(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 24/50 20110101AFI20231212BHJP
【FI】
H01R24/50
(21)【出願番号】P 2020119103
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中川 友太
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/087202(WO,A1)
【文献】特開2020-87630(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109550(WO,A1)
【文献】特開2004-221055(JP,A)
【文献】特開平8-321361(JP,A)
【文献】特開2006-185773(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105790009(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/38 - 24/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装される電気コネクタであって、
相手コネクタのグランドコンタクトに嵌合される円筒状の嵌合部と、前記基板に接続される接地用接続部とを有する第1コンタクトと、
前記嵌合部に囲われるように配置されており、前記相手コネクタのシグナルコンタクトに電気的に接続される第2コンタクトと、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとを絶縁状態で保持するハウジングと、
前記ハウジングを前記第1コンタクトに対して固定する延設部と、を備え、
前記第2コンタクトは、前記相手コネクタのシグナルコンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように前記基板に沿って延び、前記基板の端子部に接続される信号用接続部と、を有し、
前記延設部は、前記ハウジングから前記信号用接続部の延在方向と交差する方向に延び、前記嵌合部の外部において前記接地用接続部に係止されることにより、前記ハウジングを前記第1コンタクトに対して固定
し、
前記接地用接続部には、前記延設部の延在方向に開口が形成されており、
前記延設部は、前記開口を埋めるように設けられている、
電気コネクタ。
【請求項2】
前記延設部は、複数設けられている、請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記延設部は、前記相手コネクタとの嵌合方向から見た場合に前記中心導体と前記信号用接続部とを結ぶ中心線に対して対称となる位置に一対設けられている、請求項2記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記延設部は、前記信号用接続部の延在方向と直交する方向に設けられている、請求項3記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記接地用接続部は、前記嵌合部の外部において、前記開口の幅を狭めるように設けられた幅狭部を有する、請求項
1記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記信号用接続部の延在方向において、前記嵌合部内の領域にのみ設けられている、請求項1~
5のいずれか一項記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記接地用接続部には、前記信号用接続部の延在方向に開口が形成されていない、請求項1~
6いずれか一項記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記信号用接続部は、前記嵌合部内の領域にのみ設けられている、請求項1~7のいずれか一項記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
信号伝送部材に接続されたプラグコネクタと、基板に実装されたリセプタクルコネクタとが嵌合することにより、信号伝送部材と基板の電気回路とを電気的に接続するコネクタ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のリセプタクルコネクタは、プラグコネクタの筒状の導体に係合する外導体と、外導体の内部においてプラグコネクタの導体と接触する内導体と、絶縁体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に記載されたリセプタクルコネクタにおいては、例えば外から絶縁体(ハウジング)に荷重がかかった場合において、絶縁体が、内導体もろとも外導体から剥離するおそれがある。絶縁体が外導体から剥離することを防止する構成を設けることも考えられるが、そのような構成を採用するためには、外導体に開口(絶縁体の保持に係る開口)を形成する必要がある。このような開口が形成されることによって、コネクタ内部の信号が外に漏れ易くなり(ノイズが発生し易くなり)コネクタのEMI特性が悪化してしまう。
【0005】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、EMI特性を向上させながら、ハウジングを好適に保持することができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電気コネクタは、基板に実装される電気コネクタであって、相手コネクタのグランドコンタクトに嵌合される円筒状の嵌合部と、基板に接続される接地用接続部とを有する第1コンタクトと、嵌合部に囲われるように配置されており、相手コネクタのシグナルコンタクトに電気的に接続される第2コンタクトと、第1コンタクトと第2コンタクトとを絶縁状態で保持するハウジングと、ハウジングを第1コンタクトに対して固定する延設部と、を備え、第2コンタクトは、相手コネクタのシグナルコンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように基板に沿って延び、基板の端子部に接続される信号用接続部と、を有し、延設部は、ハウジングから信号用接続部の延在方向と交差する方向に延び、嵌合部の外部において接地用接続部に係止されることにより、ハウジングを第1コンタクトに対して固定する。
【0007】
本開示の一態様に係る電気コネクタでは、第1コンタクトと第2コンタクトとを保持するハウジングから、基板の端子部に接続される信号用接続部の延在方向と交差する方向に延びる延設部が、嵌合部の外部において第1コンタクトの接地用接続部に係止されている。これにより、例えば外からハウジングに荷重がかかった場合においても、ハウジングに連結される延設部が嵌合部の外部において接地用接続部に係止されることによって、ハウジングが剥離することを適切に抑制することができる。すなわち、本発明の一態様に係る電気コネクタによれば、ハウジングを好適に保持することができる。ここで、上述したハウジングの保持のための延設部が接地用接続部に係止された構成を採用するためには、第1コンタクトの接地用接続部に、ハウジングを配置する(ハウジングを構成する樹脂等を充填する)開口を設ける必要がある。本開示の電気コネクタでは、ハウジングの保持のための延設部が、信号用接続部の延在方向と交差する方向に設けられているため、ハウジングを配置する第1コンタクトの接地用接続部の開口が信号用接続部の延在方向に形成されない構成を採用することができる。これにより、第1コンタクトの接地用接続部において、信号用接続部の延在方向における開口を小型化又は閉塞することができる。このことで、信号用接続部からの信号が外に漏れにくい構成(ノイズが発生しにくい構成)となり、電気コネクタのEMI特性を向上させることができる。
【0008】
延設部は、複数設けられていてもよい。このような構成によれば、接地用接続部の複数の箇所において延設部が係止されることとなり、ハウジングをより好適に保持することができる。
【0009】
延設部は、相手コネクタとの嵌合方向から見た場合に中心導体と信号用接続部とを結ぶ中心線に対して対称となる位置に一対設けられていてもよい。これにより、ハウジングが両側からバランスよく保持されることとなり、ハウジングを好適に保持することができる。
【0010】
延設部は、信号用接続部の延在方向と直交する方向に設けられていてもよい。これにより、ハウジングの保持のための開口が信号用接続部の延在方向から十分に離間した位置に形成されることとなる。このことで、信号用接続部からの信号がハウジングの保持のための開口から外に漏れにくい構成となり、電気コネクタのEMI特性をさらに向上させることができる。
【0011】
接地用接続部には、延設部の延在方向に開口が形成されており、延設部は、開口を埋めるように設けられていてもよい。これにより、延設部を嵌合部の外部に向けて適切に通過させると共に、ハウジングの保持のための開口が閉塞される構成となり、ハウジングをより好適に保持することができる。
【0012】
接地用接続部は、嵌合部の外部において、開口の幅を狭めるように設けられた幅狭部を有していてもよい。これにより、信号用接続部からの信号がハウジングの保持のための開口から外により漏れにくい構成となり、電気コネクタのEMI特性をさらに向上させることができる。また、第1コンタクトの幅狭部においても延設部が係止されることとなり、ハウジングをより好適に保持することができる。
【0013】
ハウジングは、信号用接続部の延在方向において、嵌合部内の領域にのみ設けられていてもよい。これにより、延設部を除いたハウジングの端部が、嵌合部内に留まっている、すなわち嵌合部の外へ樹脂が流入しない為、信号用接続部の延在方向における開口をより小型化又は閉塞することができ、信号用接続部からの信号が外に漏れにくい構成となり、電気コネクタのEMI特性をさらに向上させることができる。
【0014】
接地用接続部には、信号用接続部の延在方向に開口が形成されていなくてもよい。これにより、信号用接続部からの信号がより外に漏れにくくなり、電気コネクタのEMI特性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、EMI特性を向上させながら、電気コネクタにおけるハウジングを好適に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、印刷配線基板に実装されたリセプタクルコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、リセプタクルコネクタを示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は底面図、
図3(c)は斜視図、
図3(d)は
図3(a)のA-A線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、リセプタクルコネクタのグランドコンタクトを示す図であり、
図4(a)は平面図、
図4(b)は底面図、
図4(c)は斜視図である。
【
図5】
図5は、リセプタクルコネクタのシグナルコンタクトを示す図であり、
図5(a)は平面図、
図5(b)は底面図、
図5(c)は斜視図である。
【
図6】
図6は、リセプタクルコネクタの絶縁体(ハウジング及び延設部)を示す図であり、
図6(a)は平面図、
図6(b)は底面図、
図6(c)は斜視図である。
【
図7】
図7は、プラグコネクタとリセプタクルコネクタとの嵌合状態を示す図であり、
図7(a)は平面図、
図7(b)は(a)のA-A線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係るコネクタ装置を示す図であり、
図8(a)は比較例に係るコネクタ装置の斜視図、
図8(b)は比較例に係るコネクタ装置に含まれるリセプタクルコネクタの斜視図である。
【
図9】
図9は、コネクタ装置のEMI特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
[コネクタ装置の概要]
図1及び
図2を参照して、コネクタ装置1の概要について説明する。
図1に示されるように、コネクタ装置1は、リセプタクルコネクタ10(電気コネクタ)と、プラグコネクタ100(相手コネクタ)とを備えている。リセプタクルコネクタ10は、基板200(
図2参照)に、例えば半田付け等により実装されている。プラグコネクタ100は、同軸ケーブルSC(信号伝送部材)に接続されると共にリセプタクルコネクタ10に嵌合される。コネクタ装置1では、同軸ケーブルSCの端末部分に取り付けられたプラグコネクタ100が、基板200に実装されたリセプタクルコネクタ10と嵌合することにより、同軸ケーブルSCと基板200の電気回路とを電気的に接続する。なお、基板200は、例えば印刷配線基板であるがこれに限定されない。また、同軸ケーブルSCに替えて、種々の電子機器の信号を伝送する他の信号伝送部材を用いてもよい。
【0019】
なお、以下の説明においては、コネクタ装置1におけるリセプタクルコネクタ10及びプラグコネクタ100の嵌合方向を「Z方向」、嵌合状態における同軸ケーブルSCの軸方向を「X方向」、Z方向及びX方向に直交する方向を「Y方向」として説明する場合がある。また、Z方向に関して、例えば
図1に示した状態のプラグコネクタ100側を「上」、リセプタクルコネクタ10側を「下」として説明する場合がある。また、X方向に関して、同軸ケーブルSCにおけるプラグコネクタ100が取り付けられた端部側を「前」、反対の端部側を「後」として説明する場合がある。
【0020】
[リセプタクルコネクタ]
次に、
図3~
図6を参照して、リセプタクルコネクタ10の詳細について説明する。リセプタクルコネクタ10は、基板200(
図2参照)に実装されており、同軸ケーブルSCに取り付けられたプラグコネクタ100(
図1参照)に嵌合される。
図3(a)~
図3(c)に示されるように、リセプタクルコネクタ10は、グランドコンタクト11(第1コンタクト)と、シグナルコンタクト12(第2コンタクト)と、絶縁体13(ハウジング13a及び延設部13b)と、を備える。
【0021】
(グランドコンタクト)
図4(a)~
図4(c)に示されるように、グランドコンタクト11は、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101(
図7(b)参照)に嵌合される円筒状の嵌合部11aと、基板200に接続される接地用接続部11bとを有する。グランドコンタクト11は、グランドコンタクト101(
図7(b)参照)に電気的に接続されて、グランド回路を構成する。グランドコンタクト11は、例えば薄板状の金属部材から成形されている。
【0022】
嵌合部11aは、Z方向を軸方向とする円筒形状(筒状)に形成されており、その筒孔内にハウジング13aを収容する。嵌合部11aの内周面は、ハウジング13aが形成されていない領域を除き、ハウジング13aの外周面と接している(
図3(a)参照)。嵌合部11aの外周面には、その全周に亘って、径方向の内側(嵌合部11aの中心側)に凹んだ凹部11xが形成されている(
図3(d)参照)。嵌合部11aは、凹部11xがプラグコネクタ100のグランドコンタクト101の外周に形成された凸部101x(
図7(b)参照)と係合することにより、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に嵌合される(詳細は後述)。嵌合部11aは、接地用接続部11bから立設するように設けられている。
【0023】
接地用接続部11bは、
図2に示されるように、基板200のグランド端子部202に接続されるように、基板200上に配置されている。
図4(a)~
図4(c)に示されるように、接地用接続部11bには、嵌合部11aの外周に沿って、Z方向に貫通する開口11c,11c及び開口11eが形成されている。開口11c,11cは、Z方向から見た場合に中心導体12aと信号用接続部12bとを結ぶ中心線に対して対称となる位置に形成されており、詳細には、Y方向において互いに対向する位置に形成されている。開口11c,11cは、後述する延設部13bの延在方向に形成されている(
図3(b)参照)。開口11c,11cには、当該延設部13bが充填されている(
図3(b)参照)。開口11eは、開口11c,11cを結ぶ線分と交差(詳細には直交)する位置に形成されている。開口11eは、後述するシグナルコンタクト12の信号用接続部12bの延在方向に形成されている(
図3(b)参照)。本実施形態では、後述する露出部12xがグランドコンタクト11の嵌合部11aに囲まれた領域内に収容されている。製造過程において、信号用接続部12bから開口11eを経るように、複数のグランドコンタクト11を連ねる為のキャリア(図示なし)が延びており、そのキャリアを所定位置で切断することによって、露出部12xが形成される。開口11eは、該キャリアを挿通するための狭い間隔で形成される。
【0024】
また、接地用接続部11bは、嵌合部11aの外部において、開口11cの幅を狭めるように設けられた幅狭部11d,11dを有している(
図3(b)参照)。幅狭部11d,11dは、開口11cのX方向の両端において、接地用接続部11bに連続して設けられている。幅狭部11d,11dは、互いに対向する方向に突出する突起状に形成されている。また、幅狭部11d,11dは、ハウジング13aと延設部13bとの間に位置するように設けられている。なお、幅狭部11d,11dの位置は、上記に限定されず、例えば開口11cにおけるY方向の中央付近に設けられていてもよい。また、接地用接続部11bは、各開口11cに対応して1つのみ幅狭部11dを有していてもよいし、各開口11cに対応して3つ以上の幅狭部11dを有していてもよい。
【0025】
(シグナルコンタクト)
シグナルコンタクト12は、
図3(a)~
図3(c)に示されるように、嵌合部11aに囲われるように配置されており、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102(
図7(b)参照)に電気的に接続される。シグナルコンタクト12は、ハウジング13aに取り付けられている。シグナルコンタクト12は、例えば薄板状の金属部材から形成された信号伝送用の導体である。シグナルコンタクト12は、
図5(a)~
図5(c)に示されるように、中心導体12aと、信号用接続部12bとを有する。
【0026】
中心導体12aは、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102(
図7(b)参照)に接触する導体である。中心導体12aは、Z方向を軸方向とする円筒形状(筒状)に形成されており、その外周面においてシグナルコンタクト102と接触する(
図7(b)参照)。中心導体12aは、ハウジング13aの支持部13yに取り付けられている(
図3(a)参照)。信号用接続部12bは、中心導体12aから引き出されるように基板200に沿って延び、基板200のシグナル端子部201(
図2参照)に接続される。すなわち、信号用接続部12bは、中心導体12aの下端に連続すると共に、X方向の前方(嵌合部11aに近づく方向であって同軸ケーブルSCの内部導体SC1から遠ざかる方向(
図7(b)参照))に延び基板200のシグナル端子部201(
図2参照)に接触する。信号用接続部12bの形状は限定されないが、例えば、
図5(a)及び
図5(c)に示されるように、板状部材であり、Z方向から見ると、Y方向の長さがX方向の長さよりも小さい略矩形状を呈している。
【0027】
信号用接続部12bは、
図3(a)に示されるように、グランドコンタクト11の嵌合部11aに囲まれた領域内に収容されると共に、その先端(前端)部分である露出部12xが外部に露出している。外部に露出しているとは、例えば、外部から視認可能であることをいう。より具体的には、信号用接続部12bは、Z方向であってプラグコネクタ100から基板200に向かう方向で見ると、その一部である露出部12xが視認可能に配置されている。露出部12xは、信号用接続部12bにおけるシグナル端子部201(
図2参照)との接触領域である。
【0028】
(ハウジング及び延設部)
絶縁体13は、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12との間を絶縁するための部材であり、樹脂により構成される。絶縁体13は、
図6(a)~
図6(c)に示されるように、ハウジング13aと、延設部13bと、を有する。
【0029】
ハウジング13aは、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12とを絶縁状態で保持する。ハウジング13aは、略円盤状に形成され、嵌合部11aの内側に収容される部材である。ハウジング13aの外周面は、ハウジング13aが形成されていない領域を除き、嵌合部11aの内周面と接している(
図3(a)参照)。また、ハウジング13aの外周面の一部は、幅狭部11d,11dと接している(
図3(b)参照)。ハウジング13aは、
図6(a)、
図6(c)に示されるように、その中央部分に、中心導体12aを取り付けるための支持部13yを有している。
【0030】
ハウジング13aは、
図3(a)に示されるように、信号用接続部12bの延在方向において、嵌合部11a内の領域にのみ設けられている。すなわち、ハウジング13aは、信号用接続部12bの延在方向(X方向)に形成された開口11eに至らない形状(到達しない形状)とされている。特に、ハウジング13aは、プラグコネクタ100の嵌合方向から見た信号用接続部12bの延在方向において、信号用接続部12bの先端よりも中心導体12a寄りの領域にのみ設けられている。ハウジング13aは、信号用接続部12bにおけるシグナル端子部201との接触領域である露出部12xを外部に露出させるように形成されている。ハウジング13aは、例えば、ハウジング13aの一部を切り欠くことにより露出部12xを外部に露出させるように形成されていてもよい。
【0031】
延設部13bは、ハウジング13aをグランドコンタクト11に対して固定する。延設部13bは、ハウジング13aから信号用接続部12bの延在方向と交差(詳細には直交)する方向に延び、嵌合部11aの外部において接地用接続部11bに係止されることにより、ハウジング13aをグランドコンタクト11に対して固定する。
図3(a)に示されるように、絶縁体13は、複数(詳細には一対)の延設部13b,13bを有している。一対の延設部13b,13bは、Z方向から見た場合に中心導体12aと信号用接続部12bとを結ぶ中心線に対して対称となる位置に設けられており、詳細には、Y方向において互いに対向する位置に設けられている。
図6(a)~
図6(c)に示されるように、延設部13b,13bは、ハウジング13aに連続すると共に、Y方向における互いに離間する方向(Y方向外側)に延びている。
【0032】
一対の延設部13b,13bは、一対の開口11c,11cに対応した位置に設けられている。すなわち、一方の延設部13bは一方の開口11cを通じて樹脂が充填されており、他方の延設部13bは他方の開口11cを通じて樹脂が充填されている(
図3(b)参照)。延設部13b,13bは、信号用接続部12bの延在方向(X方向)と交差する方向に形成された接地用接続部11bの開口11c,11c(
図4(a)~(c)参照)を通過して、嵌合部11aの外部に延びている(
図3(a)、
図3(c)参照)。そして、延設部13b,13bは、嵌合部11aの外部において、接地用接続部11bの一部を分断するように設けられ、接地用接続部11bに係止される(
図3(c)参照)。さらに、延設部13b,13bは、接地用接続部11bに設けられた幅狭部11d,11dにも係止される(
図3(b)参照)。このように、延設部13b,13bが接地用接続部11b及び幅狭部11d,11dに係止されることにより、延設部13b,13bが接続されたハウジング13aがグランドコンタクト11から剥離することを効果的に抑制できる。このようにして、延設部13b,13bは、ハウジング13aをグランドコンタクト11に対して固定する。
【0033】
[コネクタ装置(リセプタクルコネクタ及びプラグコネクタの嵌合状態)]
次に、
図7(a)及び
図7(b)を参照して、リセプタクルコネクタ10及びプラグコネクタ100が互いに嵌合した状態のコネクタ装置1について詳細に説明する。
【0034】
なお、プラグコネクタ100は、
図7(b)に示されるように、グランドコンタクト101と、シグナルコンタクト102と、ハウジング103とを有している。グランドコンタクト101は、グランドコンタクト11に嵌合される円筒形状のコンタクト部材である。グランドコンタクト101は、同軸ケーブルSCの外部導体に接続されている。グランドコンタクト101の下端側には、その全周に亘って径方向の内側(グランドコンタクト101の円筒形状の中心側)に突出した凸部101xが形成されている。シグナルコンタクト102は、シグナルコンタクト12に電気的に接続される。シグナルコンタクト102は、ハウジング103の内部に取り付けられており、同軸ケーブルSCの内部導体SC1に接続されると共に、リセプタクルコネクタ10のシグナルコンタクト12の中心導体12aに接続される。ハウジング103は、円筒形状に形成されており、グランドコンタクト101及びシグナルコンタクト102を絶縁状態で保持する。ハウジング103の外周面はグランドコンタクト101の内周面と接している。
【0035】
図7(b)に示されるように、リセプタクルコネクタ10の嵌合部11aの凹部11xにより、リセプタクルコネクタ10及びプラグコネクタ100が互いに嵌合された状態となる。嵌合状態においては、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102が、リセプタクルコネクタ10の中心導体12aと接触している。このように、同軸ケーブルSCの内部導体SC1に接続されているシグナルコンタクト102と、信号用接続部12bを介して基板200のシグナル端子部201(
図2参照)に接続されている中心導体12aとが接触することにより、コネクタ装置1の信号伝送回路が構成されている。また、嵌合状態においては、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101が、リセプタクルコネクタ10の嵌合部11aと接触している。このように、同軸ケーブルSCの外部導体に接続されているグランドコンタクト101と、接地用接続部11bを介して基板200のグランド端子部202(
図2参照)に接続されている嵌合部11aとが接触することにより、コネクタ装置1のグランド回路が構成されている。
【0036】
そして、コネクタ装置1では、嵌合状態において、
図7(b)に示されるように、信号用接続部12bが、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に囲まれた領域内に収容されており、また、嵌合していない状態において、
図3(a)に示されるように、信号用接続部12bの露出部12xが外部に露出している(すなわち、視認可能に配置されている)。
【0037】
次に、
図8~
図9を参照して、コネクタ装置1のEMI(Electromagnetic Interference)特性について説明する。
【0038】
最初に、
図8(a)及び
図8(b)を参照して、比較例に係るコネクタ装置501について説明する。コネクタ装置501は、本実施形態のコネクタ装置1と同様に、信号伝送部材と基板の電気回路とを電気的に接続するコネクタ装置である。
図8(a)は、リセプタクルコネクタ510とプラグコネクタ600とが嵌合状態であることを示す。
図8(b)に示されるように、コネクタ装置501のリセプタクルコネクタ510は、グランドコンタクト511と、シグナルコンタクト512と、絶縁体513とを有している。そして、グランドコンタクト511は、嵌合部511aと、接地用接続部511bとを有している。シグナルコンタクト512は、中心導体512aと、中心導体512aから外方に引き出された信号用接続部512bとを有している。絶縁体513は、ハウジング513aと延設部513bとを有している。
【0039】
比較例に係るコネクタ装置501のリセプタクルコネクタ510では、接地用接続部511bにおいて、嵌合部511aの外周に沿って、Z方向に貫通する開口511c,511eが形成されている。開口511c,511eは、X方向において互いに対向する位置に形成されている。具体的には、開口511cは中心導体512aを基準として信号用接続部512bの延在方向と逆の方向に形成されており、開口511eは中心導体512aを基準として信号用接続部512bの延在方向に形成されている。開口511c,511eには、それぞれ延設部513bが充填されている。一対の延設部513b,513bは、X方向において互いに対向する位置に形成されている。延設部513b,513bは、ハウジング513aから信号用接続部512bの延在方向及び延在方向と逆の方向に延び、嵌合部511aの外部において接地用接続部511bに係止されることにより、ハウジング513aをグランドコンタクト511に対して固定する。比較例に係るコネクタ装置501では、ハウジング513aの保持のための延設部513b,513bが接地用接続部511bに係止された構成を採用するために、グランドコンタクト511の接地用接続部511bに、延設部513b,513bを配置するための(延設部513b,513bを構成する樹脂等を充填するための)開口511c,511eを設ける必要がある。ここで、開口511eは、シグナル端子部201(
図2参照)と信号用接続部512bとの接触を実現するために必要な幅以上に、延設部513bを充填するための幅が必要となる。したがって、比較例に係るコネクタ装置501では、接地用接続部511bに形成された信号用接続部512bの延在方向における開口511eが、リセプタクルコネクタ10の接地用接続部11bに形成された信号用接続部12bの延在方向における開口11e(本実施形態に係るコネクタ装置1の開口であって、複数のグランドコンタクト11を連ねる為のキャリアを挿通することのみを目的として形成された開口)よりも大きくなってしまう(
図3(a)~
図3(c)参照)。
【0040】
図9は、コネクタ装置1と比較例に係るコネクタ装置501とを用いて、各コネクタ装置の外に漏れる信号の強度を測定した結果のEMI特性を示すグラフである。
図9において、縦軸は遠方界利得(dBi)を示し、横軸は周波数(GHz)を示しており、例えば、縦軸の上にいくほどEMI特性が悪化することを示す。また、
図9は、比較例に係るコネクタ装置501の値を三角で表し、本実施形態に係るコネクタ装置1の値を丸で表している。
図9に示されるように、コネクタ装置1のEMI特性は、どの周波数帯域においても、比較例に係るコネクタ装置501のEMI特性より10dBi程度改善されている。
【0041】
[作用効果]
次に、上述したリセプタクルコネクタ10の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態のリセプタクルコネクタ10は、基板200に実装される電気コネクタであって、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に嵌合される円筒状の嵌合部11aと、基板200に接続される接地用接続部11bとを有するグランドコンタクト11と、嵌合部11aに囲われるように配置されており、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102に電気的に接続されるシグナルコンタクト12と、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12とを絶縁状態で保持するハウジング13aと、ハウジング13aをグランドコンタクト11に対して固定する延設部13bと、を備え、シグナルコンタクト12は、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102に接触する中心導体12aと、該中心導体12aから引き出されるように基板200に沿って延び、基板200のシグナル端子部201に接続される信号用接続部12bと、を有し、延設部13bは、ハウジング13aから信号用接続部12bの延在方向と交差する方向に延び、嵌合部11aの外部において接地用接続部11bに係止されることにより、ハウジング13aをグランドコンタクト11に対して固定する。
【0043】
本開示の一態様に係る電気コネクタでは、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12とを保持するハウジング13aから、基板200のシグナル端子部201に接続される信号用接続部12bの延在方向と交差する方向に延びる延設部13bが、嵌合部11aの外部においてグランドコンタクト11の接地用接続部11bに係止されている。これにより、例えば外からハウジング13aに荷重がかかった場合においても、ハウジング13aに連結される延設部13bが嵌合部11aの外部において接地用接続部11bに係止されることによって、ハウジング13aが剥離することを適切に抑制することができる。すなわち、本発明の一態様に係る電気コネクタによれば、ハウジング13aを好適に保持することができる。ここで、上述したハウジング13aの保持のための延設部13bが接地用接続部11bに係止された構成を採用するためには、グランドコンタクト11の接地用接続部11bに、ハウジング13aを配置するための(ハウジング13aを構成する樹脂等を充填するための)開口を設ける必要がある。本開示の電気コネクタでは、ハウジング13aの保持のための延設部13bが、信号用接続部12bの延在方向と交差する方向に設けられているため、ハウジング13aを配置するグランドコンタクト11の接地用接続部11bの開口が信号用接続部12bの延在方向に形成されない構成を採用することができる。これにより、グランドコンタクト11の接地用接続部11bにおいて、信号用接続部12bの延在方向における開口を小型化又は閉塞することができる。このことで、信号用接続部12bからの信号が外に漏れにくい構成(ノイズが発生しにくい構成)となり、電気コネクタのEMI特性を向上させることができる。
【0044】
上記リセプタクルコネクタ10において、延設部13bは、複数設けられている。このような構成によれば、接地用接続部11bの複数の箇所において延設部13bが係止されることとなり、ハウジング13aをより好適に保持することができる。
【0045】
上記リセプタクルコネクタ10において、延設部13bは、プラグコネクタ100との嵌合方向であるZ方向から見た場合に中心導体12aと信号用接続部12bとを結ぶ中心線に対して対称となる位置に一対設けられている。これにより、ハウジング13aが両側からバランスよく保持されることとなり、ハウジング13aを好適に保持することができる。
【0046】
上記リセプタクルコネクタ10において、延設部13bは、信号用接続部12bの延在方向と直交する方向に設けられている。これにより、ハウジング13aの保持のための開口11cが信号用接続部12bの延在方向から十分に離間した位置に形成されることとなる。このことで、信号用接続部12bからの信号がハウジング13aの保持のための開口11cから外に漏れにくい構成となり、リセプタクルコネクタ10のEMI特性をさらに向上させることができる。
【0047】
上記リセプタクルコネクタ10において、接地用接続部11bには、延設部13bの延在方向に開口11cが形成されており、延設部13bは、開口11cを埋めるように設けられている。これにより、延設部13bを嵌合部11aの外部に向けて適切に通過させると共に、ハウジング13aの保持のための開口11cが閉塞される構成となり、ハウジング13aをより好適に保持することができる。
【0048】
上記リセプタクルコネクタ10において、接地用接続部11bは、嵌合部11aの外部において、開口11cの幅を狭めるように設けられた幅狭部11dを有している。これにより、信号用接続部12bからの信号がハウジング13aの保持のための開口11cから外により漏れにくい構成となり、リセプタクルコネクタ10のEMI特性をさらに向上させることができる。また、第1コンタクトの幅狭部11dにおいても延設部13bが係止されることとなり、ハウジング13aをより好適に保持することができる。
【0049】
上記リセプタクルコネクタ10において、ハウジング13aは、信号用接続部12bの延在方向において、嵌合部11a内の領域にのみ設けられている。これにより、延設部13bを除いたハウジング13aの端部が、嵌合部11a内に留まっている、すなわち嵌合部11aの外へ樹脂が流入しない為、信号用接続部12bの延在方向における開口をより小型化又は閉塞することができ、信号用接続部12bからの信号が外に漏れにくい構成となり、リセプタクルコネクタ10のEMI特性をさらに向上させることができる。
【0050】
[変形例]
以上、本実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、延設部13bは複数設けられている例を説明したが、1つのみ設けられていてもよい。また、幅狭部11dは必須の構成ではない。
【0051】
図10(a)~
図10(c)は、変形例に係るリセプタクルコネクタ210を示す図である。
図10(a)~
図10(c)に示されるように、リセプタクルコネクタ210の接地用接続部11bには、
図3(a)に示すような、信号用接続部12bの延在方向の開口11eが形成されていなくてもよい。この場合、接地用接続部11bは、信号用接続部12bのX方向において閉塞された構成となる。これにより、信号用接続部12bからの信号がより外に漏れにくくなり、リセプタクルコネクタ210のEMI特性をさらに向上させることができる。
【0052】
図11(a)~
図11(c)は、変形例に係るリセプタクルコネクタ310を示す図である。
図11(a)~
図11(c)に示されるように、一対の延設部13b,13bがZ方向から見た場合に中心導体12aと信号用接続部12bとを結ぶ中心線に対して対称となる位置に設けられている構成において、一対の延設部13b,13bは、信号用接続部12bの延在方向(X方向)と直交しない方向に設けられていてもよい。この場合でも、ハウジング13aが両側からバランスよく保持されることとなり、ハウジング13aを好適に保持することができる。なお、リセプタクルコネクタ310の延設部13b,13bは、信号用接続部12bの延在方向と直交する方向よりも、中心導体12aを基準として、信号用接続部12bの延在方向と逆の方向に形成されることが好ましい。これにより、ハウジング13aの保持のための開口11c,11cが信号用接続部12bの延在方向から十分に離間した位置に形成されることとなる。このことで、信号用接続部12bからの信号がハウジングの保持のための開口から外に漏れにくい構成となり、リセプタクルコネクタ310のEMI特性をさらに向上させることができる。
【0053】
図12(a)~
図12(c)は、変形例に係るリセプタクルコネクタ410を示す図である。
図12(a)~
図12(c)に示されるように、ハウジング13aは、信号用接続部12bの延在方向に直交する面から見た信号用接続部12bの延在方向において、信号用接続部12bの先端よりも中心導体12a寄りの領域に設けられていてもよい。また、信号用接続部12bは、プラグコネクタ100と嵌合する側から見たとき、ハウジング13aが信号用接続部12bの表面を覆っていて、プラグコネクタ100と嵌合する側とは反対から見たときに外部に露出しているようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,210,310,410…リセプタクルコネクタ(電気コネクタ)、11…グランドコンタクト(第1コンタクト)、11a…嵌合部、11b…接地用接続部、11c…開口、11d…幅狭部、11e…開口、12…シグナルコンタクト(第2コンタクト)、12a…中心導体、12b…信号用接続部、13a…ハウジング、13b…延設部、100…プラグコネクタ(相手コネクタ)、101…グランドコンタクト、102…シグナルコンタクト、200…基板、201…シグナル端子部。