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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20231212BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F24F11/41 100
F25B47/02 570M
F25B47/02 550Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020057515
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156503
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】土畠 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】穀田 薫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】兼井 一樹
(72)【発明者】
【氏名】桶田 純平
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-134146(JP,A)
【文献】特開平05-264089(JP,A)
【文献】特開2015-203550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/41
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間に配置された減圧器と、前記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器とを有する冷媒回路と、
前記圧縮機から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する第1温度センサと、
前記室外熱交換器の温度を検出する第2温度センサと、
前記室内熱交換器の温度を検出する第3温度センサと、
前記室外熱交換器の温度および前記室内熱交換器の温度に基づいて、前記圧縮機から吐出される冷媒の温度の目標値である目標吐出温度を設定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、暖房運転時に、前記室外熱交換器の温度が所定温度以下であり、かつ、前記目標吐出温度から前記吐出温度を減じた差分である第1の温度差が第1の閾値以上であるとき、前記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を前記室内熱交換器から前記室外熱交換器へ切り替える除霜運転を実行する
空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記制御装置は、前記室外熱交換器の温度が所定温度以下であり、かつ、予め設定された基準温度から前記室外熱交換器の温度を減じた差分である第2の温度差が第2の閾値以上であるとき、前記第1の温度差が前記第1の閾値以上であるか否かにかかわらず、前記除霜運転を実行する
空気調和機。
【請求項3】
請求項2に記載の空気調和機であって、
前記制御装置は、前記室外熱交換器の温度が所定温度以下であり、かつ、前記第2の温度差が前記第2の閾値以上ではないときに、前記第1の温度差が前記第1の閾値以上であるか否かを判定する
空気調和機。
【請求項4】
請求項2または3に記載の空気調和機であって、
前記基準温度は、暖房運転の開始から所定時間経過後における前記室外熱交換器の温度である
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除霜運転モードを有する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の暖房運転時において、外気温度が低いと、蒸発器として機能する室外熱交換器に霜が発生することがある。室外熱交換器に発生する霜の量が多いと、室外熱交換器による冷媒と外気の熱交換が妨げられ、室外熱交換器における熱交換能力が低下する。このため、空気調和機の暖房運転中には、室外熱交換器に発生した霜を融かすための除霜運転が適宜行われる。
【0003】
除霜運転は、あらかじめ設定された除霜開始条件を満たしたときに実行される。典型的には、室外熱交換器に着霜が発生する温度として予め設定された温度以下にまで室外熱交換器の温度が低下したとき、除霜運転が開始される(例えば特許文献1,2参照)。除霜運転を行うときは、室外熱交換器が蒸発器として機能する状態から凝縮器として機能する状態に冷媒回路を切り替え、圧縮機から吐出される高温の冷媒を室外熱交換器に流入させて、室外熱交換器に発生した霜を融かす。そして、除霜運転時間が所定時間(例えば10分)または除霜運転中に室外熱交換器の温度が所定温度(例えば10℃以上)となれば、室外熱交換器に発生した霜が全て融けたと判断して除霜運転を終了し、暖房運転を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-322264号公報
【文献】特開2010-71544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した除霜運転は暖房運転を中断して行われるため、除霜運転中は室内の暖房能力が低下する。このため、除霜運転は適切なタイミングで行われることが要求される。しかしながら、特許文献1,2に記載のように、室外熱交換器の温度にのみ基づいて除霜運転の開始を判定する方法では、外気の湿度などの影響を受けて、室外熱交換器の除霜開始のタイミングが適切でない場合がある。
【0006】
例えば、外気の湿度が比較的高いとき、室外熱交換器の温度が除霜を開始する温度に到達した時点では着霜量が多くなりすぎて、1回あたりの除霜に要する時間が長くなる。また、外気の湿度が比較的高いとき、外気の湿度が低いときと比較して、その分、室外熱交換器の着霜量が増加するため、室外熱交換器の熱交換能力が低下し、目的とする暖房能力が得られにくくなる。さらに、室外熱交換器における熱交換能力の低下により、圧縮機から吐出される冷媒の温度も低下するため、圧縮機から吐出される冷媒の熱で室外熱交換器を除霜する上で、除霜時間はますます長くなるという問題がある。
【0007】
一方、外気の湿度が比較的低いとき、室外熱交換器の着霜量が僅かである場合でも、室外熱交換器の温度が除霜を開始する温度に到達した時点で除霜運転が開始される。このように除霜の必要がないのに除霜運転が頻繁に行われることになる結果、単位時間あたりの暖房運転の中断時間が長くなるという問題がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、除霜運転をより適切なタイミングで行うことができる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、冷媒回路と、第1温度センサと、第2温度センサと、第3温度センサと、制御装置とを備える。
上記冷媒回路は、圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、上記室外熱交換器と上記室内熱交換器との間に配置された減圧器と、上記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器とを有する。
上記第1温度センサは、上記圧縮機から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する。
上記第2温度センサは、上記室外熱交換器の温度を検出する。
上記第3温度センサは、上記室内熱交換器の温度を検出する。
上記制御装置は、上記室外熱交換器の温度および上記室内熱交換器の温度に基づいて、上記圧縮機から吐出される冷媒の温度の目標値である目標吐出温度を設定する。
上記制御装置は、暖房運転時に、上記室外熱交換器の温度が所定温度以下であり、上記目標吐出温度から上記吐出温度を減じた差分である第1の温度差が第1の閾値以上であるとき、上記圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を上記室内熱交換器から上記室外熱交換器へ切り替える除霜運転を実行する。
【0010】
上記制御装置は、上記室外熱交換器の温度が所定温度以下であり、かつ、予め設定された基準温度から上記室外熱交換器の温度を減じた差分である第2の温度差が第2の閾値以上であるとき、上記第1の温度差が上記第1の閾値以上であるか否かにかかわらず、上記除霜運転を実行してもよい。
【0011】
この場合、上記制御装置は、上記室外熱交換器の温度が所定温度以下であり、かつ、上記第2の温度差が上記第2の閾値以上ではないときに、上記第1の温度差が上記第1の閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0012】
上記基準温度は、暖房運転の開始から所定時間経過後における上記室外熱交換器の温度であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、除霜運転をより適切なタイミングで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の冷媒回路図である。
図2】上記空気調和機における制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】暖房運転中における空気調和機の冷凍サイクルを表すモリエル線図(p-h線図)である。
図4】除霜運転開始判定における1つの基準を説明する図である。
図5】上記基準の問題点を説明する図である。
図6】上記空気調和機における目標吐出温度の一例を示す温度テーブルである。
図7】暖房運転中における冷媒の吐出温度の時間変化の一例を示す図である。
図8】暖房運転中における上記制御装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】(A)は暖房運転中における室外熱交換温度の時間変化、(B)は冷媒吐出温度の時間変化、そして(C)は室内機からの風の吹出温度の時間変化を示す図であって、各図において左側は比較例を、右側は本発明の実施形態をそれぞれ比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和機の冷媒回路図である。本実施形態の空気調和機1は、屋外に設置される室外機2と、室内に設置され室外機2に液管4およびガス管5で接続された室内機3を備えている。詳細には、室外機2の閉鎖弁25と室内機3の液管接続部33が液管4で接続されている。また、室外機2の閉鎖弁26と室内機3のガス管接続部34がガス管5で接続されている。以上により、空気調和機1の冷媒回路10が形成される。
【0017】
<室外機の構成>
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、減圧器としての膨張弁24と、液管4が接続された閉鎖弁25と、ガス管5が接続された閉鎖弁26と、室外ファン27と、アキュムレータ28とを備えている。そして、室外ファン27を除くこれら各装置が後述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路10aを形成している。
【0018】
圧縮機21は、回転数が可変の図示しないモータを有し、図示しないインバータによりモータの回転数が可変制御されることで、運転容量を変えることができる容量可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口は、四方弁22のポートaと吐出管61で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入口は、アキュムレータ28の冷媒流出口と吸入管66で接続されている。
【0019】
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り替えるための流路切替器である。具体的には、四方弁22は、冷媒回路10を、圧縮機21から吐出された冷媒を室外熱交換器23、膨張弁24、室内熱交換器31およびアキュムレータ28の順で循環させる冷房用冷媒回路と、圧縮機21から吐出された冷媒を室内熱交換器31、膨張弁24、室外熱交換器23およびアキュムレータ28の順で循環させる暖房用冷媒回路のいずれか一方に切り替える。
【0020】
四方弁22は、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出口と吐出管61で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管62で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入口と冷媒配管69で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管64で接続されている。
【0021】
室外熱交換器23は、室外ファン27の回転により、冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbと冷媒配管62で接続され、他方の冷媒出入口は閉鎖弁25と室外機液管63で接続されている。室外熱交換器23は、後述する四方弁22の切り替えによって、冷房運転時は凝縮器として機能し、暖房運転時は蒸発器として機能する。
【0022】
膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、室外機液管63に設けられる。具体的には、膨張弁24はパルスモータに加えられるパルス数により、その開度が全閉と全開の間の開度に調整される。膨張弁24の開度は、暖房運転時には室内機3で要求される暖房能力に応じて調整され、冷房運転時には室内機3で要求される冷房能力に応じて調整される。
【0023】
室外ファン27は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、室外機2の図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0024】
アキュムレータ28は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを吸入管66を介して圧縮機21に吸入させる。アキュムレータ28の冷媒流入口と四方弁22のポートcとが冷媒配管69で接続され、アキュムレータ28の冷媒流出口と圧縮機21の冷媒吸入口とが吸入管66で接続されている。
【0025】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、吐出管61には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ71と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する第1温度センサとしての吐出温度センサ73が設けられている。冷媒配管69には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ72と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ74が設けられている。
【0026】
室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度である室外熱交温度を検出する第2温度センサとしての室外熱交温度センサ75が備えられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の図示しない筐体の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ76が備えられている。
【0027】
<室内機の構成>
次に、図1を用いて、室内機3について説明する。室内機3は、室内熱交換器31と、室内ファン32と、液管4の他端が接続された液管接続部33と、ガス管5の他端が接続されたガス管接続部34を備えている。そして、室内ファン32を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路10bを形成している。
【0028】
室内熱交換器31は、室内ファン32の回転により、冷媒と、室内機3の図示しない吸込口から室内機3の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器31の一方の冷媒出入口は、液管接続部33と室内機液管67で接続されている。室内熱交換器31の他方の冷媒出入口は、ガス管接続部34と室内機ガス管68で接続されている。室内熱交換器31は、室内機3が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機3が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部33やガス管接続部34では、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0029】
室内ファン32は樹脂材で形成されており、室内熱交換器31の近傍に配置されている。室内ファン32は、図示しないファンモータによって回転することで、室内機3の図示しない吸込口から室内機3の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器31において冷媒と熱交換した室内空気を室内機3の図示しない吹出口から室内へ吹き出す。
【0030】
以上説明した構成の他に、室内機3には各種のセンサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、室内機液管67には、室内熱交換器31の温度である室内熱交温度を検出する第3温度センサとしての室内熱交温度センサ77が設けられている。そして、室内機3の図示しない吸込口付近には、室内機3の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室温を検出する室温センサ79が備えられている。
【0031】
<制御装置>
空気調和機1は、制御装置90を備える。制御装置90は、例えば、室外機2に備えられた室外機制御装置であり、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されている。
【0032】
図2は、制御装置90の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置90は、CPU91、記憶部92、通信部93、センサ入力部94および回転数検出部95を有する。
【0033】
記憶部92は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室外機2の制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27等の制御状態等を記憶している。
【0034】
通信部93は、室内機3との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部94は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU91に出力する。回転数検出部95は、圧縮機21のモータの回転数を検出してCPU91に出力する。回転数検出部95は、モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ等でモータの回転数を直接検出するように構成されてもよいし、モータに供給される駆動電流からモータの回転数を検出するように構成されてもよい。以下の説明において、圧縮機21の回転数とは、モータの回転数をいう。
【0035】
CPU91は、記憶部92に格納されたプログラムを実行することで、圧縮機21を含む室外機2の各部の運転を制御する制御部である。プログラムは、例えば種々の記録媒体を介して制御装置90にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
【0036】
CPU91は、上述した室外機2の各センサでの検出結果を、センサ入力部94を介して取り込む。さらには、CPU91は、室内機3から送信される制御信号を、通信部93を介して取り込む。CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン27、室内ファン32の駆動制御を行う。また、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22の切り替え制御を行う。さらには、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、膨張弁24の開度調整を行う。
【0037】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。
【0038】
(1.冷房運転)
室内機3が冷房運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22をポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り替える。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器31が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0039】
圧縮機21から吐出された冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管62を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。
【0040】
室外熱交換器23から流出した冷媒は、室外機液管63を流れ、膨張弁24を通過する際に減圧される。冷房運転時の膨張弁24の開度は、圧縮機21の吐出温度が所定の目標温度となるように調整される。膨張弁24を通過した冷媒は、閉鎖弁25を介して液管4に流出する。液管4を流れ、液管接続部33を介して室内機3に流入した冷媒は、室内機液管67を流れて室内熱交換器31に流入する。
【0041】
室内熱交換器31に流入した冷媒は、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器31が蒸発器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の冷房が行われる。
【0042】
室内熱交換器31から流出した冷媒は、室内機ガス管68を流れ、ガス管接続部34を介してガス管5に流出する。ガス管5を流れる冷媒は、閉鎖弁26を介して室外機2に流入し、室外機ガス管64、四方弁22、冷媒配管69、アキュムレータ28、吸入管66の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0043】
(2.暖房運転)
室内機3が暖房運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22をポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り替える。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器31が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0044】
圧縮機21から吐出された冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管64を流れて、閉鎖弁26を介してガス管5に流入する。ガス管5を流れる冷媒は、ガス管接続部34を介して室内機3に流入する。
【0045】
室内機3に流入した冷媒は、室内機ガス管68を流れて室内熱交換器31に流入し、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器31が凝縮器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0046】
室内熱交換器31から流出した冷媒は、室内機液管67を流れ、液管接続部33を介して液管4に流入する。液管4を流れ、閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機液管63を流れて膨張弁24を通過する際に減圧される。暖房運転時の膨張弁24の開度は、圧縮機21の吐出温度が所定の目標温度となるように調整される。膨張弁24を通過した冷媒は、室外機液管63を流れて室外熱交換器23に流入する。
【0047】
室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管62に流出した冷媒は、四方弁22、冷媒配管69、アキュムレータ28、吸入管66を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0048】
空気調和機1が暖房運転を行っているときに外気温度が低いと、蒸発器として機能する室外熱交換器23に霜が発生する。室外熱交換器23に発生する霜の量が多いと、室外熱交換器による冷媒と外気の熱交換が妨げられ、室外熱交換器23における熱交換能力が低下する。そこで、本実施形態の空気調和機1は、後述する除霜開始条件を満たしたとき、以下の除霜運転を実行する。
【0049】
(3.除霜運転)
室外機2が除霜運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り替える。これにより、冷媒回路10は、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器31が蒸発器として機能する。このとき、膨張弁24は全開とされ、室外ファン27および室内ファン32の運転が停止される。
【0050】
リバース除霜運転は、一定時間(例えば10分)経過後、あるいは、室外熱交換器23の温度が所定温度(例えば10℃以上)になった時点で終了し、上述した暖房運転が再開される。
【0051】
<除霜運転開始制御>
続いて、本実施形態の空気調和機1における除霜運転開始制御について説明する。
【0052】
(除霜開始制御の課題)
暖房運転中における室外熱交換器23の除霜運転開始の判定には、一般に、室外熱交換器の温度である室外熱交温度が用いられる。室外熱交温度を用いた除霜開始の判定基準として、主として以下の2つの条件が用いられる。
条件a:室外熱交温度がある所定温度以下のとき
条件b:室外熱交温度の基準温度に対する低下幅が所定の閾値以上のとき
【0053】
「条件a」は、室外熱交換器の着霜量を室外熱交温度から推定する判定基準である。熱交温度が低いほど着霜量は増える。
「条件b」は、室外熱交換器が着霜していることを認識するための判定基準である。着霜が進行するほど室外熱交換器による冷媒と外気の熱交換が妨げられ、時間経過とともに室外熱交温度が低下し、室外熱交換器の蒸発器としての機能が低下する。
【0054】
室外熱交温度は外気温度の影響を受けるため、除霜判定を行う上でまず「条件a」が判定される。一方、「条件a」を満たす場合でも外気の相対湿度が比較的低いときは、外気中の水分量が少ないため、室外熱交換器が着霜しない場合がある。この場合には、着霜が少ない分、室外熱交換器の温度の低下幅が小さくなる。このため、典型的には、除霜開始判定方法としては、「条件a」と「条件b」の双方を満たすと判定した場合に、除霜運転が開始される。
【0055】
一方、暖房運転中における室外熱交換器の除霜運転では、除霜率は低いことが要求される。除霜率とは、暖房時間と除霜時間の和に対する除霜時間の割合、つまり、
除霜率=除霜時間/(暖房時間+除霜時間)
と定義される。
【0056】
室外熱交換器の着霜量が増加すると、その分だけ霜を融かすための熱量も増やさなければならない。具体的には、0℃の霜または氷を0℃の水にする融解熱が最も必要とされる。霜を融かす熱量には、圧縮機から吐出される冷媒の温度(以下、吐出温度ともいう)が利用される。しかし着霜量が多い状態で除霜運転を行うと、図3を参照して後述するように、除霜運転開始時の吐出温度は、着霜量が少ない状態で除霜運転を行うときの吐出温度に比べて低くなる。そのため、吐出温度が低い状態で除霜運転を行うと、除霜時間が長くなり、除霜率が高くなる傾向にある。
【0057】
図3は、暖房運転中における空気調和機1の冷凍サイクルを表すモリエル線図(p-h線図)である。図中、横軸は比エンタルピー、縦軸は圧力、Vは飽和液線、Wは飽和蒸気線、Xは等温線である。また、実線で示すサイクルYは、室外熱交換器23が着霜していないとき(または、着霜量が比較的少ないとき)の状態を示し、破線で示すサイクルZは、室外熱交換器23の着霜量が比較的多いときの状態を示している。
なお、図中、P1は圧縮機21から吐出された冷媒の状態を、P2は室内熱交換器31から流出した冷媒の状態を、P3は室外熱交換器23へ流入する冷媒の状態を、そして、P6は圧縮機21に吸入される冷媒の状態を、それぞれ示している。
【0058】
室外熱交換器23の着霜量が増加すると、室外熱交換器23による冷媒と外気の熱交換が妨げられ、その結果、室外熱交換器23における熱交換能力が低下する。室外熱交換器23における熱交換能力が低下すると、図3において破線で示すサイクルZのように、室外熱交換器23における蒸発圧力が低下し、二相冷媒中の液成分が増加するため、圧縮機21に吸入される冷媒の量が低下する。その結果、圧縮機21から吐出される冷媒の温度はTd1からTd2に低下し、室内熱交換器31における冷媒の凝縮圧力も低下する。凝縮圧力が低下した冷媒は、膨張弁24によって減圧されることで、室外熱交換器23における蒸発圧力がさらに低下する。
【0059】
以上のような冷媒の状態変化が繰り返し行われる結果、暖房運転中に圧縮機21から吐出される冷媒の温度は徐々に低下し、この温度の低下幅は、室外熱交換器23の着霜量が増加するほどより大きくなる。その結果、「条件a」および「条件b」をいずれも充足したことを判定して除霜運転を開始したとしても、圧縮機から吐出される冷媒の温度が低い状態で除霜運転が行われるため、室外熱交換器23の温度がすみやかに上昇せず、除霜時間が長くなる。
【0060】
このように除霜運転の開始タイミングが遅れる理由の1つとして、室外熱交温度の低下幅の判定基準が挙げられる。前述の「条件b」では、室外熱交温度の低下幅が所定の閾値以上であるか否かに基づき、除霜開始の要否を判定する。例えば図4に示す例では、暖房運転開始から所定時間(例えば10分)経過後の室外熱交温度(Tn10)を基準値とし、前述の「条件a」を満たしていることを前提として、当該基準値からの低下幅が5℃(基準値)以上となった時点(n分後)で除霜運転が開始される。この場合、図5に示すように、暖房運転開始から10分経過後の室外熱交温度が-10℃と極めて低い場合、室外熱交温度が-15℃に達しないと除霜運転が開始されないことになり、その結果、室外熱交換器23の着霜量が増加する。
【0061】
以上のように、暖房運転中における室外熱交換器23の除霜運転開始の判定基準が前述の「条件a」および「条件b」のみである場合、暖房運転開始時における室外熱交温度によっては、室外熱交換器の着霜量が大幅に増加し、その結果、除霜運転開始時における除霜に必要な冷媒の熱量(吐出温度)が不足して除霜時間が長くなり、除霜率が高くなることを避けられない。そこで本実施形態の空気調和機1においては、このような課題を解決するべく、制御装置90が以下のような処理を実行するように構成される。
【0062】
(制御装置の詳細)
本実施形態の空気調和機1において、制御装置90のCPU91(図2)は、暖房運転中における室外熱交換器23の除霜運転開始の判定基準として、以下の3条件を満たすか否かに基づいて、除霜運転の開始制御を行う。
条件1:室外熱交換器23の温度が所定温度以下のとき
条件2:予め設定された基準温度から室外熱交換器23の温度を減じた差分である温度差(以下、第2の温度差ΔT2ともいう)が所定の閾値(以下、第2の閾値Th2ともいう)以上のとき
条件3:目標吐出温度から冷媒の吐出温度を減じた差分である温度差(以下、第1の温度差ΔT1)が所定の閾値(以下、第1の閾値Th1ともいう)以上のとき
【0063】
「条件1」は、前述の「条件a」に対応する。所定温度は任意に設定可能であり、例えば、0℃である。室外熱交換器23の温度は、所定時間(例えば1分)ごとに室外熱交温度センサ75により検出され、記憶部92に格納される。
【0064】
「条件2」は、前述の「条件b」に対応する。基準温度は、暖房運転開始から所定時間経過後の室外熱交温度である。所定時間は、例えば、圧縮機21の起動後、冷媒が安定して循環するまでの時間であり、その長さは特に限定されず、例えば、10分である。除霜運転終了後に暖房運転が再開された場合、基準温度は、暖房運転の再開から所定時間経過後の室外熱交温度である。基準温度は、室外熱交温度センサ75により検出され、記憶部92に格納される。第2の閾値Th2は、例えば、事前に試験等により暖房運転時間と除霜運転時間のバランスが好適であると評価された値であり、その値は特に限定されず、例えば、5℃である。
【0065】
一方、「条件3」は、除霜開始判定に圧縮機21から吐出される冷媒の温度を基準とするものである。目標吐出温度は、室内機3において適切な暖房運転が行われるようにCPU91によって設定される。目標吐出温度は、暖房運転時において室外熱交換器23における冷媒の蒸発温度と室内熱交換器31における冷媒の凝縮温度とに基づいて定められる、圧縮機21から吐出される冷媒の温度の目標値であり、冷媒の吐出温度が目標吐出温度となるように膨張弁24の開度が調整される。冷媒の吐出温度は、吐出温度センサ73により検出される。
【0066】
前述のように、目標吐出温度は、室内機3の暖房運転を実現するために冷媒の凝縮温度および蒸発温度に基づいて定められた冷媒の吐出温度である。図6は、目標吐出温度の一例を示す温度テーブルである。同図に示すように、目標吐出温度は、凝縮温度が高く、蒸発温度が低いほど、高い温度に設定される。目標吐出温度は、温度範囲で定められてもよい。この例では、「95℃」が目標吐出温度の上限値であり、その他の温度は、目標吐出温度に相当する温度範囲の下限値を示している。目標吐出温度は、記憶部92に格納される。
【0067】
図7に、暖房運転中における冷媒の吐出温度の時間変化の一例を示す。暖房運転が開始すると、CPU91は、冷媒の吐出温度が目標吐出温度Tt1となるように膨張弁24の開度を調整する。室外熱交換器23が着霜すると、目標吐出温度に向かって吐出温度を制御しようとしても、目標吐出温度に関わらず、前述のように着霜量に応じて室外熱交換器23における冷媒の蒸発温度および凝縮温度が低下する。CPU91は、冷媒の蒸発温度および凝縮温度に基づき、目標吐出温度をTt1からTt2へ低下させる。着霜の更なる進行により、冷媒の吐出温度はさらに低下し、吐出温度センサ73により検出される吐出温度(検出吐出温度)の目標吐出温度Tt2からの差分である第1の温度差ΔT1が予め設定された第1の閾値Th1以上になったとき、CPU91は「条件3」の充足を判定する。
【0068】
第1の閾値Th1は、除霜率が高くならない除霜時間で室外熱交換器23の着霜を除去できる冷媒の温度であれば特に限定されず、例えば5℃である。第1の閾値Th1は固定値であってもよいし、可変値であってもよい。第1の閾値Th1を可変値とする場合、第1の閾値Th1は、例えば、圧縮機21の回転数に応じて変えればよい。
具体的には、圧縮機21の回転数が低いほど、ΔT1がより小さい条件で除霜が開始されるように、第1の温度差を小さく値とすべく、第1の閾値Th1をより小さい値とすることが考えられる。つまり、圧縮機21の回転数が低い場合には着霜スピードも遅くなることが多く、この場合、着霜の影響が吐出温度の下がり方に及ぼす影響も小さくなる。したがって、第1の閾値Th1を固定値とした場合には、「条件3」が成立するまでの時間も長くなり、結果として、「条件3」が成立したときには、着霜が想定以上に進んでしまっているおそれがあるが、第1の閾値Th1を前述のような可変値とすることで、このようなおそれを防止することできる。
【0069】
このように、CPU91は、暖房運転中の冷媒の吐出温度を監視し、その吐出温度が目標吐出温度よりも所定以上低下したときに除霜運転開始条件として「条件3」を判定する。判定手順としては、後述するように、「条件1」、「条件2」および「条件3」の順で実行され、「条件1」および「条件2」を充足し、あるいは、「条件1」および「条件3」を充足する場合に除霜運転が開始される。これにより、「条件2」を充足しない場合にも室外熱交換器23の除霜運転を開始することができる。
【0070】
(除霜運転開始の判定方法)
続いて、CPU91による除霜運転開始の判定方法について説明する。図8は、暖房運転中におけるCPU91の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0071】
CPU91は、暖房運転開始してから所定時間(本実施形態では10分)経過後の室外熱交温度である基準温度を取得する(ステップ101)。基準温度は、室外熱交温度センサ75で検出された室外熱交換器23の温度である。
【0072】
CPU91は、基準温度を取得後、所定時間(例えば1分)ごとに室外熱交温度が所定温度(本実施形態では0℃)以下であるか否かを判定する(ステップ102、条件1)。CPU91は、室外熱交温度が所定温度を超える場合は(ステップ102において「No」)、暖房運転を継続する。(ステップ103)。一方、CPU91は、室外熱交温度が所定温度以下の場合、基準温度からの室外熱交温度を減じた差分である第2の温度差ΔT2が第2の閾値Th2(本実施形態では5℃)以上であるか否かを判定する(ステップ104、条件2)。
【0073】
CPU91は、第2の温度差ΔT2が第2の閾値Th2以上の場合は(ステップ104において「Yes」)、室外熱交換器23の除霜運転を開始する(ステップ105)。一方、CPU91は、第2の温度差ΔT2が第2の閾値Th2未満の場合は(ステップ104において「No」)、吐出温度センサ73により冷媒の吐出温度(検出吐出温度)を取得し、目標吐出温度からの検出吐出温度の差分である第1の温度差ΔT1が第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップ106、条件3)。
【0074】
CPU91は、第1の温度差ΔT1が第1の閾値Th1以上の場合は(ステップ106において「Yes」)、室外熱交換器23の除霜運転を開始し(ステップ105)、第1の温度差ΔT1が第1の閾値Th1未満の場合は(ステップ106において「No」)、暖房運転を継続する(ステップ103)。
【0075】
以上のように本実施形態によれば、室外熱交温度が所定温度以下であり、基準温度からの室外熱交温度の差分である第1の温度差ΔT2が第2の閾値Th2未満の場合であっても、目標吐出温度からの検出吐出温度の差分である第1の温度差ΔT1が第1の閾値Th1以上であれば、除霜運転を開始する。これにより、暖房運転開始から所定時間経過後の室外熱交換器23の温度(基準温度)が低い場合であっても、室外熱交換器23の着霜量が過剰となる前に除霜運転を開始できるため、着霜量が過剰な状態で除霜運転を行うときよりも高い吐出温度で除霜運転を開始することができる。その結果、除霜時間の短縮により除霜率が高くなることを防止できるとともに、暖房運転の中断時間の短縮により室内温度の低下を抑制できる。
【0076】
図9(A)は、暖房運転中における室外熱交換温度の時間変化、(B)は冷媒吐出温度の時間変化、そして(C)は室内機3からの風の吹出温度の時間変化を示しており、各図において左側は前述の「条件a」および「条件b」での除霜運転開始制御の実行例(比較例)を、右側は「条件1」、「条件2」および「条件3」での除霜運転開始制御の実行例(実施形態)をそれぞれ比較して示している。
【0077】
図9(A)に示すように、本実施形態によれば、比較例よりも暖房時間が短いが、比較例よりも室外熱交温度がΔT3だけ高い状態で除霜運転が開始されるため、除霜運転1回あたりの除霜時間を短くできる。また図9(B)に示すように、本実施形態によれば、比較例よりも冷媒の吐出温度がΔT4だけ高い状態で除霜運転が開始されるため、除霜時間の短縮効果がさらに高まり、除霜率の改善を図ることができる。さらに図9(C)に示すように、本実施形態によれば除霜時間を短縮できるので、暖房運転の中断時間がその分短くなり、比較例よりも室温の低下を抑制することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0079】
例えば以上の実施形態では、目標吐出温度からの冷媒吐出温度の差分である第1の温度差ΔT1が第1の閾値Th1以上か否か(条件3)の判定を、基準温度からの室外熱交温度の差分である第2の温度差ΔT2が第2の閾値Th2以上か否か(条件2)の判定よりも後に行ったが、これに限られず、条件3の判定を条件2の判定の前に行ってもよいし、条件3の判定を条件2の判定と同時に行ってもよい。この場合においても上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、条件2の判定は省略してもよく、条件1と条件3のみで除霜運転開始判定を行うようにしてもよい。
【0080】
また、以上の実施形態では、基準温度として、暖房運転開始あるいは再開から所定時間経過後の室外熱交温度としたが、これに限られず、固定値であってもよい。固定値としては、例えば、暖房運転の開始時あるいは再開時の温度からあらかじめ設定された温度を加えた温度であってもよい。また、基準温度は、暖房運転の開始時あるいは再開時の室外熱交温度でもよい。この場合、第2の温度差ΔT2を上述の実施形態よりも大きく設定してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…冷媒回路
21…圧縮機
22…四方弁(流路切替器)
23…室外熱交換器
24…膨張弁
31…室内熱交換器
73…吐出温度センサ(第1の温度センサ)
75…室外熱交温度センサ(第2の温度センサ)
77…室内熱交温度センサ(第3の温度センサ)
90…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9