IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許-分取液体クロマトグラフィシステム 図1
  • 特許-分取液体クロマトグラフィシステム 図2
  • 特許-分取液体クロマトグラフィシステム 図3
  • 特許-分取液体クロマトグラフィシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】分取液体クロマトグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/82 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 30/80 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/44 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N30/82
G01N30/80 C
G01N30/24 Z
G01N30/44
G01N30/46 A
G01N30/26 M
G01N30/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020067430
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021162550
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智之
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-156152(JP,A)
【文献】特表2008-539398(JP,A)
【文献】特開平01-265157(JP,A)
【文献】特開平01-235849(JP,A)
【文献】国際公開第2010/021008(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0134808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/82
G01N 30/80
G01N 30/24
G01N 30/44
G01N 30/46
G01N 30/26
G01N 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相を送液する送液部と、
前記移動相によって搬送されてきたサンプルを分離するための分離カラムと、
サンプルを収容するための複数の容器が配置される容器配置部、前記容器配置部に配置されている容器からサンプルを採取して保持し、前記送液部と前記分離カラムとの間に介在させられることによって前記送液部からの移動相中に前記サンプルを注入する注入部、及び、前記分離カラムから溶出したサンプルを前記容器配置部に配置されている容器に分画して捕集する分取部を、それぞれが独自に備えている複数のリキッドハンドラと、
前記送液部と前記分離カラムとの間で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記注入部のうちの1つを選択的に前記送液部と前記分離カラムとの間に介在させるように構成された注入切替部と、
前記分離カラムの下流で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記分取部のうちの1つを選択的に前記分離カラムの下流に接続するように構成された分取切替部と、を備えた分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項2】
前記複数のリキッドハンドラのそれぞれの前記注入部は互いに略同一の内部容量をもち、
前記複数のリキッドハンドラのそれぞれの前記注入部と前記注入切替部との間を接続する流路の内部容量は互いに略同一である、請求項1に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項3】
前記複数のリキッドハンドラの前記注入部のそれぞれは入口ポート及び出口ポートを有し、
前記注入切替部は、前記注入部のそれぞれの前記入口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記送液部と流体接続する入口切替バルブ、及び、前記注入部のそれぞれの前記出口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記分離カラムに流体接続する出口切替バルブを備えている、請求項1又は2に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項4】
前記分離カラムにおいて分離されたサンプルを検出するための検出器と、
前記検出器により取得される検出信号に基づいて前記複数のリキッドハンドラ、前記注入切替部及び前記分取切替部のそれぞれの動作を制御し、前記分離カラムから溶出したサンプルをいずれかの前記リキッドハンドラの前記容器配置部に配置されている前記容器に捕集するように構成された制御装置と、を備えている請求項1から3のいずれか一項に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項5】
前記容器に捕集されているサンプルのうち再注入すべきサンプルを決定するように構成された再注入サンプル決定部をさらに備え、
前記制御装置は、前記複数のリキッドハンドラ、前記注入切替部及び前記分取切替部のそれぞれの動作を制御して、前記再注入サンプル決定部により決定された前記再注入すべきサンプルを当該サンプルを収容している前記容器から採取して前記送液部からの移動相中に注入するように構成されている、請求項4に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項6】
前記分離カラムとは別途設けられた第2の分離カラムをさらに備え、
前記容器配置部に配置されている容器からサンプルを採取して保持し、前記送液部と前記第2の分離カラムとの間に介在させられることによって前記送液部からの移動相中に前記サンプルを注入する第2の注入部が、前記複数のリキッドハンドラのそれぞれに設けられており、
前記注入切替部は、前記送液部と前記第2の分離カラムとの間で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記第2の注入部のうちの1つを選択的に前記送液部と前記第2の分離カラムとの間に介在させるように構成されており、
前記制御装置は、前記複数のリキッドハンドラ、前記注入切替部及び前記分取切替部のそれぞれの動作を制御して、前記再注入サンプル決定部により決定された前記再注入すべきサンプルを当該サンプルを収容している前記容器から採取して前記送液部からの移動相中に注入するように構成されている、請求項5に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項7】
前記複数のリキッドハンドラの前記第2の注入部のそれぞれが入口ポート及び出口ポートを有し、
前記注入切替部は、前記第2の注入部のそれぞれの前記入口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記送液部と流体接続する第2の入口切替バルブ、及び、前記第2の注入部のそれぞれの前記出口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記第2の分離カラムに流体接続する第2の出口切替バルブを備えている、請求項6に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項8】
前記再注入サンプル決定部は、前記検出器において得られた検出信号に基づいて作成されるクロマトグラム上でユーザにより指定された部分を前記再注入すべきサンプルとして決定するように構成されている、請求項5から7のいずれか一項に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項9】
前記注入部は、前記分取部によって前記容器配置部の前記容器に捕集されたサンプルを前記送液部からの前記移動相中に注入し得るように構成されている、請求項1に記載の分取液体クロマトグラフィシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分取液体クロマトグラフィシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分取液体クロマトグラフィは、液体クロマトグラフィによりサンプルを分離し、分離されたサンプル中の成分を個別の容器に分画して捕集するものである。分取液体クロマトグラフィを実施するためのシステムは、移動相を送液する送液装置、サンプルを移動相中に注入するオートサンプラ、分離カラムを内部に収容して分離カラムの温度を調節するカラムオーブン、分離カラムから溶出したサンプルを検出する検出器、及び、検出器で得られる検出信号に基づいて分離カラムから溶出したサンプルを個別の捕集容器に分画捕集するフラクションコレクタなどのデバイスが組み合わされて構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-162217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような分取液体クロマトグラフィシステムでは、オートサンプラとフラクションコレクタとが別々のデバイスであるため、フラクションコレクタによって捕集容器に分取されたサンプルの再注入を自動的に行なうことができない。捕集容器に捕集されたサンプルの再注入を行なうには、ユーザが手作業でフラクションコレクタ内に配置されている捕集容器をオートサンプラ内へ移動させる必要がある。
【0005】
液体クロマトグラフィ用のデバイスとして、オートサンプラ及びフラクションコレクタの機能を兼ね備えたリキットハンドラが存在する(特許文献1参照。)。リキッドハンドラを用いた分取液体クロマトグラフィシステムを構築すれば、液体クロマトグラフィによって分離されたサンプルの分取だけでなく、分取されたサンプルの再注入までを自動的に実行することができる。
【0006】
サンプル中に含まれる成分の数が多い場合など、分離カラムから溶出したサンプルを多数の容器に分画捕集したい場合がある。一方で、リキッドハンドラに設置することができる捕集容器の数には限界がある。そのため、リキッドハンドラに設置可能な捕集容器よりも多くサンプルを分画捕集したい場合には、リキッドハンドラとは別にフラクションコレクタを接続するといった対応が必要となる。しかし、フラクションコレクタでは、捕集容器に捕集されたサンプルの再注入を自動的に行なうことができないため、フラクションコレクタによって捕集されたサンプルの再注入を行ないたい場合は、再注入の対象となる捕集容器をユーザが手作業でフラクションコレクタからリキッドハンドラへ移動させる必要がある。
【0007】
リキッドハンドラにおける容器の設置可能数を十分に増大させることも考えられるが、そうするとリキッドハンドラ自体が大型化してしまい、システムの設置面積が大きくなる。また、ユーザの扱うサンプルによって分画捕集の数も異なるため、場合によってはシステムの設置面積及びコストを必要以上に増大させてしまうという懸念もある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、リキッドハンドラ自体を大型化することなく、多数の容器へのサンプルの分画捕集と分画捕集したサンプルの再注入の自動化を可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る分取液体クロマトグラフィシステムは、移動相を送液する送液部と、前記移動相によって搬送されてきたサンプルを分離するための分離カラムと、サンプルを収容するための複数の容器が配置される容器配置部、前記容器配置部に配置されている容器からサンプルを採取して保持し、前記送液部と前記分離カラムとの間に介在させられることによって前記送液部からの移動相中に前記サンプルを注入する注入部、及び、前記分離カラムから溶出したサンプルを前記容器配置部に配置されている容器に分画して捕集する分取部を、それぞれが独自に備えている複数のリキッドハンドラと、前記送液部と前記分離カラムとの間で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記注入部のうちの1つを選択的に前記送液部と前記分離カラムとの間に介在させるように構成された注入切替部と、前記分離カラムの下流で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記分取部のうちの1つを選択的に前記分離カラムの下流に接続するように構成された分取切替部と、を備えている。
【0010】
本発明で使用されるリキッドハンドラは、オートサンプラ機能を実現する注入部、及び、フラクションコレクタ機能を実現する分取部を備えたものである。本発明では、このようなリキッドハンドラを1つのシステム内において複数使用する。具体的には、注入部を使用するリキッドハンドラを複数のリキッドハンドラの中から注入切替部によって選択し、選択したリキッドハンドラの注入部をオートサンプラとして機能させ、分取部を使用するリキッドハンドラを複数のリキッドハンドラの中から分取切替部によって選択し、選択したリキッドハンドラの分取部をフラクションコレクタとして機能させる。リキッドハンドラの数は、分離カラムから溶出したサンプルを分画して捕集するために必要な容器の数によって決定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る分取液体クロマトグラフィシステムでは、注入部を使用するリキッドハンドラを複数のリキッドハンドラの中から注入切替部によって選択し、選択したリキッドハンドラの注入部をオートサンプラとして機能させ、分取部を使用するリキッドハンドラを複数のリキッドハンドラの中から分取切替部によって選択し、選択したリキッドハンドラの分取部をフラクションコレクタとして機能させるので、リキッドハンドラ自体を大型化させることなく、1台のリキッドハンドラに設置可能な容器の数よりも多数の容器へのサンプルの分画捕集及び分画捕集されたサンプルの再注入を自動的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】分取液体クロマトグラフィシステムの一実施例を概略的に示すブロック図である。
図2】同実施例によって実現される分離・分取用の液体クロマトグラフの流路構成図である。
図3】同実施例によって実現される分析用の液体クロマトグラフの流路構成図である。
図4】同実施例における再注入時の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る分取液体クロマトグラフィシステムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示されているように、この実施例の分取液体クロマトグラフィシステムは、送液部2、注入切替部4、n台(nは2以上の整数)のリキットハンドラ6-1から6-n、カラムオーブン8、検出器10A、検出器10B、分取切替部12、制御装置16、演算処理装置100、及び、表示装置110を備えている。
【0015】
送液部2は、互いに独立して移動相を送液する送液装置2A及び送液装置2Bを備えている。
【0016】
注入切替部4は、入口切替バルブ24A、入口切替バルブ24B(=第2の入口切替バルブ)、出口切替バルブ25A、及び、出口切替バルブ25B(=第2の出口切替バルブ)を備えている。入口切替バルブ24A、入口切替バルブ24B、出口切替バルブ25A、及び、出口切替バルブ25Bのそれぞれは、1つの共通ポートと複数の選択ポートを有し、共通ポートといずれか1つの選択ポートとの間を選択的に流体連通させるように構成されている。
【0017】
カラムオーブン8内には分離カラム14A及び分離カラム14B(=第2の分離カラム)が収容されている。分離カラム14と分離カラム14Bは、内部に充填されている分離媒体、内径、カラム長のうちの少なくともいずれかが互いに異なっていることにより分離特性が異なっている。なお、分離カラム14と分離カラム14Bは互いに分離特性が同じであってもよい。
【0018】
リキッドハンドラ6-1から6-nのそれぞれには、サンプルを収容するための複数の容器が配置される容器配置部18が設けられている。リキッドハンドラ6-1から6-nは、注入部20A、注入部20B(第2の注入部)、及び、分取部22をそれぞれ備えている。注入部20A及び注入部20Bのそれぞれは、容器配置部18に配置されている容器からサンプルを採取して移動相中に注入するオートサンプラとしての機能を実現するものである。分取部22は、分離カラム14Aから溶出したサンプルを分画して容器配置部18に配置されている個別の容器に捕集するフラクションコレクタとしての機能を実現する。
【0019】
送液装置2Aは、流路26Aを介して入口切替バルブ24Aの共通ポートに接続されている。入口切替バルブ24Aの選択ポートには、リキッドハンドラ6-1から6-nの各注入部20Aの入口ポート30Aに通じる流路28Aがそれぞれ接続されている。すなわち、入口切替バルブ24Aは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの注入部20Aの入口ポートに送液装置2Aを選択的に接続する。
【0020】
リキッドハンドラ6-1から6-nの各注入部20Aの出口ポート32Aは、流路34Aを介して出口切替バルブ25Aの選択ポートにそれぞれ接続されている。出口切替バルブ25Aの共通ポートは流路36Aを介して分離カラム14Aの入口に接続されている。すなわち、出口切替バルブ25Aは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの注入部20Aの出口ポートを分離カラム14Aに選択的に接続する。
【0021】
送液装置2Bは、流路26Bを介して入口切替バルブ24Bの共通ポートに接続されている。入口切替バルブ24Bの選択ポートには、リキッドハンドラ6-1から6-nの各注入部20Bの入口ポート30Bに通じる流路28Bがそれぞれ接続されている。すなわち、入口切替バルブ24Bは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの注入部20Bの入口ポートに送液装置2Bを選択的に接続する。
【0022】
リキッドハンドラ6-1から6-nの各注入部20Bの出口ポート32Bは、流路34Bを介して出口切替バルブ25Bの選択ポートにそれぞれ接続されている。出口切替バルブ25Bの共通ポートは流路36Bを介して分離カラム14Bの入口に接続されている。すなわち、出口切替バルブ25Bは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの注入部20Bの出口ポートを分離カラム14Bに選択的に接続する。
【0023】
入口切替バルブ24A及び出口切替バルブ25Aは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの注入部20Aを送液装置2Aと分離カラム14Aとの間に介在させるように、互いに連動して切り替えられる。入口切替バルブ24B及び出口切替バルブ25Bは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの注入部20Bを送液装置2Bと分離カラム14Bとの間に介在させるように、互いに連動して切り替えられる。
【0024】
分離カラム14Aの出口は流路38Aを介して検出器10Aの入口に接続され、検出器10Aの出口は流路40を介して分取切替部12の共通ポートに接続されている。分離カラム14Bの出口は、流路38Bを介して検出器10Bの入口に接続されている。分取切替部12は、1つの共通ポートと複数の選択ポートを有する切替バルブであって、共通ポートといずれか1つの選択ポートとの間を選択的に流体連通させるように構成されている。分取切替部12の各選択ポートには、リキッドハンドラ6-1から6-nの各分取部22に通じる流路42が接続されている。すなわち、分取切替部12は、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれか1つのリキッドハンドラの分取部22を検出器10Aの出口に選択的に接続する。
【0025】
リキッドハンドラ6-1から6-nのそれぞれの注入部20Aの内部容量は互いに略同一であり、リキッドハンドラ6-1から6-nのそれぞれの注入部20Bの内部容量は互いに略同一である。そして、すべての流路28Aは互いに略同一の内部容量を有し、すべての流路28Bは互いに略同一の内部容量を有し、すべての流路34Aは互いに略同一の内部容量を有し、すべての流路34Bは互いに略同一の内部容量を有する。このため、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれのリキッドハンドラを用いてサンプルの注入が行われた場合にも、分離カラム14A及び14Bまでの系内における内部容量が均一になり、リキッドハンドラの個体差が分離データに与える影響が小さくなる。
【0026】
制御装置16は、CPU(中央演算装置)及び記憶装置等を備えた電子回路(例えばシステムコントローラ)によって実現されるものである。制御装置16には、演算処理装置100が通信可能に接続されている。演算処理装置100は、汎用の又は専用のコンピュータによって実現されるものである。演算処理装置100は、検出器10A及び10Bで取得された検出信号に基づいてクロマトグラムを作成する機能のほか種々の演算処理を行なう機能を備えている。演算処理装置100には液晶ディスプレイ等の表示装置110が電気的に接続されており、種々の情報が表示装置110に表示される。
【0027】
ユーザは演算処理装置100を通じて分離・分取又は分析の条件等の設定を行なうようになっている。ユーザによって設定された条件に関する情報は制御装置16に送信される。制御装置16は、演算処理装置100から送信される情報に基づいて、送液装置2A、送液装置2B、入口切替バルブ24A、入口切替バルブ24B、出口切替バルブ25A、出口切替バルブ25B、リキッドハンドラ6-1から6-n、カラムオーブン8、検出器10A、検出器10B、及び、分取切替部12の動作制御を行なう。
【0028】
上記の構成により、図2に示される分離・分取用の液体クロマトグラフと図3に示される分析用の液体クロマトグラフが構築される。
【0029】
サンプルの分離・分取を行なう場合は、分離・分取用の液体クロマトグラフが使用される。図2に示されているように、分離・分取用の液体クロマトグラフは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれかのリキッドハンドラの注入部20Aが選択的に送液装置2Aと分離カラム14Aとの間に介在し、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれかのリキッドハンドラの分取部22が検出器10Aの下流に選択的に接続されるようになっている。
【0030】
リキッドハンドラ6-1から6-nの注入部20Aはそれぞれ、高圧バルブ50A、シリンジポンプ52A、ニードル54A、及び、サンプルループ56Aを備えている。高圧バルブ50Aは、複数のポートを有し、それらのポート間の接続状態を切り替えるものである。高圧バルブ50Aの1つのポートは、流路28Aを介して入口切替バルブ24Aに接続された入口ポート30Aであり、高圧バルブ50Aの他の1つのポートは、流路34Aを介して出口切替バルブ25Aに接続された出口ポート32Aである。高圧ポート50Aの他のポートには、シリンジポンプ52A、ニードル54A、及び、サンプルループ56Aが接続されている。シリンジポンプ52Aはニードル54Aを通じてサンプルを採取するためのものであり、サンプルループ56Aはニードル54Aによって採取したサンプルを保持するためのものである。
【0031】
注入部20Aは、高圧バルブ50Aの切替えにより、入口切替バルブ24A及び出口切替バルブ25Aの間にサンプルループ56Aを介在させた状態、及び、入口切替バルブ24A及び出口切替バルブ25Aを互いの間にサンプルループ56Aを介在させることなく接続した状態のいずれか一方の状態となる。すなわち、注入部20Aは、ニードル54Aを通じて採取したサンプルをサンプルループ56Aに保持し、その後、サンプルループ56Aを送液装置2Aと分離カラム14Aとの間に介在させることによって、送液装置2Aからの移動相中にサンプルを注入する。
【0032】
注入部20Aによって送液装置2Aからの移動相中に注入されたサンプルは、分離カラム14Aへ搬送されて時間的に分離される。分離カラム14Aで分離されたサンプルは検出器10Aを経て、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちのいずれかのリキッドハンドラの分取部22に導入される。分取部22の動作は検出器10Aで得られる検出信号に基づいて制御され、それによって分離カラム14Aで分離されたサンプルが予め設定された条件に従って個別の容器に分画捕集される。
【0033】
なお、注入部20Aによって送液装置2Aからの移動相中に注入されるサンプルは、上記の分取クロマトグラフィによって個別の容器に分画捕集された後のサンプルであってもよい。すなわち、個別の容器に分画捕集されたサンプルが送液装置2Aからの移動相中に再注入されることもあり得る。
【0034】
上記の分取クロマトグラフィによって個別の容器に分画捕集されたサンプルの再分析を行なう場合には、分析用の液体クロマトグラフを使用することもできる。図3に示されているように、分析用の液体クロマトグラフは、リキッドハンドラ6-1から6-nのうちいずれかのリキッドハンドラの注入部20Bが、入口切替バルブ24B及び出口切替バルブ25Bによって、選択的に送液装置2Bと分離カラム14Bとの間に介在するようになっている。
【0035】
リキッドハンドラ6-1から6-nの注入部20Bはそれぞれ、注入部20Aと同様の構成を有するものであって、ニードル54Bを通じて採取したサンプルをサンプルループ56Bに保持し、その後、サンプルループ56Bを送液装置2Bと分離カラム14Bとの間に介在させることによって、送液装置2Bからの移動相中にサンプルを注入する。
【0036】
注入部20Bによって送液装置2Bからの移動相中に注入されたサンプルは分離カラム14Bへ搬送されて時間的に分離され、検出器10Bによって検出される。
【0037】
図1に戻って、演算処理装置100は再注入サンプル決定部102を備えている。再注入サンプル決定部102は、CPUが所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。再注入サンプル設定部102は、分画捕集されたサンプルの中からユーザによって指定されたサンプルを再注入すべきサンプルとして決定するように構成されている。
【0038】
個別の容器に分画捕集されたサンプルの再注入を行なう際の動作を、図1とともに図4のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
サンプルの分画捕集が終了した後、ユーザにより再注入の指示が演算処理装置100に入力されると、演算処理装置100は分離・分取されたサンプルのクロマトグラムを表示装置110に表示する(ステップ101)。クロマトグラムは、分画された各部分が認識できるような態様で表示される。ユーザは、表示されたクロマトグラム上で、さらなる分離・分取(再分取)又はさらなる分析(再分析)を行ないたい部分を指定することができる。再注入サンプル決定部102は、ユーザによってクロマトグラム上で指定された部分を再注入すべきサンプルとして決定し(ステップ102)、さらにそのサンプルを再分取するのか又は再分析するのかをユーザからの指示に基づいて決定する(ステップ103)。
【0040】
再注入すべきサンプルが決定されると、制御装置16は、演算処理装置100から送信される情報に基づいて、再注入すべきサンプルが収容されている容器を特定し(ステップ104)、再分取を実行する場合は注入部20Aを用いて送液装置2Aからの移動相中に対象のサンプルを注入し、再分析を実行する場合は注入部20Bを用いて送液装置2Bからの移動相中に対象のサンプルを注入する(ステップ105)。
【0041】
なお、以上において説明した実施例では、分離・分取用の液体クロマトグラフ及び分析用の液体クロマトグラフが構築されるように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、分離・分取用の液体クロマトグラフのみが構築されるものであってもよい。分離・分取用の液体クロマトグラフのみが構築される場合、送液装置2B、検出器10B、分離カラム14B、注入部20B、入口切替バルブ24B、及び、出口切替バルブ25Bは不要である。
【0042】
以上において説明した実施例は、本発明に係る分取クロマトグラフィシステムの実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係る分取クロマトグラフィシステムの実施形態は、以下に示すとおりである。
【0043】
本発明に係る分取液体クロマトグラフィシステムの一実施形態では、
移動相を送液する送液部と、
前記移動相によって搬送されてきたサンプルを分離するための分離カラムと、
サンプルを収容するための複数の容器が配置される容器配置部、前記容器配置部に配置されている容器からサンプルを採取して保持し、前記送液部と前記分離カラムとの間に介在させられることによって前記送液部からの移動相中に前記サンプルを注入する注入部、及び、前記分離カラムから溶出したサンプルを前記容器配置部に配置されている容器に分画して捕集する分取部を、それぞれが独自に備えている複数のリキッドハンドラと、
前記送液部と前記分離カラムとの間で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記注入部のうちの1つを選択的に前記送液部と前記分離カラムとの間に介在させるように構成された注入切替部と、
前記分離カラムの下流で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記分取部のうちの1つを選択的に前記分離カラムの下流に接続するように構成された分取切替部と、を備えている。
【0044】
上記一実施形態の第1態様では、前記複数のリキッドハンドラのそれぞれの前記注入部は互いに略同一の内部容量をもち、前記複数のリキッドハンドラのそれぞれの前記注入部と前記注入切替部との間を接続する流路の内部容量は互いに略同一である。このような態様により、リキッドハンドラのうちいずれのリキッドハンドラを用いてサンプルの注入が行われた場合にも、分離カラムまでの系内における内部容量が均一になり、リキッドハンドラの個体差が分離データに与える影響が小さくなる。
【0045】
上記一実施形態の第2態様では、前記複数のリキッドハンドラの前記注入部のそれぞれは入口ポート及び出口ポートを有し、前記注入切替部は、前記注入部のそれぞれの前記入口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記送液部と流体接続する入口切替バルブ、及び、前記注入部のそれぞれの前記出口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記分離カラムに流体接続する出口切替バルブを備えている。この場合、入口切替バルブと出口切替バルブは互いに連動する。この第2態様は上記第1態様と組み合わせることができる。
【0046】
上記一実施形態の第3態様では、前記分離カラムにおいて分離されたサンプルを検出するための検出器と、前記検出器により取得される検出信号に基づいて前記複数のリキッドハンドラ、前記注入切替部及び前記分取切替部のそれぞれの動作を制御し、前記分離カラムから溶出したサンプルをいずれかの前記リキッドハンドラの前記容器配置部に配置されている前記容器に捕集するように構成された制御装置と、を備えている。このような態様により、複数のリキッドハンドラのうちいずれのリキッドハンドラに配置されている容器にもサンプルを分画捕集することができる。この第3態様は、上記第1態様及び/又は第2態様と組み合わせることができる。
【0047】
上記第3態様の好適態様例として、前記容器に捕集されているサンプルのうち再注入すべきサンプルを決定するように構成された再注入サンプル決定部をさらに備え、前記制御装置は、前記複数のリキッドハンドラ、前記注入切替部及び前記分取切替部のそれぞれの動作を制御して、前記再注入サンプル決定部により決定された前記再注入すべきサンプルを当該サンプルを収容している前記容器から採取して前記送液部からの移動相中に注入するように構成されているものが挙げられる。このような態様により、リキッドハンドラにおいて分画捕集されたサンプルのうち任意のサンプルの再注入を自動的に行なうことができる。
【0048】
上記好適態様例の具体的な例では、前記分離カラムとは別途設けられた第2の分離カラムをさらに備え、前記容器配置部に配置されている容器からサンプルを採取して保持し、前記送液部と前記第2の分離カラムとの間に介在させられることによって前記送液部からの移動相中に前記サンプルを注入する第2の注入部が、前記複数のリキッドハンドラのそれぞれに設けられており、前記注入切替部は、前記送液部と前記第2の分離カラムとの間で流路接続を切り替えて、前記複数のリキッドハンドラの前記第2の注入部のうちの1つを選択的に前記送液部と前記第2の分離カラムとの間に介在させるように構成されており、前記制御装置は、前記複数のリキッドハンドラ、前記注入切替部及び前記分取切替部のそれぞれの動作を制御して、前記再注入サンプル決定部により決定された前記再注入すべきサンプルを当該サンプルを収容している前記容器から採取して前記送液部からの移動相中に注入するように構成されている。
【0049】
上記例のさらに具体的な構成としては、前記複数のリキッドハンドラの前記第2の注入部のそれぞれが入口ポート及び出口ポートを有し、前記注入切替部は、前記第2の注入部のそれぞれの前記入口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記送液部と流体接続する第2の入口切替バルブ、及び、前記第2の注入部のそれぞれの前記出口ポートへ通じる流路のうちの1つを選択的に前記第2の分離カラムに流体接続する第2の出口切替バルブを備えている構成が挙げられる。
【0050】
また、上記好適態様例において、前記再注入サンプル決定部は、前記検出器において得られた検出信号に基づいて作成されるクロマトグラム上でユーザにより指定された部分を前記再注入すべきサンプルとして決定するように構成されていてもよい。そうすれば、ユーザがクロマトグラムを参照しながら再注入すべきサンプルを任意に指定することができ、ユーザが指定されたサンプルの再注入が自動的に実行されるようになる。
【符号の説明】
【0051】
2 送液部
2A;2B 送液装置
4 注入切替部
6-1から6-n リキッドハンドラ
8 カラムオーブン
10A;10B 検出器
12 分取切替部
14A;14B 分離カラム
16 制御装置
18 容器配置部
20A;20B 注入部
22 分取部
24A;24B 入口切替バルブ
25A;25B 出口切替バルブ
26A;26B;28A;28B;34A;34B;36A;36B;40;42 配管
30A;30B 入口ポート
32A;32B 出口ポート
100 演算処理装置
102 再注入サンプル決定部
110 表示装置
図1
図2
図3
図4