(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20231212BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20231212BHJP
G05D 16/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F16K27/02
G05D16/10 Z
(21)【出願番号】P 2020126558
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】後藤 守康
(72)【発明者】
【氏名】藤野 友基
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-1455(JP,A)
【文献】特開2010-176229(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
F16K 27/00-27/12
G05D 16/00-16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の供給元装置(31)と、
燃料供給通路を介して前記供給元装置に連通している供給先装置(32)と、
前記燃料供給通路に設けられて、前記供給先装置へ流下させる燃料の圧力を減圧する減圧弁装置(10;110)と、
を備え、
前記減圧弁装置は、第1減圧弁(101)と、前記第1減圧弁よりも下流において燃料の圧力を減圧する第2減圧弁(102)とを含み、
前記第1減圧弁は、
弁座部(10a1)に対して離間して開弁する弁部(3a)と、
前記弁部と一体に軸方向に摺動する摺動部(4)と、
前記摺動部とケーシング(10a;110a)との間を封止するシール部(5)と、
前記弁部が前記弁座部から離間していく開弁方向に前記摺動部を付勢する付勢部材(7)と、
前記軸方向に延びている通路をなし、前記開弁方向とは逆向きである閉弁方向に燃料が流入する供給圧室(2)と、
前記摺動部に対して前記開弁方向に押す圧力を与える背圧室(9)と、
前記弁座部よりも前記摺動部側に設けられて、前記弁部の開弁状態において前記供給圧室からの燃料が流出する中間圧室(8)と、
を有し、
前記減圧弁装置は、
前記第1減圧弁の前記中間圧室と前記第2減圧弁の供給圧室(12)とを連絡する中間通路(11)と、
前記第2減圧弁の出口圧室(19)と前記第1減圧弁の前記背圧室とを連通させる連通路(21,22)と、
を有する燃料供給装置。
【請求項2】
燃料の供給元装置(31)と、
燃料供給通路を介して前記供給元装置に連通している供給先装置(32)と、
前記燃料供給通路に設けられて、前記供給先装置へ流下させる燃料の圧力を減圧する減圧弁装置(210)と、
を備え、
前記減圧弁装置は、
弁座部(210a2)に対して離間して開弁する弁部(13a)と、
軸方向について前記弁部の両側に設けられて、前記弁部と一体に前記軸方向に摺動する一対の摺動部(113,115)と、
一対の前記摺動部とケーシング(210a)との間を封止する一対のシール部(14,16)と、
一対の前記摺動部のうち一方側の前記摺動部を、前記弁部が前記弁座部から離間していく開弁方向である他方側に付勢する付勢部材(18)と、
一対の前記摺動部のうち他方側の前記摺動部と前記弁座部との間において前記弁部を囲むように設けられた燃料の供給圧室(112)と、
前記供給圧室に対して前記弁座部よりも前記他方側に燃料が流入するように設けられた流入通路(1)と、
前記弁座部よりも前記一方側に設けられ、前記弁部の開弁状態において前記供給圧室からの燃料が流出する出口圧室(19)と、
一対の前記摺動部のうちの前記他方側の前記摺動部に対して前記一方側に押す圧力を与える背圧室(120)と、
前記背圧室と前記出口圧室とを連通させる連通路(21,122)と、
を有し、
前記他方側の前記摺動部と前記弁部とは、横断面積が同等に形成されている燃料供給装置。
【請求項3】
前記第2減圧弁は、
弁座部(10a2)に対して離間して開弁する弁部(13a)と、
軸方向について前記弁部の両側に設けられて、前記弁部と一体に前記軸方向に摺動する一対の摺動部(13,15)と、
一対の前記摺動部とケーシング(10a;110a)との間を封止する一対のシール部(14,16)と、
一対の前記摺動部のうち一方側の前記摺動部を、前記弁部が前記弁座部から離間していく開弁方向である他方側に付勢する付勢部材(18)と、
一対の前記摺動部のうち他方側の前記摺動部と前記弁座部との間において前記弁部を囲むように設けられた燃料の供給圧室(12)と、
前記弁座部よりも前記一方側に設けられ、前記弁部の開弁状態において前記供給圧室からの燃料が流出する出口圧室(19)と、
一対の前記摺動部のうちの前記他方側の前記摺動部に対して前記一方側に押す圧力を与える背圧室(20)と、
を有し、
前記連通路は、前記第2減圧弁の前記出口圧室、前記第1減圧弁の前記背圧室および前記第2減圧弁の前記背圧室を連通する通路である請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記連通路は、通路横断面積が絞られている絞り通路部(24)を備えている請求項1または請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記第1減圧弁の前記背圧室に連通するアキュムレータ装置(25)を備えている請求項1、請求項3、請求項4のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上流側の弁体およびピストンと下流側の弁体およびピストンとを備える燃料供給装置が記載されている。上流側ピストンと上流側のシリンダ、下流側のピストンと下流側のシリンダとが摺動する摺動部には、シール部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、下流側の摺動部におけるシール部にかかる差圧が大きく、シール部の耐久性に関して、改良の余地がある。
【0005】
この明細書に開示する目的の一つは、摺動部におけるシール部の耐久性向上を図る燃料供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された燃料供給装置の一つは、燃料の供給元装置(31)と、燃料供給通路を介して供給元装置に連通している供給先装置(32)と、燃料供給通路に設けられて、供給先装置へ流下させる燃料の圧力を減圧する減圧弁装置(10;110)と、を備え、
減圧弁装置は、第1減圧弁(101)と、第1減圧弁よりも下流において燃料の圧力を減圧する第2減圧弁(102)とを含み、
第1減圧弁は、弁座部(10a1)に対して離間して開弁する弁部(3a)と、弁部と一体に軸方向に摺動する摺動部(4)と、摺動部とケーシング(10a;110a)との間を封止するシール部(5)と、弁部が弁座部から離間していく開弁方向に摺動部を付勢する付勢部材(7)と、軸方向に延びている通路をなし、開弁方向とは逆向きである閉弁方向に燃料が流入する供給圧室(2)と、摺動部に対して開弁方向に押す圧力を与える背圧室(9)と、弁座部よりも摺動部側に設けられて、弁部の開弁状態において供給圧室からの燃料が流出する中間圧室(8)と、を有し、
減圧弁装置は、第1減圧弁の中間圧室と第2減圧弁の供給圧室(12)とを連絡する中間通路(11)と、第2減圧弁の出口圧室(19)と第1減圧弁の背圧室とを連通させる連通路(21,22)と、を有する。
【0008】
この装置によれば、第1減圧弁に係る背圧室は第2減圧弁の出口圧室に連通するため、背圧室には出口圧室の吐出圧が作用する。これにより、第1減圧弁の摺動部におけるシール部には供給圧室の供給圧と第2減圧弁の吐出圧との差圧が作用する。したがって、シール部に作用する差圧を抑制できるので、摺動部におけるシール部の耐久性向上を図る燃料供給装置を提供できる。
【0009】
開示された燃料供給装置の一つは、燃料の供給元装置(31)と、燃料供給通路を介して供給元装置に連通している供給先装置(32)と、燃料供給通路に設けられて、供給先装置へ流下させる燃料の圧力を減圧する減圧弁装置(210)と、を備え、
減圧弁装置は、弁座部(210a2)に対して離間して開弁する弁部(13a)と、軸方向について弁部の両側に設けられて、弁部と一体に軸方向に摺動する一対の摺動部(113,115)と、一対の摺動部とケーシング(210a)との間を封止する一対のシール部(14,16)と、一対の摺動部のうち一方側の摺動部を、弁部が弁座部から離間していく開弁方向である他方側に付勢する付勢部材(18)と、
他方側に付勢する付勢部材(18)と、一対の摺動部のうち他方側の摺動部と弁座部との間において弁部を囲むように設けられた燃料の供給圧室(112)と、供給圧室に対して弁座部よりも他方側に燃料が流入するように設けられた流入通路(1)と、弁座部よりも一方側に設けられ、弁部の開弁状態において供給圧室からの燃料が流出する出口圧室(19)と、一対の摺動部のうちの他方側の摺動部に対して一方側に押す圧力を与える背圧室(120)と、背圧室と出口圧室とを連通させる連通路(21,122)と、を有し、
他方側の摺動部と弁部とは、横断面積が同等に形成されている。
【0010】
これにより、他方側の摺動部と弁部とは横断面積が同等であるため、供給圧室に供給された燃料によって他方側の摺動部と弁部とを形成する軸部分に軸方向の力が作用しにくい。このため、減圧弁装置は、供給圧に関わらず、安定した吐出圧を提供できる。さらに背圧室は出口圧室に連通するため、背圧室には出口圧室の吐出圧が作用する。これにより、他方側の摺動部におけるシール部には供給圧室の供給圧と吐出圧の差圧が作用する。このようにシール部に作用する差圧を抑制できるので、摺動部におけるシール部の耐久性向上を図る燃料供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1実施形態の減圧弁装置の構成を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態の減圧弁装置の構成を示す断面図である。
【
図4】第3実施形態の減圧弁装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
<第1実施形態>
燃料供給装置の一例を開示する第1実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1に示すように、燃料供給装置30は、少なくとも、燃料の供給元装置31と減圧弁装置10と燃料の供給先装置32とを備えている。供給元装置31は、燃料が蓄えられた装置であり、例えばタンク、ボンベなどである。例えば、供給元装置31には、高圧の燃料が充填されている。供給元装置31と供給先装置32は、燃料が流下する燃料供給通路によって連通している。供給先装置32は、減圧弁装置10を介して燃料が供給されて、例えば、燃料を用いてエネルギを生成する装置である。供給先装置32には、燃料を使用して発電する電池、内燃機関、外燃機関などが含まれる。燃料供給装置30は、例えば、燃料電池車や電気自動車に搭載されて、走行用のモータに電力を供給するために用いられる。燃料供給装置30は、例えば、化石燃料、バイオ燃料、ガス燃料、水素ガスなどを燃焼機関に供給するために用いられる。
【0014】
燃料供給装置30は、供給元装置31と減圧弁装置10とを接続している燃料供給通路に、この通路を開閉する電磁弁を備える構成でもよい。この電磁弁は、開閉の状態に応じて、減圧弁装置10に対する燃料の供給や遮断を制御できる。供給元装置31から導出される燃料は、電磁弁、減圧弁装置10を介して供給先装置32に供給される。
【0015】
減圧弁装置10は、燃料供給通路に設けられて、供給元装置31から供給される燃料の圧力を減圧する装置である。
図2に示すように、減圧弁装置10は、燃料流れの下流に向けて直列に設けられた、第1減圧弁101と第2減圧弁102とを備えている。減圧弁装置10は、燃料が流通する通路を形成し、第1減圧弁101と第2減圧弁102とを収容するケーシング10aを備えている。
【0016】
ケーシング10aは、上流側通路1、中間通路11、下流側通路21、排出通路23を形成し、第1弁体3、第2弁体13を収容している。ケーシング10aには、第1供給圧室2、中間圧室8、第1背圧室9、第2背圧室20、連絡通路22、第2供給圧室12および出口圧室19が形成されている。ケーシング10aには、第1シリンダ10a3、第2シリンダ10a4および第3シリンダ10a5が形成されている。
【0017】
上流側通路1は、第1減圧弁101による減圧前の燃料が流入する流入通路である。中間圧室8は、第1減圧弁101による減圧後であって第2減圧弁102によって減圧される前の燃料が入る通路である。排出通路23は、第2減圧弁102によって減圧された後の燃料が排出される通路である。
【0018】
第1減圧弁101は、第1弁体3、第1ピストン部4、第1弁座部10a1、閉弁スプリング6、開弁スプリング7およびシール部5を備えている。
【0019】
第1供給圧室2は、減圧弁装置10内の燃料通路であり、軸方向に延びている通路をなす。第1供給圧室2は、上流側において上流側通路1に連通し下流側において中間圧室8に連通している。ケーシング10aにおいて第1供給圧室2と中間圧室8との接続部には、第1弁座部10a1が設けられている。中間圧室8は、第1弁座部10a1から第1ピストン部4までに至る、減圧弁装置10内の燃料通路である。第1供給圧室2と中間圧室8は、第1弁体3を収容している。第1弁体3は、流路軸の方向に沿って延びる軸方向ADに細長い棒状体である。第1弁体3は、軸方向長さの中ほどの外周部が第1弁座部10a1に接触する弁部3aを有する。第1弁体3は、第1弁座部10a1に対して、弁部3aが接触したときに閉弁状態になり弁部3aが離間したときに開弁状態になる。閉弁状態において、弁部3aは、第1弁座部10a1に対して線状に接触する。弁部3aは、軸方向ADに直交する横断面積S1を有するように形成されている。
【0020】
第1弁体3において弁部3aから上流端部に至る部分と閉弁スプリング6は、第1供給圧室2に位置している。第1弁体3において弁部3aから下流端部に至る部分は、中間圧室8に位置している。閉弁スプリング6、第1弁体3、第1ピストン部4および開弁スプリング7は、ケーシング10a内において軸方向ADに並んで設けられている。
【0021】
第1弁体3の下流端部は、軸方向ADに直交する第1ピストン部4の端面に接触している。この端面は、中間圧室8に面しており、中間圧室8の圧力が作用している。第1ピストン部4は、弁部3aの横断面積S1より大きい横断面積S2を有するように形成されている。第1弁体3と第1ピストン部4は、一体である一つの部材であってもよい。閉弁スプリング6は、第1弁体3の上流端部に接触して、弁部3aが第1弁座部10a1に近づく閉弁側に第1弁体3を付勢する弾性力を提供する付勢部材である。
【0022】
第1ピストン部4と開弁スプリング7は、第1シリンダ10a3に位置している。開弁スプリング7は、第1弁体3とは反対側に位置する第1ピストン部4の端部に接触して、弁部が第1弁座部から離れる開弁方向に第1弁体3を付勢する弾性力を提供する。閉弁スプリング6と開弁スプリング7は、第1弁体3を互いに軸方向に沿って逆向きに押し合う一対の付勢部材を構成する。開弁スプリング7による付勢力は、閉弁スプリング6による付勢力よりも大きく設定されている付勢部材である。第1供給圧室2に燃料が供給されていない状態では、第1弁体3は開弁している。
【0023】
第1ピストン部4の外周部には、第1シリンダ10a3との間にシール部5が設けられている。シール部5は、第1シリンダ10a3に対して第1ピストン部4が摺動可能なように、弾性変形可能な材質によって形成されている。シール部5は、例えば、ゴム製のOリングである。第1背圧室9は、第1シリンダ10a3において、第1ピストン部4に対して中間圧室8とは反対側に形成されている室である。第1背圧室9は、摺動部に対して開弁方向に押す圧力を与える。中間圧室8と第1背圧室9とは、第1シリンダ10a3に内接するシール部5によって遮断されている。
【0024】
第1供給圧室2には、開弁方向とは逆向きである閉弁方向に燃料が流入する。燃料が第1供給圧室2に供給されると、第1供給圧室2の圧力と中間圧室8の圧力の差圧が、横断面積S1の弁部3aに作用して第1弁体3を閉弁側に動作させる。第1ピストン部4には、中間圧室8の圧力と第1背圧室9の圧力の差圧が横断面積S2に作用する。この作用により、第1ピストン部4は第1弁体3を閉弁側に動作させる。
【0025】
第1減圧弁101は、第1供給圧室2に作用する燃料の圧力と、中間圧室8の圧力と、閉弁スプリング6の付勢力と、開弁スプリング7の付勢力とのバランスにより動作する。この動作により、第1減圧弁101は第1減圧弁101の上流側に作用する燃料の圧力を減圧する。
【0026】
中間圧室8の圧力Pmは、第1供給圧室2の圧力Pin、出口圧Pout、閉弁スプリング6の付勢力Fs1、開弁スプリング7の付勢力Fs2、弁部3aの横断面積S1、第1ピストン部の摺動部における横断面積S2より、次の式1によって求まる。
【0027】
(式1)
Pm=(Fs2-Fs1)/(S2-S1)+S2/(S2-S1)×Pout-S1/(S2-S1)×Pin
式1によれば、Poutを一定に制御することによって、中間圧室8の圧力Pmの精度を向上することができる。
【0028】
第2減圧弁102は、第2弁体13、第2ピストン部15、第2弁座部10a2、閉弁スプリング17、開弁スプリング18、シール部14およびシール部16を備えている。第2減圧弁102は、弁部13aに対して軸方向ADの両側に設けられた一対の摺動部を備えている。
【0029】
中間通路11は、第1減圧弁101の下流側と第2減圧弁102の上流側とを連絡する通路である。中間通路11は、上流において中間圧室8に連通し下流において第2供給圧室12に連通している。第2供給圧室12は、上流側において中間通路11に連通し下流側において出口圧室19に連通している。ケーシング10aにおいて第2供給圧室12と出口圧室19との接続部には、第2弁座部10a2が設けられている。第2供給圧室12と第3シリンダ10a5は、第2弁体13を収容している。
【0030】
第2弁体13は、流路軸の方向に沿って延びる軸方向ADに細長い棒状体である。第2弁体13は、先端側の外周部が第2弁座部10a2に接触する弁部13aを有する。第2弁体13は、第2弁座部10a2に対して、弁部13aが接触したときに閉弁状態になり弁部13aが離間したときに開弁状態になる。閉弁状態において、弁部13aは、第2弁座部10a2に対して線状に接触する。弁部13aは、軸方向ADに直交する横断面積S3を有するように形成されている。
【0031】
閉弁スプリング17、第2弁体13、第2ピストン部15および開弁スプリング18は、ケーシング10a内において軸方向ADに並んで設けられている。第2弁体13における一方側または弁部13a側の端部は、軸方向ADに直交する第2ピストン部15の端面に接触している。この端面は、出口圧室19に設けられて、出口圧室19の圧力が作用している。第2弁体13と第2ピストン部15は、一体である一つの部材であってもよい。
【0032】
第2ピストン部15と開弁スプリング18は、第2弁座部10a2に対して一方側に設けられた第2シリンダ10a4に位置している。この明細書における一方側は、弁部が弁座に対して近づく閉弁側に相当する。第2シリンダ10a4に対して摺動する第2ピストン部15の部分は、一対の摺動部のうち、弁部13aに対して一方側に設けられた摺動部である。この一方側の第2ピストン部15における摺動部は、第2供給圧室12に対して一方側に設けられている。この摺動部は、軸方向ADに直交する横断面積S4を有するように形成されている。横断面積S4は、横断面積S3よりも小さい構成としてもよい。この構成である場合、開弁スプリング18の小型化が図れて、装置の小型化に寄与する。横断面積S4は、横断面積S3よりも大きい構成としてもよい。この構成である場合は、第2減圧弁102の調圧性能向上に寄与する。
【0033】
開弁スプリング18は、第2弁体13とは反対側に位置する第2ピストン部15の端部に接触して、開弁側に第2弁体13を付勢する弾性力を提供する付勢部材である。閉弁スプリング17と開弁スプリング18は、第2弁体13を互いに軸方向に沿って逆向きに押し合う一対の付勢部材を構成する。開弁スプリング18は、一対の付勢部材のうち、弁部13aに対して一方側に設けられた付勢部材である。開弁スプリング18による付勢力は、閉弁スプリング17による付勢力よりも大きく設定されている付勢部材である。第2供給圧室12に燃料が供給されていない状態では、第2弁体13は開弁している。
【0034】
第2ピストン部15は、第2シリンダ10a4に対して軸方向に摺動する摺動部である。第2ピストン部15の外周部には、第2シリンダ10a4との間にシール部16が設けられている。シール部16は、弁部13aの両側に設けられた一対のシール部のうち、一方側に位置する摺動部に設けられた封止部である。シール部16は、第2シリンダ10a4に対して第2ピストン部15が摺動可能なように、弾性変形可能な材質によって形成されている。シール部16は、例えば、ゴム製のOリングである。開弁スプリング18を収容する室と出口圧室19とは、第2シリンダ10a4に内接するシール部16によって遮断されている。
【0035】
弁部13aとは反対側に位置する第2弁体13の端部と閉弁スプリング17は、第3シリンダ10a5に位置している。第3シリンダ10a5に対して軸方向に摺動する第2弁体13の部分は、一対の摺動部のうち、弁部13aに対して他方側に設けられた摺動部である。第2弁体13における摺動部は、第2供給圧室12に対して他方側に設けられている。この摺動部は、軸方向ADに直交する横断面積S3を有するように形成されている。この摺動部と弁部13aは、同等の横断面積となるように形成されている。換言すれば、第2減圧弁102は、摺動径とシート径とが同等である。この明細書における他方側は、弁部が弁座に対して離間していく開弁側に相当する。
【0036】
閉弁スプリング17は、第2弁体13の端部に接触して、弁部13aが第2弁座部10a2に近づく閉弁側に第2弁体13を付勢する弾性力を提供する付勢部材である。閉弁スプリング17は、一対の付勢部材のうち、弁部13aに対して他方側に設けられた付勢部材である。第2弁体13の外周部には、第3シリンダ10a5との間にシール部14が設けられている。シール部14は、第3シリンダ10a5に対して第2弁体が摺動可能なように、弾性変形可能な材質によって形成されている。シール部14は、例えば、ゴム製のOリングである。
【0037】
第2背圧室20は、第3シリンダ10a5において、第2弁体13に対して出口圧室19とは反対側に形成されている室である。第2供給圧室12と第2背圧室20とは、第3シリンダ10a5に内接するシール部14によって遮断されている。第2供給圧室12と第2背圧室20とは、第3シリンダ10a5に内接するシール部14によって遮断されている。
【0038】
第2背圧室20と第1背圧室9と下流側通路21とは、連絡通路22を介して連通している。下流側通路21の下流端部は、排出通路23につながっている。連絡通路22は、下流側通路21と排出通路23との接続部につながっている。下流側通路21、連絡通路22は、出口圧室19と、第2背圧室20および第1背圧室9とを連通させる連通路である。
【0039】
この構成により、第1背圧室9と第2背圧室20には、第2減圧弁102から吐出された燃料の吐出圧が下流側通路21および連絡通路22を介して導入される。第1背圧室9と第2背圧室20には、下流側通路21における出口圧と同等の圧力が作用するようになる。連絡通路22によって第1背圧室9に吐出圧が作用するため、摺動部におけるシール部5には中間圧室8の中間圧と吐出圧の差圧が作用することになる。このようにシール部5に作用する差圧は、特許文献1に記載の装置において作用する、中間圧と大気圧の差圧よりも小さいため、シール部5にかかる負荷を低減できる。
【0040】
また、第1背圧室9に導入される吐出圧は、第1ピストン部4に開弁スプリング7の付勢力と同方向に圧力を与える。このため、開弁スプリング7の付勢力をより小さい値に設定することができる。開弁スプリング7の付勢力を低減できると、開弁スプリング7の小型化が図れ、減圧弁全体の体格抑制に寄与する。さらに開弁スプリング7の付勢力低減により、ばね定数の低減も同時に実現でき、中間圧のばらつき低減にも寄与する。
【0041】
連絡通路22によって第2背圧室20に吐出圧が作用するため、摺動部におけるシール部14には中間圧室8の中間圧と吐出圧の差圧が作用することになる。このようにシール部14に作用する差圧は、特許文献1に記載の装置において作用する、中間圧と大気圧の差圧よりも小さいため、シール部14にかかる負荷を低減できる。
【0042】
また、第2背圧室20に導入される吐出圧は、第2弁体13の摺動部に閉弁スプリング17の付勢力と同方向に圧力を与える。このため、閉弁スプリング17の付勢力をより小さい値に設定することができる。閉弁スプリング17の付勢力を低減できると、閉弁スプリング17の小型化が図れ、減圧弁全体の体格抑制に寄与する。
【0043】
燃料が第2供給圧室12に供給されると、第2弁体13には軸方向の力が作用しにくい。これは、第2ピストン部15の摺動部と弁部13aは同等の横断面積であるからである。第2弁体13の開弁状態において燃料が第2供給圧室12に流入すると、燃料が出口圧室19に流下して圧力が上がっていき、第2ピストン部15は閉弁側に移動する。弁部13aは第2ピストン部15の動作に追随して第2弁座部10a2に近づいていく。互いに押し合う、閉弁スプリング17の付勢力と開弁スプリング18の付勢力とを考慮すると、第2減圧弁102の出口圧Poutは、次の式2によって求まる。
【0044】
(式2)
Pout=(Fs4-Fs3)/S4
式2によれば、Poutは、二つのスプリングの付勢力と、第2ピストン部15の摺動径によって決まるため、中間圧などの影響を受けない。
【0045】
第2減圧弁102は、中間通路11における減圧後の圧力と、下流側通路21における圧力と、閉弁スプリング17の付勢力と、開弁スプリング18の付勢力とのバランスにより動作する。この動作により、第2減圧弁102は第2減圧弁102の上流側に作用する燃料の圧力をさらに減圧する。減圧弁装置10は、供給圧が高圧の場合には、第1減圧弁101でラフに減圧して第2減圧弁102に供給し、第2減圧弁102で精密に調圧するという機能を果たす。
【0046】
第1実施形態の燃料供給装置30がもたらす作用効果について説明する。燃料供給装置30は、燃料の供給元装置31と、燃料供給通路を介して供給元装置31に連通している供給先装置32と、燃料供給通路に設けられた減圧弁装置10とを備える。減圧弁装置10は、第1減圧弁101と、第1減圧弁101よりも下流において燃料の圧力を減圧する第2減圧弁102とを含む。
【0047】
第1減圧弁101は、弁部3aと、弁部3aと一体に軸方向に摺動する摺動部と、摺動部とケーシング10aとの間を封止するシール部5と、を備える。第1減圧弁101は、開弁方向に摺動部を付勢する付勢部材と、開弁方向とは逆向きの閉弁方向に燃料が流入する供給圧室と、摺動部を開弁方向に押す背圧室と、を備える。第1減圧弁101は、弁座部よりも摺動部側に設けられて、弁部3aの開弁状態において供給圧室からの燃料が流出する中間圧室8を備える。減圧弁装置10は、第1減圧弁の中間圧室8と第2減圧弁102の供給圧室とを連絡する中間通路11と、第2減圧弁の出口圧室19と背圧室とを連通させる連通路とを備える。
【0048】
この装置によれば、第1減圧弁101に係る背圧室は第2減圧弁102の出口圧室19に連通する。このため、第1減圧弁101の背圧室には出口圧室19の吐出圧が作用する。これにより、第1減圧弁101の摺動部におけるシール部5には供給圧室の供給圧と第2減圧弁102の吐出圧との差圧が作用する。したがって、燃料供給装置30は、シール部5に作用する差圧を抑制できるので、摺動部におけるシール部5の耐久性向上が図れ、シール部5の信頼性を向上できる。さらに、第1減圧弁101の背圧室は吐出圧によって摺動部を付勢できるため、付勢部材による付勢力を低減可能であり、付勢部材の小型化に寄与する。また、付勢力の低減により、付勢部材による付勢力の精度や第1減圧弁101の出口の調圧精度を向上できる減圧弁装置10を提供できる。
【0049】
連通路は、第2減圧弁102の出口圧室19、第1減圧弁101の背圧室および第2減圧弁の背圧室を連通する通路である。この構成によれば、第2減圧弁102の背圧室にも出口圧室19の吐出圧が作用する。これにより、第2減圧弁102の摺動部におけるシール部14には供給圧室の供給圧と第2減圧弁102の吐出圧との差圧が作用する。燃料供給装置30は、シール部5およびシール部14に作用する差圧を抑制できるので、第1減圧弁と第2減圧弁の両方におけるシール部の耐久性向上を図ることができる。さらに、第2減圧弁102の背圧室は吐出圧によって摺動部を付勢できるため、付勢部材による付勢力を低減可能であり、付勢部材の小型化に寄与する。
【0050】
<第2実施形態>
第2実施形態の減圧弁装置110について、
図3を参照して説明する。減圧弁装置110は、第1実施形態に対して、下流側通路21に発生する脈動を抑制可能な構成を備える点が相違する。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については第1実施形態と同様であり、以下、前述の実施形態と異なる点について説明する。
【0051】
第2実施形態の燃料供給装置30は、
図3に示す減圧弁装置110を備える。
図3に示すように、減圧弁装置110は、連絡通路22の途中に絞り通路部24を含んでいる。絞り通路部24は、連絡通路22において前後の通路よりも通路断面積が小さくなっている部分である。絞り通路部24は、連絡通路22におけるオリフィスとして機能する。絞り通路部24は、連絡通路22において、例えば、第1背圧室9と第2背圧室20との間に設けられている。
【0052】
減圧弁装置110は、圧力脈動を抑制可能な機能としてのアキュムレータ装置25を備えている。アキュムレータ装置25は、ケーシング110aに設けられたシリンダ10a6と、ピストン部24aと、シール部25bと、付勢部材25cと、背圧室25dとを含んでいる。アキュムレータ装置25は、第1背圧室9に連通する通路の容積を可変する機能を有する。
【0053】
ピストン部24aと付勢部材25cは、シリンダ10a6に収容されている。付勢部材25cは、第1背圧室9とは反対側に位置するピストン部24aの端部に接触して、第1背圧室9側にピストン部24aを付勢する弾性力を提供する。ピストン部24aは、シリンダ10a6において軸方向に摺動する。ピストン部24aの軸方向位置は、付勢部材25cによる付勢力と第1背圧室9の圧力とがバランスすることによって定まる。
【0054】
ピストン部24aの外周部には、シリンダ10a6との間にシール部25bが設けられている。シール部25bは、シリンダ10a6に対してピストン部24aが摺動可能なように、弾性変形可能な材質によって形成されている。シール部25bは、例えば、ゴム製のOリングである。背圧室25dは、シリンダ10a6において、ピストン部24aに対して第1背圧室9とは反対側に形成されている室である。背圧室25dは、ピストン部24aに対して付勢力に抗する方向に押す圧力を与える。背圧室25dと第1背圧室9とは、シリンダ10a6に内接するシール部25bによって遮断されている。
【0055】
第1背圧室9には、供給先装置32側からの燃料が排出通路23および連絡通路22を通じて伝わる。この燃料の逆流は、脈動流として第1背圧室9を出入りする。このとき、アキュムレータ装置25は、第1背圧室9の圧力変化に応じてピストン部24a軸方向に変位して、第1背圧室9に連通する通路の容積を可変する。この動作により、アキュムレータ装置25は第1背圧室9における圧力変動を抑えることができる。
【0056】
第2実施形態の燃料供給装置30の作用効果について説明する。減圧弁装置110における連通路は、通路横断面積が絞られている絞り通路部24を備えている。この構成によれば、供給先装置32側から伝搬してくる脈動に対して、背圧室への伝搬を抑えることが可能である。この脈動減衰効果によれば、第1減圧弁101の動作の安定化に寄与する燃料供給装置30を提供できる。この絞り通路部24は、例えば、供給先装置32に燃料噴射弁が含まれる場合に、燃料噴射弁の噴射による圧力脈動の発生に対して、有用である。
【0057】
減圧弁装置110は、第1減圧弁101の背圧室に連通するアキュムレータ装置25を備えている。この構成によれば、アキュムレータ装置25によって、第1減圧弁101の背圧室に連通する空間の容積を可変できるため、当該背圧室の圧力変化を抑制することが可能である。したがって、第1減圧弁101の動作の安定化に寄与する燃料供給装置30を提供できる。
【0058】
<第3実施形態>
第3実施形態の減圧弁装置210について、
図4を参照して説明する。減圧弁装置210は、第1実施形態に対して、一つの減圧機構部を備える点が相違する。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については前述の実施形態と同様であり、以下、前述の実施形態と異なる点について説明する。
【0059】
第3実施形態の燃料供給装置30は、
図4に示す減圧弁装置210を備える。
図4に示すように、減圧弁装置210は、燃料供給通路に設けられて、供給元装置31から供給される燃料の圧力を減圧する装置である。
図4に示すように、減圧弁装置210は、燃料供給通路に設けられた、弁部13aおよび弁座部210a2を備えている。
【0060】
ケーシング210aは、上流側通路1、下流側通路21、排出通路23を形成し、弁体113を収容している。ケーシング210aには、供給圧室112、背圧室120、連絡通路122および出口圧室19が形成されている。ケーシング210aには、第1シリンダ210a4および第2シリンダ210a5が形成されている。
【0061】
上流側通路1は、減圧前の燃料が流入する流入通路である。上流側通路1は、供給圧室112に対して弁座部210a2よりも他方側に燃料が流入するように設けられた通路である。排出通路23は、減圧された後の燃料が排出される通路である。
【0062】
減圧弁装置210は、弁体113、ピストン部115、弁座部210a2、閉弁スプリング17、開弁スプリング18、シール部14およびシール部16を備えている。減圧弁装置210は、弁部13aに対して軸方向ADの両側に設けられた一対の摺動部を備えている。
【0063】
供給圧室112は、上流側において上流側通路1に連通し下流側において出口圧室19に連通している。ケーシング210aにおいて供給圧室112と出口圧室19との接続部には、弁座部210a2が設けられている。供給圧室112と第2シリンダ210a5は、弁体113を収容している。
【0064】
弁体113は、流路軸の方向に沿って延びる軸方向ADに細長い棒状体である。弁体113は、先端側の外周部が弁座部210a2に接触する弁部13aを有する。弁体113は、弁座部210a2に対して、弁部13aが接触したときに閉弁状態になり弁部13aが離間したときに開弁状態になる。閉弁状態において、弁部13aは、弁座部210a2に対して線状に接触する。弁体113の弁部13aは、軸方向ADに直交する横断面積S3を有するように形成されている。
【0065】
閉弁スプリング17、弁体113、ピストン部115および開弁スプリング18は、ケーシング210a内において軸方向ADに並んで設けられている。弁体113における一方側または弁部13a側の端部は、軸方向ADに直交するピストン部115の端面に接触している。この端面は、出口圧室19に存在し、出口圧室19の圧力が作用している。弁体113とピストン部115は、一体である一つの部材であってもよい。
【0066】
ピストン部115と開弁スプリング18は、弁座部210a2に対して一方側に設けられた第1シリンダ210a4に位置している。第1シリンダ210a4に対して摺動するピストン部115の部分は、一対の摺動部のうち、弁部13aに対して一方側に設けられた摺動部である。この一方側のピストン部115における摺動部は、供給圧室112に対して一方側に設けられている。一方側の摺動部は、軸方向ADに直交する横断面積S4を有するように形成されている。開弁スプリング18は、弁体113とは反対側に位置するピストン部115の端部に接触して、開弁方向に弁体113を付勢する弾性力を提供する付勢部材である。閉弁スプリング17と開弁スプリング18は、弁体113を互いに軸方向に沿って逆向きに押し合う一対の付勢部材を構成する。供給圧室112に燃料が供給されていない状態では、弁体113は開弁している。
【0067】
ピストン部115は、第1シリンダ210a4に対して軸方向に摺動する摺動部である。ピストン部115の外周部には、第1シリンダ210a4との間にシール部16が設けられている。シール部16は、第1シリンダ210a4に対してピストン部115が摺動可能なように、弾性変形可能な材質によって形成されている。開弁スプリング18を収容する室と出口圧室19とは、第1シリンダ210a4に内接するシール部16によって遮断されている。
【0068】
弁部13aとは反対側に位置する弁体113の端部と閉弁スプリング17は、第2シリンダ210a5に位置している。第2シリンダ210a5に対して軸方向に摺動する弁体113の部分は、一対の摺動部のうち、弁部13aに対して他方側に設けられた摺動部である。弁体113における摺動部は、供給圧室112に対して他方側に設けられている。この摺動部は、弁部13aと同等の横断面積S3を有するように形成されている。換言すれば、減圧弁装置210は、摺動径とシート径とが同等である。
【0069】
閉弁スプリング17は、弁体113の端部に接触して、弁部13aが弁座部210a2に近づく閉弁側に弁体113を付勢する弾性力を提供する付勢部材である。弁体113の外周部には、第2シリンダ210a5との間にシール部14が設けられている。シール部14は、第2シリンダ210a5に対して弁体113が摺動可能なように、弾性変形可能な材質によって形成されている。
【0070】
背圧室120は、第2シリンダ210a5において、弁体113に対して出口圧室19とは反対側に形成されている室である。供給圧室112と背圧室120とは、第2シリンダ210a5に内接するシール部14によって遮断されている。供給圧室112と背圧室120とは、第2シリンダ210a5に内接するシール部14によって遮断されている。
【0071】
背圧室120と下流側通路21とは、連絡通路122を介して連通している。連絡通路122は、下流側通路21と排出通路23との接続部につながっている。下流側通路21、連絡通路122は、出口圧室19と背圧室120とを連通させる連通路である。
【0072】
この構成により、背圧室120には、減圧弁装置210から吐出された燃料の吐出圧が下流側通路21および連絡通路122を介して導入される。背圧室120には、下流側通路21における出口圧と同等の圧力が作用するようになる。連絡通路122によって背圧室120に吐出圧が作用するため、摺動部におけるシール部14には供給圧室112の圧力と吐出圧の差圧が作用することになる。このようにシール部14に作用する差圧は、特許文献1に記載の装置において作用する、中間圧と大気圧の差圧よりも小さいため、シール部14にかかる負荷を低減できる。
【0073】
また、背圧室120に導入される吐出圧は、弁体113の摺動部に閉弁スプリング17の付勢力と同方向に圧力を与える。このため、閉弁スプリング17の付勢力をより小さい値に設定可能である。閉弁スプリング17の付勢力を低減できると、閉弁スプリング17の小型化が図れ、体格抑制に寄与する。
【0074】
燃料が供給圧室112に供給されると、弁体113には軸方向の力が作用しにくい。これは、ピストン部115の摺動部と弁部13aは同等の横断面積であるからである。弁体113の開弁状態において燃料が供給圧室112に流入すると、燃料が出口圧室19に流下して圧力が上がっていき、ピストン部115は閉弁側に移動する。弁部13aはピストン部115の動作に追随して弁座部210a2に近づいていく。互いに押し合う、閉弁スプリング17の付勢力と開弁スプリング18の付勢力とを考慮すると、減圧弁装置210の出口圧Poutは、前述した式2によって求まる。
【0075】
減圧弁装置210は、供給圧室112の圧力と、下流側通路21における圧力と、閉弁スプリング17の付勢力と、開弁スプリング18の付勢力とのバランスにより動作する。この動作により、減圧弁装置210は、燃料供給通路を流下する燃料の圧力を減圧する。
【0076】
第3実施形態の燃料供給装置30の作用効果について説明する。燃料供給装置30は、供給元装置31と、供給先装置32と、燃料供給通路に設けられて、供給先装置32へ流下させる燃料の圧力を減圧する減圧弁装置210とを備える。減圧弁装置210は、弁部13aと、軸方向について弁部13aの両側に設けられて、弁部13aと一体に軸方向に摺動する一対の摺動部とを備える。減圧弁装置210は、一対の摺動部とケーシング210aとの間を封止する一対のシール部と、一対の摺動部のうち一方側の摺動部を、開弁方向である他方側に付勢する付勢部材とを備える。減圧弁装置210は、一対の摺動部のうち他方側の摺動部と弁座部210a2との間において弁部を囲むように設けられた燃料の供給圧室112と、供給圧室112に対して弁座部よりも他方側に燃料が流入するように設けられた流入通路とを備える。減圧弁装置210は、弁座部よりも一方側に設けられ開弁状態において供給圧室からの燃料が流出する出口圧室19と、他方側の摺動部に対して一方側に押す圧力を与える背圧室120と、背圧室120と出口圧室19とを連通させる連通路とを有する。他方側の摺動部と弁部13aとは、横断面積が同等に形成されている。
【0077】
他方側の摺動部と弁部とは横断面積が同等である構成によれば、供給圧室に供給された燃料によって他方側の摺動部と弁部とを形成する軸部分に軸方向の力が作用しにくい。この効果により、減圧弁装置210は、供給圧に関わらず、安定した吐出圧を提供できる。
【0078】
さらに背圧室120は出口圧室19に連通するため、背圧室120に出口圧室19の吐出圧が作用する。これにより、他方側の摺動部におけるシール部14には供給圧室112の供給圧と出口圧室19の吐出圧との差圧が作用する。このようにシール部14に作用する差圧を抑制できるため、他方側の摺動部におけるシール部14の耐久性向上が図れ、シール部14の信頼性を向上できる。さらに、背圧室120は吐出圧によって摺動部を付勢できるため、付勢部材による付勢力を低減可能であり、付勢部材の小型化に寄与する。
【0079】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0080】
明細書に開示する目的を達成可能な減圧弁装置は、弁部の両側に設けられた一対の付勢部材を備える構成に限定されない。この減圧弁装置は、弁部を開弁側に付勢する付勢部材を少なくとも備える構成も含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…上流側通路(流入通路)、 2…第1供給圧室(供給圧室)、 3a,13a…弁部
4…第1ピストン(摺動部)、 5,14,16…シール部
7,18…開弁スプリング(付勢部材)、 8…中間圧室、 9…第1背圧室(背圧室)
10,110,210…減圧弁装置、 10a,110a,210a…ケーシング
10a1…第1弁座部(弁座部)、 12…第2供給圧室(供給圧室)
19…出口圧室、 21…下流側通路(連通路)、 22,122…連絡通路(連通路)
31…供給元装置、 32…供給先装置、 101…第1減圧弁
102…第2減圧弁、 112…供給圧室、 113…弁体(摺動部)
115…ピストン部(摺動部)、 120…背圧室、 210a2…弁座部