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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/24 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B25D17/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020062084
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160010
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 太郎
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119329(JP,A)
【文献】特開2014-069280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記シリンダの中心線方向に往復動されるピストンと、
前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記中心線方向に作動可能な打撃部と、
前記シリンダの内部で前記ピストンと前記打撃部との間に設けられ、かつ、前記打撃部に前記中心線方向の作動力を加える気体室と、
前記シリンダを径方向に貫通し、前記シリンダの内部と前記シリンダの外部とをつなぐ呼吸孔と、
を有する作業機であって、
前記シリンダの外部に設けられ、かつ、前記中心線方向に移動可能な質量体と、
前記シリンダの外部に設けられて前記質量体を前記中心線方向に移動可能に支持し、かつ、前記質量体と前記シリンダとの間に前記径方向の第1隙間を形成する弾性部材と、
を有し、
前記質量体は、前記径方向における内径が最小である小径部を有し、
前記小径部と前記シリンダとの間に、前記径方向における前記第1隙間が設けられている、作業機。
【請求項2】
前記質量体は、前記径方向で前記シリンダの外側を囲む筒部を有し、
前記弾性部材は、前記径方向で前記シリンダと前記筒部との間に設けられている、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記ピストンを前記中心線方向に往復動させる駆動源と、
前記質量体、前記弾性部材及び前記シリンダを内部に備えた筒状のケースと、
が更に設けられている、請求項1記載の作業機。
【請求項4】
筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記シリンダの中心線方向に往復動されるピストンと、
前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記中心線方向に作動可能な打撃部と、
前記シリンダの内部で前記ピストンと前記打撃部との間に設けられ、かつ、前記打撃部に前記中心線方向の作動力を加える気体室と、
前記シリンダを径方向に貫通し、前記シリンダの内部と前記シリンダの外部とをつなぐ呼吸孔と、
を有する作業機であって、
前記シリンダの外部に設けられ、かつ、前記中心線方向に移動可能な質量体と、
前記シリンダの外部に設けられて前記質量体を前記中心線方向に移動可能に支持し、かつ、前記質量体と前記シリンダとの間に前記径方向の第1隙間を形成する弾性部材と、
を有し、
前記質量体は、
前記シリンダの外周を囲むように設けられる筒部と、
前記弾性部材から前記中心線方向の付勢力を受ける突出部と、
を有し、
前記筒部の前記中心線方向における長さは、前記突出部の前記中心線方向における長さよりも大きい、作業機。
【請求項5】
前記突出部は、前記筒部の内周面から前記径方向で内側に向かって突出され、
前記弾性部材は、前記径方向で前記シリンダの外周面と前記筒部の内周面との間に設けられている、請求項4記載の作業機。
【請求項6】
前記第1隙間は、前記突出部と前記シリンダとの間に設けられ、
前記筒部と前記弾性部材との間に設けられた第2隙間と、
前記シリンダと前記弾性部材との間に設けられた第3隙間と、
を更に備え、
前記径方向における前記第1隙間の長さL1と、
前記径方向における前記第2隙間の長さL2と、
前記径方向における前記第3隙間の長さL3と、
の関係は、
L1>L2+L3
である、請求項5記載の作業機。
【請求項7】
前記突出部は、前記筒部の外周面から前記径方向で外側に向かって突出され、
前記弾性部材は、前記径方向で前記筒部の外側に設けられている、請求項4記載の作業機。
【請求項8】
前記突出部は、前記中心線方向で前記筒部の中途部位に設けられている、請求項4乃至7の何れか1項記載の作業機。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記シリンダの外周を囲んで設けられた螺旋状のコイルスプリングである、請求項1乃至8の何れか1項記載の作業機。
【請求項10】
前記コイルスプリングは、前記中心線方向に沿った平面内の断面形状が円形である、請求項9記載の作業機。
【請求項11】
前記打撃部から打撃力が伝達される工具を保持する工具保持部が、更に設けられ、
前記呼吸孔は、前記工具が対象物から離間されている状態で、前記気体室から遮断される第1呼吸孔を含み、
前記コイルスプリングを構成する線材の直径は、前記第1呼吸孔の内径よりも小さい、請求項10記載の作業機。
【請求項12】
前記呼吸孔は、前記シリンダの周方向に離間して複数設けられている、請求項1乃至11の何れか1項記載の作業機。
【請求項13】
前記呼吸孔は、前記気体室の圧力を調整する第2呼吸孔を含み、
前記コイルスプリングを構成する線材の直径は、前記第2呼吸孔の開口径よりも小さい、請求項10記載の作業機。
【請求項14】
前記弾性部材は、前記質量体を前記小径部と前記シリンダとが前記シリンダの全周に亘って非接触であることにより、前記シリンダの全周に亘って前記第1隙間が設けられている、請求項1乃至の何れか1項記載の作業機。
【請求項15】
筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記シリンダの中心線方向に往復動されるピストンと、
前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記中心線方向に作動可能な打撃部と、
前記シリンダの内部で前記ピストンと前記打撃部との間に設けられ、かつ、前記打撃部に前記中心線方向の作動力を加える気体室と、
前記シリンダを径方向に貫通し、前記シリンダの内部と前記シリンダの外部とをつなぐ呼吸孔と、
を有する作業機であって、
前記シリンダの外部に設けられ、かつ、前記中心線方向に移動可能な質量体と、
前記シリンダの外部に設けられて前記質量体を前記中心線方向に移動可能に支持し、かつ、前記質量体と前記シリンダとの間に前記径方向の第1隙間を形成する弾性部材と、
を有し、
前記質量体は、前記径方向で前記シリンダの外側を囲む筒部を有し、
前記弾性部材は、前記径方向で前記シリンダと前記筒部との間に設けられている、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダと、シリンダの内部に設けられたピストンと、シリンダの内部に設けられた打撃部と、を有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダと、シリンダの内部に設けられたピストンと、シリンダの内部に設けられた打撃部と、を有する作業機の例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された作業機としての打撃作業機は、ハウジング、シリンダホルダ、シリンダ、ピストン、電動モータ、打撃部、中間子、質量体及び弾性部材を有する。ハウジングは、モータケース及び打撃ケースを有し、電動モータは、モータケース内に設けられている。シリンダホルダは、筒形状であり、シリンダホルダは、打撃ケース内に設けられている。シリンダは、シリンダホルダ内に設けられており、ピストン及び打撃部は、シリンダの内部に設けられている。シリンダの内部におけるピストント打撃部との間に、圧力室が設けられている。シリンダを径方向に貫通する呼吸孔が設けられている。呼吸孔はシリンダの内部につながる。
【0003】
質量体は、シリンダホルダの内部であり、かつ、シリンダの外部に設けられている。弾性部材は、シリンダホルダの内部であり、かつ、シリンダの外部に設けられている。弾性部材は、2個設けられており、質量体は、弾性部材同士の間に設けられている。
【0004】
特許文献1に記載された打撃作業機は、電動モータによってピストンが往復動され、圧力室の圧力が変化する。圧力室の圧力が上昇すると、打撃部にシリンダの中心線方向の打撃力が加えられ、打撃部が受けた打撃力は中間子に伝達される。質量体は、シリンダの中心線方向に作動し、ハウジングの振動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-119329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、質量体が呼吸孔を塞がないように、質量体がシリンダの中心線方向に作動する範囲が制限されると、質量体が振動を低減する機能が低下するという課題を認識した。
【0007】
本発明の目的は、質量体が振動を低減する機能が低下することを抑制可能な作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の打撃作業機は、筒状のシリンダと、前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記シリンダの中心線方向に往復動されるピストンと、前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記中心線方向に作動可能な打撃部と、前記シリンダの内部で前記ピストンと前記打撃部との間に設けられ、かつ、前記打撃部に前記中心線方向の作動力を加える気体室と、前記シリンダを径方向に貫通し、前記シリンダの内部と前記シリンダの外部とをつなぐ呼吸孔と、を有する作業機であって、前記シリンダの外部に設けられ、かつ、前記中心線方向に移動可能な質量体と、前記シリンダの外部に設けられて前記質量体を前記中心線方向に移動可能に支持し、かつ、前記質量体と前記シリンダとの間に前記径方向の第1隙間を形成する弾性部材と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
打撃作業機は、シリンダの中心線方向における質量体の移動範囲が制限されず、かつ、質量体が呼吸孔を塞ぐことを防止できる。したがって、質量体が振動を低減する機能が低下することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作業機の全体を正面視した断面図である。
図2】作業機の一部であり、先端工具が対象物に接触された状態の断面図である。
図3】作業機の一部であり、先端工具が対象物から離間された状態の断面図である。
図4図2のシリンダをIV-IV線に沿って破断した側面断面断面図である。
図5図2に示された振動低減機構の第1具体例を示す断面図である。
図6図5示す振動低減機構の質量体の変更例を示す断面図である。
図7図2に示された振動低減機構の第2具体例を示す断面図である。
図8図2に示された振動低減機構の第3具体例を示す断面図である。
図9図2に示された振動低減機構の第4具体例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、作業機の一実施形態であるハンマドリルについて、図面を用いて詳細に説明する。各図に示された構成のうち、同じ構成は同じ符号を付してある。
【0012】
図1に示すハンマドリル10は、図2のように、先端工具11を対象物12に押し付け、かつ、先端工具11に打撃力を加えて対象物12に処理を施す打撃作業機である。対象物12は、コンクリート、レンガ、石材、アスファルトの何れでもよい。また、対象物12に施す処理は、対象物12を破砕すること、対象物12の表面を削ること、対象物12を切断すること、対象物12に溝を形成すること、を含む。そして、先端工具11は、対象物12の材質、及び施す処理に適した形状を有する。本実施形態においては、対象物12としてのコンクリートを先端工具11により破砕する例を説明する。このため、図1に示された先端工具11は、便宜上、楔形状で示す。
【0013】
ハンマドリル10は、ハウジング13、電動モータ17、ハンドル部18、コントローラ20、振動低減機構54を有する。ハウジング13は、モータケース14、打撃ケース15及びギヤケース16を有する。モータケース14と打撃ケース15とギヤケース16とが、互いに固定されている。
【0014】
ハンドル部18は、モータケース14及びギヤケース16に接続されている。ハンドル部18は、作業者がハンマドリル10を使用するときに手で掴む部位である。電源ケーブル19が、ハンドル部18に取り付けられている。電源ケーブル19は、電源部、例えば、交流電源に接続される。トリガ21及びトリガスイッチ22が、ハンドル部18に設けられている。
【0015】
コントローラ20は、ハウジング13の内部、一例としてモータケース14の内部に設けられている。コントローラ20は、リード線により電源ケーブル19に接続され、かつ、リード線により電動モータ17に接続されている。コントローラ20は、リード線によりトリガスイッチ22へ接続されている。
【0016】
電動モータ17は、駆動源であり、電動モータ17は、モータケース14内に配置されている。電動モータ17は、ステータ23およびロータ24を有する。作業者がハンドル部18を掴んでトリガ21を操作し、トリガスイッチ22がオンすると、電源部の電力が電動モータ17に供給され、電動モータ17が回転、具体的にはロータ24が回転する。トリガスイッチ22がオフされると、電源部の電力が電動モータ17に供給されず、電動モータ17は停止、具体的にはロータ24が停止する。
【0017】
ロータ24は、回転軸25に固定されている。回転軸25は、モータケース14内に設けられ、かつ、軸受26により回転可能に支持されている。回転軸25は、中心線A2を中心として回転可能である。中心線A2は、回転軸25の中心を通る工学上の仮想線である。回転軸25の回転軸25の外周にギヤ27が設けられている。ハウジング13内にクランクシャフト28及びコネクティングロッド29が設けられている。クランクシャフト28は、軸受30により回転可能に支持されている。クランクシャフト28は、中心線A3を中心として回転可能である。中心線A3は、クランクシャフト28の中心を通る工学上の仮想線である。中心線A2と中心線A3とが、互いに平行に配置されている。
【0018】
また、クランクシャフト28に固定されたギヤ31が設けられ、ギヤ31はギヤ27に噛み合っている。ギヤ31の歯数はギヤ27の歯数より多い。ギヤ27,31は、回転軸25の回転力をクランクシャフト28に伝達する場合に、減速機構の役割を果たす。さらに、コネクティングロッド29は、クランクシャフト28に対して回転可能に連結されている。クランクシャフト28及びコネクティングロッド29は、変換機構77を構成する。
【0019】
打撃ケース15は筒形状であり、打撃ケース15の長手方向の第1端部は、ギヤケース16に固定されている。打撃ケース15の長手方向は、中心線A1に沿った方向である。打撃ケース15の内部にシリンダケース34が設けられている。シリンダケース34は、筒形状であり、シリンダ35が、シリンダケース34の内部に設けられている。シリンダケース34は、金属製、一例としてアルミニウム製である。シリンダ35は、金属製、一例として鋼製である。シリンダケース34及びシリンダ35は、中心線A1を中心として同心状に配置されている。中心線A1は、シリンダケース34及びシリンダ35の中心に位置する仮想線である。中心線A1,A2,A3を含む正面視である図1において、中心線A1は、中心線A2,A3に対して所定角度で交差、一例として90度の角度で交差している。
【0020】
リテーナスリーブ36が、シリンダケース34の内部から外部に亘って配置されている。リテーナスリーブ36は筒形状であり、リテーナスリーブ36は、シリンダ35と同心状に配置されている。シリンダケース34、シリンダ35及びリテーナスリーブ36は、打撃ケース15に対して中心線A1に沿った方向に位置決め及びされている。シリンダケース34は、打撃ケース15に対して径方向に位置決めされている。リテーナスリーブ36は、筒形状である。リテーナスリーブ36は、先端工具11を支持する支持部材である。
【0021】
中間子42が、リテーナスリーブ36及びシリンダ35内に亘って設けられている。中間子42は中心線A1に沿った方向に移動可能であり、かつ、金属製である。中間子42は先端工具11に接触したり離れたりすることができる。中間子42は軸形状であり、かつ、大径部43を有する。中間子42内に環状のテーパ面39が設けられ、大径部43がテーパ面39に接触すると、中間子42は先端工具11に近づく向きで中心線A1に沿った方向に移動できない。
【0022】
図2に示すピストン44が、シリンダ35の内部に設けられている。ピストン44は、中心線A1に沿った方向に往復動作が可能である。シール部材としてのOリング65が、ピストン44の外面に取り付けられている。Oリング65は、ゴム製であり、Oリング65がシリンダ35の内周面に接触してシール面を形成する。ピストン44は、図1のように、コネクティングロッド29と連結されている。回転軸25の回転力がクランクシャフト28に伝達されると、ピストン44はシリンダ35内で往復動作する。
【0023】
図2に示す打撃部45が、シリンダ35内に設けられている。打撃部45は、中心線A1に沿った方向でピストン44と中間子42との間に配置されている。打撃部45は金属製であり、打撃部45は中心線A1に沿った方向に移動可能である。シール部材としてのOリング46が、打撃部45の外面に取り付けられており、Oリング46がシリンダ35の内周面に接触してシール面を形成する。
【0024】
圧力室B1がシリンダ35の内部に設けられている。圧力室B1は、打撃部45とピストン44との間に位置する。ピストン44が動作して圧力室B1の圧力が上昇すると、中心線A1に沿った方向の付勢力、つまり、打撃力が打撃部45に加わる。打撃部45が作動すると中間子42を打撃し、中間子42が受けた打撃力は、先端工具11に伝達される。
【0025】
図5のように、第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48が、シリンダ35を径方向に貫通して設けられている。第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48は、共にシリンダ35の内部につながる。また、空間C1が、シリンダ35とシリンダケース34との間に設けられている。第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48は、空間C1につながる。
【0026】
第1呼吸孔47は、打撃部45による“空打ち”を防止するために設けられている。打撃部45による“空打ち”の意味は、後述する。第1呼吸孔47は、中心線A1に沿った方向でリテーナスリーブ36と第2呼吸孔48との間に設けられている。第1呼吸孔47の平面形状は円形である。第1呼吸孔47は、図4のように、シリンダ35の円周方向に間隔をおいて複数設けられていてもよい。第2呼吸孔48は、圧力室B1の空気圧を調整する役割を果たす。第2呼吸孔48は、シリンダ35の円周方向に間隔をおいて複数設けられていてもよい。第2呼吸孔48は、開口部48Aを有する。開口部48Aは、第2呼吸孔48のうち、シリンダ35の外周面35Aに開口された部位である。開口部48Aの内面は、シリンダ35の外周面35Aに近づくことに伴い拡大されたテーパを有する。開口部48Aの平面形状は、円形である。
【0027】
図2のように、ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51が、シリンダケース34内に設けられている。ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51は、中心線A1に沿った方向でシリンダ35とリテーナスリーブ36との間に設けられている。ダンパ50はゴム製であり、ダンパホルダ49及びワッシャ51は金属製である。ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51は共に環状である。中間子42の一部は、ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51内に配置されている。ダンパ50は、中心線A1に沿った方向でダンパホルダ49とワッシャ51との間に配置されている。中間子42の大径部43は、中心線A1に沿った方向でワッシャ51とテーパ面39との間に配置されている。
【0028】
作業者は、ハンマドリル10を次のように使用可能である。ここでは、重力の作用方向、つまり、鉛直方向で、中間子42が先端工具11よりも上に位置する状態で、ハンマドリル10を使用する例を説明する。なお、図1図2及び図3に示す中心線A1は、鉛直方向に沿って配置されているものとして説明する。作業者がハンドル部18を掴んでハンマドリル10を持ち、図2のように先端工具11を対象物12に押し付けると、押し付け力に対する反力は中間子42に伝達され、大径部43がワッシャ51に押し付けられて先端工具11及び中間子42が停止する。
【0029】
また、先端工具11を対象物12に押し付けた状態で、Oリング46がシリンダ35の内周面に接触する位置は、図2のように、中心線A1に沿った方向で第1呼吸孔47とピストン44との間である。このため、Oリング46は、圧力室B1と第1呼吸孔47とを遮断する。さらに、Oリング65がシリンダ35の内周面に接触する位置は、ピストン44の位置に関わりなく、中心線A1に沿った方向で第2呼吸孔48とクランクシャフト28との間である。
【0030】
作業者がトリガ21を操作してトリガスイッチ22がオンされ、電動モータ17の回転軸25が回転すると、ピストン44は中心線A1に沿った方向に往復動作する。変換機構77は、回転軸25の回転力を、ピストン44の往復作動力に変換する。ピストン44がリテーナスリーブ36から離れる向きで動作すると、圧力室B1内の圧力が空間C1の圧力よりも低くなり、空間C1の空気は第2呼吸孔48を通り圧力室B1に吸い込まれる。また、ピストン44がリテーナスリーブ36から離れた時期よりも遅れて、打撃部45がリテーナスリーブ36から離れる。
【0031】
ピストン44は、リテーナスリーブ36から最も離れた位置、つまり上死点に到達した後、ピストン44はリテーナスリーブ36に近づく向きで動作する。ピストン44がリテーナスリーブ36に近づく行程で、圧力室B1の空気の一部は、第2呼吸孔48を通り空間C1に排出される。Oリング65が圧力室B1と第2呼吸孔48とを遮断した時点において、圧力室B1内の空気圧が初期圧力である。ピストン44が更にリテーナスリーブ36に近くづくと、圧力室B1の空気圧が、初期圧力から上昇する。
【0032】
打撃部45は、圧力室B1の圧力の上昇により、リテーナスリーブ36に近づく向きで移動し、かつ、打撃部45は中間子42に打撃力を付加する。中間子42が受けた打撃力は、先端工具11に伝達され、先端工具11は対象物12を破砕する。ピストン44がリテーナスリーブ36に最も近づいた位置、つまり、下死点に到達した後、ピストン44はリテーナスリーブ36から離れる向きで動作する。圧力室B1の最高圧は、第2呼吸孔48がOリング65で閉じられた時点から、ピストン44が下死点に到達するまでの移動量、及び中心線A1に対して垂直な平面内における圧力室B1の面積に応じて定まる。つまり、中心線A1に沿った方向における第2呼吸孔48の位置は、圧力室B1の最高圧を決定する要因の1つである。その意味で、第2呼吸孔48は、圧力室B1の圧力を調整する役割を果たす。電動モータ17の回転軸25が回転されている間、ピストン44が中心線A1に沿った方向に往復動作され、打撃部45は中間子42へ間欠的に打撃力を付加する。
【0033】
作業者が、図3のように先端工具11を対象物12から離間させると、中間子42は自重で中心線A1に沿った方向に移動し、大径部43がテーパ面39に接触して中間子42が停止する。また、打撃部45は、圧力室B1の圧力で中間子42に接触して停止する。打撃部45が図3の位置で停止すると、Oリング46は中心線A1に沿った方向で第1呼吸孔47とリテーナスリーブ36との間において、シリンダ35の内周面に接触する。このため、圧力室B1は、第1呼吸孔47に接続される。
【0034】
圧力室B1が第1呼吸孔47に接続されていると、電動モータ17が回転し、かつ、ピストン44が往復動作しても、圧力室B1の空気は第1呼吸孔47から空間C1に排出される。このため、圧力室B1の圧力が急激に上昇することはない。したがって、先端工具11が対象物12から離間されている状態で、打撃部45が中間子42を打撃すること、つまり、“空打ち”を防止できる。
【0035】
作業者が、図2のように先端工具11を対象物12に押し付け、かつ、打撃部45が中間子42を打撃した場合の反力は、ワッシャ51、ダンパ50、ダンパホルダ49、シリンダ35及びストッパリング53を経由してハウジング13に伝達される。また、ピストン44がシリンダ35内で往復動作すると、シリンダ35の往復動による慣性力は、コネクティングロッド29、ピン33、クランクシャフト28及び軸受30を経由してハウジング13に伝達される。したがって、ハウジング13は、中心線A1に沿った方向に振動する。
【0036】
振動低減機構54は、ハウジング13の振動を抑制可能である。振動低減機構54は、空間C1に設けられている。空間C1は、シリンダケース34の内部であり、かつ、シリンダ35の外部である。振動低減機構54の具体例は、次のようなものを含む。
【0037】
(第1具体例)
振動低減機構54は、図2図3及び図5のように、質量体55及びコイルスプリング56,57を有する。コイルスプリング56,57は、共に線材が螺旋状に巻かれた圧縮コイルスプリングである。コイルスプリング56,57は、金属製、一例として鋼製である。コイルスプリング56,57は、シリンダ35の径方向でシリンダ35よりも外側に配置されている。つまり、コイルスプリング56,57は、シリンダ35を囲む螺旋状に配置されている。コイルスプリング56,57は、中心線A1に沿った方向で伸縮可能である。コイルスプリング56を構成する線材56Aの断面形状、及びコイルスプリング57を構成する線材56Aの断面形状は、共に円形である。線材56Aの直径D1と、線材57Aの直径D1が、一例として同一である。コイルスプリング56,57のバネ定数は、一例として同一である。開口部48Aの最大内径D2は、直径D1より大きい。
【0038】
質量体55は、中心線A1を中心とする径方向で、シリンダ35より外側に配置されている。質量体55は、シリンダ35に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。質量体55は、金属製、一例として鋼製である。質量体55は、円筒部58と、円筒部58の内面から内側に向けて突出された突出部60と、を有する。突出部60は、中心線A1に沿った方向で円筒部58の略中央に設けられている。中心線A1に沿った方向で、円筒部58において突出部60の片側に位置する箇所の長さL4は、突出部60の長さL5より大きい。突出部60は、円筒部58の全周に亘って設けられている。突出部60は、内向きフランジまたはリブとして定義することも可能である。円筒部58の内周面58Aの内径D3は、突出部60の内径D4より大きい。つまり、突出部60の内径D4は、シリンダ35の径方向における質量体55の内径のうち、最小である。シリンダ35の径方向における突出部60の長さL6は、直径D1より小さい。
【0039】
コイルスプリング56,57は、一例として外径D5が同一である。円筒部58の内径D3は、コイルスプリング56,57の外径D5以上である。円筒部58は、コイルスプリング56,57の径方向で、コイルスプリング56,57の外側に設けられている。突出部60の内径D4は、コイルスプリング56,57の外径D5より小さい。突出部60の内径D4は、シリンダ35の外径D6より大きい。突出部60は、中心線A1に沿った方向でコイルスプリング56とコイルスプリング57との間に設けられている。つまり、コイルスプリング56とコイルスプリング57とが、中心線A1に沿った方向で異なる位置に配置されている。コイルスプリング56,57は、突出部60へ押し付けられている。円筒部58とシリンダケース34の内周面34Aとの間に、シリンダ35の径方向の隙間70が設けられている。隙間70は、中心線A1を中心とする環状の空間である。内周面34Aの内径D11は、円筒部58の外径D8より大きい。
【0040】
シリンダ35の外周面35Aと、突出部60の内周面60Aとの間に隙間66が設けられている。隙間66は、中心線A1を中心とする環状の空間である。隙間66は、シリンダ35の径方向の長さL1を有する。円筒部58の内周面58Aと、コイルスプリング56,57の外周端とは、シリンダ35の径方向の隙間67を隔てて配置されている。隙間67は、シリンダ35の径方向における長さL2を有する。長さL1は、長さL2より大きい。さらに、シリンダ35の外周面35Aと、コイルスプリング56,57との間に、隙間69がそれぞれ設けられている。隙間69は、シリンダ35の径方向の長さL3を有する。長さL1,L2,L3は、
L1>L2+L3
の関係にある。
【0041】
なお、コイルスプリング56,57は、シリンダ35の径方向に移動される可能性がある。また、質量体55がコイルスプリング56,57に対してシリンダ35の径方向に移動させる可能性がある。このため、長さL1,L2は共に変動する可能性がある。この場合、長さL1の最小値は、長さL2の最大値より大きい。
【0042】
シリンダケース34の内周にスナップリング61が取り付けられており、コイルスプリング56は、中心線A1に沿った方向で、質量体55の突出部60とスナップリング61との間に配置されている。シリンダケース34内に環状のプレート62が設けられている。コイルスプリング57は、中心線A1に沿った方向で、質量体55の突出部60とプレート62と間に配置されている。プレート62とダンパホルダ49との間にリング63が配置されている。シリンダ35の中心線A1に沿った方向における両端は、ストッパリング53内、及びリング63内にそれぞれ配置されている。シリンダ35は、ストッパリング53及びリング63により、シリンダ35の径方向に位置決めされている。
【0043】
コイルスプリング56,57は、共に中心線A1に沿った方向の圧縮力を受けた状態で、空間C1内に配置されている。コイルスプリング56,57は、中心線A1に沿った方向で、質量体55の突出部60の両側に設けられている。コイルスプリング56は、質量体55をリテーナスリーブ36に近づける向きで付勢する。コイルスプリング57は、質量体55をリテーナスリーブ36から離す向きで付勢する。
【0044】
振動低減機構54の作用を説明する。ハウジング13が中心線A1に沿った方向に振動していない場合、質量体55は中心線A1に沿った方向の所定位置で停止されている。ハウジング13が中心線A1に沿った方向に振動すると、質量体55はハウジング13が振動する向きとは逆の位相で移動する。例えば、ハウジング13が対象物12から離れる向きに振動すると、質量体55はコイルスプリング57の付勢力に抗してリテーナスリーブ36に近づく向きで移動する。
【0045】
これに対して、ハウジング13が対象物12に近づく向きで振動すると、質量体55はコイルスプリング56の付勢力に抗してリテーナスリーブ36から離れる向きで移動する。ハウジング13が振動する向きと、質量体55が移動する向きとが逆であり、ハウジング13の振動が抑制される。
【0046】
質量体55の円筒部58は、シリンダ35の径方向でコイルスプリング56,57より外側に配置されている。また、突出部60の長さL6は、直径D1より小さい。このため、質量体55の円筒部58及び突出部60が、シリンダ35に接触することを防止できる。特に、突出部60とシリンダ35の外周面35Aとが、シリンダ35の全周に亘って非接触であることにより、隙間66が設けられている。したがって、質量体55が、第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48を塞ぐことを防止できる。
【0047】
さらに、質量体55が第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48を塞ぐことのないように、質量体55が中心線A1に沿った方向に移動する範囲を規制せずに済む。したがって、振動低減機構54の機能低下を抑制できる。また、質量体55が中心線A1に沿った方向に移動する範囲を規制する部材を設けずに済む。したがって、部品点数の増加を抑制できる。さらに、隙間66が設けられているため、質量体55が、シリンダ35の外周面35Aに沿って摺動することを防止できる。したがって、質量体55またはシリンダ35の少なくとも一方が摩耗することを抑制でき、かつ、異音が発生することを抑制できる。
【0048】
さらに、開口部48Aの最大内径D2及び、第1呼吸孔47の内径D10は、直径D1より大きい。したがって、コイルスプリング56,57が、開口部48Aまたは第1呼吸孔47の少なくとも一方を塞ぐことを防止できる。
【0049】
さらに、コイルスプリング56は、スナップリング61とコイルスプリング56との接触箇所の摩擦力により、シリンダ35の径方向に位置決めされている。コイルスプリング57は、プレート62とコイルスプリング57との接触箇所の摩擦力により、シリンダ35の径方向に位置決めされている。コイルスプリング56,57の外周端が、質量体55の円筒部58の内周面58Aに接触することにより、コイルスプリング56,57は、質量体55をシリンダ35の径方向に位置決め、例えば、固定している。このため、質量体55が、シリンダ35の径方向に移動することが抑制され、隙間70が確保される。したがって、円筒部58が、シリンダケース34の内周面34Aに接触することを抑制できる。
【0050】
図6は、図5に示す質量体55の一部を変更した例である。中心線A1に沿った方向で、円筒部58において突出部60の片側に位置する箇所の長さL8は、突出部60の長さL7より小さい。長さL8は、直径D1より小さい。図6に示す振動低減機構54の他の構成は、図5に示す振動低減機構54の構成と同じである。図6に示す振動低減機構54は、図5に示す振動低減機構54と同じ効果を得ることができる。
【0051】
(第2具体例)
図2における振動低減機構54の第2具体例は、図7に示されている。質量体55は、円筒部58と、円筒部58の外周面58Bから突出された突出部68と、を有する。円筒部58は、シリンダ35の径方向で、シリンダ35と、コイルスプリング56,57との間に配置されている。つまり、コイルスプリング56,57は、シリンダ35の径方向で円筒部58の外側に設けられている。
【0052】
円筒部58の内周面58Aの内径D12は、シリンダ35の外径D6より大きい。内径D12は、質量体55のうち最小内径である。円筒部58とシリンダ35の外周面35Aとの間に、シリンダ35の径方向の隙間71が設けられている。隙間71は、中心線A1を中心とする環状の空間である。突出部68は、円筒部58の外面から突出され、かつ、円筒部58の全周に亘って設けられている。突出部68は、中心線A1に沿った方向で円筒部58の中途部位に設けられている。突出部68は、外向きフランジまたはリブと定義可能である。中心線A1に沿った方向で、円筒部58において突出部60の片側に位置する箇所の長さL9は、突出部60の長さL10より大きい。
【0053】
突出部68の外径D7は、円筒部58の外径D8より大きい。円筒部58の外径D8は、コイルスプリング56,57の内径D9より小さい。突出部68の外径D7は、コイルスプリング56,57の内径D9より大きく、かつ、コイルスプリング56,57の外径D5より小さい。外径D5は、内径D11より小さい。突出部68は、中心線A1に沿った方向でコイルスプリング56とコイルスプリング57との間に設けられている。コイルスプリング56,57は、突出部68へ押し付けられている。突出部68とシリンダケース34の内周面34Aとの間に、隙間72が設けられている。隙間72は、中心線A1を中心とする環状の空間である。
【0054】
図7に示す振動低減機構54の他の構成は、図5に示す振動低減機構54の構成と同じである。図7に示す振動低減機構54は、図5に示された振動低減機構54と同様の原理により、ハウジング13の振動を抑制する。コイルスプリング56は、スナップリング61との接触箇所の摩擦力により、シリンダ35の径方向に移動することが抑制されている。コイルスプリング57は、プレート62との接触箇所の摩擦力により、シリンダ35の径方向に移動することが抑制されている。
【0055】
コイルスプリング56,57の内周端が、円筒部58の外周面58Bに接触することにより、質量体55が、シリンダ35の径方向に位置決めされている。シリンダ35の外周面35Aと、円筒部58とが非接触であり、シリンダ35の外周面35Aと円筒部58との間に、環状の隙間71が設けられている。このため、質量体55が、第1呼吸孔47または第2呼吸孔48の少なくとも一方を塞ぐことを抑制できる。したがって、図5の振動低減機構54と同様の効果を得ることができる。また、質量体55の円筒部58は、シリンダ35の径方向でコイルスプリング56,57の内側に配置されている。突出部68の外径D7は、コイルスプリング56,57の外径D5未満である。突出部68は、内周面34Aに対して非接触であり、隙間72が設けられている。したがって、質量体55の突出部68が、シリンダケース34の内周面34Aに接触することを防止できる。
【0056】
(第3具体例)
図2における振動低減機構54の第3具体例は、図8に示されている。質量体55は、円筒部58と、円筒部58から突出された突出部60と、を有する。突出部60は、円筒部58のうち、中心線A1に沿った方向でプレート62に最も近い箇所に設けられている。円筒部58の内周面58Aに保持溝58Cが設けられている。保持溝58Cは、内周面58Aの全周に亘って螺旋状に設けられている。コイルスプリング56の一部は、シリンダ35の径方向でシリンダ35と円筒部58との間に設けられている。コイルスプリング56の外周端は、保持溝58Cに位置している。質量体55は、コイルスプリング56から外れることが無い。コイルスプリング56のうち、中心線A1に沿った方向でプレート62に最も近い端部は、シリンダ35の径方向及び中心線A1に沿った方向に移動しないように固定されている。
【0057】
図8に示された振動低減機構54は、コイルスプリング57を備えていない。図8に示された振動低減機構54の他の構成は、図5に示された振動低減機構54の構成と同じである。図8に示す振動低減機構54は、コイルスプリング57に基づく作用以外、図5に示された振動低減機構54と同様の原理により、ハウジング13の振動を抑制する。したがって、図5に示された振動低減機構54と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第4具体例)
図2における振動低減機構54の第4具体例は、図9に示されている。質量体55は、円筒部58と、円筒部58から突出された突出部60と、を有する。突出部60は、円筒部58のうち、中心線A1に沿った方向でプレート62から最も離間した箇所に設けられている。円筒部58の内周面58Aに保持溝58Cが設けられている。保持溝58Cは、内周面58Aの全周に亘って螺旋状に設けられている。コイルスプリング57の一部は、シリンダ35の径方向で円筒部58と円筒部58との間に設けられている。コイルスプリング57の外周端は、保持溝58Cに位置している。質量体55は、コイルスプリング57から外れることが無い。
【0059】
コイルスプリング57のうち、中心線A1に沿った方向で、図2のリング63に最も近い端部は、シリンダ35の径方向、及び中心線A1に沿った方向に移動しないように固定されている。図9に示された振動低減機構54は、コイルスプリング56を備えていない。図8に示された振動低減機構54の他の構成は、図5に示された振動低減機構54の構成と同じである。図9に示す振動低減機構54は、コイルスプリング56に基づく作用以外、図5に示された振動低減機構54と同様の原理により、ハウジング13の振動を抑制する。したがって、図5に示された振動低減機構54と同様の効果を得ることができる。
【0060】
[補足説明]
実施形態で説明された事項の技術的意味の一例は、次の通りである。ハンマドリル10は、作業機の一例である。シリンダ35は、筒状のシリンダの一例である。中心線A1は、シリンダの中心線の一例である。打撃部45は、打撃部の一例である。圧力室B1は、気体室の一例である。第1呼吸孔47、第2呼吸孔48及び開口部48Aは、共に呼吸孔の一例である。質量体55は、質量体の一例である。コイルスプリング56,57は、弾性部材の一例である。電動モータ17は、駆動源の一例である。ピストン44は、ピストンの一例である。シリンダケース34は、筒状のケースの一例である。円筒部58は、筒部の一例である。突出部60,68は、共に突出部の一例である。リテーナスリーブ36は、工具保持部の一例である。先端工具11は、工具の一例である。
【0061】
隙間66,71は、第1隙間の一例である。長さL4,L8は、“筒部の中心線方向における長さ”の一例である。長さL5,L7は、“突出部の中心線方向における長さ”の一例である。隙間67は、第2隙間の一例である。長さL2は、筒部と弾性部材との間に設けられる隙間の長さの一例である。隙間69は、第3隙間の一例である。長さL3は、シリンダと弾性部材との間に設けられる隙間の長さの一例である。
【0062】
内周面58Aは、筒部の内周面の一例である。外周面35Aは、シリンダの外周面の一例である。外周面58Bは、筒部の外周面の一例である。第1呼吸孔47は、第1呼吸孔の一例である。線材56A,57Aは、線材の一例である。線材56A,57Aの直径D1は、線材の直径の一例である。内径D10は、第1呼吸孔の内径の一例である。第2呼吸孔48及び開口部48Aは、第2呼吸孔の一例である。最大内径D2は、第2呼吸孔の開口径の一例である。突出部60は、小径部の一例である。内径D4は、小径部の内径の一例である。図7に示された円筒部58は、小径部の一例である。内径D12は、小径部の内径の一例である。
【0063】
実施形態には、次の構成を有する作業機も開示されている。
【0064】
ハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられた筒状のシリンダと、前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記シリンダの中心線方向に往復動されるピストンと、前記ハウジングの内部に設けられた駆動源と、前記駆動源の回転力をピストンの往復作動力に変換する変換機構と、前記シリンダの内部に設けられ、かつ、前記中心線方向に作動可能な打撃部と、前記シリンダの内部で前記ピストンと前記打撃部との間に設けられ、かつ、前記打撃部に前記中心線方向の作動力を加える気体室と、前記シリンダを径方向に貫通し、前記シリンダの内部と前記シリンダの外部とをつなぐ呼吸孔と、を有する作業機であって、前記シリンダの外部に設けられ、かつ、前記中心線方向に移動可能な質量体と、前記シリンダの外部に設けられて前記質量体を前記中心線方向に移動可能に支持し、かつ、前記質量体と前記シリンダとの間に前記径方向の隙間を形成する弾性部材と、を有する、作業機。
【0065】
作業機は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、作業機は、工具保持部が図1のように、中心線を中心として回転しないもの、または、中心線を中心として回転可能なもの、の何れでもよい。工具保持部が、中心線を中心として回転可能な作業機の一例は、特開2019-177459号公報に開示されている。作業機は、ハンマドリルまたはハンマドライバの何れでもよい。作業機は、電動モータの回転軸の中心線と、シリンダの中心線とが、図1のように互いに交差しているもの、または、電動モータの回転軸の中心線と、シリンダの中心線とが平行に配置されているもの、何れでもよい。電動モータの回転軸の中心線と、シリンダの中心線とが平行に配置されている作業機の一例は、特開2019-177459号公報に開示されている。駆動源の回転力をピストンの往復作動力に変換する変換機構は、図1に示されたクランク機構に代えて、カム機構でもよい。カム機構で構成される変換機構の一例は、特開2019-177459号公報に記載されている。
【0066】
工具保持部は、リテーナスリーブに代えて、チャック、ホルダ、ボックス、エクステンション、アンビルと呼ばれるものでもよい弾性部材は、圧縮コイルスプリングに代えて、引張コイルスプリングであってもよい。質量体をシリンダの径方向に位置決めする弾性部材は、ケース内でシリンダの径方向に移動しないように固定されている。
【0067】
弾性部材を固定する構造は、溶接、ハンダ付け、ホルダなどがある。ホルダは、中心線を中心として環状、または、円周方向に間隔をおいて設けられている。弾性部材は、ホルダに接触することで、シリンダの径方向に移動することが防止される。電動モータに電力を供給する電源部は、交流電源または直流電源の何れでもよい。直流電源は、ハウジングに取り付け及び取り外しが可能な電池パックを含む。駆動源は、電動モータに代えて、油圧モータ、空気圧モータ、エンジンの何れかを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…ハンマドリル、11…先端工具、17…電動モータ、34…シリンダケース、35…シリンダ、35A…外周面、36…リテーナスリーブ、44…ピストン、45…打撃部、47…第1呼吸孔、48…第2呼吸孔、48A…開口部、55…質量体、56,57…コイルスプリング、56A,57A…線材、58…円筒部、58A…内周面、58B…外周面、60,68…突出部、66,69,71…隙間、A1…中心線、B1…圧力室、D1…直径、D2…最大内径、D4,D10,D12…内径、L1,L2,L3,L4,L5,L7,L8…長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9