(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】シートパッド
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20231212BHJP
A47C 27/16 20060101ALI20231212BHJP
B29C 39/12 20060101ALI20231212BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20231212BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20231212BHJP
B29C 44/06 20060101ALI20231212BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20231212BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20231212BHJP
B29L 31/58 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
A47C27/14 A
A47C27/16
B29C39/12
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/06
B29C44/36
B29K105:04
B29L31:58
(21)【出願番号】P 2020053846
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 勝允
(72)【発明者】
【氏名】ウォングタング サクディパット
(72)【発明者】
【氏名】ウォン タンヤブーン
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112239(JP,A)
【文献】特開2019-147358(JP,A)
【文献】特開2015-097613(JP,A)
【文献】特開2008-126633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-27/22
B29C 39/00-39/24
B29C 44/00-44/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド本体と、該パッド本体の裏面に一体成形される面状の裏面材と、を有するシートパッドであって、
前記裏面材が、互いに金属製の留め具を介して繋ぎ合わされる第1のピースと第2のピースとを有し、
前記留め具が、前記裏面材を成形型内に位置固定した状態にセットするための前記成形型内に設けられる磁性体との貼着部とされ
、
前記第1のピースと前記第2のピースとが互いに異なる材質とされるシートパッド。
【請求項2】
請求項1に記載のシートパッドであって、
前記
パッド本体の裏面に、面内方向に風を流すための凹状の配風溝が形成され、
前記第1のピースが、前記パッド本体の前記配風溝が形成される第1裏面領域の形に合わせて予め熱成形されて前記第1裏面領域に一体成形される成形不織布から成り、
前記第2のピースが、前記パッド本体の前記第1裏面領域から外れた第2裏面領域に一体成形される非成形不織布から成るシートパッド。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載のシートパッドであって、
前記
留め具が、前記第1のピースと前記第2のピースとの重ね合わせ部に貫通されて前記裏面材の前記成形型との対向面に環状の貼着面を露出させる鳩目から成るシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドに関する。詳しくは、パッド本体と、パッド本体の裏面に一体成形される面状の裏面材と、を有するシートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
パッド本体の裏面に不織布等の裏面材が一体成形されたシートパッドが知られている。上記シートパッドは、具体的には次のように成形されている。先ず、裏面材をパッド本体の成形型内にセットする。次に、裏面材のセットされた成形型内に発泡樹脂原料を流し込み、加熱発泡させる。それにより、発泡樹脂原料が裏面材に一体的に接着された状態として成形される。上記裏面材の成形型へのセットは、裏面材に取り付けられた磁性体を成形型に取り付けられた磁性体に貼着させることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
裏面材に成形型への貼着のためだけに磁性体を設ける必要があり、部品点数の増大や取付工数の増大を招く。そこで、本発明は、裏面材をパッド本体の成形型内に合理的な構成によりセット可能なシートパッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシートパッドは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシートパッドは、パッド本体と、パッド本体の裏面に一体成形される面状の裏面材と、を有するシートパッドである。裏面材が、互いに金属製の留め具を介して繋ぎ合わされる第1のピースと第2のピースとを有する。留め具が、裏面材を成形型内に位置固定した状態にセットするための成形型内に設けられる磁性体との貼着部とされる。
【0007】
上記構成によれば、第1のピースと第2のピースとを繋ぎ合わせる金属製の留め具を、成形型に設けられる磁性体との貼着部として合理的に機能させることができる。
【0008】
また、本発明のシートパッドは、更に次のように構成されていても良い。第1のピースと第2のピースとが互いに異なる材質とされる。
【0009】
上記構成によれば、互いに異なる材質の第1のピースと第2のピースとを合理的に繋ぎ合わせることができる。
【0010】
また、本発明のシートパッドは、更に次のように構成されていても良い。パッド本体の裏面に、面内方向に風を流すための凹状の配風溝が形成される。第1のピースが、パッド本体の配風溝が形成される第1裏面領域の形に合わせて予め熱成形されて第1裏面領域に一体成形される成形不織布から成る。第2のピースが、パッド本体の第1裏面領域から外れた第2裏面領域に一体成形される非成形不織布から成る。
【0011】
上記構成によれば、配風溝が形成される第1裏面領域の形に合わせて成形された第1のピースと、第2裏面領域に設けられる非成形不織布と、を留め具により適切に繋ぎ合わせつつ、これらを成形型内に適切に位置固定した状態にセットすることができる。
【0012】
また、本発明のシートパッドは、更に次のように構成されていても良い。留め具が、第1のピースと第2のピースとの重ね合わせ部に貫通されて裏面材の成形型との対向面に環状の貼着面を露出させる鳩目から成る。
【0013】
上記構成によれば、第1のピースと第2のピースとを留め具によって適切に繋ぎ合わせることができる。なおかつ、これらを裏面材の成形型との対向面に露出する留め具の環状の貼着面によって成形型内に適切に位置固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係るシートパッドの概略構成を表した斜視図である。
【
図6】裏面材を成形型内にセットし、発泡樹脂原料を流し込む様子を表した模式図である。
【
図7】型締めして発泡樹脂原料を加熱発泡させる様子を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(シートパッド1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートパッド1の構成について、
図1~
図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0017】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係るシートパッド1は、車両用シートのシートクッションのパッド材として構成される。上記シートパッド1は、発泡ウレタン製のパッド本体2と、パッド本体2の裏面に一体成形される不織布製の裏面材3と、を有する。
【0018】
上記裏面材3は、パッド本体2を成形型Mにて発泡成形する際、
図6に示すように、先に上型M2の成形面上にセットされる。そして、裏面材3は、下型M1の成形面上に発泡樹脂原料を流し込んだ後、
図7に示すように、上型M2を型締めして加熱発泡させることにより、パッド本体2の裏面(図示上面)に一体成形される。
【0019】
上記裏面材3の一体成形により、シートパッド1は、パッド本体2の裏面の強度が補強される。上記シートパッド1は、
図4に示すように、シートクッションの骨格を成す平面視枠状に組まれたシートフレームF上にセットされる。そして、シートパッド1は、その上方から被せられる不図示のシートカバーの周縁部がシートフレームFに引き込まれて止着されることで、シートフレームF上に位置固定された状態に組み付けられる。
【0020】
上記組み付けにより、シートパッド1は、その裏面材3により補強された裏面がシートフレームFにより広く裏側から支えられた状態として、着座者の荷重を弾性的に受け止めるように機能する。上記シートパッド1には、その裏面に、車室内風をシートパッド1内に送り込む送風機Sが接続される構成とされる。
【0021】
それに関連して、
図1~
図3に示すように、シートパッド1の裏面には、
図4で示した送風機Sと接続される凹状の接続口2Aが形成されている。上記接続口2Aは、シートパッド1の裏面中央よりも前寄りの中間部位に形成されている。
【0022】
また、シートパッド1の裏面には、上記接続口2Aと繋がる複数の配風溝2Bが形成されている。これら配風溝2Bは、接続口2Aから左右方向或いは前方向に延び出す形に形成されている。これら配風溝2Bは、接続口2Aに送り込まれた風をシートパッド1の裏面に沿って面内方向に流す機能をするものである。
【0023】
図4に示すように、上記シートパッド1の裏面には、上記接続口2A及び各配風溝2Bに蓋をする面状の蓋部材Cが取り付けられる。上記蓋部材Cは、裏面に樹脂コーティングが施されたカーペット材により形成されている。上記蓋部材Cは、上記接続口2A及び各配風溝2Bに蓋をするようにパッド本体2の裏面(一般裏面)に重ね合わされて接着されている。それにより、蓋部材Cは、接続口2A及び各配風溝2Bに流された風がシートパッド1の裏側に漏れ出ることを防止する。
【0024】
図1~
図3に示すように、上記配風溝2Bの延び出る経路の所々の箇所には、シートパッド1の表面へと貫通する通風孔2Cが形成されている。これら通風孔2Cにより、各配風溝2Bを通って流された風が、シートパッド1の表面より配出され、着座時の快適性を向上させる。
【0025】
上述した接続口2A、各配風溝2B及び各通風孔2Cは、それぞれ、シートパッド1が着座者の荷重を受けて撓む場合にも、それらの通風路を塞ぐことなく形状を維持する必要がある。そこで、上記パッド本体2の裏面に一体成形される裏面材3は、その接続口2A、各配風溝2B及び各通風孔2Cが形成される中間部一帯の第1裏面領域A1に一体成形される部分が、成形不織布から成る第1のピース3Aにより形成されている。
【0026】
また、上記裏面材3は、上記パッド本体2の第1裏面領域A1から外れた周囲の第2裏面領域A2に一体成形される部分が、非成形不織布から成る第2のピース3Bにより形成されている。上記成形不織布から成る第1のピース3Aは、上記接続口2A、各配風溝2B及び各通風孔2Cを有する第1裏面領域A1の形に合わせて予め熱成形されてから、パッド本体2との一体成形に付されて、第1裏面領域A1に一体成形される。
【0027】
具体的には、第1のピース3Aは、上記パッド本体2の第1裏面領域A1の一般面(一般裏面)の他、凹状の接続口2Aの内周面、各配風溝2Bの内周面及び各通風路の内周面(表側へと立ち上がる面)をそれぞれ形成するように予め熱成形された構成とされる。なお、成形不織布とは、不織布に合成樹脂材を含浸させることで、プレス機による熱成形が可能となるようにした布材のことである。非成形不織布は、合成樹脂材が含浸されず、プレス機による熱成形が行えない不織布のことである。
【0028】
また、非成形不織布から成る第2のピース3Bは、パッド本体2との一体成形により、
図7に示すように、上型M2の成形面の形に沿って第2裏面領域A2に合わせた形に成形されて、第2裏面領域A2に一体成形される。上記のように、裏面材3が成形不織布から成る第1のピース3Aと、非成形不織布から成る第2のピース3Bと、の組み合わせから成ることで、各配風溝2Bや通風孔2C等の複雑形状を持つ第1裏面領域A1を適切に成形することと、そうでない第2裏面領域A2を比較的低コストに成形することと、の両立が図られている。
【0029】
図2に示すように、上記裏面材3を構成する第1のピース3Aと第2のピース3Bとは、互いの隣接する周縁部同士が重ね合わされて、その重ね合わせ部3Cの所々の箇所が金属製の留め具である複数の鳩目3Dにより留められることで1枚に繋ぎ合わされている(
図3参照)。そして、上記繋ぎ合わされた裏面材3は、
図6に示すように、これを成形型Mの上型M2にセットする際に、金属製の各鳩目3Dを上型M2の成形面上に設けられた磁性体Maに貼着させることで、上型M2の成形面上に位置決めされた状態にセットされる構成とされる。
【0030】
上記構成により、シートパッド1は、第1のピース3Aと第2のピース3Bとの留め具である金属製の各鳩目3Dを、上型M2に設けられる磁性体Maとの貼着部として合理的に機能させられる構成となっている。各鳩目3Dは、いわゆる「両面ハトメ」から成り、
図5に示すように、第1のピース3Aと第2のピース3Bとの周縁部同士が重ね合わされた重ね合わせ部3Cに対し、本体と座金とを両側から工具で挟み込むように嵌め合わせることで留められる構成とされる。
【0031】
上記のように留められる各鳩目3Dは、裏面材3の裏面、すなわち
図6に示す上型M2の成形面と対向する面上に環状の貼着面3D1を露出させる構成とされる。したがって、裏面材3を成形型Mの上型M2にセットする際に、各鳩目3Dの環状に広く露出する各貼着面3D1を上型M2の成形面上に設けられた磁性体Maに適切に貼着させて、裏面材3を上型M2の成形面上に適切に位置決めすることができる。ここで、各鳩目3Dが、本発明の「留め具」に相当する。
【0032】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートパッド1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0033】
すなわち、シートパッド(1)は、パッド本体(2)と、パッド本体(2)の裏面に一体成形される面状の裏面材(3)と、を有する。裏面材(3)が、互いに金属製の留め具(3D)を介して繋ぎ合わされる第1のピース(3A)と第2のピース(3B)とを有する。留め具(3D)が、裏面材(3)を成形型(M)内に位置固定した状態にセットするための成形型(M)内に設けられる磁性体(Ma)との貼着部とされる。
【0034】
上記構成によれば、第1のピース(3A)と第2のピース(3B)とを繋ぎ合わせる金属製の留め具(3D)を、成形型(M)に設けられる磁性体(Ma)との貼着部として合理的に機能させることができる。
【0035】
また、第1のピース(3A)と第2のピース(3B)とが互いに異なる材質とされる。上記構成によれば、互いに異なる材質の第1のピース(3A)と第2のピース(3B)とを合理的に繋ぎ合わせることができる。
【0036】
また、パッド本体(2)の裏面に、面内方向に風を流すための凹状の配風溝(2B)が形成される。第1のピース(3A)が、パッド本体(2)の配風溝(2B)が形成される第1裏面領域(A1)の形に合わせて予め熱成形されて第1裏面領域(A1)に一体成形される成形不織布から成る。第2のピース(3B)が、パッド本体(2)の第1裏面領域(A1)から外れた第2裏面領域(A2)に一体成形される非成形不織布から成る。
【0037】
上記構成によれば、配風溝(2B)が形成される第1裏面領域(A1)の形に合わせて成形された第1のピース(3A)と、第2裏面領域(A2)に設けられる非成形不織布と、を留め具(3D)により適切に繋ぎ合わせつつ、これらを成形型(M)内に適切に位置固定した状態にセットすることができる。
【0038】
また、留め具(3D)が、第1のピース(3A)と第2のピース(3B)との重ね合わせ部(3C)に貫通されて裏面材(3)の成形型(M)との対向面に環状の貼着面(3D1)を露出させる鳩目(3D)から成る。上記構成によれば、第1のピース(3A)と第2のピース(3B)とを留め具(3D)によって適切に繋ぎ合わせることができる。なおかつ、これらを裏面材(3)の成形型(M)との対向面に露出する留め具(3D)の環状の貼着面(3D1)によって成形型(M)内に適切に位置固定することができる。
【0039】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0040】
1.本発明のシートパッドは、自動車や鉄道等の車両の他、航空機、船舶等の車両以外の乗物用に供されるシートに適用されるものであっても良い。また、シートパッドは、乗物用シートの他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の様々な施設に設置される観覧席やマッサージシート等の非乗物用のシートに適用されるものであっても良い。また、シートパッドは、シートバックやヘッドレスト、オットマン等のシートクッション以外のシート構造に適用されるものであっても良い。
【0041】
2.裏面材を構成する第1のピースと第2のピースとは、互いに同一の材質から成る構成であっても良い。第1のピースは、成形不織布から成るものの他、非成形不織布から成るものであっても良い。第1のピースは、パッド本体の配風溝が形成される第1裏面領域に一体成形されるものの他、配風溝のない一般裏面に一体成形されるものであっても良い。
【0042】
第1のピースと第2のピースとは、第2のピースが第1のピースの周囲を取り巻くように設けられるものの他、第1のピースが第2のピースの周囲を取り巻くように設けられるものであっても良い。また、第1のピースと第2のピースとが互いに縦或いは横に並ぶように設けられるものであっても良い。
【0043】
3.留め具は、鳩目(両面ハトメ、片面ハトメ)の他、カシメ、ステープラ、鋲、或いはスナップボタンであっても良い。上記留め具の成形型の磁性体に貼着される貼着面は、環状に限らず、平面状や凹凸状であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 シートパッド
2 パッド本体
2A 接続口
2B 配風溝
2C 通風孔
3 裏面材
3A 第1のピース
3B 第2のピース
3C 重ね合わせ部
3D 鳩目(留め具)
3D1 貼着面
A1 第1裏面領域
A2 第2裏面領域
M 成形型
M1 下型
Ma 磁性体
M2 上型
S 送風機
C 蓋部材
F シートフレーム