(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20231212BHJP
B62D 55/10 20060101ALI20231212BHJP
B62D 55/084 20060101ALI20231212BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20231212BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20231212BHJP
B66C 23/90 20060101ALI20231212BHJP
B66C 23/78 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B66C23/88 A
B62D55/10 A
B62D55/084
E02F9/02 C
B66C15/00 A
B66C23/90 N
B66C23/78 H
(21)【出願番号】P 2020089510
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】正井 啓記
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-53169(JP,A)
【文献】実開平7-19074(JP,U)
【文献】特開平5-139343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B62D 55/10
B62D 55/084
E02F 9/02
B66C 15/00
B66C 23/90
B66C 23/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
この下部走行体上に旋回可能に搭載される上部旋回体と
を備え、
上記下部走行体が、
車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、
上記一対のクローラユニットの間隔を車幅方向に増減させる拡縮装置と
を有する建設機械であって、
上記拡縮装置が、車幅方向の間隔を最小とする全縮位置と、上記全縮位置からの張出距離が異なる複数の張出位置とに、上記一対のクローラユニットを固定可能に構成されており、
上記下部走行体が、
ハーネスと、
上記ハーネスの接触を検知可能で、少なくとも上記複数の張出位置と同数の複数の検知器と
を備える検知部を有し、
上記複数の張出位置で、上記複数の検知器のうち上記ハーネスが接触する検知器が互いに異なる建設機械。
【請求項2】
上記複数の検知器が固定されており、
上記ハーネスが上記一対のクローラユニットに連動して移動する請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
上記上部旋回体に起伏可能に取り付けられるブームと、
上記ブームの起伏時のモーメントを制御するモーメントリミッタと
を備え、
上記モーメントリミッタのリミット値が、上記ハーネスが接触する上記検知器に対応して定まる請求項1又は請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
上記全縮位置で、上記ハーネスが上記複数の検知器のいずれにも接触しない請求項1、請求項2又は請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
上記上部旋回体が操縦者用キャビンを有し、
上記操縦者用キャビンが、上記複数の検知器の検知結果から特定される張出位置を表示する表示装置を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
上記ハーネスの上記複数の検知器への接触にコネクタを用いる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーン、油圧ショベル、杭打ち機等の建設機械として、一対のクローラを有する走行手段を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられ、ブームが起伏可能に取り付けられる上部旋回体とを備えるものが知られている。
【0003】
このようなクローラを備えた建設機械はトレーラ等に積載されて輸送されるので、輸送時には一対のクローラの間隔は狭いほうがよい。一方、作業中はその安定性を確保するため一対のクローラの間隔は広いほうがよい。しかし、作業場所によっては広げられるクローラの間隔が制限される場合がある。このように相反する要求を満たすため、各クローラを有する一対のクローラユニットの間隔を段階的に拡縮する拡縮装置を備えた走行体が公知である。
【0004】
このような建設機械では、拡張した一対のクローラユニットの間隔に応じて車体の安定性が変わり、例えば作業中に許容される建設機械に作用する最大モーメントは、クローラユニットの間隔が狭いほど小さくなる。このため、クローラユニットの間隔の拡張作業を忘れていたり、必要な作業に対してクローラユニットの間隔が不十分であったりすると、作業に支障をきたすおそれがある。
【0005】
これを防止するため、クローラユニットを所定の幅で固定する複数の固定用ピンと、この固定用ピンのうち不使用状態のピンを収容する収容部材と、上記収容部材に収容された上記固定用ピンを検出するピン検出手段とを備える拡縮検出装置が提案されている(特開2002-187580号公報参照)。
【0006】
この従来の拡縮検出装置では、クローラユニットの拡縮状態に応じて使用される固定用ピンの種類や数が異なることを利用して、収容部材に残っている固定用ピンからクローラユニットの拡縮状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の拡縮検出装置は、クローラユニットを拡縮する際の可動部分に検知機構を設けていないため複雑な配線の取り回しをする必要がない。一方で、上記従来の拡縮検出装置は、未使用の固定ピンの情報からクローラユニットの拡縮状態を類推しているに過ぎず、誤検知の可能性が十分に低いとは言えない。
【0009】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、複雑な配線の取り回しをすることなく、直接的にクローラユニットの拡縮状態を検知可能な建設機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る建設機械は、下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に搭載される上部旋回体とを備え、上記下部走行体が、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、上記一対のクローラユニットの間隔を車幅方向に増減させる拡縮装置とを有する建設機械であって、上記拡縮装置が、車幅方向の間隔を最小とする全縮位置と、上記全縮位置からの張出距離が異なる複数の張出位置とに、上記一対のクローラユニットを固定可能に構成されており、上記下部走行体が、ハーネスと、上記ハーネスの接触を検知可能で、少なくとも上記複数の張出位置と同数の複数の検知器とを備える検知部を有し、上記複数の張出位置で、上記複数の検知器のうち上記ハーネスが接触する検知器が互いに異なる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建設機械は、クローラユニットの拡縮状態を複雑な配線の取り回しをすることなく、直接的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械を示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の建設機械の全縮位置での下部走行体を示す模式的平面図である。
【
図4】
図4は、
図1の建設機械の中間張出位置での下部走行体を示す模式的平面図である。
【
図6】
図6は、
図4の下部走行体の検出部の模式的拡大平面図である。
【
図7】
図7は、
図1の建設機械の全張出位置での下部走行体を示す模式的平面図である。
【
図9】
図9は、
図7の下部走行体の検出部の模式的拡大平面図である。
【
図10】
図10は、
図1の建設機械の操縦者用キャビンが有する表示装置の模式的正面図である。
【
図11】
図11は、
図1の建設機械とは異なる建設機械における中間張出位置での下部走行体を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る建設機械は、下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に搭載される上部旋回体とを備え、上記下部走行体が、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、上記一対のクローラユニットの間隔を車幅方向に増減させる拡縮装置とを有する建設機械であって、上記拡縮装置が、車幅方向の間隔を最小とする全縮位置と、上記全縮位置からの張出距離が異なる複数の張出位置とに、上記一対のクローラユニットを固定可能に構成されており、上記下部走行体が、ハーネスと、上記ハーネスの接触を検知可能で、少なくとも上記複数の張出位置と同数の複数の検知器とを備える検知部を有し、上記複数の張出位置で、上記複数の検知器のうち上記ハーネスが接触する検知器が互いに異なる。
【0014】
当該建設機械では、複数の張出位置に対して、ハーネスが接触する検知器が互いに異なるように構成されている。このため、どの検知器にハーネスが接触したかによって張出位置を直接的に特定することができる。また、ハーネスの接触を検知する検知器は複雑な配線を必要としないため、配線の取り回しが容易である。従って、当該建設機械は、複雑な配線の取り回しをすることなく、直接的にクローラユニットの拡縮状態を検知することができる。
【0015】
上記複数の検知器が固定されており、上記ハーネスが上記一対のクローラユニットに連動して移動するとよい。検知部で必要とされる配線は、主として検知器に接続されるため、検知器を固定し、ハーネスを一対のクローラユニットに連動して移動させることで、配線の取り回しをさらに容易化することができる。
【0016】
上記上部旋回体に起伏可能に取り付けられるブームと、上記ブームの起伏時のモーメントを制御するモーメントリミッタとを備え、上記モーメントリミッタのリミット値が、上記ハーネスが接触する上記検知器に対応して定まるとよい。このようにモーメントリミッタのリミット値をハーネスが接触する検知器に対応して定めることで、より確実に車体の安定性を保つことができる。
【0017】
上記全縮位置で、上記ハーネスが上記複数の検知器のいずれにも接触しないとよい。このように全縮位置でハーネスを複数の検知器のいずれにも接触させないことで、例えばハーネスの設定を忘れたような場合には常に全縮位置と判断されるため、フェールセーフ動作させることができる。
【0018】
上記上部旋回体が操縦者用キャビンを有し、上記操縦者用キャビンが、上記複数の検知器の検知結果から特定される張出位置を表示する表示装置を有するとよい。このような表示装置を備えることで、操縦者が容易に張出位置の確認を行えるので、誤った張出位置で作業を行うことを抑止できる。
【0019】
上記ハーネスの上記複数の検知器への接触にコネクタを用いるとよい。このように上記ハーネスの上記複数の検知器への接触にコネクタを用いて接続することで、検知器とハーネスとをより確実に接触させ、誤動作するおそれを低減できる。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る建設機械について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1に示す建設機械1は、下部走行体2と、この下部走行体2上に水平方向に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に起伏可能に取り付けられるブーム4と、フック5と、ブーム4の先端からフック5を垂下するワイヤロープ6とを備える。また、当該建設機械1は、ブーム4の起伏時のモーメントを制御するモーメントリミッタ(不図示)を備える。
【0022】
<上部旋回体>
上部旋回体3は、ブーム4の取り付け部に隣接する操縦者用キャビン7や、ブーム4を起伏させるブーム起伏ウインチ(不図示)等を有する。
【0023】
このうち、操縦者用キャビン7は、操縦者が乗り込み、当該建設機械1の操作を行う場所である。操縦者用キャビン7は、
図1に示すように、表示装置7aを有し、操縦者はこの表示装置7aを見ながら、当該建設機械1の姿勢等を制御することができる。
【0024】
<ブーム>
ブーム4は、上部旋回体3に前後に揺動可能に取り付けられる。ブーム4は、先端部にワイヤロープ6を案内するシーブを有する。
【0025】
<フック>
フック5は、ワイヤロープ6の下端部に固定され、吊り荷の吊り上げあるいは吊り下ろしをするためのものである。
【0026】
<ワイヤロープ>
ワイヤロープ6は、ブーム4の先端部のシーブを経由して、上部旋回体3に設置されているウィンチ(不図示)に巻回されている。なお、上記ウィンチは、ブーム4の背側(ブーム4を倒伏した状態で上になる側)に設置してもよい。
【0027】
<モーメントリミッタ>
モーメントリミッタは、当該建設機械1の転倒を防ぐため、モーメントの最大値を制限する。モーメントは、当該建設機械1の重心から吊り荷までの水平距離と吊り荷の重さとの積で決まる量である。モーメントの最大値が制約されている場合、吊り荷の重さが決まると、当該建設機械1の重心から吊り荷までの水平距離の最大値、つまりブーム4を倒せる角度が制限されることとなる。つまり、モーメントリミッタは、その設定値(モーメントの最大値)に従って、作業中の当該建設機械1に作用するモーメントを制御する。
【0028】
<下部走行体>
下部走行体2は、
図2に示すように、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニット8と、一対のクローラユニット8の間隔を車幅方向に増減させる拡縮装置9と、一対の検知部10とを有する。クローラユニット8、拡縮装置9及び検知部10は、下部走行体2のカーボディ2aに取り付けられている。
【0029】
(クローラユニット)
クローラユニット8は、
図1に示すように、下部走行体2の走行装置であり、
図1に示すように、クローラフレーム8aと、このクローラフレーム8aに配設されるクローラ8bとを有する。
【0030】
(拡縮装置)
拡縮装置9は、
図2に示すように、走行方向の前後にそれぞれ一対のクローラユニット8のクローラフレーム8a間に架け渡されるように配置される一対のアクスル9aと、一対のクローラユニット8の間隔を拡縮できる水平シリンダ9bとを有する。なお、水平シリンダ9bを左右方向に広げる際は、アクスル9aにアダプタを連結してアクスル9aを延長してもよい。
【0031】
拡縮装置9は、車幅方向の間隔を最小とする全縮位置と、上記全縮位置からの張出距離が異なる複数の張出位置とに、一対のクローラユニット8を固定可能に構成されている。本実施形態では、
図2に示す全縮位置と、
図4及び
図7に示す2つの張出位置とを有する。以下、張出距離の小さい
図4の状態を中間張出位置、張出距離の大きい
図7の状態を全張出位置と呼ぶこととする。
【0032】
上記全縮位置は、当該建設機械1の車幅が最小の状態であり、トレーラ等に積載されて輸送される際の位置である。一方、上記中間張出位置及び上記全張出位置は、当該建設機械1が作業を行う位置である。上記中間張出位置は、当該建設機械1の車幅が比較的狭く作業スペースを要しないが、安定性はやや低くなる位置である。一方、上記全張出位置は、当該建設機械1の車幅が最も広く作業スペースは必要とするものの、安定性が高い状態である。
【0033】
(検知部)
一対の検知部10は、
図3、
図5及び
図8に示すように、それぞれハーネス11と、ハーネス11の接触を検知可能な2つの検知器12(第1検知器12a及び第2検知器12b)と、ハーネス11を支持する位置決めリンク13とを備える。この一対の検知部10は、下部走行体2の前方又は後方のいずれに設けられてもよい。
【0034】
位置決めリンク13は、基端側が例えばクローラフレーム8aと連結されており、一対のクローラユニット8の間隔の拡縮に従って移動する。また、ハーネス11は、位置決めリンク13の先端側に配置されており、位置決めリンク13を介して一対のクローラユニット8に連動して移動する。つまり、ハーネス11は、クローラユニット8が外側に移動すると同じように外側へ移動し、クローラユニット8が内側に移動すると内側へ(場合によっては中央部を超えて反対側へ)移動する。なお、位置決めリンク13は、通常、下部走行体2のハーネス11が配設されている側とは反対側にも配置される。つまり、位置決めリンク13は下部走行体2の前後に設けられる場合が多い。
【0035】
2つの検知器12は、カーボディ2a上に設けられており、固定されている。また、当該建設機械1は、中間張出位置及び全張出位置の2つの張出位置があるが、各検知部10において検知器12の配置数は、この張出位置と同数である。
【0036】
ハーネス11は、信号束であり、
図6及び
図9に示すように、その信号の1つに張出検出用信号線11aを含む。この張出検出用信号線11aは検知器12の両端を挟むように検知器12に接し、検知器12の両端間が張出検出用信号線11aを介して短絡することで、検知器12はハーネス11が接触したことを検知できるように構成されている。なお、検知器12はこの構成に限定されるものではなく、他の検出手段、例えばリミットスイッチや近接センサ等を用いることもできる。
【0037】
ハーネス11は、中間張出位置では
図6に示すように内側に位置する第1検知器12aに接触するように構成され、全張出位置では
図9に示すように第2検知器12bに接触するように構成されており、張出位置ごとに接触する検知器12が異なっている。つまり、当該建設機械1は、各検知部10について、複数の張出位置で、複数の検知器12のうちハーネス11が接触する検知器12が互いに異なる。
【0038】
また、ハーネス11は、全縮位置では
図3に示すように、束ねて取り外されている。つまり、上記全縮位置で、ハーネス11が複数の検知器12のいずれにも接触しない。このように全縮位置でハーネス11を複数の検知器12のいずれにも接触させないことで、例えば取り外したハーネス11の設定を忘れたような場合には常に全縮位置と判断されるため、フェールセーフ動作させることができる。
【0039】
ハーネス11の接触が検知された場合、検知した検知器12の情報は、例えば
図6及び
図9に示すように、検知信号線12cを介して操縦者用キャビン7に伝達される。
【0040】
モーメントリミッタのリミット値は、ハーネス11が接触する検知器12に対応して定めることができる。第1検知器12aでハーネス11の接触が検知された場合、一対のクローラユニット8は、中間張出位置にあると判断できるため、モーメントリミッタのリミット値には、その状態に合わせて低い値が設定される。一方、第2検知器12bでハーネス11の接触が検知された場合、一対のクローラユニット8は、全張出位置にあると判断できるため、モーメントリミッタのリミット値には、その状態に合わせて高い値が設定される。
【0041】
このようにモーメントリミッタのリミット値をハーネス11が接触する検知器12に対応して定めることで、より確実に車体の安定性を保つことができる。なお、モーメントリミッタのリミット値は、このように検知信号線12cを介して伝達される検知した検知器12の情報から自動的に設定されることが好ましいが、例えば検知器12の情報を参照して操縦者が設定することを妨げるものではない。操縦者が上記リミット値を設定する場合にあっては、誤設定をした場合にモーメントリミッタがその設定を受け付けないように構成することも可能である。
【0042】
また、操縦者用キャビン7が有する表示装置7aが、複数の検知器12の検知結果から特定される張出位置を表示するとよい。例えば
図10に示すように、表示装置7aが、その下部に中間張出検出ランプ7bと、全張出検出ランプ7cとを有する構成とすることができる。また、識別性向上の観点から、上記2つのランプは色が異なるとよい。このような表示装置7aを備えることで、操縦者が容易に張出位置の確認を行えるので、誤った張出位置で作業を行うことを抑止できる。
【0043】
<使用方法>
当該建設機械1の使用方法について説明する。
【0044】
当該建設機械1は輸送されて作業現場に到着した際には、一対のクローラユニット8は全縮位置にあり、ハーネス11は、
図3に示されるように、一端が位置決めリンク13の先端に固定されているが、他端が検知器12に当接しない状態で取り外されている。
【0045】
作業現場では、当該建設機械1は一対のクローラユニット8を中間張出位置又は全張出位置として、作業準備が行われる。この時に、ハーネス11は該当する位置の検知器12に上記他端が接触するように取り付けられる。
【0046】
この取り付けを行うまでは、一対のクローラユニット8が中間張出位置や全張出位置に移動してもハーネス11が検知器12に接触することはない。このため、検知器12は一対のクローラユニット8は常に全縮位置にある、つまり当該建設機械1は作業できない状態にあると判断することとなる。従って、取り外したハーネス11を取り付けることを忘れると、当該建設機械1は作業を行うことができず、フェールセーフ動作させることができる。
【0047】
一方、上述のようにハーネス11が取り付けられていると、一対のクローラユニット8が中間張出位置にある場合は、ハーネス11が第1検知器12aに接触し、全張出位置にある場合は、ハーネス11が第2検知器12bに接触する。これによって、当該建設機械1は、いずれの位置にあるかを正しく検出することができる。
【0048】
作業終了後は、ハーネス11の上記他端側を検知器12から取り外し、束ねて格納してから、一対のクローラユニット8を全縮位置とする。これにより当該建設機械1は輸送可能な状態(非作業状態)とできる。
【0049】
<利点>
当該建設機械1では、複数の張出位置に対して、ハーネス11が接触する検知器12が互いに異なるように構成されている。このため、どの検知器12にハーネス11が接触したかによって張出位置を直接的に特定することができる。また、ハーネス11の接触を検知する検知器12は複雑な配線を必要としないため、配線の取り回しが容易である。従って、当該建設機械1は、複雑な配線の取り回しをすることなく、直接的にクローラユニット8の拡縮状態を検知することができる。
【0050】
また、当該建設機械1では、複数の検知器12が固定されており、ハーネス11が一対のクローラユニット8に連動して移動する。検知部10で必要とされる配線は、主として検知器12に接続されるため、検知器12を固定し、ハーネス11を一対のクローラユニット8に連動して移動させることで、配線の取り回しをさらに容易化することができる。
【0051】
[第2実施形態]
本発明の別の一実施形態に係る建設機械は、
図1及び
図2に示す第1実施形態の建設機械と同様に、下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に搭載される上部旋回体と、上部旋回体に起伏可能に取り付けられるブームと、フックと、ブームの先端からフックを垂下するワイヤロープとを備える。また、下部走行体が、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、一対のクローラユニットの間隔を車幅方向に増減させる拡縮装置と、一対の検知部とを有する。拡縮装置は、車幅方向の間隔を最小とする全縮位置と、上記全縮位置からの張出距離が異なる2つの張出位置(中間張出位置及び全張出位置)とに、一対のクローラユニットを固定可能に構成されている。
【0052】
当該建設機械は、検知部以外の構成は、第1実施形態の建設機械と同様に構成できる。以下、検知部の構成を説明し、他の構成の説明については省略する。
【0053】
(検知部)
図11に示すように、一対の検知部20は、それぞれハーネス21と、ハーネス21の接触を検知可能な2つの検知器22(第1検知器22a及び第2検知器22b)と、第1検知器22a及び第2検知器22bとの間を仕切る仕切板23と、ハーネス21を支持する位置決めリンク13とを備える。位置決めリンク13については、第1実施形態の位置決めリンク13と同様であるので、同一符合を付して説明を省略する。
【0054】
2つの検知器22は、カーボディ2a上に設けられており、固定されている。また、当該建設機械は、中間張出位置及び全張出位置の2つの張出位置があるが、各検知部20において検知器22の配置数は、この張出位置と同数である。
【0055】
第1検知器22a及び第2検知器22bは、それぞれ位置決めリンク13と対応する側に、後述するハーネス21のコネクタ21aと連結可能なソケット22dを有する。
【0056】
ハーネス21は、信号束であり、その先端にコネクタ21aを有する。このコネクタ21aは検知器22のソケット22dと連結可能である。当該建設機械では、ハーネス21の複数の検知器22への接触にコネクタ21aを用いる。つまり、ハーネス21のコネクタ21aが連結されている検知器22が、ハーネス21が接触している検知器22として認識される。
【0057】
検知器22が、ハーネス21の連結を検知する方法としては特に限定されないが、例えばコネクタ21aを2端子とし、この2端子間がハーネス21の信号線により短絡するように構成しておくと、検知器22のソケット22dの対応する2端子間の抵抗値が、ハーネス21が連結している場合は低抵抗となり、ハーネス21の連結していない場合は高抵抗となることから、この抵抗値の差異として検知することができる。
【0058】
ハーネス21は、中間張出位置では
図11に示すように内側に位置する第1検知器22aとクローラユニット8の走行方向に対向する位置となるように構成されている。また、ハーネス21は、全張出位置では外側に位置する第2検知器22bとクローラユニット8の走行方向に対向する位置となるように構成されている。
【0059】
また、ハーネス21は、第1実施形態の建設機械1の検知部10と同様に、全縮位置では束ねて取り外されている。
【0060】
仕切板23は、
図12に示すように、第1検知器22aと第2検知器22bとの間に立設する板である。この仕切板23は、ハーネス21が連結可能な検知器22を制約する。
図12は、中間張出位置にある状態を示している。この時、ハーネス21は第1検知器22aと対向する位置にあり、第1検知器22aのソケット22dと連結可能である。一方、第2検知器22bのソケット22dに対しては、仕切板23が障害となり、ハーネス21のコネクタ21aは第2検知器22bのソケット22dに届かず、連結することができない。従って、当該建設機械は、各検知部20について、複数の張出位置で、複数の検知器22のうちハーネス21が接触する検知器22が互いに異なる。なお、仕切板23は、他の用途、例えばカーボディウェイトの接続用途や強度部材用途等に併用してもよい。
【0061】
ハーネス21の接触(連結)が検知された場合、検知した検知器22の情報は、例えば検知信号線22cを介して操縦者用キャビンに伝達される。
【0062】
<使用方法>
当該建設機械の使用方法について説明する。
【0063】
当該建設機械は輸送されて作業現場に到着した際には、一対のクローラユニット8は全縮位置にあり、ハーネス21は、一端が位置決めリンク13の先端に固定されているが、他端が検知器22に当接しない状態で取り外されている。
【0064】
作業現場では、当該建設機械1は一対のクローラユニット8を中間張出位置又は全張出位置として、作業準備が行われる。この時に、ハーネス21は該当する位置の検知器22に上記他端が連結される。つまり、一対のクローラユニット8が中間張出位置にある場合には、第1検知器22aに連結され、全張出位置にある場合には、第2検知器22bに連結される。
【0065】
この取り付けを行うまでは、一対のクローラユニット8が中間張出位置や全張出位置に移動してもハーネス21が検知器22に接触することはない。このため、検知器22は一対のクローラユニット8は常に全縮位置にある、つまり当該建設機械は作業できない状態にあると判断することとなる。従って、取り外したハーネス21を取り付けることを忘れると、当該建設機械は作業を行うことができず、フェールセーフ動作させることができる。また、上述のように一対のクローラユニット8の張出位置と異なる張出位置を検知する検知器22には、ハーネス21を接触させることはできない。
【0066】
当該建設機械では、作業中に一対のクローラユニット8の張出位置を変更する場合、まずハーネス21を検知器22から取り外す。次に、一対のクローラユニット8の張出位置を変更し、変更後の張出位置に対応する検知器22(中間張出位置であれば第1検知器22a、全張出位置であれば第2検知器22b)にハーネス21を連結する。
【0067】
なお、ハーネス21を検知器22に取り付けたまま、一対のクローラユニット8の張出位置を変更した場合に、ハーネス21のコネクタ21aと検知器22との接触が解除される機構を有するとよい。このような機構を有することで、ハーネス21を検知器22から取り外すことを忘れて張出位置の変更を行うと、コネクタ21aと検知器22との接触が解除され、全縮位置にある、つまり当該建設機械は作業できない状態にあると判断することとなる。従って、当該建設機械は作業を行うことができず、フェールセーフ動作させることができる。
【0068】
作業終了後は、ハーネス21の上記他端側を検知器22から取り外し、束ねて格納してから、一対のクローラユニット8を全縮位置とする。これにより当該建設機械は輸送可能な状態(非作業状態)とできる。
【0069】
<利点>
当該建設機械は、ハーネス21の複数の検知器22への接触にコネクタ21aを用いて接続することで、検知器22とハーネス21とをより確実に接触させ、誤動作するおそれを低減できる。
【0070】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0071】
上記実施形態では、ブーム及びフックを備える建設機械を例に取り説明したが、本発明の建設機械はブーム及びフックを備えるものに限定されるわけではなく、一対のクローラユニット及び上記一対のクローラユニットの間隔を車幅方向に増減させる拡縮装置を有するものであればよい。
【0072】
上記実施形態では、クローラユニットの間隔を拡縮できる装置として水平シリンダを示したが、クローラユニットの間隔を拡縮できるものであれば、他の動力装置を用いてもよい。
【0073】
上記実施形態では、張出位置が2つである場合を説明したが、張出位置は3つ以上あってもよい。
【0074】
上記実施形態では、複数の検知器が固定され、ハーネスが一対のクローラユニットに連動して移動する場合を説明したが、この関係は逆、つまりハーネスが固定され、複数の検知器が一対のクローラユニットに連動して移動する構成とすることもできる。
【0075】
上記実施形態では、全縮位置で、ハーネスが複数の検知器のいずれにも接触しない場合を説明したが、全縮位置でのみ接触する検知器をさらに設ける構成としてもよい。この場合、検知器の配置数は、(張出位置数+1)となる。
【0076】
上記実施形態では、下部走行体が一対の検出部を有する場合を説明したが、検出部は1つ、つまりいずれか片方のみであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、一対の検出部(ハーネス及び検出器)が下部走行体の前方又は後方に設けられる場合を説明したが、下部走行体の前方及び後方に一対ずつ、合計で二対の検出部を設ける構成としてもよい。このように検出部を下部走行体の前方及び後方の両側に配置することで、より確実に誤動作を抑止できる。
【0078】
上記第2実施形態では、検知部が仕切板を有する構成を説明したが、仕切板は必須の構成ではなく、省略可能である。この場合、例えば各検知器の配置位置やハーネスの長さ等を調整することで、複数の張出位置で、複数の検知器のうちハーネスが接触する検知器を互いに異なるものとすることができる。
【0079】
また、上記第2実施形態では、ハーネスがコネクタを有する場合を説明したが、検知器がコネクタを有し、ハーネスがソケットを有する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明の建設機械は、クローラユニットの拡縮状態を複雑な配線の取り回しをすることなく、直接的に検知することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 建設機械
2 下部走行体
2a カーボディ
3 上部旋回体
4 ブーム
5 フック
6 ワイヤロープ
7 操縦者用キャビン
7a 表示装置
7b 中間張出検出ランプ
7c 全張出検出ランプ
8 クローラユニット
8a クローラフレーム
8b クローラ
9 拡縮装置
9a アクスル
9b 水平シリンダ
10 検知部
11 ハーネス
11a 張出検出用信号線
12 検知器
12a 第1検知器
12b 第2検知器
12c 検知信号線
13 位置決めリンク
20 検知部
21 ハーネス
21a コネクタ
22 検知器
22a 第1検知器
22b 第2検知器
22c 検知信号線
22d ソケット
23 仕切板