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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】状態監視装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/22 20060101AFI20231212BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20231212BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60L5/22 Z
B60M1/28 R
G01L5/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020074052
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021170910
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 勇
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-160266(JP,A)
【文献】特開2010-117310(JP,A)
【文献】特開2001-018692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/22
B60M 1/28
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフの摺板を上下に変位可能な態様で支持する支持部と、前記支持部が固定される所定の部材との間を締結するボルトの軸力を検出する第1の検出部、及び、前記パンタグラフの舟体を下方から支持する舟支えと、前記舟体の平衡状態を維持するためのリンク機構との間の連結部材の剪断力を検出する第2の検出部のうちの少なくとも一方を含む検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、架線と前記摺板との間の接触状態を推定する推定部と、を備える、
状態監視装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記検出部の検出結果に基づき、前記架線から前記摺板に作用する接触力を推定する、
請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記検出部の検出結果に基づき、前記接触力と前記軸力との間の関係を表す情報、及び前記接触力と前記剪断力との間の関係を表す情報の少なくとも一方を用いて、前記接触力を推定する、
請求項2に記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記検出部の検出結果に基づき、前記接触力と前記軸力との間の関係を表すテーブル情報、及び前記接触力と前記剪断力との間の関係を表すテーブル情報の少なくとも一方を用いて、前記接触力を推定する、
請求項3に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記第1の検出部は、複数あり、
前記推定部は、複数の前記検出部の検出結果に基づき、前記接触状態を推定する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の状態監視装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記検出部の検出結果に基づき、前記摺板における前記架線が接触している幅方向の位置を推定する、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パンタグラフの摺板を支持する支持部材(バネ)の下に弾性体を設け、その弾性体を貫通させた光ファイバのゆがみを検出することで、摺板と架線との間の接触状態(例えば、接触力や接触位置等)を測定する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4476745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、光ファイバのひずみ状態から、間接的に、摺板と架線との間の接触状態により変化する弾性体のひずみ状態を測定している。そのため、パンタグラフの温度環境によっては、測定されるひずみ状態の中に、摺板と架線との間の接触に伴う機械的な弾性体のひずみ状態だけでなく、想定される温度状態からの温度変化によって生じる光ファイバのひずみ状態も混在してしまう可能性がある。よって、測定精度の観点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、鉄道車両のパンタグラフにおいて、より高い精度で摺板と架線との間の接触状態を測定可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
前記パンタブラフの摺板を上下に変位可能な態様で支持する支持部と、前記支持部が固定される所定の部材との間を締結するボルトの軸力を検出する第1の検出部、及び、前記舟体を下方から支持する舟支えと、前記舟体の平衡状態を維持するためのリンク機構との間の連結部材の剪断力を検出する第2の検出部のうちの少なくとも一方を含む検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、架線と前記摺板との間の接触状態を推定する推定部と、を備える、
状態監視装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、鉄道車両のパンタグラフにおいて、より高い精度で摺板と架線との間の接触状態を計測可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】パンタグラフの構成の一例を示す図である。
図2】パンタグラフ状態監視装置の構成の一例を示す図である。
図3】センサの構成の一例を示す図である。
図4】制御装置の制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図5】架線から摺板に作用する接触力の推定方法の一例を説明する図である。
図6】パンタグラフ状態監視装置の構成の他の例を示す図である。
図7】センサの構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
[パンタグラフの構成]
まず、図1を参照して、本実施形態に係るパンタグラフ1の基本構成について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るパンタグラフ1の構成の一例を示す図である。
【0012】
図1では、便宜的に、パンタグラフ1の下枠20が傾倒する方向を鉄道車両300の前方向とし、パンタグラフの上枠30が傾倒する方向を鉄道車両300の後方向と規定している。鉄道車両300は、当然の如く、前方向及び後方向の双方向に進行可能である。以下、鉄道車両300の左右方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0013】
パンタグラフ1は、例えば、交流き電方式で電力供給を受ける鉄道車両300の上部(「屋根部」とも称する)に搭載され、架線(「トロリ線」とも称する)OWから電力を集電する。そして、パンタグラフ1は、集電した電力を鉄道車両300の駆動電源装置に供給する。駆動電源装置は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)コンバータ及びVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータを含む主変換装置(CI:Converter Inverter)である。また、パンタグラフ1は、直流き電方式で電力供給を受ける鉄道車両に搭載されてもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るパンタグラフ1は、いわゆるシングルアーム構造を有する。具体的には、パンタグラフ1は、台枠10と、下枠20と、上枠30と、舟支え35と、舟体40と、摺板50と、釣り合い棒60と、碍子70と、風防カバー80とを含む。
【0015】
尚、パンタグラフ1は、例えば、菱型のリンク構造やリンク構造の代わりに支柱を用いる翼型等、シングルアーム構造以外の構造を有していてもよい。
【0016】
台枠10は、導体(例えば、折り曲げ加工された鋼板の溶接等による組み合わせ構造体)で構成される。台枠10は、下枠20及び釣り合い棒60等が取り付けられ、これらを揺動可能に支持する。また、台枠10には、例えば、後述するパンタグラフ状態監視装置100の各種機器が取り付けられてよい。また、台枠10は、前端部及び後端部で碍子70(碍子70A,70B)によって、鉄道車両300の上部に絶縁支持される。
【0017】
下枠20は、導体(例えば、鋼管等)により構成され、下端部(基端部)が鉄道車両300の左右方向に沿う揺動軸20aを中心に揺動可能な態様で、台枠10に支持され、上端部(先端部)が上枠30の下端部と連結される。これにより、下枠20は、揺動軸20aを基準として、起伏することができる。本例(図1)では、下枠20は、鉄道車両300の前方向に傾斜した状態で支持されている。
【0018】
上枠30は、導体(例えば、鋼管等)により構成され、下端部が鉄道車両300の左右方向に沿う揺動軸30aを中心に揺動可能な態様で、下枠20の先端に支持される。これにより、上枠30は、揺動軸30aを基準として、起伏することができる。また、上枠30の上端部には、舟支え35を介して舟体40が取り付けられる。本例(図1)では、上枠30は、下枠20と反対側、即ち、鉄道車両300の後方向に傾斜した状態で支持されている。
【0019】
下枠20及び上枠30は、例えば、揺動軸20aに連結されるバネの作用により、起立方向に付勢される。
【0020】
また、上枠30の下端部には、釣り合い腕31が前方に向けて延び出す形で設けられる。釣り合い腕31は、先端部が鉄道車両300の左右方向に沿う揺動軸31aを中心に揺動可能な態様で、釣り合い棒60の上端部(先端部)に支持される。
【0021】
舟支え35は、上枠30の先端部に設けられる。舟支え35は、導体(例えば、アルミニウム合金等)により構成され、舟体40を下方から支持する。舟支え35には、舟体40の平衡状態(例えば、水平状態)を維持するためのリンク機構(例えば、後述の平衡リンク37)が取り付けられる。
【0022】
舟体40は、導体(例えば、アルミニウム合金等)により構成され、鉄道車両300の左右方向に沿う揺動軸を基準として揺動可能な態様で、上枠30の上端部に支持される。舟体40は、上枠30の上端部との連結部を中心として、鉄道車両300の左右対称に延び出す形で設けられ、その上端部には、後述の支持部45(図2参照)を介して摺板50が取り付けられる。
【0023】
摺板50は、導体(例えば、鉄系焼結合金、銅系焼結合金、カーボン等)により構成される。摺板50は、下枠20及び上枠30に作用する起立方向の付勢力によって、架線OWに押し付けられ、鉄道車両300の走行に伴い、架線OWに対して摺動する。これにより、摺板50は、架線OWから集電を行い、その電力は、何れも導体で構成される舟体40、舟支え35、上枠30、下枠20、及び台枠10の順に伝達される。
【0024】
釣り合い棒60は、下端部(基端部)が鉄道車両300の左右方向に沿う揺動軸60aを中心に揺動可能に台枠10に支持され、上端部(先端部)が釣り合い腕31の先端部に連結される。これにより、釣り合い腕31及び釣り合い棒60によるリンク機構によって、下枠20及び上枠30の姿勢状態が適切に調整される。
【0025】
碍子70は、例えば、磁器製の絶縁体であり、鉄道車両300の上部(屋根部)において、パンタグラフ1を下から絶縁支持する。具体的には、碍子70は、下端部が鉄道車両300の上面に取り付けられ、上端部が台枠10の前端部及び後端部に取り付けられる。碍子70は、台枠10と鉄道車両300との間の所定の絶縁性を確保するため必要な距離に対応する高さを有する。碍子70は、碍子70A,70Bを含む。
【0026】
碍子70Aは、上端部が台枠10の前端部に取り付けられる。即ち、碍子70Aは、台枠10の前端部を絶縁支持する。
【0027】
碍子70Aは、上下方向に延びる中空部分を有し、その中空部分が上端部及び下端部で開放される中空構造を有する。以下、碍子70Bも同様の構造であってよい。碍子70Aの中空部分には、台枠10の前端部から下方に延び出す形で設けられる電力線90が貫通する。電力線90は、鉄道車両300の上面(屋根部)に前後方向に配設される電力線に接続される。そして、その電力は、鉄道車両300の上面、及び鉄道車両300の前端面(即ち、連結される他の鉄道車両との対向面)に配設される電力線を通じて、鉄道車両300の床下に配置される駆動電源装置に供給される。これにより、駆動電源装置は、その電力を利用して、鉄道車両300を走行させることができる。
【0028】
碍子70Bは、上端部が台枠10の後端部に取り付けられる。即ち、碍子70Bは、台枠10の後端部を絶縁支持する。
【0029】
尚、碍子70の個数は、3以上であってもよい。即ち、台枠10は、3以上の碍子70によって、鉄道車両300の上に絶縁支持されてもよい。
【0030】
風防カバー80は、例えば、合成樹脂製であり、パンタグラフ1の台枠10(台枠10に取り付けられる機器を含む)、下枠20、釣り合い棒60、及び上枠30の下端部の上方及び側方を覆う。これにより、パンタグラフ1の下枠20や上枠30で発生する空力騒音を低減させることができる。また、風防カバー80の上部には、上枠30が挿通可能且つ揺動可能な態様の挿通孔が設けられる。これにより、上枠30は、架線OWと台枠10との間の高さの変化に合わせて、風防カバー80と干渉することなく、姿勢を変化させることができる。
【0031】
尚、風防カバー80は、省略されてもよい。
【0032】
[摺板と架線との間の接触状態の推定方法の一例]
次に、図2図5を参照して、摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定方法の一例について説明する。
【0033】
<パンタグラフ状態監視装置の構成>
まず、図2図3を参照して、本例に係るパンタグラフ状態監視装置100の構成について、説明する。
【0034】
図2は、パンタグラフ状態監視装置100の構成の一例を示す図である。図2には、本例に係るパンタグラフ状態監視装置100の構成に加えて、本例に係るパンタグラフ状態監視装置100の監視対象であるパンタグラフ1の具体的な構成についても併せて描画されている。図3は、センサ110の構成の一例を示す図である。
【0035】
パンタグラフ状態監視装置100(状態監視装置の一例)は、パンタグラフ1に関する各種状態を監視する。本実施形態では、パンタグラフ1は、摺板50と架線OWとの接触状態を監視する。摺板50と架線OWとの間の接触状態には、例えば、摺板50の幅方向における架線OWの接触位置(以下、「架線位置」)や架線OWと摺板50との間の接触力(以下、単に「接触力」)が含まれる。架線OWと摺板50との間の接触力は、例えば、下枠20及び上枠30に作用する起立方向の付勢力による摺板50と架線OWとの接触に伴い、架線OWから摺板50に作用する下向きの力、及び摺板50から架線OWに作用する上向きの力である。また、摺板50と架線OWとの間の接触状態には、例えば、摺板50と架線OWとの間の接触力に関する異常の有無が含まれてもよい。摺板50と架線OWとの間の接触力に関する異常とは、例えば、接触力が異常と判断可能な程度に大きい状態を表す。
【0036】
図2に示すように、舟体40は、左右方向の中央部で上枠30と連結される。
【0037】
支持部45は、舟体40(所定の部材の一例)の上部に取り付けられ、摺板50を下から支持する。
【0038】
支持部45は、支持フレーム46と、弾性部材47とを含む。
【0039】
支持フレーム46は、舟体40の上面に取り付けられる。具体的には、支持フレーム46は、4つのボルトB1~B4によって、上下方向で締結される。
【0040】
弾性部材47は、支持フレーム46の上面に取り付けられ、摺板50を下から弾性支持する。弾性部材47は、摺板50の上下方向の変位に合わせて上下に弾性変形可能に構成される。弾性部材47は、例えば、コイルばねである。
【0041】
本例では、弾性部材47は、弾性部材47A~47Dを含む。
【0042】
摺板50は、例えば、いわゆる多分割式である。本例では、摺板50は、左右方向に配置される複数の分割板50A~50Lを含む。
【0043】
分割板50A~50Lは、例えば、一の分割板が架線OWに接触し下方に変位すると、その変位に合わせて、他の分割板も相対的に小さい変位量で下方に変位するような態様で連結されている。分割板50A~50Lは、例えば、分割板50A~50Lまでの幅方向の範囲に亘る一枚の金属製の支持板の上に取り付けられ、当該支持板の両端部は、それぞれ、支持フレーム46に取り付けられてよい。これにより、分割板50A~50Lのうちの一の分割板が架線OWに接触し下方に変位すると、一の分割板が固定される支持板も同様に下方に撓み、その結果、支持板に固定される他の分割板も下方に変位する。この場合、架線OWが接触する一の分割板(図2の分割板50D)は、分割板50A~50Lの中で最も大きく変位する。また、他の分割板は、架線OWが接触する分割板に近くなるほど変位量が大きく、離れるほど変位量が小さくなる態様で変位する。
【0044】
弾性部材47A~47Dは、分割板50A~50Lのうちの分割板50B,50E,50H,50Kの直下をそれぞれ支持している。弾性部材47A~47Dの上端部は、例えば、分割板50A~50Lが上述の支持板の上に取り付けられている場合、当該支持板における分割板50B,50E,50H,50Kが取り付けられている部分の直下(裏側)に取り付けられる。
【0045】
ボルトB1~B4は、それぞれ、幅方向における分割板50A,50D,50I,50Lの直下で、舟体40と支持フレーム46とを上下方向に締結している。
【0046】
尚、舟体40と支持フレーム46とを上下方向で締結するボルトの数は、締結強度が確保される限り、3以下であってもよいし、5以上であってもよい。
【0047】
図2に示すように、パンタグラフ状態監視装置100は、センサ110と、制御装置120とを含む。
【0048】
センサ110(検出部の一例)は、摺板50と架線OWとの間の接触状態を推定するための検出信号を出力する。センサ110の出力(即ち、検出結果を表す信号)は、制御装置120に取り込まれる。センサ110は、センサ110A~110Dを含む。
【0049】
センサ110A~110D(第1の検出部の一例)は、それぞれ、摺板50と架線OWとの接触に伴いボルトB1~B4に発生する軸力を検出する。架線OWから摺板50に接触力が作用すると、その接触力が弾性部材47を介して間接的に、或いは、分割板50A,50Lから直接的に、支持フレーム46に伝達され、ボルトB1~B4に軸力を生じさせるからである。
【0050】
例えば、図3に示すように、センサ110Aは、ひずみセンサであり、ひずみゲージ1101Aと、ケーブル1102Aと、出力部1103Aとを含む。
【0051】
ひずみゲージ1101Aは、ボルトB1の頭部に開口を有し径方向の略中心付近に設けられる非常に細い孔に埋設されている。
【0052】
ケーブル1102Aは、埋設されるひずみゲージ1101Aとひずみゲージ1101Aが埋設される孔の外にある出力部1103Aとの間を接続する形で設けられる。
【0053】
出力部1103Aは、制御装置120に繋がる信号線と連結され、ひずみゲージ1101Aの出力(検出信号)を制御装置120に出力する。
【0054】
また、センサ110B~110Dについても、同様の構成であってよい。
【0055】
尚、センサ110A~110Dは、ボルトB1~B4の軸力に関する検出信号を出力可能であれば、ボルトB1~B4に埋設される代わりに、ボルトB1~B4の表面等に取り付けられてもよい。また、センサ110A~110Dは、ボルトB1~B4の軸力に関する検出信号を出力可能であれば、ひずみゲージ以外を利用する形態であってもよい。また、上述の如く、舟体40と支持フレーム46とを上下方向で締結するボルトの数が3以下或いは5以上である場合、ボルトの軸力を検出するセンサ110の数は、ボルトの数に合わせて、3以下或いは5以上であってよい。
【0056】
図2に戻り、制御装置120(推定部の一例)は、パンタグラフ状態監視装置100に関する制御を行う。制御装置120の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。制御装置120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。制御装置120は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをCPU上で実行することにより実現される機能部として、架線位置推定部1201と、接触力推定部1202とを含む。
【0057】
架線位置推定部1201は、センサ110A~110Dの出力に基づき、摺板50の幅方向における架線OWが接触している位置(架線位置)を推定する。
【0058】
接触力推定部1202は、センサ110A~110Dの出力に基づき、摺板50と架線OWとの間の接触力を推定する。
【0059】
制御装置120は、例えば、無線通信回線を通じて、所定の制御周期ごとに架線位置や接触力の測定結果(推定結果)を鉄道車両300の内部に搭載される情報処理装置に送信する。これにより、情報処理装置は、例えば、鉄道車両300の走行中における摺板50と架線OWとの間の接触状態の測定結果を、測定日時及び測定日時に対応する鉄道車両300の位置情報と組み合わせて蓄積させることができる。測定日時は、例えば、制御装置120或いは情報処理装置に内蔵されるハードウェア或いはソフトウェアによる計時機能を用いて取得される。制御装置120が測定日時を取得する場合、制御装置120は、測定結果に加えて、測定日時に関する情報を情報処理装置に送信する。また、情報処理装置が測定日時を取得する場合、情報処理装置は、制御装置120から測定結果が取得(受信)されたときの日時を、通信遅延等を考慮して補正することにより、測定日時を取得してよい。鉄道車両300の位置情報は、例えば、走行路線沿いの所定間隔ごとに設置されるポイントを検出することにより認識されてよい。例えば、情報処理装置は、各ポイントから発進される信号(電波)が所定の通信機器で受信されることにより、各ポイントの通過を判断することができる。また、鉄道車両300の位置情報は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置による測位情報に基づき認識されてもよい。情報処理装置は、例えば、測定日時に関する情報、鉄道車両300の位置情報、及び摺板50と架線OWとの間の接触状態の測定結果の情報を含むレコードデータの集合体としてのデータベースを所定の記憶装置に構築してよい。これにより、管理者等は、例えば、架線OWの上下位置の調整、架線OWの交換等の架線OWの補修にこのデータベースの情報を利用することができる。
【0060】
<摺板と架線との間の接触状態の推定に関する制御処理>
続いて、図4図5を参照して、本例に係る摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定に関する制御処理について説明する。
【0061】
図4は、制御装置120の制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。具体的には、図4は、図3の制御装置120による摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定に関する制御処理の具体例を概略的に示すフローチャートである。図5は、架線OWから摺板50に作用する接触力の推定方法の一例を説明する図である。具体的には、図5は、架線OWから摺板50に作用する接触力Fcと、センサ110A~110D(ひずみセンサ)の出力μout1~μout4との関係を表すテーブル情報を示す図である。
【0062】
図4のフローチャートは、例えば、鉄道車両300の走行中において、所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。
【0063】
ステップS102にて、制御装置120は、センサ110A~110D(4つのひずみセンサ)から取り込み済みの最新の出力データ(出力μout1~μout4)を取得する。
【0064】
制御装置120は、ステップS102の処理が完了すると、ステップS104に進む。
【0065】
ステップS104にて、架線位置推定部1201は、ステップS102で取得される出力μout1~μout4に基づき、架線位置を推定(測定)する。
【0066】
例えば、摺板50の上面に幅方向で複数の領域Xi(i=1,...,N)が設定される。Nは、2以上の整数である。本例では、N=3の場合について説明する。
【0067】
例えば、領域X1は、分割板50A~50Cに対応し、領域X2は、分割板50D~50Iに対応し、領域X3は、分割板50J~50Kに対応する。
【0068】
架線位置推定部1201は、出力μout1~μout4を比較し、架線位置が摺板50の上面の領域X1~X3の何れに該当するかを推定する。具体的には、架線位置推定部1201は、出力μout1~μout4が表す軸力の大小関係、及び軸力の相互間の差や比率等に基づき、架線位置が領域X1~X3の何れに該当するかを推定してよい。
【0069】
例えば、架線OWが領域X1にある場合、鉄道車両300の左右方向で架線OWに相対的に近い位置のボルトB1,B2に作用する軸力が相対的に大きくなる一方、架線OWから相対的に離れた位置のボルトB3,B4に作用する軸力が相対的に小さくなる。また、例えば、架線OWが領域X2にある場合(図2の架線OWの状態の場合)、鉄道車両300の左右方向で架線OWに相対的に近い位置のボルトB2,B3に作用する軸力が相対的に大きくなる一方、架線OWから相対的に離れた位置のボルトB1,B4に作用する軸力が相対的に小さくなる。また、例えば、架線OWが領域X3にある場合、鉄道車両300の左右方向で架線OWに相対的に近い位置のボルトB3,B4に作用する軸力が相対的に大きくなる一方、架線OWから相対的に離れた位置のボルトB1,B2に作用する軸力が相対的に小さくなる。これにより、架線位置推定部1201は、これらの大小関係を利用して、架線位置が領域X1~X3の何れに該当するかを推定することができる。
【0070】
制御装置120は、ステップS104の処理が完了すると、ステップS106に進む。
【0071】
ステップS106にて、接触力推定部1202は、ステップS102で取得される出力μout1~μout4と、ステップS104の測定結果(架線位置に相当する領域Xi)とに基づき、接触力Fcを推定する。具体的には、接触力推定部1202は、接触力Fcと、ボルトB1~B4に作用する軸力(センサ110A~110Dによる検出値)との間の関係を表す情報(以下、「接触力参照情報」)を参照し、出力μout1~μout4から接触力Fcを推定してよい。
【0072】
例えば、接触力推定部1202は、接触力参照情報として、図5のテーブル情報を利用することができる。テーブル情報は、例えば、実験やシミュレーション等を通じて取得される、出力μout1~μout4の値(検出値)、及び接触力Fcの測定値に基づき作成され、制御装置120の内部メモリ(例えば、補助記憶装置)等に予め登録される。
【0073】
図5に示すように、テーブル情報は、領域X1~X3ごとに準備される。領域X1~X3ごとのテーブル情報には、センサ110A~110DによるボルトB1~B4の軸力の検出値(出力μout1~μout4)の組み合わせパターンが多数規定され、組み合わせごとに対応する接触力Fcの値が規定されている。例えば、μout1="F11"、μout2="F21"、μout3="F31"、μout4="F41"の検出値の組み合わせに対して、接触力Fc="F1"が規定される。また、例えば、μout1="F12"、μout2="F22"、μout3="F32"、μout4="F42"の検出値の組み合わせに対して、接触力Fc="F2"が規定される。また、例えば、μout1="F13"、μout2="F23"、μout3="F33"、μout4="F43"の検出値の組み合わせに対して、接触力Fc="F3"が規定される。
【0074】
接触力推定部1202は、ステップS104で測定された架線位置(領域X1~X3の何れか)に対応するテーブル情報を選択する。そして、接触力推定部1202は、ステップS102で取得される出力μout1~μout4の値がテーブル情報に含まれる何れかの組み合わせと同じである場合、その組み合わせに対して規定されている接触力Fcの値を、接触力Fcの推定値として出力してよい。
【0075】
また、接触力推定部1202は、ステップS102で取得される出力μout1~μout4の値がテーブル情報に含まれる全ての組み合わせと一致しない場合、近しい組み合わせをテーブル情報から抽出してよい。近しい組み合わせとは、例えば、ステップS102で取得される出力μout1~μout4のそれぞれの値との差が非常に小さい所定値以下の組み合わせである。そして、接触力推定部1202は、抽出した組み合わせのそれぞれに対して規定される接触力Fcの値に基づき、接触力Fcの推定値を外挿してよい。
【0076】
また、接触力推定部1202は、接触力参照情報として、テーブル情報以外の情報を利用してもよい。例えば、接触力推定部1202は、接触力参照情報として、接触力Fcと、ボルトB1~B4の軸力(即ち、センサ110A~110Dによる検出値)との間の関係を表す数式(関係式)を利用してもよい。関係式は、例えば、実験やシミュレーション等を通じて測定される、出力μout1~μout4の値(検出値)と、接触力Fcの測定値とに基づき生成される近似式であってよく、制御装置120の内部メモリ(例えば、補助記憶装置)等に予め登録される。
【0077】
尚、接触力Fcに関する接触力参照情報の場合と同様に、架線位置と、ボルトB1~B4の軸力(センサ110A~110Dによる検出値)との間の関係を表す情報(例えば、テーブル情報や関係式等)(以下、「架線位置参照情報」)が予め規定されてもよい。この場合、架線位置推定部1201は、架線位置参照情報を参照し、架線位置を推定することができる。
【0078】
制御装置120は、ステップS106の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0079】
このように、制御装置120は、支持部45と舟体40との間を締結するボルトB1~B4の軸力を検出するセンサ110A~110Dの出力に基づき、多分割式の摺板50と架線OWとの間の接触状態を測定(推定)することができる。
【0080】
[摺板と架線との間の接触状態の推定方法の一例]
次に、図6図7を参照して、摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定方法の他の例について説明する。
【0081】
<パンタグラフ状態監視装置の構成>
まず、図6図7を参照して、本例に係るパンタグラフ状態監視装置100の構成について説明する。以下、上述の一例と異なる部分を中心に説明を行う。
【0082】
図6は、パンタグラフ状態監視装置100の構成の他の例を示す図である。図6には、本例に係るパンタグラフ状態監視装置100の構成に加えて、本例に係るパンタグラフ状態監視装置100の監視対象であるパンタグラフ1の具体的な構成についても併せて描画されている。図7は、センサ110の構成の他の例を示す図である。
【0083】
図6に示すように、摺板50は、舟体40の上部に取り付けられる。本例では、摺板50は、上述の第2例の場合と同様に、多分割式であってもよいし、幅方向に一の部材で構成されていてもよい。
【0084】
舟支え35は、舟体40の幅方向の略中央部に取り付けられる。舟支え35は、連結部材36を有し、鉄道車両300の左右方向に沿う連結部材36の中心軸(以下、「連結軸」)を基準として、平衡リンク37と揺動可能に連結される。
【0085】
平衡リンク37は、例えば、下枠20の先端部と舟支え35との間を接続する形で設けられてよい。平衡リンク37は、下枠20及び上枠30の姿勢に合わせて、摺板50及び舟体40の平衡状態(例えば、水平状態)を保持する。
【0086】
図6に示すように、パンタグラフ状態監視装置100は、図2の一例の場合と同様、センサ110と、制御装置120とを含む。
【0087】
センサ110は、センサ110E,110Fを含む。
【0088】
センサ110E,110F(第2の検出部の一例)は、それぞれ、摺板50と架線OWとの接触に伴い連結部材36に生じる剪断力を検出する。架線OWから摺板50に接触力が作用すると、その接触力が舟体40を介して、舟支え35に伝達され、舟支え35と平衡リンク37との間の連結軸を構成する連結部材36に剪断力を生じさせるからである。
【0089】
例えば、図7に示すように、センサ110Eは、ひずみセンサであり、ひずみゲージ1101Eと、ケーブル1102Eと、出力部1103Eとを含む。
【0090】
ひずみゲージ1101Eは、連結部材36の左端部に開口を有し、連結軸に相当する径方向の略中心に設けられる細長い孔に埋設されている。ひずみゲージ1101Eは、連結部材36の左右方向の中央よりも左寄りの部分の剪断力を検出する。
【0091】
ケーブル1102Eは、埋設されるひずみゲージ1101Eとひずみゲージ1101Eが埋設される孔の外にある出力部1103Eとの間を接続する形で設けられる。
【0092】
出力部1103Eは、制御装置120に繋がる信号線と連結され、ひずみゲージ1101Eの出力(検出信号)を制御装置120に出力する。
【0093】
また、センサ110Fは、ひずみセンサであり、ひずみゲージ1101Fと、ケーブル1102Fと、出力部1103Fとを含む。
【0094】
ひずみゲージ1101Fは、連結部材36の右端部に開口を有し、連結軸に相当する径方向の略中心に設けられる細長い孔に埋設されている。ひずみゲージ1101Fは、連結部材36の左右方向の中央よりも右寄りの部分の剪断力を検出する。
【0095】
ケーブル1102Fは、埋設されるひずみゲージ1101Fとひずみゲージ1101Fが埋設される孔の外にある出力部1103Fとの間を接続する形で設けられる。
【0096】
出力部1103Fは、制御装置120に繋がる信号線と連結され、ひずみゲージ1101Fの出力(検出信号)を制御装置120に出力する。
【0097】
尚、センサ110E,110Fは、連結部材36の剪断力に関する検出信号を出力可能であれば、連結部材36に埋設される代わりに、連結部材36の表面等に取り付けられてもよい。また、センサ110E,110Fは、連結部材36の剪断力に関する検出信号を出力可能であれば、ひずみゲージ以外を利用する形態であってもよい。また、連結部材36の剪断力を検出するセンサ110は、3以上設けられてもよい。この場合、3以上のセンサは、それぞれ、連結部材36の軸方向(鉄道車両300の左右方向)で異なる位置の剪断力を検出するように取り付けられてよい。
【0098】
制御装置120は、図2の一例の場合と同様、架線位置推定部1201と、接触力推定部1202とを含む。
【0099】
架線位置推定部1201は、センサ110E,110Fの出力に基づき、架線位置を推定する。
【0100】
接触力推定部1202は、センサ110E,110Fの出力に基づき、接触力を推定する。
【0101】
<摺板と架線との間の接触状態の推定に関する制御処理>
次に、図3を援用して、本例に係る摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定に関する制御処理の他の例について説明する。具体的には、図6の制御装置120による摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定に関する制御処理の具体例について説明する。
【0102】
上述の一例の場合と同様、制御装置120は、上述の図3のフローチャートの処理を実行してよい。
【0103】
ステップS102にて、制御装置120は、センサ110E,110F(2つのひずみセンサ)から取り込み済みの最新の出力データを取得する。
【0104】
制御装置120は、ステップS102の処理が完了すると、ステップS104に進む。
【0105】
ステップS104にて、架線位置推定部1201は、上述の一例の場合と同様、センサ110E,110Fの出力が表す剪断力の相互間の向きの関係、大小関係、差、比率等に基づき、架線位置を推定してよい。
【0106】
例えば、図6に示すように、架線OWが摺板50の幅方向の中央よりも左寄りにある場合、連結部材36の左右方向の中央付近を通過する略前後方向に沿った軸を中心とする左回りのモーメントが作用する。この場合、連結部材36には、この左回りのモーメントに抗する力が平衡リンク37の連結部分から作用する。そのため、連結部材36の左右方向の中央より左側の部分には、上向きの剪断力が作用し、連結部材36の左右方向の中央より右側の部分には、下向きの剪断力が作用する。一方、架線OWが摺板50の幅方向の中央よりも右寄りにある場合、連結部材36の左右方向の中央付近を通過する略前後方向に沿った軸を中心とする右回りのモーメントが作用する。この場合、連結部材36には、この右回りのモーメントに抗する力が平衡リンク37の連結部分から作用する。そのため、連結部材36の左右方向の中央より左側の部分には、下向きの剪断力が作用し、連結部材36の左右方向の中央より右側の部分には、上向きの剪断力が作用する。また、架線OWが摺板50の幅方向の略中央にある場合、舟支え35の連結部材36から平衡リンク37の連結部分に略下向きの力が作用する。そのため、連結部材36の左右方向の中央より左側及び右側の部分には、それぞれ、上向きの剪断力が作用する。よって、架線位置推定部1201は、このような関係を用いて、架線位置を推定することができる。
【0107】
制御装置120は、ステップS104の処理が完了すると、ステップS106に進む。
【0108】
ステップS106にて、接触力推定部1202は、上述の一例の場合と同様、ステップS104で推定された架線位置、及びセンサ110E,110Fの出力の組み合わせに基づき、接触力を推定してよい。例えば、上述の一例の場合と同様、摺板50の上面に幅方向で複数の領域が予め規定され、複数の領域ごとの接触力Fcと連結部材36に作用する剪断力(センサ110E,110Fによる検出値)との間の関係を表す接触力参照情報が予め規定されてよい。これにより、接触力推定部1202は、センサ110E,110Fの出力に基づき、テーブル情報や関係式等の接触力参照情報を用いて、接触力を測定(推定)することができる。
【0109】
尚、上述の一例の場合と同様に、架線位置と、連結部材36の剪断力(センサ110E,110Fによる検出値)との間の関係を表す架線位置参照情報(例えば、テーブル情報や関係式等)が予め規定されてもよい。この場合、架線位置推定部1201は、架線位置参照情報を参照し、架線位置を推定することができる。
【0110】
制御装置120は、ステップS106の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0111】
このように、制御装置120は、舟支え35と平衡リンク37との間の連結部材36の剪断力を検出するセンサ110E,110Fの出力に基づき、摺板50と架線OWとの間の接触状態を測定(推定)することができる。
【0112】
[パンタグラフ状態監視装置の構成の更に他の例]
次に、摺板50と架線OWとの間の接触状態の推定方法の更に他の例について説明する。
【0113】
本実施形態では、制御装置120は、上述の一例及び他の例の推定方法を組み合わせることにより、架線OWと摺板50との間の接触状態を検出する。
【0114】
具体的には、センサ110は、センサ110A~110D、及びセンサ110E,110Fの双方を含んでよい。そして、制御装置120は、センサ110A~110Dの検出結果、及びセンサ110E,110Fの検出結果の双方に基づき、架線OWと摺板50との間の接触状態を測定(推定)してよい。
【0115】
架線位置推定部1201は、例えば、上述の一例の推定方法、及び上述の他の例の推定方法の双方を用いて、架線位置を推定し、双方の推定結果に基づき、最終的な架線位置を推定してよい。例えば、架線位置推定部1201は、所定の判断基準に基づき、双方の推定結果のうちの何れか一方を最終的な推定する架線位置として出力してよい。また、例えば、架線位置推定部1201は、双方の推定結果を総合的に評価して、最終的な推定する架線位置(例えば、双方の推定結果の単純平均値や加重平均値等)を出力してもよい。また、上述の一例及び他の例の場合と同様、架線位置と、ボルトB1~B4の軸力、及び連結部材36の剪断力の双方との間の関係を表す架線位置参照情報(例えば、テーブル情報や関係式等)が予め規定されてもよい。これにより、架線位置推定部1201は、センサ110A~110Dの出力、及びセンサ110E,110Fの出力の双方に基づき、架線位置参照情報を用いて、架線位置を推定することができる。
【0116】
接触力推定部1202は、例えば、架線位置推定部1201の場合と同様、上述の一例の推定方法、及び上述の他の例の推定方法の双方を用いて、架線OWと摺板50との間の接触力を推定し、双方の推定結果に基づき、最終的な架線位置を推定してよい。例えば、接触力推定部1202は、所定の判断基準に基づき、双方の推定結果のうちの何れか一方を最終的な推定する架線位置として出力してよい。また、例えば、接触力推定部1202は、双方の推定結果を総合的に評価して、最終的な推定する接触力(例えば、双方の推定結果の単純平均値や加重平均値等)を出力してもよい。また、接触力推定部1202は、架線OWと摺板50との間の接触力と、ボルトB1~B4の軸力、及び連結部材36の剪断力の双方との間の関係を表す接触力参照情報(例えば、テーブル情報や関係式等)が予め規定されてもよい。これにより、接触力推定部1202は、センサ110A~110Dの出力、及びセンサ110E,110Fの出力の双方に基づき、接触力参照情報を用いて、架線OWと摺板50との間の接触力を推定することができる。
【0117】
[作用]
次に、本実施形態に係るパンタグラフ状態監視装置100の作用について説明する。
【0118】
本実施形態では、センサ110は、摺板50を上下に変位可能な態様で支持する支持部45と、支持部45が固定される所定の部材(舟体40)との間を締結するボルトの軸力を検出するセンサ110A~110D、及び、舟体40を下方から支持する舟支え35と、舟体40の平衡状態を維持するための平衡リンク37との間の連結部材36の剪断力を検出するセンサ110E,110Fのうちの少なくとも一方を含む。そして、制御装置120は、センサ110の検出結果に基づき、架線OWと摺板50との間の接触状態を推定する。
【0119】
これにより、パンタグラフ状態監視装置100は、摺板50と架線OWとの間の接触に伴って発生するボルトB1~B4や連結部材36に対する機械的な作用(軸力や剪断力)を直接取得し、摺板50と架線OWとの間の接触状態を測定することができる。そのため、パンタグラフ状態監視装置100は、例えば、上述の特許文献1のように、弾性部材47の機械的な作用を間接的に取得する場合等に比して、より高い精度で架線OWと摺板50との間の接触状態を測定(推定)することができる。また、本実施形態では、ボルトB1~B4や連結部材36に対応するセンサ110を設けるだけで機械的な作用を直接取得することができる。そのため、パンタグラフ状態監視装置100は、上述の特許文献1等のように、複雑な構造を採用する必要がない。よって、パンタグラフ状態監視装置100は、より簡易な構成で、架線OWと摺板50との間の接触状態の測定(推定)することができる。
【0120】
また、本実施形態では、制御装置120は、センサ110の検出結果に基づき、架線OWから摺板50に作用する接触力を推定してよい。
【0121】
また、制御装置120は、センサ110の検出結果に基づき、摺板50における架線OWが接触している幅方向の位置(架線位置)を推定してもよい。
【0122】
これにより、パンタグラフ状態監視装置100は、摺板50と架線OWとの間の接触状態として、具体的に、架線OWから摺板50に作用する接触力や架線位置を測定(推定)することができる。
【0123】
尚、制御装置120は、架線位置及び接触力の何れか一方だけを測定(推定)してもよい。例えば、制御装置120は、架線位置及び接触力のうちの接触力だけを測定する場合、架線位置を仮定することで、接触力を推定することができる。
【0124】
また、本実施形態では、制御装置120は、センサ110の検出結果に基づき、架線OWと摺板50との間の接触力と、ボルトB1~B4の軸力との間の関係を表す情報、及び架線OWと摺板50との間の接触力と、連結部材36の剪断力との間の関係を表す情報の少なくとも一方を用いて、架線OWから摺板50に作用する接触力を推定してよい。
【0125】
これにより、パンタグラフ状態監視装置100は、架線OWから摺板50に作用する接触力と、ボルトB1~B4の軸力や連結部材36の剪断力との間の関係を表す情報を参照することで、センサ110の検出結果から接触力を推定することができる。
【0126】
また、本実施形態では、制御装置120は、センサ110の検出結果に基づき、架線OWと摺板50との間の接触力と、ボルトB1~B4の軸力との間の関係を表すテーブル情報、及び架線OWと摺板50との間の接触力と、連結部材36の剪断力との間の関係を表すテーブル情報の少なくとも一方を用いて、架線OWから摺板50に作用する接触力を推定してよい。
【0127】
これにより、パンタグラフ状態監視装置100は、テーブル情報を参照して、具体的に、架線OWから摺板50に作用する接触力を推定することができる。
【0128】
また、本実施形態では、センサ110は、支持部45と舟体40との間を連結する複数のボルトB1~B4の軸力を検出する複数のセンサ110A~110Dを含む。そして、制御装置120は、複数のセンサ110A~110Dの検出結果に基づき、架線OWと摺板50との間の接触状態を推定してよい。
【0129】
これにより、パンタグラフ状態監視装置100は、支持部45と舟体40との間を連結する複数のボルトB1~B4に生じる軸力を取得することができる。そのため、パンタグラフ状態監視装置100は、複数のボルトB1~B4のそれぞれで発生する軸力の大小関係、差、比率等に基づき、具体的に、架線位置や接触力等を測定(推定)することができる。
【0130】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0131】
例えば、上述の実施形態(図2)では、摺板50は、分割板50A~50Lを含む多分割式であるが、幅方向に一の部材で構成されてもよい。この場合、支持部45は、摺板50の左右の両端を弾性支持する2つの弾性部材47を含み、摺板50は、二つの弾性部材47の作用により、架線OWとの接触に応じて、上下方向に変位可能に構成されてよい。
【0132】
また、上述の実施形態(図2図6)では、摺板50は、支持部45の作用により、その少なくとも一部が舟体40に対して上下方向に変位可能に構成されるが、摺板50及び舟体40が一体として、舟支え35に対して上下方向に変位可能に構成されてもよい。この場合、支持部45は、舟支え35(所定の部材の一例)に取り付けられ、舟体40を介して、舟体40と一体として構成される摺板50を下から支持する。
【0133】
また、上述の実施形態(図2)では、ボルトB1~B4の全てに対してセンサ110が設けられるが、その一部(少なくとも一つ)にセンサ110が設けられてもよい。即ち、センサ110A~110Dのうちの一部(最大3つ)は省略されてもよい。例えば、要求される精度が相対的に低い場合、ボルトB1~B4のうちの一部の軸力の検出値の組み合わせを用いて、上述と同様の方法で、架線位置や接触力を推定することができるからである。また、例えば、接触力が異常状態に相当するレベルか否かを判断する目的であれば、制御装置120は、ボルトB1~B4のうちの一つの軸力の検出値を用いて、架線OWと摺板50の接触状態(接触力のレベル)を推定することができるからである。
【0134】
また、上述の実施形態(図6)では、2つのセンサ110E,110Fが設けられるが、何れか一方は省略されてもよい。例えば、接触力が異常に相当するレベルか否かを判断する目的であれば、制御装置120は、幅方向における連結部材36の一箇所の剪断力の検出値を用いて、架線OWと摺板50の接触状態(接触力のレベル)を推定することができるからである。
【符号の説明】
【0135】
1 パンタグラフ
10 台枠
20 下枠
30 上枠
31 釣り合い腕
35 舟支え
36 連結部材
37 平衡リンク(リンク機構)
40 舟体(所定の部材)
45 支持部
46 支持フレーム
47 弾性部材
50 摺板
60 釣り合い棒
70,70A,70B 碍子
80 風防カバー
90 電力線
100 パンタグラフ状態監視装置
300 鉄道車両
110 センサ(検出部)
110A~110D(第1の検出部)
110E,110F(第2の検出部)
120 制御装置(推定部)
1201 架線位置推定部
1202 接触力推定部
B1~B4 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7