースの前端部における車両上下方向の下端とを結んだ仮想直線よりも車両後方に位置するように構成されている、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記後側ベースに取り付けられるフレームを備え、
前記フレームが、前記アームレストを支持するフレーム本体を有し、
前記シートが、前記着座部を支持可能に構成される脚部を含み、
前記脚部が、前記フレーム本体に対して車両前方に離れて配置され、
前記フレームが、前記脚部及び前記フレーム本体を連結するブラケットを有し、
前記脚部が、前記シートを前記着座位置と前記退避位置との間で移動可能とするように、前記ブラケット及び前記前側ベースに取り付けられている、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記シートが、前記着座部の裏面に沿って前記バッテリを囲むように延びる保護部材を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記アームレストが、前記アームレスト本体の先端部から突出するグリップを有し、
前記グリップが、前記アームレスト本体の先端部よりも車両前方に張り出すように配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動により走行可能な移動ベースと、着座部を有するシートと、電力を供給可能なバッテリとを備え、移動ベースがその前輪及び後輪間のホイールベースを拡縮可能とするように構成される、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者、要介護者等のユーザの移動手段として、モータ等の駆動手段によって走行可能な電動車椅子、電動カート等の電動車両が普及してきている。このような電動車両は、「シニアカー」と呼ばれることもある。典型的に、電動車両は、電動駆動により走行可能な移動ベースと、着座部を有するシートとを備えていて、ユーザは電動車両のシートの着座部に着座した状態で移動することができる。
【0003】
さらに、電動車両は折り畳み可能に構成されることがある。この場合、電動車両の移動ベースがその前輪及び後輪間のホイールベースを拡縮可能とするように構成される。具体的には、電動車両は、移動ベースのホイールベースを拡大した展開状態と、ホイールベースを展開状態よりも縮小した折り畳み状態とに変形可能に構成される。電動車両は、展開状態では、ユーザを搭乗可能とすると共に走行時の安定性を得ることができ、かつ電動車両は、折り畳み状態では、電動車両の後方からの手押しによる移動に適するように小回り可能となる。
【0004】
このような電動車両は、折り畳み状態では、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として用いられる。特に、電動車両の折り畳み状態では、買い物籠等の荷物を効率的かつ安定的に載置可能とすべく、荷物の載置スペースを十分に確保することが望まれる。しかしながら、電動車両には、電動駆動に用いられる電力を供給可能なバッテリが搭載さている。バッテリは電動車両の部品の中でも比較的大きなものであるので、電動車両の中でバッテリの設置スペースは大きくなる。そのため、荷物の載置スペースとバッテリの設置スペースとを効率的に確保することが要求される。
【0005】
このような要求に対応可能とする電動車両の一例としては、前輪及び後輪間のホイールベースを拡縮可能とするように構成された車体と、車体の下部に対して上方に配置される着座部を有し、かつ車体上に配置されるシートと、荷物を収容可能とすべく車体に常設されるバスケットと、電力を供給可能とし、かつ車体の下部に取り付けられるバッテリとを備え、電動車両の展開状態では、ユーザが着座できるようにシートの着座部が配置され、かつバスケット及びバッテリが、上下方向にてシートの着座部及び車体の下部間に形成されるシート下方空間に配置され、かつ電動車両の折り畳み状態では、着座部が展開状態よりも上方に位置し、バスケットが車体から後方にはみ出すようにシート下方空間の外部かつ車体の外部に位置し、かつバッテリがシート下方空間に留まる、小型電動車両が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-168153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記電動車両の一例のように、電動車両の折り畳み状態にて、バスケットのような荷物の載置スペースが車体の外部に位置する場合、この載置スペースでは荷物を安定的に載置し難い。特に、荷物の重量及びサイズが増加するに従って、載置スペースに載置される荷物の安定性は低下する。
【0008】
さらに、バッテリは外部からの衝撃に対して脆弱である一方で、電動車両の車体は外部からの衝撃を受け易い。そのため、上記電動車両の一例のように、バッテリが電動車両の車体の下部に取り付けられる場合、車体の外部からの衝撃が、車体を介してバッテリに伝わり易く、このような衝撃によってバッテリがダメージを受けるおそれがある。
【0009】
このような実情を鑑みると、電動車両においては、荷物の載置スペース及びバッテリの設置スペースを効率的に確保可能とし、荷物の載置スペースにて荷物を安定的に載置可能とし、かつバッテリを外部の衝撃から効率的に保護可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、一態様に係る電動車両は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベースと、前記移動ベース上に配置されるシートと、前記シートの着座面に対して車両幅方向の外方寄りかつ車両上方寄りに位置するアームレスト本体を有するアームレストと、前記電動駆動に用いられる電力を供給可能に構成されるバッテリとを備え、前記移動ベースが、前輪を有する前側ベースと、後輪を有する後側ベースとを含み、前記後側ベースが、前記前側ベースに対して車両後方に配置され、前記移動ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側ベース及び前記後側ベースを互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、前記シートが、前記着座面と、前記着座面とは反対側を向く裏面とを有する着座部を含み、前記シートが、前記着座面を車両上方に向けるように配置した着座位置と、前記着座部を前記着座位置から車両前方に退避させた退避位置との間で移動可能に構成され、前記シートが、前記拡大状態で前記着座位置に配置可能であり、かつ前記縮小状態で前記退避位置に配置可能となるように構成され、前記アームレスト本体が車両前方を向く先端部を有する、電動車両であって、前記バッテリが前記シートの着座部の裏面に配置され、前記シートが、このシートを前記退避位置に配置した状態で、前記アームレスト本体の先端部よりも車両後方に位置するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
一態様に係る電動車両においては、荷物の載置スペース及びバッテリの設置スペースを効率的に確保することができ、荷物の載置スペースにて荷物を安定的に載置することができ、かつバッテリを外部の衝撃から効率的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す側面図である。
図3図3は、一実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す正面図である。
図4図4は、一実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す斜視図である。
図5図5は、一実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す側面図である。
図6図6は、一実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す正面図である。
図7図7は、一実施形態に係る電動車両のブラケット及びその周辺部分を、電動車両のフレームのカバーを取り外した状態で概略的に示す側面図である。
図8図8は、一実施形態に係る電動車両におけるシートの着座部の裏面及びバッテリ並びにこれらの周辺部分を、シートの脚部を省略した状態で概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態に係る電動車両について以下に説明する。本実施形態に係る電動車両1は、図1図3に示すように電動車椅子として用いられるドライブモードと、図4図6に示すように電動歩行補助者として用いられるプッシュモードとに変形可能である。このような電動車両1は、電動車椅子の機能を備えた電動歩行補助車と呼ぶこともできる。特に、図1図3に示すように、電動車両1は、ドライブモードにて1人乗り電動車椅子として用いられるように構成することができる。
【0014】
しかしながら、電動車両はこれに限定されない。例えば、電動車両は、プッシュモードにてショッピングカート、台車等として用いられるように構成することができる。電動車両は、ドライブモードにて電動カート等として用いられるように構成することができる。電動車両は、プッシュモード及びドライブモードの一方のみで用いられるように構成することもできる。以下においては、電動車両を必要に応じて単に「車両」と呼ぶ。
【0015】
本実施形態の説明に用いられる図面においては、車両を基準とした方向を次のように示す。図1図2図4図5、及び図7においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。図1図3図4、及び図6においては、車両前方を向いた場合の左側及び右側を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。車両幅方向は、片側矢印L及び片側矢印Rによって示される。なお、以下の説明において、左側及び右側は、このように車両前方を向いた場合の左側及び右側をそれぞれ指す。さらに、図1図7においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。
【0016】
「電動車両の概略」
図1図8を参照して、本実施形態に係る電動車両1の概略について説明する。すなわち、電動車両1は、概略的には次のように構成することができる。
【0017】
図1図6に示すように、電動車両1は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース10を有する。移動ベース10は、前側ベース20を有する。前側ベース20は前輪21を有する。移動ベース10は、前側ベース20に対して車両後方に配置される後側ベース30を有する。後側ベース30は後輪31を有する。移動ベース10は、図1図3に示すように、前輪21及び後輪31間のホイールベースHを拡大した拡大状態と、図4図6に示すように、ホイールベースHをこの拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前側及び後側ベース20,30を互いに対して相対的に移動可能とするように構成されている。前側及び後側ベース20,30の相対的な移動は、相対的な車両前後方向のスライド移動とすることができる。
【0018】
図1図6に示すように、車両1は、移動ベース10上に配置されるシート40を有する。シート40は、ユーザが着座可能となるように構成される着座部41を有する。着座部41は、ユーザの着座に用いられる着座面42を有する。図1図5及び図8に示すように、着座部41は、着座面42とは反対側を向く裏面43を有する。
【0019】
シート40は、図1図3に示すように、着座面42を車両上方に向けるように配置した着座位置と、図4図6に示すように、着座部41を着座位置から車両前方に退避させた退避位置との間で移動可能に構成される。図1図3に示すように、シート40は、移動ベース10の拡大状態で着座位置に配置することができる。図4図6に示すように、シート40は、移動ベース10の縮小状態で退避位置に配置することができる。
【0020】
ここで、本実施形態においては、シート40を基準とした方向を次のように定義する。シート前方及びシート後方は、シート40が着座位置にある状態で、それぞれ車両前方及び車両後方に略一致する。シート左側及びシート右側は、それぞれ車両左側及び車両右側と略一致する。シート幅方向は、シート左側及びシート右側によって定義される。着座部41の着座面42及び裏面43の向く方向を、それぞれシート上方及びシート下方と定義する。シート上方及びシート下方は、シート40が着座位置にある状態で、それぞれ車両上方及び車両下方に略一致する。
【0021】
図1図6に示すように、車両1は、着座面42に対して車両幅方向の外方寄りかつ車両上方寄りに位置するアームレスト本体51を有するアームレスト50を含む。本実施形態においては、車両1は、着座面42に対して車両幅方向の両外方寄りにそれぞれ位置する2つのアームレスト50を有する。以下において、特に、2つのアームレスト50について言及しない限り、2つのアームレスト50の一方を代表的に説明するものとする。なお、車両は、2つのアームレストのうち一方のみを有することもできる。
【0022】
2つのアームレスト50は、車両幅方向にて略対称となるように構成することができる。各アームレスト50のアームレスト本体51は、シート40が着座位置にあるときに着座部41に着座するユーザの肘を載せることができるように構成される。アームレスト本体51は、車両前方を向く先端部52を有する。
【0023】
図1図3図5、及び図8に示すように、車両1は、電動駆動に用いられる電力を供給可能に構成されるバッテリ2を有する。バッテリ2はシート40の着座部41の裏面43に配置される。図4及び図5に示すように、このようなシート40は、それを退避位置に配置した状態で、少なくとも1つのアームレスト本体51の先端部52、好ましくは、2つのアームレスト本体51の先端部52よりも車両後方に位置する。
【0024】
さらに、電動車両1は、概略的には次のように構成することができる。図1図6に示すように、前側ベース20は、車両前方を向く前端部22を有する。図5に示すように、シート40は、シート40を退避位置に配置した状態かつ移動ベース10の縮小状態で、次に述べる仮想直線Pよりも車両後方に位置するように構成されている。仮想直線Pは、車両側面視にてアームレスト本体51の先端部52における車両上下方向の下端と、前側ベース20の前端部22における車両上下方向の下端とを結んだ直線Pである。特に、車両1が2つのアームレスト50を有する場合、2つの仮想直線Pを定義することができる。
【0025】
図1図7に示すように、車両1は、後側ベース30に取り付けられるフレーム60を有する。フレーム60は、アームレスト50を支持するフレーム本体61を有する。シート40は、着座部41を支持可能に構成される脚部44を有する。本実施形態においては、シート40は、シート幅方向に互いに間隔を空けた2つの脚部44を有する。以下において、特に、2つの脚部44について言及しない限り、2つの脚部44の一方を代表的に説明するものとする。なお、シートは、2つの脚部のうち一方のみを有することもできる。
【0026】
2つの脚部44は、車両幅方向にて略対称となるように構成することができる。各脚部44は、フレーム本体61に対して車両前方に離れて配置される。フレーム60は、2つの脚部44をそれぞれフレーム本体61に連結する2つのブラケット62を有する。各脚部44は、シート40を着座位置と退避位置との間で移動可能とするように、前側ベース20と、この脚部44に対応するブラケット62とに取り付けられている。
【0027】
図8に示すように、シート40は、着座部41の裏面43に沿ってバッテリ2を囲むように延びる保護部材45を有する。図1図6に示すように、各アームレスト50は、そのアームレスト本体51の先端部52から突出するグリップ53を有する。各アームレスト50のグリップ53は、このアームレスト50のアームレスト本体51の先端部52よりも車両前方に張り出すように配置されている。
【0028】
「電動車両の詳細」
図1図6を参照すると、電動車両1は、詳細には次のように構成することができる。図1図6に示すように、電動車両1は、シート40の着座面42に対応する背もたれとして用いることができる背板70を有する。背板70は後側ベース30上に配置される。
【0029】
背板70は、次に述べるような起立位置及び倒伏位置の間で移動可能に構成される。すなわち、図1図3に示すように、起立位置では、背板70は着座面42に対して車両後方かつ車両上方に位置する。図4図6に示すように、倒伏位置では、背板70は起立位置に対して車両前方に位置する。図1図6に示すように、背板70は、起立位置と倒伏位置との間で移動可能となるようにフレーム本体61に旋回可能に取り付けられる。
【0030】
図1図3に示すように、車両1のドライブモードでは、移動ベース10は拡大状態にある。さらに、ドライブモードでは、シート40及び背板70をそれぞれ着座位置及び起立位置に配置することができる。このようなドライブモードは、展開状態と呼ぶこともできる。ドライブモードでは、車両上下方向にて後側ベース30と、シート40の着座部41の裏面43に配置されたバッテリ2との間に、荷物の載置スペースが確保される。この荷物の載置スペースにおいて、後側ベース30上に荷台として構成される後側ボード32を設置することができる。
【0031】
図4図6に示すように、車両1のプッシュモードでは、移動ベース10は縮小状態にある。さらに、プッシュモードでは、シート40及び背板70をそれぞれ退避位置及び倒伏位置に配置することができる。このようなプッシュモードは、折り畳み状態と呼ぶこともできる。プッシュモードでは、後側ベース30に対して車両上方、かつシート40の着座部41の裏面43に配置されたバッテリ2に対して車両後方に、ドライブモードと同様の荷物の載置スペースが確保される。特に、車両1がこのようなドライブモード及びプッシュモード間で変化するときに、拡大状態及び縮小状態間における移動ベース10の変化と、着座位置及び退避位置間におけるシート40との移動とが連動するとよい。
【0032】
図1図6に示すように、車両1は、移動ベース10の電動駆動に用いられる電動機3を有する。電動機3は、2つの後輪31をそれぞれ駆動可能とするように構成される2つのモータ3aとすることができる。車両1は、この車両1の制御に用いられる制御装置4を有する。制御装置4は、電動機3を制御可能とするように構成される。車両1は、特にドライブモードにて、シート40に着座したユーザが操作可能となるように構成される前側操作装置5を有する。車両1は、特にプッシュモードにて、車両1の後方に位置するユーザが操作可能となるように構成される後側操作装置6を有する。
【0033】
特に明確に図示はしないが、バッテリ2は、電動機3の2つのモータ3a、制御装置4、並びに前側及び後側操作装置5,6に電気的に接続される。バッテリ2は、電動機3の2つのモータ3a、制御装置4、並びに前側及び後側操作装置5,6に電力を供給可能になっている。
【0034】
さらに、制御装置4は、バッテリ2に加えて、電動機3の2つのモータ3a、前側操作装置5、及び後側操作装置6に電気的に接続されている。制御装置4は、前側又は後側操作装置5,6からの入力に応じて2つのモータ3aを制御可能とするように構成される。
【0035】
「移動ベースの詳細」
図1図6を参照すると、移動ベース10は、詳細には次のように構成することができる。移動ベース10の前側ベース20は、車両幅方向に間隔を空けた2つの前輪21を有する。前側ベース20の前端部22は、各前輪21よりも車両前方に配置される。移動ベース10の後側ベース30は、車両幅方向に間隔を空けた2つの後輪31を有する。
【0036】
しかしながら、移動ベースは、前側ベースが1つ以上の前輪を有し、かつ後側ベースが2つ以上の後輪を有するように構成することができる。また、移動ベースは、前側ベースが2つ以上の前輪を有し、かつ後側ベースが1つ以上の後輪を有するように構成することもできる。
【0037】
後側ベース30には電動機3及び制御装置4が配置される。2つの後輪31は、2つのモータ3aによってそれぞれ独立して駆動可能になっている。車両1は、2つのモータ3aがそれらの回転を防ぐように停止した状態で、ブレーキを掛けられるようになっている。
【0038】
「シート及びそれに配置されるバッテリの詳細」
図1図6及び図8を参照すると、シート40及びそれに配置されるバッテリ2は、詳細には次のように構成することができる。図1図3に示すように、シート40は、着座位置にある状態で、着座部41の着座面42を実質的に車両水平方向に沿わせるように配置される。図4図6に示すように、シート40は、退避位置にある状態で、着座部41の着座面42を、車両上下方向及び車両幅方向に広がる平面に対して所定の角度に向けるように配置されるとよい。かかる角度は絶対値で約30°以下であるとよい。しかしながら、着座面の角度は、これに限定されない。
【0039】
図1図6に示すように、着座部41のシート前後方向の前端区域41aは自由端となっている。図1及び図2に示すように、シート40が着座位置にある状態では、着座部41の前端区域41aは、着座部41のシート前後方向の後端区域41bに対して車両前方に位置し、かつ着座部41の後端区域41bは、車両前後方向にてフレーム本体61と隣接するように位置する。図4及び図5に示すように、シート40が退避位置にある状態では、着座部41の前端区域41aは、着座部41の後端区域41bに対して車両下方かつ車両前方に位置し、かつ着座部41の後端区域41bは、フレーム本体61に対して車両前方に間隔を空けて位置する。
【0040】
さらに、シート40は、このシート40及び背板70がそれぞれ退避位置及び倒伏位置に配置した状態で、背板70を支持可能とするように構成される。具体的には、着座部41の後端区域41bが背板70を支持する。
【0041】
図1図2図4、及び図5に示すように、各脚部44は、シート上方からシート下方に向かうに従ってシート後方からシート前方に向かって傾斜するように延びている。図1図6に示すように、各脚部44は、着座部41からシート下方側に延びる。
【0042】
各脚部44はまた、この脚部44をフレーム60に対して旋回可能とするように、フレーム60、特に、ブラケット62に取り付けられるフレーム取付区域44aを有する。各脚部44は、前側ベース20に取り付けられるベース取付区域44bを有する。より具体的には、各脚部44のベース取付区域44bは、この脚部44をフレーム60に対して旋回可能とし、かつこの脚部44を後側ベース30に対する前側ベース20の前後移動に追従可能とするように、前側ベース20に取り付けられている。
【0043】
各脚部44のフレーム取付区域44aは、この脚部44のシート上下方向の中間に位置する。各脚部44のベース取付区域44bは、この脚部44のシート上下方向の下端に位置する。各脚部44のフレーム取付区域44aは、着座部41と、この脚部44のベース取付区域44bとの間に位置する。
【0044】
図8に示すように、バッテリ2は、着座部41の裏面43に沿って広がるように形成されている。さらに、バッテリ2は、シート幅方向に延びるように形成することができる。バッテリ2は、着座部41の後端区域41b寄りに位置する。バッテリ2は、着座部41の裏面43内に収まるように配置されている。シート40は、バッテリ2を着座部41に取り付けるように構成されるバッテリ取付部材46を有する。バッテリ取付部材46は、シート下方からバッテリ2を支持した状態で、着座部41の裏面43に取り付けられている。
【0045】
図1図3図4、及び図6に示すように、バッテリ2は、2つの脚部44間に位置する。図1図3に示すように、シート40が着座位置にある状態で、バッテリ2は、各脚部44のフレーム取付区域44aよりも車両上方に位置する。図4及び図5に示すように、シート40が退避位置にある状態で、バッテリ2は、各脚部44のフレーム取付区域44aよりも車両前方に位置する。
【0046】
図8に示すように、保護部材45は、着座部41の裏面43の周縁部分全体に沿って配置されている。すなわち、保護部材45は、バッテリ2の全周を囲むように延びている。しかしながら、保護部材は、少なくとも着座面の裏面におけるシート前後方向の前縁部分に沿うように配置することができる。
【0047】
「アームレストの詳細」
図1図6を参照すると、アームレスト50は、詳細には次のように構成することができる。各アームレスト50のアームレスト本体51は車両前後方向に延びる。各アームレスト50のグリップ53は、このアームレスト50のアームレスト本体51の先端部52から車両上方に突出する。
【0048】
2つのグリップ53の一方は、前側操作装置5として構成される。ユーザは、このような前側操作装置5を操作することによって車両1を操縦することができる。前側操作装置5は、ジョイスティックとして構成することができる。この場合、2つのグリップ53の一方は、アームレスト本体51に対して移動可能となる。また、2つのグリップ53の他方は、アームレスト本体51に対して移動可能とするか、又はアームレスト本体51に対して固定することができる。なお、2つのグリップの両方を、ユーザによって操作可能な前側操作装置として構成することもできる。この場合、2つのグリップは、それらのいずらかを前側操作装置として用いるかを選択可能とするように構成することができる。
【0049】
さらに、各アームレスト50は、そのアームレスト本体51を支持する本体支持部材54を有する。本体支持部材54は、アームレスト本体51に対して車両下方に位置する。本体支持部材54は、アームレスト本体51とフレーム本体61との間で延びる。本体支持部材54の延伸方向の先端区域は、アームレスト本体51に取り付けられる。本体支持部材54の延伸方向の基端区域は、フレーム本体61に取り付けられる。
【0050】
「フレームの詳細」
図1図7を参照すると、フレーム60は、詳細には次のように構成することができる。図1図6に示すように、フレーム本体61は、車両幅方向に互いに間隔を空けた2つの側方部63を有する。フレーム本体61は、2つの側方部61を連結する連結部64を有する。各側方部63の車両上下方向の下端は、後側ベース30に取り付けられる。各側方部63は、車両前方に突出する突出区域63aを有する。各側方部63は、このような突出区域63aを有するように、車両側面視で略くの字形状に形成することができる。
【0051】
図1図7を参照すると、フレーム60は、シート40の2つの脚部44にそれぞれ対応する2つのブラケット62を有する。2つのブラケット62はまた、2つの側方部63にそれぞれ対応する。図7に示すように、各側方部63に対応するブラケット62は、この側方部63の突出区域63aに固定される本体固定区域62aを有する。ブラケット62は、本体固定区域62aから車両前方に突出する。各脚部44に対応するブラケット62は、この脚部44を旋回可能に取り付けるように構成されるシート取付区域62bを有する。各ブラケット62において、シート取付区域62bは本体固定区域62aに対して車両前方に位置する。
【0052】
図1図6に示すように、2つの側方部63はまた、2つのアームレスト50にそれぞれ対応する。各側方部63は、この側方部63に対応するアームレスト50の本体支持部材54の基端区域を取り付けるように構成されるアームレスト取付区域63bを有する。2つの側方部63は、背板70の車両幅方向の両外方端にそれぞれ隣接する。各側方部63は、背板70を旋回可能に取り付けるように構成される背板取付区域63cを有する。
【0053】
各側方部63において、アームレスト取付区域63bは、突出区域63aよりも車両上方に位置し、かつ背板取付区域63cは、アームレスト取付区域63bよりも車両上方に位置する。連結部64は、背板取付区域63cよりも車両上方に位置する。
【0054】
フレーム60は、フレーム本体61の車両上下方向の上端部から車両上方に延びる支柱65を有する。さらに、支柱65は、連結部64の車両幅方向の中間区域から車両上方に延びることができる。フレーム60、特に、支柱65は、後側操作装置6を車両下方から支持する。後側操作装置6は、支柱65の車両上下方向の上端部に取り付けることができる。フレーム60はまた、フレーム本体61における各側方部63の突出区域63aと、この突出区域63aに固定されたブラケット62とを車両幅方向の外方から覆うカバー66を有する。
【0055】
以上、本実施形態に係る電動車両1は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース10と、前記移動ベース10上に配置されるシート40と、前記着座面42に対して車両幅方向の外方寄りかつ車両上方寄りに位置するアームレスト本体51を有するアームレスト50と、前記電動駆動に用いられる電力を供給可能に構成されるバッテリ2とを備え、前記移動ベース10が、前輪21を有する前側ベース20と、後輪31を有する後側ベース30とを含み、前記後側ベース30が、前記前側ベース20に対して車両後方に配置され、前記移動ベース10が、前記前輪21及び前記後輪31間のホイールベースHを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースHを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側及び後側ベース20,30を互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、前記シート40が、着座面42と、前記着座面42とは反対側を向く裏面43とを有する着座部41を含み、前記シート40が、前記着座面42を車両上方に向けるように配置した着座位置と、前記着座部41を前記着座位置から車両前方に退避させた退避位置との間で移動可能に構成され、前記シート40が、前記拡大状態で前記着座位置に配置可能であり、かつ前記縮小状態で前記退避位置に配置可能となるように構成され、前記アームレスト本体51が車両前方を向く先端部52を有しており、前記バッテリ2が前記シート40の着座部41の裏面43に配置され、前記シート40が、このシート40を前記退避位置に配置した状態で、前記アームレスト本体51の先端部52よりも車両後方に位置するように構成されている。
【0056】
このような電動車両1の上記展開状態、すなわち、ドライブモードにおいては、シート40の着座部41の裏面43はデッドスペースとなる。そのため、車両1の展開状態では、この着座部41の裏面43にバッテリ2の設置スペースを確保することができる。車両上下方向にてバッテリ2及び移動ベース10間に荷物の載置スペースを十分に確保することができる。
【0057】
このような電動車両1の上記折り畳み状態、すなわち、プッシュモードでは、バッテリ2の載置スペースを、荷物の載置スペースに対して車両前方に確保することができる。荷物の載置スペースは、車両1の展開状態と同じ位置に確保することができる。バッテリ2はまた、車両1の展開及び折り畳み状態間における変形の過程にて、荷物の載置スペース避けるように移動することができる。よって、荷物の載置スペース及びバッテリ2の設置スペースを効率的に確保することができる。
【0058】
上記電動車両1の展開状態及び折り畳み状態、並びにこれらの状態の変形の過程において、荷物の載置スペースを同じ位置にて一定に確保できる。このような載置スペースにおいては、荷物を移動ベース10によって一定の位置で安定的に支持することができる。よって、荷物を安定的に車両1に載置することができる。
【0059】
上記電動車両1においては、シート40が退避位置にある状態で、シート40がアームレスト本体51の先端部52よりも車両後方に位置する。そのため、特に、車両1が周囲の障害物と衝突し易い折り畳み状態において、車両1がその前方に位置する障害物に衝突した場合であっても、アームレスト本体51の先端部52が、バッテリ2を配置したシート40と障害物との衝突を回避するように、シート40よりも先に障害物に衝突する。よって、バッテリ2を外部の衝撃から効率的に保護することができる。
【0060】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記前側ベース20が、車両前方を向く前端部22を有し、前記シート40が、このシート40を前記退避位置に配置した状態かつ前記移動ベース10の縮小状態で、車両側面視にて前記アームレスト本体51の先端部52における車両上下方向の下端と、前記前側ベース20の前端部22における車両上下方向の下端とを結んだ仮想直線Pよりも車両後方に位置するように構成されている。
【0061】
このような電動車両1においては、車両1が車両前方側の地面に向かって倒れた場合であっても、アームレスト本体51の先端部52が、バッテリ2を配置したシート40と地面の衝突を回避するように、シート40よりも先に地面に衝突する。よって、バッテリ2を外部の衝撃から効率的に保護することができる。
【0062】
本実施形態に係る電動車両1は、前記後側ベース30に取り付けられるフレーム60を備え、前記フレーム60が、前記アームレスト50を支持するフレーム本体61を有し、前記シート40が、前記着座部41を支持可能に構成される脚部44を含み、前記脚部44が、前記フレーム本体61に対して車両前方に離れて配置され、前記フレーム60が、前記脚部44及び前記フレーム本体61を連結するブラケット62を有し、前記脚部44が、前記シート40を前記着座位置と前記退避位置との間で移動可能とするように、前記ブラケット62及び前記前側ベース20に取り付けられている。
【0063】
このような電動車両1がその前方に位置する障害物に衝突した場合等に、アームレスト50には外部からの衝撃が加えられ易くなっている。しかしながら、アームレスト50からシート40の着座部41までの衝撃の伝達経路は、アームレスト50及びシート40の着座部41の間にて、フレーム本体61、ブラケット62、及びシート40の脚部44を経由する。そのため、アームレスト50に加えられる衝撃は、シート40の着座部41の裏面43に配置されたバッテリ2に伝わり難くなる。よって、バッテリ2を外部の衝撃から効率的に保護することができる。
【0064】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記シート40が、前記着座部41の裏面43に沿って前記バッテリ2を囲むように延びる保護部材45を有している。そのため、外部からの衝撃がシート40の着座部41に加えられた場合であっても、保護部材45によって、このような衝撃からバッテリ2を効率的に保護することができる。
【0065】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記アームレスト50が、前記アームレスト本体51の先端部52から突出するグリップ53を有し、前記グリップ53が、前記アームレスト本体51の先端部52よりも車両前方に張り出すように配置されている。このような電動車両1においては、外部からアームレスト50に加えられる衝撃を、グリップ53によって緩衝することができる。そのため、アームレスト50からバッテリ2に伝わる衝撃を、アームレスト50内で緩衝することができる。その結果、バッテリ2を外部の衝撃から効率的に保護することができる。
【0066】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…電動車両、車両
2…バッテリ
10…移動ベース
20…前側ベース、21…前輪、22…前端部
30…後側ベース、31…後輪、
40…シート、41…着座部、42…着座面、43…裏面、44…脚部、45…保護部材
50…アームレスト、51…アームレスト本体、52…先端部、53…グリップ
60…フレーム、61…フレーム本体、62…ブラケット
H…ホイールベース、P…仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8