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特許7400617被覆率検出装置、画像形成装置、被覆率検出方法、および被覆率検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】被覆率検出装置、画像形成装置、被覆率検出方法、および被覆率検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20231212BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231212BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231212BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N21/27 B
G03G15/20 505
G03G21/00 510
G03G15/00 303
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020082821
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177155
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕哉
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-228806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0150589(US,A1)
【文献】特開昭58-030605(JP,A)
【文献】特開平06-201333(JP,A)
【文献】特開2000-346800(JP,A)
【文献】特開2004-301672(JP,A)
【文献】特開2002-023433(JP,A)
【文献】特開2013-015808(JP,A)
【文献】特開平07-280951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地粘着層に付着した粉末による前記下地粘着層の被覆率を検出するための被覆率検出装置であって、
前記下地粘着層での反射率が異なる光を前記粉末の付着面に照射する光源部と、
前記粉末の付着面で反射した前記反射率が異なる光の反射光を個別に受光する受光部と、
前記受光部で受光した前記反射光の各受光量に基づいて、前記被覆率を検出する被覆率検出部を備えた
被覆率検出装置。
【請求項2】
前記反射率が異なる光は、前記下地粘着層に吸収される吸収波長光と、前記吸収波長光よりも前記下地粘着層に対する吸収量が少ない非吸収波長光とである
請求項1に記載の被覆率検出装置。
【請求項3】
前記被覆率に対する前記各受光量の特性を保持する特性保持部を備え、
前記被覆率検出部は、前記各受光量の差分を算出し、前記算出した差分と前記特性保持部に保持された前記特性とに基づいて、前記被覆率を検出する
請求項1または2に記載の被覆率検出装置。
【請求項4】
前記被覆率に因らずに前記各反射光の受光量が1:1となる補正係数を、前記粉末の種類毎、前記反射率が異なる光の波長毎に保持する補正係数保持部を備え、
前記被覆率検出部は、
前記被覆率を検出する際の前記粉末の種類と前記反射率が異なる光の波長とに基づいて、前記補正係数保持部から前記被覆率の検出に用いる補正係数を取得し、
前記取得した補正係数によって前記特性保持部が保持する特性を補正し、前記補正した特性に基づいて前記被覆率を検出する
請求項3に記載の被覆率検出装置。
【請求項5】
前記反射率が異なる光は、前記粉末の付着面に対して斜め方向から照射した光であり、
前記各反射光は、前記反射率が異なる光を前記粉末の付着面で正反射させた正反射光である
請求項1~4のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項6】
前記光源部は、前記反射率が異なる光をそれぞれ照射する複数の光源を備えた
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項7】
前記光源部は、
前記反射率が異なる光の全てを照射する光源と、
前記反射率が異なる光をそれぞれ個別に通過させる複数のフィルターとを備え、
前記複数のフィルターは、前記光源の光射出面において入れ替え自在に設けられた
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項8】
前記受光部は、前記粉末の付着面で反射した前記各反射光を、それぞれ個別に受光する複数の受光素子を備えた
請求項1~7のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項9】
前記受光部は、前記粉末の付着面で反射した前記各反射光の全てを受光する受光素子と、
前記各反射光をそれぞれ個別に通過させる複数のフィルターとを備え、
前記複数のフィルターは、前記受光素子の受光面において入れ替え自在に設けられた
請求項1~7のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項10】
前記粉末が付着していない前記下地粘着層に対して前記反射率が異なる光を照射して得られた前記各受光量が所定値となるように、前記受光量に対応する前記光源部からの出力を調整する光源調整部を備えた
請求項1~9のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項11】
前記被覆率検出部で検出した被覆率に基づいて、前記下地粘着層に前記粉末を付着させる装置の駆動制御部に対して駆動条件の補正を指示する補正指示部を備えた
請求項1~10のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置。
【請求項12】
記録媒体の一主面上に形成された画像パターンに粉末を接着した画像を形成するための画像形成装置であって、
請求項1~11のうちの何れか1項に記載の被覆率検出装置を備えた
画像形成装置。
【請求項13】
粘着によって粉末を保持する粉末保持面を有する粉末保持部材と、
前記粉末保持部材の粉末保持面と対向する位置に設けられ、前記粉末保持面との間に前記画像パターンが形成された記録媒体を挟持することにより、前記粉末保持面に粘着によって保持された前記粉末を前記画像パターンに対して転写する転写部材とを備え、
前記被覆率検出装置は、前記粉末保持面または前記画像パターンの少なくとも一方を前記下地粘着層として、前記粉末による被覆率を検出する
請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
下地粘着層に付着した粉末による前記下地粘着層の被覆率を検出するための被覆率検出方法であって、
光源部が、前記下地粘着層での反射率が異なる光を前記粉末の付着面に照射し、
受光部が、前記粉末の付着面で反射した前記反射率が異なる光の反射光を個別に受光し、
被覆率検出部が、前記受光部で受光した前記反射光の各受光量に基づいて、前記被覆率を検出する
被覆率検出方法。
【請求項15】
下地粘着層に付着した粉末による前記下地粘着層の被覆率を検出するための被覆率検出プログラムであって、
光源部に対し、前記下地粘着層での反射率が異なる光を前記粉末の付着面に照射させ、
受光部に対し、前記粉末の付着面で反射した前記反射率が異なる光の反射光を個別に受光させ、
被覆率検出部に対し、前記受光部で受光した前記反射光の各受光量に基づいて、前記被覆率を検出させるための
被覆率検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆率検出装置、画像形成装置、被覆率検出方法、および被覆率検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体上に形成されたトナー画像を検査する技術として、下記特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1には、「照射光源41からは、中間転写ベルト2上のブルートナー像43に、まず波長:550nmの光を照射し、次に波長650nmの光を照射する。…あらかじめ、中間転写ベルト2のみ(トナー像43がない状態)の検知信号強度と「既知の付着量」のマゼンタおよびシアントナー像の「検知信号強度の差」を、トナー付着量に対してプロットしたものを、トナーの色ごとに「検量線」として求めておく。中間転写ベルト2のみの熱弾性波信号強度と、それぞれの波長の光を照射されたときに検知された熱弾性波信号強度から、前記検量線を用いて付着量を算出し、現像プロセスにフィードバックして「画像濃度制御」を行う。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-92691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トナー画像を下地粘着層とし、この下地粘着層に粉末を付着させることによって光沢感が付与された画像を形成する技術がある。このようにした形成された画像が十分な光沢感を有するか否を検査するためには、トナー画像に対する粉末の付着量を検知する必要がある。しかしながら、上述した検査技術では、複数色のトナーの付着量を算出することができるものの、トナー画像に対する粉末の付着量(粉末による被覆率)を精度良く検知することができず、目視で光沢感の検査を実施することで被覆率を検知していた。
【0005】
そこで本発明は、粉末による下地粘着層の被覆率を精度良く検出することが可能な被覆率検出装置、画像形成装置、被覆率検出方法、および被覆率検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、下地粘着層に付着した粉末による前記下地粘着層の被覆率を検出するための被覆率検出装置であって、前記下地粘着層での反射率が異なる光を前記粉末の付着面に照射する光源部と、前記粉末の付着面で反射した前記反射率が異なる光の反射光を個別に受光する受光部と、前記受光部で受光した前記反射光の各受光量に基づいて、前記被覆率を検出する被覆率検出部を備えた構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粉末による下地粘着層の被覆率を精度良く検出することが可能な被覆率検出装置、画像形成装置、被覆率検出方法、および被覆率検出プログラムを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
図2】実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの構成図である。
図3】下地粘着層としての画像パターンの分光反射特性を示す図である。
図4】実施形態に係る被覆率検出装置が有する第2センサーの構成図である。
図5】下地粘着層としての粉末保持面の分光反射特性を示す図である。
図6】実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第1変形例を示す図である。
図7】実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第2変形例を示す図である。
図8】実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第3変形例を示す図である。
図9】実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第4変形例を示す図である。
図10】実施形態に係る粉末の被覆率の算出を説明するための図である。
図11】実施形態に係る被覆率検出装置が有する検査情報処理部の構成を説明するブロック図である。
図12】粉末の被覆率に対する反射光量の被覆率特性を示す図である。
図13】粉末の被覆率に対する反射光量の差分特性を示す図である。
図14】各粉末の分光反射特性を示す図である。
図15】被覆率の補正係数の一例を示す図である。
図16】実施形態に係る被覆率検出方法の一例を示すフローチャート(その1)である。
図17】実施形態に係る被覆率検出方法の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の被覆率検出装置、画像形成装置、被覆率検出方法、および被覆率検出プログラムに関する各実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
≪画像形成装置≫
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の構成を示す概略図である。図1に示す画像形成装置1は、記録媒体Sの主面上に形成された画像パターンPに、光沢を有する粉末Pdを貼り付けることによって光沢画像P1を形成するためのものである。
【0011】
画像パターンPは、粉末Pdを接着するための下地粘着層でもある。このような画像パターンPは、加熱によって溶融して粘着性を発現しその後硬化することによって、粉末Pdを接着する材料からなる。また画像パターンPは、加熱によらずに粘着性を有するものであってもよい。この場合の画像パターンPは、粉末Pを画像パターンPに転写した後に、加熱または光照射によって硬化する材料からなることとする。このような画像パターンPは、例えばトナー画像であるか、またはインク画像である。
【0012】
したがって、ここでの図示は省略したが、この画像形成装置1は、記録媒体Sに画像パターンPを形成する画像パターン形成装置に連結され、の画像パターン形成装置を備えたものであってもよい。
【0013】
以上のような画像パターンPに粉末Pdを貼り付けて光沢画像P1を形成するための画像形成装置1は、一例として予備加熱部材11、粉末保持部材12、粉末供給部材13、摺擦部材14、転写部材15、清掃部材16、媒体上粉末回収部材17、駆動制御部18、および操作部19を備えている。またこの画像形成装置1は、粉末Pdの被覆率を検出するための被覆率検出装置20を備えている。以下、画像形成装置1を構成する各部材の詳細を順次に説明し、次に画像形成装置1が取り扱う粉末Pdの構成、および画像形成装置1に設けられた被覆率検出装置20の詳細を説明する。
する。
【0014】
<予備加熱部材11>
予備加熱部材11は、記録媒体Sの主面上に形成された画像パターンPを加熱によって溶融させるためのものである。このような予備加熱部材11は、例えば画像パターンPの形成装置から搬送方向xに向かって供給される記録媒体Sの搬送経路上に配置されている。この予備加熱部材11によって加熱された画像パターンPは、溶融することによって粘着性を発現し、その後硬化することによって接着性を有することとなる。
【0015】
なお、この予備加熱部材11は、必要に応じて設ければよく、画像パターンPが、加熱によって溶融させることなく粘着性を有するものである場合、予備加熱部材11を設ける必要はない。ただしこの場合、画像形成装置1は、以降に説明する転写部材15において粉末Pを画像パターンPに転写した後に、画像パターンPを硬化させるための加熱部または光照射部を備えていることとする。
【0016】
<粉末保持部材12>
粉末保持部材12は、円筒状のものであって、駆動モーターによって円筒状の軸を中心として回転するものであり、円筒状の側周表面を粉末保持面12aとしている。この粉末保持部材12の粉末保持面12aは、粘着性を有する弾性層によって構成され、以降に説明する粉末Pdを粘着によって保持する。このため、粉末保持部材12の粉末保持面12aを構成する表面層は、粉末Pdを接着するための下地粘着層でもある。また粉末保持部材12は、円筒状の内部に加熱部材12bを備え、粉末保持面12aが加熱される構成となっている。
【0017】
このような粉末保持面12aを構成する材料としては、耐熱性を有することが好ましく、一例としてシリコンゴムが好適に用いられる。
【0018】
またこのような粉末保持部材12は、記録媒体Sの搬送方向xにおける予備加熱部材11の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて画像パターンPが形成された主面側に配置されている。粉末保持部材12は、記録媒体Sに向かう側において記録媒体Sの搬送方向xに沿った順方向に回転する構成となっている。なお、粉末保持部材12の粉末保持面12aに保持される粉末Pの構成は、以降に詳細に説明する。
【0019】
<粉末供給部材13>
粉末供給部材13は、粉末保持部材12の粉末保持面12aに粉末Pdを供給するためのものであって、円筒状の粉末保持部材12の軸方向に沿って設けられている。このような粉末供給部材13は、粉末Pdを貯蔵する貯蔵容器13aと、貯蔵容器13a内に収容された搬送部材13bとを有する。
【0020】
このうち貯蔵容器13aは、円筒状の粉末保持部材12の粉末保持面12aに向かう開口部が、粉末保持部材12の軸方向に沿って配置されたものである。
【0021】
また搬送部材13bは、例えば回転する円柱形状のブラシやスポンジ、さらにはスクリュー形状のものである。この搬送部材13bは、粉末保持部材12と逆方向に回転することにより、貯蔵容器13a内に貯蔵された粉末Pdを貯蔵容器13aの開口部にまで搬送し、粉末保持部材12の粉末保持面12aに粉末Pdを供給する。
【0022】
なお、粉末供給部材13は、このような構成に限定されることはなく、例えば貯蔵容器13a内に貯蔵された粉末Pdに、粉末保持部材12の粉末保持面12aを直接、接触させる構成のものであってもよい。
【0023】
<摺擦部材14>
摺擦部材14は、粉末保持部材12の粉末保持面12aを摺擦することにより、粉末保持部材12の粉末保持面12aにおいて粉末Pdを配向させるためのものである。このような摺擦部材14は、粉末保持部材12の回転方向に対して粉末供給部材13の下流側に配置されている。
【0024】
この摺擦部材14は、円筒状を有し、粉末保持面12aに当接する状態で配置され、粉末保持部材12の回転速度に対して速度差を有して回転する。これにより、摺擦部材14は、回転する粉末保持部材12の粉末保持面12aを摺擦する構成となっている。また摺擦部材14の側周面であって、粉末保持面12aを摺擦する面は、粉末保持面12aにおける余剰の粉末Pdを収容するための空隙を有する材料で構成されていることが好ましい。このような材料としては、例えばブラシ、スポンジまたは不織布のような多孔質材料が用いられる。
【0025】
このような摺擦部材14は、回転する粉末保持部材12の粉末保持面12aを摺擦することにより、粘着性を有する粉末保持面12aに供給された粉末Pdのうち、粉末保持面12aに粘着していない余分な粉末Pdを除去する。この際、摺擦部材14の側周面の空隙に、余分な粉末Pdを捕捉する。
【0026】
これにより、粘着性を有する粉末保持面12aは、1層分の粉末Pdを直接粘着させた状態で保持することになる。この際、粉末Pdが非球形状であれば、非球形状の粉末Pdは、粉末保持面12aに対して平行となるように方向性を揃えて配向した状態となる。これにより、非球形状の粉末Pdは、粉末保持面12aに対する接触面積が大きくなり、粉末保持面12aに対する付着力が確保されるため、粉末保持面12aから記録媒体S上への粉末Pdの落下を防止することができる。なお、粉末Pdの構成については、以降に詳細に説明する。
【0027】
また、摺擦部材14は、回収容器14aを備える。回収容器14aは、少なくとも摺擦部材14の下部に配置され、摺擦部材14によって粉末保持面12aから除去されて落下する粉末Pdを受け止めて貯留し、記録媒体S上への粉末Pdの落下を防止する。
【0028】
<転写部材15>
転写部材15は、粉末保持部材12の粉末保持面12aに粘着保持された粉末Pdを、記録媒体Sの主面上に形成された画像パターンPに転写するためのものである。この転写部材15は、粉末保持部材12の回転方向に対して摺擦部材14の下流側に配置されている。
【0029】
この転写部材15は、円筒状のものであり、粉末保持部材12との間に記録媒体Sを挟持するニップ部を構成する。また転写部材15は、円筒状の内部に加熱部材15bを備えている。このような転写部材15は、金属ローラやゴムローラを用いて構成され、ゴムローラを用いる場合は耐熱性の観点からシリコンゴムやシリコンゴムの表面にフッ素層を設けたものであることが好ましい。
【0030】
以上のような転写部材15は、粉末保持部材12との間にニップした記録媒体S上の画像パターンPを加熱し、画像パターンPを溶融させることによって画像パターンPに粘着性を発現させる。また転写部材15は、粉末保持部材12の粉末保持面12aに配向した状態で粘着保持された粉末Pdを、画像パターンPに対して押し圧する。これにより転写部材15は、粉末保持面12aから画像パターンPに、配向した状態の粉末Pdを転写する。
【0031】
なお、画像パターンPは、粉末保持部材12と転写部材15との間のニップ部を通過した後に温度が低下して硬化し、粉末保持部材12から転写された粉末Pdを接着して保持する。これにより、画像形成装置1は、画像パターンPの表面に光沢を有する粉末Pdが貼り付けられた光沢画像P1を形成する。
【0032】
このようにして得られた光沢画像P1は、画像パターンPに対して粉末Pdが配向した状態で貼り付けられた状態となり、光沢性の高い画像となる。さらに光沢画像P1は、粉末Pdと画像パターンPとの接触面積が大きいものであるため、粉末Pdが剥がれ難いものとなる。
【0033】
<清掃部材16>
清掃部材16は、転写部材15との間のニップ部を通過した粉末保持部材12の粉末保持面12a上に残された粉末Pdを回収し、粉末保持面12aを清掃するための部材である。このような清掃部材16は、例えば円筒状の側周をブラシやスポンジで構成したものであり、側周を粉末保持面12aに当接して配置されることで、粉末保持面12aに残された粉末Pdを掻き取る。またこの清掃部材16には、清掃部材16の側周面に対向して配置され、清掃部材16に掻き取られた粉末Pdを回収する粉末回収部材16aを有する。粉末回収部材16aは、例えばエアー吸引方式のものでもよい。さらに、清掃部材16は、回収容器16bを備える。回収容器16bは、少なくとも清掃部材16の下部に配置され、清掃部材16によって粉末保持面12aから除去されて落下する粉末Pdを受け止めて貯留し、記録媒体S上への粉末Pdの落下を防止する。
【0034】
<媒体上粉末回収部材17>
媒体上粉末回収部材17は、粉末保持部材12と転写部材15とのニップ部を通過した記録媒体S上の余分な粉末Pdを回収するためのものである。この媒体上粉末回収部材17は、記録媒体Sの搬送方向xにおける粉末保持部材12と転写部材15とのニップ部の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて画像パターンPが形成された側に配置される。ここで、記録媒体S上の余分な粉末Pdとは、画像パターンPに接着保持されていない粉末Pdであることとする。
【0035】
このような媒体上粉末回収部材17は、例えばエアー吸引によって粉末Pdを吸引する構成のものが例示されるが、これに限定されることはない。
【0036】
<駆動制御部18>
駆動制御部18は、操作部19からの指示、および被覆率検出装置20での検査結果に基づいて、上述した各部および以降に説明する被覆率検出装置20の駆動を制御するドライバーであって、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部、さらにはネットワークインターフェースを備えていてもよい。
【0037】
<操作部19>
操作部19は、例えばこの画像形成装置1を用いて実施されるジョブの設定を入力する部分である。この操作部19は、表示部と一体に設けたタッチパネルや操作ボタンであってよい。
【0038】
<粉末Pdの構成>
次に、粉末Pdの構成を説明する。粉末Pは、真球ではない非球形の形状を有する。このような粉末Pは、鱗片状であって扁平形状であることが、粉末保持面12aおよび画像パターンPに沿って配向させる観点から好ましい。
【0039】
粉末Pdが偏平形状であるとは、粉末Pにおける最大長さを長径[L]、長径[L]に直交する方向における最大長さを短径[W]、長径[L]および短径[W]に対して直交する方向の最少長さを厚み[t]とするときに、厚み[t]に対する短径[W]の比率が3以上である形状であることを言う。
【0040】
このような扁平形状の粉末Pの厚み[t]は、画像パターン100に粉末Pが配向した状態で接着した場合の粉末Pdによる光沢感を十分に発現させる観点から、0.2~10μm程度であることが好ましく、0.2~5.0μmであることがより好ましい。
【0041】
粉末Pdの厚み[t]が小さすぎると、重なった粉末Pdを回収することが難しく、粉末保持面12aおよび画像パターンPに対する密着性を確保できない場合がある。また、画像形成装置1の内部で粉末Pdが破壊され、粉末Pの大きさにバラツキが発生し易くなる。これに対し、粉末Pdの厚み[t]が大きすぎると、画像パターン100に接着させた粉末Pが、画像パターン100から脱離し易くなる。
【0042】
また、扁平形状の粉末Pの長径[L]および短径[W]は、それぞれ1~50μm程度であることが好ましく、15~50μmであることがより好ましい。長径[L]および短径[W]が小さすぎるとハンドリングが困難になる。一方、長径[L]および短径[W]が大きすぎると、解像度の高い画像を形成することが困難になり、画像の階調性を低下させる要因となる。
【0043】
また粉末Pは、材料が限定されることはない。粉末Pは、光沢画像P1に所望の光沢を発現させる観点から、金属または金属酸化物を用いて構成されていること好ましい。また粉末Pは、二種以上の材料の粒子を混合して用いることも可能である。また粉末Pは、粒子を被覆したものであってもよく、例えば、金属酸化物または樹脂でその表面が被覆されている金属粉であってもよいし、樹脂または金属でその表面が被覆されている金属酸化物粉であってもよいし、金属、金属酸化物または樹脂でその表面が被覆されている樹脂粉であってもよい。
【0044】
また粉末は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。粉末Pとして用いられる市販品の例としては、サンシャインベビー クロムパウダー、オーロラパウダー、パールパウダー(いずれも株式会社GGコーポレーション製)、ICEGEL ミラーメタルパウダー(株式会社TAT製)、ピカエース MCシャインダスト 、エフェクトC(株式会社クラチ製、「ピカエース」は同社の登録商標)、PREGEL マジックパウダー、ミラーシリーズ(有限会社プリアンファ製、「PREGEL」は同社の登録商標)、Bonnailシャインパウダー(株式会社ケイズプランイング製、「BONNAIL」は同社の登録商標)、メタシャイン(日本板硝子株式会社製、「メタシャイン」は同社の登録商標)、エルジーneo(尾池工業株式会社製、「エルジーneo」は同社の登録商標)が含まれる。
【0045】
≪被覆率検出装置20≫
次に、画像形成装置1に設けられた被覆率検出装置20を説明する。被覆率検出装置20は、粉末Pdによる下地粘着層の被覆率を検出するためのものであって、下地粘着層が粉末Pで覆われている割合を算出する。本実施形態において、下地粘着層は、画像パターンPと、粉末保持部材12の粉末保持面12aである。このような被覆率検出装置20は、粉末Pdによる画像パターンPの被覆率を検知するための第1センサー100aと、粉末Pdによる粉末保持面12aの被覆率を検知するための第2センサー100bと、情報処理部200とを備えている。なお、第1センサー100aおよび第2センサー100bは、必要に応じて一方だけでもよい。
【0046】
これらの部材を備えた被覆率検出装置20においては、異なる波長の光の反射率に基づいて、粉末Pdの被覆率を検知する。異なる波長の光は、下地粘着層に対して吸収される吸収波長光と、下地粘着層に対して非吸収であって下地粘着層で反射される非吸収波長光である。吸収波長光と非吸収波長光とは、下地粘着層毎にそれぞれ設定される波長光である。
【0047】
以下においては先ず、第1センサー100aの構成、第2センサー100bの構成を説明し、次に吸収波長光と非吸収波長光とを用いた被覆率検出の内容を説明し、その後、情報処理部200の構成を説明する。
【0048】
<第1センサー100a>
第1センサー100aは、光沢画像P1における粉末Pdの被覆率であって、粉末Pdによって画像パターンPが覆われている割合を算出するためのものである。このような第1センサー100aは、粉末保持部材12と転写部材15とのニップ部を通過した記録媒体Sに対向する位置に配置されている。
【0049】
図2は、実施形態に係る被覆率検出装置20が有する第1センサー100aの構成図である。この図に示すように、第1センサー100aは、光源部を構成する吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nと、受光部を構成する2つの受光素子102とを備える。
【0050】
このうち吸収波長光源101aは、下地粘着層である画像パターンPに対して吸収される波長の光として、吸収波長光Haを発生する発光素子である。また非吸収波長光源101nは、下地粘着層である画像パターンPに対して非吸収である波長の光として、非吸収波長光Hnを発生する発光素子である。発光素子は例えばLEDであってよい。なお、吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnの波長の範囲は、ある程度の幅を有していてよい。
【0051】
吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnは、被覆率の算出精度の観点から、画像パターンPに対する分光反射率の差が大きいほうが好ましい。具体的には、分光反射率の差は40%以上が好ましく、70%以上であればさらに好ましい。このような吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnの波長は、光沢画像P1を構成する画像パターンPの分光反射特性に基づいて設定される。
【0052】
図3は、下地粘着層としての画像パターンPの分光反射特性を示す図であって、一例としてシアントナーを用いた画像パターンPの分光反射特性である。この図に示すように、シアントナーを用いた画像パターンPは、波長632nmの光の分光反射率が5.85%であり、波長870nmの光の分光反射率が96.66%である。これらの波長の光の分光反射率の差は90.81%であって、十分に大きな差を有する。
【0053】
このため、画像パターンPがシアントナーを用いたものである場合の一例として、波長632nmの光が吸収波長光Haとして設定され、波長870nmの光が非吸収波長光Hnとして設定される。
【0054】
図2に戻り、吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nは、記録媒体Sの主面に対して斜め方向から、光沢画像P1に対して吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnを照射するように配置される。また吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nは、光沢画像P1におけるある程度の面積に対して吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnを照射する。吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnの照射面積は、被覆率の算出精度の観点から、粉末Pdに対して十分に広い面積で有ることとする。
【0055】
また吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nは、記録媒体Sの搬送方向xに順次に配置され、駆動制御部18での制御により、光沢画像P1における同一の領域に対して吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnを照射するように駆動される。
【0056】
各受光素子102は、吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nから照射され、光沢画像P1の画像パターンPおよびこれに平行な粉末Pdで正反射した正反射光Hra,Hrnを受光する位置に配置されている。つまり、一方の受光素子102は、吸収波長光源101aから照射された吸収波長光Haのうち、光沢画像P1で正反射した正反射光Hraを受光する位置に配置されている。またもう一方の受光素子102は、非吸収波長光源101nから照射された非吸収波長光Hnのうち、光沢画像P1で正反射した正反射光Hrnを受光する位置に配置されている。
【0057】
これらの各受光素子102は、受光した全波長の光を光電変換して出力するものであって、受光量に応じた電圧を出力するものである。このような受光素子102は、例えばフォトダイオードであってよい。なお、吸収波長光源101aに対応して設けられた受光素子102は、少なくとも吸収波長光Haの正反射光Hraに対応する波長を受光できればよい。また、非吸収波長光源101nに対応して設けられた受光素子102は、少なくとも非吸収波長光Hnの正反射光Hrnに対応する波長を受光できればよい。
【0058】
このような構成の第1センサー100aであれば、記録媒体Sを一回搬送することで、同一箇所に非吸収波長光Hnと正反射光Hrnとを照射し、これらの正反射光Hra,Hrnを受光することができるため、精度の高い被覆率の検出を実施することができる。
【0059】
<第2センサー100b>
図1に戻り、第2センサー100bは、粉末保持部材12の粉末保持面12aにおける粉末Pdの被覆率であって、粉末Pdによって粉末保持面12aが覆われている割合を算出するためのものである。このような第2センサー100bは、粉末保持部材12の回転方向に対して、粉末保持部材12と転写部材15とのニップ部の上流側において、粉末保持面12aに対向する位置に配置されている。
【0060】
図4は、実施形態に係る被覆率検出装置20が有する第2センサー100bの構成図である。この第2センサー100bが、第1センサー100aと異なるところは、取り扱い波長にある。すなわち、第2センサー100bが、光源部を構成する吸収波長光源101a’および非吸収波長光源101n’と、受光部を構成する2つの受光素子102’とを備えることは、第1センサー100a(図2参照)と同様である。
【0061】
このうち吸収波長光源101a’は、下地粘着層である粉末保持面12aに対して吸収される波長の光として、吸収波長光Ha’を発生する発光素子である。また非吸収波長光源101n’は、地粘着層である粉末保持面12aに対して非吸収である波長の光として非吸収波長光Hn’を発生する発光素子である。なお、吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’の波長の範囲は、ある程度の幅を有していてよいことは、第1センサー100aと同様である。
【0062】
吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’は、粉末保持面12aに対する分光反射率の差が大きいほうが好ましいことは、第1センサー100aと同様である。このような吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’の波長は、粉末保持面12aの分光反射特性に基づいて設定される。
【0063】
図5は、下地粘着層としての粉末保持面12aの分光反射特性を示す図であって、一例としてシリコンゴムからなる粉末保持面12aの分光反射特性である。図5中の実線は、劣化のないシリコンゴムからなる粉末保持面12aの分光反射特性である。一方、図5中の破線は、長期使用の影響によって劣化したシリコンゴムからなる粉末保持面12aの分光反射特性である
【0064】
この図に示すように、劣化のないシリコンゴムからなる粉末保持面12aは、波長520nmの光の分光反射率が2%であり、波長730nmの光の分光反射率が51%である。これらの波長の光の分光反射率の差は49%であって、十分に大きな差を有する。また劣化したシリコンゴムからなる粉末保持面12aは、波長520nmの光の分光反射率が4.8%であり、波長730nmの光の分光反射率が46%である。これらの波長の光の分光反射率の差は41.2%であって、十分に大きな差を有する。
【0065】
このため、粉末保持面12aがシリコンゴムからなる場合の一例として、波長520nmの光が吸収波長光Ha’として設定され、波長730nmの光が非吸収波長光Hn’として設定される。
【0066】
図4に戻り、吸収波長光源101a’および非吸収波長光源101n’は、粉末保持面12aの法線に対して斜め方向から、粉末保持面12aに対して吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’を照射するように配置される。また吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nは、粉末保持面12aにおけるある程度の面積であって、粉末Pdに対して十分に広い面積に対して吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’を照射する。また吸収波長光源101a’および非吸収波長光源101n’は、粉末保持部材12の回転方向に順次に配置され、駆動制御部18での制御により、粉末保持面12aにおける同一の領域に対して吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’を照射するように駆動される。
【0067】
また各受光素子102’は、吸収波長光源101a’および非吸収波長光源101n’から照射され、粉末保持面12aおよび粉末保持面12aと平行な粉末Pdで正反射した正反射光Hra’,Hrn’を受光する位置に配置されている。つまり、一方の受光素子102’は、吸収波長光源101a’から照射された吸収波長光Ha’のうち、粉末保持面12aで正反射した正反射光Hra’を受光する位置に配置されている。またもう一方の受光素子102’は、非吸収波長光源101n’から照射された非吸収波長光Hn’のうち、粉末保持面12aで正反射した正反射光Hrn’を受光する位置に配置されている。
【0068】
また第2センサー100bの各受光素子102’は、受光した全波長の光を光電変換して出力するものであって、受光量に応じた電圧を出力するものである。なお、吸収波長光源101a’に対応して設けられた受光素子102’は、少なくとも吸収波長光Ha’の正反射光Hra’に対応する波長を受光できればよい。また、非吸収波長光源101n’に対応して設けられた受光素子102’は、少なくとも非吸収波長光Hn’の正反射光Hrn’に対応する波長を受光できればよい。
【0069】
このような構成の第2センサー100bであれば、粉末保持部材12を一回転することで、同一箇所に非吸収波長光Hn’と正反射光Hrn’とを照射し、これらの正反射光Hra’,Hrn’を受光することができるため、精度の高い被覆率の検出を実施することができる。
【0070】
<第1センサーおよび第2センサーの変形例>
第1センサー100aおよび第2センサー100bは、以上説明したような構成に限定されることはなく、それぞれに設定した吸収波長光Haまたは吸収波長光Ha’と、非吸収波長光Hnまたは非吸収波長Hn’の各反射率を個別に検知可能な構成であればよい。以下に第1センサー100aを例示して、第1センサー100aの変形例を説明するが、説明する各変形例は第2センサー100bとしても同様に適用可能であり、それぞれ個別に適用可能である。
【0071】
[第1変形例]
図6は、実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第1変形例を示す図である。この図に示す第1変形例の第1センサー100a-1は、1つの白色光源101wと、2つの受光素子102と、吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nを備える。
【0072】
白色光源101wは、白色光Hwを発光する発光素子であって、白色光は少なくとも上述した吸収波長光Haと非吸収波長光Hnとを含む。また白色光源101wは、光沢画像P1の法線に対して斜め方向から光沢画像P1に対して白色光Hwを照射するように配置され、光沢画像P1におけるある程度の面積に対して白色光Wを照射する。また白色光源101wは、光沢画像P1におけるある程度の面積であって、粉末Pdに対して十分に広い面積に対して白色光Wを照射する。
【0073】
また2つの受光素子102は、白色光源101wから照射され光沢画像P1で正反射した正反射光Hrを受光する位置に配置されている。これらの受光素子102は、実施形態で説明した第1センサー100aの受光素子102と同様のものであってよい。
【0074】
吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nは、受光素子102の光入射面に配置され、各受光素子102に入射する光を制限する。このうち、吸収波長フィルター103aは、白色光源101wから照射され光沢画像P1で正反射した正反射光Hrのうち、吸収波長光Haを透過し非吸収波長光Hnを遮光する光フィルターである。吸収波長フィルター103aは、吸収波長光Haのみを、一方の受光素子102に入射させる。また非吸収波長フィルター103nは、白色光源101wから照射され光沢画像P1で正反射した正反射光Hrのうち、非吸収波長光Hnを透過し吸収波長光Haを遮光する光フィルターである。非吸収波長フィルター103nは、非吸収波長光Hnのみを、一方の受光素子102に入射させる。
【0075】
このような第1変形例の構成は、1回のタイミングで、同一箇所から異なる波長の正反射光Hra,Hrnを受光することができるため、光照射位置が異なることや照射のタイミングが異なることによる被覆率の検出誤差を防止できる。
【0076】
なお、第1センサー100a-1のさらなる変形例として、吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nと受光素子102に変えて、それぞれが特定の波長領域の光のみを受光して光電変換する2つの受光素子を設けた構成が例示される。この場合、一方の受光素子102は、非吸収波長光Hnを含まず、吸収波長光Haを含む波長範囲の光のみを受光する。また、もう一方の受光素子102は、吸収波長光Haを含まず、非吸収波長光Hnを含む波長範囲の光のみを受光する。
【0077】
[第2変形例]
図7は、実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第2変形例を示す図である。
この図に示す第2変形例の第1センサー100a-2は、吸収波長光源101aと、非吸収波長光源101nと、1つの受光素子102とを備える。
【0078】
吸収波長光源101aは、上述した吸収波長光Haを発光する素子であり、非吸収波長光源101nは、上述した非吸収波長光Hnを発光する素子である。吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nは、光沢画像P1の法線に対して斜め方向から光沢画像P1に対して吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnを照射するように配置される。また吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nは、光沢画像P1におけるある程度の面積であって、粉末Pdに対して十分に広い面積に対して、吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnを順次に照射する。
【0079】
受光素子102は、少なくとも上述した吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hを含む波長領域の光を受光して光電変換するものである。このような受光素子102は、吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101nから順次に照射される吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnのうち、光沢画像P1で正反射した正反射光Hra,Hrnを受光する位置に配置されている。
【0080】
[第3変形例]
図8は、実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第3変形例を示す図である。この図に示す第3変形例の第1センサー100a-3は、1つの白色光源101wと、1つの受光素子102と、吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nを備える。
【0081】
白色光源101wは、第1変形例で説明した白色光Hwと同様のものであってよい。また受光素子102は、第2変形例で説明した受光素子102と同様のものであってよい。
【0082】
また吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nは、第1変形例で説明したものと同様のものである。これらの吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nは、受光素子102の光入射面において入れ替え自在に配置され、駆動制御部18での制御により受光素子102に入射する光を順次に制限する。
【0083】
[第4変形例]
図9は、実施形態に係る被覆率検出装置が有する第1センサーの第4変形例を示す図である。この図に示す第4変形例の第1センサー100a-4が、第3変形例のものと異なるところは、吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nの配置箇所にある。
【0084】
すなわち、第4変形例の第1センサー100a-4において、吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nは、白色光源101wの光射出面において入れ替え自在に配置され、白色光源101wから射出する光を制限する。このうち、吸収波長フィルター103aは、白色光源101wから照射された光のうち、吸収波長光Haを透過し非吸収波長光Hnを遮光する光フィルターである。また非吸収波長フィルター103nは、白色光源101wから照射された光のうち、非吸収波長光Hnを透過し吸収波長光Haを遮光する光フィルターである。
【0085】
これらの吸収波長フィルター103aおよび非吸収波長フィルター103nは、駆動制御部18での制御により、白色光源101wの光射出面において入れ替え自在に配置されている。
【0086】
<吸収波長光と非吸収波長光とを用いた被覆率の算出について>
図10は、実施形態に係る粉末の被覆率の算出を説明するための図であって、下地粘着層が画像パターンPである場合を例示している。この図は、先に説明した吸収波長光源101aと非吸収波長光源101nとから、記録媒体S上に形成された画像パターンPと光沢画像P1とに対して、吸収皮波長光Haと非吸収波長光Hnを斜め方向から照射した場合の模式例(a)~(d)を示す。またこの図には、吸収皮波長光Haと非吸収波長光Hnの入射光量を100とした場合の、各模式例(a)~(d)においての吸収光、乱反射光、および正反射光の割合を模式的に示している。
【0087】
この図10において、模式例(a)は、被覆率0%の画像パターンPに、吸収波長光Haを照射した場合を例示している。この場合、画像パターンPに照射された吸収波長光Haは、その大部分が画像パターンPでの吸収光(1)となり、一部が画像パターンPでの乱反射光(2)、または画像パターンPでの正反射光(3)となる。このうちの正反射光(3)が、受光素子102で受光される正反射光Hraとなる。
【0088】
模式例(b)は、被覆率0%の画像パターンPに、非吸収波長光Hnを照射した場合を例示している。この場合、画像パターンPに照射された非吸収波長光Hnは、画像パターンPでは吸収されず、その大部分が画像パターンPでの乱反射光(2)、または画像パターンPでの正反射光(3)となる。このうちの正反射光(3)が、受光素子102で受光される正反射光Hrnとなる。
【0089】
模式例(c)は、光沢画像P1に吸収波長光Haを照射した場合を例示している。この場合、画像パターンPの露出部分に照射された吸収波長光Haは、その大部分が画像パターンPでの吸収光(1)となり、一部が画像パターンPでの乱反射光(2)、または画像パターンPでの正反射光(3)となる。このうちの正反射光(3)が、正反射光Hraの一部として受光素子102で受光される。
【0090】
またこの場合、粉末Pdに照射された吸収波長光Haは、ほとんど粉末Pdでは吸収されずに、粉末Pdでの正反射光(4)、または粉末Pdでの乱反射光(5)となる。このうちの正反射光(4)が、正反射光Hraの一部として受光素子102で受光される。
【0091】
模式例(d)は、光沢画像P1に非吸収波長光Hnを照射した場合を例示している。この場合、画像パターンPの露出部分に照射された非吸収波長光Hnは、画像パターンPでは吸収されず、その大部分が画像パターンPでの乱反射光(2)、または画像パターンPでの正反射光(3)となる。このうちの正反射光(3)の一部が、正反射光Hrnとして受光素子102で受光される。
【0092】
またこの場合、粉末Pdに照射された非吸収波長光Hnは、ほとんどが粉末Pdでは吸収されずに、粉末Pdでの正反射光(4)、または粉末Pdでの乱反射光(5)となる。このうちの正反射光(4)が、正反射光Hraの一部として受光素子102で受光される。これは、吸収波長光Haを照射した場合の模式例(c)と同様である。
【0093】
ここで、光沢を有する粉末Pdは、画像パターンPに対する吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnの両方ともを、殆ど吸収することなく反射する。このため、上述模式例(c),(d)間において、吸収波長光Haの正反射光Hraの合計の受光量と、非吸収波長光Hnの正反射光Hrnの合計の受光量との差分ΔHは、画像パターンPでの正反射光(3)の差分に相当することがわかる。この差分ΔHの大きさは、画像パターンPの露出面積の大きさに対応する値であって、粉末Pdによる被覆率に応じた値であるが、粉末Pdの配向状態には影響されない値となる。したがって、この差分ΔHに基づいて、粉末Pdの配向状態に由来する誤差を取り除いた粉末Pdの被覆率を検出することができる。
【0094】
つまり、粉末Pdでの乱反射光(5)の大部分は、画像パターンPに対しての配向が不十分で、画像パターンPの表面に対して斜めに接着された粉末Pdにおいて正反射した光であって、受光素子102で受光されない反射光である。このため、このような粉末Pdでの乱反射光(5)発生は、単一の波長光を用いた通常の被覆率の算出においては誤差成分となる。しかしながら、上述した差分ΔHは、この誤差成分も差し引いた値であるため、この差分ΔHに基づいて算出される粉末Pdによる被覆率は、粉末Pdの配向状態による誤差成分を含まない値となる。したがって、差分ΔHに基づいて、粉末Pdの被覆率を精度良好に検出することができるのである。
【0095】
<情報処理部200>
図1に戻り、被覆率検出装置20を構成する情報処理部200の構成を説明する。この情報処理部200は、上述した差分ΔHに基づく被覆率の検出を実施する。このような情報処理部200は、第1センサー100aおよび第2センサー100bから得た信号と、操作部19から得た情報とに基づいて粉末Pdの被覆率を検出する。また情報処理部200は、算出した被覆率に基づいて画像形成装置1の各部に補正指示を行う。
【0096】
このような情報処理部200は、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部、さらにはネットワークインターフェースを備えていてもよい。このような計算機によって構成された情報処理部200は、被覆率の算出および補正指示のための被覆率検出プログラムを不揮発性の記憶部に保存し、保存された被覆率検出プログラムに基づく処理を実行することにより、被覆率の算出および補正指示を実施する。
【0097】
図11は、実施形態に係る被覆率検出装置20が有する情報処理部200の構成を説明するブロック図である。この図に示すように、情報処理部200は、第1センサー100a、第2センサー100b、駆動制御部18、および操作部19と接続されている。このような情報処理部200は、保存された被覆率検出プログラムを実行する各機能部として、特性保持部201と、補正係数保持部202と、光源調整部203と、被覆率検出部204と、補正指示部205とを備える。これらの各機能部は、以下の通りである。
【0098】
[特性保持部201]
特性保持部201は、粉末の被覆率に対する反射光量を被覆率特性として保持する。特性保持部201は、下地粘着層毎に、すなわち画像パターンPの種類毎、および粉末保持部材12の粉末保持面12aの構成毎に、それぞれの被覆率特性を保持する。これらの被覆率特性は、あらかじめ実験的に取得された情報であって、例えば操作部19から入力された情報であることとする。
【0099】
図12は、粉末の被覆率に対する反射光量の被覆率特性を示す図であって、下地粘着層が画像パターンPである場合の例である。図12における縦軸のセンサー出力値は、各正反射光Hra,Henを受光した受光素子の出力値であって、上述した受光量に相当する。このような被覆率特性は、次のようにして取得される。
【0100】
先の図1および図2を参照し、先ず、粉末Pdによる被覆率を変化させた複数種類の光沢画像P1を用意する。これらの光沢画像P1は、粉末供給部材13による粉末Pdの供給量、摺擦部材14の摺擦条件、清掃部材16の清掃条件を変更することによって、粉末Pdによる被覆率を変化させる。次に、用意した光沢画像P1を、画像読み取り装置を用いて読み取り、読取画像の観察により、粉末Pdが重なっておらず、画像パターンPの表面に対して粉末Pdが平行であって良好に配向した光沢画像P1のみを選択する。そして、読取画像を画像処理ソフトによって二値化し、選択した各光沢画像P1においての粉末Pdによる被覆率を検出する。
【0101】
また、各光沢画像P1に対し、吸収波長光Haを照射してその正反射光Hraを検出し、また非吸収波長光Hnを照射してその正反射光Henを検出する。そして、各正反射光Hra,Henの検出値を、各光沢画像P1に対して算出した被覆率に対してプロットする。これにより、粉末Pdの被覆率と、各正反射光Hr,Henの検出値(つまり受光量であってセンサー出量値)との関係を得る。
【0102】
なお、図12に示す関係は、以下の場合の実測例である。
記録媒体S:エスプリFP(日本製紙社製商品名)
下地粘着層(画像パターンP):シアントナー(コニカミノルタ社製プロダクションプリント製品向けトナー)
粉末Pd:シルバー粉末:エルジーneo#325(尾池工業株式会社製)
吸収波長光源101a:砲弾型LED(ニチコン社製:ピーク波長632nm:入射角20度)
非吸収波長光源101n:砲弾型LED(スタンレー社製:ピーク波長870nm:受光角20度)
【0103】
特性保持部201は、このようにして得られた各センサー出力値(受光量)の差分を、差分特性として保持していてもよい。この差分は、図10を参照した上述の差分ΔHに相当する。
【0104】
図13は、粉末の被覆率に対する反射光量の差分特性を示す図であって、下地粘着層が画像パターンPである場合の例である。図13における縦軸の出力差は、吸収波長光Haの正反射光Hraを受光した受光素子の出力値(センサー出力値)と、非吸収波長光Hnの正反射光Hrnを受光した受光素子の出力値(センサー出力値)との差分であって、上述した差分ΔHに相当する。
【0105】
[補正係数保持部202]
図11に示す補正係数保持部202は、特性保持部201が保持する被覆率特性を補正するための補正係数を保持する。この補正係数は、粉末における吸収波長光・非吸収波長光の正反射光の受光量を同程度にするための数値であって、粉末毎、および吸収波長光・非吸収波長光の波長毎に予め取得され、例えば操作部19から入力された情報であることとする。次に、この補正係数の詳細を説明する。
【0106】
図14は、各粉末の反射率特性を示す図であって、赤色粉末、銀色粉末、および青色粉末の3種類の光沢を有する粉末の分光反射特性を、反射率の積分値が同等になるように規格化した図である。赤色粉末、銀色粉末、および青色粉末は、エルジーneo#325Blue、Silver、Red(尾池工業株式会社製商品名)である。
【0107】
図14に示すように、各粉末は、その種類毎に特有の分光反射特性を有し、吸収波長光の反射率と、非吸収波長光の反射率とは、同一であるとは限らない。そして、上述した差分ΔHにおいて、粉末の配向状態を無視するためには、吸収波長光・非吸収波長光の正反射光の受光量を同程度にすることで、粉末での吸収波長光・非吸収波長光の正反射光の受光量に関する数値を、差分ΔHから排除する必要がある。
【0108】
例えば下地粘着層に対する吸収波長光および非吸収波長光として、波長520nmの吸収波長光と、波長730nmの非吸収波長を用いて青色粉末の被覆率を検出する場合を想定する。
【0109】
図14に示されるように、青色粉末に対する波長520nmの吸収波長光の反射率は19%であり、波長730nmの非吸収波長の反射率は11%である。したがって、粉末の被覆率が100%の場合、吸収波長光の正反射光の受光量は、非吸収波長の正反射光の受光量に対し、19%÷11%=1.73倍となり、相対的な受光量が大きく出力されることになる。これに対し、粉末の被覆率が0%の場合、吸収波長光の正反射光の受光量および非吸収波長の正反射光の受光量は、粉末の分光反射率特性の影響を受けないため、吸収波長光の正反射光の受光量は、非吸収波長の正反射光の受光量に対して1倍である。
【0110】
これらの値から、被覆率に依存せず、吸収波長光の正反射光の受光量と、非吸収波長の正反射光の受光量とが常に1倍となるような補正係数を算出しておく。図15は、被覆率の補正係数の一例を示す図であって、吸収波長光の正反射光の受光量が、非吸収波長の正反射光の受光量に対して1倍となるように算出した補正係数である。補正係数保持部202は、このような補正係数を、粉末毎、および吸収波長光・非吸収波長光の波長毎に保持する。
【0111】
ただし、図14の銀色粉末の分光反射特性に見られるように、吸収波長と非吸収波長とで分光反射率がほぼ一定の場合であれば、粉末の分光反射特性を考慮した補正を行う必要がない。このような粉末に対しては、補正係数を用意する必要はない。
【0112】
なお、補正係数保持部202は、粉末毎の分光反射特性を保持し、操作部19において、粉末の種類と、吸収波長光・非吸収波長光の波長とが入力された場合に、粉末毎の反射率特性から該当する反射率を読み出して補正係数を算出する構成であってもよい。
【0113】
また各粉末の分光反射特性は、粉末の製品化に際して、センサーの光源の照射面積よりも大面積の粉末を抜き取り、装置中のセンサーにおいて測定し、補正係数保持部202に保持させればよい。
【0114】
[光源調整部203]
図11に示す光源調整部203は、吸収波長光源101a,101a’および非吸収波長光源101n,101n’の出力を調整する。この光源調整部203は、粉末の被覆率が0%の場合の下地粘着層の反射率が所定の値となるように、吸収波長光源101a,101a’および非吸収波長光源101n,101n’の出力を調整する。この場合の下地粘着層の反射率とは、下地粘着層に対する吸収波長光と非吸収波長光の正反射光のセンサー出力値であってよい。
【0115】
ここで、例えば図5に示したように、下地粘着層が粉末保持部材である場合、経時的な粉末保持部材の劣化や、装置環境により、粉末保持部材の分光反射特性が変動する。また下地粘着層が画像パターンである場合には、画像パターンを構成するトナーの種類、画像パターンの下地となる記録媒体の種類によって、画像パターンの分光反射特性が変動する。さらに、吸収波長光源および非吸収波長光源は、経時的な劣化、装置環境、および装置内の汚染などにより、同じ電流を印可しても実際に発光される光量が変動する。
【0116】
そこで、光源調整部203は、粉末の被覆率を0%とした下地粘着層においての吸収波長光および非吸収波長光の正反射光のセンサー出力値が、所定値となるように、吸収波長光源および非吸収波長光源の出力を調整するのである。例えば、図12を参照し、吸収波長光の正反射光のセンサー出力値が0.1[V]、非吸収波長光の正反射光のセンサー出力値が0.3[V]となるように、吸収波長光源および非吸収波長光源の出力を調整する。なお、このような光源調整部203による光源調整の手順は、以降の被覆率検出方法において説明する。
【0117】
[被覆率検出部204]
図11に示す被覆率検出部204は、操作部19、第1センサー100a、および第2センサー100bからの情報と、特性保持部201に保持された被覆率特性または差分特性と、補正係数保持部202に保持された補正係数とに基づいて、粉末による被覆率を検出する。被覆率検出部204による被覆率の検出の手順は、以降の被覆率検出方法において説明する。
【0118】
[補正指示部205]
補正指示部205は、被覆率検出部204で検出した被覆率に基づいて、粉末Pdによる画像パターンPの被覆率および粉末保持面12aの被覆率が、それぞれに設定された所望の被覆率となるように、駆動制御部18に対して各駆動部の駆動条件の補正を指示する。駆動条件の補正の対象は、一例として、粉末供給部材13による粉末Pdの供給量、摺擦部材14の摺擦条件、清掃部材16の清掃条件などである。補正指示部205による補正の指示は、被覆率検出部204で検出された被覆率によって、予め決められていることとする。
【0119】
以上説明した被覆率検出装置20は、少なくとも特性保持部201と被覆率検出部204とを備えていればよく、説明した各部の全てを備えている必要はない。また、被覆率検出装置20は、画像形成装置1とは独立したパーソナルコンピューターや他の外部装置外部装置として設けられたものであってもよい。
【0120】
≪被覆率検出方法≫
次に、以上のような被覆率検出装置20によって実施される被覆率検出方法を説明する。図16は、実施形態に係る被覆率検出方法の一例を示すフローチャート(その1)であって、光源調整の手順を示す。また図17は、実施形態に係る被覆率検出方法の一例を示すフローチャート(その2)であって、被覆率の検出の手順を示す。これらのフローチャートは、被覆率検出装置20が有する被覆率検出プログラムによって実施される被覆率検出方法の手順を示している。以下、図16および図17のフローチャートに沿って、先の図1図15を参照しつつ、実施形態の画像処理方法を説明する。
【0121】
<光源調整>
[ステップS101]
図16のステップS101において、光源調整部203(図11参照)は、粉末Pdの被覆率0%の画像パターンPに対して、吸収波長光Haと非吸収波長Hnとを照射した場合の、2つの受光素子102のセンサー出力値を取得する(図2参照)。同様に、光源調整部203は、粉末Pdの被覆率0%の粉末保持部材12の粉末保持面12aに対して、吸収波長光Ha’と非吸収波長Hn’とを照射した場合の、2つの受光素子102’のセンサー出力値を取得する(図4参照)。これらのセンサー出力値は、操作部19から入力された値であってもよい。
【0122】
なお、粉末Pdの被覆率0%の画像パターンPのセンサー出力は、画像形成装置1(図1参照)において、末保持部材12と転写部材15の熱源を停止した状態で、画像パターンPが形成された記録媒体Sを、第1センサー100aに供給することで得た値である。または粉末保持部材12の回転を停止させたり離間させた状態で、画像パターPが形成された記録媒体Sを、第1センサー100aに供給することで得た値である。
【0123】
また粉末Pdの被覆率0%の粉末保持部材12の粉末保持面12aのセンサー出力は、少なくとも下記の状態で粉末保持部材12を回転させた後に、第2センサー100bに対して粉末保持部材12を回転させることで得た値である。すなわち、画像形成装置1(図1参照)において、粉末供給部材13の搬送部材13bを停止し、粉末保持部材面12aへの粉末Pdの供給を停止した状態。また、画像形成装置1(図1参照)において、転写部材15にて粉末保持部材12の粉末保持面12aに粘着保持された粉末Pdを、記録媒体Sの主面上に形成された画像パターンPに転写する状態。さらに、画像形成装置1(図1参照)において、清掃部材16で粉末保持部材面12aに残留した粉末Pdを掻き取る状態。
【0124】
[ステップS102]
ステップS102において、光源調整部203は、取得したセンサー出力値が、予め設定した各センサー出力値となるように、駆動制御部18に対して光源調整を指示する。これにより、駆動制御部18は、粉末Pdの被覆率0%の場合のセンサー出力値が予め設定された出力値となるように、第1センサー100aの吸収波長光源101aおよび非吸収波長光源101n、さらには第2センサー100bの吸収波長光源101a’および非吸収波長光源101n’の出力を調整する。
【0125】
なお、このような光源調整は、次に説明する被覆率の検出に先立って、その都度に実施してもよく、所定のタイミングで実施してもよい。
【0126】
<被覆率の検出>
[ステップS201]
ステップS201において、被覆率検出部204は、粉末Pdに関する情報と、波長情報とを取得する。粉末Pdに関する情報は、粉末Pdの種類であってよく、補正係数保持部202において補正係数が関連付けされている粉末Pdの種類である。波長情報は、第1センサー100aで取り扱う吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hn、さらには第2センサー100bで取り扱う吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’の波長に対応する情報である。これらの情報は、例えば被覆率の検出に際して、操作部19から入力された情報であってよい。
【0127】
[ステップS202]
ステップS202において、被覆率検出部204は、補正係数の取得処理を実施する。この際、被覆率検出部204は、補正係数保持部202を参照し、ステップS201において取得した粉末Pdの種類および波長情報に対して関連付けされた補正係数を取得する。この補正係数は、第1センサー100aで取り扱う吸収波長光Haおよび非吸収波長光Hnに対応する補正係数と、第2センサー100bで取り扱う吸収波長光Ha’および非吸収波長光Hn’に対応する補正係数である。
【0128】
[ステップS203]
ステップS203において、被覆率検出部204は、被覆率特性の補正処理を実施する。この際、被覆率検出部204は、先ず、特性保持部201から、下地粘着層の被覆率特性を取得する。取得する被覆率特性は、画像パターンPの被覆率特性(図12参照)と、粉末保持部材12の粉末保持面12aの被覆率特性(図示省略)である。
【0129】
被覆率検出部204は、取得した各被覆率特性を、ステップS202で取得した補正係数で補正する。例えば、図12に示した被覆率特性であれば、このうちの吸収波長の各値を図15の補正係数で補正する。
【0130】
[ステップS204]
ステップS204において、被覆率検出部204は、補正した被覆率特性から差分特性を算出する。この場合、画像パターンPの被覆率特性と、粉末保持部材12の粉末保持面12aの被覆率特性とについて、補正された吸収波長の被覆率特性から、非吸収波長の被覆率特性を差し引き、画像パターンPに関する差分特性と、粉末保持面12aに関する差分特性を得る。
【0131】
なお、例えば粉末が銀色粉末の場合のように、被覆率特性の補正が必要のない場合であれば、ステップS202およびステップS203は実施せず、本ステップS203においては、特性保持部201から該当する差分特性を取得すればよい。
【0132】
[ステップS205]
ステップS205において、被覆率検出部204は、光沢画像P1に対して吸収波長光Haと非吸収波長Hnとを照射した場合の、2つの受光素子102のセンサー出力値を取得する(図2参照)。同様に、被覆率検出部204は、粉末保持部材12の粉末保持面12aに対して吸収波長光Ha’と非吸収波長Hn’とを照射した場合の、2つの受光素子102’のセンサー出力値を取得する(図4参照)。
【0133】
この際、光沢画像P1は、ステップS101およびステップS102において、第1センサー100aおよび第2センサー100bの光源調整がなされた画像形成装置1で形成されたものであることとする。
【0134】
さらに粉末保持部材12の粉末保持面12aは、ステップS101およびステップS102において、第2センサー100bの光源調整がなされた粉末保持部材12の粉末保持面12aである。またこの際、粉末保持面12aにおいてのセンサー出力値の取得領域は、光源調整に際してセンサー出力の取得領域と一致していることが好ましい。これにより、粉末保持部材12の回転方向のばらつきを抑制することができる。
【0135】
[ステップS206]
ステップS206において、被覆率検出部204は、ステップS205で取得したセンサー出力の差分の算出を実施する。この際、被覆率検出部204は、第1センサー100aの2つの受光素子102のセンサー出力値の差分を算出し、同様に第2センサー100bの2つの受光素子102’のセンサー出力値の差分を算出する。
【0136】
[ステップS207]
ステップS207において、被覆率検出部204は、ステップS204で算出した各差分特性(例えば図13)を参照し、ステップS206で算出したセンサー出力の差分に相当する被覆率を検出する。この際、被覆率検出部204は、画像パターンPに関する差分特性を参照して、第1センサー100aの2つの受光素子102のセンサー出力値の差分に相当する被覆率を、粉末Pdによる画像パターンPの被覆率として検出する。また、被覆率検出部204は、粉末保持面12aに関する差分特性を参照して、第2センサー100bの2つの受光素子102’のセンサー出力値の差分に相当する被覆率を、粉末Pdによる粉末保持面12aの被覆率として検出する。
【0137】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、図10を用いて説明したように、粉末Pdの配向状態に影響されることなく、粉末Pdによる被覆率を検出することができる。したがって、画像パターンPの表面や粉末保持面12aに対して斜めに傾いて接着した粉末があったとしても、その影響を受けることなく精度の高い被覆率の検出を実施することが可能である。特に、粉末Pdがメタリック様であって分光反射率の高いほど、異なる波長の光を用いない通常の反射型センサーを用いた場合の被覆率の検出では、粉末の配向状態の影響によって被覆率が低く検出されてしまう。このため本実施形態は、特に分光反射率が高い粉末Pdを用いた場合に対して効果が発揮される。
【実施例
【0138】
本発明を適用し、図1に示す画像形成装置1を用いて光沢画像P1を形成した場合において、粉末Pdによる画像パターンPの被覆率と、粉末Pdによる粉末保持面12aの被覆率の検出を行った。
【0139】
被覆率の検出を行った試料1~6の構成は、下記の表1に示す通りである。
【表1】
【0140】
試料1~3を構成する各材料は次の通りである。
・記録媒体:平滑な記録媒体(日本製紙製:エスプリFP)、表面凹凸な記録媒体(日本製紙製:npi上質紙)
・画像パターン:シアントナー(コニカミノルタ製プロダクションプリント製品向け)
【0141】
試料4~6を構成する各材料は次の通りである。
・粉末保持部材:新品、劣化品ともシリコンゴム(昭和電線社製:シリコンゴムXH279)
・粉末種:シルバー、レッド(尾池工業株式会社製:エルジーneo#325)
【0142】
以上のような構成の試料1~6について、摺擦部材14での摺擦強度を変更することで、粉末Pdの配向状態と、被覆率とが異なる3水準のものを作成した。これらの3水準は、次の通りである。
・水準1:被覆率26%、斜めに傾いて接着した粉末少なめ
・水準2:被覆率49%、斜めに傾いて接着した粉末中程度
・水準3:被覆率50%、斜めに傾いて接着した粉末多め
なお、この被覆率は、読み取り画像の画像処理によって算出した値である。
【0143】
第1センサー100aの構成は次の通りである。
・吸収波長光源101a:ピーク波長632nm(ニチコン社製砲弾型LED)
・非吸収波長光源101n:ピーク波長870nm(スタンレー社製砲弾型LED)
・入射角:20度
・受光角:20度
【0144】
第2センサー100bの構成は次の通りである。
・吸収波長光源101a’:ピーク波長520nm(Kingbright製:L-7113VGC-H)
・非吸収波長光源101n’:ピーク波長730nm(EverlightElectronics製:ELSH-Q61F1-0LPNM-JF3F8)
・入射角:20度
・受光角:20度
【0145】
試料1~6の被覆率の検出に際し、実施例1~実施例3においては、事前の光源調整と粉末種による補正の実施を下記の通りとした。
・実施例1:事前の光源調整なし/粉末種による補正なし
・実施例2:事前の光源調整なし/粉末種による補正あり
・実施例3:事前の光源調整あり/粉末種による補正あり
【0146】
また比較例として、一つの波長光のみを用いた被覆率の検出を実施した。用いた光は、ピーク波長870nm(スタンレー製砲弾型LED)であり、入射角および受光角ともに20度とした。事前の光源調整なし/粉末種による補正なしとした。
【0147】
以上の実施例1~実施例3および比較例のようにして検出した被覆率を、画像処理によって算出した被覆率と比較した。評価は、画像処理によって算出した被覆率と、実施例1~実施例3または比較例で検出した被覆率との差が、5%以下である場合には、乖離が小さいとし、3水準ともに乖離が小さい場合のみ良好とした。この評価結果を、上記表1にあわせて示した。
【0148】
表1にあるように、比較例は、斜めに傾いて接着した粉末の影響を受けるため、全ての試料において被覆率の検出値が、画像処理による算出値と乖離していて、精度の高い被覆率の検出を行うことができなかった。
【0149】
これに対して、実施例1は、光源調整なし/粉末種による補正なしの条件ではあったものの、分光反射特性が一定であるシルバーの粉末を用いた試料1および試料4においては、被覆率の検出結果が、画像処理による算出値と乖離しておらず、良好な結果が得られた。これにより、本発明を適用して下地粘着層に対する吸収波長光と非吸収波長光とを用いて被覆率を検出する効果が確認された。
【0150】
また実施例2は、光源調整なし/粉末種による補正ありの条件での検出であり、下地粘着層の表面状態が平滑な試料1,2,4,5においては、被覆率の検出結果が、画像処理による算出値と乖離しておらず、良好な結果が得られた。これにより、粉末種による補正を行うことの効果が確認された。
【0151】
さらに実施例3は、事前の光源調整あり/粉末種による補正ありの条件での検出であり、試料1~6の全てにおいて、被覆率の検出結果が、画像処理による算出値と乖離しておらず、良好な結果が得られた。ここで、試料3は、表面凹凸な記録媒体Sを用いており、その凹凸は数十μmであった。この上部に形成した画像パターンPは、厚み4μm程度であり、画像パターンPの表面も凹凸が大きかった。また試料6は、下地粘着層である粉末保持部材12が長期使用品であって凹凸が大きい表面状態のものであった。しかしながら、事前の光量調整を実施することにより、下地粘着層の表面状態に影響されずに、精度の高い被覆率の検出が可能となることが確認された。
【符号の説明】
【0152】
1…画像形成装置
12…粉末保持部材
12a…粉末保持面(下地粘着層)
15…転写部材
20…被覆率検出装置
101a,101a’…吸収波長光源
101n,101n’…非吸収波長光源
101w…白色光源
102,102’…受光素子
103a…吸収波長フィルター
103n…非吸収波長フィルター
201…特性保持部
202…補正係数保持部
203…光源調整部
204…被覆率検出部
205…補正指示部
Ha,Ha’…吸収波長光(反射率が異なる光)
Hn,Hn’…非吸収波長光(反射率が異なる光)
Hra,Hra’…正反射光(吸収波長光)
Hrn,Hrn’…正反射光(非吸収波長光)
Pd…粉末
P…画像パターン(下地粘着層)
S…記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17