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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】永久磁石電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20231212BHJP
   H02K 1/2726 20220101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
H02K1/2726
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020063644
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021164268
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】田邉 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 智則
(72)【発明者】
【氏名】松井 庸佑
(72)【発明者】
【氏名】小俣 黎
(72)【発明者】
【氏名】小島 広雄
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107973(JP,A)
【文献】特開2018-137864(JP,A)
【文献】特開2020-028203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置された永久磁石部を有する円柱状の回転子と、前記回転子の回転軸に沿って配置されたシャフトと、前記回転子の外周側に配置された円筒状のステータコアと、前記ステータコアと一体に形成された外郭を備える本体部と、前記本体部の一端側に取り付けられるブラケットと、前記シャフトを回転自在に支持する軸受とを備える永久磁石電動機であって、
前記ブラケットは、前記軸受を収容する磁性体のベアリングハウス部と、前記ベアリングハウス部に接続される非磁性部とを備え、
前記ベアリングハウス部は、前記回転軸の軸線方向から見て前記永久磁石部よりも内径側に配置され、前記ベアリングハウス部の外径側の縁部が前記非磁性部に覆われている
永久磁石電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の永久磁石電動機であって、
前記ベアリングハウス部は、筒状部と、前記筒状部の一端側から径方向の外側に延びる環状のフランジ部とを有し、前記フランジ部の外縁が前記非磁性部に覆われている
永久磁石電動機。
【請求項3】
請求項2に記載の永久磁石電動機であって、
前記回転子は、
前記永久磁石部が、前記ステータコアと径方向で対向し、
前記永久磁石部と前記シャフトとを連結する連結部をさらに備え、
前記連結部は、前記永久磁石部の内径側に配置され、前記連結部における前記軸線方向の中心に向かって窪んだ環状の凹部を備え、
前記ベアリングハウス部の前記フランジ部は前記凹部と前記軸線方向に重なるように配置されている
永久磁石電動機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の永久磁石電動機であって、
前記永久磁石部は、ボンド磁石である
永久磁石電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の固定子の内径側に固定子と同軸的に配置される回転子とを備えたインナーロータ型の永久磁石電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機として、回転磁界を発生させる円筒状の固定子の内径側に、永久磁石部を有する円柱状の回転子を固定子と同軸的に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機が知られている。
【0003】
この種の永久磁石電動機として、固定子に対し径方向で対向する環状の永久磁石部と、この永久磁石部をシャフトに連結する連結部(ヨーク)と、を備えた回転子を有するものがある。特許文献1の永久磁石電動機は、ベアリング(軸受)を保持するベアリングハウス部(軸受ブラケット)を、固定子の軸方向において回転子に近づけることで、電動機は、軸方向に小型化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-109861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁性体で形成されたベアリングハウス部(軸受ブラケット)が回転子の永久磁石部に近づくと、回転子の永久磁石部から固定子のヨーク(連結部)側に流れる磁束がベアリングハウス部側にも流れ、漏れ磁束が増大し、永久磁石電動機の出力が低下してしまう問題があった。
【発明の効果】
【0006】
そこで、本発明は、電動機を軸方向に小型化するとともに、漏れ磁束を抑制できる永久磁石電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の永久磁石電動機の一態様は、環状に配置された永久磁石部を有する円柱状の回転子と、回転子の回転軸に沿って配置されたシャフトと、回転子の外周側に配置された円筒状のステータコアと、ステータコアと一体に形成された外郭を備える本体部と、本体部の一端側に取り付けられるブラケットと、シャフトを回転自在に支持する軸受とを備える。
ブラケットは、軸受を収容するベアリングハウス部と、ベアリングハウス部に接続される非磁性部とを備える。
ベアリングハウス部は、回転軸の軸線方向から見て永久磁石部よりも内径側に配置されるとともに、同ベアリングハウス部の外径側の縁部が非磁性部に覆われている。
【0008】
本発明によれば、電動機を回転軸の軸線方向に小型化するとともに、回転子の永久磁石部からベアリングハウス部側に流れる漏れ磁束を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る永久磁石電動機の全体斜視図である。
図2】本発明に係る永久磁石電動機を示す横断面図である。
図3】本発明に係る永久磁石電動機のブラケットの斜視図である。
図4図3のブラケットを取り外した状態の、本発明に係る永久磁石電動機の全体斜視図である。
図5図1における切り込み溝部に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る電動機について説明する。
【0013】
<電動機の全体構成>
図1乃至図5は、本実施形態における永久磁石電動機1の構成を説明する図である。これらの図に示すように、この永久磁石電動機1は、例えば、ブラシレスDCモータである。この永久磁石電動機1は、図示しないが、例えば、空気調和機の室外機に搭載される送風ファンの回転駆動に用いられる。
【0014】
本実施形態における永久磁石電動機1は、図1図2に示すように、固定子(ステータ)2と、回転子(ロータ)3と、モータ外郭(筐体、本体部)10と、ブラケット41とを備えている。
以下では、回転磁界を発生する円筒状の固定子2の径方向の内側に、永久磁石部31を有する円柱状の回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機1を例に説明する。
【0015】
<回転子と固定子とモータ外郭>
回転子3は、図2に示すように、環状の永久磁石部31と、永久磁石部31よりも内径側に配置されて同永久磁石部31とシャフト32とを連結する連結部35と、を備える。シャフト32は円柱状の回転子3の中心軸に沿って回転子3に固定されている。本実施形態では、回転子3の永久磁石部31と連結部35とは、フェライト磁性体を混合した樹脂材の一体成形によって形成されており、成形後に永久磁石部31のみを着磁することで永久磁石部31をフェライトボンド磁石として機能させている。また、永久磁石部31は、その周方向にS極とN極が交互に現れる極異方性磁石となるよう着磁されている。これにより、永久磁石部31の磁束の流れを集中させるためのヨークの一部分が不要となり、漏れ磁束を抑制することができる。
なお、永久磁石部31と連結部35とは別体に形成されていてもよい。例えば、回転子3は、粉末状のフェライト磁性体を金型内で焼き固めた複数のフェライト焼結磁石(永久磁石部31に相当)を、ロータコア(連結部35に相当)の外周面に環状に貼り付けた、いわゆる表面磁石(SPM)型の回転子であってもよい。
【0016】
固定子2は、図示しない円筒形状のヨーク部と同ヨーク部から内径側に延びる複数の図示しないティース部を有した固定子鉄心(ステータコア)21と、インシュレータを介してティース部に巻回された図示しない巻線を備えている。この固定子2は、樹脂一体成形によって、固定子鉄心21の内周面を除いて、樹脂で形成されたモータ外郭10(本体部)で覆われている(図2図4参照)。すなわち、モータ外郭10は、固定子鉄心21と巻線とを備えた固定子2を覆っている。固定子2は、図1図2に示すように、回転子3の外周側(永久磁石電動機1の径方向における外側)に配置される。また、固定子2の固定子鉄心(ステータコア)21は、同固定子鉄心21の有するティース部が回転子3の永久磁石部31と径方向で対向するように配置されている。換言すれば、固定子2は、回転子3の備える環状の永久磁石部31が固定子2の固定子鉄心21に径方向で対向するように配置されている。
【0017】
モータ外郭10は、任意の形状でよいが、例えば、永久磁石電動機1の中心軸、つまり回転子3の回転軸(以下、回転軸C)の軸線方向の一方側(実施例ではシャフト32の反出力側)の端面が開口された中空円筒状に形成される。本実施例では、モータ外郭10は、環状部12と、環状部12において開口とは反対側の端部に形成された端面部13とを備える。
【0018】
回転子3は、固定子2の固定子鉄心21の内周側に、固定子鉄心21と所定の空隙(ギャップ)を持って回転自在に配置されている。図2、4、5に示すように、環状に形成された永久磁石部31は、固定子鉄心21に対向するように、回転子3における径方向の外側(外周側)に配置されている。
【0019】
回転子3は、シャフト32の周りに固定されている。シャフト32は、同シャフト32の外周面に固定された第1軸受33および第2軸受34(ベアリング、軸受)によって回転自在に支持(保持)されている。また、第1軸受33が後述する第1軸受収容部42(ベアリングハウス部)に収容(保持)され、第2軸受34が後述する第2軸受収容部43に収容(保持)されることで、回転子3が回転自在に支持されている。第1軸受収容部42および第2軸受収容部43は、例えばクロムニッケル系ステンレス鋼の磁性体で形成されている。
【0020】
<軸受とブラケットとベアリングハウス部>
図2図3、および図5に示すように、第1軸受33は、同第1軸受33の内輪側がシャフト32の一端側(反出力側)に固定されている。第2軸受34は、同第2軸受34の内輪側がシャフト32の他端側(出力側)に固定されている。第1軸受33と第2軸受34(一対のベアリング)は協働して、シャフト32およびシャフト32に固定される回転子3を回転自在に支持している。第1軸受33および第2軸受34は、例えば、ボールベアリングが用いられる。
【0021】
ブラケット41は、磁性体で形成されて第1軸受32を収容する第1軸受収容部42と、非磁性体(例えば樹脂)で形成された非磁性部44(端面部)とを備える。ブラケット41は、永久磁石電動機1のモータ外郭10(本体部)において、中心軸C方向の一端、すなわちシャフト32の反出力側に配置される。ブラケット41の非磁性部44は、第1軸受収容部42に接続される接続部45を有する(図2、3、5参照)。ブラケット41の非磁性部44は、インサート成形によって、磁性部である第1軸受収容部42と一体に成形される。非磁性部44は、接続部45において第1軸受収容部42(ベアリングハウス部)に接続される。このブラケット41は、モータ外郭10(本体部)の開口を覆う蓋として、モータ外郭10(本体部)の反出力側の端部にねじ止めされて取り付けられる。なお、モータ外郭10の開口は、出力側に向けて開口するようにしてもよい。この場合、ブラケット41は、シャフト32の反出力側ではなく、シャフト32の出力側に配置される。
【0022】
ブラケット41の非磁性部44(端面部)は、径方向の外形がモータ外郭10の外周面まで径方向に広がる、概ね円板形状に形成されている。ブラケット41の非磁性部44は、モータ外郭10とともに、永久磁石電動機1の樹脂外郭を形成している。そして、非磁性部44は、回転軸C方向から見て、モータ外郭10の外周面よりも径方向の外側に突出した突出部410を有する。突出部410は、モータ外郭10の後述する鍔部102の基端部に当接する。
ブラケット41の突出部410は、モータ外郭10に設けられた鍔部102と同数形成され(3箇所)、例えば回転軸C方向から見て台形状に形成されており、突出部410の各々の中央部には回転軸C方向に貫通するねじ通し穴部413を有する。
【0023】
なお、ブラケット41には、組立後の永久磁石電動機1において外部に露出する外表面に、後述する電食対策用の導通部材5を配置するための切り込み溝部416が形成されている(図1および3参照)。
この切り込み溝部416は、ブラケット41の中央部(後述の非磁性部44の筒状の接続部45)から径方向の外側へ向かってブラケット41の外周面まで延び、さらにそこからモータ外郭10と当接する位置まで軸方向に延びている。
【0024】
ブラケット41は、モータ外郭10(本体部)に嵌合された後に、ねじ通し穴部413を介してモータ外郭10の鍔部102のねじ穴部103(後述)にねじ止めされる(図1参照)。
また、円板状のブラケット41の中央部には、永久磁石電動機1の内部側(出力側)に第1軸受33を収容するための第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42が配置されている。第1軸受収容部42は、例えばプレス加工によって概ね有底円筒状に形成されている。
【0025】
モータ外郭10の出力側端部の中央部には、永久磁石電動機1の内部側(反出力側)に第2軸受34を収容するための第2軸受収容部(ベアリングハウス部)43が配置されている。この第2軸受収容部43は、第1軸受収容部42と同様に、概ね有底円筒状に形成されている。第2軸受収容部43は、回転子3の径方向において、環状の永久磁石部31よりも内側(内径側)に配置されている。モータ外郭10の端面部13は、第2軸受収容部43のフランジ部432(後述)に接続される接続部14を有する。
【0026】
図2および図5に示すように、第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42は、第1軸受33の外輪側を径方向から保持する筒状部421と、筒状部421の回転軸C方向の一端部から回転子3における径方向の外側に延びる円環状のフランジ部422と、筒状部421の回転軸C方向の他端部から径方向の内側へと延びる冠部423と、を有する。冠部423は、第1軸受33の回転軸C方向の他端側を覆う。円環状のフランジ部422の外周縁は、永久磁石部31よりも回転子3の径方向における内側(内周側)に位置している。換言すると、第1軸受収容部42は、回転子3の回転軸C方向から見て、永久磁石部31と重ならないように形成されている。
【0027】
すなわち、第1軸受収容部42(ブラケット41が備えるベアリングハウス部)は、回転軸C方向から見て、永久磁石部31よりも回転子3における径方向の内側(内径側)に配置されている。また、第1軸受収容部42(ベアリングハウス部)のフランジ部422の外周縁部(外径側の縁部)は、非磁性体である樹脂によって覆われている。すなわち、ブラケット41において、第1軸受収容部42のフランジ部422の外周縁部は、樹脂製の非磁性部44によって覆われている。
【0028】
上述したように、ブラケット41は、一対の軸受収容部(ベアリングハウス部)の一方である第1軸受収容部(磁性部)42と、非磁性部44(端面部)とで形成される。第1軸受収容部(磁性部)42は、回転子3の径方向で永久磁石部31よりも内径側に配置されているので、磁性部としての第1軸受収容部42が備えるフランジ部422が、永久磁石部31と回転軸C方向で面対向するのを防止できる。これにより、永久磁石部31から第1軸受収容部(磁性部)42へと流れる漏れ磁束を抑制することができる。さらに、第1軸受収容部(磁性部)42は、回転子3の永久磁石部31と近接するフランジ部422の外周縁部が、非磁性部44で覆われる。これにより、永久磁石部31から磁性体で形成された第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42へと流れる漏れ磁束の経路を非磁性体で形成された非磁性部44によって遮断することができるので、永久磁石部31から第1軸受収容部42へと流れる漏れ磁束を更に抑制することができる。
【0029】
なお、この漏れ磁束を抑制するための構造は、第1軸受収容部42側だけでなく、第2軸受収容部43側にも適用されることができる。このとき、第2軸受収容部43は、第1軸受収容部42と同様の形状に形成され、第2軸受34の外輪側を径方向から保持する筒状部431と、筒状部431の回転軸C方向の一端部から回転子3における径方向の外側に延びる円環状のフランジ部432と、筒状部431の回転軸C方向の他端部から径方向の内側へと延びる冠部433と、を有する。そして、第2軸受収容部43は、回転子3の径方向で永久磁石部31よりも内径側に配置されている。また、第2軸受収容部43が備えるフランジ部422の外周縁部が、非磁性体である樹脂製のモータ外郭10の端面部13(接続部14)によって覆われている。これにより、永久磁石部31から第2軸受収容部43へと流れる漏れ磁束を抑制することができる。
【0030】
ブラケット41の非磁性部(端面部)44は、第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42に接続される接続部45を有している。接続部45は、概ね筒状に形成されており、第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42のフランジ部422は、筒状の接続部45の内径側の側面に差し込まれて固定されている。ここで、第1軸受収容部42の筒状部421は、ブラケット41の非磁性部44と接触しておらず(非磁性部44によって覆われておらず)、フランジ部422の外周縁部のみが、非磁性部44の接続部45に覆われるようにして接合(接続)されている。また、第1軸受収容部42の筒状部421と非磁性部44の筒状の接続部45との間には空隙部(エアギャップ)AG1が形成されている。これにより、熱や衝撃などによるモータ外郭10の変形が、第1軸受33に対して影響しにくくなる。さらに、ブラケット41の接続部45と、第1軸受収容部42のフランジ部422との接触面積を小さくすることができ、固定子鉄心(ステータコア)21に巻回された巻線での発熱がブラケット41を介して第1軸受33に伝達するのを抑制することができる。これにより、第1軸受33の温度上昇を抑え、第1軸受33の劣化を防止することができる。
【0031】
本実施例では、一対の軸受収容部の他方である第2軸受収容部43側についても、第1軸受収容部42側と同様の構造とされている。すなわち、モータ外郭10が有底円筒状に形成されており、固定子(ステータ)2と一体のモータ外郭10の環状部12と、環状部12の端部に接続されて径方向の内側(内周側)に広がるモータ外郭10の端面部13とを備えている。そして、モータ外郭10の端面部13は、第2軸受収容部43に接続される円筒状の接続部14を有している。また、第1軸受収容部42と同様に、一対の軸受収容部の他方である第2軸受収容部43は、筒状部431と、筒状部431から径方向の外側に延びるフランジ部432とを有し、フランジ部432の外周縁部のみが、樹脂外郭(モータ外郭10)の接続部14の内径側の側面に差し込まれて固定されている。また、第2軸受収容部43の筒状部431と、樹脂外郭(モータ外郭10)の接続部14との間に、空隙部(エアギャップ)AG2が形成されている。
【0032】
これにより、熱や衝撃などによるモータ外郭10の変形が、第2軸受34に対して影響しにくくなる。さらに、モータ外郭10の接続部14と、第2軸受収容部43のフランジ部432との接触面積を小さくすることができ、固定子鉄心(ステータコア)21に巻回された巻線での発熱が樹脂外郭10を介して第2軸受34に伝達するのを抑制することができる。これにより、第2軸受34の温度上昇を抑え、第2軸受34の劣化を防止することができる。
【0033】
また、回転子3は、上述のように、シャフト32が固定され、永久磁石部31とシャフト32とを連結する連結部35を備える。永久磁石部31は、円筒状の固定子鉄心(ステータコア)21に径方向で対向するように配置されている。連結部35は、環状に配置された永久磁石部31の内径側に配置される。連結部35は、図2図4に示すように、連結部35における回転軸Cの軸線方向(回転軸C方向)の中心に向かって窪んだ凹部36を有する。凹部36は、同凹部36が形成された位置での連結部35の回転軸C方向における厚みが、永久磁石部31の回転軸C方向における厚みよりも小さくなるよう、形成されている。そして、第1軸受収容部42のフランジ部422は、この凹部36と回転軸C方向に重なるように配置されている。これにより、回転子3には、回転軸C方向に向かって窪んだ環状の凹部36が形成され、第1軸受収容部42のフランジ部422がこの凹部36内に配置されることができる。
このように、回転軸Cの軸線方向に窪んだ環状の凹部36に第1軸受収容部42の一部(フランジ部422)が入り込むことができ、永久磁石電動機1の回転軸C方向の厚みが抑制され、永久磁石電動機1が回転軸C方向に小型化される。
【0034】
図4に示すように、固定子2の回転軸C方向の反出力側の端部(図4では上端部)には、固定子鉄心(ステータコア)21の図示しない巻線に電気的に接続される端子ピン26と、図示しない基板を取り付ける際の案内役としてのボス27とが設けられている。
ブラケット41は、端子ピン26が永久磁石電動機1の外部に露出するのを防止するための絶縁カバーとして機能する。本実施形態において、端子ピン26は3カ所設けられており、これらの3カ所を覆い隠すように、ブラケット41はモータ外郭10に取り付けられる。
【0035】
ブラケット41は、固定子2の上端面に沿って取り付けられるカバー本体414と、カバー本体414と一体的に形成された嵌合部415とを備えている。これらのカバー本体414および嵌合部415は、上記の非磁性部44(端面部)に相当する。
カバー本体414は、全体が円板形状に形成されている。嵌合部415は、図3に示すように、カバー本体414の外周縁部に配置された円環形状の突起として形成されている。嵌合部415がモータ外郭10の反出力側の端部(図4におけるモータ外郭10の上端面)に回転軸C方向から嵌合されることで、図2に示すように、モータ外郭10(本体部)とブラケット41とが軸合わせされるとともに、第1軸受33がブラケット41に設けられた第1軸受収容部42に収容される。
【0036】
モータ外郭10は、回転軸Cの反出力側端部において周方向に等間隔に並ぶ3つの鍔部102を備えている。なお、鍔部102は2個、6個など任意の個数でよく、複数の鍔部102の並びは等間隔でなくともよい。これらの3つの鍔部102は、固定子2(永久磁石電動機1)の径方向に台形状に突出しており、回転軸C方向に所定の厚みを有する。
各鍔部102には、図1および図4に示すように、固定子2(永久磁石電動機1)の径方向の外側から内径方向に防振ゴムブッシュ6を嵌め込むための切り欠き部104が形成されている。この切り欠き部104は、各鍔部102に形成された回転軸C方向に貫通する穴と各鍔部102の外周縁とをつなぐようにして形成されている。各鍔部102は、さらに、上述したブラケット41のねじ止め用のねじ穴部103を有する。
各鍔部102の下面(出力側の面)には、防振ゴムブッシュ6を保持しやすくするための円形状の窪み部106が形成されている(図1および4参照)。
【0037】
図5に示すように、3つの鍔部102のうちのいずれか1つには、切り欠き部104において、固定子2(永久磁石電動機1)の径方向での最も内径側となる位置にその位置から中心軸32に向かって、電食対策用の導通部材5(図5参照)を回転軸C方向に沿って配置するための、切り込み溝部105が形成されている。この切り込み溝部105に沿って、モータ外郭10の側面および端面部13(出力側の面)にも、導通部材5用の切り込み溝部が、中心軸32の軸方向および径方向に延びるように形成されている(図示せず)。
導通部材5は、第1軸受33と第2軸受34とを導通させる帯状の部材である。導通部材5は、例えば、帯状に打ち抜いた鋼板を、モータ外郭10及びブラケット41の外面に沿うようにコの字状に折り曲げて形成される(図5参照)。導通部材5により、第1軸受33と第2軸受34の各々の外輪側の電位を同電位とすることができ、電食の発生を抑制できる。
【0038】
ここで、モータ外郭10にブラケット41を嵌合することで、ブラケット41の切り込み溝部416とモータ外郭10の外面に形成された切込み溝部105とが連続するようになっており、両切り込み溝部が帯状の導通部材5を埋め込むガイドとなる。これにより、帯状の導通部材5が永久磁石電動機1の外郭の表面に突出せず、導通部材5が脱落するのを防止できる。導通部材5は、図5に示すように、第1軸受収容部42のフランジ部422の位置から、ブラケット41の切り込み溝部416、鍔部102の切り込み溝部105、およびモータ外郭10の外周面切り込み溝部を経て、第2軸受収容部43のフランジ部432の位置まで延びて配置される。
また、防振ゴムブッシュ6を鍔部102に嵌め込む前に、この切り込み溝部105に導通部材5を予め通して配置することにより、防振ゴムブッシュ6が導通部材5を外側から押さえることができ、導通部材5の脱落を防止することができる。
【0039】
上述したように本実施形態では、磁性体で形成されたベアリングハウス部(第1軸受収容部42、第2軸受収容部43)が、回転軸C方向において、環状の永久磁石部31と対向しないように配置される。そして、ベアリングハウス部42、43が、固定子2(永久磁石電動機1)の径方向において回転子3(永久磁石部31)との間を短絡する磁束の経路が生じないように、ベアリングハウス部42のフランジ部422の外周縁部が、非磁性体で形成された非磁性部44で覆われる。
【0040】
これにより、ベアリングハウス部42を回転軸Cの軸線方向(回転軸C方向)から永久磁石部31に近づけても、永久磁石部31からベアリングハウス部42、43へ流れる漏れ磁束の経路を遮断することで、漏れ磁束の発生を抑制することができる。また、ベアリングハウス部42を回転軸Cの軸線方向(回転軸C方向)から永久磁石部31に近づけられるので、永久磁石電動機1を回転軸Cの軸線方向に小型化することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…永久磁石電動機
10…モータ外郭(本体部)
12…環状部
13…端面部
2…固定子
21…固定子鉄心(ステータコア)
3…回転子
31…永久磁石部(着磁部)
32…シャフト
33…第1軸受(軸受)
34…第2軸受
35…連結部
36…凹部
41…ブラケット
42…第1軸受収容部(ベアリングハウス部)
421…筒状部
422…フランジ部
423…冠部
43…第2軸受収容部(ベアリングハウス部)
44…非磁性部(端面部)
45…接続部
AG1、AG2…空隙部(エアギャップ)
C…回転軸
図1
図2
図3
図4
図5