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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電気部品の保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231212BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020108043
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002927
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 和宏
(72)【発明者】
【氏名】三島 惇
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023001(JP,A)
【文献】特開2013-032116(JP,A)
【文献】特開2019-151159(JP,A)
【文献】特開2017-132450(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016112607(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061508(US,A1)
【文献】特開2005-093299(JP,A)
【文献】特開2017-226294(JP,A)
【文献】特開2013-193634(JP,A)
【文献】特開2015-205595(JP,A)
【文献】特開2015-039981(JP,A)
【文献】特開2007-276605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04,
41/00-67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に設けられたリヤフロアパネルと、
前記リヤフロアパネルから下方に陥没し、前壁と、前記前壁の車両幅方向両端部から後方に延びる一対の側壁とを有する収容室と、
前記収容室に収容されたバッテリと、
前記バッテリの上方に位置するようにして前記収容室に収容され、湾曲する外周面を有する車載部品とを備えた車両に設けられ、前記車載部品の外周面に対向して設置される電気部品の保護構造であって、
前記電気部品を支持し、前記側壁の一方と前記前壁を跨がるようにして前記リヤフロアパネルに固定されるブラケットを有し、
前記ブラケットは、前記リヤフロアパネルから前記側壁の一方と前記前壁よりも前記収容室の上方に突出するブラケット部を有し、
前記ブラケット部は、水平面内で前記車載部品の外周面に対向する端辺を有することを特徴とする電気部品の保護構造。
【請求項2】
前記端辺は、水平面内で車両の前後方向に延びる仮想線に対して傾斜しており、
水平面内において前記車載部品の外周面と前記端辺とを車両の前後方向に結んだ直線は、前記端辺の傾斜方向の中央部が最も短いことを特徴とする請求項1に記載の電気部品の保護構造。
【請求項3】
前記ブラケット部を第1のブラケット部とした場合に、前記ブラケットは、前記電気部品を挟んで第1のブラケット部に対向する第2のブラケット部と、前記電気部品の下方に位置し、前記第1のブラケット部と前記第2のブラケット部とを連絡する第3のブラケット部とを有し、
前記第1のブラケット部は、前記電気部品を固定する第1の固定部を有し、
前記端辺を直線状に延びる第1の端辺とした場合に、前記第2のブラケット部は、前記第1の端辺と対向する第2の端辺と、前記電気部品が固定される第2の固定部とを有し、
前記第3のブラケット部は、前記第1のブラケット部と前記第2のブラケット部の間に位置する第3の端辺と、前記第3の端辺から前記第1の端辺と平行に直線状に延びる第1の切り欠きと、前記第3の端辺の延びる方向において前記第1の切り欠きと前記第2のブラケット部の間に設けられ、前記第3のブラケット部を前記リヤフロアパネルに固定する第3の固定部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気部品の保護構造。
【請求項4】
前記第3のブラケット部は、前記第1の端辺の延びる方向で前記第3の端辺に対向する第4の端辺と、前記第4の端辺から前記第1の端辺と平行に直線状に延びる第2の切り欠きと、前記第4の端辺の延びる方向において第2の切り欠きと前記第1のブラケット部の間に設けられ、前記第3のブラケット部を前記リヤフロアパネルに固定する第4の固定部とを有し、
前記第4の固定部は、前記第3のブラケット部から下方に膨出しており、
前記電気部品は、配線接続部を有し、
前記配線接続部は、前記第4の固定部の上方に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電気部品の保護構造。
【請求項5】
前記第3の端辺の延びる方向において、前記第1の切り欠きは、前記第2の切り欠きに対して前記第1の端辺側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電気部品の保護構造。
【請求項6】
前記第3のブラケット部のうち、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きの延びる方向に対して直交する方向において前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとを結んだ前記第3のブラケット部の幅方向の長さは、前記第3のブラケット部と前記電気部品の上下方向の距離よりも短いことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電気部品の保護構造。
【請求項7】
前記第3の端辺の延びる方向において前記第1のブラケット部と前記第1の切り欠きの間の前記第3のブラケット部の部位を第3のブラケット部位とした場合に、前記第3のブラケット部位は、前記第3のブラケット部よりも下方に位置していることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の電気部品の保護構造。
【請求項8】
前記第2の固定部は、少なくとも1つ以上の長穴を有し、
前記長穴は、前記第1の端辺の傾斜面と直交する方向に延びていることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の電気部品の保護構造。
【請求項9】
前記車載部品は、少なくとも弾性部材を有し、前記弾性部材の外周面が湾曲していることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気部品の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後面衝突時において、スペアタイヤ等の車載部品と車両駆動用の強電バッテリ等の電気部品との干渉を回避して、強電バッテリの破損を防止する電動車の車体構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この電動車の車体構造は、ブラケット脆弱部を利用して傾斜角を増す方向にスペアタイヤを回転させるプレ動作を経過し、その後、大きなモーメントにより傾斜角が増す方向にスペアタイヤを回転させる本動作に移行させる。
【0004】
これにより、後面衝突時、スペアタイヤの移動が傾斜角を増す方向の回転動作となるように確実に規制し、スペアタイヤと強電バッテリとの干渉回避の確実性を大幅に高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-276605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電動車の車体構造にあっては、後突時のスペアタイヤの移動方向を規制することにより、スペアタイヤが強電バッテリに衝突することを抑制している。
【0007】
しかしながら、従来の電動車の車体構造にあっては、スペアタイヤが強電バッテリに衝突した場合に、スペアタイヤから強電バッテリに大きな衝撃が加わり、強電バッテリを保護できないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両の後面衝突時に車載部品から電気部品に大きな衝撃が加わることを抑制でき、電気部品を保護できる電気部品の保護構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両の後部に設けられたリヤフロアパネルと、前記リヤフロアパネルから下方に陥没し、前壁と、前記前壁の車両幅方向両端部から後方に延びる一対の側壁とを有する収容室と、前記収容室に収容されたバッテリと、前記バッテリの上方に位置するようにして前記収容室に収容され、湾曲する外周面を有する車載部品とを備えた車両に設けられ、前記車載部品の外周面に対向して設置される電気部品の保護構造であって、前記電気部品を支持し、前記側壁の一方と前記前壁を跨がるようにして前記リヤフロアパネルに固定されるブラケットを有し、前記ブラケットは、前記リヤフロアパネルから前記側壁の一方と前記前壁よりも前記収容室の上方に突出するブラケット部を有し、前記ブラケット部は、水平面内で前記車載部品の外周面に対向する端辺を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、車両の後面衝突時に車載部品から電気部品に大きな衝撃が加わることを抑制でき、電気部品を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を備えた車両の後部を示す平面図であり、DC-DCコンバータとブラケットが取り外された状態を示す。
図2図2は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を備えた車両を後方から見た図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を備えた車両の後部を示す平面図であり、DC-DCコンバータとブラケットが取外けられた状態を示す。
図4図4は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を備えた車両を図3の矢印A方向から見た図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図であり、DC-DCコンバータとブラケットの平面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図であり、ブラケットの平面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図であり、ブラケットを後上方から見た斜視図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図であり、DC-DCコンバータとブラケットを図3の矢印A方向から見た図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図であり、第3のブラケット部が変形した状態を図3の矢印A方向から見た図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図であり、スペアタイヤがブラケットに衝突した状態を示す車両後部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る電気部品の保護構造は、車両の後部に設けられたリヤフロアパネルと、リヤフロアパネルから下方に陥没し、前壁と、前壁の車両幅方向両端部から後方に延びる一対の側壁とを有する収容室と、収容室に収容されたバッテリと、バッテリの上方に位置するようにして収容室に収容され、湾曲する外周面を有する車載部品とを備えた車両に設けられ、車載部品の外周面に対向して設置される電気部品の保護構造であって、電気部品を支持し、側壁の一方と前壁を跨がるようにしてリヤフロアパネルに固定されるブラケットを有し、ブラケットは、リヤフロアパネルから側壁の一方と前壁よりも収容室の上方に突出するブラケット部を有し、ブラケット部は、水平面内で車載部品の外周面に対向する端辺を有する。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係る電気部品の保護構造は、車両の後面衝突時に車載部品から電気部品に大きな衝撃が加わることを抑制でき、電気部品を保護できる電気部品の保護構造を提供する。
【実施例
【0014】
以下、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造について、図面を用いて説明する。
図1から図10は、本発明の一実施例に係る電気部品の保護構造を示す図である。図1から図10において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の電気部品とブラケットを基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1にはサイドフレーム2L、2Rが設けられており、サイドフレーム2L、2Rは、車両1の前後方向に延びている。
【0016】
車両1の後部において、サイドフレーム2L、2Rの間にはリヤフロアパネル3が設けられている。リヤフロアパネル3には収容室4が形成されており、収容室4は、リヤフロアパネル3から下方に陥没している(図2参照)。
【0017】
図1図2に示すように、収容室4は、リヤフロアパネル3から下方に延びる前壁4Fと、リヤフロアパネル3から下方に延び、かつ、前壁4Fの車両幅方向両端部から後方に延びる一対の側壁4L、4Rと、前壁4Fの下端部と側壁4L、4Rの下端部とを連絡する底壁4Bとを有する。車両幅方向は、車両1の左右方向である。
【0018】
図2に示すように、収容室4にはバッテリ5とスペアタイヤ6が収容されており、バッテリ5とスペアタイヤ6は、支持ブラケット7に支持されている。支持ブラケット7は、車両幅方向両端部が側壁4L、4Rの上方においてフロアパネル3に支持されている。
【0019】
支持ブラケット7は、車両幅方向両端部からフロアパネル3よりも下方に位置するように収容室4に収容されており、収容室4内でバッテリ5とスペアタイヤ6を支持している。
【0020】
スペアタイヤ6は、バッテリ5の上方に位置しており、上部が収容室4よりも上方に突出した状態、具体的には、リヤフロアパネル3よりも上方に突出した状態で収容室4に収容されている。本実施例のスペアタイヤ6は、本発明の車載部品を構成する。
【0021】
図1に示すように、スペアタイヤ6は、アルミニウム合金やマグネシウム合金から構成されるタイヤホイール6Aと、タイヤホイール6Aの径方向外周部に取付けられ、ゴム等の弾性部材から構成されるタイヤ6Bとを備えている。
【0022】
タイヤ6Bの外周面には湾曲面6aが形成されている。すなわち、タイヤ6Bは、湾曲する外周面を有する。
【0023】
図3に示すように、車両1には高電圧部品からなるDC-DCコンバータ10が搭載されており、DC-DCコンバータ10は、ブラケット11に支持されている。本実施例のDC-DCコンバータ10は、本発明の電気部品を構成する。
【0024】
ブラケット11は、収容室4の前壁4Fと側壁4Rを跨がるようにしてリヤフロアパネル3に固定されている。なお、ブラケット11は、収容室4の前壁4Fと側壁4Lを跨がるようにしてリヤフロアパネル3に固定されてもよい。
【0025】
図5から図7に示すように、ブラケット11は、第1のブラケット部11Aと、第2のブラケット部11Bと、第3のブラケット部11Cとを有する。
【0026】
図3に示すように、第1のブラケット部11Aは、リヤフロアパネル3から前壁4Fと側壁4Rよりも収容室4の上方に突出しており、水平面内でスペアタイヤ6の外周面に対向する第1の端辺11aを有する(図4参照)。本実施例の第1の端辺11aは、本発明の端辺を構成する。
【0027】
図5に示すように、第2のブラケット部11Bは、DC-DCコンバータ10を挟んで第1のブラケット部11Aに対向している。
【0028】
図8に示すように、第3のブラケット部11Cは、第1のブラケット部11Aの下端部11eと第2のブラケット部11Bの下端部11fとを連絡している。第3のブラケット部11Cは、DC-DCコンバータ10の下方に位置しており、第3のブラケット部11CとDC-DCコンバータ10の間には上下方向の隙間が形成されている。
【0029】
図3図5に示すように、第1の端辺11aは、水平面内において車両1の前後方向に延びる仮想線1aに対して傾斜しており、直線状に延びている。
【0030】
図5から図7に示すように、第2のブラケット部11Bは、第2の端辺11bを有する。第2の端辺11bは、第1の端辺11aと平行に直線状に延びている。すなわち、本実施例のブラケット11は、仮想線1aに対して傾斜して設置されている。
【0031】
水平面内でタイヤ6Bの湾曲面6aと第1の端辺11aとを車両1の前後方向に結んだ直線は、第1の端辺11aの傾斜方向の中央部が最も短い。
【0032】
具体的には、図3に示すように、タイヤ6Bの湾曲面6aと第1の端辺11aの傾斜方向の中央部とを車両1の前後方向に結んだ直線aは、タイヤ6Bの湾曲面6aと第1の端辺11aの傾斜方向の前端部とを車両1の前後方向に結んだ直線bよりも短い。
【0033】
また、タイヤ6Bの湾曲面6aと第1の端辺11aの傾斜方向の前端部とを車両1の前後方向に結んだ直線bは、タイヤ6Bの湾曲面6aと第1の端辺11aの傾斜方向の後端部とを車両1の前後方向に結んだ直線cよりも短い。すなわち、直線の長さは、a<b<cである。
【0034】
図6に示すように、第3のブラケット部11Cの後端部は、第1のブラケット部11Aと第2のブラケット部11Bの間に位置しており、第3の端辺11cを構成している
【0035】
第3のブラケット部11Cの前端部は、第1の端辺11aの延びる方向(傾斜方向)で第3の端辺11cに対向しており、第4の端辺11dを構成している。第3の端辺11cと第4の端辺11dとは、第1のブラケット部11Aから第2のブラケット部11Bまで延びている。
【0036】
第1のブラケット部11Aには第1の固定部11g、11hが設けられており、第1の固定部11g、11hは丸穴を有する。固定部11g、11hは、丸穴と丸穴の周囲の第1のブラケット部11Aの部位とから構成されている。
【0037】
DC-DCコンバータ10は、第1の固定部11g、11hに締結される図示しないボルト等の締結具によって第1のブラケット部11Aに固定されている。
【0038】
図6に示すように、第2のブラケット部11Bには第2の固定部11i、11jが設けられている。
【0039】
第2の固定部11i、11jは、第1の端辺11aの傾斜面と直交する方向に延びる長穴から構成されており、DC-DCコンバータ10は、第2の固定部11i、11jに挿通される図示しないボルト等の締結具によって第2のブラケット部11Bに固定されている。
【0040】
第2の固定部11i、11jに挿通される締結具は、丸穴に沿って移動自在である。固定部11i、11jは、長穴と長穴の周囲の第2のブラケット部11Bの部位とから構成されている。
【0041】
第3のブラケット部11Cには実線で示す第1の切り欠き11kが設けられており、第1の切り欠き11kは、第3の端辺11cから第4の端辺11dに向かって第1の端辺11aと平行に直線状に延びている。
【0042】
第3のブラケット部11Cには第2の切り欠き11mが設けられており、第2の切り欠き11mは、第4の端辺11dから第3の端辺11cに向かって第1の端辺11aと平行に直線状に延びている。
【0043】
第3のブラケット部11Cには第3の固定部11nが設けられており、第3の固定部11nは、丸穴を有する。第3の固定部11nは、第3の端辺11cの延びる方向で第1の切り欠き11kと第2のブラケット部11Bの間に設けられている。
【0044】
第3のブラケット部11Cは、第3の固定部11nに締結される図示しないボルト等の締結具によってリヤフロアパネル3に固定されている。固定部11nは、丸穴と丸穴の周囲の第3のブラケット部11Cの部位とから構成されている。
【0045】
第3のブラケット部11Cには第4の固定部11pが設けられている。第4の固定部11pは、第3のブラケット部11Cから下方に膨出しており、丸穴を有する。第4の固定部11pは、第3のブラケット部11Cから下方に膨出する部位と、この部位に形成された丸穴とから構成されている。
【0046】
第3のブラケット部11Cは、第4の固定部11pに締結される図示しないボルト等の締結具によってリヤフロアパネル3に固定されている。
【0047】
このようにブラケット11は、第3の固定部11nと第4の固定部11pによってリヤフロアパネル3に固定されている。
【0048】
図3に示すように、DC-DCコンバータ10にはコネクタ12が設けられており、コネクタ12は、第4の固定部11pの上方に設けられている(図5参照)。コネクタ12には配線14の一端部が接続されており、配線14の他端部はバッテリ5に接続されている。本実施例のコネクタ12は、本発明の配線接続部を構成する。
【0049】
DC-DCコンバータ10は、バッテリ5から供給された直流電力を低電圧の電力に変換する。例えば、DC-DCコンバータ10は、低電圧に変換した電力を、補機等に電力を供給するための図示しない低電圧バッテリに供給する。DC-DCコンバータ10は、図示しない配線によって低電圧バッテリに接続されている。
【0050】
図6に示すように、第3の端辺11cの延びる方向において、第1の切り欠き11kは、第2の切り欠き11mに対して第1の端辺11a側に設けられている。換言すれば、第3の端辺11cの延びる方向において、第2の切り欠き11mは、第1の切り欠き11kに対して第2の端辺11b側に設けられている。
【0051】
図6に示すように、第3のブラケット部11Cのうち、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mの延びる方向に対して直交する方向で第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mとを結んだ幅方向の部位の長さWは、第3のブラケット部11CとDC-DCコンバータ10の上下方向の距離T(図8参照)よりも短く形成されている。
【0052】
以下、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mとを結んだ第3のブラケット部11Cの部位を変形許容部位11uという。
【0053】
図6図7に示すように、第3の端辺11cの延びる方向において第1のブラケット部11Aと第1の切り欠き11kの間の第3のブラケット部11Cの部位を第3のブラケット部位11sとした場合に、第3のブラケット部位11sは、第3のブラケット部11Cよりも下方に位置している。
【0054】
次に、作用を説明する。
図10に示すように、後面衝突時には車両1の後方から車両1に衝撃荷重Fが加わる。車両1に衝撃荷重Fが加わると、スペアタイヤ6が収容室4に沿って前方に移動する。
【0055】
本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造は、DC-DCコンバータ10を支持し、前壁4Fと側壁4Rを跨がるようにしてリヤフロアパネル3に固定されるブラケット11を有する。
【0056】
ブラケット11は、リヤフロアパネル3から前壁4Fおよび側壁4Rよりも収容室4の上方に突出する第1のブラケット部11Aを有し、第1のブラケット部11Aは、水平面内でスペアタイヤ6の湾曲面6aに対向する第1の端辺11aを有する。
【0057】
これにより、スペアタイヤ6が前方に移動したときに、スペアタイヤ6の湾曲面6aを第1の端辺11aに衝突させ、スペアタイヤ6がDC-DCコンバータ10に衝突することを抑制できる。
【0058】
このため、車両1の後面衝突時にスペアタイヤ6からDC-DCコンバータ10に大きな衝撃荷重(図10の衝撃荷重F1参照)が加わることを抑制でき、DC-DCコンバータ10を保護できる。
【0059】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第1のブラケット部11Aがリヤフロアパネル3から前壁4Fおよび側壁4Rよりも収容室4の上方に突出しているので、ブラケット11に支持されるDC-DCコンバータ10をバッテリ5に近づけて設置できる。
【0060】
このため、バッテリ5とDC-DCコンバータ10を接続する配線14を短くでき、バッテリ5とDC-DCコンバータ10の間の送電損失を低減できる。また、配線14を短くできるので、配線14の設置スペースを低減できる。
【0061】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第1の端辺11aは、車両1の前後方向の仮想線1aに対して傾斜している。
【0062】
これに加えて、水平面内においてスペアタイヤ6の湾曲面6aと第1の端辺11aとを車両1の前後方向に結んだ直線は、第1の端辺11aの傾斜方向の中央部(図3の直線a)が最も短い。
【0063】
これにより、スペアタイヤ6が前方に移動したときに、最初に、第1の端辺11aの傾斜方向の中央部付近にスペアタイヤ6を衝突させることができる。
【0064】
このため、第1の端辺11aにスペアタイヤ6が衝突したときの衝撃荷重F1を第1の端辺11aの延びる方向に分散させて、第1のブラケット部11AによってDC-DCコンバータ10が受ける衝撃荷重F1を緩和できる。この結果、ブラケット11によってDC-DCコンバータ10をより効果的に保護できる。
【0065】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、ブラケット11は、DC-DCコンバータ10を挟んで第1のブラケット部11Aに対向する第2のブラケット部11Bと、DC-DCコンバータ10の下方に位置し、第1のブラケット部11Aと第2のブラケット部11Bとを連絡する第3のブラケット部11Cとを有する。
【0066】
第1のブラケット部11Aは、DC-DCコンバータ10を固定する第1の固定部11g、11hを有し、第2のブラケット部11Bは、第1の端辺11aと対向する第2の端辺11bと、DC-DCコンバータ10が固定される第2の固定部11iとを有する。
【0067】
これに加えて、第3のブラケット部11Cは、第1のブラケット部11Aと第2のブラケット部11Bの間に位置する第3の端辺11cと、第3の端辺11cから第1の端辺11aと平行に直線状に延びる第1の切り欠き11kと、第3の端辺11cの延びる方向において第1の切り欠き11kと第2のブラケット部11Bの間に設けられ、第3のブラケット部11Cをリヤフロアパネル3に固定する第3の固定部11nとを有する。
【0068】
これにより、スペアタイヤ6が第1の端辺11aに衝突したときに、第1の切り込み11kを起点として第3のブラケット部11Cを変形させることができる。
【0069】
このため、ブラケット11をリヤフロアパネル3に固定する第3の固定部11nに加わる衝撃荷重F1を緩和して、ブラケット11がリヤフロアパネル3から外れることを抑制できる。
【0070】
したがって、DC-DCコンバータ10がブラケット11と共に車両1の内壁等に衝突すること等を抑制して、DC-DCコンバータ10が衝突による衝撃荷重を受けることを抑制でき、ブラケット11によってDC-DCコンバータ10をより効果的に保護できる。
【0071】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第3のブラケット部11Cは、第1の端辺11aの延びる方向で第3の端辺11cに対向する第4の端辺11dと、第4の端辺11dから第1の端辺11aと平行に直線状に延びる第2の切り欠き11mとを有する。
【0072】
また、第3のブラケット部11Cは、第4の端辺11dの延びる方向において第2の切り欠き11mと第1のブラケット部11Aの間に設けられ、第3のブラケット部11Cをリヤフロアパネル3に固定する第4の固定部11pを有し、第4の固定部11pは、第3のブラケット部11Cから下方に膨出している。
【0073】
これに加えて、DC-DCコンバータ10は、コネクタ12を有し、コネクタ12は、第4の固定部11pの上方に設けられている。
【0074】
このため、スペアタイヤ6が第1の端辺11aに衝突したときに、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mを起点として第3のブラケット部11Cを変形させることができる。
【0075】
また、ブラケット11をリヤフロアパネル3に固定する第4の固定部11pは、第3のブラケット部11Cから下方に膨出することにより、第3のブラケット部11Cの中で剛性が高い部位である。これに加えて、コネクタ12が第4の固定部11pの上方に設けられている。
【0076】
これにより、第4の固定部11p側の第3のブラケット部11Cの変形量を第1の切り欠き11k側の第3のブラケット部11Cの変形量よりも小さくできる。
【0077】
これにより、コネクタ12が第4の固定部11p側の第1のブラケット部11Aに干渉することを抑制でき、コネクタ12が過剰に変形することや、配線14の張力で変形することを抑制でき、コネクタ12と配線14の接続を維持できる。
【0078】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第3の端辺11cの延びる方向において、第1の切り欠き11kは、第2の切り欠き11mに対して第1の端辺11a側に設けられている。
【0079】
ここで、第1の端辺11aの延びる方向で第1の切り欠き11k(図6の仮想線で示す)と第2の切り欠き11mとを同一軸線上に設けた場合、第1の切り欠き11kの終端と第2の切り欠き11mの終端とを結ぶ仮想線を仮想線dとする。
【0080】
これに対して、第1の切り欠き11kを第2の切り欠き11mに対して第1の端辺11a側に設けた場合に、第1の切り欠き11kの終端と第2の切り欠き11mの終端とを結ぶ仮想線を仮想線eとすると、e>dとなる。
【0081】
これにより、本実施例のブラケット11は、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mとを同一軸線上(仮想線d上)に設けた場合に比べて、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mの間で変形する第3のブラケット部11Cの部位の面積を広くできる。
【0082】
このため、第3のブラケット部11Cが大きく変形することにより、DC-DCコンバータ10が受ける衝撃荷重F1を緩和でき、ブラケット11によってDC-DCコンバータ10をより効果的に保護できる。
【0083】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第3のブラケット部11Cのうち、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mの延びる方向に対して直交する方向において第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mとを結んだ幅方向の長さwは、第3のブラケット部11CとDC-DCコンバータ10の上下方向の距離Tよりも短い。
【0084】
これにより、スペアタイヤ6から第1の端辺11aに衝撃荷重F1が加わることにより、第1の切り欠き11kと第2の切り欠き11mの間の変形許容部位11uが山状に変形した場合に(図9参照)、変形許容部位11uがDC-DCコンバータ10に衝突することを防止できる。
【0085】
このため、DC-DCコンバータ10が第3のブラケット部11Cから衝撃荷重F1を受けることを抑制でき、ブラケット11によってDC-DCコンバータ10をより効果的に保護できる。
【0086】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第3の端辺11cの延びる方向において第1のブラケット部11Aと第1の切り欠き11kの間の第3のブラケット部11Cの部位を第3のブラケット部位11sとした場合に、第3のブラケット部材11sは、第3のブラケット部11Cよりも下方に位置している。
【0087】
これにより、スペアタイヤ6から第1の端辺11aに衝撃荷重F1が加わるときに、第3のブラケット部11Cの下方に潜り込むように第3のブラケット部11Cを変形させることができる。
【0088】
これにより、第3のブラケット部11Cが上方に変形して潰れることを抑制でき、第3のブラケット部11CがDC-DCコンバータ10に衝突することを防止できる。
【0089】
このため、DC-DCコンバータ10が第3のブラケット部11Cから衝撃荷重F1を受けることを抑制でき、ブラケット11によってDC-DCコンバータ10をより効果的に保護できる。
【0090】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、第2の固定部11iは長穴を有し、長穴は、第1の端辺11aの傾斜面と直交する方向に延びている。
【0091】
これにより、スペアタイヤ6からブラケット11に加わる衝撃荷重によってブラケット11に支持されるDC-DCコンバータ10が移動する際に、DC-DCコンバータ10を長穴に沿って第2の端辺11bに移動させることができる。
【0092】
このため、DC-DCコンバータ10が直接受ける衝撃荷重F1を緩和できる。なお、第2の固定部11iは、少なくとも1つ以上であればよい。
【0093】
また、本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造によれば、スペアタイヤ6は、弾性部材からなるタイヤ6Bを有し、タイヤ6Bが湾曲面6aを有する。
【0094】
これにより、タイヤ6Bの湾曲面6aが第1の端辺11aに衝突した際に、湾曲面6aが弾性変形することによって第1の端辺11aに対する湾曲面6aの接触面を増大できる。
【0095】
このため、タイヤ6Bの湾曲面6aが第1の端辺11aに衝突したときの衝撃荷重F1を第1の端辺11aの延びる方向に分散でき、第1の端辺11aが歪に変形することを抑制できる。
【0096】
本実施例のDC-DCコンバータ10の保護構造は、電気回路をDC-DCコンバータ10から構成しているが、電気回路はDC-DCコンバータ10に限定されるものではない。また、車載部品をスペアタイヤ6から構成しているが、車載部品はスペアタイヤ6に限定されるものではない。
【0097】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0098】
1...車両、3...リヤフロアパネル、4...収容室、4B...底壁、4F...前壁、4L,4R...側壁、5...バッテリ、6...スペアタイヤ(車載部品)、6a...湾曲面(車載部材の湾曲する外周面)、10...DC-DCコンバータ(電気部品)、11...ブラケット、11A...第1のブラケット部、11a...第1の端辺(端辺)、11B...第2のブラケット部、11b...第2の端辺、11C...第3のブラケット部、11c...第3の端辺、11d...第4の端辺、11g,11h...第1の固定部、11i,11j...第2の固定部、11k...第1の切り欠き、11m...第2の切り欠き、11n...第3の固定部、11p...第4の固定部、11s...第3のブラケット部位、12...コネクタ(配線接続部)
図1
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図8
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図10