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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用サイドミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/072 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B60R1/072
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020127328
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024627
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅紀
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-20694(JP,B1)
【文献】実開平1-63553(JP,U)
【文献】米国特許第3459470(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方を映すミラーを支持するミラーハウジングと、該ミラーハウジングの下に位置し車体と一体的な筐体であるミラーベースとを備える車両用サイドミラー装置において、当該車両用サイドミラー装置はさらに、
前記ミラーハウジング内から前記ミラーベース内まで上下方向に延びていて前記ミラーハウジングに連結されている棒状体と、
前記ミラーベース内に設置され前記棒状体の下端を揺動させて前記ミラーの姿勢を調整する第1アクチュエータとを備えることを特徴とする車両用サイドミラー装置。
【請求項2】
当該車両用サイドミラー装置はさらに、前記ミラーハウジング内に配置され該ミラーハウジングに連結されていて前記棒状体を軸として回動することで前記ミラーハウジングを格納または展開する電格ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドミラー装置。
【請求項3】
前記電格ユニットは、前記ミラーハウジングが展開した状態で車幅方向から見て前記棒状体と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用サイドミラー装置。
【請求項4】
前記第1アクチュエータは、車両前後方向から見て前記棒状体の下端と重なる位置に配置されていて、前記下端を車両前後方向に揺動させ、前記ミラーハウジングを車両前後方向に傾倒させて前記ミラーの鏡面角度を調整することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用サイドミラー装置。
【請求項5】
前記第1アクチュエータは、前記棒状体の下端の前方に配置されていて、さらに前記ミラーハウジングが展開した状態で車両上下方向から見て前記ミラーハウジングの底部と重なるよう配置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用サイドミラー装置。
【請求項6】
前記電格ユニットは、該電格ユニットと前記ミラーとの距離を変化させるよう作動する第2アクチュエータによって前記ミラーハウジングに連結されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用サイドミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用サイドミラー装置は、ミラーハウジングを備える。ミラーハウジングは、車両後方を映すミラーを支持する。ミラーの鏡面角度などの姿勢を調整することで、例えば運転者に向けて映し出すエリアを調整することができる。
【0003】
特許文献1には、鏡面角度調整装置が記載されている。この鏡面角度調整装置は、ミラーの裏面側に取り付けられるピボットプレートと、ピボットプレートを保持するアクチュエータとを備える。アクチュエータは、椀状の第一ハウジングと、ピボットプレートを押し引きするロッドと、モータの駆動力をロッドに伝達するウォームホイールとを有する。
【0004】
第一ハウジングは、底部の内周側に形成された島状部を有し、島状部にはギア受部が配置されている。ギア受け部は、ウォームホイールの前端部の外周面を支持する部位であって、欠損した円弧状となっている。
【0005】
特許文献1の鏡面角度調整装置では、ギア受部を欠損した円弧状としたので、ギア受部を円環状に形成した場合に比べて、ギア受部の容積を小さくでき、レイアウトの自由度が高くなり、第一ハウジングの小型化を実現できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4579253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の鏡面角度調整装置では、ミラーハウジングに支持されたミラーの裏面側に鏡面調整機構となるアクチュエータを設置する必要があるため、ミラーハウジングの小型化を図る上で、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ミラーハウジング内に配置される部品を少なくでき、小型化を図ることができる車両用サイドミラー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用サイドミラー装置の代表的な構成は、車両後方を映すミラーを支持するミラーハウジングと、ミラーハウジングの下に位置し車体と一体的な筐体であるミラーベースとを備える車両用サイドミラー装置において、車両用サイドミラー装置はさらに、ミラーハウジング内からミラーベース内まで上下方向に延びていてミラーハウジングに連結されている棒状体と、ミラーベース内に設置され棒状体の下端を揺動させてミラーの姿勢を調整する第1アクチュエータとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ミラーハウジング内に配置される部品を少なくでき、小型化を図ることができる車両用サイドミラー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る車両用サイドミラー装置の外観を示す図である。
図2図1の車両用サイドミラー装置の要部を示す図である。
図3図2の車両用サイドミラー装置の要部の分解斜視図である。
図4図2の車両用サイドミラー装置を他の方向から見た状態を示す図である。
図5図2の車両用サイドミラー装置から各部材を省略した状態を示す図である。
図6図2の車両用サイドミラー装置の要部を断面とともに示す図である。
図7図2の車両用サイドミラー装置を上方から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用サイドミラー装置の代表的な構成は、車両後方を映すミラーを支持するミラーハウジングと、ミラーハウジングの下に位置し車体と一体的な筐体であるミラーベースとを備える車両用サイドミラー装置において、車両用サイドミラー装置はさらに、ミラーハウジング内からミラーベース内まで上下方向に延びていてミラーハウジングに連結されている棒状体と、ミラーベース内に設置され棒状体の下端を揺動させてミラーの姿勢を調整する第1アクチュエータとを備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、ミラーベース内に設置された、すなわちミラーハウジングの外部に位置する第1アクチュエータの、伸縮するなどの動作によって、棒状体の下端が揺動する。棒状体の下端は、車両前後方向または車幅方向のいずれに揺動させてもよい。これにより棒状体は、棒状体が貫通しているミラーベースの例えば上壁やその近傍を支点として傾倒し、棒状体に連結されたミラーハウジングも、車両前後方向または車幅方向に傾倒する。特にミラーハウジングが車両前後方向に傾倒すると、ミラーハウジングに支持されたミラーの鏡面角度を調整でき、ミラーを例えば上向きや下向きにすることができる。
【0014】
このように、ミラーハウジングの外部に配置された第1アクチュエータによってミラーハウジング自体を傾倒させることで、ミラーの姿勢を調整できる。したがって上記構成によれば、ミラーハウジング内に第1アクチュエータを配置する必要がないため、ミラーハウジング内に配置される部品を少なくでき、車両用サイドミラー装置の小型化を図ることができる。
【0015】
上記の車両用サイドミラー装置はさらに、ミラーハウジング内に配置されミラーハウジングに連結されていて棒状体を軸として回動することでミラーハウジングを格納または展開する電格ユニットを備えるとよい。
【0016】
これにより、電格ユニットが棒状体に対して回動すると、電格ユニットと連結されているミラーハウジングも棒状体を軸として回動し、格納されまたは展開する。このように、棒状体は、第1アクチュエータによって揺動してミラーの姿勢を調整するときに用いられるだけでなく、電格ユニットによってミラーハウジングを格納または展開するときの軸としても用いられる。このため、上記構成では、ミラーハウジング内に配置される部品をより少なくでき、車両用サイドミラー装置の小型化をより図ることができる。
【0017】
上記の電格ユニットは、ミラーハウジングが展開した状態で車幅方向から見て棒状体と重なる位置に配置されているとよい。
【0018】
これにより、第1アクチュエータにより棒状体を揺動させミラーハウジングを傾倒させてミラーの姿勢を調整するとき、揺動する棒状体に対してミラーハウジングの重心の前後方向のオフセット量を減らすことができる。このため第1アクチュエータに必要とされる力を小さくすることができる。
【0019】
上記の第1アクチュエータは、車両前後方向から見て棒状体の下端と重なる位置に配置されていて、下端を車両前後方向に揺動させ、ミラーハウジングを車両前後方向に傾倒させてミラーの鏡面角度を調整するとよい。
【0020】
これにより、ミラーベース内に設置された第1アクチュエータと棒状体の下端が車両前後方向で重なっているため、ミラーベースを前方から見たときの面積(投影面積)を小さくでき、走行時での風の抵抗を低減できる。また、第1アクチュエータを作動させることで、ミラーの上下の鏡面角度を調整できる。
【0021】
上記の第1アクチュエータは、棒状体の下端の前方に配置されていて、さらにミラーハウジングが展開した状態で車両上下方向から見てミラーハウジングの底部と重なるよう配置されているとよい。
【0022】
ここでミラーハウジングは、展開した状態から棒状体を軸として例えばミラーが車両側部に対面するように後方に向かって回動することで格納され、格納された状態からミラーが車両後方を向くように棒状体を軸として前方に向かって回動することで展開する。上記構成では、ミラーハウジングを格納または展開するときに用いられる棒状体の下端の前方に第1アクチュエータが配置されている。このため、ミラーハウジングを格納または展開するときに第1アクチュエータが邪魔にならず、ミラーハウジングに支持されるミラーの大きさを確保できる。
【0023】
また上記構成では、展開したミラーハウジングの底部と車両上下方向で重なるように、第1アクチュエータが配置されている。このため、重量物である第1アクチュエータが揺動する棒状体の近くに配置されることになるため、第1アクチュエータを作動させたときにミラーベースにかかるモーメントを小さくすることができる。
【0024】
上記の電格ユニットは、電格ユニットとミラーとの距離を変化させるよう作動する第2アクチュエータによってミラーハウジングに連結されているとよい。
【0025】
これにより、ミラーハウジング内に配置した第2アクチュエータを作動させると、電格ユニットとミラーの距離が変化するため、ミラーの左右の鏡面角度を調整でき、ミラーを例えば車外側に向けたり車内側に向けたりすることができる。
【実施例
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る車両用サイドミラー装置100の外観を示す図である。図1(a)、図1(b)は、車両用サイドミラー装置100を斜め後方、斜め前方から見た状態をそれぞれ示す図である。なお以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0028】
車両用サイドミラー装置100は、図1(a)に示すようにミラーハウジング102と、ミラーベース104とを備える。ミラーハウジング102は、ミラー106を支持する。ミラー106は、ミラーハウジング102の車両後側に配置されていて、例えば運転者に向けて車両後方のエリアを映し出す。またミラーハウジング102の車両前側は、図1(b)に示すカバー108によって覆われている。
【0029】
ミラーベース104は、ミラーハウジング102の下に位置し車体と一体的な筐体である。またミラーベース104内には、ミラーハウジング102の外部に位置する外部アクチュエータ110が設置されている。なお外部アクチュエータ110は、図示を省略するが、実際にはミラーベース104の外装に包囲されている。
【0030】
図2は、図1の車両用サイドミラー装置100の要部を示す図である。図中では、図1(b)の車両用サイドミラー装置100のミラーハウジング102からミラー106およびカバー108を取り外して、ミラーハウジング102の内部を示している。図3は、図2の車両用サイドミラー装置100の要部の分解斜視図である。
【0031】
車両用サイドミラー装置100は、図2に示す電格軸棒112と、電格ユニット114とを備える。電格軸棒112は、上下方向に延びる棒状体であって、ミラーハウジング102内からミラーハウジング102の底部116を貫通して、ミラーベース104内まで延びている。また電格軸棒112は、その上端118(図3参照)が連結部120を介してミラーハウジング102に連結されている。
【0032】
連結部120は、図2に示すように車幅方向左側に延びる腕部122を有し、例えば腕部122によって電格軸棒112の上端118とミラーハウジング102の内壁126とを連結している。また、連結部120は、ミラーハウジング102を電格軸棒112に対して回動可能に連結している。さらに、電格軸棒112のうち上端118は、連結部120によって回転可能に連結される部位であり、図3に示すように上端118を除く他の部位よりも径が大きくなっている。
【0033】
図4は、図2の車両用サイドミラー装置100を他の方向から見た状態を示す図である。図4(a)、図4(b)は、車両用サイドミラー装置100を車幅方向、斜め下方から見た状態をそれぞれ示す図である。なお図4(b)では、ミラーベース104を省略している。
【0034】
電格軸棒112の下端128は、図4(a)に示すようにミラーベース104内まで到達し、揺動部130を介して外部アクチュエータ110のロッド132に接続されている。外部アクチュエータ110は、電格軸棒112の下端128の前方に配置されていて、さらにロッド132が車両前後方向に伸縮する。
【0035】
揺動部130は、図4(b)に示すように電格軸棒112の下端128と外部アクチュエータ110のロッド132をつないでいる。さらに外部アクチュエータ110は、電格軸棒112の下端128と車両前後方向で重なる位置に配置されている。そして外部アクチュエータ110は、作動時にロッド132を車両前後方向に伸縮させることで、揺動部130を介して電格軸棒112の下端128を揺動させる。
【0036】
図2に示す電格ユニット114は、ミラーハウジング102内に配置され、さらにミラーハウジング102に連結されていて、その一部が電格軸棒112を軸として回動することでミラーハウジング102を格納または展開する。なお図1(a)に示すミラーハウジング102は、ミラー106が車両後方を向いた展開した状態であり、展開した状態から電格ユニット114の一部が電格軸棒112を軸として回動すると、ミラー106が車両側部に対面した格納された状態となる。
【0037】
電格ユニット114は、図3に示すように電格モータ134が設置された電格モータハウジング136と、サイドベース138と、ベース140とを有する。サイドベース138は、電格モータハウジング136の電格モータ134の下方に重なるように配置される。ベース140は、電格モータハウジング136の円筒部142の下方であってサイドベース138の側方に位置するように、電格モータハウジング136およびサイドベース138に組み付けられる。
【0038】
電格モータハウジング136の円筒部142の上方には、図3に示すスペーサ144、弾性体146およびワッシャ148が配置され、これらを電格軸棒112が上方から貫通している。また電格軸棒112は、電格モータハウジング136の円筒部142、ベース140を貫通し、さらに電格ユニットケース150も貫通している。
【0039】
図5は、図2の車両用サイドミラー装置100から各部材を省略した状態を示す図である。図5(a)は、車両用サイドミラー装置100から電格ユニット114などを省略して示している。図5(b)は、図5(a)の車両用サイドミラー装置100に電格ユニットケース150を追加した状態を示している。
【0040】
電格軸棒112は、図5(a)に示すミラーハウジング102の底部116に形成された凸部152の貫通孔154を貫通していて、その下端128(図4(b)参照)が揺動部130を介して外部アクチュエータ110につながれている。このため、電格軸棒112は、外部アクチュエータ110のロッド132の伸縮に応じて揺動するものの(後述)、常時回動しない。
【0041】
電格ユニットケース150は、図5(b)に示すように電格軸棒112に貫通されていて、さらに電格軸棒112の例えば爪部156(図3参照)によって、電格軸棒112と結合されている。このため、電格ユニットケース150は回動しない。また電格ユニットケース150は、電格ユニット114のうちベース140と噛み合う噛合部158を有する。このため、ベース140は、電格ユニットケース150と噛み合っているため、電格ユニットケース150と同様に回動しない。このように、電格ユニット114のうちベース140は、電格ユニットケース150を介して電格軸棒112に連結されている。
【0042】
電格ユニット114では、電格モータ134が作動すると、図示は省略するが、一例としてモータ軸に取り付けられた歯車とサイドベース138内に設置されたネジ状ギアが噛み合って回転する。さらに電格軸棒112を中心としてベース140内に配置される回動しないギアが、このギアの外周に沿って配置され回転するネジ状ギアと噛み合うことにより、電格ユニット114の一部すなわち電格モータハウジング136およびサイドベース138が一体となって電格軸棒112を軸として回動する。
【0043】
車両用サイドミラー装置100はさらに、図5(a)および図5(b)に示すように、ミラーハウジング102内に配置された内部アクチュエータ160を備える。内部アクチュエータ160は、ロッド162を有する。ロッド162の一端164は、図2に示す電格モータハウジング136に固定された保持部166を介して、電格モータハウジング136に位置が固定された状態で保持されている。ロッド162の他端168は、ミラーハウジング102に固定された例えば板状の固定部170を介して、ミラーハウジング102に固定されている。
【0044】
このため、上記の電格ユニット114のうち電格モータハウジング136およびサイドベース138が一体となって電格軸棒112を軸として回動する。すると、ミラーハウジング102は、電格モータハウジング136に固定された保持部166、ロッド162および固定部170を介して、電格軸棒112を軸として回動する。このようにして、固定部170に固定されたミラーハウジング102は、電格モータ134の駆動力によって格納または展開した状態となる。
【0045】
また、電格軸棒112の上端118によって保持された弾性体146は、電格ユニット114を電格ユニットケース150に押圧しつつ、電格ユニットケース150をミラーハウジング102の底部116に押圧している。このようにして、電格軸棒112と電格ユニット114の相対位置は、弾性体146によって保持されている。
【0046】
図6は、図2の車両用サイドミラー装置100の要部を断面とともに示す図である。図6(a)に示す断面は、電格軸棒112とその周囲に配置された電格ユニット114などを車両前後方向に沿った切断線で切断したときの断面である。図6(b)は、図6(a)の一部を拡大して示す図である。
【0047】
電格軸棒112は、上記の電格ユニットケース150を貫通し、さらに図6(a)および図6(b)に示すミラーハウジング102の底部116に形成された凸部152の貫通孔154を貫通している。また図6(b)に示すように、ミラーハウジング102の底部116とミラーベース104の上壁172との間には、例えば樹脂で形成されたリテーナ174が配置されている。
【0048】
ミラーベース104の上壁172は、図3に示すように開口176が形成された凸部178を有する。なお図3では、ミラーハウジング102が省略されている。またミラーベース104では、図6(b)に示すように上壁172の開口176が、ミラーハウジング102の底部116の貫通孔154よりも大きく形成されている。
【0049】
リテーナ174は、ミラーハウジング102の底部116とミラーベース104の上壁172との間に挟まれた状態で電格軸棒112に貫通され、これら底部116と上壁172の間で摺動する。また、ミラーベース104内であって上壁172の凸部178の下方には、他のリテーナ180(図3参照)が配置されている。
【0050】
他のリテーナ180は、ミラーベース104の上壁172の下方に配置された状態で電格軸棒112に貫通され、上壁172の下面と摺動する。なお他のリテーナ180は、例えば金属または樹脂で形成され、リテーナ174よりも剛性が高くなっている。
【0051】
ここで車両用サイドミラー装置100において、外部アクチュエータ110を作動した場合のミラーハウジング102の挙動について説明する。まず、外部アクチュエータ110が作動すると、図6(b)に示すロッド132が伸縮して揺動部130を介して、電格軸棒112の下端128が、例えば矢印Aに示すように揺動する。
【0052】
電格軸棒112は、その下端128が揺動することによって、電格軸棒112が貫通しているミラーベース104の例えば上壁172に形成された開口176やその近傍を支点として、矢印Bに示すように傾倒する。ここでは、ロッド132が伸縮して電格軸棒112の下端128を車両前後方向に揺動させているため、電格軸棒112に連結されたミラーハウジング102は、図6(a)の矢印Cに示すように車両前後方向に傾倒可能となる。その結果、車両用サイドミラー装置100では、ミラーハウジング102に支持されたミラー106(図1(a)参照)の鏡面角度を調整でき、ミラー106を上向きや下向きにすることができる。
【0053】
なお図示は省略するが、外部アクチュエータ110の配置を変更して、ロッド132が車幅方向に伸縮するようにすれば、電格軸棒112の下端128を車幅方向に揺動させて、ミラーハウジング102を車幅方向に傾倒できる。このような場合であっても、外部アクチュエータ110を作動させることで、ミラーハウジング102に支持されたミラー106の姿勢を調整することができる。
【0054】
このように車両用サイドミラー装置100では、ミラーハウジング102の外部に外部アクチュエータ110を配置し、外部アクチュエータ110によってミラーハウジング102自体を傾倒させることで、ミラー106の姿勢を調整できる。したがって車両用サイドミラー装置100によれば、ミラーハウジング102内に外部アクチュエータ110を配置する必要がないため、ミラーハウジング102内に配置される部品を少なくでき、小型化を図ることができる。
【0055】
またミラーベース104の上壁172に形成された開口176が、図6(b)に示すようにミラーハウジング102の底部116の貫通孔154よりも大きいため、ミラーベース104に対してミラーハウジング102をより広い範囲で傾倒させることができる。また、電格軸棒112がミラーベース104の上壁172の開口176を支点として傾倒するとき、支点の上下にリテーナ174、180が配置されているので、ミラーベース104に対してミラーハウジング102を滑らかかつ安定して動かすことができる。
【0056】
つぎに、車両用サイドミラー装置100において、電格ユニット114の電格モータ134が作動すると、上記したように電格モータハウジング136およびサイドベース138が一体となって電格軸棒112を軸として回動する。そして電格モータハウジング136と連結されているミラーハウジング102は、電格軸棒112を軸として回動し、格納されまたは展開する。
【0057】
また、電格軸棒112では、上端118が連結部120によって回転可能に連結されていて、上端118の径が他の部位よりも大きくなっている。このため、ミラーハウジング102は、電格軸棒112のうち径が大きい上端118に連結された連結部120を介して支持されつつ安定して回動できる。
【0058】
このように、電格軸棒112は、外部アクチュエータ110によって揺動してミラー106の姿勢を調整するときに用いられるだけでなく、電格ユニット114によってミラーハウジング102を格納または展開するときの軸としても用いられる。このため、車両用サイドミラー装置100によれば、ミラーハウジング102内に配置される部品をより少なくでき、小型化をより図ることができる。
【0059】
電格ユニット114は、図4(a)に示すように、ミラーハウジング102が展開した状態で車幅方向から見て電格軸棒112と重なる位置に配置されている。このため、車両用サイドミラー装置100では、外部アクチュエータ110によって電格軸棒112を揺動させ、ミラーハウジング102を傾倒してミラー106の姿勢を調整するとき、揺動する電格軸棒112に対してミラーハウジング102の重心の前後方向のオフセット量を減らすことができる。したがって車両用サイドミラー装置100によれば、外部アクチュエータ110によってミラーハウジング102を車両前後方向に傾倒して、ミラー106の鏡面角度を調整するとき、外部アクチュエータ110のロッド132を伸縮させるために必要とされる力を小さくすることができる。
【0060】
外部アクチュエータ110は、図4(a)に示すように、電格軸棒112の下端128の前方に配置されている。このため車両用サイドミラー装置100では、ミラーハウジング102を格納または展開するときに外部アクチュエータ110が邪魔にならず、ミラーハウジング102に支持されるミラー106の大きさを確保できる。
【0061】
また外部アクチュエータ110は、図4(a)および図4(b)に示すように、展開した状態のミラーハウジング102の底部116と車両上下方向で重なるように配置されている。このため、重量物である外部アクチュエータ110は、揺動する電格軸棒112の近くに配置されることになる。このため車両用サイドミラー装置100では、外部アクチュエータ110を作動させたときにミラーベース104にかかるモーメントを小さくすることができる。
【0062】
さらに外部アクチュエータ110は、図4(b)に示すように電格軸棒112の下端128と車両前後方向で重なるように配置されている。このため車両用サイドミラー装置100では、ミラーベース104を前方から見たときの投影面積を小さくでき、走行時での風の抵抗を低減できる。
【0063】
図7は、図2の車両用サイドミラー装置100を上方から見た状態を示す図である。図7(a)は、カバー108(図1(b)参照)を省略した上で、車両用サイドミラー装置100の全体の様子を示している。図7(b)は、図7(a)のミラーハウジング102を省略した上で、車両用サイドミラー装置100の一部を拡大して示している。
【0064】
内部アクチュエータ160のロッド162は、上記したように、その一端164が電格ユニット114の電格モータハウジング136に固定された保持部166で保持されている。ロッド162の他端168は、ミラーハウジング102に固定された固定部170を介して、ミラーハウジング102に固定されている。つまり電格モータハウジング136は、内部アクチュエータ160によってミラーハウジング102に連結されている。
【0065】
内部アクチュエータ160のロッド162は、図示のように、その一端164と電格軸棒112の中心182とを通る直線Dに対してほぼ直交する矢印Eに示す方向に伸縮し、これにより、固定部170を介してミラーハウジング102に力を伝達できる。
【0066】
内部アクチュエータ160は、矢印Eに示す方向にロッド162が伸縮するように作動すると、図7(a)に示すミラー106を支持するミラーハウジング102と電格ユニット114の電格モータハウジング136との距離を変化させる。すなわち、ミラーハウジング102が、図7(a)の矢印Fに示すように電格軸棒112を軸として回動すると、ミラー106と電格モータハウジング136の距離が変化する。したがって車両用サイドミラー装置100によれば、ミラーハウジング102に支持されたミラー106の左右の鏡面角度を調整でき、ミラー106を例えば車外側に向けたり車内側に向けたりすることができる。
【0067】
このように電格軸棒112は、電格ユニット114によりミラーハウジング102を格納または展開するときの軸として用いられるだけでなく、内部アクチュエータ160を作動させてミラー106の鏡面角度を調整するときにも用いられる。したがって車両用サイドミラー装置100によれば、ミラーハウジング102内に配置される部品を少なくでき、小型化をより図ることができる。
【0068】
ミラーハウジング102では、内部アクチュエータ160のロッド162の一端164の位置が、図7(a)に示すように電格軸棒112を上方から見てミラー106の鏡面に平行に移動させた範囲内にあるようにレイアウトされている。さらにミラーハウジング102では、ロッド162の一端164が、上方から見て電格ユニット114と重なる位置に配置されるようにレイアウトされている。車両用サイドミラー装置100では、このようなレイアウトにより、ミラーハウジング102の小型化を図ることができる。
【0069】
内部アクチュエータ160のロッド162は、上方から見て直線Dに対してほぼ直交する矢印Eに示す方向、すなわちミラーハウジング102に支持されたミラー106を効率的に移動させる方向に伸縮することができる。したがって車両用サイドミラー装置100によれば、内部アクチュエータ160を作動させることで、電格軸棒112に対してミラーハウジング102を確実に回動させて、ミラー106の左右の鏡面角度を調整できる。
【0070】
図7(a)に示す固定部170は、内部アクチュエータ160のロッド162の他端168をミラーハウジング102に固定し、さらに上方から見て、直線Dに平行に延びている。なお直線Dの方向は、ロッド162が伸縮する方向(矢印E参照)すなわちミラー106を効率的に移動させる方向に対して直交する方向である。したがって車両用サイドミラー装置100によれば、ロッド162の伸縮に伴う力が、ロッド162の他端168から固定部170を介してミラーハウジング102に伝達され、電格軸棒112に対してミラーハウジング102を滑らかに確実に回動させることができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、車両用サイドミラー装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100…車両用サイドミラー装置、102…ミラーハウジング、104…ミラーベース、106…ミラー、108…カバー、110…外部アクチュエータ、112…電格軸棒、114…電格ユニット、116…ミラーハウジングの底部、118…電格軸棒の上端、120…連結部、122…腕部、126…内壁、128…電格軸棒の下端、130…揺動部、132、162…ロッド、134…電格モータ、136…電格モータハウジング、138…サイドベース、140…ベース、142…電格モータハウジングの円筒部、144…スペーサ、146…弾性体、148…ワッシャ、150…電格ユニットケース、152、178…凸部、154…貫通孔、156…電格軸棒の爪部、158…電格ユニットケースの噛合部、160…内部アクチュエータ、164…ロッドの一端、166…保持部、168…ロッドの他端、170…固定部、172…ミラーベースの上壁、174、180…リテーナ、176…開口、182…電格軸棒の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7