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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01Q13/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020086236
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021180463
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】関澤 高俊
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-61137(JP,A)
【文献】特開平11-122032(JP,A)
【文献】特開2004-96259(JP,A)
【文献】特開2003-304115(JP,A)
【文献】Hui TANG et al.,Multifunction Applications of Substrate Integrated Waveguide Cavity in Dielectric Resonator Antennas and Reconfigurable Circuits,IEEE Transactions on Antennas and Propagation,2019年08月,Vol. 67,No. 8,p.5700-5704,DOI: 10.1109/TAP.2019.2922439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料によって板状に形成されている樹脂板(11)と、
導電性材料によって形成されて、前記樹脂板のうち厚み方向一方側に形成されている表面に沿うように板状に形成されている第1導体板(13)と、
導電性材料によって形成されて、前記樹脂板のうち厚み方向他方側に形成されている裏面に沿うように板状に形成されている第2導体板(15)と、
導電性材料によって形成されて、前記第1導体板と前記第2導体板とを電気的に接続する短絡部材(17)と、
前記第1導体板および前記第2導体板のうちいずれか一方に形成されている給電点(15a)を介して前記第1導体板と前記第2導体板とを電気的に接続する給電部材(19)と、を備え、
前記短絡部材が有するインダクタンスをLとし、前記樹脂板を介して前記第1導体板および前記第2導体板の間に形成される静電容量をCとしたとき、前記樹脂板、前記第1導体板、前記第2導体板、前記短絡部材、および前記給電部材が、LおよびCを用いた並列共振回路を形成するアンテナ装置において、
前記樹脂板には、空気を収納する空気収納部(20)が形成されているアンテナ装置。
【請求項2】
前記樹脂板には、複数の前記空気収納部が形成されており、
前記複数の前記空気収納部は、前記樹脂板の面方向において、マトリックス状に配置されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記空気収納部は、前記樹脂板を厚み方向に貫通する第1貫通孔を構成しており、
前記第1導体板は、前記厚み方向を貫通する第2貫通孔(21)を備え、
前記第2導体板は、前記厚み方向を貫通する第3貫通孔(22)を備え、
前記第1貫通孔、前記第2貫通孔、および前記第3貫通孔は、前記厚み方向から視て、重なるように配置されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1導体板および前記第2導体板のうちいずれか一方の導体板は、面方向中央部を中心とする点対称となる放射状に形成されている放射状形成部(110)を備え、
前記空気収納部は、前記放射状形成部から外れた部位に形成されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記短絡部材は、前記第1導体板および前記第2導体板のうちいずれか一方の導体板において面方向中央に配置されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記樹脂板を第1樹脂板とした場合に、前記第1樹脂板の誘電率をε1とし、
前記第1樹脂板と同一の前記樹脂材料によって前記第1樹脂板と同一の外形に形成され、かつ前記空気収納部が未形成である第2樹脂板(11A)の誘電率をε2とし、
前記第1樹脂板のうち前記樹脂材料が占める領域の体積をL1とし、
前記第2樹脂板のうち前記樹脂材料が占める領域の体積をL2とし、
(ε2-ε1)/ε2を誘電率低下率とし、
(L2-L1)/L2を体積低下率としたとき、
前記誘電率低下率と前記体積低下率とが一致するように、前記空気収納部の大きさ、および個数が設定されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記樹脂板を第1樹脂板とした場合に、前記第1樹脂板の誘電率をε1とし、
前記第1樹脂板と同一の前記樹脂材料によって前記第1樹脂板と同一の外形に形成され、かつ前記空気収納部が未形成である第2樹脂板(11A)の誘電率をε2とし、
前記第1樹脂板のうち前記樹脂材料が占める領域の体積をL1とし、
前記第2樹脂板のうち前記樹脂材料が占める領域の体積をL2とし、
(ε2-ε1)/ε2を誘電率低下率であるεRとし、
(L2-L1)/L2を体積低下率であるLRとしたとき、
(LR/εR)が0.7以上で、かつ1.3以下であることを満たすように、前記空気収納部の大きさ、および個数が設定されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ装置は、地板と、地板と対向配置されたパッチ部と、パッチ部の上側にパッチ部と対向して配置されている付加導体と、地板とパッチ部とを電気的に接続する短絡部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものにおいて、短絡部はその長さに応じた所定のインダクタンスLを備えており、パッチ部は、地板との間にその面積に応じた静電容量C1を形成する。付加導体は、パッチ部との間に所定の静電容量C2を形成する。
【0004】
付加導体に由来する静電容量C2は、アンテナ装置の等価回路において、パッチ部と地板との間に形成される静電容量C1に並列接続されている。このため、付加導体は、並列共振を生じさせるための静電容量を増加することに寄与することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-61137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のアンテナ装置では、必要となる広い周波数帯域幅を確保できない場合がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、広い周波数帯域幅を確保するようにしたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、樹脂材料によって板状に形成されている樹脂板(11)と、
導電性材料によって形成されて、樹脂板のうち厚み方向一方側に形成されている表面に沿うように板状に形成されている第1導体板(13)と、
導電性材料によって形成されて、樹脂板のうち厚み方向他方側に形成されている裏面に沿うように板状に形成されている第2導体板(15)と、
導電性材料によって形成されて、第1導体板と第2導体板とを電気的に接続する短絡部材(17)と、
第1導体板および第2導体板のうちいずれか一方に形成されている給電点(15a)を介して第1導体板と第2導体板とを電気的に接続する給電部材(19)と、を備え、
短絡部材が有するインダクタンスをLとし、樹脂板を介して第1導体板および第2導体板の間に形成される静電容量をCとしたとき、樹脂板、第1導体板、第2導体板、短絡部材、および給電部材が、LおよびCを用いた並列共振回路を形成するアンテナ装置において、
樹脂板には、空気を収納する空気収納部(20)が形成されている。
【0009】
したがって、請求項1に記載の発明によれば、樹脂板に空気収納部を形成することにより、樹脂板の誘電率を下げる。このため、アンテナ装置において、広い周波数帯域幅を確保することができる。
【0010】
ここで、周波数帯域幅は、アンテナ装置で使用される周波数の最低値とアンテナ装置で使用される周波数の最高値との間の周波数の幅である。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態におけるアンテナ装置のうち表面側を示す斜視図である。
図2】第1実施形態におけるアンテナ装置において、樹脂版に対して直交する面で切断した断面図を示す断面図である。
図3図1の第1実施形態におけるアンテナ装置を示す等価回路を示す電気回路図である。
図4】対比例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す斜視図である。
図5】対比例におけるアンテナ装置の断面構成を図であり、図2に相当する断面図である。
図6】第1実施形態におけるアンテナ装置において、樹脂板の比誘電率と使用周波数帯域幅の関係を示す図である。
図7】第1実施形態におけるアンテナ装置の使用周波数帯域幅と従来のアンテナ装置の使用周波数帯域幅との対比を示す図である。
図8】第1実施形態におけるアンテナ装置の電波の指向性と従来のアンテナ装置の電波の指向性との対比を示す図である。
図9】使用周波数帯域幅を広げる検証のために用いられる対比例におけるアンテナ装置の寸法を示す斜視図である。
図10】使用周波数帯域幅を広げる検証のために用いられる第1実施形態におけるアンテナ装置の寸法を示す斜視図である。
図11】アンテナ装置の比誘電率と使用周波数帯域幅の推定値との関係を示す図である。
図12】第1実施形態におけるアンテナ装置の使用周波数帯域幅の解析値と従来のアンテナ装置の使用周波数帯域幅の解析値との対比を示す図である。
図13】本発明の第2実施形態におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図14】本発明の第2実施形態の第1変形例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図15】本発明の第2実施形態の第2変形例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図16】第2実施形態のアンテナ装置の使用周波数帯域幅、第1変形例のアンテナ装置の使用周波数帯域幅、および第2変形例におけるアンテナ装置の使用周波数帯域幅の対比を示す図である。
図17】第2実施形態のアンテナ装置の垂直偏波利得、第1変形例のアンテナ装置の垂直偏波利得、および第2変形例におけるアンテナ装置の垂直偏波利得の対比を示す図である。
図18】本発明の第3実施形態におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図19】本発明の第3実施形態の第1変形例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図20】本発明の第3実施形態の第2変形例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図21】第3実施形態のアンテナ装置の使用周波数帯域幅、第1変形例のアンテナ装置の使用周波数帯域幅、および第2変形例におけるアンテナ装置の使用周波数帯域幅の対比を示す図である。
図22】第3実施形態のアンテナ装置の垂直偏波利得、第1変形例のアンテナ装置の垂直偏波利得、および第2変形例におけるアンテナ装置の垂直偏波利得の対比を示す図である。
図23】本発明の第4実施形態におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図24】本発明の第4実施形態の第1変形例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図25】本発明の第4実施形態の第2変形例におけるアンテナ装置のうち表面側を示す正面図である。
図26】第4実施形態のアンテナ装置の使用周波数帯域幅、第1変形例のアンテナ装置の使用周波数帯域幅、および第2変形例におけるアンテナ装置の使用周波数帯域幅の対比を示す図である。
図27】本発明の第5実施形態のアンテナ装置の表面側を示す正面図である。
図28】第5実施形態のアンテナ装置の裏面側を示す背面図である。
図29】本発明の第5実施形態の第1変形例のアンテナ装置の表面側を示す正面図である。
図30】第5実施形態の第1変形例のアンテナ装置の裏面側を示す背面図である。
図31】本発明の第5実施形態の第2変形例のアンテナ装置の表面側を示す正面図である。
図32】第5実施形態の第2変形例のアンテナ装置の裏面側を示す背面図である。
図33】本発明の第6実施形態のアンテナ装置の配置を示す正面図である。
図34】本発明の第6実施形態の第1変形例のアンテナ装置の配置を示す正面図である。
図35】本発明の第6実施形態の第2変形例のアンテナ装置の配置を示す正面図である。
図36】本発明の第6実施形態の第3変形例のアンテナ装置の配置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
図1に本第1実施形態のアンテナ装置10について図1図2を参照して説明する。
【0015】
本実施形態のアンテナ装置10は、Ultra Wide Band(すなわち、UWB)用アンテナである。アンテナ装置10は、使用される中心周波数が例えば6GHz~10Hzで周波数帯域幅が500MHzである零次共振アンテナである。周波数帯域幅は、アンテナ装置10で使用される周波数の最低値とアンテナ装置10で使用される周波数の最高値との間の周波数の幅である。
【0016】
アンテナ装置10は、無線回路から送られる高周波送電電力に基づいて送信電波を出力する一方、受信電波を介して受電した高周波受電電力を無線回路に出力する。
【0017】
具体的には、アンテナ装置10は、樹脂板11、導体板13、15、短絡ピン17、および給電ピン19を備える。
【0018】
樹脂板11は、樹脂板11のうち厚み方向(すなわち、図2中Z方向)の一方側には、面方向に拡がる表面11aが形成されている。樹脂板11のうち厚み方向他方側には、面方向に拡がる裏面11bが形成されている。面方向とは、厚み方向に直交する方向である。すなわち、面方向とは、図2中Z方向に直交するX方向、Y方向が拡がる方向である。
【0019】
樹脂板11は、所定の誘電率を有する樹脂材料を含んで板状に形成されている。本実施形態の樹脂板11は、ガラス繊維にポキシ樹脂が塗布されて固化されたガラスエポキシ基板である。
【0020】
導体板13は、樹脂板11に対して厚み方向一方側に配置されている第1導体板である。導体板13は、銅等の導電性材料によって樹脂板11の表面11aに沿う薄板状に形成されている。導体板13の面方向の面積は、樹脂板11の表面11aの面積に比べて小さくなっている。
【0021】
本実施形態では、導体板13は、樹脂板11の表面11aのうち面方向中央側に配置されている。樹脂板11の表面11aのうち導体板13の外周側は、厚み方向一方側に露出している。
【0022】
導体板15は、樹脂板11に対して厚み方向他方側に配置されている第2導体板である。導体板15は、銅等の導電性材料によって樹脂板11の裏面11bに沿う薄板状に形成されている。導体板15の面方向の面積は、樹脂板11の裏面11bの面積に比べて小さくなっている。
【0023】
ここで、導体板15は、樹脂板11の裏面11bのうち面方向中央側に配置されている。このため、樹脂板11の裏面11bのうち導体板15の外側は、厚み方向他方側に露出している。
【0024】
本実施形態の導体板15には、給電点15aが形成されている。給電点15aは、アンテナ装置10のうち給電配線を介して無線回路に接続されている部位である。給電点15aは、無線回路から高周波電力をアンテナ装置10に供給したり、アンテナ装置10で受電される高周波電力を無線回路に与える部位である。
【0025】
給電ピン19は、銅等の導電性材料によってピン状に形成されている給電部材である。給電ピン19は、樹脂板11を厚み方向に貫通されている。給電ピン19のうち厚み方向の一方側は、導体板13に接続されている。
【0026】
給電ピン19のうち厚み方向の他方側は、導体板15の給電点15aに接続されている。このことにより、給電ピン19は、導体板13、15に対して給電ピン19を介して接続されていることになる。
【0027】
短絡ピン17は、銅等の導電性材料によってピン状に形成されている短絡部材である。短絡ピン17は、樹脂板11のうち面方向中央部において厚み方向に貫通されている。短絡ピン17のうち厚み方向の一方側は、導体板13に接続されている。短絡ピン17のうち厚み方向の他方側は、導体板15に接続されている。
【0028】
本実施形態の短絡ピン17は、給電ピン19に対して樹脂板11の肉部11cを介して隣接して配置されている。肉部11cとは、樹脂板11のうち樹脂材料によって構成される部位である。このことにより、短絡ピン17、および給電ピン19は、独立して設けられている。
【0029】
樹脂板11には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔20が第1貫通孔として設けられている。複数の貫通孔20のそれぞれには、空気が入っている。このため、複数の貫通孔20は、それぞれ、空気を収納する空気収納部を構成することになる。
【0030】
本実施家気体の複数の貫通孔20は、行をX方向として、列をY方向とした行列状に並べられている。
【0031】
導体板13には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔21が第2貫通孔として設けられている。複数の貫通孔21のそれぞれには、空気が入っている。導体板15には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔22が第3貫通孔として設けられている。複数の貫通孔22のそれぞれには、空気が入っている。
【0032】
ここで、複数の貫通孔20は、それぞれ、対応する貫通孔21が連通するように形成されている。複数の貫通孔20は、それぞれ、対応する貫通孔22が連通するように形成されている。
【0033】
このことにより、貫通孔20、21、22は、貫通孔20毎に、厚み方向から重なるように配置されていることになる。
【0034】
本実施形態では、アンテナ装置10は、樹脂板11、導体板13、15に対して垂直方向に偏波が振動するアンテナである。アンテナ装置10は、無線回路から送られる高周波送電電力に基づいて送信電波を出力する場合や、受信電波を介して受電した高周波受電電力を無線回路に出力する場合には、図4のように、並列共振回路を形成する。
【0035】
図4の並列共振回路は、給電点15aを信号源として、信号源に対してR、C、Lが並列に接続されて共振する。
【0036】
ここで、Rは、導体板13、15、短絡ピン17、および給電ピン19の電気抵抗値であり、Cは、樹脂板11、導体板13、15によって形成されるキャパシタンス(すなわち、静電容量)であり、Lは、短絡ピン17によって形成されるインダクタンスである。
【0037】
本実施形態のアンテナ装置10は、次のように、樹脂板の表面、裏面のそれぞれの銅箔が固定されている汎用のプリント基板(例えば、ガラスエポキシ基板FR4)を用いて成形される。
【0038】
まず、汎用のプリント基板に対してエッチング等によって銅箔のうち余分な領域を除去して導体板13、15を形成する。その後、この導体板13、15を形成したプリント基板に対してドリル等によって複数の貫通孔20、21、22を貫通形成する。
【0039】
具体的には、プリント基板に対して貫通孔を形成する穴開け工程を複数回実施する。このことにより、プリント基板に貫通孔20、21、22を同時に形成することができる。
【0040】
図4図5に、本実施形態の対比例としてのアンテナ装置10Aを示す。図4は、アンテナ装置10Aの斜静図であり、図5は、アンテナ装置10Aの断面図である。
【0041】
アンテナ装置10Aは、樹脂板11A、導体板13A、15A、短絡ピン17A、および給電ピン19Aを備える。
【0042】
アンテナ装置10Aは、アンテナ装置10から、複数の貫通孔20、複数の貫通孔21、および複数の貫通孔22が削除されたものである。
【0043】
すなわち、樹脂板11Aは、樹脂板11と同一の樹脂材料によって構成されている。樹脂板11Aと樹脂板11とは、それぞれ、外形が同一の板状に形成されている。樹脂板11Aには、複数の貫通孔20が未形成である。すなわち、樹脂板11Aは、複数の貫通孔20が形成されていない樹脂板11と同一である。
導体板13Aと導体板13とは、外形が同一に形成されている。導体板13Aには、複数の貫通孔21が未形成である。すなわち、導体板13Aは、複数の貫通孔21が形成されていない導体板13と同一である。
【0044】
導体板15Aと導体板15とは、外形が同一に形成されている。導体板15Aには、複数の貫通孔22が未形成である。すなわち、導体板15Aは、複数の貫通孔22が形成されていない導体板15と同一である。
【0045】
ここで、樹脂板11、11Aは、上述の如く、互いに外形が同一形状に形成されている。樹脂板11は、貫通孔20が形成されている。このため、樹脂板11のうち樹脂材料が占める領域の体積LXは、樹脂板11Aのうち樹脂材料が占める領域の体積LAに比べて、小さくなっている。これにより、樹脂板11の誘電率は、樹脂板11Aの誘電率に比べて、小さくなる。
【0046】
図6は、アンテナ装置10の樹脂板11の比誘電率を変更した際のアンテナ装置10で使用される周波数帯域幅の変化を示すグラフGaである。以下、説明の便宜上、アンテナ装置10で使用される周波数帯域幅をアンテナ装置10の使用周波数帯域という。
【0047】
アンテナ装置10の樹脂板11の比誘電率が基準値εrkから下がると、アンテナ装置10の使用周波数帯域が広がることが分かる。基準値εrkとしては、ガラスエポキシ基板FR4の比誘電率が用いられる。
【0048】
ここで、樹脂板11の誘電率をε1とし、樹脂板11と同一の樹脂材料によって樹脂板11と同一の外形に形成され、かつ複数の貫通孔20が未形成である樹脂板11Aの誘電率をε2とする。樹脂板11のうち樹脂材料が占める領域の体積をL1とし、樹脂板11Aのうち樹脂材料が占める領域の体積をL2とする。
【0049】
ε2に対するε1の比率(すなわち、(ε2-ε1)/ε2×100%)を誘電率低下率εRとする。L2に対するL1の比率(すなわち、(L2-L1)/L2×100%)を体積低下率LRとする。
【0050】
誘電率低下率εRと体積低下率LRとが一致するように、貫通孔20の大きさ、および個数が設定されている。本実施形態では、誘電率低下率εRは、周波数帯域幅が目標値500MHzとなるように設定されている。なお、図6のグラフGaは、シミュレーションによって得られた結果である。
【0051】
次に、本実施形態では、7GHz~8GHzの使用周波数で用いられるアンテナ装置10の広帯域化の検証例について図7図8を参照して説明する。
【0052】
本検証例では、アンテナ装置10のX方向の寸法が5.4mmであり、かつY方向の寸法が5.4mmである樹脂板11が用いられている。樹脂板11のZ方向の寸法は、0.5mmであり、短絡ピン17および給電ピン19としては、それぞれの直径Φが0.3mmであるピンが用いられる。樹脂板11には、118個の貫通孔20が形成されている。樹脂板11の比誘電率は、4.3となる。
【0053】
118個の貫通孔20が形成されている樹脂板11のうち樹脂材料が占める体積L1は、10.4mである。118個の貫通孔20が未形成である場合の樹脂板11(すなわち、11A)のうち樹脂材料が占める体積L2は、14.6mである。体積低下率LR(すなわち、(L2-L1)/L2)は、0.3となる。
【0054】
図7に示すように、アンテナ装置10Aの使用周波数帯域幅は、400MHzとなるのに対して、アンテナ装置10Aの使用周波数帯域幅は、500MHz以上になる。このため、118個の貫通孔20が形成されている樹脂板11を備えるアンテナ装置10は、使用周波数帯域幅は、目標値に到達していることが分かる。
【0055】
図8は、グラフGa、Gbは、アンテナ装置10、10Aにおける短絡ピン17を中心とする周方向の垂直偏波の利得を示す。グラフGaは、アンテナ装置10の面方向における指向性を示す。グラフGbは、アンテナ装置10Aの面方向における指向性を示す。
【0056】
グラフGa、Gbから、アンテナ装置10、10Aの間に指向性に大きな差異が生じていないことが分かる。
【0057】
以上により、複数の貫通孔20が形成されている樹脂板11を備えるアンテナ装置10を用いることにより、良好な指向性を保持しつつ、使用周波数帯域幅を目標値である500MHz以上になることが分かる。
【0058】
以上説明した本実施形態によれば、アンテナ装置10は、樹脂材料によって板状に形成されている樹脂板11を備える。アンテナ装置10は、導電性材料によって形成されて、樹脂板11のうち厚み方向一方側に形成されている表面11aに沿うように板状に形成されている第1導体板としての導体板13を備える。
【0059】
アンテナ装置10は、導電性材料によって形成されて、樹脂板11のうち厚み方向他方側に形成されている裏面11bに沿うように板状に形成されている第2導体板としての導体板15を備える。
【0060】
アンテナ装置10は、導電性材料によって形成されて、導体板13、15を電気的に接続する短絡ピン17と、導体板15に形成されている給電点15aを介して導体板13、15を電気的に接続する給電ピン19とを備える。
【0061】
短絡ピン17が有するインダクタンスをLとし、樹脂板11が形成する静電容量をCとする。アンテナ装置10は、樹脂板11、導体板13、15、短絡ピン17、および給電ピン19が、給電点15aを信号源としてとき、電波を送信、或いは電波を受信する際に、信号源に対してLおよびCが並列に接続されている並列共振回路を形成する。樹脂板11には、空気を収納する空気収納部としての複数の貫通孔20が形成されている。
【0062】
これにより、樹脂板11には、空気を収納する複数の貫通孔20が形成されているため、樹脂板11の誘電率が、複数の貫通孔20が未形成である樹脂板11Aの誘電率に比べて、小さくなる。したがって、アンテナ装置10の使用周波数帯域幅をアンテナ装置10Aの使用周波数帯域幅に比べて広げることができる。
【0063】
以上により、広い使用周波数帯域幅を確保するようにしたアンテナ装置10を提供することができる。
【0064】
本実施形態では、アンテナ装置10は、樹脂板11、および導体板13、15が汎用基板であるFR4によって構成されている。このため、製造コストの低減を図ることができる。
【0065】
本実施形態では、プリント基板に対して貫通孔を形成する穴開け工程を複数回実施することにより、プリント基板に貫通孔20、21、22を同時に形成する。このため、本実施形態では、貫通孔20、21、22をそれぞれ独立して形成する場合比べて、製造コストを下げることができる。
【0066】
以下、貫通孔による使用周波数帯域の広帯域化の検証例について図9図10図11図12を参照して説明する。
【0067】
本検証例では、アンテナ装置10では、樹脂板11、導体板13、15がガラスエポキシ基板FR4(すなわち、汎用基板)によって構成されている。アンテナ装置10では、体積低下率LRが25%であり、誘電率低下率εRが25%である樹脂板11が用いられる。
【0068】
以下、本検証例では、複数の貫通孔20が未形成である樹脂板11Aを備えるアンテナ装置10Aと、複数の貫通孔20が形成されている樹脂板11を備えるアンテナ装置10とを比較する。
【0069】
図11に、アンテナ装置10において、樹脂板11の比誘電率εrと使用周波数帯域幅の推定値との関係を示す。貫通孔20が未形成である樹脂板11Aの比誘電率を比誘電率εraとしたとき、比誘電率εrが比誘電率εraよりも小さくなると、使用周波数帯域幅が大きくなることが分かる。誘電率低下率εRが25%であるときには、使用周波数帯域幅の推定値が124MHzとなる。
【0070】
図12に、アンテナ装置10、10Aにおいて、使用周波数帯域幅の解析値を示す。アンテナ装置10Aの使用周波数帯域幅が100MHzとなる。アンテナ装置10の使用周波数帯域幅が121MHzとなることが分かる。
【0071】
以上により、アンテナ装置10において、樹脂板11Aの比誘電率εraよりも小さい比誘電率εrを有する樹脂板11を備えることにより、使用周波数帯域幅を広げることができる。
【0072】
(第1実施形態の第1変形例)
上記第1実施形態では、(ε2-ε1)/ε2をεRとし、(L2-L1)/L2をLRとしたとき、LRとεRとが一致するように、複数の貫通孔20の大きさ、および個数が設定されている例について説明した。
【0073】
しかし、これに代えて、(LR/εR)が0.7以上で、かつ1.3以下であることを満たすように、複数の貫通孔20の大きさ、および個数が設定してもよい。
【0074】
(第2実施形態)
本第2実施形態では、上記第1実施形態において、樹脂板11に複数の貫通孔20をマトリックス状に配置したアンテナ装置10について図13図14図15図16図17を参照して説明する。
【0075】
図13は、貫通孔20を2×2のマトリックス状に樹脂板11に配置したアンテナ装置10を示す。図14は、貫通孔20を4×4のマトリックス状に樹脂板11に配置したアンテナ装置10を示す。図15は、貫通孔20を9×9のマトリックス状に樹脂板11に配置したアンテナ装置10を示す。
【0076】
本実施形態では、図13のアンテナ装置10の体積低下率LR、図14のアンテナ装置10の体積低下率LR、および図15のアンテナ装置10の体積低下率LRがそれぞれ一致している。
【0077】
すなわち、図13のアンテナ装置10の誘電率低下率εR、図14のアンテナ装置10の誘電率低下率εR、および図15のアンテナ装置10の誘電率低下率εRがそれぞれ一致している。
【0078】
図16に示すように、図15の「9×9のアンテナ装置10」の使用周波数帯域幅が図14の「4×4のアンテナ装置10」の使用周波数帯域幅よりも大きい。図14の「4×4のアンテナ装置10」の使用周波数帯域幅が図13の「2×2のアンテナ装置10」の使用周波数帯域幅よりも大きい。
【0079】
図17に示すように、図13の「2×2のアンテナ装置10」、図14の「4×4のアンテナ装置10」、および図15の「9×9のアンテナ装置10」は、それぞれ、垂直偏波利得「dBi」がほぼ同一となる。
【0080】
以上により、アンテナ装置10において、樹脂板11に複数の貫通孔20をマトリックス状に配置することにより、垂直偏波に影響を与えずに、使用周波数帯域幅を広げることができる。
【0081】
(第3実施形態)
本第3実施形態では、上記第1実施形態のアンテナ装置10を放射状に形成する例について図18を参照して説明する。
【0082】
本実施形態のアンテナ装置10は、上記第1実施形態のアンテナ装置10と同様、樹脂板11、および導体板13、15によって構成されている。本実施形態のアンテナ装置10は、短絡ピン17を起点として短絡ピン17から4方向にそれぞれ放射する4つの放射部110を有する。4つの放射部110は、樹脂板11の面方向中央部(すなわち、短絡ピン17)を中心として点対称になるように形成されている。
【0083】
すなわち、本実施形態のアンテナ装置10は、樹脂板11、導体板13、15がそれぞれ短絡ピン17から4方向に放射するように形成されていることになる。
【0084】
本実施形態のアンテナ装置10は、貫通孔20、21、22が4つの放射部110以外の領域に形成されている。
【0085】
具体的には、4つの放射部110のうち短絡ピン17を中心とする周方向において隣り合う2つの放射部110の間には、貫通孔20、21、22が形成されている。このことにより、アンテナ装置10には、貫通孔20、21、22が四カ所形成されている。
【0086】
(第3実施形態の第1変形例)
本第3実施形態では、アンテナ装置10がそれぞれ短絡ピン17(すなわち、面方向中央部)から4方向に放射するように形成されている例について説明した。しかし、これに代えて、図19に示すように、本第1変形例のアンテナ装置10がそれぞれ短絡ピン17から8方向に放射するように形成されている。
【0087】
本実施形態のアンテナ装置10は、短絡ピン17を起点として短絡ピン17から8方向にそれぞれ放射する8つの放射部110を有する。8つの放射部110は、樹脂板11の面方向中央部(すなわち、短絡ピン17)を中心として点対称になるように形成されている。
【0088】
本実施形態のアンテナ装置10は、貫通孔20、21、22が8つの放射部110以外の領域に形成されている。具体的には、8つの放射部110のうち短絡ピン17を中心とする周方向において隣り合う2つの放射部110の間には、貫通孔20、21、22が形成されている。このことにより、アンテナ装置10には、貫通孔20、21、22が8カ所形成されている。
【0089】
(第3実施形態の第2変形例)
本第3実施形態では、アンテナ装置10がそれぞれ短絡ピン17から4方向に放射するように形成されている例について説明した。しかし、これに代えて、図20に示すように、本第2変形例のアンテナ装置10が、それぞれ短絡ピン17から12方向に放射するように形成されている。
【0090】
本実施形態のアンテナ装置10は、短絡ピン17を起点として短絡ピン17から16方向にそれぞれ放射する16個の放射部110を有する。
【0091】
16個の放射部110は、樹脂板11の面方向中央部(すなわち、短絡ピン17)を中心として点対称になるように形成されている。
【0092】
本実施形態のアンテナ装置10は、貫通孔20、21、22が12つの放射部110以外の領域に形成されている。
【0093】
具体的には、12つの放射部110のうち短絡ピン17を中心とする周方向において隣り合う2つの放射部110の間には、貫通孔20、21、22が形成されている。このことにより、アンテナ装置10には、貫通孔20、21、22が16カ所形成されている。
【0094】
以下、第3実施形態のアンテナ装置10、第1変形例のアンテナ装置10、および本第2変形例のアンテナ装置10を図21図22を参照して比較する。
【0095】
図21図22において、第3実施形態のアンテナ装置10を4方向放射と図示し、第1変形例のアンテナ装置10を8方向放射と図示し、第2変形例のアンテナ装置10を16方向放射と図示する。
【0096】
図21に示すように、第3実施形態のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅は、第1変形例のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅よりも大きい。第1変形例のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅は、第2変形例のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅よりも大きい。
【0097】
ここで、第3実施形態のアンテナ装置10、第1変形例のアンテナ装置10、および第2変形例のアンテナ装置10は、それぞれ、使用周波数帯域幅が目標値MOよりも大きくなっている。
【0098】
図22に示すように、第3実施形態のアンテナ装置10の垂直偏波利得は、第1変形例のアンテナ装置10の垂直偏波利得よりも小さい。第1変形例のアンテナ装置10の垂直偏波利得は、第2変形例のアンテナ装置10の垂直偏波利得よりも小さい。
【0099】
ここで、第3実施形態のアンテナ装置10、第1変形例のアンテナ装置10、および第2変形例のアンテナ装置10は、それぞれ、垂直偏波利得が目標値GOよりも大きくなっている。
【0100】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、上記第3実施形態において、アンテナ装置10において、4つの放射部110および4つの貫通孔20、21、22を面方向から囲む四角形の額縁部111が追加されている例について図23を参照して説明する。
【0101】
本実施形態のアンテナ装置10では、4つの放射部110のうち短絡ピン17を中心とする径方向外側は、額縁部111に接続されている。
【0102】
4つの放射部110および額縁部111は、樹脂板11、および導体板13、15によって構成されている。
【0103】
本実施形態では、額縁部111の面方向の内側において、4つの放射部110のうち、短絡ピン17を中心とする周方向において隣り合う2つの放射部110の間には、貫通孔20、21、22が形成されている。すなわち、額縁部111の面方向の内側において、4つの放射部110と4つの貫通孔20、21、22が形成されている。
【0104】
以上により、本実施形態のアンテナ装置10は、額縁部111の面方向の内側において、樹脂板11、導体板13、15がそれぞれ短絡ピン17(すなわち、面方向中央部)から4方向に放射するように形成されている。
【0105】
なお、本実施形態では、額縁部111の幅方向Hdは、0.5mmになっている。
【0106】
(第4実施形態の第1変形例)
上記第4実施形態では、樹脂板11において、4つの放射部110を面方向から囲む四角形の額縁部111が追加されている例について説明した。
【0107】
しかし、これに代えて、図24に示すように、本第1変形例のアンテナ装置10では、樹脂板11において、8つの放射部110を面方向から囲む四角形の額縁部111が追加されている。
【0108】
8つの放射部110および額縁部111のうち厚み方向一方側には、導体板13が樹脂板11の表面の面方向に沿って板状に形成されている。図示を省略するが、8つの放射部110および額縁部111のうち厚み方向他方側には、導体板15が樹脂板11の裏面の面方向に沿って板状に形成されている。
【0109】
本実施形態では、額縁部111の内側において、8つの放射部110のうち、短絡ピン17を中心とする周方向において隣り合う2つの放射部110の間には、貫通孔20が形成されている。すなわち、額縁部111の面方向の内側において、8つの放射部110と8つの貫通孔20、21、22が形成されている。
【0110】
以上により、本実施形態のアンテナ装置10は、額縁部111の面方向の内側において、放射部110がそれぞれ短絡ピン17(すなわち、面方向中央部)から8方向に放射するように形成されている。
【0111】
(第4実施形態の第2変形例)
本第4実施形態では、樹脂板11において、4つの放射部110を面方向から囲む四角形の額縁部111が追加されている例について説明した。
【0112】
しかし、これに代えて、図25に示すように、本第1変形例のアンテナ装置10では、樹脂板11において、16個の放射部110を面方向から囲む四角形の額縁部111が追加されている。
【0113】
16個の放射部110および額縁部111のうち厚み方向一方側には、導体板13が樹脂板11の表面の面方向に沿って板状に形成されている。図示を省略するが、16個の放射部110および額縁部111のうち厚み方向他方側には、導体板15が樹脂板11の裏面の面方向に沿って板状に形成されている。
【0114】
本実施形態では、額縁部111の面方向の内側において、16個の放射部110のうち、短絡ピン17を中心とする周方向において隣り合う2つの放射部110の間には、貫通孔20が形成されている。すなわち、額縁部111の面方向の内側において、16個の放射部110と16個の貫通孔20、21、22が形成されている。
【0115】
以上により、本実施形態のアンテナ装置10は、額縁部111の内側において、16個の放射部110がそれぞれ短絡ピン17から16方向に放射するように形成されている。
【0116】
以下、第4実施形態のアンテナ装置10、第1変形例のアンテナ装置10、および本第2変形例のアンテナ装置10を図26を参照して比較する。
【0117】
図26において、第3実施形態のアンテナ装置10を4方向放射と図示し、第1変形例のアンテナ装置10を8方向放射と図示し、第2変形例のアンテナ装置10を16方向放射と図示する。
【0118】
図26に示すように、第1変形例のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅は、第3実施形態のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅よりも大きい。第1変形例のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅は、第2変形例のアンテナ装置10の使用周波数帯域幅よりも大きい。
【0119】
ここで、第3実施形態のアンテナ装置10、第1変形例のアンテナ装置10、および第2変形例のアンテナ装置10は、それぞれ、使用周波数帯域幅が目標値MOよりも大きくなっている。
【0120】
(第5実施形態)
本第5実施形態では、上記第1実施形態のアンテナ装置10において、給電ピン19と無線回路とを電気的に接続した構造について図27図28を参照して説明する。図27に、本実施形態のアンテナ装置10のうち導体板13を示す正面図である。図28に、本実施形態のアンテナ装置10のうち導体板15を示す背面図である。
【0121】
本第5実施形態では、給電ピン19のうち導体板15側(すなわち、厚み方向他方側)にケーブル170の一端部が接続されている。そして、ケーブル170の他端部が無線回路に接続されている。
【0122】
(第5実施形態の第1変形例)
本第5実施形態では、アンテナ装置10において、給電ピン19と無線回路とをケーブルで接続した例について説明した。これに代えて、図29図30に示すように、アンテナ装置10において、給電ピン19と無線回路とをマイクロストリップライン171で接続してもよい。図29に、本実施形態のアンテナ装置10のうち導体板13を示す正面図である。図30に、本実施形態のアンテナ装置10のうち導体板15を示す背面図である。
【0123】
(第5実施形態の第2変形例)
本第5実施形態では、アンテナ装置10において、給電ピン19と無線回路とをケーブルで接続した例について説明した。しかし、これに代えて、アンテナ装置10において、図31図32に示すように、回路パターン172で接続してもよい。図31に、本実施形態のアンテナ装置10のうち導体板13を示す正面図である。図32に、本実施形態のアンテナ装置10のうち導体板15を示す背面図である。
【0124】
(第6実施形態)
本第6実施形態では、上記第1実施形態のアンテナ装置10において、無線回路200のうちアンテナ装置10の配置について図33を参照して説明する。
【0125】
本実施形態では、図33に示すように、アンテナ装置10は、長方形状の無線回路200のうち長手方向一方側に配置されている。
【0126】
(第6実施形態の第1変形例)
本第6実施形態では、アンテナ装置10が長方形状の無線回路200のうち長手方向一方側に配置されている例について説明した。しかし、図34に示すように、アンテナ装置10が無線回路200のうち長手方向一方側で、かつ幅方向一方側に配置されるようにしてもよい。
【0127】
(第6実施形態の第2変形例)
本第6実施形態の第1変形例では、アンテナ装置10が無線回路200のうち長手方向一方側で、かつ幅方向一方側に配置されている例について説明した。しかし、これに代えて、アンテナ装置10が無線回路200のうち長手方向一方側で、かつ幅方向中央側に配置されるようにしてもよい。
【0128】
(第6実施形態の第3変形例)
本第6実施形態の第2変形例では、アンテナ装置10が無線回路200のうち長手方向一方側で、かつ幅方向中央側に配置されるようにした例について説明した。しかし、これに代えて、図36に示すように、アンテナ装置10が無線回路200のうち面方向中央側に配置されるようにしてもよい。
【0129】
(他の実施形態)
(1)上記第1~第6実施形態では、アンテナ装置10として、電波を受信する一方、電波を送信する送受信アンテナを用いる例について説明したが、これに代えて、アンテナ装置10として、専ら電波を受信する受信専用アンテナを用いてもよい。或いは、アンテナ装置10として、専ら電波を送信する送信専用アンテナを用いるようにしてもよい。
【0130】
(2)上記第1~第6実施形態では、ガラスエポキシ基板によって樹脂板11を構成した例について説明した。しかし、これに代えて、ガラスエポキシ基板以外の他の基板(例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板)によって樹脂板11を構成してもよい。
【0131】
(3)上記第1~第6実施形態では、導体板15に給電点15aが形成されている例について説明したが、これに代えて、導体板13に給電点15aを形成してもよい。
【0132】
(4)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0133】
(まとめ)
上記第1~第6実施形態、各変形例、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、アンテナ装置は、樹脂材料によって板状に形成されている樹脂板を備える。
【0134】
アンテナ装置は、導電性材料によって形成されて、樹脂板のうち厚み方向一方側に形成されている表面に沿うように板状に形成されている第1導体板を備える。アンテナ装置は、導電性材料によって形成されて、樹脂板のうち厚み方向他方側に形成されている裏面に沿うように板状に形成されている第2導体板を備える。
【0135】
アンテナ装置は、導電性材料によって形成されて、第1導体板と第2導体板とを電気的に接続する給電ピンと、第1導体板および第2導体板のうちいずれか一方に形成されている給電部を介して第1導体板と第2導体板とを電気的に接続する給電部材とを備える。
【0136】
給電ピンが有するインダクタンスをLとし、樹脂板を介して第1導体板および第2導体板の間に形成される静電容量をCとする。アンテナ装置では、樹脂板、第1導体板、第2導体板、給電ピン、および給電部材が、LおよびCを用いた並列共振回路を形成する。
【0137】
樹脂板には、空気を収納する空気収納部が形成されている。
【0138】
第2の観点によれば、アンテナ装置において、樹脂板には、複数の空気収納部が形成されており、複数の空気収納部は、樹脂板の面方向において、マトリックス状に配置されている。
【0139】
したがって、垂直偏波に影響を与えずに、アンテナ装置で使用される周波数帯域幅を広げることができる。
【0140】
第3の観点によれば、アンテナ装置において、空気収納部は、樹脂板を厚み方向に貫通する第1貫通孔を構成している。第1導体板は、厚み方向を貫通する第2貫通孔を備える。
【0141】
第2導体板は、厚み方向を貫通する第3貫通孔を備える。第1貫通孔、第2貫通孔、および第3貫通孔は、厚み方向から視て、重なるように配置されている。
【0142】
したがって、第1貫通孔、第2貫通孔、および第3貫通孔を同時に貫通形成することができるので、製造コストを下げることができる。
【0143】
第4の観点によれば、アンテナ装置において、第1導体板および第2導体板のうちいずれか一方の導体板は、面方向中央部を中心とする点対称となる放射状に形成されている放射状形成部を備える。空気収納部は、放射状形成部から外れた部位に形成されている。
【0144】
したがって、垂直偏波に影響を与えずに、アンテナ装置で使用される周波数帯域幅を広げることができる。
【0145】
第5の観点によれば、給電ピンは、第1導体板および第2導体板のうちいずれか一方の導体板において面方向中央に配置されている。
【0146】
したがって、垂直偏波に影響を与えずに、アンテナ装置で使用される周波数帯域幅を広げることができる。
【0147】
第6の観点によれば、アンテナ装置において、樹脂板を第1樹脂板とした場合に、第1樹脂板の誘電率をε1とし、第1樹脂板と同一の樹脂材料によって第1樹脂板と同一の外形に形成され、かつ空気収納部が未形成である第2樹脂板の誘電率をε2とする。
【0148】
第1樹脂板のうち樹脂材料が占める領域の体積をL1とし、第2樹脂板のうち樹脂材料が占める領域の体積をL2とし、(ε2-ε1)/ε2を誘電率低下率とし、(L2-L1)/L2を体積低下率とする。
【0149】
誘電率低下率と体積低下率とが一致するように、空気収納部の大きさ、および個数が設定されている。
【0150】
例えば、空気収納部のサイズを大きくすることで空気収納部の数を減らす作業費を抑制することができる。
【0151】
第7の観点によれば、アンテナ装置において、樹脂板を第1樹脂板とした場合に、第1樹脂板の誘電率をε1とし、第1樹脂板と同一の樹脂材料によって第1樹脂板と同一の外形に形成され、かつ空気収納部が未形成である第2樹脂板の誘電率をε2とする。
【0152】
第1樹脂板のうち樹脂材料が占める領域の体積をL1とし、第2樹脂板のうち樹脂材料が占める領域の体積をL2とし、(ε2-ε1)/ε2を誘電率低下率であるεRとし、(L2-L1)/L2を体積低下率であるLRとする。
【0153】
(LR/εR)が0.7以上で、かつ1.3以下であることを満たすように、空気収納部の大きさ、および個数が設定されている。☆/
【符号の説明】
【0154】
10 アンテナ装置
11 樹脂板
13、15 導体板
17 短絡ピン
19 給電ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36