(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20231212BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K3/18 J
(21)【出願番号】P 2020120624
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】西田 宏平
(72)【発明者】
【氏名】牧野 孝則
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-295673(JP,A)
【文献】特開2010-136536(JP,A)
【文献】特開2020-068570(JP,A)
【文献】特開平10-070871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーロータ型の回転電機(30)であって、
複数のティース(56)を有するステータコア(32)と、
前記ティースの周りに巻かれてなるコイル(71)を有する複数相の巻線(33)と、
前記ステータコアと前記巻線との間に介在するインシュレータ(61)と、
前記巻線に接続された巻線接続部(84)を有する複数のコイルターミナル(81)と、
前記回転電機の回転位置を検出する素子(58)を実装した制御基板(59)と、
外部の電源端子(18)に接続可能な外部接続ターミナル(91)を有し、前記ステータ
コアと前記巻線と前記インシュレータと前記コイルターミナルとを含むステータ(31)を収容するハウジング(20)と、
を備え、
前記コイルおよび前記コイルターミナルは、巻線1相あたり2つ以上設けられ、
前記回転電機の回転軸心(AX1)に直交する方向を径方向と定義し、前記回転軸心に平行な方向を軸方向と定義すると、
前記巻線接続部および前記制御基板は、前記コイルよりも径方向内側に配置され、
前記コイルターミナル
の当接部(85)のうち径方向内側の端部は、前記ステータコアおよび前記インシュレータよりも径方向内側の位置で前記外部接続ターミナルに直接結合し、
前記当接部と前記外部接続ターミナルの被当接部(92)とは溶接により結合され、
前記当接部と前記被当接部との溶接部は、前記ティースの先端よりも径方向内側に配置され、
前記制御基板の全体は、前
記ステー
タの軸方向範囲(X)内であって、前記ステータコアおよび前記インシュレータよりも径方向内側に配置されている、回転電機。
【請求項2】
前記巻線は、前記インシュレータのティース絶縁部(63)に巻かれた2つ以上の前記コイル、および、各前記コイル間をつなぐ渡り線(74)を有し、
前記インシュレータには、前記渡り線を係止する係止部(65)が一体に設けられている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
複数の前記コイルターミナルは、前記巻線の一端部(72)または他端部(73)に接続された第1コイルターミナル(811)と、1つの前記巻線に含まれる2つの前記コイル間の中間部(74c)に接続された第2コイルターミナル(812)とを含む、請求項1または2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーロータ型の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているようなインナーロータ型の回転電機では、ハウジングの外部接続ターミナルと、バスバーと、コイルターミナルと、ステータの巻線とが電気的に接続されている。コイルターミナルは、回転電機の回転軸心に平行な軸方向において、外部接続ターミナルから離間して配置される。バスバーおよび制御基板は、外部接続ターミナルとコイルターミナルとの間の軸方向スペースに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御基板を性能向上のために大きくする場合、その配置スペースの確保が難しい。制御基板の配置スペース確保のために、コイルターミナルを含むステータ全体を外部接続ターミナルから軸方向に離して設ける場合、回転電機の軸方向体格が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御基板の配置スペースを確保しつつ小型化された回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インナーロータ型の回転電機(30)であって、複数のティース(56)を有するステータコア(32)と、ティースの周りに巻かれてなるコイル(71)を有する複数相の巻線(33)と、ステータコアと巻線との間に介在するインシュレータ(61)と、巻線に接続された巻線接続部(84)を有する複数のコイルターミナル(81)と、回転電機の回転位置を検出する素子(58)を実装した制御基板(59)と、外部の電源端子(18)に接続可能な外部接続ターミナル(91)を有するハウジング(20)とを備える。ハウジングは、ステータコアと巻線とインシュレータとコイルターミナルとを含むステータ(31)を収容する。コイルおよびコイルターミナルは、巻線1相あたり2つ以上設けられている。回転電機の回転軸心(AX1)に直交する方向を径方向と定義すると、巻線接続部および制御基板は、コイルよりも径方向内側に配置されている。コイルターミナルの当接部(85)のうち径方向内側の端部は、ステータコアおよびインシュレータよりも径方向内側の位置で外部接続ターミナルに直接結合している。当接部と外部接続ターミナルの被当接部(92)とは溶接により結合されている。当接部と被当接部との溶接部は、ティースの先端よりも径方向内側に配置されている。回転軸心に平行な方向を軸方向と定義すると、制御基板の全体は、ステータの軸方向範囲(X)内であって、ステータコアおよびインシュレータよりも径方向内側に配置されている。
【0007】
これによりコイルの径方向内側のスペースを利用して巻線接続部および制御基板を配置できる。また、従来のように外部接続ターミナルとコイルターミナルとの間の軸方向スペースに制御基板を配置していた形態に対して、ステータを外部接続ターミナル側に寄せて配置できる。したがって、制御基板の配置スペースを確保しつつ回転電機を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態のモータを備える回転式アクチュエータが適用されたシフトバイワイヤシステムを説明する模式図。
【
図3】
図2のステータおよび制御基板を矢印III方向から見た図。
【
図6】
図3の巻線およびコイルターミナルを模式的に示す図。
【
図7】
図2のステータ、モータターミナルおよびセンサターミナルを矢印VII方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、回転電機としてのモータの一実施形態を図面に基づき説明する。
【0010】
[一実施形態]
図1に示すように、一実施形態のインナーロータ型回転電機としてのモータ30は、回転式アクチュエータ(以下、アクチュエータ)10に備えられる。アクチュエータ10は、車両用変速機11のケース12の外壁に固定され、シフトバイワイヤシステム13の動力源として用いられる。シフトバイワイヤシステム13は、制御装置15がシフト操作装置14からの指令信号に応じてアクチュエータ10を制御することにより、変速機11のシフトレンジ切替機構16を作動させてシフトレンジを切り替える。
【0011】
(アクチュエータ)
先ず、アクチュエータ10の全体構成について
図2を参照して説明する。アクチュエータ10は、ハウジング20、モータ30および減速機40を備える。
【0012】
ハウジング20は、カップ状のフロントハウジング21およびリアハウジング22を有する。フロントハウジング21およびリアハウジング22は、開口部同士が組み合わされてボルト23により互いに締結されている。フロントハウジング21には、有底筒状の金属プレート24がインサートされている。リアハウジング22は、フロントハウジング21とは反対側に突き出す筒状突出部28を有する。リアハウジング22の外壁にはブラケット29が固定されている。アクチュエータ10は、ブラケット29を用いて変速機11のケース12(
図1参照)に固定される。
【0013】
モータ30は、ステータ31およびロータ34を有する。ステータ31は、金属プレート24に例えば圧入等により固定されたステータコア32と、ステータコア32に設けられた巻線33とを有する。ロータ34は、モータ側軸受35および減速機側軸受36により回転軸心AX1まわりに回転可能に支持された回転軸37と、回転軸37の外側に嵌合して固定されたロータコア38とを有する。モータ側軸受35は、金属プレート24に設けられている。減速機側軸受36は、後述の出力部材44に設けられている。
【0014】
減速機40は、偏心軸41、リングギア42、偏心ギア43、出力部材44および伝達機構45を備える。偏心軸41は、回転軸心AX1に対して偏心する偏心軸心AX2上に設けられ、回転軸37と一体に形成されている。リングギア42は、回転軸心AX1と同軸上に設けられ、リアハウジング22に固定されている。偏心ギア43は、リングギア42の内歯部46と噛み合う外歯部47を有し、偏心軸41に設けられた軸受48により遊星運動可能に支持されている。遊星運動とは、偏心軸心AX2まわりに自転しつつ回転軸心AX1まわりに公転する運動のことである。遊星運動時の偏心ギア43の自転速度は、回転軸37の回転速度に対して変速させられる。
【0015】
出力部材44は、回転軸心AX1と同軸上に設けられ、リアハウジング22に設けられた軸受49により回転可能に支持されている。伝達機構45は、偏心ギア43に形成された係合突起51と、出力部材44に形成され、係合突起51が挿入された係合孔52とから構成され、偏心ギア43の偏心軸心AX2まわりの回転を出力部材44に伝達する。
【0016】
アクチュエータ10では、巻線33の通電相が切り替えられることにより回転磁界が発生し、この回転磁界により生じる磁気的吸引力または反発力を受けてロータ34が回転する。ロータ34と共に偏心軸41が回転軸心AX1まわりに回転すると偏心ギア43が遊星運動し、ロータ34の回転に対して減速させられた偏心ギア43の回転が出力部材44から出力される。
【0017】
(ステータ)
次に、ステータ31およびその配線について
図2~
図7を参照して説明する。以下の説明において、回転軸心AX1に平行な方向のことを単に「軸方向」と記載し、回転軸心AX1まわりの方向のことを単に「周方向」と記載し、回転軸心AX1に直交する方向のことを単に「径方向」と記載する。また、アクチュエータ10の構成要素に対して外側の部分のことを「外部」と記載する。
【0018】
図2および
図3に示すように、ステータ31は、ステータコア32と、複数の巻線33と、ステータコア32と巻線33との間に介在するインシュレータ61と、巻線33に接続された複数のコイルターミナル81とを備える。
【0019】
ステータコア32は、軸方向に積層された複数枚の金属板から構成されている。ステータコア32は、フロントハウジング21の筒部25の内壁に固定された環状のヨーク55と、ヨーク55から径方向内側に突き出すように形成された複数のティース56とを有する。
【0020】
図3~
図5に示すように、インシュレータ61は、ヨーク55の軸方向両端および径方向内側の内壁に設けられたヨーク絶縁部62と、ティース56の周りの部分(すなわちティース56の先端面以外の部分)に設けられたティース絶縁部63と、ティース絶縁部63のうちティース先端側から軸方向および周方向に突き出すように設けられたフランジ部64とを有し、ステータコア32に組み付けられている。
【0021】
図3および
図6に示すように、複数の巻線33は、U相巻線33u、V相巻線33v、およびW相巻線33wを含む。以下、各巻線を区別しない場合、単に「巻線33」と記載する。
【0022】
巻線33は、ティース56の周り、すなわちインシュレータ61のティース絶縁部63に巻かれてなるコイル71を有する。1つの巻線33は、1本の電線からなり、その一端部72から他端部73までの間に4つのコイル71を有する。各コイル71間には渡り線74が設けられている。つまり、1つの巻線33が4つのティース56に渡って設けられている。
【0023】
U相巻線33uはコイル71u11、71u12、71u21、71u22を有する。V相巻線33vはコイル71v11、71v12、71v21、71v22を有する。W相巻線33wはコイル71w11、71w12、71w21、71w22を有する。U相巻線33uにおいて、一端部72から中間部74cまでのコイル71u11、71u12と、中間部74cから他端部73までの71u21、71u22とが並列に配置されている。V相巻線33vおよびW相巻線33wにおいても同様に、第1コイル郡と第2コイル郡とが並列に配置されている。本実施形態では、ティース56が12個設けられており、ティース56毎に1つのコイル71が設けられている。1つの巻線33が1相分のコイル71を持っている。
【0024】
図2~
図4に示すように、ヨーク絶縁部62は、フロントハウジング21の底部26側に突き出す突起状の係止部65を有する。係止部65は、渡り線74を係止している。本実施形態では、係止部65はインシュレータ61に一体に設けられている。
【0025】
図2および
図3に示すように、アクチュエータ10は、ロータコア38に設けられた磁石57と、ロータ34の回転位置を検出する素子であって、磁石57の磁気を検出する磁気センサ58と、磁気センサ58を実装した制御基板59とを備える。
【0026】
図2に示すように、フロントハウジング21は、樹脂製の本体部を構成する底部26、筒部25およびコネクタ部27を有する。コネクタ部27は、筒部25の外側に形成されている。コネクタ部27には、外部コネクタ17が着脱可能に接続される。外部コネクタ17は、電源端子18および信号端子19を保持している。
【0027】
図2、
図4、
図5および
図7に示すように、フロントハウジング21は、コイルターミナル81に接続され、外部の電源端子18に直接接続可能な外部接続ターミナルとしての複数のモータターミナル91と、制御基板59に接続され、外部の信号端子19に接続可能な複数のセンサターミナル95とを有する。モータターミナル91およびセンサターミナル95は、フロントハウジング21の本体部にインサートされており、底部26から筒部25を通ってコネクタ部27まで延びている。本実施形態では、モータターミナル91およびセンサターミナル95は、一次成形体99に保持された状態でフロントハウジング21にインサートされる。
【0028】
図2~
図5に示すように、フランジ部64のうちフロントハウジング21の底部26側には、コイルターミナル81を保持するターミナル保持部67が設けられている。本実施形態では、ターミナル保持部67はインシュレータ61に一体に設けられている。
【0029】
コイルターミナル81は、ターミナル保持部67に保持された被保持部82と、巻線33の一端部72および他端部73を保持可能な巻線保持部83と、巻線33に電気的に接続された巻線接続部84と、モータターミナル91に当接して電気的に接続された当接部85とを有する。本実施形態では、巻線保持部83はコイルターミナル81に一体に設けられている。
【0030】
複数のコイルターミナル81は、一端部72および他端部73に接続された第1巻線接続部841を有する第1コイルターミナル811と、1つの巻線33に含まれる2つのコイル71間の中間部74cに接続された第2巻線接続部842を有する第2コイルターミナル812とを含む。本実施形態では、第1コイルターミナル811の形状と第2コイルターミナル812の形状は同じである。以下、各コイルターミナルを区別しない場合、単に「コイルターミナル81」と記載する。また、各巻線接続部を区別しない場合、単に「巻線接続部84」と記載する。
【0031】
コイルターミナル81は、6個のティース56にそれぞれ1つずつ設けられている。6個のコイルターミナル81のうち、3個の第1コイルターミナル811には一端部72および他端部73が接続され、3個の第2コイルターミナル812には中間部74cが接続されている。1つの巻線33に含まれる一端部72および他端部73は、同一の第1巻線接続部841に接続されている。
【0032】
コイルターミナル81は、巻線33の端部と中間部74cとにそれぞれ設けられており、巻線1相あたり2つ設けられている。巻線33の巻始め部分である一端部72は、巻線保持部83から第1巻線接続部841を通ってティース56まで延びている。巻線33の巻終わり部分である他端部73は、ティース56から第1巻線接続部841を通って巻線保持部83まで延びている。
【0033】
モータターミナル91は、軸方向に垂直な方向に延びつつコイルターミナル81の当接部85に軸方向に当接された被当接部92を有する。コイルターミナル81は、バスバー等の結線部品を介すことなくモータターミナル91に直接結合している。本実施形態では、当接部85と被当接部92とは溶接により結合されている。以下、当接部85と被当接部92との結合部のことを「溶接部」と記載する。
【0034】
巻線保持部83、巻線接続部84および制御基板59はコイル71よりも径方向内側に配置されており、溶接部はステータコア32のティース先端よりも径方向内側に配置されている。具体的には、
図4および
図5に示すように、巻線保持部83および巻線接続部84は、被保持部82から軸方向において底部26側に延びるように形成されている。当接部85は、巻線保持部83の先端から径方向内側に延びるように形成されている。本実施形態では、巻線保持部83と巻線接続部84は、被保持部82からそれぞれ分岐して設けられている。
【0035】
ステータ31の軸方向一方から軸方向他方の範囲、すなわち、コイルターミナル81の当接部85の先端からインシュレータ61の減速機40側の端までの軸方向範囲を、ステータ31の軸方向範囲X(
図2、
図4参照)と定義すると、制御基板59は、軸方向においてステータ31の軸方向範囲X内に配置されている。
【0036】
巻線33はノズル巻きで製造されている。具体的には、電線を第1コイルターミナル811の巻線保持部83に絡げて第1巻線接続部841に通した後、1つ目のティース絶縁部63に巻き付ける。続いて、1つ目のティース絶縁部63から引き出した電線を係止部65に係止させた後、2つ目のティース絶縁部63に巻き付ける。続いて、2つ目のティース絶縁部63から引き出した電線を第2コイルターミナル812の第2巻線接続部842に通し、係止部65に係止させた後、3つ目のティース絶縁部63に巻き付ける。続いて、3つ目のティース絶縁部63から引き出した電線を係止部65に係止させた後、4つ目のティース絶縁部63に巻き付ける。最後、4つ目のティース絶縁部63から引き出した電線を最初の第1巻線接続部841に通した後、最初の第1巻線保持部831に絡げる。第1巻線接続部841と一端部72および他端部73は、例えばヒュージング等により接続される。第2巻線接続部842と中間部74cも同様に、例えばヒュージング等により接続される。
【0037】
上述のように複数のスロット間を跨いで巻回作業が行われる。ステータ31の外周部に配置された係止部65と、内周部に配置された巻線保持部83および巻線接続部84とを用いる場合、ティース絶縁部63への電線の巻き層数を奇数にすることで、完全整列巻きが実現する。巻線33の一層目と三層目は径方向内側から外側に向かって巻き付けられ、二層目は径方向外側から内側に向かって巻き付けられる。
【0038】
(効果)
以上説明したように本実施形態では、モータ30は、複数のティース56を有するステータコア32と、ティース56の周りに巻かれてなるコイル71を有する複数相の巻線33と、巻線33に接続された巻線接続部84を有する複数のコイルターミナル81と、モータ30の回転位置を検出する磁気センサ58を実装した制御基板59とを備える。コイル71およびコイルターミナル81は、巻線1相あたり2つ以上設けられている。巻線接続部84および制御基板59は、コイル71よりも径方向内側に配置されている。制御基板59は、ステータ31の軸方向範囲X内に配置されている。これによりコイル71の径方向内側のスペースを利用して巻線接続部84および制御基板59を配置できる。また、従来のようにモータターミナルとコイルターミナルとの間の軸方向スペースに制御基板を配置していた形態に対して、ステータ31をモータターミナル91側に寄せて配置できる。したがって、制御基板59の配置スペースを確保しつつモータ30を小型化できる。
【0039】
また、本実施形態では、巻線33は、インシュレータ61のティース絶縁部63に巻かれた2つ以上のコイル71、および、各コイル71間をつなぐ渡り線74を有する。インシュレータ61には、渡り線74を係止する係止部65が一体に設けられている。これにより、係止部65を用いて、1つの巻線33を複数のスロット間に跨がるように巻回するノズル巻きを実施できる。そのため、従来のようにティース毎に2つのコイルターミナルを設ける必要がなく、コイルターミナルの数および巻線の端末処理の回数が減る。そのため、部品点数および製造工数を低減できる。
【0040】
また、本実施形態では、複数のコイルターミナル81は、一端部72および他端部73に接続された第1巻線接続部841を有する第1コイルターミナル811と、1つの巻線33に含まれる2つのコイル71間の中間部74cに接続された第2巻線接続部842を有する第2コイルターミナル812とを含む。これにより第1コイルターミナル811と第2コイルターミナル812との間において、1つの巻線33の一端部72から中間部74cまでのコイル71と、中間部74cから他端部73までのコイル71とが並列に配置される。そのため、巻線を直列に巻回する場合と同様に、巻線33の巻き始めから巻き終わりまでの間に2つ以上のティース56に連続して巻回するノズル巻きを実施しつつ、その途中で巻線33を第2コイルターミナル812に通すことで、並列回路を構築できる。また、従来のように直列に巻回された2つの巻線の両端にコイルターミナルを設ける形態に対して、2つのコイルターミナルを1つの第2コイルターミナル812に置き代えることができるとともに、巻線33の端末処理の回数を少なくできる。そのため、部品点数および製造工数を低減できる。
【0041】
また、本実施形態では、フロントハウジング21は、外部の電源端子18に直接接続可能な外部接続ターミナルとしての複数のモータターミナル91を有する。コイルターミナル81は、モータターミナル91に直接結合している。これにより、巻線33外で各巻線33を並列接続するための例えばバスバー等の結線部品が不要になり、部品点数を低減できる。また、結線部品が廃止された分、ステータ31をモータターミナル91側に寄せて配置して、モータ30をさらに小型化できる。
【0042】
[他の実施形態]
他の実施形態では、第1コイルターミナルの形状と第2コイルターミナルの形状とが異なっていてもよい。例えば、第1巻線接続部の形状と第2巻線接続部の形状とが異なっていてもよい。また、第2コイルターミナルには巻線保持部が設けられなくてもよい。
【0043】
他の実施形態では、1つの巻線に含まれる一端部および他端部は、別々の第1巻線接続部に接続されてもよい。例えば、3つの巻線が設けられる形態において、一端部が接続される第1コイルターミナルが3個設けられ、中間部が接続される第2コイルターミナルが3個設けられ、他端部が接続される第1コイルターミナルが3個設けられてもよい。それでも、従来のように直列に巻回された2つの巻線の両端にコイルターミナルを設ける形態に対して、コイルターミナルの数および巻線の端末処理の回数を少なくできる。
【0044】
他の実施形態では、巻線は2つ以上のコイルを有しつつも、各コイルが並列に配置されずに直列に配置されてもよい。すなわち、1つの巻線で並列回路を構成せず、巻線の一端部と他端部にそれぞれコイルターミナルが設けられてもよい。
【0045】
他の実施形態では、巻線保持部は、コイルターミナルの一部に限らず、例えばインシュレータまたはその他の部材の一部であってもよい。また、巻線保持部の延出方向は、軸方向に限らず、径方向、周方向、またはそれ以外の方向であってもよい。
【0046】
他の実施形態では、コイルターミナルとモータターミナルとの接合は、溶接に限らず、圧接またははんだ等の他の方法で行われてもよい。他の実施形態では、フロントハウジングのコネクタ部は2つ以上に分かれていてもよい。
【0047】
他の実施形態では、ティースの数は、12個に限らず、それ以外の数であってもよい。他の実施形態では、巻線相数は、3相に限らず、それ以外の相数であってもよい。他の実施形態では、ステータは、モータに限らず、発電機に適用されてもよい。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
30 モータ(回転電機)、31 ステータ、32 ステータコア、33 巻線、
56 ティース、58 磁気センサ(素子)、59 制御基板、71 コイル、
811 第1コイルターミナル、812 第2コイルターミナル、
841 第1巻線接続部、842 第2巻線接続部、
AX1 回転軸心、X ステータの軸方向範囲。