(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20231212BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20231212BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20231212BHJP
F04C 29/06 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F04B39/00 102U
F04B39/12 J
F04C29/00 S
F04C29/06 Z
(21)【出願番号】P 2020064651
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】深谷 美博
(72)【発明者】
【氏名】椿井 慎治
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178674(JP,A)
【文献】特開2015-129468(JP,A)
【文献】特開2015-129477(JP,A)
【文献】特開2019-178675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
F04C 29/00
F04C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の回転によって吸入された冷媒を圧縮する圧縮室を有するとともに圧縮された冷媒を吐出する圧縮機構と、
前記回転軸を回転させる電動モータと、
前記電動モータを内部に収容するとともに前記回転軸の軸方向に延びるモータ側周壁を有するモータハウジングと、
圧縮途上の前記圧縮室へ冷媒を供給する供給通路を有するとともに前記供給通路からの冷媒の逆流を防ぐ逆止弁を内部に収容する中間ハウジングと、
前記回転軸が挿通される挿通孔を有するとともに前記回転軸を回転可能に支持する軸支ハウジングと、を備え、
前記供給通路より前記圧縮室へ供給される冷媒は、冷媒の吸入圧よりも高く、前記圧縮室から吐出される冷媒の吐出圧よりも低い中間圧の冷媒である電動圧縮機であって、
前記圧縮機構から前記吐出圧の冷媒が吐出される吐出室を有する吐出ハウジングを備え、
前記中間ハウジングは、前記回転軸の軸方向に延びるとともに前記圧縮機構を囲繞する圧縮機構側周壁を有し、
前記軸支ハウジングは、前記挿通孔が形成される本体部と、前記本体部から前記回転軸の径方向外側に延びるフランジ部と、を有し、
前記吐出ハウジング、前記中間ハウジング、前記軸支ハウジング、及び前記モータハウジングは、前記中間ハウジング及び前記フランジ部を貫通して前記モータ側周壁に螺合するボルトによって一体的に固定され、
前記フランジ部は、前記圧縮機構側周壁と前記モータ側周壁とに挟持されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記中間ハウジングは、前記逆止弁を収容する収容凹部を有し、
前記収容凹部は、前記中間ハウジングにおける前記吐出ハウジング側の端面に形成されるとともに前記吐出室に対向しており、
前記中間ハウジングには、前記収容凹部の開口を閉塞するとともに前記収容凹部と前記吐出室とを仕切る蓋部材が取り付けられ、
前記蓋部材は、蓋部材底壁と、前記蓋部材底壁の外周部から筒状に延びる蓋部材周壁と、を有する有底筒状であることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記中間ハウジングの外周面には取付脚が突設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、回転軸と、回転軸の回転によって吸入された冷媒を圧縮する圧縮室を有するとともに圧縮された冷媒を吐出する圧縮機構と、回転軸を回転させる電動モータと、を備えている。また、電動圧縮機は、電動モータを内部に収容するとともに回転軸の軸方向に延びるモータ側周壁を有するモータハウジングと、回転軸が挿通される挿通孔を有するとともに回転軸を回転可能に支持する軸支ハウジングと、を備えている。
【0003】
また、特許文献1の電動圧縮機は、圧縮途上の圧縮室へ冷媒を供給する供給通路を有する中間ハウジングを備えている。供給通路より圧縮室へ供給される冷媒は、冷媒の吸入圧よりも高く、圧縮室から吐出される冷媒の吐出圧よりも低い中間圧の冷媒である。中間ハウジングは、供給通路からの冷媒の逆流を防ぐ逆止弁を内部に収容する。そして、例えば、電動圧縮機における高負荷運転時には、逆止弁が開弁し、中間圧の冷媒が供給通路より圧縮室へ供給される。これにより、圧縮室に導入される冷媒の流量が増え、電動圧縮機における高負荷運転時での性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動圧縮機の高負荷運転時においては、回転軸が高速で回転すると、回転軸を回転可能に支持する軸支ハウジングに大きな振動が伝わって、軸支ハウジングの振動に伴う騒音が発生し易くなる。また、中間ハウジングにおいては、逆止弁の開閉動作が行われることにより、中間ハウジングに振動が伝わって、中間ハウジングの振動に伴う騒音が発生する。その一方で、特許文献1に示す従来の電動圧縮機では、軸支ハウジングに締結ボルトが挿通されることなく、圧縮機構を介して締結力が間接的に軸支ハウジングに作用している構造であり、軸支ハウジングの固定が十分でなく軸支ハウジングが振動し易い。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、静粛性に優れた電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動圧縮機は、回転軸と、前記回転軸の回転によって吸入された冷媒を圧縮する圧縮室を有するとともに圧縮された冷媒を吐出する圧縮機構と、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記電動モータを内部に収容するとともに前記回転軸の軸方向に延びるモータ側周壁を有するモータハウジングと、圧縮途上の前記圧縮室へ冷媒を供給する供給通路を有するとともに前記供給通路からの冷媒の逆流を防ぐ逆止弁を内部に収容する中間ハウジングと、前記回転軸が挿通される挿通孔を有するとともに前記回転軸を回転可能に支持する軸支ハウジングと、を備え、前記供給通路より前記圧縮室へ供給される冷媒は、冷媒の吸入圧よりも高く、前記圧縮室から吐出される冷媒の吐出圧よりも低い中間圧の冷媒である電動圧縮機であって、前記中間ハウジングは、前記回転軸の軸方向に延びるとともに前記圧縮機構を囲繞する圧縮機構側周壁を有し、前記軸支ハウジングは、前記挿通孔が形成される本体部と、前記本体部から前記回転軸の径方向外側に延びるフラ
ンジ部と、を有し、前記中間ハウジング、前記軸支ハウジング、及び前記モータハウジングは、前記中間ハウジング及び前記フランジ部を貫通して前記モータ側周壁に螺合するボルトによって一体的に固定され、前記フランジ部は、前記圧縮機構側周壁と前記モータ側周壁とに挟持されている。
【0008】
これによれば、軸支ハウジングが、中間ハウジングの圧縮機構側周壁とモータハウジングのモータ側周壁とによってフランジ部が挟持された状態で、中間ハウジング及びフランジ部を貫通してモータ側周壁に螺合するボルトによって、中間ハウジング及びモータハウジングと一体的に固定される。このため、締結力が軸支ハウジングに十分に作用し、軸支ハウジングの振動を抑制し易くすることができる。したがって、軸支ハウジングの振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。また、中間ハウジングは、圧縮機構側周壁を有しているため、圧縮機構側周壁を有していない中間ハウジングに比べると、中間ハウジングの剛性が向上している。したがって、逆止弁の開閉動作が行われることにより、中間ハウジングに振動が伝わっても、中間ハウジングの振動を抑制し易くすることができ、中間ハウジングの振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。このような電動圧縮機は、静粛性に優れる。
【0009】
上記電動圧縮機において、前記圧縮機構から前記吐出圧の冷媒が吐出される吐出室を有する吐出ハウジングを備え、前記中間ハウジングは、前記逆止弁を収容する収容凹部を有し、前記収容凹部は、前記中間ハウジングにおける前記吐出ハウジング側の端面に形成されるとともに前記吐出室に対向しており、前記中間ハウジングには、前記収容凹部の開口を閉塞するとともに前記収容凹部と前記吐出室とを仕切る蓋部材が取り付けられ、前記蓋部材は、蓋部材底壁と、前記蓋部材底壁の外周部から筒状に延びる蓋部材周壁と、を有する有底筒状であるとよい。
【0010】
これによれば、例えば、蓋部材が平板状である場合に比べると、蓋部材の剛性を向上させることができるため、その結果として、蓋部材が取り付けられる中間ハウジングの剛性をさらに向上させることができる。したがって、逆止弁の開閉動作が行われることにより、中間ハウジングに振動が伝わっても、中間ハウジングの振動をさらに抑制し易くすることができ、中間ハウジングの振動に伴う騒音の発生をさらに抑制することができる。その結果、静粛性に優れる。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記中間ハウジングの外周面には取付脚が突設されているとよい。
これによれば、中間ハウジングの外周面に取付脚が突設されていない場合に比べると、中間ハウジングの剛性をさらに向上させることができる。したがって、逆止弁の開閉動作が行われることにより、中間ハウジングに振動が伝わっても、中間ハウジングの振動をさらに抑制し易くすることができ、中間ハウジングの振動に伴う騒音の発生をさらに抑制することができる。その結果、静粛性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、静粛性に優れた電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を示す側断面図。
【
図5】電動圧縮機の一部を分解して示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10は、筒状のハウジング11と、ハウジング11内に収容される回転軸12と、回転軸12の回転によって駆動する圧縮機構13と、回転軸12を回転させる電動モータ14と、を備えている。
【0015】
ハウジング11は、モータハウジング15と、吐出ハウジング16と、中間ハウジング17と、軸支ハウジング18と、を有している。モータハウジング15、吐出ハウジング16、中間ハウジング17、及び軸支ハウジング18は、それぞれ金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0016】
モータハウジング15は、底壁15aと、底壁15aの外周部から筒状に延びる周壁15bと、を有する有底筒状である。周壁15bの軸心が延びる方向は、回転軸12の軸線L1が延びる方向である軸方向に一致している。したがって、モータハウジング15の周壁15bは、回転軸12の軸方向に延びるモータ側周壁である。周壁15bの開口端には、雌ねじ孔15cが形成されている。周壁15bには、吸入ポート15hが形成されている。吸入ポート15hは、周壁15bにおける底壁15a側に位置する部分に形成されている。吸入ポート15hは、モータハウジング15内外を連通している。
【0017】
底壁15aの内面には、円筒状のボス部15fが突設されている。回転軸12の一端部は、ボス部15f内に挿入されている。ボス部15fの内周面と回転軸12の一端部の外周面との間には、ベアリング19が設けられている。ベアリング19は、例えば、転がり軸受である。そして、回転軸12の一端部は、ベアリング19を介してモータハウジング15に回転可能に支持されている。
【0018】
図2に示すように、軸支ハウジング18は、有底筒状の本体部20を有している。本体部20は、板状の底壁21と、底壁21の外周部から筒状に延びる周壁22と、を有している。本体部20の底壁21の中央部には、回転軸12が挿通される円孔状の挿通孔21hが形成されている。したがって、軸支ハウジング18は、回転軸12が挿通される挿通孔21hを有している。挿通孔21hは、底壁21を厚み方向に貫通している。挿通孔21hの軸心は、周壁22の軸心に一致している。
【0019】
軸支ハウジング18は、本体部20の周壁22における底壁21とは反対側の端部から回転軸12の径方向外側に円環状に延びるフランジ部23を有している。フランジ部23における底壁21側の端面23aは、回転軸12の径方向に延びる環状の第1面231a及び第2面232aを有している。第1面231aは、周壁22の外周面に連続するとともに周壁22の外周面における底壁21とは反対側の端部から回転軸12の径方向に延びている。第2面232aは、第1面231aよりも回転軸12の径方向外側であって、且つ第1面231aよりも底壁21から回転軸12の軸方向で離間した位置に配置されている。第1面231aにおける回転軸12の径方向外側の外周縁と、第2面232aにおける回転軸12の径方向内側の内周縁とは、回転軸12の軸方向に延びる環状の段差面233aによって連結されている。
【0020】
フランジ部23の第2面232aは、モータハウジング15の周壁15bの開口端面15eに対向している。フランジ部23の外周部には、ボルト挿通孔23hが形成されている。ボルト挿通孔23hは、フランジ部23を厚み方向に貫通している。ボルト挿通孔23hは、フランジ部23の第2面232aに開口している。ボルト挿通孔23hは、モータハウジング15の雌ねじ孔15cに連通している。モータハウジング15及び軸支ハウ
ジング18は、ハウジング11内に形成されるモータ室24を区画している。モータ室24内には、外部冷媒回路25から吸入ポート15hを介して冷媒が吸入される。したがって、モータ室24は、吸入ポート15hから冷媒が吸入される吸入室である。
【0021】
回転軸12の他端側の端面12eは、本体部20の周壁22の内側に位置している。周壁22の内周面と回転軸12の外周面との間には、ベアリング26が設けられている。ベアリング26は、例えば、転がり軸受である。そして、回転軸12は、ベアリング26を介して軸支ハウジング18に回転可能に支持されている。したがって、軸支ハウジング18は、回転軸12を回転可能に支持する。
【0022】
図1に示すように、モータ室24内には、電動モータ14が収容されている。したがって、モータハウジング15は、電動モータ14を内部に収容する。電動モータ14は、筒状のステータ27と、ステータ27の内側に配置されるロータ28と、を有している。ロータ28は、回転軸12と一体的に回転する。ステータ27は、ロータ28を取り囲んでいる。ロータ28は、回転軸12に止着されたロータコア28aと、ロータコア28aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ27は、モータハウジング15の周壁15bの内周面に固定された筒状のステータコア27aと、ステータコア27aに巻回されたコイル27bと、を有している。そして、図示しないインバータ装置によって制御された電力がコイル27bに供給されることによりロータ28が回転し、回転軸12がロータ28と一体的に回転する。
【0023】
中間ハウジング17は、底壁17aと、底壁17aの外周部から筒状に延びる周壁17bと、を有している。周壁17bの軸心が延びる方向は、回転軸12の軸方向に一致している。したがって、中間ハウジング17の周壁17bは、回転軸12の軸方向に延びる圧縮機構側周壁である。中間ハウジング17の周壁17bの開口端面17eは、フランジ部23における底壁21とは反対側の端面23bに対向している。中間ハウジング17の外周部には、フランジ部23のボルト挿通孔23hに連通するボルト挿通孔17hが形成されている。ボルト挿通孔17hは、底壁17a及び周壁17bを貫通している。
【0024】
吐出ハウジング16は、ブロック状である。吐出ハウジング16は、中間ハウジング17の底壁17aにおける周壁17bとは反対側の端面に板状のガスケット29を介して取り付けられている。ガスケット29は、吐出ハウジング16と中間ハウジング17との間をシールする。ガスケット29の外周部には、中間ハウジング17のボルト挿通孔17hに連通するボルト挿通孔29hが形成されている。また、吐出ハウジング16の外周部には、ガスケット29のボルト挿通孔29hに連通するボルト挿通孔16hが形成されている。
【0025】
そして、各ボルト挿通孔16h,17h,29hを通過するボルト30が、フランジ部23のボルト挿通孔23h及びモータハウジング15の雌ねじ孔15cの順にねじ込まれる。これにより、軸支ハウジング18がモータハウジング15の周壁15bに連結されるとともに、中間ハウジング17が軸支ハウジング18のフランジ部23に連結されている。さらに、吐出ハウジング16がガスケット29を介して中間ハウジング17に連結されている。したがって、モータハウジング15、軸支ハウジング18、中間ハウジング17、及び吐出ハウジング16は、この順序で、回転軸12の軸方向に並んで配置されている。
【0026】
フランジ部23は、中間ハウジング17の周壁17bとモータハウジング15の周壁15bとによって挟持されている。中間ハウジング17は、吐出ハウジング16に対してモータハウジング15側に配置されている。中間ハウジング17、軸支ハウジング18、及びモータハウジング15は、中間ハウジング17及びフランジ部23を貫通してモータハ
ウジング15に螺合するボルト30によって一体的に固定されている。なお、フランジ部23の外周部とモータハウジング15の周壁15bの開口端面15eとの間には図示しない板状のガスケットが介在されており、ガスケットによってフランジ部23とモータハウジング15の周壁15bとの間がシールされている。また、フランジ部23の外周部と中間ハウジング17の周壁17bの開口端面17eとの間には図示しない板状のガスケットが介在されており、ガスケットによってフランジ部23と中間ハウジング17の周壁17bとの間がシールされている。
【0027】
図2に示すように、圧縮機構13は、固定スクロール31と、固定スクロール31に対向配置される可動スクロール32と、を有している。よって、本実施形態の圧縮機構13は、スクロール式である。固定スクロール31及び可動スクロール32は、中間ハウジング17の周壁17bの内側に配置されている。したがって、中間ハウジング17の周壁17bは、圧縮機構13を回転軸12の径方向外側で覆っている。したがって、周壁17bは、圧縮機構13を囲繞する。
【0028】
固定スクロール31は、回転軸12の軸方向において、可動スクロール32よりも中間ハウジング17の底壁17a側に位置している。固定スクロール31は、円板状の固定基板31aと、固定基板31aから中間ハウジング17の底壁17aとは反対側に向けて立設された固定渦巻壁31bと、を有している。また、固定スクロール31は、固定基板31aの外周部から筒状に延びる固定外周壁31cを有している。固定外周壁31cは、固定渦巻壁31bを取り囲んでいる。固定外周壁31cの開口端面は、固定渦巻壁31bの先端面よりも固定基板31aとは反対側に位置している。
【0029】
可動スクロール32は、固定基板31aと対向する円板状をなす可動基板32aと、可動基板32aから固定基板31aに向けて立設される可動渦巻壁32bと、を有している。固定渦巻壁31bと可動渦巻壁32bとは互いに噛み合わされている。可動渦巻壁32bは、固定外周壁31cの内側に位置している。固定渦巻壁31bの先端面は可動基板32aに接触しているとともに、可動渦巻壁32bの先端面は固定基板31aに接触している。そして、固定基板31a、固定渦巻壁31b、固定外周壁31c、可動基板32a、及び可動渦巻壁32bによって、冷媒を圧縮する圧縮室33が区画されている。したがって、圧縮機構13は、固定スクロール31と可動スクロール32との噛み合いによって形成される圧縮室33を有している。
【0030】
固定基板31aの中央部には、円孔状の吐出口31hが形成されている。吐出口31hは、固定基板31aを厚み方向に貫通している。固定基板31aにおける可動スクロール32とは反対側の端面には、吐出口31hを開閉する吐出弁機構34が取り付けられている。
【0031】
可動基板32aにおける固定基板31aとは反対側の端面32eには、円筒状のボス部32fが突設されている。ボス部32fの軸方向は、回転軸12の軸方向に一致している。また、可動基板32aの端面32eにおけるボス部32fの周囲には、円孔状の凹部35が複数形成されている。複数の凹部35は、回転軸12の周方向に所定の間隔をあけて配置されている。各凹部35内には円環状のリング部材36が嵌着されている。また、軸支ハウジング18における中間ハウジング17側の端面には、各リング部材36内に挿入されるピン37が突設されている。
【0032】
固定スクロール31は、中間ハウジング17の周壁17bの内側での回転軸12の軸線L1を回転中心とした回転が規制された状態で、軸支ハウジング18に対して位置決めされている。軸支ハウジング18における中間ハウジング17側の端面は、固定外周壁31cの開口端面に接触している。固定スクロール31は、軸支ハウジング18における中間
ハウジング17側の端面と中間ハウジング17の底壁17aとによって挟み込まれることにより、中間ハウジング17の周壁17bの内側での回転軸12の軸方向への移動が規制された状態で、中間ハウジング17の周壁17bの内側に配置されている。
【0033】
回転軸12の他端側の端面12eには、回転軸12の軸線L1に対して偏心した位置から可動スクロール32に向けて突出する偏心軸38が一体形成されている。偏心軸38の軸方向は、回転軸12の軸方向に一致している。偏心軸38は、ボス部32f内に挿入されている。
【0034】
偏心軸38の外周面には、バランスウェイト39が一体化されたブッシュ40が嵌合されている。バランスウェイト39は、ブッシュ40に一体形成されている。バランスウェイト39は、軸支ハウジング18の周壁22内に収容されている。可動スクロール32は、ブッシュ40及び転がり軸受40aを介して偏心軸38と相対回転可能に偏心軸38に支持されている。
【0035】
回転軸12の回転は、偏心軸38、ブッシュ40、及び転がり軸受40aを介して可動スクロール32に伝達され、可動スクロール32は自転する。そして、各ピン37と各リング部材36の内周面とが接触することにより、可動スクロール32の自転が阻止されて、可動スクロール32の公転運動のみが許容される。これにより、可動スクロール32は、可動渦巻壁32bが固定渦巻壁31bに接触しながら公転運動し、圧縮室33の容積が減少することにより冷媒が圧縮される。よって、回転軸12の回転によって圧縮機構13が駆動する。バランスウェイト39は、可動スクロール32が公転運動する際に可動スクロール32に作用する遠心力を相殺して、可動スクロール32のアンバランス量を低減する。
【0036】
モータハウジング15の周壁15bの内周面の一部には、第1溝41が形成されている。第1溝41は、周壁15bの開口端に開口している。また、軸支ハウジング18のフランジ部23の外周部には、第1溝41に連通する第1孔42が形成されている。第1孔42は、フランジ部23を厚み方向に貫通する。さらに、中間ハウジング17の周壁17bの内周面の一部には、第1孔42に連通する第2溝43が形成されている。また、固定スクロール31の固定外周壁31cには、固定外周壁31cを厚み方向に貫通する第2孔44が形成されている。第2孔44は、第2溝43に連通している。第2孔44は、圧縮室33における最外周部分に連通している。
【0037】
そして、モータ室24内の冷媒は、第1溝41、第1孔42、第2溝43、及び第2孔44を通過して、圧縮室33における最外周部分に吸入される。圧縮室33における最外周部分に吸入された冷媒は、可動スクロール32の公転運動により圧縮室33内で圧縮される。
【0038】
ハウジング11内には、背圧室45が形成されている。背圧室45は、軸支ハウジング18の周壁22の内側に位置している。よって、背圧室45は、ハウジング11内における可動基板32aに対して固定基板31aとは反対側の位置に形成されている。軸支ハウジング18は、背圧室45とモータ室24とを区画している。
【0039】
可動スクロール32には、可動基板32a及び可動渦巻壁32bを貫通するとともに圧縮室33内の冷媒を背圧室45に導入する背圧導入通路46が形成されている。背圧室45は、圧縮室33内の冷媒が背圧導入通路46を介して導入されるため、モータ室24よりも高圧となっている。そして、背圧室45の圧力が高くなることによって、可動渦巻壁32bの先端面が固定基板31aに押し付けられるように可動スクロール32が固定スクロール31に向けて付勢される。
【0040】
回転軸12には、軸内通路47が形成されている。軸内通路47の一端は、回転軸12の端面12eに開口している。軸内通路47の他端は、回転軸12の外周面のうち、ベアリング19に支持されている部分に開口している。よって、軸内通路47は、背圧室45とモータ室24とを連通している。
【0041】
図3に示すように、固定基板31aには、一対のインジェクションポート50が形成されている。したがって、圧縮機構13は、インジェクションポート50を備えている。各インジェクションポート50は円孔状であるとともに、可動スクロール32が公転運動したとしても、隣接する圧縮室33同士がインジェクションポート50を介して連通してしまうことが無いように、固定基板31aに形成される位置や大きさが設定されている。各インジェクションポート50は、圧縮室33に吸入された冷媒の吸入圧よりも高く、圧縮室33から吐出される冷媒の吐出圧よりも低い中間圧の冷媒を、外部冷媒回路25から圧縮途中の圧縮室33に導入する。
【0042】
図1に示すように、中間ハウジング17の底壁17aには、吐出口31hに連通する連通通路51が形成されている。連通通路51は、中間ハウジング17の底壁17aの外面に開口している。
【0043】
吐出ハウジング16における中間ハウジング17側の端面には、吐出室形成凹部52が形成されている。吐出室形成凹部52の内側は、連通通路51に連通している。吐出ハウジング16は、吐出ポート53と、吐出ポート53に連通する油分離室54と、を有している。さらに、吐出ハウジング16には、吐出室形成凹部52の内側と油分離室54とを連通する通路55が形成されている。油分離室54には、油分離筒56が設けられている。
【0044】
中間ハウジング17は、外部冷媒回路25から中間圧の冷媒を導入する導入ポート60と、導入ポート60と各インジェクションポート50とを連通する連通路61と、を有している。連通路61は、導入ポート60に連通する収容凹部62と、収容凹部62の底面に開口するとともに各インジェクションポート50それぞれに中間圧の冷媒を供給するための一対の供給通路63と、を有している。収容凹部62は、中間ハウジング17における吐出ハウジング16側の端面に形成されている。収容凹部62は、平面視略矩形孔状である。収容凹部62の開口は、吐出室形成凹部52に対向している。
【0045】
図4に示すように、収容凹部62は、第1凹部62aと、第1凹部62aの底面に形成される第2凹部62bと、を有している。各供給通路63の一端は、第2凹部62bの底面に開口している。各供給通路63の他端は、中間ハウジング17の底壁17aの内面に開口し、各インジェクションポート50に連通している。各供給通路63は、円孔状である。各供給通路63は、各インジェクションポート50と同じ大きさに形成されている。第1凹部62aの底面には、一対の雌ねじ孔62hが形成されている。
【0046】
図5に示すように、中間ハウジング17は、逆止弁70を有している。収容凹部62は、逆止弁70を収容する。したがって、中間ハウジング17は、逆止弁70を内部に収容する。逆止弁70は、バルブプレート71と、リード弁形成プレート72と、リテーナ形成プレート73と、を有している。
【0047】
バルブプレート71は平板状である。バルブプレート71は、金属材料製であり、例えば、鉄製である。バルブプレート71の外形は、第1凹部62aの内側面に沿った形状になっている。バルブプレート71の中央部には、単一の弁孔71hが形成されている。弁孔71hは、平面視長四角孔形状である。弁孔71hは、バルブプレート71を厚み方向
に貫通している。バルブプレート71の外周部には、一対のボルト挿通孔71aが形成されている。
【0048】
リード弁形成プレート72は薄平板状である。リード弁形成プレート72は、金属材料製であり、例えば、鉄製である。リード弁形成プレート72の外形は、第1凹部62aの内側面に沿った形状になっている。リード弁形成プレート72は、外枠部72aと、外枠部72aの内周縁の一部分から外枠部72aの中央部に向けて突出するリード弁72vと、を有している。リード弁72vは、平面視台形板状である。リード弁72vの先端部は、弁孔71hを覆うことが可能な大きさに形成されている。したがって、リード弁72vは、弁孔71hを開閉可能である。また、外枠部72aには、一対のボルト挿通孔72hが形成されている。
【0049】
リテーナ形成プレート73は、薄平板状である。リテーナ形成プレート73は、ゴム材料製である。リテーナ形成プレート73の外形は、第1凹部62aの内側面に沿った形状になっている。リテーナ形成プレート73は、外枠部73aと、外枠部73aの内周縁の一部分から湾曲しながら突出して、リード弁72vの開度を規制するリテーナ73vと、を有している。リテーナ73vは、第2凹部62bに収容されている。また、外枠部73aには、一対のボルト挿通孔73hが形成されている。
【0050】
第1凹部62aの底面上には、リテーナ形成プレート73、リード弁形成プレート72、及びバルブプレート71が、この順序で配置されている。リテーナ形成プレート73、リード弁形成プレート72、及びバルブプレート71が第1凹部62aに収容された状態において、各ボルト挿通孔71a,72h,73hは重なり合っている。そして、リテーナ形成プレート73、リード弁形成プレート72、及びバルブプレート71は、各ボルト挿通孔71a,72h,73hに挿通される各締結ボルト74が各雌ねじ孔62hにそれぞれ螺合されることによって、第1凹部62aの底面に締結されている。
【0051】
図6に示すように、導入ポート60は、第1凹部62aの内側面において、回転軸12の軸線L1に対して直交する位置であって、バルブプレート71よりも吐出ハウジング16側に開口している。リード弁72vは、バルブプレート71に対して各供給通路63側に配置されている。
【0052】
中間ハウジング17には、収容凹部62の開口を閉塞する蓋部材65が取り付けられている。蓋部材65は、板状の蓋部材底壁65aと、蓋部材底壁65aの外周部から筒状に延びる蓋部材周壁65bと、を有する有底筒状である。蓋部材65は、締結ボルト65cによって中間ハウジング17に締結されている。蓋部材65は、吐出室形成凹部52の内部に配置されている。蓋部材65と中間ハウジング17との間は、ガスケット29の一部分によってシールされている。よって、収容凹部62の内部と吐出室形成凹部52との間は、ガスケット29によってシールされている。
【0053】
そして、ガスケット29、吐出室形成凹部52、及び蓋部材65によって吐出室68が区画されている。したがって、吐出ハウジング16は、吐出室68を有している。収容凹部62は、吐出室68に対向している。そして、蓋部材65は、収容凹部62と吐出室68とを仕切っている。吐出室68は、連通通路51に連通している。そして、吐出室68には、圧縮室33で圧縮された冷媒が吐出口31h及び連通通路51を介して吐出される。したがって、吐出室68には、圧縮機構13から吐出圧の冷媒が吐出される。吐出室68に吐出された冷媒は、通路55を介して油分離室54に流入し、油分離室54内において、冷媒に含まれるオイルが油分離筒56により冷媒から分離される。そして、オイルが分離された冷媒が、吐出ポート53から外部冷媒回路25へ吐出される。
【0054】
収容凹部62の内部は、バルブプレート71によって、導入ポート60側の第1室621と、各供給通路63側の第2室622とに仕切られている。第1室621は、バルブプレート71、第1凹部62aの内側面、及び蓋部材65によって区画されている。第2室622は、バルブプレート71及び第2凹部62bによって区画されている。第1室621と第2室622との間は、リテーナ形成プレート73の外枠部73aによってシールされている。リテーナ形成プレート73の外枠部73aにおける第1室621と第2室622との間のシールは、各締結ボルト74の締結によって確保されている。
【0055】
図1に示すように、中間ハウジング17の外周面には取付脚75が2つ突設されている。各取付脚75は、筒状である。各取付脚75は、中間ハウジング17の周壁17bの外周面からそれぞれ突出している。両取付脚75は、回転軸12の軸線L1を挟んだ回転軸12の径方向両側にそれぞれ配置されている。両取付脚75の軸線は互いに平行に延びている。両取付脚75の軸線は、電動圧縮機10を回転軸12の軸方向から見たときに、回転軸12の軸方向に対して直交する方向に延びている。本実施形態の電動圧縮機10は、各取付脚75の内側をそれぞれを通過した図示しないボルトが、例えば、車両のボデーにねじ込まれることによりボデーに取り付けられている。なお、中間ハウジング17の周壁17bの厚みは、固定渦巻壁31bの厚みと可動渦巻壁32bの厚みとを足し合わせた厚みよりも大きい。
【0056】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば、電動圧縮機10における高負荷運転時では、逆止弁70は、外部冷媒回路25から中間圧の冷媒が導入ポート60に導入されることにより開弁する。具体的には、外部冷媒回路25から中間圧の冷媒が導入ポート60に導入されると、中間圧の冷媒が導入ポート60を通過して収容凹部62における第1室621に流れ込み、弁孔71h内に向けて流れる。そして、弁孔71h内に向けて流れ込んだ中間圧の冷媒がリード弁72vを押し退ける。これにより、リード弁72vが弁孔71hを開放し、逆止弁70が開弁状態となる。そして、中間圧の冷媒が弁孔71hを通過して収容凹部62における第2室622に流れ込み、各供給通路63及び各インジェクションポート50を介して圧縮途中の圧縮室33に導入される。つまり、各供給通路63は、圧縮途上の圧縮室33へ冷媒を供給する。これにより、圧縮室33に導入される冷媒の流量が増え、電動圧縮機10における高負荷運転時での性能が向上する。
【0057】
また、逆止弁70は、各インジェクションポート50から連通路61を介して導入ポート60へ冷媒が流れることを防止するために閉弁する。具体的には、外部冷媒回路25から中間圧の冷媒が導入ポート60に導入されなくなると、リード弁72vが、中間圧の冷媒によって押し退けられる前の元の位置に復帰して、弁孔71hを閉塞する。これにより、逆止弁70が閉弁状態となる。すると、圧縮室33から各インジェクションポート50、各供給通路63、及び第2室622へ流れた冷媒が、弁孔71hを介して第1室621へ流れることが阻止され、導入ポート60から外部冷媒回路25へ冷媒が逆流してしまうことが防止される。つまり、逆止弁70は、各供給通路63からの冷媒の逆流を防ぐ。
【0058】
ところで、電動圧縮機10の高負荷運転時においては、回転軸12が高速で回転すると、回転軸12を回転可能に支持する軸支ハウジング18に大きな振動が伝わる。このとき、軸支ハウジング18が、中間ハウジング17の周壁17bとモータハウジング15の周壁15bとによってフランジ部23が挟持された状態で、中間ハウジング17及びフランジ部23を貫通してモータハウジング15の周壁15bに螺合するボルト30によって、中間ハウジング17及びモータハウジング15と一体的に固定される。このため、締結力が軸支ハウジング18に十分に作用し、軸支ハウジング18の振動が抑制され易くなり、軸支ハウジング18の振動に伴う騒音の発生が抑制される。
【0059】
また、中間ハウジング17においては、逆止弁70の開閉動作が行われることにより、中間ハウジング17に振動が伝わる。このとき、中間ハウジング17は、周壁17bを有しているため、周壁17bを有していない中間ハウジング17に比べると、中間ハウジング17の剛性が向上している。したがって、逆止弁70の開閉動作が行われることにより、中間ハウジング17に振動が伝わっても、中間ハウジング17の振動が抑制され易くなっており、中間ハウジング17の振動に伴う騒音の発生が抑制される。
【0060】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)軸支ハウジング18が、中間ハウジング17の周壁17bとモータハウジング15の周壁15bとによってフランジ部23が挟持された状態で、中間ハウジング17及びフランジ部23を貫通してモータハウジング15の周壁15bに螺合するボルト30によって、中間ハウジング17及びモータハウジング15と一体的に固定されている。このため、締結力が軸支ハウジング18に十分に作用し、軸支ハウジング18の振動を抑制し易くすることができる。したがって、軸支ハウジング18の振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。また、中間ハウジング17は、周壁17bを有しているため、周壁17bを有していない中間ハウジング17に比べると、中間ハウジング17の剛性が向上している。したがって、逆止弁70の開閉動作が行われることにより、中間ハウジング17に振動が伝わっても、中間ハウジング17の振動を抑制し易くすることができ、中間ハウジング17の振動に伴う騒音の発生を抑制することができる。このような電動圧縮機10は、静粛性に優れる。
【0061】
(2)中間ハウジング17には、収容凹部62の開口を閉塞するとともに収容凹部62と吐出室68とを仕切る蓋部材65が取り付けられている。蓋部材65は、蓋部材底壁65aと、蓋部材底壁65aの外周部から筒状に延びる蓋部材周壁65bと、を有する有底筒状である。これによれば、例えば、蓋部材65が平板状である場合に比べると、蓋部材65の剛性を向上させることができるため、その結果として、蓋部材65が取り付けられる中間ハウジング17の剛性をさらに向上させることができる。したがって、逆止弁70の開閉動作が行われることにより、中間ハウジング17に振動が伝わっても、中間ハウジング17の振動をさらに抑制し易くすることができ、中間ハウジング17の振動に伴う騒音の発生をさらに抑制することができる。その結果、静粛性に優れる。
【0062】
(3)中間ハウジング17の外周面には取付脚75が突設されている。これによれば、中間ハウジング17の外周面に取付脚75が突設されていない場合に比べると、中間ハウジング17の剛性をさらに向上させることができる。したがって、逆止弁70の開閉動作が行われることにより、中間ハウジング17に振動が伝わっても、中間ハウジング17の振動をさらに抑制し易くすることができ、中間ハウジング17の振動に伴う騒音の発生をさらに抑制することができる。その結果、静粛性に優れる。
【0063】
(4)中間ハウジング17の周壁17bは、圧縮機構13を回転軸12の径方向外側で覆っている。これによれば、例えば、固定スクロール31と可動スクロール32との接触音等、圧縮機構13から発生する騒音が電動圧縮機10から外部へ伝達してしまうことを中間ハウジング17の周壁17bによって抑制することができる。したがって、電動圧縮機10において騒音の発生をさらに抑制することができ、静粛性に優れる。
【0064】
(5)蓋部材65が有底筒状である。これによれば、例えば、蓋部材65が平板状である場合に比べると、第1室621の容積を増加させることができるため、第1室621での冷媒の脈動を低減することができる。その結果、冷媒の脈動に伴う騒音の発生を抑制することができるため、電動圧縮機10において騒音の発生をさらに抑制することができ、静粛性に優れる。
【0065】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
○ 実施形態において、ボルト挿通孔17hが、中間ハウジング17の周壁17bを貫通していなくてもよく、中間ハウジング17の底壁17aのみを貫通していてもよい。すなわち、中間ハウジング17及びフランジ部23を貫通してモータハウジング15に螺合するボルト30が、中間ハウジング17の周壁17bを貫通していなくてもよく、中間ハウジング17の底壁17aを貫通して、例えば、周壁17bの内側を通過していてもよい。
【0067】
○ 実施形態において、蓋部材65は、有底筒状でなくてもよく、例えば、平板状であってもよい。要は、蓋部材65は、収容凹部62の開口を閉塞するとともに収容凹部62と吐出室68とを仕切ることが可能であれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0068】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、中間ハウジング17の外周面に取付脚75が1つだけ突設されている構成であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、中間ハウジング17の外周面に取付脚75が突設されていない構成であってもよい。
【0069】
○ 実施形態において、リード弁72vの形状は、特に限定されるものではない。要は、リード弁72vの先端部が、弁孔71hを開閉可能な形状に形成されていればよい。
○ 実施形態において、弁孔71hの形状は特に限定されるものではない。この場合、リード弁72vの先端部を、弁孔71hを開閉可能な形状に変更することが必要である。
【0070】
○ 実施形態において、逆止弁70は、リード弁72vを有する構成でなくてもよく、例えば、コイルスプリングの付勢力と導入ポート60からの中間圧の冷媒の圧力との関係から開弁位置と閉弁位置とを往復運動する構成であるスプール弁を有する構成である逆止弁70であってもよい。要は、逆止弁70は、外部冷媒回路25から中間圧の冷媒が導入ポート60に導入されることにより開弁するとともに、インジェクションポート50から連通路61を介して導入ポート60へ冷媒が流れることを防止するために閉弁することが可能であれば、その具体的な構成は限定されるものではない。
【0071】
○ 実施形態において、固定基板31aに、インジェクションポート50が1つだけ形成されていてもよいし、3つ以上形成されていてもよい。例えば、固定基板31aにインジェクションポート50が1つだけ形成されている場合は、供給通路63も、中間ハウジング17に1つだけ形成される。また、例えば、固定基板31aにインジェクションポート50が3つ以上形成されている場合は、供給通路63も、中間ハウジング17に3つ以上形成される。つまり、供給通路63は、インジェクションポート50と同じ数だけ中間ハウジング17に形成される。
【0072】
○ 実施形態において、中間ハウジング17の周壁17bの厚みは、例えば、固定外周壁31cの厚みよりも大きくてもよい。
○ 実施形態において、圧縮機構13は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
【0073】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置に用いられていたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮機構13により圧縮するために用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…電動圧縮機、12…回転軸、13…圧縮機構、14…電動モータ、15…モータハウジング、15b…モータ側周壁である周壁、16…吐出ハウジング、17…中間ハウジング、17b…圧縮機構側周壁である周壁、18…軸支ハウジング、20…本体部、21h…挿通孔、23…フランジ部、30…ボルト、33…圧縮室、62…収容凹部、63…供給通路、65…蓋部材、65a…蓋部材底壁、65b…蓋部材周壁、68…吐出室、70…逆止弁、75…取付脚。