(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】蒸煮爆砕装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/45 20220101AFI20231212BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20231212BHJP
B02C 19/18 20060101ALI20231212BHJP
B01F 23/30 20220101ALI20231212BHJP
B01F 27/92 20220101ALI20231212BHJP
B01F 27/806 20220101ALI20231212BHJP
【FI】
B09B3/45
B09B3/38
B02C19/18 E
B01F23/30
B01F27/92
B01F27/806
(21)【出願番号】P 2020086656
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】岸田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】プリヤント デディ
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真次
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/072454(WO,A1)
【文献】特開2021-178264(JP,A)
【文献】特開2006-028272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B02C 19/18、23/00-23/40
B01F 21/00-25/90、27/00-27/96、35/00-35/95
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス及び水蒸気を収容する反応器と、
前記バイオマスと前記水蒸気とを撹拌する撹拌装置、
前記反応器を密封/密封解除する密封装置と、
密封状態の前記バイオマス及び前記水蒸気を加熱する加熱装置とを備え
、
前記反応器は、下端に微粉化バイオマスの取出口が設けられた縦型円筒状であり、
前記撹拌装置は、前記反応器の軸心に沿って上下方向に延在する回転軸と、該回転軸に沿って設けられた撹拌羽根と、前記回転軸を回転駆動する駆動部とを備えることを特徴とする蒸煮爆砕装置。
【請求項2】
前記撹拌装置は、前記回転軸を上下方向に変位させる変位装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の蒸煮爆砕装置。
【請求項3】
前記変位装置は、前記回転軸を非接触状態で上下方向に変位させることを特徴とする請求項2に記載の蒸煮爆砕装置。
【請求項4】
前記変位装置は、前記密封装置が前記反応器を密封状態から密封解除状態に切換える際に、前記回転軸を上方向に変位させることを特徴とする請求項2または3に記載の蒸煮爆砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸煮爆砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バイオマスを少ないエネルギで微粉砕して微粉化バイオマスを形成することができる微粉化バイオマスの製造方法が開示されている。この微粉化バイオマスの製造方法は、バイオマスを密閉して加熱し、バイオマスの含有水分でバイオマスを水蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成するものである。このような微粉化バイオマスの製造方法によれば、蒸煮温度を例えば200~250℃程度、保持時間(密閉時間)を例えば10~30分程度、また蒸煮圧力(密閉圧力)を例えば1.6~4.0MPa程度に設定することにより、平均粒度0.5~1.0mm程度の微粉化バイオマスを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記背景技術によって得られる平均粒度0.5~1.0mm程度の微粉化バイオマスの最大個体収率は、60~70wt%であり、破砕処理後の微粉化バイオマス中には、ボイラで燃焼困難な2mm以上の未粉砕チップが3~5wt%程度残存する。このような未粉砕チップの中には、反応器中心部にあって所望温度まで加熱しきれなかったと考えられるものや、高温となった容器壁近傍で炭化したチップが散見されるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、所望平均粒度の微粉化バイオマスの収率を従来よりも向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、蒸煮爆砕装置に係る第1の解決手段として、バイオマス及び水蒸気を収容する反応器と、前記バイオマスと前記水蒸気とを撹拌する撹拌装置、前記反応器を密封/密封解除する密封装置と、密封状態の前記バイオマス及び前記水蒸気を加熱する加熱装置とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、蒸煮爆砕装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記反応器は、下端に微粉化バイオマスの取出口が設けられた縦型円筒状であり、前記撹拌装置は、前記反応器の軸心に沿って上下方向に延在する回転軸と、該回転軸に沿って設けられた撹拌羽根と、前記回転軸を回転駆動する駆動部とを備える、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、蒸煮爆砕装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記撹拌装置は、前記回転軸を上下方向に変位させる変位装置をさらに備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記変位装置は、前記回転軸を非接触状態で上下方向に変位させる、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、蒸煮爆砕装置に係る第5の解決手段として、上記第3または第4の解決手段において、前記変位装置は、前記密封装置が前記反応器を密封状態から密封解除状態に切換える際に、前記回転軸を上方向に変位させる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望平均粒度の微粉化バイオマスの収率を従来よりも向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蒸煮爆砕装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態における撹拌装置の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態における駆動部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る蒸煮爆砕装置は、バイオマスを微粉砕して微粉化バイオマスを製造する設備である。
【0014】
この蒸煮爆砕装置は、
図1に示すように、受入コンベヤ1、受入ホッパ2、第1計量フィーダ3、反応器4、蒸気源5、サイクロンホッパ6、第1搬送コンベヤ7、復水器8、乾燥機9、分級機10、戻りポンプ11、第2搬送コンベヤ12、乾燥木粉ホッパ13、第2計量フィーダ14及びスラットバルブ15を備えている。
【0015】
受入コンベヤ1は、外部からバイオマスを受け入れる受入口1aと受入ホッパ2との間に敷設された搬送装置である。この受入コンベヤ1は、地上の受入口1aで受け入れたバイオマスを受入ホッパ2の上部投入口2aに搬送し、当該上部投入口2aから受入ホッパ2内に投下する。
【0016】
受入ホッパ2は、所定の容量を備えたバイオマス容器である。この受入ホッパ2は、上部投入口2aから投入されたバイオマスを一時的に貯留すると共に先に受け入れたバイオマスを下部排出口2bから第1計量フィーダ3に送り出す。すなわち、この受入ホッパ2の下部には、図示するようにスクリューフィーダ2cが備えられており、バイオマスを第1計量フィーダ3に向けて送り出す。
【0017】
ここで、上記スクリューフィーダ2cは所定のタイムインターバルで間欠的に作動する。すなわち、受入ホッパ2に貯留されたバイオマスは、受入ホッパ2の下部から間欠的に取り出されて第1計量フィーダ3に供給される。
【0018】
第1計量フィーダ3は、計量機能を備えた搬送装置である。この第1計量フィーダ3は、受入ホッパ2から供給されたバイオマスの重量を計量し、予め設定された所定量を反応器4の上部から供給する。
【0019】
反応器4は、バイオマスを収容する略円筒状の容器である。この反応器4は、軸線が鉛直方向となる姿勢つまり縦置きされた縦型円筒状容器である。このような反応器4は、バイオマスを蒸煮処理かつ爆砕処理する反応器でもある。
【0020】
詳細については後述するが、この反応器4は、第1計量フィーダ3から受け入れた所定量のバイオマスに水蒸気を添加した状態でを密閉収容し、バイオマス及び水蒸気を密封状態で加熱することによって蒸煮処理し、さらに蒸煮処理後のバイオマスについて急激な圧力開放を行うことによって爆砕処理する。
【0021】
このような反応器4は、受入機構4a、蒸気取入口4b、蒸気排出口4c、加熱装置4d、撹拌装置4e及び排出機構4fを備える。受入機構4aは、バイオマスを受け入れる開閉扉であり、第1計量フィーダ3からバイオマスを受け入れる際に開放され、所定量のバイオマスの受入が完了すると閉鎖される。
【0022】
蒸気取入口4bは、例えば反応器4の上部に設けられる開口である。この蒸気取入口4bは、蒸気源5から供給される水蒸気を受け入れる。蒸気排出口4cは、例えば反応器4の下部に設けられる開口である。この蒸気排出口4cは、蒸気源5から受け入れた水蒸気を乾燥機9に向けて排出する。
【0023】
加熱装置4dは、反応器4の周面に備えられており、反応器4内に密封収容されたバイオマス及び水蒸気(蒸煮用の水蒸気)を加熱する。この加熱装置4bは、複数の加熱ゾーン4gを備えており、蒸気取入口4bから流入した水蒸気を各加熱ゾーン4gに分割供給し、また各加熱ゾーンの水蒸気を蒸気排出口4cから排出する。
【0024】
上記複数の加熱ゾーン4gは、図示するように反応器4の周面に上下方向に配列するように設けられた分割空間である。このような加熱装置4dは、複数の加熱ゾーン4gを流する水蒸気を熱源として反応器4内のバイオマス及び水蒸気(蒸煮用の水蒸気)を加熱する。
【0025】
このような加熱装置4dによれば、上下方向に配列する複数の加熱ゾーン4gに水蒸気が流通するので、反応器4の周面を均一に加熱することが可能である。したがって、この加熱装置4dによれば、反応器4内のバイオマス及び水蒸気(蒸煮用の水蒸気)を均一に加熱することができる。
【0026】
撹拌装置4eは、
図2に示すように、回転軸4h、撹拌羽根4i及び駆動部4jを備え、反応器4内に収容されたバイオマスと蒸煮用の水蒸気とを撹拌する。すなわち、この撹拌装置4eは、バイオマスと蒸煮用の水蒸気とを均一に混合させることにより、所定量のバイオマスを均一な温度に設定する。
【0027】
回転軸4hは、図示するように反応器4の軸心に沿って上下方向に延在する棒状部材である。撹拌羽根4iは、上記回転軸4eに沿って設けられる螺旋状の板状部材である。この撹拌羽根4iは、
図2に示すように、回転軸4hに対する取付角が異なるように回転軸4hの上端近傍から下端近傍にかけて2枚設けられている。
【0028】
駆動部4jは、回転軸4eを非接触状態で回転駆動する駆動源である。この駆動部4jは、
図3(a)に示すように、回転子4m、固定子4n及び給電部4pを備えている。回転子4mは、回転軸4hの上端部近傍部位に設けられた複数の永久磁石を備える。この回転子4mは、
図3(a)に示すように、例えば回転軸4h周りに90°の角度ピッチで、また異なる極性順で配列する4つの永久磁石からなる。
【0029】
固定子4nは、このような回転子4mに対向配置するように反応器4の上部に設けられている。この固定子4nは、
図3(a)に示すように、例えば回転子4m周りに45°の角度ピッチで、また異なる極性順で配列する8つの電磁石からなる。なお、このような回転子4mにおける永久磁石の個数(極数)及び固定子4nにおける電磁石の個数(スロット数)は一例であり、他の個数であってもよい。
【0030】
給電部4pは、上記固定子4nの各電磁石に駆動電流を供給する交流電源である。この給電部4pは、複数の電磁石が回転磁界を発生するように電気角が異なる交流電流を各々の電磁石に給電する。
【0031】
すなわち、駆動部4jは、給電部4pから固定子4nに駆動電流が供給することにより、固定子4nに回転子4m周りの回転磁界を生成させる。この回転磁界は、回転子4mの各永久磁石に作用することによって回転子4mを同期回転させる。
【0032】
また、本実施形態における固定子4nは、
図3(b)に示すように電磁石が上下2段に設けられている。詳細については後述するが、このような固定子4nにおける電磁石の2段構成は、回転軸4eに上下方向(スラスト方向)の力を作用させ、以って回転軸4eの上下方向における位置つまり撹拌羽根4iの上下方向における位置を変位させるためのものである。
【0033】
すなわち、本実施形態における駆動部4jは、回転軸4eを上下方向に変位させる変位装置として機能するものである。この駆動部4jは、回転軸4eを上下方向に変位させることによって、回転軸4eに設けられた撹拌羽根4iを上下方向に変位させる。
【0034】
排出機構4fは、処理済バイオマスを外部に排出する開閉弁である。この排出機構4fは、バイオマスに蒸煮処理を施す際は閉状態に設定され、当該蒸煮処理が完了してバイオマスに爆砕処理を施す際に開状態とされる。
【0035】
すなわち、この排出機構4fは、蒸煮処理によって高温状態かつ高圧状態にあるバイオマスの圧力を急激に開放することによって爆砕させる。このような排出機構4fは、反応器4を密封/密封解除する密封装置として機能する。また、この排出機構4fは、微粉化バイオマスの取出口としても機能する。
【0036】
このような反応器4から排出される処理済バイオマスは、平均粒度0.5~1.0mm程度の微粉化バイオマスを主成分とするバイオマスである。また、この処理済バイオマスには水蒸気が多量に含まれている。すなわち、処理済バイオマスと水蒸気との固気混合物が体反応器4から排出される。
【0037】
蒸気源5は、反応器4と配管で接続されており、反応器4に蒸煮用及び加熱用の水蒸気(過熱蒸気)を供給する。この蒸気源5は、例えばボイラである。すなわち、本実施形態に係る蒸煮爆砕装置で製造された微粉化バイオマスはボイラの燃料として利用されるが、本実施形態に係る蒸煮爆砕装置は、このボイラで生成された水蒸気を蒸気源5として利用する。
【0038】
サイクロンホッパ6は、処理済バイオマスと水蒸気との固気混合物を固気分離する分離装置である。すなわち、このサイクロンホッパ6は、上部受入口6aで受け入れた固気混合物をサイクロン状(螺旋状)に下降させることにより、処理済バイオマス及び水蒸気を比重差を利用して分離する。
【0039】
このようなサイクロンホッパ6は、水蒸気を上部排出口6bから排出し、処理済バイオマスを下部排出口6cから排出する。なお、サイクロンホッパ6の下部には、処理済バイオマスを強制的に下部排出口6cに送り出すスクリューフィーダ6dが設けられている。
【0040】
第1搬送コンベヤ7は、サイクロンホッパ6と乾燥機9との間に設けられた搬送装置である。この第1搬送コンベヤ7は、サイクロンホッパ6から受け入れた処理済バイオマスを乾燥機9まで搬送する。
【0041】
復水器8は、サイクロンホッパ6の上部排出口6bから受け入れた水蒸気を凝縮させる凝縮器である。この復水器8は、例えば水蒸気を水と熱交換させることにより冷却することにより凝縮させる。このような復水器8は、凝縮水を下部排出口8aはら排出し、凝縮しきれなかった水蒸気を上部排出口8bから排出する。
【0042】
乾燥機9は、加熱装置4bから供給された水蒸気を用いて第1搬送コンベヤ7から搬入される処理済バイオマスを乾燥させる乾燥装置である。乾燥機9は、処理済バイオマスを受け入れる受入口9a及び乾燥させた処理済バイオマスを排出する排出口9bに加え、蒸気受入口9c、蒸気排出口9d及び伝熱管9eを備えている。
【0043】
蒸気受入口9cは、乾燥用の水蒸気を受け入れる開口であり、蒸気排出口9dは、乾燥に供した水蒸気を排出する開口であり、また伝熱管9eは、蒸気受入口9cと蒸気排出口9dとの間に設けられた水蒸気流路である。
【0044】
このような乾燥機9は、加熱装置4bから供給された水蒸気を伝熱管9eに流通させ、乾燥用の熱源として利用することにより、処理済バイオマスを乾燥させる。すなわち、この乾燥機9は、加熱装置4bの排熱を利用して処理済バイオマスを乾燥させるものであり、新たな熱源を必要としないものである。
【0045】
分級機10は、上述した乾燥機9から供給された乾燥済みの処理済バイオマスから微粉化バイオマスと粗大バイオマスとを分離する粉体分離装置である。すなわち、この分級機10は、受入口10aと一対の排出口10b、10cを備えており、受入口10aで受け入れた乾燥済みの処理済バイオマスを微粉化バイオマスと粗大バイオマスとに分離し、微粉化バイオマスを一方の排出口10bから排出し、粗大バイオマスを他方の排出口10cから排出する。
【0046】
戻りポンプ11は、上述した乾燥機9から排出された水蒸気を蒸気源5であるボイラに戻す動力源である。第2搬送コンベヤ12は、分級機10における一方の排出口10bと乾燥木粉ホッパ13との間に設けられた搬送装置である。この第2搬送コンベヤ12は、分級機10から排出された乾燥済みの微粉化バイオマスを乾燥木粉ホッパ13に搬送する。
【0047】
乾燥木粉ホッパ13は、所定の容量を備えたバイオマス容器である。この乾燥木粉ホッパ13は、上部投入口13aから投入された乾燥済みの微粉化バイオマスを一時的に貯留すると共に先に受け入れた乾燥済みの微粉化バイオマスを下部開閉扉13bから第2計量フィーダ14に送り出す。
【0048】
第2計量フィーダ14は、上述した第1計量フィーダ3と同様に、計量機能を備えた搬送装置である。この第2計量フィーダ14は、乾燥木粉ホッパ13から受け入れた乾燥済みの微粉化バイオマスの重量を計量し、予め設定された所定量をスラットバルブ15に供給する。スラットバルブ15は、耐摩耗性に優れた粉粒体供給弁であり、ボイラの燃料供給系に乾燥済みの微粉化バイオマスを燃料として供給する。
【0049】
次に、本実施形態に係る蒸煮爆砕装置の動作について詳しく説明する。
この蒸煮爆砕装置では、受入口1aで外部から受け入れたバイオマス(原料)が受入コンベヤ1によって受入ホッパ2に順次搬送され、上方から受入ホッパ2内に投下される。この受入ホッパ2では、上記バイオマス(原料)の投下と並行して、スクリューフィーダ2cが受入ホッパ2の下部から先に投下されたバイオマスを第1計量フィーダ3に向けて送り出す。
【0050】
そして、この第1計量フィーダ3によって計量された所定重量のバイオマスが反応器4に供給される。反応器4は、所定重量のバイオマスを受け入れると、密封状態でバイオマスに蒸煮処理を施す。すなわち、反応器4は、所定重量のバイオマスに蒸気源5から受け入れた所定量の水蒸気を添加した後に、受入機構4a及び排出機構4fを閉状態とすることによってバイオマス及び水蒸気を密封状態とする。
【0051】
また、このような反応器4では、蒸気源5から加熱装置4dが受け入れた水蒸気によってバイオマス及び水蒸気が加熱され、さらに撹拌装置4eによってバイオマスが撹拌されることによってバイオマスと水蒸気とが混合される。この結果、バイオマスは、反応器4内において均一な温度に加熱される。すなわち、本実施形態における反応器4ではバイオマスの加熱斑が少ない。
【0052】
反応器4では、このように加熱斑が少ない状態でバイオマスを所定時間に亘って蒸煮処理する。すなわち、加熱によって活性が向上した水蒸気がバイオマスに作用することによって、リグニン等のバイオマスの構成成分が解される。
【0053】
そして、この反応器4では、所定時間に亘る蒸煮処理が完了すると、排出機構4fが閉状態から開状態に切換えられる。すなわち、排出機構4fは、反応器4を密封状態から密封解除状態に切換える。
【0054】
この結果、蒸煮処理によって雰囲気圧力が上昇したバイオマスは、雰囲気圧力の急激な低下に曝される。この急激な圧力低下によって、バイオマスは瞬間的に粉砕(爆砕)される。すなわち、この反応器4では、所定時間に亘る蒸煮処理の後にバイオマスの爆砕処理が行われ、処理済バイオマスが生成される。
【0055】
ここで、蒸煮処理では撹拌装置4eによってバイオマスが連続的に撹拌されるが、排出機構4fが反応器4を密封状態から密封解除状態に切換える際に、駆動部4jは、回転軸4hを上方向に変位させる。
【0056】
例えば、駆動部4jは、蒸煮処理では固定子4nにおける下段の電磁石のみに駆動電流を給電することによって、回転軸4h及び撹拌羽根4iを最も下がった位置に位置設定する。そして、駆動部4jは、反応器4を密封状態から密封解除状態に切換える直前において、固定子4nにおける2段の電磁石に駆動電流を給電して回転軸4h及び撹拌羽根4iを上下方向の中間位置に位置設定し、さらに固定子4nにおける上段の電磁石のみに駆動電流を給電することによって回転軸4h及び撹拌羽根4iを上下方向における最も高い位置に位置設定させる。
【0057】
このような駆動部4jによる回転軸4h及び撹拌羽根4iの高さ位置の上昇処理によって、反応器4が密封状態から密封解除状態に切換えられる際に発生する反応器4内の急激な圧力低下(圧力変動)によって撹拌装置4e(特に撹拌羽根4i)が損傷することを防止することができる。さらに、排出機構4fの開状態の際に、撹拌羽根4iを上方向に変位させることにより、処理済バイオマスが排出機構4fを通過することを容易にし、処理済バイオマスの排出性能を向上させることができる。
【0058】
また、排出機構4fの閉状態の際に、駆動部4jによる回転軸4h及び撹拌羽根4iの高さ位置の降下処理によって、撹拌羽根4iを反応器4の下部に達するように配置することができる。これにより、反応器4の下部に堆積するバイオマスを効率的に撹拌することができ、撹拌効率が向上する。
【0059】
反応器4の排出機構4fが閉状態から開状態に設定変更されることによって、処理済バイオマスと水蒸気との固気混合物が排出機構4fを通過してサイクロンホッパ6に流れ出す。そして、このサイクロンホッパ6によって固気混合物から水蒸気が除去され、処理済バイオマスのみが第1搬送コンベヤ7によって乾燥機9に供給される。なお、サイクロンホッパ6で固気混合物から分離された水蒸気は、復水器8において凝縮される。
【0060】
乾燥機9では、反応器4から供給された水蒸気を熱源として処理済バイオマスが乾燥される。すなわち、乾燥機9は、伝熱管9e内を流れる水蒸気と処理済バイオマスとを熱交換させることによって当該処理済バイオマスを乾燥させる。
【0061】
このような乾燥機9によって乾燥処理された処理済バイオマスは、分級機10によって微粉化バイオマスと粗大バイオマスとに分離される。微粉化バイオマスは第2搬送コンベヤ12によって乾燥木粉ホッパ13に供給され、粗大バイオマスは、受入コンベヤ1に供給されて反応器4に再度投入される。
【0062】
乾燥木粉ホッパ13では微粉化バイオマスが一次的に貯留される。そして、乾燥木粉ホッパ13から取り出された微粉化バイオマスは、第2計量フィーダ14によって順次計量されてスラットバルブ15に供給され、当該スラットバルブ15を介してボイラに順次供給される。
【0063】
このような本実施形態によれば、反応器4における蒸煮処理の際に、撹拌装置4eによってバイオマスを撹拌することによって水蒸気と均一に混合させる。したがって、本実施形態によれば、所望平均粒度の微粉化バイオマスの収率を従来よりも向上させることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、
図2及び
図3に示す撹拌装置4eを採用したが、本発明はこれに限定されない。特に、駆動部4jにおける変位装置としての機能構成は、
図3(b)に示した構成に限定されない。例えば、電磁石を上下2段ではなく上下3段以上としてもよい。
【0065】
(2)上記実施形態では、撹拌装置4eにおいて螺旋状の撹拌羽根4iを採用したが、本発明はこれに限定されない。撹拌羽根の種類(形状)としては複数のものが周知であり、これら周知の種類(形状)の中から必要に応じて適宜選択したものを採用すればよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、反応器4から排出された水蒸気を乾燥機9に供給したが、本発明はこれに限定されない。排熱回収に重きを置かない場合には、水蒸気を蒸気源5から直接乾燥機9に供給してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 受入コンベヤ
2 受入ホッパ
3 第1計量フィーダ
4 反応器
4a 受入機構
4b 蒸気取入口
4c 蒸気排出口
4d 加熱装置
4e 撹拌装置
4f 排出機構
4g 加熱ゾーン
4h 回転軸
4i 撹拌羽根
4j 駆動部
4m 回転子
4n 固定子
4p 給電部
5 蒸気源
6 サイクロンホッパ
7 第1搬送コンベヤ
8 復水器
9 乾燥機
10 分級機
11 戻りポンプ
12 第2搬送コンベヤ
13 乾燥木粉ホッパ
14 第2計量フィーダ
15 スラットバルブ