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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020062954
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160480
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青沼 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 一輝
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015412(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128443(WO,A1)
【文献】特開2019-120737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0266985(US,A1)
【文献】特開2006-079978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00 -37/06
B60R 9/00 -11/06
G02F 1/133 - 1/1335
1/13363
1/1339 - 1/1341
1/1347
G09F 9/00
G09G 3/00 - 3/08
3/12
3/16
3/19 -3/26
3/30
3/34
3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)に搭載される車載用表示装置(1)であって、
湾曲した曲面形状のディスプレイ(21)と、
前記ディスプレイのうち映像を表示する側の面である映像表示面(21a)に重ねて配置されるレンズフィルム(22)と、
前記ディスプレイの表示制御を行う制御部(4)と、を備え、
前記ディスプレイは、前記映像表示面が前記車両のウィンドシールド(WS)の反対側に面し、かつ一端(211)側が固定されると共に、他端(212)側が前記一端側よりも前記ウィンドシールドに近い配置とされており、
前記映像表示面における映像表示領域のうち前記他端側の端部を含み、前記他端側から前記一端側に向かう途中までの一部の領域を特定領域とし、前記ディスプレイの映像光のうち前記映像表示面に対する法線方向に向かう光線を主光線として、
前記レンズフィルムは、基部(221)と、前記基部の一面上に繰り返し並べて形成された複数のレンズ部(222)とを備えるとともに、前記特定領域を含む前記映像表示面の全域を覆うと共に、前記特定領域における前記映像光の主光線を前記ウィンドシールドとは反対側に向かう方向に所定の角度(θ1)だけ屈折させ、
複数の前記レンズ部は、前記特定領域を覆う部分にのみ形成されている、車載用表示装置。
【請求項2】
記レンズ部は、前記レンズフィルムのうち前記ディスプレイと向き合う他面(22b)に対して傾いた面であって、前記主光線を屈折させるフレネルレンズ面として作用する傾斜面(222a)を備え
前記レンズフィルムのうち前記ディスプレイと向き合う面と前記傾斜面とのなす角度を傾斜角度(θ4)として、複数の前記レンズ部は、前記特定領域における位置に応じて異なる前記傾斜角度とされている、請求項1に記載の車載用表示装置。
【請求項3】
前記ディスプレイは、発光色の異なる複数の副画素(SP1~SP3)によりなる複数の主画素(MP)が前記映像表示面に沿って繰り返し配列されてなり、
複数の前記主画素のうち前記特定領域に配置される前記主画素を特定主画素とし、前記特定主画素を構成する複数の前記副画素のうち前記レンズフィルムを介することで収差が生じる前記副画素を収差副画素として、
前記制御部は、前記特定主画素を構成する複数の前記副画素のうち前記収差副画素とは異なる前記副画素と、他の前記特定主画素を構成する複数の前記副画素のうち前記収差副画素と同じ発光色の前記副画素とを組み合わせた1つの主画素として用いることにより収差を補正する制御を実行する、請求項1または2に記載の車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明部材を有する自動車等の移動体に搭載され、当該透明部材における映像映りを低減可能な車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においてウィンドシールドの近傍に各種映像を表示する表示部が搭載され、各種映像を乗員に提示する車載用途の表示装置が知られている。この種の表示装置では、表示部による光の一部がウィンドシールドに投射され、その反射光が乗員の眼に入射すると、ウィンドシールドに表示部の映像が表示されて見えてしまうこと(以下「窓映り」という)がある。この窓映りが生じると、乗員がウィンドシールド前方の光景を見づらくなり、安全上好ましくない。このような窓映りを抑制可能な表示装置としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の表示装置は、車両のインストルメントパネルに搭載される立体表示器と、当該立体表示器の上方であって、当該立体表示器とウィンドシールドとの間に配置されるルーバーとを備える。このルーバーは、表示部の表示面に対して平行に配置される複数の羽板を有し、ウィンドシールドの前方からの外光が乗員の眼に届くようにしつつ、表示部の光がウィンドシールドに投射されることを妨げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-326409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、近年、この種の表示装置では、意匠性や搭載性等の観点から、表示部が可撓性を有するフレキシブルディスプレイとされることが検討されている。表示部が曲面形状とされた場合、表示部の光がより広範囲に拡散するため、より窓映りが発生し易くなることが懸念される。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の表示装置のようにルーバーを用いることも考えられるが、表示部が曲面形状の場合、その一部の光がウィンドシールドに投射されることを防ぎきれず、窓映りを抑制できないおそれがある。また、ルーバーを構成する羽板を表示部の曲面形状に合わせてその配置を変更すると、製造コストが増大すると共に、ウィンドシールド前方の視界確保と窓映り抑制との両立が難しくなる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、所定の曲面形状とされたディプレイを備える車載用表示装置において、ディスプレイとウィンドシールドとの間にルーバーのような光遮蔽物を配置することなく、ウィンドシールドにおける窓映りを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車載用表示装置は車両(V)に搭載される車載用表示装置(1)であって、湾曲した曲面形状のディスプレイ(21)と、ディスプレイのうち映像を表示する側の面である映像表示面(21a)に重ねて配置されるレンズフィルム(22)と、ディスプレイの表示制御を行う制御部(4)と、を備え、ディスプレイは、映像表示面が車両のウィンドシールド(WS)の反対側に面し、かつ一端(211)側が固定されると共に、他端(212)側が一端側よりもウィンドシールドに近い配置とされており、映像表示面における映像表示領域のうち他端側の端部を含み、他端側から一端側に向かう途中までの一部の領域を特定領域とし、ディスプレイの映像光のうち映像表示面に対する法線方向に向かう光線を主光線として、レンズフィルムは、基部(221)と、基部の一面上に繰り返し並べて形成された複数のレンズ部(222)とを備えるとともに、特定領域を含む映像表示面の全域を覆うと共に、特定領域における映像光の主光線をウィンドシールドとは反対側に向かう方向に所定の角度(θ1)だけ屈折させ、複数のレンズ部は、特定領域を覆う部分にのみ形成されている。
【0009】
これによれば、曲面形状のディスプレイのうち一端側よりもウィンドシールドWSに近い他端側を含む特定領域において、映像光のうち映像表示面に対する法線方向に向かう主光線がウィンドシールドWSから離れるように屈折する構成となる。そのため、レンズフィルムを有さない場合に比べて、特定領域における映像光の主光線がウィンドシールドWSに反射して乗員のアイポイントに入射することが低減される。これにより、ディスプレイとウィンドシールドとの間に光遮蔽物を配置することなく、ウィンドシールドにおける窓映りが低減される。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の車載用表示装置が車両に搭載された様子を示す図である。
図2】表示部の構成例を示す図である。
図3】レンズフィルムの構成例を示す図である。
図4】レンズフィルムおよびディスプレイの一部を拡大したものであって、レンズ部によるディスプレイの映像光の屈折について説明するための図である。
図5】ディスプレイ上のレンズフィルムの配置範囲の算出を説明するための図である。
図6】レンズフィルム全体による特定領域の主光線の屈折を示す模式図である。
図7】第2実施形態の車載用表示装置において制御部が実行する駆動制御を説明するための図である。
図8】第2実施形態におけるディスプレイの形状例とディスプレイの視認距離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の車載用表示装置1について、図1図4を参照して説明する。本実施形態の車載用表示装置1は、例えば図1に示すように、表示部2が車両Vのインストルメントパネルに搭載され、センターインフォメーションディスプレイ(CID)や車両速度や回転数等を表示するメータ表示装置等として用いられると好適である。本明細書では、車載用表示装置1がCIDとして用いられる場合を代表例として説明するが、この代表例に限定されるものではなく、他の用途にも採用され得る。
【0014】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、車両Vの車両全長方向に沿った方向のうち車室側からウィンドシールドWSに向かう方向を「前」、その反対方向を「後」、鉛直方向を「下」、鉛直方向の逆方向を「上」と、それぞれ称する。
【0015】
図1では、上記の「前」、「後」、「上」、「下」の各方向を矢印で示している。本明細書では、特に断りがない場合、「前」、「後」、「上」、「下」とは、図1の矢印で示す各方向を意味する。図4では、後述のレンズフィルム22の屈折作用を分かり易くするため、レンズフィルム22および後述のディスプレイ21の一部を拡大したものを示している。また、図4に示す「R」、「G」、「B」とは、それぞれディスプレイ21を構成する後述の主画素における赤(R)、緑(G)、青(B)の発光色の副画素を意味する。図4では、見易くするため、ディスプレイ21を構成する複数の主画素のうち1つのみを示し、他の画素群については省略している。
【0016】
車載用表示装置1は、例えば図1に示すように、所定の曲面形状とされた表示部2と、駆動回路3と、制御部4とを備える。車載用表示装置1は、例えば図2に示すように、表示部2がディスプレイ21と、ディスプレイ21のうち一部に表示される映像の主光線の角度を車両VのウィンドシールドWSから遠ざかるように曲げるレンズフィルム22とを有してなる。これにより、車載用表示装置1は、曲面形状とされた表示部2の映像がウィンドシールドWSを介して乗員のアイポイントEPに到達することが抑制され、ウィンドシールドWSでの窓映りが低減される構成となっている。
【0017】
表示部2は、例えば図2に示すように、ディスプレイ21と、透光性があり、ディスプレイ21のうち映像を表示する側の面である映像表示面21aの少なくとも一部を覆うレンズフィルム22とを備える。表示部2は、映像表示面21aが凸となるように湾曲した曲面形状で使用され、各種映像を表示する。
【0018】
ディスプレイ21は、可撓性のある任意のフレキシブルディスプレイであり、例えば、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイとされ得る。OLEDディスプレイは、例えば、ポリイミド等の樹脂材料やフレキシブルガラス等の可撓性のある任意の基板上に、TFT(薄膜トランジスタ)層とOLED層とがこの順に積層されてなる。TFT層は、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を備え、ゲート電極への印加電圧の調整によりソース/ドレイン電極間の電流のオンオフを制御可能な複数のTFT素子が平面方向に繰り返し配列されてなる。TFT層は、例えば、各TFT素子のドレイン電極がOLED素子を構成する一対の電極の少なくとも一方に接続され、OLED層の駆動制御に用いられる。OLED層は、例えば、一対の電極間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などが順次積層されてなり、電圧印加により発光する複数のOLED素子を有してなる。OLED層は、OLED素子で構成された、例えば赤色、緑色および青色の発光色の異なる3つの副画素を有してなる主画素が、平面視にてある一方向および当該一方向に直交する直交方向に沿って繰り返し配列されてなる。
【0019】
なお、OLED素子やTFT素子並びにOLEDディスプレイの構成やこれらを構成する材料などについては、公知であるため、本明細書ではそれらの詳細の説明を省略する。
【0020】
ディスプレイ21は、例えば図2に示すように、一端211側がインストルメントパネルV1に固定され、他端212側が一端211側よりもウィンドシールドWSに近づくように湾曲した形状で配置される。具体的には、ディスプレイ21は、例えば、映像表示面21aがウィンドシールドWSとは反対方向に面し、かつ上端(他端212)側が固定された下端(一端211)側よりも前方向に倒れるように湾曲した形状とされる。ディスプレイ21は、例えば、下端側の端部にTFT素子やOLED素子の電極に接続される図示しない給電配線の端子が形成されており、この図示しない端子と駆動回路3とを繋ぐようにFPCなどのフレキシブルな配線が接続されている。ディスプレイ21は、例えば、駆動回路3から入力される駆動信号に基づいて各種映像を表示する。
【0021】
以下、説明の便宜上、ディスプレイ21の映像表示面21aに対する法線方向を「映像面法線方向」と称し、ディスプレイ21の映像表示面21aにおける映像表示領域のうち映像面法線方向がウィンドシールドWSと交差する領域を「特定領域」と称する。また、ディスプレイ21の映像光のうち映像面法線方向に向かう光線を「主光線」と称し、他の方向に向かう光線を「副光線」と称することがある。
【0022】
レンズフィルム22は、例えば図2に示すように、ディスプレイ21の映像表示面21aのうち少なくとも特定領域を覆っており、ディスプレイ21の映像光を所定の方向に屈折させてその投射方向を変更する役割を果たす部材である。例えば、レンズフィルム22は、ディスプレイ21の上端を含む一部の領域に重ねて配置され、図示しないOCA(Optical Clear Adhesiveの略)等の光学接着剤によりディスプレイ21に貼り付けられる。レンズフィルム22は、例えば図3に示すように、透光性および可撓性のある基部221および基部221の一面において平面方向に沿って繰り返し形成されてなる複数のレンズ部222を備える、マイクロレンズフィルムとされる。
【0023】
以下、説明の便宜上、図3に示すように、レンズフィルム22のうちレンズ部222が形成されている面を「一面22a」と称し、一面22aとは反対面、すなわちディスプレイ21と向き合う面を「他面22b」と称する。また、図4に示すように、レンズ部222のうちディスプレイ21の映像光を屈折させる面を「傾斜面222a」と称する。
【0024】
基部221は、任意の光学樹脂材料、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アセテート樹脂などを用い、可撓性および透光性のある構成とされたフィルム基材とされる。基部221の一面には、複数のレンズ部222が繰り返し並べて形成されている。
【0025】
レンズ部222は、例えば図3に示すように、所定の間隔で繰り返し形成されている。レンズ部222は、例えば、外形に沿ったキャビティを有する図示しない金型に熱可塑性または紫外線硬化性のある光学樹脂材料を投入して熱または紫外線照射により硬化させた後に剥離するなどの任意の方法により形成される。レンズ部222は、ディスプレイ21の映像光のうち映像面法線方向に向かう主光線を所定の角度だけ曲げる役割を果たす。
【0026】
具体的には、レンズフィルム22は、例えば図4に示すように、ディスプレイ21からの映像光が他面22bに入光すると、レンズフィルム22内において当該映像光を全反射させ、レンズ部222の傾斜面222aにより所定の方向へ当該映像光を屈折させる。複数のレンズ部222は、それぞれがフレネルレンズのような構造となっており、フレネルレンズ面に相当する傾斜面222aが特定領域においてディスプレイ21の映像光を映像面法線方向とは異なる方向に屈折させる。複数のレンズ部222は、例えば図2に示すように、ディスプレイ21のうちウィンドシールドWSに向かうように湾曲した一端(この場合、固定されていない上端)側における主光線が映像面法線方向から所定の角度θ1だけ曲がるように設計される。言い換えると、レンズ部222は、特定領域における主光線をウィンドシールドWSから遠ざかる方向に投射させる役割を果たす。
【0027】
これは、湾曲したディスプレイ21の映像表示面21aのうちウィンドシールドWSを向く状態とされた一部の領域の映像光の主光線がウィンドシールドWSで正反射し、乗員のアイポイントEPに入射することを抑制し、窓映りを防ぐためである。このレンズ部222によるウィンドシールドWSへの窓映りの抑制およびレンズ部222の設計例については後述する。
【0028】
なお、レンズフィルム22は、図2に示すように特定領域のみを覆う例に限定されるものではなく、映像表示面21aの全域を覆ってもよい。レンズフィルム22は、映像表示面21aの全域を覆う場合には、例えば、基部221のうち特定領域に位置する部分のみにレンズ部222を備える構成とされる。さらに、上記では、基部221にレンズ部222を直接形成することでレンズフィルム22とした例について説明したが、レンズ部222を有する光学樹脂シートと別体のフレキシブルな透光基材とを貼り合わせることでレンズフィルム22とされてもよい。
【0029】
駆動回路3は、例えば、図示しない回路基板上にT-CONやROM、RAM等が搭載され、ディスプレイ21の駆動用ICを備える電子制御ユニットである。駆動回路3は、例えば図1に示すように、フレキシブル配線などを介して制御部4が接続されており、制御部4から映像信号が入力されたとき、当該映像信号に対応する駆動信号をディスプレイ21に出力する。駆動回路3は、例えば、ディスプレイ21近傍の任意の位置に配置される。
【0030】
制御部4は、例えば、図示しない回路基板上にCPUやROM、RAM等が搭載されてなる電子制御ユニットであり、ECU(Electronic Control Unitの略)とされる。制御部4は、例えば、図示しない他の車載センサや車載機器に接続され、当該他の車載センサや車載機器に対応する映像信号をディスプレイ21に出力し、ディスプレイ21の表示制御を行う。制御部4は、駆動回路3と同様に車両Vのうち任意の箇所に配置される。
【0031】
なお、車載センサとしては、例えば、測距センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、オイルセンサやシートベルトセンサなどが挙げられるが、これらに限定されない。車載機器としては、例えば、ナビゲーション装置、カーエアコン、車載カメラ、通信機器やオーディオ装置などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
以上が、本実施形態の車載用表示装置1の基本的な構成である。
【0033】
〔レンズ部の設計例〕
次に、ウィンドシールドWSへの窓映りを抑制するレンズ部222の設計例について、図5図6を参照して説明する。図5図6では、見易くするため、表示部2やウィンドシールドWS等を簡素化して示している。
【0034】
以下、説明の便宜上、図5、6に示すように、特定領域における映像光の主光線であって、レンズフィルム22で屈折させない場合に映像面法線に向かう光線を「光線L0」と称し、光線L0をレンズフィルム22で屈折させた場合の光線を「光線L1」と称する。また、光線L0と光線L1とのなす角度を「屈折角度θ1」と称する。
【0035】
レンズフィルム22がない場合、ディスプレイ21の特定領域における映像光の主光線、すなわち光線L0は、図6に示すように、ウィンドシールドWSで一部が反射し、アイポイントEPに入射してしまう。この場合、乗員には、特定領域に表示される映像がウィンドシールドWSに映って見えてしまい、車両Vの前方の視認性が低下する。
【0036】
レンズフィルム22は、レンズ部222により光線L0を屈折角度θ1でウィンドシールドWSとは反対方向に屈折させることで、ウィンドシールドWSで反射する映像光の割合を下げ、ウィンドシールドWSにおける窓映りを低減する。言い換えると、光線L1は、レンズ部222により光線L0よりも屈折角度θ1だけウィンドシールドWSから遠ざけられた方向に投射されることとなる。そのため、光線L1がウィンドシールドWSでその一部が反射したとしても、その反射光は、光線L0のウィンドシールドWSでの反射光に比べて、アイポイントEPから外れた領域に投射され、ウィンドシールドWSでの窓映りが生じなくなる。
【0037】
屈折角度θ1が大きくなるほど、光線L1のウィンドシールドWSに対する入射角が大きくなり、その反射光がアイポイントEPに入射しにくくなる。屈折角度θ1を所定以上とすることで、ウィンドシールドWSでの窓映りを低減することができる。なお、光線L1が直接アイポイントEPに入射してしまうと、映像の視認性が低下することが懸念されるため、屈折角度θ1については下限に加えて、直接アイポイントEPに入射しないように上限を設定することが好ましい。レンズフィルム22は、レンズ部222の光学設計により、上記した機能を発現する。
【0038】
レンズ部222は、例えば図6に示すように、アイポイントEPに対するディスプレイ21の配置、ディスプレイ21の曲率半径R、屈折角度θ1およびウィンドシールドWSの傾き角度θ2に応じて、その各種パラメータが決定される。ここでいうレンズ部222の各種パラメータとは、例えば、レンズフィルム22の位置に対する傾斜面222aのサイズ、配置や他面22bに平行な面に対する角度などの構造パラメータ、および屈折率などの物性パラメータを指す。
【0039】
具体的には、レンズ部222の各種パラメータは、例えば図6に示すように、アイポイントEPとディスプレイ21の一端211との直線距離X、およびディスプレイ21のうち特定領域における曲率半径Rを考慮して決定される。また、レンズ部222の各種パラメータの決定においては、上記の条件に加えて、車両Vの水平面に対するウィンドシールドWSの傾き角度θ2、およびディスプレイ21の配置を考慮する。
【0040】
より具体的には、直線距離X、ディスプレイ21の曲率半径R、およびウィンドシールドWSの傾き角度θ2に基づき、ディスプレイ21のうち窓映りが生じる領域(特定領域)を算出する。そして、算出した特定領域における窓映りを抑制するために必要な屈折角度θ1を算出し、屈折角度θ1を実現するためのレンズ部222の各種パラメータを決定する。
【0041】
ここで、特定領域の算出の一例について図5を参照して説明する。
【0042】
図5では、車両Vの水平面に対する法線方向であって、ディスプレイ21の映像表示面21aの上端を通る仮想直線を二点鎖線で示している。ここでいう「車両Vの水平面」(以下「車両水平面」という)とは、車両Vにおける鉛直方向を法線とする仮想平面を意味し、車両Vの地面に対する傾きにより変動する。
【0043】
以下、説明の便宜上、図5に示すように、車両水平面に対する法線であって、ディスプレイ21の映像表示面21aにおける他端212(上端)を通る仮想の直線を「仮想直線VL0」と称する。また、車両水平面上において車両Vの前後方向に沿った仮想の直線を「仮想直線VL1」と称し、仮想直線VL0、VL1の交点を「交点P」と称し、交点Pを通る仮想の直線であって、仮想直線VL0よりも後に位置するものを「仮想直線VL2」と称する。
【0044】
例えば図5に示すように、車両水平面上に曲率半径Rで湾曲したディスプレイ21が配置されている場合を想定し、光線L0による窓映りを生じる特定領域を算出する。このとき、特定領域は、例えば、断面視にて、ディスプレイ21の他端212(上端)を通る仮想直線VL0と仮想直線VL0を後方向に角度θ3だけ傾けた仮想直線VL2との間に位置する領域といえる。例えば、直線距離X=750mm、ディスプレイ21の曲率半径R=100mm、ウィンドシールドWSの傾き角度θ2=30°とすると、角度θ3はおよそ21°となる。この場合、レンズフィルム22は、他端212を含み、他端212から一端211に向かう途中の一部の領域であって、角度θ3=21°となる特定領域に配置されればよい。そして、特定領域においてウィンドシールドWSでの窓映りを抑制するための屈折角度θ1を適宜設定し、設定した屈折角度θ1を実現するためのレンズ部222の各種パラメータを決定する。
【0045】
なお、レンズフィルム22におけるレンズ部222の各種パラメータについては、例えば、Zemax Japan株式会社製の光学シミュレーションソフトなどの任意の光学計算ソフトを用いることで算出され得る。そして、例えば、シミュレーション計算に基づいて得られたレンズ部222の構造パラメータの設計値を反映した形状の金型を用意し、熱可塑性もしくは紫外線硬化性の光学樹脂を用いて成型することで所望の特性を備えるレンズフィルム22が得られる。
【0046】
また、所定の角度θ1は、ディスプレイ21上での位置に関係なく一定であってもよいし、湾曲したディスプレイ21では、その上端から下端側に向かうにつれて映像面法線方向の角度が変化するため、ディスプレイ21における場所に応じて変更されてもよい。例えば、所定の角度θ1は、レンズフィルム22に覆われた領域においてディスプレイ21の映像光が映像面法線方向とは異なる所定の方向に揃うように、ディスプレイ21上での位置に応じて変更されてもよい。この場合、複数のレンズ部222は、例えば図4に示すように傾斜面222aの他面22bに対する角度を傾斜角度θ4として、傾斜角度θ4がディスプレイ21上での位置に応じて異なる値となる。
【0047】
本実施形態によれば、ディスプレイ21のうち映像光の主光線がウィンドシールドWSに入射しやすい特定領域にレンズフィルム22が配置され、当該主光線がウィンドシールドWSとは反対方向に屈折させられる構成の車載用表示装置1となる。これにより、映像光のうち映像光法線方向に向かう主光線、すなわち最も輝度が高くなる方向の光がウィンドシールドWSを介して乗員のアイポイントEPに入射することが抑制される。そのため、ディスプレイ21とウィンドシールドWSとの間にルーバーのような別体の光遮蔽物を配置することなく、ウィンドシールドWSでの窓映りを低減できる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態の車載用表示装置1について、図7図8を参照して説明する。
【0049】
図7では、見易くするため、後述する主画素MP同士の境界を便宜的に破線で示すと共に、断面を示すものではないが、一部の副画素SP1~SP3にハッチングを施している。図8では、図1に対応する「上」、「下」、「前」、「後」の各方向を矢印で示すと共に、ディスプレイ21全体が平板形状であるとした場合における映像表示面21aの位置を破線で示している。
【0050】
本実施形態の車載用表示装置1は、窓映りを抑制するレンズフィルム22により色収差が生じる場合には、制御部4によるディスプレイ21の駆動制御により色収差を抑制する点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、これらの相違点について主に説明する。
【0051】
レンズフィルム22は、上記第1実施形態と同様に、特定領域における映像光の主光線を所定の角度θ1だけウィンドシールドWSから遠ざける方向に屈折させる。一方、レンズ部222の設計によっては、レンズフィルム22により屈折した光線L1がアイポイントEPに入射することにより、色収差が生じる場合がある。これは、ディスプレイ21の映像光に含まれる複数の波長の光(例えば赤、緑、青)がレンズフィルム22を介することで、それぞれの波長の光の集束位置にズレが生じることに起因する。本実施形態では、制御部4での駆動制御によってこの色収差を抑制する構成となっている。この詳細については、後述する。
【0052】
制御部4は、本実施形態では、ディスプレイ21のうち窓映りが生じ易い特定領域に位置する主画素群について、他の領域に位置する主画素群とは異なる駆動制御を実行する。
【0053】
以下、説明の便宜上、ディスプレイ21を構成する主画素のうち特定領域に位置する主画素を「特定主画素」と称し、特定主画素を構成する発光色の異なる複数の副画素を「特定副画素」と称する。また、複数の特定副画素のうち収差が生じている特定副画素を便宜的に「収差副画素」と称する。
【0054】
制御部4は、特定主画素を構成する複数の特定副画素に収差が生じる場合、当該特定主画素のうち収差が生じていない特定副画素と、他の特定主画素を構成する特定副画素であって、収差副画素と同じ発光色のものとを用いて色収差を低減する制御を実行する。また、制御部4は、ディスプレイ21のうち湾曲形状とされた部分に位置する主画素群について、湾曲形状とされたことに起因する映像の歪みを抑制するための駆動制御を実行する。つまり、制御部4は、本実施形態では、ディスプレイ21の湾曲部分に位置する主画素群について、色収差を低減する第1の駆動制御、および色収差とは異なる映像の歪みを低減する第2の駆動制御を実行する構成となっている。
【0055】
次に、本実施形態における制御部4による色収差を低減するための駆動制御について、例えば図7に示すように、発光色の異なる3つの副画素SP1~SP3により構成される主画素MPにおいて色収差が生じた場合を代表例として説明する。副画素SP1、SP2、SP3の発光色は、例えば、赤色、緑色、青色とされる。
【0056】
例えば図7に示す主画素MP1、MP2が特定主画素であって、色収差が生じているとき、制御部4は、主画素MP1の副画素SP1~SP3の一部と、主画素MP2のうち主画素MP1の収差副画素と同じ発光色の副画素とを用いて映像表示させる制御を行う。具体的には、主画素MP1のうち副画素SP1、SP2と副画素SP3との間に色収差が生じている場合、制御部4は、例えば、主画素MP1の副画素SP1、SP2と、主画素MP2の副画素SP3とを用いて映像を表示させる制御信号を出力する。
【0057】
つまり、本実施形態の車載用表示装置1は、主画素MP1を構成する副画素SP1~SP3のうちレンズ部222を介することで集束位置がずれる副画素SP3に代わり、他の主画素MPの副画素SP3のうち集束位置が近いものを用いることで色収差を低減する。言い換えると、制御部4は、ある特定主画素を構成する複数の特定副画素のうち収差副画素以外のものと、異なる特定主画素を構成する複数の特定副画素のうち当該収差副画素と同じ発光色の副画素とを用いて、集束位置が揃った主画素を構成する。すなわち、制御部4は、ディスプレイ21の特定領域では、異なる特定主画素間の特定副画素を組み合わせてすべての発光色の集束位置が揃った1つの主画素として駆動させることで色収差の補正を実行する。これにより、レンズ部222に起因して色収差が生じた場合であっても、駆動方式によってこの色収差を低減することが可能となる。
【0058】
例えば、色収差を低減するための特定副画素の選択テーブルを制御部4の図示しない記憶媒体に格納しておき、特定領域における主画素群の駆動に当該選択テーブルを読み込んで実行する構成とすればよい。この選択テーブルは、例えば、ディスプレイ21の形状、曲率半径や特定領域における画素群の座標データおよびレンズ部222による主光線の屈折角度θ1に基づいて作成され得る。このような方法により、発光色の集束位置が揃った適切な特定副画素群の選択を行うことができ、色収差を低減できる。
【0059】
なお、ここでいう「色収差」とは、レンズ部222に入射する主光線に起因する「軸上色収差」、およびレンズ部222に斜めに入射した映像光に起因する「倍率色収差」を意味する。
【0060】
また、ディスプレイ21のうちレンズフィルム22に覆われた部分における色収差については、例えば、Zemax社のOpticStudio(登録商標)などの任意の光学モデリングプログラムを用いて算出することができる。例えば、ディスプレイ21の特定領域の曲率半径、車両Vにおけるアイポイント、ディスプレイ21の車両Vの位置、視認距離、レンズ部222の屈折率や主光線の屈折角度θ1等の各種パラメータを適宜設定し、シミュレーション計算により色収差を算出する。
【0061】
そして、シミュレーション計算の結果に基づき、特定副画素における色収差を低減するための特定副画素の組み合わせを決定する。この決定は、例えば、特定副画素群の各発光色の集束位置を算出し、集束位置の差が所定の範囲内、すなわち略同一となる特定副画素同士を選択する等の方法によりなされる。このようにして決定した組み合わせに従って、制御部4により異なる特定主画素間の特定副画素を組み合わせて、1つの主画素を構成するように駆動させることで、色収差を低減することができる。
【0062】
次に、制御部4がディスプレイ21の湾曲部分に起因する映像の歪みを低減するために実行する駆動制御について、図8を参照して説明する。
【0063】
ここでは、例えば図8に示すように、ディスプレイ21のうち一端211側の上半分が平板状の平板部213とされ、他端212側の下半分が湾曲した湾曲部214とされた場合における色収差低減の具体例について説明する。
【0064】
なお、説明の便宜上、ディスプレイ21は、映像表示領域が四角形状であって、その対角線のサイズを21.6インチ、横縦のアスペクト比を16:9とするが、これに限定されるものではない。
【0065】
この場合、ディスプレイ21全体が平板形状であるとした場合の上下方向における寸法(以下「縦寸法」という)が約269mmであり、平板部213の縦寸法Zは、約134.5mmである。湾曲部214は、湾曲することによって、湾曲部214が平板形状であるとした場合よりもその縦寸法が小さくなる。例えば湾曲部214の曲率半径Rが100mmであるとすると、湾曲部214の映像表示面21aを円弧とする仮想扇形の中心角度は、360×134.5/(2×π×100)≒77°である。また、湾曲部214の縦寸法Zは、100×sin77°≒98mmとなる。
【0066】
つまり、湾曲部214は、曲率半径100mmで湾曲することにより、その縦寸法が134.5mmから約98mmとなり、上下方向におけるサイズが約27%低下する。そのため、ディスプレイ21を正面から見るユーザには、湾曲部214が平板形状の場合に比べ、湾曲部214の表示映像の上下方向におけるサイズが27%圧縮されたように歪んで見えてしまう。
【0067】
制御部4は、湾曲部214における縦寸法の変化に伴う映像の歪みを補正する駆動制御を実行する。すなわち、制御部4は、平板部213に位置する主画素群については外部からの映像信号に基づく映像を表示させる一方で、湾曲部214に位置する主画素群については、外部からの映像信号の歪み補正を実行する。例えば、制御部4は、湾曲部214に位置する主画素群については、圧縮して見える分(上記の例では約27%)だけ拡大した映像となるように映像信号を補正し、当該主画素群に出力する処理を行う。これにより、湾曲部214に表示される映像の歪みが低減され、ディスプレイ21全体の映像の視認性が向上する。
【0068】
なお、制御部4は、湾曲部214のうちレンズフィルム22で覆われた部分に位置する主画素群については、レンズ部222による主光線以外の屈折を考慮した歪み補正を別途実行する構成であってもよい。
【0069】
また、ディスプレイ21全体が平板形状であるとしたときの映像表示面21aとアイポイントEPとの前後方向に沿った距離を「視認距離X」として、視認距離Xは、例えば700mmとされるが、車両Vの種類やユーザの体格等により変化し得る。
【0070】
なお、制御部4における色収差の低減に用いられる特定画素群の選択テーブルは、例えば、湾曲部214の縦寸法、レンズ部222による主光線の以外の屈折角度、および視認距離Xに応じて設定される。
【0071】
本実施形態によれば、レンズフィルム22ではウィンドシールドWSでの窓映りを抑制し、制御部4による駆動制御により色収差に起因する視認性低下を低減した構成の車載用表示装置1となる。そのため、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の効果が得られることに加えて、レンズフィルム22を配置した領域における映像を視認させつつ、当該領域における色収差を抑制する効果も得られる。
【0072】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0073】
(1)上記各実施形態において、制御部4は、ディスプレイ21のうち映像表示面21aが曲面形状とされた部分について輝度補正を実行してもよい。具体的には、ディスプレイ21がOLEDパネルである場合、ディスプレイ21は、例えば、映像光のうち映像面法線方向に向かう主光線を基準(0°)として、主光線の光束が最も多く、主光線に対する角度が大きくなるほど光束が少なくなる特性を有する。すなわち、ディスプレイ21は、正面(映像面法線方向)から見たときの輝度が最も高く、斜めから見たときの輝度が低くなる視野角特性を備える。ディスプレイ21の一部または全部が湾曲形状となっている場合、ユーザは、ディスプレイ21に表示された映像に湾曲形状に起因する輝度差を感じてしまい、違和感を覚え得る。
【0074】
制御部4は、ディスプレイ21の視野角特性を考慮し、ディスプレイ21の湾曲形状に起因する映像の輝度差を低減するため、ディスプレイ21のうち湾曲形状の部分に位置する画素群の輝度を他の画素群よりも高くする輝度補正を実行してもよい。
【0075】
例えば、ディスプレイ21が図8に示すように平板部213と湾曲部214とを有する形状である場合を代表例として説明する。この場合において、平板部213および湾曲部214を同じ階調値で駆動したとき、湾曲部214の輝度が平板部213に比べて見かけ上10%低いとすると、制御部4は、湾曲部214に位置する画素群の輝度を10%上昇させる輝度補正を実行する。これにより、ユーザは、平板部213と湾曲部214で同じ輝度の映像が表示されていると認識し、湾曲形状に起因する見かけ上の輝度差が低減され、違和感を覚えることがなくなる。
【0076】
なお、上記では、湾曲部214で一律に輝度を高くする例について説明したが、湾曲形状に起因する見かけ上の輝度差を低減できればよく、これに限定されるものではない。例えば、湾曲部214のうち他端212(上端)に近い画素ほど輝度を高くしてもよいし、湾曲部214のうちレンズフィルム22で覆われた部分とそれ以外の部分とで輝度上昇の比率を変更してもよいし、これらの組み合わせであってもよい。後者の場合、湾曲部214のうちレンズフィルム22に覆われた部分については、レンズ部222により主光線の角度が変更されるため、変更後の主光線の角度および視野角特性を加味して輝度上昇の度合いを決定すればよい。
【0077】
(2)上記した他の実施形態においては、ユーザ(例えば運転者)のアイポイントEPを検出する検出部を車両Vに搭載し、制御部4は、当該検出部からアイポイントEPの位置を取得した上で、アイポイントEPの変化を加味した輝度補正を実行してもよい。これにより、ユーザの顔の位置が変わったとしても、そのときのアイポイントEPの位置に応じた輝度補正が行われるため、ディスプレイ21の視認性がさらに向上することとなる。
【0078】
なお、図示しない検出部としては、ユーザの顔を撮像可能な任意の箇所に配置され、例えば、株式会社デンソー製のドライバーステータスモニター(登録商標)とされるが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
1 車載用表示装置
21 ディスプレイ
211 一端
212 他端
21a 映像表示面
22 レンズフィルム
221 基部
222 レンズ部
4 制御部
WS ウィンドシールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8