(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】構造部材
(51)【国際特許分類】
B62D 29/04 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B62D29/04 Z
(21)【出願番号】P 2020076643
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】西田 健二
(72)【発明者】
【氏名】本田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】氷室 雄也
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-202820(JP,A)
【文献】特開2015-067090(JP,A)
【文献】特開昭57-186584(JP,A)
【文献】特開2017-154514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材であって、
繊維強化樹脂材料から全体が一体形成され、第1方向に延びるバー部材と、
前記バー部材の少なくとも一端部に取り付けられた継手部材と、
を備え、
前記バー部材は、
前記第1方向に直交する方向の断面形状が溝型の部位であって、前記直交する方向の断面視において、当該直交する方向に含まれる第2方向に延びるアウタ第1壁部と、前記第2方向に対して前記溝型内側の角度である内側角がそれぞれ鈍角をなし、且つ、前記アウタ第1壁部の側から当該アウタ第1壁部とは反対側へと離れるに従って互いの間隔が拡がるようにそれぞれが延びるアウタ第2壁部およびアウタ第3壁部と、を有するアウタ部と、
前記直交する方向での断面視において、前記アウタ第1壁部と前記アウタ第2壁部および前記アウタ第3壁部のそれぞれとに接続された、略L字形状のL字壁部を有するインナ部と、
前記アウタ部と前記インナ部との間に設けられた、閉断面形状の内部閉断面部と、
を有し、
前記アウタ第1壁部に対して前記L字壁部が接続された側における、前記アウタ第1壁部とそれぞれの前記L字壁部とがなす内側角は鈍角であり、
前記継手部材は、
前記バー部材の前記アウタ部に対して、前記インナ部が設けられたのとは反対側である外側から、前記アウタ第1壁部および前記アウタ第2壁部および前記アウタ第3壁部のそれぞれに沿うように装着されるアウタ側部材と、
前記バー部材の
前記インナ部に対して、前記アウタ側部材とは反対側の内側から、前記L字壁部のそれぞれに沿うように装着されるインナ側部材と、
を有し、
前記第1方向および前記第2方向の両方向に直交する方向を第3方向とするとき、
前記継手部材は、前記アウタ側部材と前記インナ側部材とで、前記バー部材の前記一端部を前記第3方向に挟み込むことで前記バー部材に取り付けられている、
構造部材。
【請求項2】
請求項1に記載の構造部材において、
前記アウタ第2壁部は前記アウタ第1壁部の一端部を起点に延び、前記アウタ第3壁部は前記アウタ第1壁部の他端部を起点に延び、
前記内部閉断面部は、前記アウタ第1壁部と前記アウタ第2壁部および前記アウタ第3壁部のそれぞれとの境界である稜線の少なくとも一方の内方側を含むように設けられている、
構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や航空機、さらには産業機械の構造部材として、種々の材料で構成された部材が用いられる。例えば、繊維強化樹脂材料で構成された部分を含む構造部材が用いられる場合がある。自動車の車体を構成する構造部材や補強部材として、繊維強化樹脂材料で構成された部分を含む部材を用いた例が特許文献1,2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、自動車のサスペンションタワーに取り付けられるサスタワーバーの構造が開示されている。特許文献1に開示のサスタワーバーは、角筒形状を有するバー本体部と、バー本体部の両端に接着剤で接合された取付部と、を備えている。そして、バー本体部は、矩形状をし、それぞれが繊維強化樹脂材料によって形成された4つの板材を接合することで構成されている。
【0004】
特許文献2には、自動車のフロアパネルの剛性増加のために、フロアパネルの下側に複数の帯板材を取り付けた構造が開示されている。各帯板材は、矩形断面形状を有する中実の板材であって、繊維強化樹脂材料によって形成されている。帯板材の両端部には、フロアパネルへの取付に用いるボルトを挿通させるための通し孔を有する取付部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-173546号公報
【文献】特開2017-61170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示の技術では、質量増加を抑制しながら高い振動減衰効果を得ることが困難である。即ち、上記特許文献1に開示の技術では、バー本体部の構造が角筒形状であるため捩れ剛性が高くなりすぎるという問題がある。
【0007】
特許文献2に開示の技術では、繊維強化樹脂材料からなる中実の帯板材を備えるため、高い曲げ剛性は得られるものの、板厚方向の曲げ剛性が十分に活かしきれておらず、捩り剛性の向上を図ろうとする場合には板厚を増加させることが必要となる。よって、質量増加を抑制するとの観点から問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、質量増加を抑制しながら高い振動減衰効果を得ることができる構造部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の別態様に係る構造部材は、繊維強化樹脂材料から全体が一体形成され、第1方向に延びるバー部材と、前記バー部材の少なくとも一端部に取り付けられた継手部材と、を備え、前記バー部材は、前記第1方向に直交する方向の断面形状が溝型の部位であって、前記直交する方向の断面視において、当該直交する方向に含まれる第2方向に延びるアウタ第1壁部と、前記第2方向に対して前記溝型内側の角度である内側角がそれぞれ鈍角をなし、且つ、前記アウタ第1壁部の側から当該アウタ第1壁部とは反対側へと離れるに従って互いの間隔が拡がるようにそれぞれが延びるアウタ第2壁部およびアウタ第3壁部と、を有するアウタ部と、前記直交する方向での断面視において、前記アウタ第1壁部と前記アウタ第2壁部および前記アウタ第3壁部のそれぞれとに接続された、略L字形状のL字壁部を有するインナ部と、前記アウタ部と前記インナ部との間に設けられた、閉断面形状の内部閉断面部と、を有し、前記アウタ第1壁部に対して前記L字壁部が接続された側における、前記アウタ第1壁部とそれぞれの前記L字壁部とがなす内側角は鈍角であり、前記継手部材は、前記バー部材の前記アウタ部に対して、前記インナ部が設けられたのとは反対側である外側から、前記アウタ第1壁部および前記アウタ第2壁部および前記アウタ第3壁部のそれぞれに沿うように装着されるアウタ側部材と、前記バー部材の前記インナ部に対して、前記アウタ側部材とは反対側の内側から、前記L字壁部のそれぞれに沿うように装着されるインナ側部材と、を有し、前記第1方向および前記第2方向の両方向に直交する方向を第3方向とするとき、前記継手部材は、前記アウタ側部材と前記インナ側部材とで、前記バー部材の前記一端部を前記第3方向に挟み込むことで前記バー部材に取り付けられている。
【0034】
上記態様に係る構造部材では、アウタ部とインナ部とによって構成されたバー部材が、内方に内部閉断面部を有するので、質量増加を抑制しながら、曲げ荷重の入力時における捩り剛性のコントロールが可能となり、高い振動減衰効果を得ることができる。
【0035】
また、上記のように、上記断面視において、バー部材のアウタ部が、アウタ第1壁部と、当該アウタ第1壁部に対してそれぞれの上記内側角が前記第2方向に対して鈍角をなし、且つ、アウタ第1壁部の側から当該アウタ第1壁部から離れるに従って互いの間隔が拡がるようにそれぞれが延びるアウタ第2壁部およびアウタ第3壁部と、を有するので、アウタ部の外側から継手部材のアウタ側部材を容易に装着することができる。
【0036】
また、上記のように、上記断面視において、アウタ第1壁部とインナ部におけるL字壁部との上記内側角が鈍角をなすように形成されているので、インナ部の内側から継手部材のインナ側部材を容易に装着することができ、高い生産性を得ることができる。
【0037】
上記別態様に係る構造部材において、前記アウタ第2壁部は前記アウタ第1壁部の一端部を起点に延び、前記アウタ第3壁部は前記アウタ第1壁部の他端部を起点に延び、前記内部閉断面部は、前記アウタ第1壁部と前記アウタ第2壁部および前記アウタ第3壁部のそれぞれとの境界である稜線の少なくとも一方の内方側を含むように設けられている、としてもよい。
【0038】
上記のように、バー部材における内部閉断面部がアウタ部の稜線の内方側を含むように設けることで、質量増加を抑制しながら、曲げ荷重の入力時における捩り剛性のより確実なコントロールが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
上記の各態様に係る構造部材では、質量増加を抑制しながら高い振動減衰効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施形態に係る車体の下面構造を示す下面図である。
【
図3】車体における車室内の構造を示す斜視図である。
【
図7】アウタ部材とインナ部材との接合方法を示す展開図である。
【
図8】(a)は、実施形態に係るバー部材におけるアウタ部材とインナ部材との接合部を示す断面図であり、(b)は、比較例に係るバー部材におけるアウタ部材とインナ部材との接合部を示す断面図である。
【
図9】バー部材への継手部材の固定方法を示す展開図である。
【
図10】(a)は、
図4のE1-E1線断面の構造を示す断面図であり、(b)は、
図4のE2-E2線断面の構造を示す断面図である。
【
図11】変形例1に係るバー部材の構造を示す断面図である。
【
図12】変形例2に係るバー部材の構造を示す断面図である。
【
図13】変形例3に係るバー部材の構造を示す断面図である。
【
図14】変形例4に係るバー部材の構造、および当該バー部材への継手部材の固定方法を示す展開図である。
【
図15】(a)は、変形例5に係るバー部材の構造を示す断面図であり、(b)は、変形例6に係るバー部材の構造を示す断面図である、(c)は、変形例7に係るバー部材の構造を示す断面図であり、(d)は、変形例8に係るバー部材の構造を示す断面図である。
【
図16】(a)は、変形例9に係るバー部材の構造を示す断面図であり、(b)は、変形例10に係るバー部材の構造を示す断面図であり、(c)は、変形例11に係るバー部材の構造を示す断面図である。
【
図17】車体の簡易バネモデルを示す模式図である。
【
図18】炭素繊維強化樹脂製部材における剛性と内部に蓄積される歪エネルギとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[構造部材における捩り剛性と振動減衰性との関係に関する検討]
先ず、本願発明者等は、繊維強化樹脂で構成された部分を含む構造部材における、捩り剛性と振動減衰性との関係に関する検討を行った。以下、その検討結果を説明する。
【0042】
本願発明者等は、繊維強化樹脂で構成された部分を含む構造部材を車両の車体に採用した場合の、捩り剛性と振動減衰性との関係について鋭意検討した。
【0043】
車体において、乗員が感じる乗り心地に対して影響を与える車体の挙動モードは、主に次の2つの挙動モードに分類される。
【0044】
〈第1の車体モード〉捩り変形に伴う車体捩りモードであって、車両の旋回時における車体の中心軸回りの捩りモーメントに基づく位相遅れに起因した車体全体の捩れ変位運動であり、剛性に関連した車体モードである。
【0045】
〈第2の車体モード〉曲げ変形に伴う膜振動モードであって、路面上に存在する突起物の乗り上げ時や荒れた路面の走行時におけるフロアパネルによる上下変位運動であり、振動に関連した車体モードである。
【0046】
繊維強化樹脂の一種である炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は異方性材料であり、繊維強化樹脂内の繊維を長手方向へ一方向に配置することで、捩れ損失係数が曲げ損失係数よりも高い値を有する異方性材料であるため、上記特許文献2に開示の帯板材が保有する振動減衰能力(歪エネルギ蓄積能力)をさらに高めることが望ましい。
【0047】
即ち、上記特許文献2に開示の帯板材を構成する炭素繊維強化樹脂が材料自身の物理的性質として高い歪エネルギ蓄積能力を保有していたとしても、帯板材がフロアパネル(またはフロアパネルに連結されたフレーム部材)と同じ変形挙動を行う場合には、当該挙動に伴う捩り変形に対応した歪エネルギのエネルギ散逸能力が高く、曲げ変形に対応した歪エネルギ散逸能力は低いため、帯板材が保有する振動減衰能力を有効に活用し使い切ることが困難である。
【0048】
本願発明者等は、上記のような事項を踏まえて、炭素繊維強化樹脂の歪エネルギ蓄積能力について、第1の検証解析を行った。これについて、
図17および
図18を用いて説明する。
【0049】
図17に示すように、歪エネルギについて車体の全体構造を見た場合に、通常の車体構造では、バネ定数k
bの車体系機構と、バネ定数k
cfの炭素繊維強化樹脂部およびバネ定数k
jの締結部からなる部材系機構と、が並列接続された簡易バネモデルとして表すことができる。
【0050】
よって、本願発明者等は、
図14に示す簡易バネモデルを数値解析することにより、炭素繊維強化樹脂部の剛性と蓄積される歪エネルギとの相関関係を求めた。
【0051】
図18に示すように、本願発明者等が行った数値解析の結果、炭素繊維強化樹脂部内に蓄積される歪エネルギは、剛性が極めて低い領域を除いて、剛性が高いほど歪エネルギが低くなり、剛性が低い部分に歪エネルギのピーク点が存在するという物理的性質の知見を得るに至った。
【0052】
車体全体としては、剛性の低下により車体振動の位相遅れを生じさせない安心感を損ない、乗り心地の低下を招くおそれがある。即ち、車体剛性の確保と、炭素繊維強化樹脂部内に蓄積され散逸される歪エネルギの増加と、の両立を図ることが重要となる。
【0053】
以上のような知見に基づき提案の、本発明の実施形態を以下で説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0054】
以下の説明で用いる図面のうち、
図1から
図3における「Fr」は車体前方、「Re」は車体後方、「Le」は車体左方、「Ri」は車体右方を示し、完成車体を想定した場合の車両の前進方向を基準にした方向である。
【0055】
[第1実施形態]
1.車体1の下面および車室1b内の構成
本実施形態に係る車体1の下面および車室1b内の構成について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、車体1の下面構成を示す模式下面図であり、
図2は、車体1の下面の一部構成を示す模式下面図であり、
図3は、車体1における車室1b内の構成を示す模式斜視図である。
【0056】
本実施形態に係る車両の車体1は、モノコック式の車体である。
図1から
図3に示すように、車体1は、車室1bの下面(底面)を構成するフロアパネル2と、エンジンルーム1aと車室1bとを仕切るダッシュパネル3と、ダッシュパネル3から前方に向けて延びるように設けられた左右一対のフロントサイドフレーム4と、フロアパネル2の後側端部分から後方に向けて延びるように設けられた左右一対のリヤサイドフレーム5と、を備える。
【0057】
なお、ダッシュパネル3は、フロアパネル2の前端部分から上方に向けて延びるように設けられている。
【0058】
さらに、車体1は、フロアパネル2の左右両端部分に配設された左右一対のサイドシル6と、左右一対のサイドシル6の各前端部分から上方に向けて延びるように設けられた左右一対のヒンジピラー7と、左右一対のサイドシル6の各中間部分から上方に向けて延びるように設けられた左右一対のセンターピラー8と、左右一対のヒンジピラー7の各上端部分から斜め後ろに向けて延びるように設けられた左右一対のフロントピラー9と、左右一対のフロントピラー9の各後端部分から後方に向けて延びるように設けられた左右一対のルーフサイドレール10と、を備える。
【0059】
なお、左右一対のルーフサイドレール10は、センターピラー8に対して、その上端部分であって後端部分にそれぞれ接合されている。
【0060】
図1から
図3に示すように、車体1のフロアパネル2は、下方からの平面視で略矩形状に構成されたトンネル部11を備える。トンネル部11は、車幅方向(Le-Ri方向)の中央部分において、前後方向(Fr-Re方向)に延び、車室1bに対して突出した状態で設けられている。
【0061】
また、トンネル部11の左右両端部分には、それぞれが前後方向(Fr-Re方向)に延びる左右一対のトンネルフレーム部12が設けられている。左右一対のトンネルフレーム部12のそれぞれは、断面形状が略ハット状であり、フロアパネル2の下面と協働して前後方向(Fr-Re方向)に略並行した状態で延びる略矩形状の閉断面を構成している。
【0062】
左右一対のサイドシル6のそれぞれと左右一対のトンネルフレーム部12のそれぞれとの各間の部分には、前後方向(Fr-Re方向)に延び、断面形状が略ハット状のフロアフレーム13がそれぞれ設けられている。フロアフレーム13のそれぞれは、車体1の後側(Re側)に行くに従って車体1の外側となるように配設されており、フロアパネル2の下面と協働して前後方向(Fr-Re方向)に略並行した状態で延びる略矩形状の閉断面を構成している。
【0063】
それぞれのフロアフレーム13の前端部分は、フロントサイドフレーム4の後端部分に接合されている。
【0064】
フロアパネル2は、車室1b内にトンネル部11を架橋する状態で左右方向(Le-Ri方向)に延びるように設けられたクロスメンバ14,15を備えている。クロスメンバ14,15のそれぞれは、断面形状が略ハット状に設けられている。そして、クロスメンバ14,15のそれぞれは、トンネル部11の側壁部分からサイドシル6の側壁部分に亘りフロアパネル2の上面と協働して左右方向(Le-Ri方向)に延びる略矩形状の閉断面を構成している。
【0065】
クロスメンバ14は、ヒンジピラー7とセンターピラー8との中間部分に対応する位置に配設され、クロスメンバ14の前側壁部には、フロアフレーム13の前端側部分にフロアパネル2を挟んで接合された上側フレーム16の後端部分が接合されている。
【0066】
クロスメンバ15は、クロスメンバ14と略並行する状態で配設されており、センターピラー8に対応する位置に配設されている。
【0067】
車室1b内には、左右一対の前席シート(図示を省略。)が配設されている。各シートは、当該シートの強度および剛性を確保するためのシートフレーム(図示を省略。)をそれぞれ備え、左右一対のシートレール17に対して摺動できるようになっている。
【0068】
図3に示すように、左右一対のシートレール17のうち、車幅方向の外側のシートレール17は、前端部分(前側シート取付部)がクロスメンバ14の車幅方向の外側部分に固定され、後端部分(後側シート取付部)がクロスメンバ15の車幅方向の外側部分に固定されている。
【0069】
左右一対のシートレール17のうち、車幅方向の内側のシートレール17は、前端部分(前側シート取付部)がクロスメンバ14の車幅方向の内側部分に固定され、後端部分(後側シート取付部)がクロスメンバ15の車幅方向の内側部分に固定されている。
【0070】
また、フロアパネル2の下側には、複数の補強部材21~29,31が配設されている。
【0071】
2.車体1の部材への補強部材21~29,31の取付構成
車体1の部材への補強部材21~29,31の取付構成について、引き続き
図2を用いて説明する。
【0072】
図2に示すように、本実施形態に係る車体1では、複数の補強部材21~29,31が左右対称の形態を以って配設されている。そして、補強部材21は、車体1の左右の各サイドシル6とトンネルフレーム部12との間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
【0073】
補強部材22は、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12の間にそれぞれが架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。補強部材23は、車体1の左右の各サイドシル6とトンネルフレーム部12との間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
【0074】
補強部材24は、補強部材23よりも車体1の前方側において、車体1の左右の各サイドシル6とトンネルフレーム部12との間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。補強部材25は、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12同士の間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
【0075】
補強部材26と補強部材27とは、ジョイント部材30で連結され、補強部材25よりも車体1の後方側において、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12同士の間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。補強部材27と補強部材28とについても、ジョイント部材30で連結され、補強部材25よりも車体1の後方側において、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12同士の間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
【0076】
補強部材31は、補強部材26および補強部材28の各後端部分と、補強部材21と補強部材22の各一端とを繋ぎ、且つ、トンネルフレーム部12に対して固定箇所Pで固定されている。
【0077】
なお、本実施形態では、補強部材21~29,31のうち、補強部材22,25~29については、トンネル部(フロアトンネル)を架橋するトンネルメンバとして配設されている。
【0078】
3.補強部材21~29,31の構造
図4は、補強部材21(補強部材21~29,31の一例)の構成を示す模式斜視図である。
【0079】
図4に示すように、補強部材21は、第1方向であるX方向に沿って延びるように設けられたバー部材210と、バー部材210の両端部210a,210bのそれぞれに固定された継手部材213,216とを有する。継手部材213は、バー部材210の端部210bに対してZ方向上方から装着されたアウタ側部材217と、バー部材210の端部210bに対してZ方向下方から装着されたインナ側部材215と、を有している。同様に、継手部材216は、バー部材210の端部210aに対してZ方向上方から装着されたアウタ側部材217と、Z方向下方から装着されたインナ側部材218と、を有している。
【0080】
バー部材210に対する継手部材213,216の取付形態については、後述する。
【0081】
なお、
図4では、図示を省略しているが、補強部材22~29,31についても、補強部材21と同様の構成を有する。ただし、車体1に対して用いる場所に応じて長尺筒部の長さや断面サイズなどは適宜設定されている。また、補強部材26~29については、バー部材の一方の端部にジョイント部材30が取り付けられている点で異なる。
【0082】
ここで、本実施形態に係る補強部材21~29,31では、バー部材210の主たる部分が炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いて構成されている。具体的な構成については、後述する。
【0083】
4.補強部材21~29,31におけるバー部材210の断面構成
図5は、補強部材21におけるバー部材210(補強部材21~29,31におけるバー部材の一例)の構造を示す断面図である。
図6は、アウタ部材211の構成を示す模式図である。
図7は、アウタ部材211とインナ部材212との接合方法を示す展開図である。
図8(a)は、バー部材210におけるアウタ部材211とインナ部材212との接合部を示す断面図であり、
図8(b)は、比較例に係るバー部材におけるアウタ部材911とインナ部材912との接合部を示す断面図である。
【0084】
図5に示すように、バー部材210は、アウタ部材211とインナ部材212とが接合されてなる。アウタ部材211およびインナ部材212は、それぞれCFRPから構成されている。なお、本実施形態に係るアウタ部材211は「第1の部材」に該当し、インナ部材212は「第2の部材」に該当する。
【0085】
車体1の下面への補強部材21~29,31の固定は、アウタ部材211が下方側、インナ部材212が上方側となるようになされる。このような向きに補強部材21~29,31を固定することにより、溝部を有さないアウタ部材211の外面側(
図5のZ方向上側面)が車体1の下面側を向くこととなり、車両走行時に車体1の下方を流れる空気に対する抵抗を小さく抑えることができる。
【0086】
アウタ部材211は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部211aと、アウタ第1壁部211aのY方向左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部211bと、アウタ第1壁部211aのY方向右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部211cと、が一体形成されている。
【0087】
ここで、アウタ部材211において、アウタ第1壁部211aとアウタ第2壁部211bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。同様に、アウタ第1壁部211aとアウタ第3壁部211cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0088】
なお、本実施形態においては、アウタ第1壁部211aが「第1の部材における第1壁部」に該当し、アウタ第2壁部211bが「第1の部材における第2壁部」に該当し、アウタ第3壁部211cが「第1の部材における第3壁部」に該当する。
【0089】
インナ部材212は、アウタ部材211のアウタ第1壁部211aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部212aと、アウタ部材211のアウタ第2壁部211bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部212fと、アウタ部材211のアウタ第3壁部211cに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部212gと、インナ第1壁部212aのY方向左端から下方に延びるインナ第4壁部212bと、インナ第1壁部212aのY方向右端から下方に延びるインナ第5壁部212cと、インナ第4壁部212bの下端とインナ第2壁部212fの上端とを接続するインナ第6壁部212dと、インナ第5壁部212cの下端とインナ第3壁部212gの上端とを接続するインナ第7壁部212eと、が一体形成されている。
【0090】
インナ部材212においては、インナ第4壁部212bとインナ第6壁部212dとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成している。同様に、インナ部材212においては、インナ第5壁部212cとインナ第7壁部212eとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0091】
なお、本実施形態においては、インナ第1壁部212aが「第2の部材における第4壁部」に該当し、インナ第2壁部212fが「第2の部材における第5壁部」に該当し、インナ第3壁部212gが「第2の部材における第6壁部」に該当する。
【0092】
アウタ部材211とインナ部材212とは、アウタ第1壁部211aとインナ第1壁部212aとが面同士で当接する箇所(A1部分)、アウタ第2壁部211bとインナ第2壁部212fとが面同士で当接する箇所(A2部分)、およびアウタ第3壁部211cとインナ第3壁部212gとが面同士で当接する箇所(A3)のそれぞれで接着剤を用いて接合されている。
【0093】
上記のようにアウタ部材211とインナ部材212との接合により形成されたバー部材210では、互いにY方向に離間した2つの内部閉断面部210e,210fが形成される。内部閉断面部210eは、Y方向左側の稜線RLの内方側(インナ部材212側)を含むように設けられいる。同様に、内部閉断面部210fも、Y方向右側の稜線RLの内方側を含むように設けられている。
【0094】
なお、本実施形態に係るバー部材210では、アウタ第1壁部211aのY方向での幅がW1であり、アウタ第2壁部211bとアウタ第3壁部211cの下端同士の間隔がW2である。また、インナ第1壁部212aのY方向での幅がW3である。W1,W2,W3は、次のような関係を満たす。
W2>W1>W3・・(数1)
次に、バー部材210を構成するアウタ部材211およびインナ部材212の詳細構成について、説明する。なお、説明で用いる
図6では、アウタ部材211を一例として用いているが、インナ部材212も同様の構成を有する。
【0095】
図6に示すように、アウタ部材211は、母材である樹脂2110と、強化繊維である炭素繊維2111とから構成されている。炭素繊維2111は、主たる配向が揃えられている。
【0096】
次に、アウタ部材211とインナ部材212との接合方法について説明する。
【0097】
図7に示すように、アウタ部材211とインナ部材212とを接合する場合には、アウタ第1壁部211aのZ方向下側(内側)の面であるインナ側面211d、アウタ第2壁部211bのインナ側面211eの一部、およびアウタ第3壁部211cのインナ側面211fの一部にそれぞれ接着剤を塗布する。
【0098】
なお、接着剤については、インナ第1壁部212aのZ方向上側(外側)の面であるアウタ側面212h、インナ第2壁部212fのアウタ側面212i、およびインナ第3壁部212gのアウタ側面212jにそれぞれ塗布するようにしてもよいし、アウタ部材211およびインナ部材212の両方の各場所に塗布するようにしてもよい。
【0099】
次に、接着剤の塗布がなされた状態で、アウタ部材211とインナ部材212とをZ方向に貼り合わせる(矢印C1,C2,C3)。これにより、アウタ部材211のB1部分とインナ部材212のB4部分、アウタ部材211のB2部分とインナ部材212のB5部分、およびアウタ部材211のB3部分とインナ部材212のB6部分とが、それぞれ接合される。
【0100】
ここで、アウタ部材211では、アウタ第1壁部211aのインナ側面211dとアウタ第2壁部211bのインナ側面211eとがなす内側角はθ1であり、アウタ第1壁部211aのインナ側面211dとアウタ第3壁部211cのインナ側面211fとがなす内側角はθ2である。角度θ1,θ2は、次のような関係を満たす。
θ1>90°・・(数2)
θ2>90°・・(数3)
即ち、本実施形態では、角度θ1,θ2は、ともに鈍角である。
【0101】
なお、上記における「内側角」とは、アウタ第1壁部211aのインナ側面211dとアウタ第2壁部211bのインナ側面211eおよびアウタ第3壁部211cのインナ側面211fとがそれぞれなす角を指す。これについては、本明細書で同じである。
【0102】
次に、インナ部材212において、インナ第1壁部212aのアウタ側面212hに沿う仮想線L1,L2を引くとき、仮想線L1に対してインナ第2壁部212fのアウタ側面212iがなす内側角はθ3であり、仮想線L2に対してインナ第3壁部212gのアウタ側面212jがなす内側角はθ4である。角度θ3,θ4は、次のような関係を満たす。
θ3≒θ1・・(数4)
θ4≒θ2・・(数5)
【0103】
以上のような構成のアウタ部材211とインナ部材212とを用いることにより、煩雑な作業を必要とせずアウタ部材211とインナ部材212とを接合することができる。具体的に、アウタ部材211は、角度θ1,θ2をともに鈍角としていることにより、アウタ第2壁部211bとアウタ第3壁部211cとの間隔がアウタ第1壁部211aの側からZ方向下方に行くほど拡がる形状となっている。このため、アウタ部材211にインナ部材212を容易に重ね合わせることができる。
【0104】
また、角度θ1,θ2を鈍角とすることにより、アウタ部材211とインナ部材212とを重ね合わせて行く際に、アウタ第2壁部211bあるいはインナ第2壁部211f、およびアウタ第3壁部211cあるいはインナ第3壁部211gに塗布した接着剤がこそぎ落とされ難い。
図8(a)に示すように、アウタ部材211とインナ部材212とを重ね合わせて行く場合には、接着剤に対して力F
0が付加されることになる。この場合に、本実施形態では角度θ1を鈍角としているため、付加された力F
0のうちの成分F
1だけが接着剤をこそぎ落とす方向に働くことになり、成分F
2はアウタ第2壁部211bとインナ第2壁部211fとを圧着する方向に働く。このため、本実施形態では、接着層219の層厚みT1が十分確保される。
【0105】
一方、
図8(b)に示すように、アウタ部材911のアウタ第1壁部とアウタ第2壁部とがなす内角を90°とした比較例では、アウタ部材911とインナ部材912とを重ね合わせて行く際に、接着剤に対して付加される力F
3がそのまま接着剤をこそぎ落とす方向に働く。このため、比較例では、接着層919の層厚みがT2となり、実施形態に係る接着層219の層厚みT1よりも薄くなってしまい十分な接合強度を得られない場合が生じ得る。なお、比較例では、場所によっては完全に接着層が介在しない箇所も生じることが懸念される。
【0106】
なお、
図8(a)では、アウタ第2壁部211bとインナ第2壁部211fとの接合部分を図示したが、アウタ第3壁部211cとインナ第3壁部211gとの接合部分についても同様である。
【0107】
5.バー部材210への継手部材213,216の固定
図9は、バー部材210への継手部材216の固定方法を示す展開図であり、
図10(a)は、
図4のE1-E1線断面の構造を示す断面図であり、
図10(b)は、
図4のE2-E2線断面の構造を示す断面図である。なお、
図9および
図10では、バー部材210の端部210bに対する継手部材216の固定形態だけを図示しているが、バー部材210のもう一方の端部210aに対する継手部材213の固定形態も同様である。
【0108】
図9に示すように、継手部材216は、バー部材210の端部210bに対してZ方向上側(アウタ側)から矢印D1のように装着されるアウタ側部材217と、バー部材210の端部210bに対してZ方向下側(インナ側)から矢印D2のように装着されるインナ側部材218と、で構成される。
図9および
図10(a)に示すように、アウタ側部材217は、バー部材210におけるアウタ部材211に対して略相似形の断面形状を有し、アウタ部材211のZ方向上側(アウタ側)の面に沿うように形成されている。
【0109】
図9および
図10(a)に示すように、インナ側部材218は、X方向の一部がバー部材210におけるインナ部材212のZ方向下側(インナ側)の面に沿うように形成されている。また、
図9および
図10(b)に示すように、インナ側部材218は、X方向の他部でアウタ側部材217と直に接合される。そして、インナ側部材218は、アウタ側部材217と直に接合される箇所よりもX方向右側の部分に、車体1へ固定する際のボルトが挿通するための通し孔216aを有する。
【0110】
図9に示すように、バー部材210の端部210bには、2つの通し孔210c,210dが設けられている。そして、アウタ側部材217には、バー部材210に設けられた通し孔210c,210dに対応する通し孔217c,217dが設けられている。さらに、インナ部材218には、バー部材210に設けられた通し孔210c,210dに対応するネジ孔218c,218dが設けられている。
図10(a)に示すように、バー部材210の端部210bにアウタ側部材217およびインナ側部材218を装着した上で、矢印D3で示すようにボルトで締結する。
【0111】
図9に示すように、アウタ側部材217には、Y方向に互いに間隔を空けて2つの通し孔217a,217bも設けられている。インナ側部材218には、アウタ側部材217の通し孔217a,217bに対応する位置にネジ孔218a,218bが設けられている。
図10(b)に示すように、アウタ側部材217とインナ側部材218とが直に接合される部分において、矢印D4,D5で示すようにボルトで締結する。
【0112】
ここで、
図7に示すように、インナ部材212では、インナ第1壁部212aに対してインナ第4壁部212bがなす内側角(各壁部のZ方向下側の面同士がなす郭がθ5であり、インナ第1壁部212aに対してインナ第5壁部212cがなす内側角がθ6である。角度θ5,θ6は、次のような関係を満たす。
θ5>90°・・(数6)
θ6>90°・・(数7)
【0113】
以上のような関係を満たすインナ部材212を用いることにより、煩雑な作業を必要とせずに、インナ部材212の内側(インナ側)にインナ側部材218を装着することができる。具体的に、バー部材210のインナ部材212における角度θ5,θ6をともに鈍角としていることにより、インナ第4壁部212bとインナ第5壁部212cとの間隔がインナ第1壁部212aの側からZ方向下方に行くほど拡がる形状となっている。このため、インナ部材212のインナ側から容易にインナ側部材218を重ね合わせることができる。
【0114】
[変形例1]
図11は、変形例1に係るバー部材310の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材310の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0115】
図11に示すように、本変形例に係るバー部材310も、アウタ部材311とインナ部材312とが接合されてなる。アウタ部材311およびインナ部材312についても、それぞれCFRPから構成されている。
【0116】
アウタ部材311は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部311aと、アウタ第1壁部311aのY方向左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部311bと、アウタ第1壁部311aのY方向右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部311cと、が一体形成されている。
【0117】
ここで、アウタ部材311においても、アウタ第1壁部311aとアウタ第2壁部311bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部311aとアウタ第3壁部311cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0118】
インナ部材312は、アウタ第1壁部311aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部312aと、アウタ第2壁部311bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部312fと、アウタ第3壁部311cに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部312gと、インナ第1壁部312aのY方向左端から左斜め下方に延びるインナ第4壁部312bと、インナ第1壁部312aのY方向右端から右斜め下方に延びるインナ第5壁部312cと、インナ第4壁部312bの下端とインナ第2壁部312fの上端とを接続するインナ第6壁部312dと、インナ第5壁部312cの下端とインナ第3壁部312gの上端とを接続するインナ第7壁部312eと、が一体形成されている。
【0119】
インナ部材312においても、インナ第4壁部312bとインナ第6壁部312dとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成し、インナ第5壁部312cとインナ第7壁部312eとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0120】
アウタ部材311とインナ部材312とについても、アウタ第1壁部311aとインナ第1壁部312aとが面同士で当接する箇所(H1部分)、アウタ第2壁部311bとインナ第2壁部312fとが面同士で当接する箇所(H2部分)、およびアウタ第3壁部311cとインナ第3壁部312gとが面同士で当接する箇所(H3)のそれぞれで接着剤を用いて接合されている。
【0121】
上記のように、本変形例に係るバー部材310においても、Y方向に互いに離間した2つの内部閉断面部310e,310fが形成される。内部閉断面部310eは、Y方向左側の稜線RLの内方側(インナ部材312側)を含むように設けられ、内部閉断面部310fも、Y方向右側の稜線RLの内方側を含むように設けられている。
【0122】
なお、本実施形態に係るバー部材310では、アウタ第1壁部311aのY方向での幅がW4であり、アウタ第2壁部311bとアウタ第3壁部311cのZ方向下端同士の間隔がW5である。また、インナ第1壁部312aのY方向での幅がW6である。W4,W5,W6は、次のような関係を満たす。
W5>W4>W6・・(数8)
【0123】
また、上記実施形態に係るバー部材210との比較では、次のような関係を満たす。
W4/W5>W1/W2・・(数9)
W6/W4<W3/W1・・(数10)
【0124】
上記(数9)の関係を満たし、アウタ第1壁部311aの幅W4を大きくすることにより、バー部材310に曲げ荷重が入力された際のより高い剛性を確保するのに優位となる。
【0125】
ここで、アウタ第1壁部311aに対してアウタ第2壁部311bがなす内側角はθ7であり、アウタ第1壁部311aに対してアウタ第3壁部311cがなす内側角はθ8である。角度θ7,θ8は、次のような関係を満たす。
θ1>θ7>90°・・(数11)
θ2>θ8>90°・・(数12)
【0126】
また、インナ第1壁部312aに沿った仮想線L3,L4を引くとき、仮想線L3に対してインナ第2壁部312fがなす内側角(仮想線L3に対してZ方向下側でなす角)はθ9であり、仮想線L4に対して第3壁部312gがなす内側角(仮想線L4に対してZ方向下側でなす角)はθ10である。角度θ9,θ10は、次のような関係を満たす。
θ9≒θ7・・(数13)
θ10≒θ8・・(数14)
【0127】
上記(数13)、(数14)の関係を満たすことにより、本変形例でもアウタ第2壁部311bおよびアウタ第3壁部311cのそれぞれに対して、インナ第2壁部312fおよびインナ第3壁部312gを高い強度で接合することができる。
【0128】
さらに、インナ第1壁部312aに対してインナ第4壁部312bがなす内側角(Z方向下側の面同士がなす角)はθ11であり、インナ第1壁部312aに対してインナ第5壁部312cがなす内側角(Z方向下側の面同士がなす角)はθ12である。角度θ11,θ12は、次のような関係を満たす。
θ11>θ7>90°・・(数15)
θ12>θ8>90°・・(数16)
【0129】
上記(数15)、(数16)の関係を満たすことにより、バー部材310では、上記実施形態に係るバー部材210と同様に継手部材のインナ側部材の接合をより高い生産性をもって行うことができる。また、インナ部材312での捩り剛性を低下調整するのにも優位となる。
【0130】
[変形例2]
図12は、変形例2に係るバー部材410の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材410の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0131】
図12に示すように、本変形例に係るバー部材410は、第1アウタ部材411および第2アウタ部材413とインナ部材412とが接合されてなる。第1アウタ部材411、第2アウタ部材413、およびインナ部材412は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0132】
第1アウタ部材411は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部411aと、アウタ第1壁部411aのY方向左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部411bと、が一体形成されてなる。第2アウタ部材413も、Y方向に延びるアウタ第1壁部413aと、アウタ第1壁部413aのY方向右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部413bと、が一体形成されている。
【0133】
ここで、第1アウタ部材411において、アウタ第1壁部411aとアウタ第2壁部411bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。同様に、第2アウタ部材413において、アウタ第1壁部413aとアウタ第3壁部413cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0134】
インナ部材412は、上記実施形態に係るインナ部材212と同様に、第1アウタ部材411および第2アウタ部材413の各アウタ第1壁部411a,413aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部412aと、第1アウタ部材411のアウタ第2壁部411bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部412fと、第2アウタ部材413のアウタ第3壁部413bに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部412gと、インナ第1壁部412aのY方向左端から下方に延びるインナ第4壁部412bと、インナ第1壁部412aのY方向右端から下方に延びるインナ第5壁部412cと、インナ第4壁部412bの下端とインナ第2壁部412fの上端とを接続するインナ第6壁部412dと、インナ第5壁部412cの下端とインナ第3壁部412gの上端とを接続するインナ第7壁部412eと、が一体形成されている。
【0135】
本変形例においても、インナ第4壁部412bとインナ第6壁部412dとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成し、インナ第5壁部412cとインナ第7壁部412eとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0136】
第1アウタ部材411とインナ部材412とは、第1アウタ部材411のアウタ第1壁部411aとインナ第1壁部412aとが面同士で当接する箇所(I1部分)、第1アウタ部材411のアウタ第2壁部411bとインナ第2壁部412fとが面同士で当接する箇所(I3部分)のそれぞれで接着剤を用いて接合されている。同様に、第2アウタ部材413のアウタ第1壁部413aとインナ第1壁部412aとが面同士で当接する箇所(I2部分)、第2アウタ部材413のアウタ第3壁部413bとインナ第3壁部412gとが面同士で当接する箇所(I4部分)のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0137】
上記のように第1アウタ部材411および第2アウタ部材413とインナ部材412との接合により形成されたバー部材410でも、Y方向に互いに離間する2つの内部閉断面部410e,410fが形成される。内部閉断面部410eは、Y方向左側の稜線RLの内方側(インナ部材412側)を含むように設けられ、内部閉断面部410fは、Y方向右側の稜線RLの内方側(インナ部材412側)を含むように設けられている。
【0138】
本変形例に係るバー部材410では、アウタ部材を第1アウタ部材411と第2アウタ部材413との2つの部材で構成することで、Y方向における第1アウタ部材411と第2アウタ部材413との間の部分G1において、インナ部材412だけが存在することとなる。このため、本変形例に係るバー部材410では、Y方向におけるG1の幅を適宜設定することにより、バー部材410に曲げ荷重が入力された場合の捩り剛性をコントロールするのに優位となる。
【0139】
また、本変形例に係るバー部材410では、第1アウタ部材411とインナ部材412との接合において、2つの面で接合し、同様に、第2アウタ部材413とインナ部材412との接合において、2つの面で接合するので、接着層の層厚みをコントロールし易い。
【0140】
なお、本変形例に係るバー部材410でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様の効果を得ることもできる。
【0141】
[変形例3]
図13は、変形例3に係るバー部材510の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材510の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0142】
図13に示すように、本変形例に係るバー部材510は、アウタ部材511と第1インナ部材512および第2インナ部材513とが接合されてなる。アウタ部材511、第1インナ部材412、および第2インナ部材513は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0143】
アウタ部材511は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部511aと、アウタ第1壁部511aのY方向左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部511bと、アウタ第1壁部511aのY方向右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部511cと、が一体形成されてなる。
【0144】
ここで、アウタ部材511において、アウタ第1壁部511aとアウタ第2壁部511bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部511aとアウタ第3壁部511bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0145】
第1インナ部材512は、アウタ第1壁部511aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部512aと、アウタ第2壁部511bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部512fと、アウタ第1壁部512aのY方向左端から下方に延びるインナ第4壁部512bと、インナ第4壁部512bの下端とインナ第2壁部512fの上端とを接続するインナ第6壁部512dと、が一体形成されている。
【0146】
第2インナ部材513は、アウタ第1壁部511aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部513aと、アウタ第3壁部511cに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部513gと、インナ第1壁部513aのY方向右端から下方に延びるインナ第5壁部513cと、インナ第5壁部513cの下端とインナ第3壁部513gの上端とを接続するインナ第7壁部513eと、が一体形成されている。
【0147】
本変形例においても、第1インナ部材512におけるインナ第4壁部512bとインナ第6壁部512dとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成し、第2インナ部材513におけるインナ第5壁部512cとインナ第7壁部512eとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0148】
アウタ部材511と第1インナ部材512とは、アウタ第1壁部511aと第1インナ部材512のインナ第1壁部512aとが面同士で当接する箇所(J1部分)、アウタ第2壁部511bと第1インナ部材512のインナ第2壁部512fとが面同士で当接する箇所(J3部分)のそれぞれで接着剤を用いて接合されている。同様に、アウタ第1壁部511aと第2インナ部材513のインナ第1壁部513aとが面同士で当接する箇所(J2部分)、アウタ第3壁部511cと第2インナ部材513のインナ第3壁部513gとが面同士で当接する箇所(J4部分)のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0149】
上記のようにアウタ部材511と第1インナ部材512および第2インナ部材513との接合により形成されたバー部材510でも、Y方向に互いに離間した2つの内部閉断面部510e,510fが形成される。内部閉断面部510eは、Y方向左側の稜線RLの内方側(第1インナ部材512側)を含むように設けられ、内部閉断面部510fは、Y方向右側の稜線RLの内方側(第2インナ部材513側)を含むように設けられている。
【0150】
本変形例に係るバー部材510では、インナ部材を第1インナ部材512と第2インナ部材513との2つの部材で構成することで、Y方向における第1インナ部材512と第2インナ部材513との間の部分G2において、アウタ部材511だけが存在することとなる。このため、本変形例に係るバー部材510でも、Y方向におけるG1の幅を適宜設定することにより、バー部材510に曲げ荷重が入力された場合の捩り剛性をコントロールするのに優位となる。
【0151】
また、本変形例に係るバー部材510では、アウタ部材511と第1インナ部材512との接合において、2つの面で接合し、同様に、アウタ部材511と第2インナ部材513との接合において、2つの面で接合するので、接着層の層厚みをコントロールし易い。
【0152】
なお、本変形例に係るバー部材510でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様の効果を得ることもできる。
【0153】
[変形例4]
図14は、変形例4に係るバー部材610の構造、および当該バー部材610への継手部材の固定方法を示す展開図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材610の断面構造、およびバー部材10への継手部材の固定方法を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0154】
図14に示すように、本変形例に係るバー部材610は、アウタ部610aと、第1インナ部610bと、第2インナ部610cと、がCFRPから構成されている。アウタ部610aは、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部610dと、アウタ第1壁部610dのY方向左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部610eと、アウタ第1壁部610dのY方向右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部413bと、を有する。
【0155】
ここで、アウタ部610aにおいて、アウタ第1壁部610dとアウタ第2壁部610eとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部610aとアウタ第3壁部610fとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0156】
第1インナ部610bは、アウタ第1壁部610dに対して、当該アウタ第1壁部610dのY方向中央部よりも左側の部分に接続され、左斜め下方に延びるインナ第4壁部610gと、インナ第4壁部610gの下端からY方向左側に延び、アウタ第2壁部610eの下端よりも上方の部分に接続されたインナ第6壁部610iと、を有する。
【0157】
第2インナ部610cは、アウタ第1壁部610dに対して、当該アウタ第1壁部610dのY方向中央部よりも右側の部分に接続され、右斜め下方に延びるインナ第5壁部610hと、インナ第5壁部610hの下端からY方向右側に延び、アウタ第3壁部610fの下端よりも上方の部分に接続されたインナ第7壁部610jと、を有する。
【0158】
本変形例においても、インナ第4壁部610gとインナ第6壁部610iとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成し、インナ第5壁部610hとインナ第7壁部610jとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0159】
ここで、アウタ第1壁部610dと第1インナ部610bのインナ第4壁部610gとがなす内側角(Z方向下側の面同士がなす角)はθ13であり、アウタ第1壁部610dと第2インナ部610cのインナ第5壁部610hとがなす内側角(Z方向下側の面同士がなす角)はθ14である。また、アウタ第2壁部610eと第1インナ部610bのインナ第6壁部610iとがなす内側角(Z方向下側の面同士がなす角)はθ15であり、アウタ第3壁部610fと第2インナ部610cのインナ第7壁部610jとがなす内側角(Z方向下側の面同士がなす角)はθ16である。角度θ13~θ16は、次のような関係を満たす。
θ13>90°・・(数17)
θ14>90°・・(数18)
θ15>90°・・(数19)
θ16>90°・・(数20)
【0160】
本変形例のように、アウタ部610aと第1インナ部610bおよび第2インナ部61cとが一体形成されてなるバー部材610でも、Y方向に互いに離間した2つの内部閉断面部610k,610lが形成される。内部閉断面部610kは、Y方向左側の稜線RLの内方側を含むように設けられ、内部閉断面部610lは、Y方向右側の稜線RLの内方側を含むように設けられている。
【0161】
なお、詳細な説明を省略するが、本変形例に係るバー部材610は、例えば引き抜き成形により形成することが可能である。そして、1つの部材でバー部材610を形成することができるので、部材管理を含めて生産性の向上を図ることができる。また、本変形例に係るバー部材610でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様の効果を得ることもできる。
【0162】
次に、本変形例においても、継手部材は、バー部材610の端部に対してZ方向上側(アウタ側)から矢印K1のように装着されるアウタ側部材617と、バー部材610の端部に対してZ方向下側(インナ側)から矢印K2のように装着されるインナ側部材618と、で構成される。アウタ側部材617は、上記実施形態に係る継手部材216のアウタ側部材217と同様に、第1壁部617a、第2壁部617b、及び第3壁部617cを有し、バー部材610におけるアウタ部610aに対して略相似形の断面形状であって、アウタ部610aのZ方向上側(アウタ側)の面に沿うように形成されている。
【0163】
継手部材のインナ側部材618は、X方向(紙面に垂直な方向)の一部がバー部材610のインナ側の面に沿うように形成されている。具体的には、インナ側部材618は、Y方向に延びるベース部618aと、ベース部618aのY方向中央部からZ方向上方に隆起した凸部618bと、で構成されている。
【0164】
凸部618bは、Y方向に延びる第1面618cと、第1面618cとY方向左側で連続し、Y方向およびZ方向の斜め下方に延びる第2面618dと、第1面618cとY方向右側で連続し、Y方向およびZ方向の斜め下方に延びる第3面618eとで構成されている。第1面618cは、Y方向に延びてバー部材610のアウタ第1壁部610dの下面に沿うように形成されている。第2面618dは、バー部材610における第1インナ部610bのインナ第4壁部610gに沿い、第3面618eは、バー部材610における第2インナ部610cのインナ第5壁部610hに沿うように形成されている。
【0165】
ベース部618aは、凸部618bの第2面618dに連続し、Y方向に延びる第4面618fと、凸部618bの第3面618eに連続し、Y方向に延びる第5面618gと、第4面618fに連続し、Y方向およびZ方向の斜め下方に延びる第6面618hと、第5面618gに連続し、Y方向およびZ方向の斜め下方に延びる第7面618iとを有する。なお、アウタ側部材618において、第4面618fはバー部材610のインナ第6壁部610iの下面に沿い、第5面618gはバー部材610のインナ第7壁部610jの下面に沿い、第6面618hはバー部材610のアウタ第2壁部610eの下面に沿い、第7面618iはバー部材610のアウタ第3壁部610fの下面に沿うように形成されている。
【0166】
本変形例に係るバー部材610においても、上記(数17)~(数20)の関係を満たすことにより、煩雑な作業を必要とせずに、バー部材610のアウタ部610aの外側(インナ側)に継手部材のアウタ側部材617を装着することができ、バー部材610の内側(インナ側)に継手部材のインナ側部材618を装着することができる。即ち、本変形例においても、バー部材610における角度θ13~θ16を何れも鈍角としていることにより、アウタ第2壁部610eとアウタ第3壁部610fとの間隔がアウタ第1壁部610dの側からZ方向下方に行くほど拡がり、インナ第4壁部610gとインナ第5壁部610hとの間隔がアウタ第1壁部610dの側からZ方向下方に行くほど拡がる形状となっている。このため、バー部材610のZ方向下方から容易に継手部材のインナ側部材618を装着することができる。なお、継手部材のアウタ側部材617は、バー部材610のアウタ部610aのZ方向上側部分に沿うように形成されているので、バー部材610に対して容易に装着することができる。
【0167】
以上より、本変形例に係る補強部材(構造部材)でも、上記実施形態に係る補強部材21等と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。また、本変形例に係る補強部材では、上述のように、バー部材610に対して継手部材のアウタ側部材617およびインナ側部材618を容易に装着することができ、高い生産性を確保することができる。
【0168】
[変形例5]
図15(a)は、変形例5に係るバー部材710の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材710の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0169】
図15(a)に示すように、本変形例に係るバー部材710も、アウタ部材711とインナ部材712とが接合されてなる。アウタ部材711およびインナ部材712は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0170】
アウタ部材711は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部711aと、アウタ第1壁部711aのY方向左端からZ方向下方に延びるアウタ第4壁部711bと、アウタ第1壁部711aのY方向右端からZ方向下方に延びるアウタ第5壁部711cと、アウタ第4壁部711bのZ方向下端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部711dと、アウタ第5壁部711cのZ方向下端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部711eと、が一体形成されてなる。
【0171】
ここで、アウタ部材711において、アウタ第1壁部711aとアウタ第4壁部711bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部711aとアウタ第5壁部711cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0172】
インナ部材712は、上記実施形態に係るインナ部材212と同様に、アウタ第1壁部711aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部712aと、アウタ第2壁部711dに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部712fと、アウタ第3壁部711eに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部712gと、インナ第1壁部712aの左端から左斜め下方に延びるインナ第4壁部712bと、インナ第1壁部712aの右端から右斜め下方に延びるインナ第5壁部712cと、インナ第4壁部712bの下端とインナ第2壁部712fの上端とを接続するインナ第6壁部712dと、インナ第5壁部712cの下端とインナ第3壁部712gの上端とを接続するインナ第7壁部712eと、が一体形成されている。
【0173】
本変形例においても、インナ第4壁部712bとインナ第6壁部712dとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成し、インナ第5壁部712cとインナ第7壁部712eとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0174】
アウタ部材711とインナ部材712とは、アウタ第1壁部711aとインナ第1壁部712aとが面同士で当接する箇所、アウタ第2壁部711dとインナ第2壁部712fとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部711eとインナ第3壁部712gとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0175】
上記のようにアウタ部材711とインナ部材712との接合により形成されたバー部材710でも、Y方向に互いに離間した2つの内部閉断面部710e,710fが形成される。内部閉断面部710eは、Y方向左側の稜線RLの内方側(インナ部材712側)を含むように設けられ、内部閉断面部710fは、Y方向右側の稜線RLの内方側(インナ部材712側)を含むように設けられている。
【0176】
以上より、本変形例に係るバー部材710でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。また、本変形例に係るバー部材710では、アウタ部材711において、アウタ第1壁部711aとアウタ第2壁部711dとの間にZ方向に延びるアウタ第4壁部711bを有し、アウタ第1壁部711aとアウタ第3壁部711eとの間にZ方向に延びるアウタ第5壁部711cを有する。そして、アウタ第4壁部711bとアウタ第2壁部711dとの間の境界部分RL2、およびアウタ第5壁部711cとアウタ第3壁部711eとの間の境界部分RL2がそれぞれアウタ側から見たときに凹状に屈曲している。このため、アウタ部材711とインナ部材712との接合時に、アウタ第2壁部711dとインナ第2壁部712fとの間、およびアウタ第3壁部711eとインナ第3壁部712gとの間での圧力が加わり易くなる。
【0177】
[変形例6]
図15(b)は、変形例6に係るバー部材720の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材720の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0178】
図15(b)に示すように、本変形例に係るバー部材720も、アウタ部材721とインナ部材722とが接合されてなる。アウタ部材721およびインナ部材722は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0179】
アウタ部材721は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部721aと、アウタ第1壁部721aの左端から左斜め上方に延びるアウタ第4壁部721bと、アウタ第1壁部721aの右端から右斜め上方に延びるアウタ第5壁部721cと、アウタ第4壁部721bの上端からY方向に延びるアウタ第6壁部721dと、アウタ第5壁部721cの上端からY方向に延びるアウタ第7壁部721eと、アウタ第6壁部721dの左端から下方に延びるアウタ第8壁部721fと、アウタ第7壁部721eの右端から下方に延びるアウタ第9壁部721gと、アウタ第8壁部721fの下端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部721hと、アウタ第9壁部721gの下端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部721iと、が一体形成されている。
【0180】
ここで、アウタ部材721において、アウタ第4壁部721bとアウタ第6壁部721dとの境界部分、およびアウタ第5壁部721cとアウタ第7壁部721gとの境界部分のそれぞれが稜線RL1としてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。また、アウタ部材721において、アウタ第6壁部721dとアウタ第8壁部721fとの境界部分、およびアウタ第7壁部721eとアウタ第9壁部721gとの境界部分のそれぞれが稜線RL2としてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。
【0181】
インナ部材722は、上記実施形態に係るインナ部材212と同様に、アウタ第1壁部721aに沿ってY方向に延びるインナ第1壁部722aと、アウタ第2壁部721hに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部722fと、アウタ第3壁部721iに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部722gと、インナ第1壁部722aの左端から左斜め下方に延びるインナ第4壁部722bと、インナ第1壁部722aの右端から右斜め下方に延びるインナ第5壁部722cと、インナ第4壁部722bの下端とインナ第2壁部722fの上端とを接続するインナ第6壁部722dと、インナ第5壁部722cの下端とインナ第3壁部722gの上端とを接続するインナ第7壁部722eと、が一体形成されている。
【0182】
本変形例においても、インナ第4壁部722bとインナ第6壁部722dとで断面視で略逆L字形状のL字壁部を構成し、インナ第5壁部722cとインナ第7壁部722eとで断面視で略L字形状のL字壁部を構成している。
【0183】
アウタ部材721とインナ部材722とは、アウタ第1壁部721aとインナ第1壁部722aとが面同士で当接する箇所、アウタ第2壁部721hとインナ第2壁部722fとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部721iとインナ第3壁部722gとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0184】
上記のようにアウタ部材721とインナ部材722との接合により形成されたバー部材720でも、Y方向に互いに離間した2つの内部閉断面部720e,720fが形成される。内部閉断面部720eは、2つの稜線RL1,RL2の内方側(インナ部材722側)を含むように設けられ、内部閉断面部720fも、2つの稜線RL1,RL2の内方側(インナ部材722側)を含むように設けられている。
【0185】
以上より、本変形例に係るバー部材720でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。なお、本変形例に係るバー部材720では、内部閉断面部720e,720fのそれぞれが、2つの稜線RL1,RL2の内方側を含むように設けられているので、更なる剛性の向上を図ることができる。
【0186】
また、本変形例に係るバー部材720でも、上記変形例5と同様に、アウタ部材721において、アウタ第6壁部721dとアウタ第2壁部721hとの間にZ方向に延びるアウタ第8壁部721fを有し、アウタ第7壁部721eとアウタ第3壁部721iとの間にZ方向に延びるアウタ第9壁部721gを有する。そして、アウタ第8壁部721fとアウタ第2壁部721hとの間の境界部分RL3、およびアウタ第9壁部721gとアウタ第3壁部721iとの間の境界部分RL3がそれぞれアウタ側から見たときに凹状に屈曲している。このため、アウタ部材721とインナ部材722との接合時に、アウタ第2壁部721hとインナ第2壁部722fとの間、およびアウタ第3壁部721iとインナ第3壁部722gとの間での圧力が加わり易くなる。
【0187】
[変形例7]
図15(c)は、変形例7に係るバー部材730の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材730の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0188】
図15(c)に示すように、本変形例に係るバー部材730も、アウタ部材731とインナ部材732とが接合されてなる。アウタ部材731およびインナ部材732は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0189】
アウタ部材731は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部731aと、アウタ第1壁部731aの左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部731bと、アウタ第1壁部731aの右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部731cと、が一体形成されている。
【0190】
インナ部材732は、アウタ第1壁部731aに対してZ方向に間隔を空けてY方向に延びるインナ第4壁部732aと、アウタ第2壁部731bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部732fと、アウタ第3壁部731cに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部732gと、インナ第4壁部732aの左端から左斜め上方に延びるインナ第5壁部732bと、インナ第4壁部732aの右端から右斜め上方に延びるインナ第6壁部732cと、インナ第5壁部732bの上端とインナ第2壁部732fの上端とを接続するインナ第1壁部732dと、インナ第6壁部732cの上端とインナ第3壁部732gの上端とを接続するインナ第7壁部732eと、が一体形成されている。インナ第1壁部732dおよびインナ第7壁部732eは、アウタ第1壁部731aに沿うように配されている。
【0191】
アウタ部材731とインナ部材732とは、アウタ第1壁部731aとインナ第1壁部732dおよびインナ第7壁部732eのそれぞれとが面同士で当接する箇所、アウタ第2壁部731bとインナ第2壁部732fとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部731iとインナ第3壁部732gとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0192】
上記のようにアウタ部材731とインナ部材732との接合により形成されたバー部材730では、1つの内部閉断面部730eが形成される。
【0193】
以上より、本変形例に係るバー部材730でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。なお、本変形例に係るバー部材730では、1つの内部閉断面部730eを有することとしているので、比較的小さな捩り剛性が必要な場合に有効な構造である。
【0194】
[変形例8]
図15(d)は、変形例7に係るバー部材740の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材740の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0195】
図15(d)に示すように、本変形例に係るバー部材740も、アウタ部材741とインナ部材742とが接合されてなる。アウタ部材741およびインナ部材742は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0196】
アウタ部材741は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部741aと、アウタ第1壁部741aの左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部741bと、アウタ第1壁部741aの右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部741cと、が一体形成されている。
【0197】
インナ部材742は、アウタ第1壁部741aに沿うようにY方向に延びるインナ第1壁部742aと、アウタ第2壁部741bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部742dと、アウタ第3壁部741cに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部742eと、インナ第1壁部742aの左端から左斜め下方に延びるインナ第4壁部742bと、インナ第4壁部742bの下端とインナ第2壁部742dの上端とを接続するインナ第5壁部742cと、が一体形成されている。
【0198】
アウタ部材741とインナ部材742とは、アウタ第1壁部741aとインナ第1壁部742aとが面同士で当接する箇所、アウタ第2壁部741bとインナ第2壁部742dとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部741cとインナ第3壁部742eとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0199】
上記のようにアウタ部材741とインナ部材742との接合により形成されたバー部材740では、1つの内部閉断面部740eが形成される。ここで、本変形例に係るバー部材740では、内部閉断面部740eが、Y方向の左側にオフセットされた状態で設けられ、アウタ部材741における第1壁部741aと第2壁部741bとの境界部分である稜線RLの内方側(インナ部材722側)を含むように設けられている。
【0200】
以上より、本変形例に係るバー部材740でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。なお、本変形例に係るバー部材740でも、1つの内部閉断面部740eを有することとしているので、比較的小さな捩り剛性が必要な場合に有効な構造である。
【0201】
また、本変形例に係るバー部材740では、内部閉断面部740eをY方向の左側にオフセットされた状態で設けているので、左右の剛性バランスを崩し、曲げ荷重が入力された場合に捩りモードに変換された捩りの減衰が得られる。
【0202】
[変形例9]
図16(a)は、変形例9に係るバー部材750の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材750の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0203】
図16(a)に示すように、本変形例に係るバー部材750も、アウタ部材751とインナ部材752とが接合されてなる。アウタ部材751およびインナ部材752は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0204】
アウタ部材751は、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部751aと、アウタ第1壁部751aの左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部751bと、アウタ第1壁部751aの右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部751cと、が一体形成されている。
【0205】
インナ部材752は、アウタ第1壁部751aに対してZ方向に間隔を空けてY方向に延びるインナ第1壁部752aと、アウタ第2壁部751bに沿って左斜め下方に延びるインナ第2壁部752bと、アウタ第3壁部751cに沿って右斜め下方に延びるインナ第3壁部752cと、が一体形成されている。
【0206】
アウタ部材751とインナ部材752とは、アウタ第2壁部751bとインナ第2壁部752bとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部751cとインナ第3壁部752cとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0207】
上記のようにアウタ部材751とインナ部材752との接合により形成されたバー部材750では、1つの内部閉断面部750eが形成される。
【0208】
ここで、アウタ部材751において、アウタ第1壁部751aとアウタ第2壁部751bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部751aとアウタ第3壁部751cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。そして、内部閉断面部750eは、左右の稜線RLの内方側(インナ部材752側)を含むように設けられている。
【0209】
以上より、本変形例に係るバー部材750でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。なお、本変形例に係るバー部材750では、断面積が比較的大きな内部閉断面部750eを有することとしているので、大きな捩り剛性が必要な場合に有効な構造である。
【0210】
[変形例10]
図16(b)は、変形例10に係るバー部材760の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材760の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0211】
図16(b)に示すように、本変形例に係るバー部材760においても、互いに接合されてなるアウタ部材761とインナ部材762とを備える。アウタ部材761およびインナ部材762は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0212】
アウタ部材761は、上記実施形態に係るアウタ部材211と同様の断面形状を有し、アウタ第1壁部761aと、アウタ第2壁部761bと、アウタ第3壁部761cと、が一体形成されている。インナ部材762についても、上記実施形態に係るインナ部材212お同様の断面形状を有し、インナ第1壁部762aと、インナ第2壁部762fと、インナ第3壁部762gと、インナ第4壁部762bと、インナ第5壁部762cと、インナ第6壁部762dと、インナ第7壁部762eと、が一体形成されている。
【0213】
アウタ部材761とインナ部材762とは、アウタ第1壁部761aとインナ第1壁部762aとが面同士で当接する箇所、アウタ第2壁部761bとインナ第2壁部762fとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部761cとインナ第3壁部762gとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0214】
上記のようにアウタ部材761とインナ部材762との接合により形成されたバー部材760では、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、Y方向に互いに離間した2つの内部閉断面部760e,760fが形成される。
【0215】
ここで、アウタ部材761において、アウタ第1壁部761aとアウタ第2壁部761bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部761aとアウタ第3壁部761cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。そして、内部閉断面部760eは、Y方向左側の稜線RLの内方側(インナ部材762側)を含むように設けられ、内部閉断面部760fは、Y方向右側の稜線RLの内方側(インナ部材762側)を含むように設けられている。
【0216】
本変形例に係るバー部材760は、上記実施形態に係るバー部材210とは異なり、2つの内部閉断面部760e,760fに充填部材763,764が充填形成されている。充填部材763,764の形成材料の一例としては、発泡ウレタンなどの発泡材料を採用することができる。
【0217】
以上より、本変形例に係るバー部材760でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。また、本変形例に係るバー部材760では、内部閉断面部760e,760fに充填部材763,764を充填形成することで、内部閉断面部760e,760fの形成により得られる曲げ剛性と捩り剛性とを高くすることができ、バー部材760を構成するアウタ部材761およびインナ部材762の断面サイズを小さくすることが可能となる。
【0218】
上記のように、バー部材760を構成するアウタ部材761およびインナ部材762の断面サイズを小さくすることで、レイアウトにおける高い自由度を得ることができ、また断面サイズの小型化による軽量化を図ることもできる。
【0219】
[変形例11]
図16(c)は、変形例11に係るバー部材770の構造を示す断面図である。なお、本変形例に係る補強部材(構造部材)は、バー部材770の断面構造を除き上記実施形態と同じであるので、図示および以下での説明を省略する。
【0220】
図16(c)に示すように、本変形例に係るバー部材770も、アウタ部材771とインナ部材772とが接合されてなる。アウタ部材771およびインナ部材772は、それぞれがCFRPから構成されている。
【0221】
アウタ部材771は、所謂、ハット形の断面形状を有する部材であって、第2方向であるY方向に延びるアウタ第1壁部771aと、アウタ第1壁部771aの左端から左斜め下方に延びるアウタ第2壁部771bと、アウタ第1壁部771aの右端から右斜め下方に延びるアウタ第3壁部771cと、アウタ第2壁部771bの下端からY方向に延びるアウタ第4壁部771dと、アウタ第3壁部771cの下端からY方向に延びるアウタ第5壁部771eと、が一体形成されている。
【0222】
インナ部材772も、所謂、ハット形の断面形状を有する部材であって、第2方向であるY方向に延びるインナ第1壁部772aと、インナ第1壁部772aの左端から左斜め下方に延び、アウタ第2壁部771bに沿うインナ第2壁部772bと、インナ第1壁部772aの右端から右斜め下方に延び、アウタ第3壁部771cに沿うインナ第3壁部772cと、インナ第2壁部772bの下端からY方向に延び、アウタ第4壁部771dに沿うインナ第4壁部772dと、インナ第3壁部772cの下端からY方向に延び、アウタ第5壁部771eに沿うインナ第5壁部772eと、が一体形成されている。
【0223】
アウタ部材771とインナ部材772とは、アウタ第2壁部771bとインナ第2壁部772bとが面同士で当接する箇所、アウタ第3壁部771cとインナ第3壁部772cとが面同士で当接する箇所、アウタ第4壁部771dとインナ第4壁部772dとが面同士で当接する箇所、アウタ第5壁部771eとインナ第5壁部772eとが面同士で当接する箇所のそれぞれが接着剤を用いて接合されている。
【0224】
上記のようにアウタ部材771とインナ部材772との接合により形成されたバー部材770では、1つの内部閉断面部770eが形成される。
【0225】
ここで、アウタ部材771において、アウタ第1壁部771aとアウタ第2壁部771bとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延び、アウタ第1壁部771aとアウタ第3壁部771cとの境界部分が稜線RLとしてX方向(紙面に垂直な方向)に延びている。そして、内部閉断面部770eは、左右の稜線RLの内方側(インナ部材772側)を含むように設けられている。
【0226】
以上より、本変形例に係るバー部材770でも、上記実施形態に係るバー部材210と同様に、質量増加の抑制および高い振動減衰効果を得ることができる。なお、本変形例に係るバー部材770でも、上記変形例9に係るバー部材750と同様に、断面積が比較的大きな内部閉断面部770eを有することとしているので、大きな捩り剛性が必要な場合に有効な構造である。
【0227】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1~3,5~11では、複数の壁部を有するインナ部材を備えることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、曲面で構成された1つの壁部を有するインナ部材を備えることにしてもよい。
【0228】
上記実施形態および上記変形例1~11では、繊維強化樹脂製の構造部材の一例として、車体1の下面の補強に用いられる補強部材21~29を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車幅方向左右のサスタワー同士の間を架橋するストラットタワーバーに用いることなども可能である。
【0229】
また、本発明では、ある部位を補強するための部材だけでなく、構造部材そのものとして、上記のような構成の部材を採用することでも、上記同様の効果を得ることができる。例えば、車体であれば、ルーフサイドレールやセンターピラー、さらにはフロントピラーなどに適用することも可能である。
【0230】
また、本発明の構造部材については、自動車等の車体に限らず種々の構造体(例えば、産業機器など)に適用することも可能である。
【0231】
上記実施形態および上記変形例1~11では、繊維強化樹脂の一例として炭素繊維強化樹脂(CFRP)を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)や、アラミド繊維強化樹脂(ArFRP)や、炭化ケイ素繊維強化樹脂(SiCFRP)や、非鉄金属などの金属繊維を用いた繊維強化樹脂などを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0232】
1 車体
21~29 補強部材(構造部材)
210,310,410,510,610,710,720,730,740,750,760,770 バー部材
210e、210f、310e,310f,410e,410f,510e,510f,610k,610l,710e,710f,720e,720f,730e,740e,750e,760e,760f,770e 内部閉断面部
211,311,411,413,511,711,721,731,741,751,761,771 アウタ部材(第1の部材)
212,312,412,512,513,712,722,732,742,752,762,772 インナ部材(第2の部材)
213,216 継手部材
214,217,617 アウタ側部材
215,218,618 インナ側部材
219 接着層
610a アウタ部
610b,610c インナ部
2110 樹脂
2111 炭素繊維