(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20231212BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231212BHJP
G06T 7/246 20170101ALI20231212BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G06T7/00 610C
G06T7/246
(21)【出願番号】P 2020053108
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 芳幸
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132668(JP,A)
【文献】特開2000-111318(JP,A)
【文献】特開2019-41724(JP,A)
【文献】特許第6644231(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段による画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得手段によって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定手段と、
前記特定手段における特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得手段による画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記所定の方向への移動は一定の速度で周回する周回移動を含み、
前記判定手段が次の画像取得のタイミングで当該特定処理を実行しないと判定した場合、次の周で前記特定処理を実行するよう前記特定手段を制御する第1の特定制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段が次の画像取得のタイミングで前記特定処理を実行しないと判定した場合に、前記画像取得手段が取得した複数の画像を記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶制御手段によって記憶された複数の画像を時間的に連続して再生させる再生制御手段と、
前記再生制御手段によって時間的に連続して再生される複数の画像に対して前記特定処理を連続的に実行するよう前記特定手段を制御する第2の特定制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記物体はチェーンであるとともに、前記被写体はピンであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップによる画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得ステップによって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定ステップと、
前記特定ステップにおける特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得ステップによる画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得手段、
前記画像取得手段による画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得手段によって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定手段、
前記特定手段における特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得手段による画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベアチェーン等の移動する物体を撮像し、画像解析により当該物体の不具合や異常を検出する技術が知られている。この種の技術を開示するものとして例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、走行するコンベアチェーンを撮像するタイミングを制御し、内リンクと外リンクを接続するピンの位置が定位置に来る画像を逐次取得し、当該画像を解析してチェーンの形状変化を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像解析の技術を利用すれば、人がノギス等の工具を使用してチェーンの結合部分の形状変化を計測することなく、チェーンの経年劣化や不具合を検出することができ、時間やコストを削減できる。しかしながら、チェーンの移動速度が速い場合、連続して撮像する画像に対する解析処理が間に合わなくなり、検出処理が有効に機能しないおそれがあった。処理効率の向上という点で従来技術には改善の余地があった。
【0006】
本発明は、所定の方向に配列された複数の被写体を個別に特定する特定処理を好適に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の画像処理装置は、個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得手段と、前記画像取得手段による画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得手段によって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定手段と、前記特定手段における特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得手段による画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の方向に配列された複数の被写体を個別に特定する特定処理を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を含む画像処理システムの構成を示すシステム構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の機能的構成のうち、画像処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のテンプレート画像データ作成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のテンプレート画像データ蓄積処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のテンプレート画像蓄積処理におけるマッチング処理を説明する模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のターゲット画像の選別処理を説明する模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のリアルタイム処理を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のリアルタイム処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のリアルタイム処理におけるコマ識別処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のリアルタイム処理におけるリアルタイム評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の順次評価処理を示すタイミングチャートである。
【
図13】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の順次評価処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
【
図14】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の順次評価処理における順次評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価処理における録画処理を示すタイミングチャートである。
【
図16】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価処理における再生処理を説明するタイミングチャートである。
【
図17】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
【
図18】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価処理における評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価処理における動画ファイル作成・記憶処理の流れを示すフローチャートである。
【
図20】本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の評価処理における解析処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1を含む画像処理システムSの構成を示すシステム構成図である。
図1に示す画像処理システムSは、コンベアチェーン21の異常を画像解析により検出する。
【0012】
[計測対象]
まず、計測対象となるコンベアチェーン21について説明する。コンベアチェーン21は、コンベア装置のスプロケット(図示省略)に懸架される無端状部材である。コンベアチェーン21は、スプロケット等の伝達手段を介してチェーン駆動部22の駆動力が伝達され、所定の速度で所定のルートを周回移動する。なお、コンベアチェーン21は、移動させる対象の用途に適応して移動速度を段階的に切り替えることができるように構成されている。
【0013】
本実施形態のコンベアチェーン21は、一対の外リンク23が内リンク24を両側から挟み込んだ状態でピン25により結合されて構成される。なお、
図1中の破線の円弧は、内リンク24の外形の一部を示している。
【0014】
ピン25は、外リンク23と内リンク24の結合部分毎に設けられており、本実施形態の画像処理装置1によって個別に特定される被写体である。ピン25は、コンベアチェーン21の移動方向に並んでいる。なお、移動方向は
図1の矢印の方向である。
【0015】
コンベアチェーン21が有するピン25の数をn個とする。上述の通り、コンベアチェーン21は無端状部材であるため、n個目のピン25-nの次は1番目のピン25-1となる。本実施形態では、後述する画像処理の際に1番目のピン25-1を認識させるために、当該ピン25-1にマーキング26が施されている。マーキング26は、周回するコンベアチェーン21の始端位置を特定するために便宜的に設けられる目印である。マーキング26は、例えば、1番目のピン25-1又は当該ピン25-1が連結する外リンク23や内リンク24等に付される。マーキング26は、色、模様、形状、又はこれらの組み合わせ等により、画像処理で1番目のピン25-1であるか否かを識別できるように構成される。例えば、点検者による色付けによってマーキング26がコンベアチェーン21に施される。
【0016】
以下の説明において、ピン25を区別して説明する必要がある場合には、便宜的に1番目をピン25-1とし、以降順番にピン25-2、ピン25-3、ピン25-4、ピン25-5、ピン25-6、ピン25-7・・・ピン25-nとする。また、一番目のピン25-1の中心と2番目のピン25-2の中心とを結ぶ直線の距離をピン間距離L1とし、以降順番にピン間距離L2、ピン間距離L3・・・ピン間距離Ln-1とする。
【0017】
[システム構成]
本実施形態の画像処理システムSの全体構成について説明する。画像処理システムSは、撮像部16と、照明部17と、画像処理装置1と、を備える。
【0018】
撮像部16は、周回するコンベアチェーン21を一定のフレームレートで動画撮影し、画像解析のための映像を取得する撮像手段である。撮像部16の撮像位置は、コンベアチェーン21の構成や点検作業の作業性を考慮して適宜設定される。
【0019】
本実施形態の撮像部16は、光学レンズ部161と、イメージセンサ162と、を主要な構成として備える。光学レンズ部161は、被写体を撮像するために、光を集光するレンズ、例えばフォーカスレンズやズームレンズ等で構成される。イメージセンサ162はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の光電変換素子や、AFE(Analog Front End)等から構成される。画像処理装置1は、撮像部16から出力される信号からフレーム(画像)を生成する。撮像部16から出力される信号を、以下、「フレーム」と呼ぶ。フレームデータは、画像処理装置1に適宜供給される。
【0020】
照明部17は、撮像部16の被写体であるコンベアチェーン21を照明する照明手段である。照明部17が、照度や色成分を調整してコンベアチェーン21を照らすことにより、撮像部16の撮像環境を一定のものにすることができる。照明部17の照度は、外光以上であることが好ましい。照明部17の照度を外光以上の支配的な光とすることで、後述する画像解析による異常検出をより正確なものとすることができる。
【0021】
画像処理装置1は、撮像部16から出力されるフレームデータに基づいて画像解析処理を行ってコンベアチェーン21の異常を検出する。画像処理装置1が検出した情報は、外部機器5に送信可能となっている。
【0022】
[ハードウェア構成]
本実施形態の画像処理装置1のハードウェア構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【0023】
画像処理装置1は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)等で構成されるプログラムメモリ12と、RAM(Random Access Memory)等で構成されるワークメモリ13と、バス14と、入出力インタフェース15と、通信部18と、入力部19と、出力部20と、記憶部30と、を備える。
【0024】
CPU11は、プログラムメモリ12に記録されているプログラム、又は、プログラムメモリ12からワークメモリ13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。ワークメモリ13には、CPU11が画像処理を含む各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。入出力インタフェース15には、通信部18、入力部19が接続されている。また、入出力インタフェース15には、撮像部16及び照明部17が有線又は無線により接続されている。
【0025】
通信部18は、インターネットを含むネットワークを介して外部機器5や他の装置(図示せず)との間で行う。通信部18は、有線又は無線のインタフェースを介して外部機器5と通信し、撮像したフレームデータや検出結果を外部機器に送信する。
【0026】
入力部19は、各種釦等で構成され、ユーザの指示操作を受け付け、受け付けた指示操作に応じて各種情報を入力する。出力部20は、画像を表示するディスプレイや音声を拡声するスピーカ等を含む。尚、入力部19にタッチパネルが含まれる場合は入力部19と出力部20とを一体にしてもよい。
【0027】
記憶部30は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、各種データを記憶する。記憶部30には、画像処理に関する各種のデータや、検出結果を示す情報等が格納される。
【0028】
[機能的構成]
図3は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の機能的構成のうち、画像処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、制御部としてのCPU11において、画像処理を実行する部分として、画像取得部31と、記憶制御部32と、特定部33と、出力制御部34と、判定部35と、特定制御部36と、再生制御部37と、が機能する。
【0029】
画像取得部31は、撮像部16から出力されるコンベアチェーン21を被写体として含むフレームデータ(撮像画像)を連続的に取得する。詳細には5フレームのフレームデータを1単位としたピンを含むフレームデータを取得するようにフレームレート(画像取得タイミング)を制御する。
【0030】
また、画像取得部31は、画像解析により、マーキング26が施されたピン25-1を、それ以外のピン25-2~25-nと区別し、ピン25-1を便宜的に先頭位置として周回するコンベアチェーン21の撮影画像を取得する。例えば、ピン25-1が認識されてから再び認識されるまでを1周とし、2周分の動画を取得する。
【0031】
記憶制御部32は、コンベアチェーン21を構成する複数のピン25(ピン25-1~25-n)の夫々を区別して記憶部30に記憶する処理を実行する。そして、記憶制御部32は、複数のピン25(ピン25-1~25-n)の夫々に対し、マッチング処理を行うためのテンプレート画像(情報画像)データを対応付けて記憶部30に記憶させる処理を実行する更に、記憶制御部32は、ピン間距離L(ピン間距離L1~Ln-1)についても、複数のピン25(ピン25-1~25-n)の位置関係とともに記憶部30に記憶する処理を実行する。
【0032】
なお、記憶部30に記憶されるテンプレート画像データとは、ピン25を画像の中心を基準として切り出された矩形領域の画像データに対してLBP(Local Binary Pattern)特徴を計算した結果を示す画像データである。LBP特徴は、中心画素値と周辺画素値とを比較することにより得られる特徴である。
【0033】
特定部33は、記憶部30に記憶されているテンプレート画像データから抽出される特徴量と、撮像されて新たに取得されるフレームデータから抽出される特徴量と、を照合して類似度を取得する処理、すなわち、マッチング処理を実行する。上述の通り、本実施形態では、複数のピン25-1~25-nの夫々のテンプレート画像データが記憶部30に記憶されているので、ピン25-1~25-n毎にマッチング処理に用いられるテンプレート画像データは一つ一つが固有の特徴量を有することになる。
【0034】
出力制御部34は、特定部33によって特定された計測対象となるピン間距離Lを算出する。そして、記憶部30に記憶される過去に取得されたピン間距離Lと比較し、比較結果を出力する。比較結果は、例えば、前回の測定時からの伸び量として出力される。なお、出力制御部34によるピン間距離の算出には、フレーム数、フレームレート及びフレームデータ中のピン25とピン25の間の距離等を利用することができる。
【0035】
判定部35は、連続撮像した画像に対してピン25を特定する特定処理を実行するか否かを判定する。判定部35の使用する画像か否かを判定する基準については後述する。
【0036】
次に、本実施形態の画像処理装置1による画像処理についてフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、各ステップは、CPU11がプログラムメモリ12に記憶された制御プログラムをワークメモリ13上にロードして実行することで実現される。
【0037】
特定制御部36は、特定部33がマッチング処理等の特定処理を実行するタイミングを制御する。再生制御部37は、撮像部16が時間的に連続して撮像した画像から動画ファイルが生成され、記憶部30に記憶される場合において、記憶された動画ファイルを読み出して再生する処理を実行する。
【0038】
[テンプレート画像データ作成処理]
まず、テンプレート画像データの作成処理について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のテンプレート画像データ作成処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
まず、画像取得部31により、ピン25の位置がフレーム(画像)の中心にあるフレームデータが取得される(ステップS1)。本実施形態では、後述するマッチング処理の精度を向上させるため、取得タイミングが夫々異なる、ピンの位置がフレームの中心にあるフレームデータが2つ取得される。
【0040】
次に取得したフレームデータから、特定部33がピン25の位置が中心にある画像領域のデータを抽出するトリミング処理を実行する(ステップS2)。このトリミング処理では、ピン25の位置がそのフレームの中心となる矩形の画像領域のデータが切り取られる。以下トリミング処理された画像領域のデータをトリミング画像データとして説明する。
【0041】
次に、特定部33が取得された2枚のトリミング画像データの夫々に対してLBP計算処理が実行される。
【0042】
次に、記憶制御部32が、LBP計算処理が実行された結果としてのテンプレート画像(情報画像)データを記憶部30に記憶する(ステップS4)。本実施形態の場合、2枚のテンプレート画像データが記憶部30に記憶される。
【0043】
[動画撮影された複数のピンのテンプレート画像データの蓄積処理]
次に
図4の処理の後に実行される、複数のピン25-1~25-nのテンプレート画像データの蓄積処理について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置のテンプレート画像データ蓄積処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のテンプレート画像蓄積処理におけるマッチング処理を説明する模式図である。
図6で例示する対象のピン25は、1番目のピン25-1である。
【0044】
処理が開始されると、画像取得部31がコンベアチェーン21におけるピン25を含むフレームデータを取得する(ステップS11)。この処理では特定の番号のピン25を含むフレームデータが取得される。例えば、マーキング26が施されているピン25が最初に取得するべき対象に設定されている場合は、そのピンを含むフレームデータが取得される。
【0045】
次に、特定部33は、ピン25を含むフレームデータからピン25の位置が中心となる画像領域のデータを抽出するようトリミング処理し(ステップS12)、当該トリミング処理された画像領域のデータに対しLBP計算処理を実行して
図6に例示する対象画像63を生成する(ステップS13)。
【0046】
次に、特定部33は、対象画像63に対して
図4の処理で取得したテンプレート画像を記憶部30から読み出し、類似度を取得する処理、すなわち、マッチング処理を実行する(ステップS14)。
図6の場合、テンプレート画像61のピン25aとテンプレート画像61のピン25bとは異なるピン25である。マッチング処理では、テンプレート画像61から抽出される特徴量と対象画像63から抽出される特徴量との比較が行われてピン25aとピン25-1の類似度が取得される。同様に、テンプレート画像61から抽出される特徴量と対象画像63から抽出される特徴量との比較が行われてピン25bとピン25-1の類似度が取得される。
【0047】
次に、特定部33は、マッチング処理の結果に基づいて、今回トリミング処理された画像領域に含まれるピンが、記憶部30に記憶されたその位置のテンプレート画像データで示されるピンと同じか否かを判定する(ステップS15)。この判定処理では、類似度が予め設定される基準値以上の場合にYesと判定されて処理がステップS16に進み、類似度が基準値を下回っている場合にNoと判定されて処理がステップS19に進む。
【0048】
本実施形態では、1個の被写体について2回のマッチング処理が行われることになる。ピン25の検出を厳密に判断する場合は、ピン25aとピン25-1の類似度及びピン25bとピン25-1の類似度の両方が基準値を上回る場合にYesと判定されるように判定基準を設定することができる。
【0049】
今回トリミング処理された画像領域に含まれるピンが記憶部30に記憶されたその位置のテンプレート画像データで示されるピンと同じと判定された場合(ステップS15;Yes)、特定部33は、
図6に示すように、対象画像63に対してピン25-1及びその近傍を予め設定される領域をトリミング処理してテンプレート画像64に対応するテンプレート画像データを生成する(ステップS16)。そして、記憶制御部32が、ピンの番号に対応付けてそのテンプレート画像データを記憶部30に記憶・蓄積する処理を実行する(ステップS17)。
【0050】
次に、特定部33は、記憶部30を参照し、全てのピン25-1~25-nのテンプレート画像データの蓄積が完了したか否かを判定する(ステップS18)。全てのテンプレートの画像データの蓄積が完了したと判定した場合はYesと判定され、本処理は完了する。
【0051】
また、今回トリミング処理された画像領域に含まれるピンが、記憶部30に記憶されたその位置のテンプレート画像データで示されるピンと同じでないと判定された場合(ステップS15;No)又は全てのピンについてテンプレート画像データの蓄積が完了していないと判定された場合(ステップS18;No)は、次に取得するべき順番のピンが特定され、処理はステップS11に戻る(ステップS19)。例えば、ピン25-1に対してマッチング処理が行われた場合は、次の位置にあるピン25-2が特定される。なお、一周目で全てのピンについてテンプレート画像データが蓄積されず欠落したピンがある場合は次の周、つまり二周目を動画撮影した時にそのピンについてテンプレート画像データの蓄積が行われることになる。
【0052】
以上説明した一連の処理により、コンベアチェーン21の全てのピン25のテンプレート画像データが記憶部30に蓄積されることになる。蓄積されたテンプレート画像データは、コンベアチェーン21の形状の変化を検出するための処理に用いられる。
【0053】
なお、テンプレート画像データは、コンベアチェーン21に付着した潤滑剤や埃、または、経年劣化による錆の等、ピン表面が変化することを考慮すると、1つのピンに対して複数取得することが好ましい。
【0054】
[ターゲット画像の選別処理]
次に、判定部35が実行する、ピン間距離の変化を検出するときに用いられるターゲット画像70(情報画像)の選別処理について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置のターゲット画像70の選別処理を説明する模式図である。
【0055】
図7に示される一連のターゲット画像70は、ピン間距離を取得するために、2本のピン25を含む画像を取得することを目的として撮像部16により順次撮像され取得されたフレーム(画像)である。
図7において、紙面上側のターゲット画像70が最も過去のものであり、紙面下側に進むにつれて新しいターゲット画像70である。フレームには左側に設定される検出枠71aと右側に設定される検出枠71bが夫々設定され、判定部35は、フレームにおける2本のピン25の画像がこれらの検出枠71a、71bで検出できたか否かを判定することで、2本のピン25の画像がターゲット画像70中に入っているか否かが判定される。
【0056】
図7において、グループAに含まれるターゲット画像70は、何れも検出枠71a内にピン25-1の画像が収まるとともに、検出枠71b内にピン25-2の画像が収まっている状態である。即ち、2本のピン25-1、25-2の画像が1枚のターゲット画像70に含まれており、マッチング処理やピン間距離の計測に用いることができるフレームである。従って、判定部35は、グループAに含まれるターゲット画像70がマッチング処理やピン間距離Lを測定するために使用できる画像と判定する。
【0057】
一方、グループBに含まれるターゲット画像70は、検出枠71aにピン25-1の画像が存在しない状態となっている。したがって、判定部35は、グループBに含まれるターゲット画像70は、マッチング処理やピン間距離を測定するために使用できない画像と判定する。なお、検出枠71aは、ピン25-1の画像を検出できなくなると次のピン25-2の画像を検出するために予め設定された位置に移動する。また、検出枠71bは、グループBの最新のターゲット画像70に示されるように、所定の基準位置(例えば、中央付近)まで左側に移動する。
【0058】
グループCに含まれるターゲット画像70は、更に時間が経過することにより、何れも検出枠71a内にピン25-2の画像が収まるとともに、検出枠71b内にピン25-3の画像が収まっている状態である。即ち、2本のピン25-2、25-3の画像が1枚のターゲット画像70に含まれており、ピン間距離の計測に用いることができるフレームである。従って、判定部35は、グループCに含まれるターゲット画像70がマッチング処理やピン間距離Lを測定するために使用できる画像と判定する。
【0059】
判定部35がターゲット画像70に2本のピン25が含まれると判定すると、記憶制御部32がこのターゲット画像に対応する画像データを記憶部30に記憶する。また、記憶制御部32は、予め設定される基準値に基づいて検出対象とするピンの画像が切り替わったか否かを判定し、ターゲット画像70の画像データに対応させて、このターゲット画像70に含まれるピン25が1番目からN番目の何れの組なのかを特定する情報を記憶部30に記憶する。具体的にはフレーム単位(コマ)でOK10回続いた後(グループA)にNGが4回続き(グループB)、再びOKが4回以上続いた場合に、計測対象が次のピン25に入れ替わったと判定する。
【0060】
[特定処理の実行タイミング]
特定部33は、正常と判断されたターゲット画像70に対して検出箇所に不良が生じているか否かを評価する特定処理を実行する。
【0061】
本実施形態では、判定部35が特定部33による特定処理を実行するタイミングか否かを判定し、特定制御部36が特定部33による特定処理を実行するタイミングを制御する。特定処理を実行するか否かは、特定処理を完了するまでの時間とコンベアチェーン21の移動速度に基づいて決まる。例えば、画像取得部31が取得するピン25-1、25-2を含むターゲット画像70に対する特定処理が、次の計測対象のピン25-2、25-3を含むターゲット画像70の読み取りが終了するまでに完了しない場合には、ピン25-2、25-3を含むターゲット画像70に対しては特定処理を行わないように判定する。
【0062】
以下、ターゲット画像70に対して特定処理をリアルタイムで実行するリアルタイム処理と、リアルタイムで行えない場合は次の周で特定処理を行う順次評価処理と、の場合をわけて具体的な処理の例について説明する。
【0063】
[リアルタイム処理]
判定部35によって特定処理が実行される例を説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のリアルタイム処理を示すタイミングチャートである。
図8のタイミングチャートは、紙面左から右に進むに従って時間が経過していくことが模式的に表現されている。
図8のフレームデータは、撮像部16によって連続撮像されるターゲット画像70に対応するフレームデータである。例えば、f0は最初に撮像されるターゲット画像70であり、以降順番にf2、f3、f4、f5、f6、f7、f8、f9のターゲット画像70がコンベアチェーン21の移動に沿って移動しながらも連続的に取得されることが模式的に示されている。
【0064】
コマは、ターゲット画像70のピン25nとピン25n+1から特定される外リンク23と内リンク24の最小単位である。コマ検出期間は、コマを検出する対象となるターゲット画像70を取得できる期間である。コマ検出期間の中でも中心に位置するターゲット画像70に基づいてコマのピン間距離Lが適正か否かが判定される。コマ番号は、コマが検出される期間を区別する番号である。一方、ブランキング期間は、コマ検出が行われない
図7を参照して説明した選別処理でNGと判定されるターゲット画像70が取得される期間である。また、ブランキング期間が開始するタイミングは、特定処理を実行する評価トリガにもなっている。
【0065】
図8の解析処理・評価処理は、これらの処理に要する時間を示す。
図8の例では、1番目のピン25-1に施されるマーキング26が検出されたことをトリガとして解析処理・評価処理が開始される。そして、フレームf4のターゲット画像70が取得されるタイミングで中心フレームf2のターゲット画像70に対する解析処理・評価処理が開始され、f9のターゲット画像70が取得されるタイミングで解析処理・評価処理が終了している。また、n番目に取得されるfnのターゲット画像70に対する解析処理・評価処理の結果は、不良(異常有り)であることが示されている。
【0066】
図8の評価結果は、ピンが良品(異常無し)か不良(異常有り)かを区別して表示する時間を示している。ピンが良品であることを示す表示が行われるか否かは、1周目の解析処理・評価処理での評価結果に基づいて決まる。例えば、コマ0及びコマ1では良品と判定されているので、2周目のコマ0とコマ1に対して良品を示す緑色が出力部20に表示される。一方、コマNでは不良と判定されているので、2周目のコマNに対して不良を示す赤色が出力部20に表示されることになる。
【0067】
図8で説明したリアルタイム処理の流れについて説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のリアルタイム処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、まず、コマを識別する処理が実行され(ステップS101)、次に、識別されたコマに対してリアルタイムで特定処理を行って当該コマの評価を実行する(ステップS101)。
【0068】
[コマ識別処理]
次に、コマ識別処理について説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のリアルタイム処理におけるコマ識別処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
まず、撮像部16によって順次撮像されているフレームデータについてモニタリングを開始する(ステップS111)。次に、画像取得部31は、
図8に示すマーキング検出期間に基づいて、撮像部16が出力するターゲット画像70を一時的に記憶部30にバッファリングする(ステップS112)。
【0070】
次に、特定部33は、記憶部30にバッファリングされたターゲット画像70を解析して、ピン間距離を計測し、その結果に従いターゲット画像70に含まれるコマ(詳細にはコマの形状を有する画像領域)を認識する(ステップS113)。次に、特定部33は、次のブランキング期間を検出しているか否かを判定する(ステップS114)。ブランキング期間を検出していないと判定した場合(ステップS114;No)、処理はステップS112へ戻り、ブランキング期間を検出したと判定した場合(ステップS114;Yes)、処理はステップS115に進む。
【0071】
次に、特定部33は、記憶部30にバッファリングしたターゲット画像70から期間の中心のターゲット画像70を選別する(ステップS115)。
【0072】
次に、特定部33は、マーキング26を検知しているかどうかを判定する(ステップS116)。マーキング26が検知されたと判定した場合(S116;Yes)、処理はステップS117に進み、現在のコマ番号がリセットされる(S117)。マーキング26が検知されなかったと判定した場合(S116;No)、処理はステップS118に進み、コマ番号をインクリメントする。
【0073】
以上、一連の処理によりコマが識別される。次に、リアルタイム評価処理について説明する。
図11は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のリアルタイム処理におけるリアルタイム評価処理の流れを示すフローチャートである。
【0074】
まず、特定部33は、撮像部16が撮像するコンベアチェーン21の画像が、1周目であるか否かを判定する(ステップS121)。1周目であると判定された場合(S121;Yes)、処理はステップS122に進み、不良コマの検出が行われ(ステップS122)、コマの状態情報が保存される(ステップS123)。本実施形態におけるコマの状態情報は良品か不良品である。1周目ではないと判定された場合(S121;No)、処理をステップS124に進み、コマの状態情報を参照し、可視化する。本実施形態における可視化は、良品コマを緑で表示し、不良コマを赤で表示することで実現される。例えば、撮像部16によって撮像される映像中に、良品と評価されたコマを緑色の枠で囲み、不良品と評価されたコマを赤色の枠で囲む表示処理を行ってもよい。
【0075】
以上、特定処理がリアルタイムで行われる例を説明した。次に、コンベアチェーン21の移動速度が速かったり、特定処理を実行する速度が遅かったりするために、リアルタイムできない例について説明する。
【0076】
[順次評価処理]
判定部35が、上記リアルタイム処理に示すリアルタイム評価処理を実行できないと判断した場合、以下に示す第2の評価処理を開始する。
図12は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の順次評価処理を示すタイミングチャートである。なお、
図8で説明した項目と同じ項目についてはその説明を省略する。
【0077】
図12には、コマ0(フレームf2)に対して実行した特定処理が、コマ1のコマ検出期間が終了するまでに完了しておらず、コマ1(フレームf9)に対する特定処理が1周目では実行されていない例が示されている。なお、コマ1(フレームf9)に対する特定処理は2周目で実行されている。
【0078】
図12に示した順次評価処理の流れについて説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の順次評価処理の全体的な流れを示すフローチャートである。まず、特定部33は、コマ識別処理を実行し(ステップS201)、識別したコマに対して順次評価処理を実行する(ステップS202)。なお、ステップS201のコマ識別処理は、
図9で説明したステップS101のコマ識別処理と同じ処理である。
【0079】
順次評価処理の流れについて説明する。
図14は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の順次評価処理における順次評価処理の流れを示すフローチャートである。まず、特定部33は、画像取得部31が取得したターゲット画像70が、1周目であるか否かを判定する(ステップS211)。処理はステップS212に進み、1周目でないと判定された場合(S211;No)、処理はステップS215に進む。
【0080】
ステップS211で1週目と判定された場合について説明する(S211;Yes)。特定部33は、特定処理を実行し、不良コマの検出を行う(ステップS212)。次に、特定部33は、解析処理と評価処理期間中のブランキング回数Nを算出する(ステップS213)。ブランキング回数Nは、評価トリガの回数に対応する。そして、記憶制御部32がコマの状態情報を保存し(ステップS214)、順次評価処理が一旦終了する。
【0081】
ステップS211で1周目ではないと判定された場合について説明する(S211;No)。特定部33は、解析処理と評価処理期間中のブランキング回数N+1周目であるか否かを判定する(ステップS215)。N+1周目であると判定された場合(S215;Yes)、処理はステップS218に進み、N+1周目ではないと判定された場合(S215;No)、記憶部30に記憶させたNコマ分のコマ数をスキップする(ステップS216)。そして、不良コマを検出する特定処理を実行する(ステップS217)。ステップS217の後、処理はステップS214に進み、コマの状態情報が保存され(ステップS214)、順次評価処理が一旦終了する。
【0082】
ステップS215で、N+1周目であると判定された場合(S215:Yes)、記憶部30に記憶させたコマの状態情報を参照して、良品と特定されたコマと、不良品と特定されたコマを可視化表示して(ステップS218)、順次評価処理を終了する。
【0083】
以上、リアルタイム評価処理と順次評価処理が実行される例について説明した。本実施形態の画像処理装置1による効果について説明する。
【0084】
本実施形態の画像処理装置1は、個別に特定が可能な複数のピン25-1~25-n(被写体)が所定の方向に配列されたコンベアチェーン21(物体)の所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得部31(画像取得手段)と、画像取得部31による画像取得とともに、予め記憶された複数のピン25-1~25-nと画像取得部31によって取得された複数のピン25-1~25-nとを順次照合し、複数のピン25-1~25-nを個別に特定する特定処理を実行する特定部33(特定手段)と、特定部33における特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき複数のピン25-1~25-nのいずれかに対して画像取得部31による画像取得のタイミングで特定処理を実行するか否かを判定する判定部35(判定手段)と、を備える。
【0085】
これにより、時間的に連続して取得される画像を取得するタイミングで特定処理を実行できるか否かを確実に判定して、取得する複数の被写体を個別に特定する特定処理を好適に行える。
【0086】
また、本実施形態では、所定の方向への移動は一定の速度で周回する周回移動を含み、判定部35が次の画像取得のタイミングで当該特定処理を実行しないと判定した場合、次の周で特定処理を実行するよう特定部33を制御する特定制御部36(第1の特定制御手段)を更に備えることを特徴とする。
【0087】
これにより、リアルタイム評価処理で特定処理が間に合わない事態が発生したとしても2周目以降に特定処理が実行され、検出漏れを確実に防ぐことができる。
【0088】
また、上述の通り、本実施形態の物体は、コンベアチェーン21であるとともに、計測対象はピン25である。
【0089】
これにより、移動するコンベアチェーン21のピン25における良・不良を好適に判定することができる。
【0090】
以上、連続撮像しながら特定処理を行う例を示したが、本発明は上記実施形態に限定されるわけではない。次に、上記実施形態と異なる方式で特定部33が特定処理を実行するタイミングを決定する例について説明する。
【0091】
[再生評価処理]
以下説明する画像処理装置1では、ターゲット画像70を含む動画ファイルの記録と再生を利用して特定処理が実行される。即ち、判定部35が、リアルタイム評価処理を実行できないと判断した場合、特定部33が動画ファイルの作成・記録処理を実行し、これと並行して特定処理を実行するのである。
【0092】
図15は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の動画ファイル作成・記録処理を示すタイミングチャートである。
図16は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の再生処理を示すタイミングチャートである。なお、
図8に示したタイミングチャートと同じタイミング情報についての説明は省略する。
【0093】
図15には、撮像部16の撮像開始後に連続撮像したターゲット画像70の動画ファイルが作成され、記憶部30に記憶されていく例が示されている。本実施形態では、撮像部16が撮像したフレームデータがワークメモリ13にバッファリングされた後、画像取得部31がバッファリングしたフレームデータデータから動画ファイルを作成して記憶部30に記憶させる。また、特定部33は、動画ファイルの作成・記憶処理と並行して特定処理を実行し、当該特定処理の開始から完了までにかかった時間を計測する。特定部33は、計測した時間に基づいて解析処理・評価処理の処理速度を算出する。
【0094】
図16には、再生を落として動画ファイルが再生され、当該動画ファイルに対して特定処理が実行される例が示されている。再生速度を落としているため、次のコマ検出期間が終了する以前に特定処理を完了することができる。
【0095】
以下、再生評価処理の流れについて説明する。
図17は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の再生評価処理の全体的な流れを示すフローチャートである。まず、特定部33は、動画ファイルの作成・記憶処理すべきかどうかを判定するため評価処理を実行する(ステップS301)。次に、特定部33は、特定対象となる撮像部16が連続撮像したターゲット画像70を記憶部30に記憶する処理を実行する(ステップS302)。そして、再生制御部37は、記憶部30に記憶された動画を再生し、当該動画に対して特定処理を実行して(ステップS303)、本処理を終了する。
【0096】
[評価処理]
評価処理について
図18を参照して説明する。
図18は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の再生評価処理における評価処理の流れを示すフローチャートである。まず、特定制御部36は再生制御部37によって時間的に連続して再生されるターゲット画像70に対して特定処理を実行するように特定部33を制御し、特定部33は、撮像部16が撮像したターゲット画像70に対して特定処理を実行し、ピン間距離を計測し、その結果に従いターゲット画像70に含まれるコマを認識する(ステップS311)。次に、特定部33は、ブランキング期間を検知するまで処理を待機する(ステップS312)。
【0097】
ブランキング期間を検知すると(ステップS312;Yes)、特定部33は、ターゲット画像70に対して特定処理を実行してピン間距離を計測し、その結果に従いターゲット画像70に含まれるコマを認識する(ステップS313)。次に、特定部33は、
図11に示したステップS122と同様の不良コマの検出する(ステップS314)。そして、特定部33は、
図14に示したステップS213と同様のブランキング回数Nを算出する(ステップS315)。次に、特定部33は、次のブランキング期間を検知するのを待機する(ステップS316)。次のブランキング期間を検知すると評価処理を終了する(ステップS316;Yes)。
【0098】
[動画ファイル生成・記憶処理]
動画ファイル生成・記憶処理について
図19を参照して説明する。
図19は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の再生評価処理における動画ファイル生成・記憶処理の流れを示すフローチャートである。まず、特定部33は、画像取得部31が撮像部16から取得するフレームデータのモニタリングを開始する(ステップS321)。次に、記憶制御部32が、画像取得部31が撮像部16から取得するターゲット画像70をワークメモリ13にバッファリングする(ステップS322)。
【0099】
次に、特定部33は、次のブランキング期間を検知しているか否かを判定する(ステップS324)、次のブランキング期間が検知されたと判定した場合(S324;Yes)、処理はステップS325に進み、次のブランキングが検知されなかったと判定した場合(S324;No)、処理はステップS322に戻る。
【0100】
ブランキングの検知をトリガとして記憶制御部32が、ワークメモリ13にバッファリングした時間的に連続するターゲット画像70から動画ファイルを作成し記憶部30に記憶する(ステップS325)。次に、特定部33は、次のブランキング期間を検知しているか否かを判定する(ステップS326)、次のブランキング期間を検知していると判定した場合(S327;Yes)、処理はステップS327に進み録画処理が終了する(ステップS327)。次のブランキングが検知されなかったと判定した場合(S326;No)、処理はステップS322に戻ってステップS322以降の処理が再び実行される。次なお、本処理では、ステップS325で、記憶制御部32が動画を記憶部30に記憶する際、検出したブランキング回数Nも併せて記憶部30に記憶する制御を実行する。これは、後述する解析処理における再生速度を決定するためである。
【0101】
次に、解析処理について
図20を参照して説明する。
図20は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の解析処理の流れを示すフローチャートである。まず、特定部33は、記憶部30に保存した検出したブランキング回数Nを参照して、動作ファイルの再生速度を設定する(ステップS331)。次に、特定制御部36は再生制御部37によって時間的に連続して再生される動画ファイルのフレームとしてのターゲット画像70に対して特定処理を実行するように特定部33を制御する。特定部33は再生されている動画ファイルに対して
図9に示したステップS332と同様の評価処理を実行し(ステップS332)、その後解析処理を終了する。
【0102】
本実施形態の画像処理装置1は、判定部35が次の画像取得のタイミングで特定処理を実行しないと判定した場合に、画像取得部31が取得した複数の画像を記憶部30(記憶手段)に記憶させる記憶制御部32(記憶制御手段)と、記憶制御部32によって記憶された複数の画像を時間的に連続して再生させる再生制御部37(再生制御手段)と、再生制御部37によって時間的に連続して再生される複数の画像に対して特定処理を連続的に実行するよう特定部33を制御する特定制御部36(第2の特定制御手段)と、を更に備える。
【0103】
これにより、特定処理によるコマの状態を確実に評価することができる。また、本実施形態においても移動するコンベアチェーン21のピン25とピン25との間のピン間距離Lを精度よく測定することができ、画像解析によりピン25間の伸び状態等を正確に評価できる。
【0104】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0105】
例えば、本発明は、画像処理機能を有する電子機器一般に適用することができる。例えば、本発明は、ノート型のパーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、携帯型ナビゲーション装置、スマートフォン、タブレット等の各種電子装置に適用可能である。
【0106】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0107】
換言すると、
図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が画像処理装置1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図3の例に限定されない。例えば、再生評価処理の機能を省略する場合は
図3の構成から再生制御部37を省略してもよい。
【0108】
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0109】
本実施形態における機能的構成は、演算処理を実行するプロセッサによって実現され、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0110】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0111】
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0112】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている
図1のプログラムメモリ12や、図示しないハードディスク等で構成される。
【0113】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0114】
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0115】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0116】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段による画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得手段によって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定手段と、
前記特定手段における特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得手段による画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
[付記2]
前記所定の方向への移動は一定の速度で周回する周回移動を含み、
前記判定手段が次の画像取得のタイミングで当該特定処理を実行しないと判定した場合、次の周で前記特定処理を実行するよう前記特定手段を制御する第1の特定制御手段を更に備えることを特徴とする付記1に記載の画像処理装置。
[付記3]
前記判定手段が次の画像取得のタイミングで前記特定処理を実行しないと判定した場合に、前記画像取得手段が取得した複数の画像を記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶制御手段によって記憶された複数の画像を時間的に連続して再生させる再生制御手段と、
前記再生制御手段によって時間的に連続して再生される複数の画像に対して前記特定処理を連続的に実行するよう前記特定手段を制御する第2の特定制御手段と、
を更に備えることを特徴とする付記1に記載の画像処理装置。
[付記4]
前記物体はチェーンであるとともに、前記被写体はピンであることを特徴とする付記1乃至3の何れかに記載の画像処理装置。
[付記5]
個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップによる画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得ステップによって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定ステップと、
前記特定ステップにおける特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得ステップによる画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
[付記6]
コンピュータを、
個別に特定が可能な複数の被写体が所定の方向に配列された物体の前記所定の方向へ移動する際の画像を時間的に連続して取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段による画像取得とともに、予め記憶された前記被写体と前記画像取得手段によって取得された複数の被写体とを順次照合し、前記被写体を個別に特定する特定処理を実行する特定手段と、
前記特定手段における特定処理の状況に基づいて、次に特定処理を行うべき被写体に対して前記画像取得手段による画像取得のタイミングで前記特定処理を実行するか否かを判定する判定手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0117】
1 画像処理装置
16 撮像部
21 コンベアチェーン(物体)
25 ピン(被写体)
30 記憶部(記憶手段)
31 画像取得部(画像取得手段)
32 記憶制御部(記憶制御手段)
33 特定部(特定手段)
34 出力制御部(出力制御手段)
35 判定部(判定手段)
36 特定制御部(特定制御手段)
37 再生制御部(再生制御手段)