(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01R13/42 F
(21)【出願番号】P 2020109372
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 綾那
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-236777(JP,A)
【文献】特開平11-191446(JP,A)
【文献】特開平09-213401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在する電線の前方端部に接続される端子と、
前記端子を収容する収容部を有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの後端部に取り付けられるリアホルダと、を備えたコネクタであって、
前記リアホルダには、前記収容部に連通する連通開口と、当該リアホルダの後端部において外部に開口する後部開口とを、前記電線の延び方向に沿って挿通する挿通孔が形成されており、
前記挿通孔の壁面には、当該挿通孔の孔径を前記連通開口側に向けて縮小させるガイド傾斜面が設けられて
おり、
前記リアホルダは、
前記延び方向と交差する交差方向に前記挿通孔を開閉可能な蓋部と、
前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部と共に前記挿通孔を形成するホルダ本体部と、を備え、
前記蓋部は、ヒンジ部によって前記ホルダ本体部に連結されており、
前記ガイド傾斜面は前記蓋部ではなく前記ホルダ本体部に設けられている、コネクタ。
【請求項2】
前後方向に延在する電線の前方端部に接続される端子と、
前記端子を収容する収容部を有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの後端部に取り付けられるリアホルダと、を備えたコネクタであって、
前記リアホルダには、前記収容部に連通する連通開口と、当該リアホルダの後端部において外部に開口する後部開口とを、前記電線の延び方向に沿って挿通する挿通孔が形成されており、
前記挿通孔の壁面には、当該挿通孔の孔径を前記連通開口側に向けて縮小させるガイド傾斜面が設けられており、
前記リアホルダは、
前記延び方向と交差する交差方向に前記挿通孔を開閉可能な蓋部と、
前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部と共に前記挿通孔を形成するホルダ本体部と、を備え、
前記蓋部は、当該蓋部を閉じた状態で前記挿通孔の壁面の一部を構成する蓋側壁部を有し、
前記ホルダ本体部は、前記蓋部を閉じた状態で前記蓋側壁部と共に前記挿通孔の壁面を構成する本体側壁部を有し、
前記蓋部又は前記ホルダ本体部の一方には、前記蓋部を閉じた状態で前記本体側壁部又は前記蓋側壁部が圧入される壁受け部が形成されている
、コネクタ。
【請求項3】
前記蓋部は、ヒンジ部によって前記ホルダ本体部に連結されている、
請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電線の前端部に接続される端子と、端子を収容する収容部を有するコネクタハウジングと、コネクタハウジングの後方に取り付けられるリアホルダと、を備えたコネクタが開示されている。リアホルダは、コネクタハウジングに取り付けられた状態で収容部に連通する挿通孔を有し、端子は、端子本体と、端子本体の後方に配されたスライド部と、の2部品で構成されている。収容部に収容された端子に電線を接続するには、リアホルダの挿通孔から電線を挿入して、端子のスライド部さらには端子本体の内部に至らしめ、その後、スライド部を前方にスライドさせる。これにより、スライド部の加圧部が端子本体の挟持部を芯線に向けて押圧し、端子本体に芯線が圧着接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような端子を備えるコネクタでは、コネクタハウジングに収容された端子に、リアホルダを通して電線を挿入し、接続する。よって、リアホルダから端子の内部に電線を導きやすい構造が望まれる。
【0005】
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線を端子に挿入する作業の効率が向上されたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るコネクタは、前後方向に延在する電線の前方端部に接続される端子と、前記端子を収容する収容部を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後端部に取り付けられるリアホルダと、を備えたコネクタであって、前記リアホルダには、前記収容部に連通する連通開口と、当該リアホルダの後端部において外部に開口する後部開口とを、前記電線の延び方向に沿って挿通する挿通孔が形成されており、前記挿通孔の壁面には、当該挿通孔の孔径を前記連通開口側に向けて縮小させるガイド傾斜面が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電線を端子に挿入する作業の効率が向上されたコネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコネクタの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一部にコネクタの断面を模式的に示した斜視図である。
【
図3】
図3は、電線接続後のコネクタを示す断面図である(リアホルダの蓋部および後蓋部を閉じた状態)。
【
図5】
図5は、コネクタハウジングを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、リアホルダを示す斜視図である(蓋部および後蓋部を閉じた状態)。
【
図7】
図7は、リアホルダの一部を拡大して示す斜視図である(蓋部および後蓋部を閉じた状態)。
【
図8】
図8は、電線接続後のコネクタを示す断面図である(リアホルダの蓋部および後蓋部を開いた状態)。
【
図9】
図9は、リアホルダを示す斜視図である(蓋部および後蓋部を開いた状態)。
【
図10】
図10は、リアホルダの一部を拡大して示す斜視図である(蓋部および後蓋部を開いた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0010】
(1)本開示に係るコネクタは、前後方向に延在する電線の前方端部に接続される端子と、前記端子を収容する収容部を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの後端部に取り付けられるリアホルダと、を備えたコネクタであって、前記リアホルダには、前記収容部に連通する連通開口と、当該リアホルダの後端部において外部に開口する後部開口とを、前記電線の延び方向に沿って挿通する挿通孔が形成されており、前記挿通孔の壁面には、当該挿通孔の孔径を前記連通開口側に向けて縮小させるガイド傾斜面が設けられている。
【0011】
上記(1)の構成によれば、コネクタハウジングの収容部内に収容された端子に、リアホルダの挿通孔を通して電線を挿入して接続する場合、リアホルダの後部開口から挿通孔に挿入した電線を、ガイド傾斜面によってスムーズに連通開口へ、更には端子の内部へと導くことができる。この結果、電線を端子に挿入する作業の効率が向上する。
【0012】
(2)前記リアホルダは、前記延び方向と交差する交差方向に前記挿通孔を開閉可能な蓋部と、前記蓋部を閉じた状態で前記蓋部と共に前記挿通孔を形成するホルダ本体部と、を備えることが好ましい。
【0013】
上記(2)の構成によれば、常時は蓋部を閉じて挿通孔内の電線を保護する一方、必要時には蓋部を開いて挿通孔の少なくとも一部を交差方向に外部と連通させることで、挿通孔内に配された電線の切断や修理等を交差方向から行うことができる。これにより、例えば収容部内の端子に電線を接続した後はリアホルダをコネクタハウジングから取り外すことができない構造のコネクタでも、リアホルダの蓋部を開いて交差方向から電線を切断して端子と電線とを分離し、電線をリアホルダの後方に引抜くことが可能となる。
【0014】
(3)前記収容部に収容された前記端子の後端部は、前記蓋部を閉じた状態では前記蓋部によって覆われ、前記蓋部を開いた状態では前記交差方向に露出されて、前記端子は、前記蓋部を開いた状態で前記交差方向に取り出し可能に前記収容部内に収容されることが好ましい。
【0015】
上記(3)の構成によれば、常時は蓋部を閉じて端子と電線との接続部分を保護する一方、必要時には蓋部を開いて、電線を切り離した端子を交差方向に取り出すことができる。この結果、端子および電線のそれぞれをコネクタから容易に取り外し、端子や電線の交換や修理を行うことが可能となる。
【0016】
(4)前記蓋部は、ヒンジ部によって前記ホルダ本体部に連結されていることが好ましい。
【0017】
上記(4)の構成によれば、簡易な構成で、蓋部の紛失や位置ずれを抑制しつつ、必要に応じて容易に蓋部を開閉可能となる。
【0018】
(5)前記蓋部は、当該蓋部を閉じた状態で前記挿通孔の壁面の一部を構成する蓋側壁部を有し、前記ホルダ本体部は、前記蓋部を閉じた状態で前記蓋側壁部と共に前記挿通孔の壁面を構成する本体側壁部を有し、前記蓋部又は前記ホルダ本体部の一方には、前記蓋部を閉じた状態で前記本体側壁部又は前記蓋側壁部が圧入される壁受け部が形成されていることが好ましい。
【0019】
上記(5)の構成によれば、本体側壁部又は蓋側壁部が壁受け部に圧入されることで、別途ロック機構を設けなくても蓋部を安定的に閉じた状態に維持できる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態>
本開示の実施形態が
図1から
図10を参照しつつ説明される。以下の説明では、各図に付した矢線Zの示す向きを上とし、矢線Yの示す向きを前とし、矢線Xの示す向きを左として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
[コネクタ10]
図1および
図2に示されるように、本実施形態に係るコネクタ10は、電線11に接続される端子20と、複数の端子20を収容する複数の収容部41を有するコネクタハウジング40と、コネクタハウジング40に組み付けられるリアホルダ50と、を備える。
【0022】
[電線11]
図2および
図3に示されるように、電線11は、前後方向に延びて配される。電線11は、芯線13と、芯線13の外周を包囲する絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14と、を有する。本実施形態に係る芯線13は、1本の金属線からなる。なお、芯線13は複数の金属細線が撚り合わされてなる撚線であってもよい。芯線13を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態に係る芯線13は、銅又は銅合金からなる。電線11は、前端末において絶縁被覆14を剥がして芯線13を露出させた状態でコネクタ10に挿入され、露出された芯線13が、コネクタハウジング40内に収容された端子20に圧着される。
【0023】
[端子20]
図4等に示されるように、端子20は、金属製の端子本体21と、端子本体21に対して相対的にスライド移動可能なスライド部材31と、を備える。
【0024】
[端子本体21]
端子本体21は、金属板材に剪断加工および曲げ加工を施すことにより形成される。端子本体21を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態に係る端子本体21は、銅、又は銅合金からなる。端子本体21の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態に係る端子本体21にはスズめっきが施されている。
【0025】
図3および
図4に示されるように、端子本体21は、図示しない相手方端子が挿入可能な筒部22と、筒部22の後方に位置する端子窓部23と、端子窓部23の後方に位置する基部24と、基部24の後方に位置する接続部25と、備える。
【0026】
図4等に示されるように、筒部22は前後方向に延びる角筒状をなしている。
図4に示されるように、筒部22の前端は、相手方端子を挿入可能に開口されている。筒部22の内部には、図示しない弾性接触片が配されている。筒部22内に挿入された相手方端子に、弾性接触片が弾性的に接触することにより、筒部22と相手方端子とが電気的に接続される。
【0027】
図4等に示されるように、筒部22の後方であって、且つ、基部24の前方の位置には、上方に開口した端子窓部23が設けられている。
図3に示されるように、端子窓部23からは、後述する上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間の空間内に芯線13が配された状態で、芯線13の前端部を外部から検知可能とされている。
【0028】
図4等に示されるように、端子窓部23の後方に設けられた基部24は角筒状をなす。基部24の左側壁および右側壁には、外側に突出する係止突起27が設けられており、後述するスライド部材31の仮係止受け部34もしくは本係止受け部35に係止可能とされている(
図4参照)。
【0029】
図3に示されるように、基部24の上壁の後端からは、接続部25を構成する上側接続片25Aが後方に延びて設けられ、下壁の後端から、同じく接続部25を構成する下側接続片25Bが後方に延びて設けられている。上側接続片25Aと下側接続片25Bは、共に前後に延びた細長い形状をなし、基部24の後端を支点にして、先端側が上下方向に弾性変形可能となった片持ち状とされている。
図3に示されるように、上側接続片25Aの下面には、基部24寄りの位置に、下方に突出する上側保持突部25APが設けられている。また、下側接続片25Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部25BPが設けられている。接続部25において、上側保持突部25APと下側保持突部25BPは、前後方向について互いにずれた位置に、具体的には上側保持突部25APの後端よりも後方に下側保持突部25BPの前端が位置するように、設けられている。なお、上側接続片25Aの下面や下側接続片25Bの上面には、セレーション加工が施されていてもよい。
【0030】
[スライド部材31]
図4等に示されるように、スライド部材31は、前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部材31は、プレス加工、切削加工、鋳造等、公知の手法により所定の形状に形成される。スライド部材31を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態に係るスライド部材31は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部材31の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0031】
図4等に示されるように、スライド部材31の上壁の前端部には、上方に突出する治具接触部33が形成されている。
図3に示されるように、治具接触部33には、治具Tが後方から接触可能とされている。後述するコネクタハウジング40の収容部41内に端子20を収容し、治具Tを治具接触部33に接触させて前方に押すと、収容部41内においてスライド部材31が前方に移動する。後述する凹部41Aにより、端子本体21は収容部41に前方に移動不能に収容されるため、スライド部材31は端子本体21に対して相対的に移動することとなる。なお、上記の治具Tは、金型や、この金型を稼働させるための設備に比べて、比較的に小規模なものとなっている。このため、治具Tに起因するコストの増大が抑制される。
【0032】
図3に示されるように、スライド部材31上壁の後寄りの部分には、下方に突出する上側加圧部32Aが設けられている。そして、スライド部材31の下壁において上側加圧部32Aと対向する位置には、上方に突出する下側加圧部32Bが設けられている。上側加圧部32Aおよび下側加圧部32Bの前端部には、傾斜面が形成されている。これにより、上側接続片25Aの後端部および下側接続片25Bの後端部が、それぞれ、上側加圧部32Aの下方および下側加圧部32Bの上方へとガイドされる。
【0033】
図4に示されるように、スライド部材31の側壁には、前後方向の前寄りの位置に、仮係止受け部34が開口されている。また、スライド部材31の側壁には、仮係止受け部34よりも後方の位置に、本係止受け部35が開口されている。仮係止受け部34と、本係止受け部35には、端子本体21の左側壁および右側壁のそれぞれに設けられた係止突起27が弾性的に係止可能になっている。これにより、スライド部材31は、端子本体21のうち上側接続片25Aと下側接続片25Bとが設けられた領域に外嵌された状態で、
仮係止位置と本係止位置との間を、前後方向にスライド移動可能とされている。
【0034】
端子本体21の係止突起27とスライド部材31の仮係止受け部34とが係止した状態では、端子本体21に対してスライド部材31が仮係止位置に保持される。この状態において、スライド部材31の上側加圧部32Aおよび下側加圧部32Bは、端子本体21の上側接続片25Aおよび下側接続片25Bの後端よりも後方に位置する。また、この状態において、上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間の間隔は、芯線13の直径よりも大きく設定されている。
【0035】
端子本体21の係止突起27とスライド部材31の本係止受け部35とが係止した状態では、端子本体21に対してスライド部材31が本係止位置に係止される(
図3等参照)。この状態においては、スライド部材31の上側加圧部32Aは、上方から上側接続片25Aを加圧する。また、スライド部材31の下側加圧部32Bは、下方から下側接続片25Bを加圧する。
【0036】
図4等に示されるように、スライド部材31の後寄りの位置には、左右両側壁に、スライド部材31の内方に突出する一対の誘い込み部36が設けられている。誘い込み部36は、後方から前方に向かうに従って幅狭に形成されている。誘い込み部36の内面に芯線13が摺接することにより、芯線13はスライド部材31の内部へと案内される。
【0037】
[コネクタハウジング40]
図5等に示されるように、コネクタハウジング40は、上下方向に扁平であって左右方向に延びた略直方体形状をなしている。コネクタハウジング40は絶縁性の合成樹脂を射出成型することにより形成される。コネクタハウジング40には、端子20を収容する前後方向に延びた複数の収容部41が、左右方向に間隔を空けて並列されると共に、上下に2段に重ねられている。上段に形成された各収容部41と、下段に形成された各収容部41とは、左右にずれた位置に配されている。なお、収容部41の個数は任意であり、また、上下に重ねられる場合の段数も任意である。
【0038】
図3および
図5等に示されるように、収容部41の前端は前方に開口しており、相手方端子を挿入可能になっている。また、
図5等に示されるように、収容部41の後端は後方に開口しており、端子20を後方から収容可能になっている。
図3に示されるように、収容部41の前端部には、前述した筒部22の前端角部に沿う形状の凹部41Aが形成されている。収容部41内に後方から端子20が挿入され収容されると、凹部41Aによって端子本体21の前方への移動が規制される。
【0039】
図2および
図5等に示されるように、収容部41には、端子20が収容された状態で端子本体21の端子窓部23に対応する位置から、後端に至る領域に、外部と連通するコネクタ窓部42が形成されている。このコネクタ窓部42を通して、収容部41に収容された端子20の端子窓部23内をコネクタ10の外部から検知可能とされている。これにより、コネクタ窓部42および端子窓部23を通して、端子20に接続された芯線13の前端部を外部から検知できる。また、コネクタ窓部42により、端子本体21の基部24に外篏されたスライド部材31の前端部が外部に露出される。これにより、
図3に示されるように、収容部41内に収容された端子20の治具接触部33に治具Tを接触させ、スライド部材31を前方にスライドさせることが可能とされている。
【0040】
図3および
図5に示されるように、コネクタハウジング40は、上段に形成された収容部41と下段に形成された収容部41との間を仕切る隔壁43を有する。隔壁43は、収容部41の後端から後方に延出されている。この隔壁43により、上下方向に隣り合う収容部41に収容された端子20同士が電気的に絶縁されるようになっている。また
、隔壁43の上面及び下面には、それぞれ、前後方向に延びると共に上下に突出した仕切り壁44が設けられている。この仕切り壁44により、左右方向に隣り合う収容部41に収容された端子20同士が電気的に絶縁されるようになっている。
【0041】
図5に示されるように、コネクタハウジング40の左右両側壁の後端寄りの位置には、外方に突出する仮係止ロック部45が設けられており、この仮係止ロック部45よりも前方の位置には、同じく外方に突出する本係止ロック部46が設けられている。
【0042】
[リアホルダ50]
図6等に示されるように、リアホルダ50は、上下方向に扁平であって左右方向に延びた略直方体形状をなす。リアホルダ50は、絶縁性の合成樹脂を射出成型することにより形成される。リアホルダ50は、コネクタハウジング40の後端部に外嵌されるようになっている。リアホルダ50の左右両側壁の前端部寄りの位置には、コネクタハウジング40の仮係止ロック部45および本係止ロック部46に弾性的に係止可能なロック受け部57が設けられている。ロック受け部57は、概ね門形状をなしている。
【0043】
コネクタハウジング40の仮係止ロック部45と、リアホルダ50のロック受け部57とが係止することにより、リアホルダ50はコネクタハウジング40に対して仮係止位置に保持される。また、
図1に示されるように、コネクタハウジング40の本係止ロック部46と、リアホルダ50のロック受け部57とが係止することにより、リアホルダ50はコネクタハウジング40に対して本係止位置に保持される。
【0044】
図7等に示されるように、リアホルダ50には、電線11が挿通される複数の挿通孔61が、左右方向に並列すると共に、上下に2段に並んで設けられている。挿通孔61は、コネクタハウジング40の収容部41に対応する位置に設けられている。
図3等に示されるように、挿通孔61は前後方向に延びて形成される。挿通孔61は、リアホルダ50の前側に開口しコネクタハウジング40に取り付けられた状態で収容部41に連通する連通開口61Aと、リアホルダ50の後側において外部に開口する後部開口61Bとの間を挿通する。
図3等に示されるように、挿通孔61の内部に電線11が配され、収容部41内の端子20に接続される。
【0045】
さて、
図3等に示されるように、挿通孔61の壁面には、後部開口61B側から連通開口61A側に向かって挿通孔61の孔径を縮小させるガイド傾斜面62が設けられている。本実施形態では、ガイド傾斜面62は、挿通孔61の連通開口61A寄りの位置に設けられている。本実施形態において、ガイド傾斜面62が設けられている側の挿通孔61の壁面は、後部開口61Bからガイド傾斜面62を通って連通開口61Aに至るまで、滑らかにつながるように形成されている。このように形成された壁面に沿わせながら芯線13を押し込むことで、スムーズに連通開口61Aに導くことができる。
【0046】
図3等に示されるように、本実施形態において、連通開口61Aの開口面積は、後部開口61Bの開口面積より小さく設定されている。本実施形態では、連通開口61Aおよび後部開口61Bの形状を、電線11および芯線13の断面形状に合わせて円形としている。本実施形態では、前端末において絶縁被覆14を剥がして芯線13を露出させた状態で、電線11を挿通孔61に挿入し、芯線13の露出部分のみを収容部41内に収容された端子20の内部に至らしめて、端子20を芯線13に圧着する。端子20と電線11とをこのように接続する場合、連通開口61Aの直径は、芯線13の直径以上、例えば芯線13の直径の1.0倍~2.0倍、より詳しくは1.3倍~1.6倍とすることが好ましい。他方、後部開口61Bの直径は、絶縁被覆14を含む電線11の直径以上、例えば電線11の直径の1.5倍~3.5倍、より詳しくは2.7倍~3.0倍とすることが好ましい。このような範囲であれば、電線11を後部開口61Bから容易に挿入すると共に、電線11の前端末において露出させた芯線13を、連通開口61Aを通して収容部41内に収容された端子20の内部へと容易に導くことができる。
図3等に示されるように、本実施形態では、ガイド傾斜面62より前寄りの位置における挿通孔61の孔径(直径)が、絶縁被覆14を含む電線11の直径より小さくなるように形成されている。
【0047】
図6等に示されるように、リアホルダ50の上壁および下壁には、それぞれの前端部を上方もしくは下方に開閉可能な蓋部52が設けられている。蓋部52は、
ヒンジ部51を介してホルダ本体部55に連結されている。リアホルダ50の上壁および下壁にはまた、それぞれの後端部を上方もしくは下方に開閉可能な後蓋部54が設けられている。後蓋部54は、後ヒンジ部53を介してホルダ本体部55に連結されている。
図3および
図8等に示されるように、ヒンジ部51および後ヒンジ部53は、リアホルダ50の上壁もしくは下壁の一部が薄肉とされることで、ホルダ本体部55に対して蓋部52および後蓋部54を折り曲げ可能に連結している。
図3および
図8等に示されるように、リアホルダ50内の挿通孔61は、ヒンジ部51を介してホルダ本体部55に連結された蓋部52により、電線11の延び方向である前後方向と交差する上下方向(交差方向)に開閉可能とされている。なお、
図3等に示されるように、本実施形態では、ヒンジ部51は、挿通孔61を挟んでガイド傾斜面62と対向する位置に設けられている。
【0048】
図7から
図10等に示されるように、リアホルダ50の前端部に形成される蓋部52は、蓋側壁部52Aと、フード部52Bと、を有する。
図3にも示されるように、蓋側壁部52Aは、蓋部52を閉じた状態で挿通孔61の壁面の一部を構成する。フード部52Bは、蓋部52を閉じた状態で連通開口61Aの上方もしくは下方において前方に張り出すように形成されている。また、
図7から
図10等に示されるように、ホルダ本体部55は、本体側壁部55Aと、壁受け部55Bと、を有する。本体側壁部55Aは、蓋部52を閉じた状態で蓋側壁部52Aと共に挿通孔61を形成する。また、
図7等に示されるように、蓋部52が閉じられると、各蓋側壁部52Aが、これに対応する本体側壁部55Aの左右に設けられた壁受け部55Bの間に一定の力を受けながら押し込まれ、圧入されるようになっている。
【0049】
図7等に示されるように、リアホルダ50において、上段の挿通孔61を形成する本体側壁部55Aと、下段の挿通孔61を形成する本体側壁部55Aとは、上下に間隔を空けて配されている。上段の蓋側壁部52Aと下段の蓋側壁部52Aとの間は後方に凹んでおり、上下方向の間隔は、前述したコネクタハウジング40の隔壁43の上下方向の厚さ寸法を同じか、やや大きく設定されている。
図3および
図8に示されるように、リアホルダ50がコネクタハウジング40に対して本係止位置に保持された状態では、リアホルダ50の上段の本体側壁部55Aと下段の本体側壁部55Aとの間に、コネクタハウジング40の隔壁43が嵌入される。これにより、リアホルダ50がコネクタハウジング40に対して上下方向に位置ずれすることが抑制される。
【0050】
図3に示されるように、リアホルダ50がコネクタハウジング40に対して本係止位置に保持され蓋部52が閉じられた状態では、コネクタハウジング40の収容部41内に収容された端子20の後端20Aは、フード部52Bによって上方もしくは下方から覆われる。また、
図8に示されるように、リアホルダ50がコネクタハウジング40に対して本係止位置に保持され蓋部52が開かれた状態では、コネクタハウジング40の収容部41内に収容された端子20の後端20Aは、上方もしくは下方に露出される。本実施形態では、開閉可能な蓋部52の前後方向の長さ(フード部52Bの前端からヒンジ部51までの距離)が、コネクタハウジング40の上壁で覆われた端子20の前端部の長さ(筒部22の前後方向の長さ)に相当するように設定されている。これにより、蓋部52を開いて収容部41内に収容された端子20を後方にスライドさせると、リアホルダ50をコネクタハウジング40に対して本係止位置に維持しながら、端子20を上方もしくは下方に取り出すことができるようになっている。
【0051】
図6および
図9に示されるように、リアホルダ50の後端部に形成される後蓋部54の左右側端には、後蓋部54をロックする後蓋ロック機構が設けられている。本実施形態では、リアホルダ50の下壁に設けられた後蓋部54の左右側端に、外方に突出する後蓋ロック部58が設けられ、上壁に設けられた後蓋部54の左右側端に、概ね門形状をなす後蓋ロック受け部59が設けられている。
図6に示されるように、後蓋ロック受け部59は、上下壁に設けられた後蓋部54を閉じた状態で、後蓋ロック部58に弾性的に係止可能とされている。後蓋部54が設けられていることにより、リアホルダ50への電線11の挿入が容易となる。また、後蓋ロック機構が設けられていることにより、電線11を挿入して接続した後は、安定的に後蓋部54を閉じた状態に維持し、後部開口61Bから後方に延出する電線11の挿入基部を保護することができる。
【0052】
[コネクタ10の組み立て工程]
続いて、本実施形態に係るコネクタ10の組み立て工程の一例について説明する。コネクタ10の組み立て工程は以下の記述に限定されない。
【0053】
公知の手法により、端子本体21と、スライド部材31とを形成し、端子本体21に対して、後方からスライド部材31を組み付ける。端子本体21の係止突起27に後方からスライド部材31の前端縁が当接すると、スライド部材31の側壁が拡開変形する。更にスライド部材31を前方に押し込むと、端子本体21の係止突起27がスライド部材31の仮係止受け部34に係止して、スライド部材31の側壁が復帰変形する。これにより、端子本体21に対してスライド部材31が仮係止位置に保持された端子20が得られる。
【0054】
合成樹脂を射出成型することにより、コネクタハウジング40とリアホルダ50とを形成し、コネクタハウジング40の収容部41内に、後方から端子20を挿入する。
【0055】
コネクタハウジング40の後端部に、後方からリアホルダ50を組み付ける。コネクタハウジング40の仮係止ロック部45に、リアホルダ50のロック受け部57が後方から当接すると、リアホルダ50のロック受け部57が拡開変形する。更にリアホルダ50を前方に押し込むと、コネクタハウジング40の仮係止ロック部45がリアホルダ50のロック受け部57に弾性的に係止し、リアホルダ50のロック受け部57が復帰変形する。これにより、リアホルダ50が、コネクタハウジング40に対して仮係止位置に保持される。
【0056】
電線11の前端末において絶縁被覆14を皮剥ぎすることにより、所定の長さ寸法の芯線13を露出させる。芯線13が露出された電線11の前端部を、リアホルダ50後端部の後部開口61Bから挿通孔61内に挿入する。
【0057】
電線11を更に前方に押し込むと、芯線13の前端部はリアホルダ50の挿通孔61を通り、ガイド傾斜面62に沿って案内されながら連通開口61Aから前方に突出し、収容部41内に収容されたスライド部材31の内部へと導入される。芯線13はスライド部材31の誘い込み部36と当接し、スライド部材31へと案内される。更に電線11を前方に押し込むと、芯線13の前端部は端子本体21の内部へと進入して上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間の空間内に至る。
【0058】
更に電線11を前方に押し込むと、芯線13の前端部は端子本体21の端子窓部23の下方の位置へと到達する。芯線13の前端部がこの位置に到達すると、コネクタ窓部42から検知可能な端子窓部23内において、目視、プローブ等により検知できる。この状態で、リアホルダ50の挿通孔61内において、電線11の絶縁被覆14は、ガイド傾斜面62よりも後方に位置している。
【0059】
スライド部材31が端子本体21に対して仮係止位置に保持され、リアホルダ50がコネクタハウジング40に対して仮係止位置に保持された状態で、上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間隔は、芯線13の外径寸法よりも大きく設定されている。よって、芯線13は、上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間にスムーズに挿入される。
【0060】
次に、コネクタ窓部42を通して、スライド部材31の治具接触部33に後方から治具Tを当接させ、スライド部材31を前方に移動させる。収容部41内に収容された端子20では、筒部22の前端角部が収容部41の前端部に設けられた凹部41Aに当接して端子本体21の前方への移動が規制されている。よって、前方に移動させることにより、スライド部材31は端子本体21に対して移動する。これにより、端子本体21の係止突起27と、スライド部材31の仮係止受け部34との係止が外れ、スライド部材31の側壁が係止突起27に乗り上げて拡開変形する。更に治具Tによってスライド部材31を前方に押すと、端子本体21の係止突起27と、スライド部材31の本係止受け部35とが弾性的に係止して、スライド部材31の側壁が復帰変形する。これにより、スライド部材31が端子本体21に対して本係止位置に保持される(
図4等参照)。
【0061】
図3に示されるように、スライド部材31が端子本体21に対し本係止位置に保持された状態では、スライド部材31の上側加圧部32Aが上方から上側接続片25Aを押圧することによって上側接続片25Aが下方に屈曲する。また、下側加圧部32Bが下方から下側接続片25Bを押圧することによって下側接続片25Bが上方に屈曲する。これにより、芯線13が、上側接続片25Aと下側接続片25Bに上下から挟持される。芯線13は、上側接続片25Aの上側保持突部25APと、下側接続片25Bの下側保持突部25BPとに挟まれることにより、前後方向に延び上下方向に屈曲した状態で保持される。このとき、上側保持突部25APの下面や下側保持突部25BPの上面が、芯線13に押し当てられ、芯線13の表面に形成された酸化被膜を剥がすことで、芯線13を構成する金属表面が露出する。この金属表面と、上側接続片25A及び下側接続片25Bが接触することにより、電線11と端子20とが電気的に接続される。また、上側保持突部25APや下側保持突部25BPの角部等が芯線13に食い込むことにより、芯線13がしっかりと端子20内に保持される。
【0062】
続いて、リアホルダ50を前方に押圧する。リアホルダ50のロック受け部57は、コネクタハウジング40の本係止ロック部46に乗り上げて拡開変形する。更にリアホルダ50を前方に押圧すると、コネクタハウジング40の本係止ロック部46が、リアホルダ50のロック受け部57に係止して、ロック受け部57が復帰変形する。以上により、リアホルダ50がコネクタハウジング40に対して本係止位置に保持され(
図1等参照)、コネクタ10の組み立てが完了する。
【0063】
[コネクタ10における端子20の交換工程]
続いて、本実施形態に係るコネクタ10における端子20等の交換工程の一例について説明する。コネクタ10における端子20等の交換工程は以下の記述に限定されない。
【0064】
図3に示されるように、コネクタ10では、ガイド傾斜面62よりも前寄りの位置における挿通孔61の孔径(直径)は、絶縁被覆14を含む電線11の直径よりも小さくなるように形成されている。そして、芯線13が端子20に接続された状態で、絶縁被覆14はガイド傾斜面62より後寄りに位置している。このため、芯線13を端子20に接続した状態で、リアホルダ50を後方に移動させようとすると、絶縁被覆14がガイド傾斜面62を含む挿通孔61の壁面に引っ掛かり、リアホルダ50をコネクタハウジング40から取り外せないことがある。
【0065】
そこで、コネクタ10において電線11を接続した後に端子20を交換する際には、ヒンジ部51を折り曲げて、リアホルダ50前端部の蓋部52を上方もしくは下方に開く(
図8参照)。これにより、挿通孔61内に保持された電線11の一部(芯線13)が、上方もしくは下方に(交差方向に)露出される。
【0066】
次に、コネクタ10の上方もしくは下方から、露出した芯線13を切断する。端子20と分離した電線11を、後部開口61Bを通ってリアホルダ50の後方に抜き取る。一方、端子20は、蓋側壁部52Aが移動したことによって上方もしくは下方に開かれた挿通孔61の前端部を利用して後方に移動させ、コネクタ窓部42を通して上方もしくは下方に抜き取る。
【0067】
端子本体21とスライド部材31とが仮係止位置に保持された新たな端子20と、所定の長さ寸法の芯線13を露出させた新たな電線11を準備する。
【0068】
端子20および電線11を抜き取った収容部41内に、リアホルダ50の蓋部52を開いた状態で、コネクタ窓部42から新たな端子20を嵌め込み、前方に移動させて所定位置に収容する。
【0069】
新たな端子20を収容後、開いていた蓋部52を閉じて、新たな電線11の前端部を、リアホルダ50の後方からリアホルダ50後端部の後部開口61Bから挿通孔61内に挿入する。更に電線11を押し込んで、芯線13を上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間の空間内に至らしめ、上記と同じ手順でスライド部材31を端子本体21に対して本係止位置に移動させて、電線11を端子20に接続する。以上により、リアホルダ50をコネクタハウジング40から取り外すことなく、端子20および電線11の交換が完了する。
【0070】
[実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係るコネクタ10は、前後方向に延在する電線11の前方端部に接続される端子20と、端子20を収容する収容部41を有するコネクタハウジング40と、電線11の延び方向についてコネクタハウジング40の後端部に取り付けられるリアホルダ50と、を備えたコネクタであって、リアホルダ50には、収容部41に連通する連通開口61Aと、当該リアホルダ50の後端部において外部に開口する後部開口61Bとを、前記延び方向に沿って挿通する挿通孔61が形成されており、挿通孔61の壁面には、当該挿通孔61の孔径を連通開口61A側に向けて縮小させるガイド傾斜面62が設けられている。
【0071】
本実施形態の構成によれば、コネクタハウジング40の収容部41内に収容された端子20に、リアホルダ50の挿通孔61を通して電線11を挿入して接続する場合、リアホルダ50の後部開口61Bから挿通孔61に挿入した電線11を、ガイド傾斜面62により、スムーズに連通開口61Aから端子20の内部へと導くことができる。この結果、電線11を端子20に挿入する作業の効率が向上する。
【0072】
また、本実施形態に係るコネクタ10において、リアホルダ50は、前記延び方向と交差する交差方向に挿通孔61を開閉可能な蓋部52と、蓋部52を閉じた状態で蓋部52と共に挿通孔61を形成するホルダ本体部55と、を備える。
【0073】
本実施形態の構成によれば、常時は蓋部52を閉じて挿通孔61内の電線11を保護する一方、必要時には蓋部52を開いて挿通孔61の少なくとも一部を交差方向に外部と連通させることで、挿通孔61内に配された電線11の切断や修理等を交差方向から行うことができる。本実施形態に係るコネクタ10では、ガイド傾斜面62の前方における挿通孔61の孔径が絶縁被覆14を有する電線11の直径より小さいため、収容部41内の端子20に電線11を接続した後にリアホルダ50をコネクタハウジング40に対して後方に移動させることが難しい場合がある。このような場合でも、リアホルダ50の蓋部52を開いて交差方向から電線11を切断して端子20と電線11とを分離し、電線11をリアホルダ50の後方に引抜くことが可能となる。
【0074】
また、本実施形態に係るコネクタ10において、蓋部52が閉じた状態では、収容部41に収容された端子20の後端20Aは蓋部52によって覆われ、蓋部52が開いた状態では、収容部41に収容された端子20の後端20Aは前記交差方向に露出され、端子20は、蓋部52が開いた状態で前記交差方向に取り出し可能に収容部41内に収容される。
【0075】
本実施形態の構成によれば、常時は蓋部52を閉じて端子20と電線11との接続部分を保護する一方、必要時には蓋部52を開いて、電線11を切り離した端子20を交差方向に取り出すことができる。この結果、端子20および電線11のそれぞれをコネクタ10から容易に取り外して、端子や電線の交換や修理を行うことが可能となる。
【0076】
また、本実施形態に係るコネクタ10において、蓋部52は、ヒンジ部51によってホルダ本体部55に連結されている。
【0077】
本実施形態の構成によれば、簡易な構成で、蓋部52の紛失や位置ずれを抑制しつつ、必要に応じて容易に蓋部52を開閉可能となる。
【0078】
また、本実施形態に係るコネクタ10において、蓋部52は、当該蓋部52を閉じた状態で挿通孔61の壁面の一部を構成する蓋側壁部52Aを有し、ホルダ本体部55は、蓋部52を閉じた状態で蓋側壁部52Aと共に挿通孔61の壁面を構成する本体側壁部55Aを有し、蓋部52又はホルダ本体部55の一方には、蓋部52を閉じた状態で本体側壁部55A又は蓋側壁部52Aが圧入される壁受け部55Bが形成されている。
【0079】
本実施形態の構成によれば、本体側壁部55A又は蓋側壁部52Aが壁受け部55Bに圧入されることで、別途ロック機構を設けなくても蓋部52を安定的に閉じた状態に維持できる。
【0080】
<他の実施形態>
本開示は上記記述および図面によって説明された実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0081】
(1)上記実施形態では、端子本体21とスライド部材31とを備える端子20を収容するコネクタ10について記載した。このような端子20を用いれば、簡易かつコンパクトな構成で電線11を端子20に接続できるところ、この端子20を備えるコネクタ10において本技術は特に有用である。すなわち、コネクタハウジングの収容部内に収容され端子に、リアホルダを通して電線を挿入して接続するような構成のコネクタにおいて、本技術は有用である。しかしながら、本技術に係るコネクタに収容される端子の構造は、特に限定されるものではなく、本技術は、多様な構造の端子を収容するコネクタに適用可能である。
【0082】
(2) 上記実施形態では、複数の端子20を収容するコネクタ10について記載した。しかしながら、本技術に係るコネクタに収容される端子の数は、特に限定されるものではなく、1つの端子のみを収容するコネクタにも、本技術は適用可能である。また、コネクタが複数の端子を収容するものである場合、リアホルダに設けられた複数の挿通孔の全てが、それぞれ本技術に係る構成を有していてもよく、複数の挿通孔の一部のみが、本技術に係る構成を有していてもよい。
例えば上記実施形態において、複数の挿通孔の全てにおいて、それぞれ当該挿通孔の壁面を構成する蓋側壁部又は本体側壁部が壁受け部に圧入されるように構成されていてもよい。このようにすれば、蓋部を安定的に閉じた状態に維持できる。しかしながら、このような構成に限定されることはなく、例えば、複数の挿通孔のうち、一定の間隔で設けられた一部の挿通孔のみにおいて、蓋側壁部又は本体側壁部が壁受け部に圧入されるように構成してもよい。このようにすれば、構造を簡素化しながら、蓋部を閉じた状態に維持できる。或いは、複数の挿通孔のうち、一部の挿通孔では、蓋側壁部がホルダ本体部に設けられた壁受け部に圧入され、他の一部の挿通孔では、本体側壁部が蓋部に設けられた壁受け部に圧入されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10: コネクタ
11: 電線
13: 芯線
14: 絶縁被覆
20: 端子
20A: (端子の)後端
21: 端子本体
22: 筒部
23: 端子窓部
24: 基部
25: 接続部
25A: 上側接続片
25AP: 上側保持突部
25B: 下側接続片
25BP: 下側保持突部
27: 係止突起
31: スライド部材
32A: 上側加圧部
32B: 下側加圧部
33: 治具接触部
34: 仮係止受け部
35: 本係止受け部
36: 誘い込み部
40: コネクタハウジング
41: 収容部
41A: 凹部
42: コネクタ窓部
43: 隔壁
44: 仕切り壁
45: 仮係止ロック部
46: 本係止ロック部
50: リアホルダ
51: ヒンジ部
52: 蓋部
52A: 蓋側壁部
52B: フード部
53: 後ヒンジ部
54: 後蓋部
55: ホルダ本体部
55A: 本体側壁部
55B: 壁受け部
57: ロック受け部
58: 後蓋ロック部
59: 後蓋ロック受け部
61: 挿通孔
61A: 連通開口
61B: 後部開口
62: ガイド傾斜面
T: 治具