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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタの製作方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/28 20060101AFI20231212BHJP
   B60R 22/46 20060101ALI20231212BHJP
   B60R 22/38 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60R22/28 107
B60R22/46 142
B60R22/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020114183
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012378
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 竜也
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-062957(JP,A)
【文献】特開平10-166999(JP,A)
【文献】特開2000-309249(JP,A)
【文献】特開平10-250529(JP,A)
【文献】特表2001-521852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/28
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトリトラクタのスプールの内孔にロッキングベース付きトーションバーを差し込む差し込み工程を有するシートベルトリトラクタの製作方法であって、
該トーションバーの差し込み方向先端側には非円形部が設けられ、
該スプールの該内孔には、該非円形部に係合する非円形孔部が設けられており、
前記ロッキングベースには、前記トーションバーの軸心線方向に螺進可能な非円形のストッパ部材が螺着されており、
前記内孔には、該ストッパ部材が係合する係合部が内孔の軸心線と平行方向に設けられており、
前記差し込み工程においては、該ストッパ部材を該係合部に係合させ、該非円形部を該非円形孔部に係合させるように前記ロッキングベース付きトーションバーを前記内孔に差し込み、
該差し込み工程に先行して、該ストッパ部材を設定位置に配置しておき、この状態で前記非円形部の正規位相からのズレを検知するズレ検知工程を行い、
このズレを解消するように前記トーションバーをねじり変形させるねじり工程を行った後、前記差し込み工程を行うことを特徴とするシートベルトリトラクタの製作方法。
【請求項2】
前記ロッキングベースと第1治具とを係合させ、前記非円形部と第2治具とを係合させ、該第1治具及び該第2治具を介して前記トーションバーにねじり方向に力を加えて前記ねじり工程を行うことを特徴とする請求項1のシートベルトリトラクタの製作方法。
【請求項3】
前記ロッキングベースと前記第1治具とを、該ロッキングベースに設けられたパウルを介して一体化させることを特徴とする請求項2のシートベルトリトラクタの製作方法。
【請求項4】
前記ねじり工程におけるトーションバーの軸心線周りのねじり角度が120゜未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれかのシートベルトリトラクタの製作方法。
【請求項5】
前記ロッキングベースは、
前記トーションバーと同軸状のカラムと、
該カラムの外周面に設けられ、前記ストッパ部材が螺合した雄ネジと、
該カラムの軸心線方向の一端側から拡開する形状のフランジと
を有しており、
前記設定位置は、該ストッパ部材が螺進して該フランジに当接するまでの回転数が所定値となる位置であることを特徴とする請求項1~4のいずれかのシートベルトリトラクタの製作方法。
【請求項6】
前記ズレ検知工程では、撮像装置を用いて前記ズレを検知することを特徴とする請求項1~5のいずれかのシートベルトリトラクタの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に用いられるEAストップ機構付きのシートベルトリトラクタの製作方法に関するものであり、特にスプールにトーションバーが組み込まれたシートベルトリトラクタの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリテンショナ付きのシートベルトリトラクタとして、トーションバーをスプールの内孔に挿通し、該トーションバーの一端をスプールに固定可能とし、トーションバーの他端をシートベルトリトラクタのフレームに係止可能としたシートベルトリトラクタが公知である(特許文献1、2)。車両の衝突時等の緊急時には、スプールがプリテンショナによって回転駆動されてウェビングが巻き取られる。その後、該スプールに対しウェビング巻出し方向の力が加えられることによりトーションバーがねじられ、スプールが徐々に回転し、ウェビングが徐々に引き出される。これにより、乗員の身体に加えられる運動エネルギーの一部がトーションバーのねじりによって吸収され、衝撃が緩和される。
【0003】
特許文献1には、トーションバーのねじり量を該トーションバーに螺合したストッパの移動によって制限することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-222100号公報
【文献】特開2017-154525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシートベルトリトラクタは、製作時にストッパの位置が設定位置からずれてしまい、トーションバーのねじれ量が目的量から乖離するおそれがあった。即ち、特許文献1においては、ロッキングベースとストッパのネジ部の位相管理については考慮されておらず、ロッキングベースのフランジ部とストッパを所定の離隔距離になるように組み付けた場合、ストッパのギア部のロッキングベースに対する位相(角度)は規制できない。一方、ロッキングベースに対するスプールの位相は、両端をそれぞれロッキングベース・スプールに多角形形状で嵌合するトーションバーにより規制される。このため、ロッキングベース・ストッパ・スプール・トーションバーの4部品を組み付ける際、ストッパをスプールに嵌合できる位置までいずれかの方向に回転させる必要があり、その際ストッパが螺進することでロッキングベースのフランジ部から離隔距離にズレ・バラつきが生じる。トーションバー端部が六角形の場合、最大60度(360度÷6)のバラつきが生じる。
【0006】
本発明は、EA作動時のトーションバーのねじれ制限量が正確に目的量となるシートベルトリトラクタの製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシートベルトリトラクタの製作方法は、シートベルトリトラクタのスプールの内孔にロッキングベース付きトーションバーを差し込む差し込み工程を有し、
該トーションバーの差し込み方向先端側には非円形部が設けられ、
該スプールの該内孔には、該非円形部に係合する非円形孔部が設けられており、
前記ロッキングベースには、前記トーションバーの軸心線方向に螺進可能な非円形のストッパ部材が螺着されており、
前記内孔には、該ストッパ部材が係合する係合部が内孔の軸心線と平行方向に設けられており、
前記差し込み工程においては、該ストッパ部材を該係合部に係合させ、該非円形部を該非円形孔部に係合させるように前記ロッキングベース付きトーションバーを前記内孔に差し込むシートベルトリトラクタの製作方法であって、
該差し込み工程に先行して、該ストッパ部材を設定位置に配置しておき、この状態で前記非円形部の正規位相からのズレを検知するズレ検知工程を行い、
このズレを解消するように前記トーションバーをねじり変形させるねじり工程を行った後、前記差し込み工程を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、前記ロッキングベースと第1治具とを係合させ、前記非円形部と第2治具とを係合させ、該第1治具及び該第2治具を介して前記トーションバーにねじり方向に力を加えて前記ねじり工程を行う。
【0009】
本発明の一態様では、前記ロッキングベースと前記第1治具とを、該ロッキングベースに設けられたパウルを介して一体化させる。
【0010】
本発明の一態様では、前記ねじり工程におけるトーションバーの軸心線周りのねじり角度が120゜未満である。
【0011】
本発明の一態様では、前記ロッキングベースは、前記トーションバーと同軸状のカラムと、該カラムの外周面に設けられ、前記ストッパ部材が螺合した雄ネジと、該カラムの軸心線方向の一端側から拡開する形状のフランジとを有しており、前記設定位置は、該ストッパ部材が螺進して該フランジに当接するまでの回転数が所定値となる位置である。
【0012】
本発明の一態様では、前記ズレ検知工程では、撮像装置を用いて前記ズレを検知する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、シートベルトリトラクタの製作時におけるスプールへのトーションバーの差し込み工程において、ストッパ部材を規定位置に配置する。また、トーションバーの先端側の非円形部とスプール内孔の非円形孔部とが合致する位相となるようにトーションバーをねじる。この状態で、ストッパ部材付きロッキングベース及びトーションバーをスプールに差し込み、そのまま直進させてスプールと一体化させる。このため、ロッキングベースにおけるストッパ部材の位置を正確に設定位置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シートベルトリトラクタの縦断面図である。
図2】シートベルトリトラクタの分解斜視図である。
図3】トーションバーとロッキングベースの係合を示す斜視図である。
図4】ロッキングベースを組み付けたトーションバーの斜視図である。
図5】ロッキングベースを組み付けたトーションバーの側面図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7】第1の治具を装着したトーションバー及びロッキングベースの斜視図である。
図8図7のVIII-VIII線断面図である。
図9】第1の治具の斜視図である。
図10】第1及び第2の治具を装着したトーションバー及びロッキングベースの斜視図である。
図11図10のXI-XI線断面図である。
図12】トーションバーのねじり工程を示す斜視図である。
図13】トーションバーのねじり工程の前後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
図1,2は本発明方法により製作されたシートベルトリトラクタを示している。このシートベルトリトラクタはウェビングWを巻き取るためのスプール10を備えている。
【0016】
このスプール10は、内孔12を備えた筒状のものであり、この内孔12にトーションバー14が挿通されている。このトーションバー14の基端側に第1の六角部16が設けられている。この第1の六角部16にロッキングベース18の内孔の内周面に設けられた六角孔部(六角形の孔部)20が係合している。
【0017】
図3~6にも示すように、このロッキングベース18は、フランジ22と、該フランジ22から突設されたカラム24とを備えている。フランジ22付近の内周面は六角孔部20(図6)となっている。カラム24の外周面には雄ネジ26が刻設されている。
【0018】
この雄ネジ26と噛合した雌ネジ28(図2)を有するストッパ部材(ストップギア)30がカラム24の外周に螺着されている。このストッパ部材30は、直径方向に突出する一対の突部30aを有しており、この突部30aがスプール10の内孔12に設けられた係合部としての一対の係合溝32に係合している。係合溝32は、内孔12の軸心線と平行方向に設けられている。
【0019】
ロッキングベース18のフランジ22に対しパウル34が枢着されている。
【0020】
ロッキングベース18のフランジ22の表側には、トーションバー14と同軸配置されたロックリング36が配置されている。このロックリング36にはロックスタータ38及びバネ40,42等の部材が装着されており、車両の衝突時或いはスプール10の高角加速度回転時にパウル34をフランジ22の外周から突出させ、フレーム44の内歯付き開口46の該内歯に対しパウル34を係止させる。なお、フレーム44は1対のフレームサイド44a,44bを備えており、その間にスプール10が配置される。
【0021】
ロックリング36はカバー48で覆われている。このロックリング36をロックさせるためのロック起動機構50が前記フレーム44に保持され、同様にカバー48で覆われている。
【0022】
このロック起動機構50は、ホルダ52に保持され、傾転可能とされた重り54と、ホルダ52に枢支されており、重り54に重ね合わされたレバー56を備えている。車両に所定以上の加速度が生じると、重り54が傾転し、レバー56が跳ね上げられ、レバー56の先端がロックリング36の外周の外歯と係合し、ロックリング36が回転停止状態となる。そして、これによりパウル34がフランジ22の外周から突出し、パウル34がフレーム44の内歯付き開口46に係合するようになる。なお、このようなロック機構60の構成は周知のものである。
【0023】
トーションバー14の先端側に非円形部としての第2の六角部62が設けられている。この第2の六角部62は、スプール10の内孔12に設けられた六角孔部64(図1)に係合している。
【0024】
このようにトーションバー14等が装着されたスプール10がフレーム44のフレームサイド44a,44b内に配置される。トーションバー14の六角部62よりもさらに先端側には逆ネジ65が設けられており、この逆ネジ65に対しスプライン付きナット66が螺着される。このナット66がプリテンショナ70の内孔72に挿入される。
【0025】
このプリテンショナ70は、車両衝突時にスプール10をウェビング巻取り方向に所定回数だけ大トルクにて巻取り、ウェビングWの緩みを除去するためのものである。このプリテンショナ70は、車両衝突時にガスを発生させるガス発生器74と、このガス発生器74で発生したガスによってトルクを発生させるトルク発生手段76と、このトルク発生手段76で発生したトルクをナット66に伝えるトルク伝達手段78等を備えている。なお、トルク伝達手段78は、トルク発生手段76からナット66に向かうトルクのみを伝達し、ナット66から伝えられるトルクはトルク発生手段76に伝達しない構成のものとなっている。
【0026】
トーションバー14の先端は、このプリテンショナ70を貫通し、ゼンマイバネユニット80の内孔82に係合されている。このゼンマイバネユニット80は、トーションバー14を介してスプール10を常にウェビング巻取り方向に付勢するものである。
【0027】
前記スプール10には、該スプール10の軸心線と垂直な断面において弦方向に延在する第1のスリット84と第2のスリット86とが設けられている。ウェビングWの端部はこれらのスリット84,86に順次に挿通され、ウェビングWの抜け留めがなされている。
【0028】
次に、このシートベルトリトラクタの作動について説明する。
【0029】
車両が定常状態にあるときには、ストッパ部材30は図1に示すようにロッキングベース18のフランジ22から離反している。この場合、ロック機構60及びプリテンショナ70は作動しておらず、スプール10はゼンマイバネユニット80によって巻取り方向に付勢されている。ウェビングWが引出される時には、スプール10はゼンマイバネユニット80によって巻取り方向に付勢されながらウェビング引出し方向に回転する。
【0030】
車両が衝突した場合、プリテンショナ70が作動し、トーションバー14に対しウェビング巻取り方向に強いトルクが加えられる。このトルクは、トーションバー14の六角部62とスプール10の六角孔部64とを介してスプール10を回転させ、ウェビングWを所定長さだけ巻取る。
【0031】
また、車両衝突時には、ロック起動機構50の重り54が傾転し、ロックリング36が該ロック起動機構50のレバー56によって係止され、パウル34がフランジ22の外周から突出して内歯付き開口46に係合し、ロッキングベース18がウェビング引出し方向に回転することが阻止される。
【0032】
車両衝突時には、車両の乗員は前方へ投げ出されるように身体が移動し、ウェビングWには強い引出し方向の力が加えられる。前記の通り、スプール10の六角孔部64とトーションバー14の六角部62とが係合しているため、ロッキングベース18がウェビング引出し方向回転不能状態になると、トーションバー14は2つの六角部16,62の間がねじられる。そして、スプール10は、トーションバー14をねじりつつウェビング引出し方向に回転し、トーションバー14のねじりによって乗員に加えられる衝撃が吸収(EA)される。
【0033】
ロッキングベース18がフレーム44に対して回転不能状態に係止された状態で上記の如くスプール10がウェビング引出し方向に回転するときに、スプール10に対し係合溝32、突部30aの係合により一体とされているストッパ部材30が、該スプール10と一体的に回転する。そして、このストッパ部材30はその雌ネジ28がロッキングベース18の雄ネジ26に噛合しているため、スプール10のウェビング引出し方向の回転に伴ってストッパ部材30が回転すると、このストッパ部材30はロッキングベース18のフランジ22に向かって螺進し、ついには該ストッパ部材30がフランジ22の裏面に当接する。
【0034】
これにより、ストッパ部材30のそれ以上の回転が阻止され、スプール10の回転も阻止される。即ち、スプール10は、ストッパ部材30が図1の状態からフランジ26に当接するまでの間だけ回転が許容され、それ以上のウェビング引出し方向の回転が阻止される。このようにしてトーションバー14の最大ねじり回転数が規定され、トーションバー14が過度にねじられることが防止される。
【0035】
上述の通り、スプール10は、ストッパ部材30がロッキングベース18のフランジ26に当接するまでの間だけ回転し、この間トーションバー14がねじられる。従って、EA時におけるウェビング引き出し長さを設計値通りとするためには、ストッパ部材30が螺進してフランジ22に当接するまでの回転数が設計値通りとなる位置にストッパ部材30を配置することが必要となる。ここで、ストッパ部材30が螺進してフランジ22に当接するまでの回転数は5回転以下であることが好ましい。
【0036】
ところが、従来例では、スプール10にストッパ部材30付きトーションバー14を組み付けるときに、ストッパ部材30が螺進してフランジ22に当接するまでの回転数が設計値からずれるおそれがある。
【0037】
すなわち、スプール10に対しロッキングベース18付きトーションバー14を組み付けるには、ストッパ部材30をカラム24に螺嵌させ、ストッパ部材30が螺進してフランジ22に当接するまでの回転数が設計値通りとなる位置までストッパ部材30を螺進させて位置決めした後、該トーションバー14をスプール10の内孔12に挿入し、ストッパ部材30の凸部30aをスプール10の内孔12の係合溝32に係合させると共に、第2六角部62を内孔12の六角孔部64に係合させる。
【0038】
この際、第2六角部62の位相と六角孔部64の位相とが合致していない場合、両者の位相が合致するようにスプール10又はトーションバー14を周方向に回転させて、両者の位相を合致させる。例えば、スプール10を停止させておき、トーションバー14を該位相が合致するまで回転させる。この場合、トーションバー14を最大で60度(360度÷6=60度)近く回転させることがある。このようにスプール10又はトーションバー14を回転させると、係合溝32に凸部30aが係合しているストッパ部材30が雄ネジ26に沿って螺進し、設定位置からずれ、フランジ22に当接するまでの回転数が設計値からずれることになる。
【0039】
本実施形態では、かかるストッパ部材30の位置ずれ(フランジ22に当接するまでの回転数のずれ)を生じさせないようにするために、スプール10にトーションバー14を組み付けるに際して、六角孔部64と六角部62の位相にズレがある場合、このズレを解消するようにトーションバー14をねじり、しかる後、トーションバー14をスプール内孔12に差し込む。この方法によると、スプール内孔12にトーションバー14の先端側を差し込んだ後は、トーションバー14を回すことなく直進させるだけで六角孔部64と第2六角部62とを係合させ、ストッパ部材30と係合溝32とを係合させることができ、ストッパ部材30が設定位置からずれることが防止される。
【0040】
本発明によるスプール10へのストッパ部材30付きトーションバー14の組み付け方法の一例について図3~12を参照して次に説明する。
【0041】
まず、図3の通り、トーションバー14にストッパ部材30付きロッキングベース18を装着する。ストッパ部材30はカラム24の外周面の雄ネジ26(図2)に螺合している。ストッパ部材30は、フランジ22との間隔(フランジ22に当接するまでの回転数)が設計値通りとなる位置に配置されている。ロッキングベース18のカラム24内にトーションバー14を先端側から挿入し、図4~6の通り、六角孔部20(図6)と第1の六角部16とを係合させる。
【0042】
次に、トーションバーねじり装置(図示略)に設置されている第1治具90に対し、図7,8の通り、ロッキングベース18を装着する。
【0043】
第1治具90は、図9の通り、トーションバー14の基端側突部63に外嵌する中央筒部91と、該中央筒部91から拡開するフランジ部92と、該フランジ部92の外周縁から中央筒部91と同軸状に突設された外輪部93とを有している。外輪部93は、円筒形であるが、内周面の一部に切欠状の凹部94が設けられている。凹部94は、図9において時計回り方向に従って深くなる斜面94aと、該斜面94aの最深部へ外輪部93の内周面から立ち下がる段差面94bとを有する。
【0044】
図7,8の通り、中央筒部91と基端側突部63とを係合させて第1治具90にストッパ部材30付きトーションバー14を係合させたるとともに、パウル34を凹部94に係合させる。これにより、第1治具90とストッパ部材30付きトーションバー14との周方向位置決め(位相決め)が行われる。また、トーションバー14は、図7の時計回り方向に回転不能となる。
【0045】
次いで、撮像装置(図示略)によってストッパ部材30の位相を検知し、ストッパ部材30の位相を微調整する。
【0046】
また、図10の通り、第2六角部62に対し、第2の治具95を外嵌させる。第2治具95は、六角筒状であり、内周面及び外周面がいずれも六角形となっている。第2治具95の内孔は第2六角部62にぴったりと嵌まる大きさとなっている。
【0047】
この状態で、第2治具95付近を撮像装置で検知し、六角部62の位相が正規位相からどれ位ずれているかズレ角度θを検出する。この正規位相とは、ストッパ部材30と係合溝32とを係合させた状態でトーションバー14を直進させるだけで六角孔部64に六角部62を係合させることができる位相である。
【0048】
このズレが存在する場合には、このズレがなくなるように、トーションバー14を角度θだけねじる。トーションバー14をねじるには、ねじり装置(図示略)のチャックで第2治具95をチャックし、図12の矢印F方向に第2治具95を回して塑性変形させる。
【0049】
図13(a)は、ねじりを施す前のトーションバー14の斜視図であり、図13(b)は角度θだけねじったトーションバー14の斜視図である。
【0050】
上記のねじり加工を施した後、チャックを解放し、トーションバー14から治具90,95を分離する。
【0051】
このようにねじり加工を施したトーションバー14とストッパ部材30付きロッキングベース18との組み付け体を、スプール10の内孔に差し込むと、ストッパ部材30の突部30a,30aがそのまま係合溝32,32に係合すると共に、第2六角部62がスプールの六角孔部64にそのまま係合する。そのため、ストッパ部材30とフランジ24との間隔(フランジ22に当接するまでのストッパ部材30の回転数)は、正確に設計値に保たれたものとなる。
【0052】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【0053】
例えば、上記実施の形態ではパウル34を第1治具90の凹部94と係合させることによりトーションバー14及びロッキングベース18と第1治具90とを一体化させているが、これ以外の手段によってトーションバー14及びロッキングベース18と一体化される治具を用いてもよい。
【0054】
トーションバー14をねじり変形させる場合、第1治具90を固定して第2治具95を回してもよく、第2治具95を固定して第1治具90を回してもよい。第1治具90又は第2治具95を回す方向は限定されない。
【0055】
トーションバー14の先端部、及びこの先端部が係合するスプール20の内孔12に設けられる孔部の形状は六角形に限定されず、任意の多角形状、歯車形状等とすることができる。例えば、トーションバー14の先端部が三角形状の場合、ねじり加工によるトーションバー14の軸心線周りのねじり角度は120°(=360°÷3)未満となる。
【符号の説明】
【0056】
10 スプール
12 内孔
14 トーションバー
16 第1の六角部
18 ロッキングベース
22 フランジ
24 カラム
26 雄ネジ
28 フランジ
30 ストッパ部材
30a 突部
32 係合溝
34 パウル
62 第2の六角部(非円形部)
64 六角孔部
90 第1治具
95 第2治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13