(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】清掃システム
(51)【国際特許分類】
B08B 5/04 20060101AFI20231212BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B08B5/04 Z
B08B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2020145352
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-17
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西川 直
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073349(JP,A)
【文献】特開2008-214084(JP,A)
【文献】特開2007-181656(JP,A)
【文献】特開2003-180587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/04
B08B 5/02
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の走行経路に沿って走行して前記走行経路の清掃を行う清掃車と、
前記走行経路に設定された保守用停止位置に設けられた保守設備と、
前記保守設備を制御する保守設備制御装置と、を備え、
前記清掃車を制御する制御部を更に備え、
前記清掃車は、前記走行経路の塵埃を吸引する吸引部と、吸引した塵埃を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された塵埃を外部に排出する排出部と、を備え、
前記保守設備は、前記清掃車の保守を行うと共に前記保守用停止位置に配置された保守装置と、前記保守装置を囲む筐体と、前記筐体の開口部を開閉自在なシャッタと、前記保守用停止位置に停止した前記清掃車の前記排出部によって前記貯留部から外部に排出された塵埃を収集する集塵部を備え、
前記保守設備制御装置は、前記清掃車の動作に応じて、前記シャッタを開閉するように構成され
、
前記保守設備制御装置は、前記清掃車が前記筐体の手前にいる場合に、前記シャッタを開いて前記開口部を開かせ、
前記保守設備制御装置は、前記清掃車が前記筐体の内部に進入して前記保守用停止位置で停止した場合には、前記シャッタを閉じて前記開口部を閉じさせ、
前記保守設備制御装置は、前記筐体の内部において前記集塵部に塵埃の収集を行わせ、その後、前記貯留部から塵埃を排出する必要がある排出必要状態でないと前記制御部が判定した場合には、前記シャッタを開いて前記開口部を開かせる、清掃システム。
【請求項2】
前記吸引部は、前記走行経路に向けて開口するように形成されていると共に前記貯留部に接続された吸引口と、前記吸引口から塵埃を吸引する吸引空気流を発生させる空気流生成部と、フィルタと、を備え、
前記貯留部及び前記フィルタは、前記吸引口と前記空気流生成部とを繋ぐ吸引流路に配置され、
前記貯留部は、前記吸引流路における、前記フィルタよりも前記吸引口側の領域に設けられている、請求項
1に記載の清掃システム。
【請求項3】
前記排出部は、前記貯留部に接続された排出口と、前記吸引部と共用の前記空気流生成部と、を備え、
前記排出部は、前記空気流生成部によって前記吸引空気流を発生させる場合とは反対方向の空気流である排出空気流を発生させることにより、前記フィルタに捕捉されて前記貯留部に貯留された塵埃を前記排出口から排出する、請求項
2に記載の清掃システム。
【請求項4】
前記清掃車は、
前記吸引流路と、前記排出口と前記空気流生成部とを繋ぐ排出流路と、を分岐させる分岐部と、
前記分岐部に配置された流路切替機構と、を更に備え、
前記流路切替機構は、前記吸引口と前記貯留部とを連通させると共に前記排出口と前記貯留部との連通を遮断する第1状態と、前記吸引口と前記貯留部との連通を遮断すると共に前記排出口と前記貯留部とを連通させる第2状態と、に切り替え可能である、請求項
3に記載の清掃システム。
【請求項5】
前記清掃車は、前記貯留部における塵埃の貯留状態を検出する貯留状態検出部を更に備え、
前記制御部は、前記貯留状態検出部による検出結果に基づいて、前記貯留部から塵埃を排出する必要がある排出必要状態であるか否かを判定し、前記排出必要状態であると判定した場合に、前記清掃車を前記保守用停止位置まで走行させて停止させ、前記保守用停止位置において前記排出部による塵埃の排出を行わせる、請求項
1に記載の清掃システム。
【請求項6】
前記清掃車は、前記貯留部における塵埃の貯留状態を検出する貯留状態検出部を更に備え、
前記制御部は、前記貯留状態検出部による検出結果に基づいて、前記貯留部から塵埃を排出する必要がある排出必要状態であるか否かを判定し、前記排出必要状態であると判定した場合に、前記清掃車を前記保守用停止位置まで走行させて停止させ、前記保守用停止位置において前記排出部による塵埃の排出を行わせる、請求項
2から
4のいずれか一項に記載の清掃システム。
【請求項7】
前記貯留状態検出部は、前記貯留状態として、前記吸引空気流の発生中における、前記吸引流路の前記フィルタよりも前記空気流生成部側の圧力を検出し、
前記制御部は、前記貯留状態検出部により検出された圧力が規定値以下である場合に前記排出必要状態であると判定する、請求項
6に記載の清掃システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記清掃車に前記保守用停止位置において前記排出部による塵埃の排出を行わせた後、前記貯留状態検出部による検出を行い、当該検出結果に基づいて前記排出必要状態ではないと判定した場合に、前記清掃車を前記保守用停止位置から発進させて前記走行経路の清掃を再開させる、請求項
6又は
7に記載の清掃システム。
【請求項9】
物品を搬送する搬送車を備えた物品搬送設備に備えられ、
前記保守設備は、前記保守用停止位置において、前記清掃車及び前記搬送車の洗浄を行う洗浄部を備え、前記保守用停止位置に前記清掃車が停止した場合に、前記清掃車の洗浄を前記洗浄部によって行うことと並行して、当該清掃車から排出された塵埃を前記集塵部によって収集する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の清掃システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の走行経路に沿って走行して前記走行経路の清掃を行う清掃車を備えた清掃システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような清掃システムの一例が、特開2019-73349号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、走行経路(R)を走行する清掃車(3)が、掃除機ユニット(34)を備えている。そして、清掃車(3)は、走行経路(R)を走行中に、掃除機ユニット(34)によって走行経路(R)の塵埃を吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、掃除機ユニット(34)によって吸引した後の塵埃の処理については特に記載がない。例えば、吸引後の塵埃の処理は、塵埃を収集した清掃車(3)を走行経路(R)から取り出して、走行経路(R)とは別の場所で作業者によって行うことが考えられる。しかしこの場合、塵埃の処理を行う分、作業者の作業負担が生じることになる。
【0006】
上記実状に鑑みて、清掃車により収集した塵埃の処理を行う場合に、作業者の負担を軽減可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る清掃システムは、
規定の走行経路に沿って走行して前記走行経路の清掃を行う清掃車と、
前記走行経路に設定された保守用停止位置に設けられた保守設備と、
前記保守設備を制御する保守設備制御装置と、を備え、
前記清掃車を制御する制御部を更に備え、
前記清掃車は、前記走行経路の塵埃を吸引する吸引部と、吸引した塵埃を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された塵埃を外部に排出する排出部と、を備え、
前記保守設備は、前記清掃車の保守を行うと共に前記保守用停止位置に配置された保守装置と、前記保守装置を囲む筐体と、前記筐体の開口部を開閉自在なシャッタと、前記保守用停止位置に停止した前記清掃車の前記排出部によって前記貯留部から外部に排出された塵埃を収集する集塵部を備え、
前記保守設備制御装置は、前記清掃車の動作に応じて、前記シャッタを開閉するように構成され、
前記保守設備制御装置は、前記清掃車が前記筐体の手前にいる場合に、前記シャッタを開いて前記開口部を開かせ、
前記保守設備制御装置は、前記清掃車が前記筐体の内部に進入して前記保守用停止位置で停止した場合には、前記シャッタを閉じて前記開口部を閉じさせ、
前記保守設備制御装置は、前記筐体の内部において前記集塵部に塵埃の収集を行わせ、その後、前記貯留部から塵埃を排出する必要がある排出必要状態でないと前記制御部が判定した場合には、前記シャッタを開いて前記開口部を開かせる。
【0008】
本構成によれば、清掃車は、走行経路の塵埃を吸引した後、自ら保守用停止位置まで走行し、当該保守用停止位置において貯留部に溜まった塵埃を外部に排出することができる。そして、保守設備の集塵部により、清掃車から排出された塵埃を自動的に収集することができる。このように本構成によれば、清掃車により収集した塵埃の処理を自動的に行うことができる。従って、清掃車により収集した塵埃の処理に際して、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】清掃システムを備えた物品搬送設備の全体平面図
【
図3】清掃車が塵埃の吸引を行っている状態を示す説明図
【
図4】清掃車が塵埃の排出を行っている状態を示す説明図
【
図6】洗浄部及び集塵部を備えた保守装置を示す斜視図
【
図7】清掃システムを備えた物品搬送設備の制御ブロック図
【
図8】保守設備が塵埃の収集を行っている状態を示す正面図
【
図9】清掃システムによる塵埃の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
清掃システムは、規定の走行経路の清掃及び清掃後の処理を行うシステムである。以下、清掃システムが物品搬送設備に適用される場合を例示して、清掃システムの実施形態について説明する。
【0012】
〔物品搬送設備の概略構成〕
図1及び
図2に示すように、物品搬送設備は、物品8を搬送する搬送車3と、設備の天井近くに設置され、搬送車3の走行経路Rを構成する一対のレールRaと、搬送車3との間で物品8の移載が行われる移載対象箇所9と、を備えている。すなわち、本例において物品搬送設備は、天井近くで物品8を搬送する天井搬送設備として構成されている。
【0013】
移載対象箇所9には、物品8に対する処理を行う処理装置91と、処理装置91に隣接して配置され、物品8を支持する支持台92と、が設けられている。本実施形態では、搬送車3は、処理装置91による処理が行われる前の物品8を支持台92に搬送すると共に、処理装置91による処理が行われた後の物品8を支持台92から指定された搬送先へ搬送する。例えば、物品8は、処理装置91による処理の対象となる処理対象物を収納する容器であり、上述の「物品8に対する処理」とは、物品8に収納された処理対象物に対する処理を意味する。物品8としては、ウェハを収納するウェハ収納容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)であっても良いし、レチクルを収容するレチクル収納容器(いわゆるレチクルポッド)であっても良い。物品8がFOUPである場合、処理対象物はウェハとされる。物品8がレチクルポッドである場合、処理対象物はレチクルとされる。
【0014】
図2に示すように、搬送車3は、搬送車3を制御する搬送車制御装置C3と、走行経路Rに沿って走行するための走行機構30と、物品8を移載するための移載機構31と、を備えている。図示の例では、搬送車3は、移載機構31を囲むカバー部32と、移載機構31及びカバー部32を走行機構30に対して連結する連結部33と、を備えている。走行機構30は、レールRaの上側に配置されている。移載機構31及びカバー部32は、連結部33によって走行機構30に連結されて、レールRaの下側に配置されている。走行機構30及び移載機構31は、搬送車制御装置C3によって制御される。
【0015】
走行機構30は、レールRa上を転動する複数の走行輪30Aを有している。本例では、複数の走行輪30Aは、走行機構30の左右および前後に分かれて配置されており、走行機構30は、合計で4つの走行輪30Aを有している。複数の走行輪30Aのうちの少なくとも1つは、不図示の走行モータにより駆動されて、搬送車3が走行経路Rに沿って走行するための推進力を付与する。
【0016】
搬送車3が走行経路Rに沿って走行する方向を走行方向Xとし、走行方向Xに対して平面視で直交する方向を幅方向Yとして、カバー部32は、移載機構31を走行方向Xの両側及び上側から覆うように配置されている。移載機構31における幅方向Yの両側は開口部とされており、カバー部32によって覆われていない。
【0017】
移載機構31は、カバー部32と移載対象箇所9との間で物品8を移載する。詳細な説明は省略するが、移載機構31は、例えば、物品8を把持するための把持部、及び、レールRaの下方に配置された支持台92(移載対象箇所9)との間で物品8を昇降させるための昇降部を有している。また、移載機構31は、必要に応じて、物品8の姿勢を移載対象箇所9に対応した適正な姿勢に変更するための旋回部や、物品8をカバー部32から幅方向Yの外側にスライドさせるスライド部などを有している場合もある。但し、移載機構31は、移載対象箇所9との間で物品8を移載するために必要な構成を備えていれば良く、上記のような構成に限定されることはない。
【0018】
〔清掃システム〕
本実施形態に係る清掃システムは、上述の物品搬送設備に備えられている。
図1に示すように、清掃システムは、規定の走行経路Rに沿って走行して走行経路Rの清掃を行う清掃車1と、走行経路Rに設定された保守用停止位置Aに設けられた保守設備2と、を備えている。
【0019】
本実施形態では、清掃車1による清掃対象とされる走行経路Rは、搬送車3の走行経路Rとされる。換言すれば、清掃車1と搬送車3とは、同じ走行経路Rを走行するように構成されている。本例では、この走行経路Rは、幅方向Yに離間して配置された一対のレールRaにより構成されている。一対のレールRaは、設備の床面から上方に離間した位置に設置されており、例えば天井から吊り下げ支持されている。本実施形態では、清掃車1は、レールRa上に付着した塵埃を清掃する。塵埃は、設備内の各装置が動作することによって生じ、例えば、搬送車3がレールRaを走行する際の走行輪30Aの摩耗等によって生じる。
【0020】
〔清掃車〕
以下、
図2~
図4を主に参照して、清掃車1の構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、清掃車1は、清掃車1を制御する清掃車制御装置C1を備えている。本実施形態では、清掃車1は、走行経路Rに沿って走行するための走行機構10と、本体部11と、本体部11を覆うカバー部12と、本体部11及びカバー部12を走行機構10に対して連結する連結部13と、を備えている。走行機構10は、レールRaの上側に配置されている。本体部11及びカバー部12は、連結部13によって走行機構10に連結されて、レールRaの下側に配置されている。走行機構10は、清掃車制御装置C1によって制御される。なお、本実施形態では、清掃車制御装置C1が、「制御部」に相当する。
【0022】
走行機構10は、レールRa上を転動する複数の走行輪10Aを有している。本例では、複数の走行輪10Aは、走行機構10の左右および前後に分かれて配置されており、走行機構10は、合計で4つの走行輪10Aを有している。複数の走行輪10Aのうちの少なくとも1つは、不図示の走行モータにより駆動されて、清掃車1が走行経路Rに沿って走行するための推進力を付与する。
【0023】
このように、清掃車1が走行経路Rを走行するための構成は、上述の搬送車3が走行経路Rを走行するための構成と概ね同じとなっている。
【0024】
本実施形態では、カバー部12は、本体部11を走行方向Xの両側及び上側から覆うように配置されている。本体部11における幅方向Yの両側はは開口部とされており、カバー部12によって覆われていない。
【0025】
清掃車1は、走行経路Rの塵埃を吸引する吸引部14と、吸引した塵埃を貯留する貯留部15と、貯留部15に貯留された塵埃を外部に排出する排出部16と、を備えている。
【0026】
本実施形態では、清掃車1は、塵埃を吸引する吸引口141が形成された第1配管P1と、塵埃を排出する排出口161が形成された第2配管P2と、を備えている。また本例では、吸引口141に対して走行方向Xの上流側(前側)に隣接する位置に、走行経路Rの塵埃を掻き取るブラシ部143が設けられている。これにより、走行経路Rに付着した塵埃を浮かして吸引口141から吸引し易くなっている。
【0027】
吸引口141は、走行経路Rに向けて、より詳細にはレールRaにおける塵埃堆積箇所(ここではレールRaの上面)に対向するように開口している。上述のブラシ部143は、レールRaにおける塵埃堆積箇所に接触するように配置されており、清掃車1の走行時に塵埃堆積箇所を摺動するように構成されている。本例では、吸引口141を有する第1配管P1は、その一部がカバー部12の内部に配置されている。吸引口141は、貯留部15と接続されており、吸引口141から吸引された塵埃は、第1配管P1を通って貯留部15に貯留される。なお、本例では、第1配管P1における吸引口141とは反対側の端部は、貯留部15に向けて開口している。また、詳細な図示は省略するが、本例では、吸引口141は、一対のレールRaのそれぞれに対応して設けられている。換言すれば、第1配管P1は、一対のレールRaに対応して分岐した分岐配管となっており、それぞれが一対のレールRaに対向する一対の吸引口141を有している。
【0028】
排出口161は、清掃車1の外部に向けて、より詳細には清掃車1よりも下方の空間に向けて開口している。この排出口161を有する第2配管P2は、その一部がカバー部12の内部に配置されている。図示の例では、第2配管P2の先端は、カバー部12から下方に突出している。第2配管P2におけるカバー部12から下方に突出した先端部分に、排出口161が形成されている。排出口161は、貯留部15と接続されており、貯留部15から排出された塵埃は、第2配管P2を通って排出口161から清掃車1の外部へ排出される。なお、本例では、第2配管P2は、第1配管P1と接続されており、第1配管P1と第2配管P2との接続部分に分岐部Pdが形成されている。換言すれば、第2配管P2における排出口161とは反対側の端部は、第1配管P1に開口している。
【0029】
貯留部15は、本体部11の内部空間に設けられている。本実施形態では、清掃車1は、空気流を発生させる空気流生成部Gと、塵埃を捕捉するフィルタ142と、を備えている。そして、これら空気流生成部Gとフィルタ142とは、本体部11の内部空間に設けられている。すなわち本例では、本体部11の内部空間には、貯留部15、フィルタ142、及び空気流生成部Gが設けられている。そして、本体部11の内部空間において、貯留部15と空気流生成部Gとが、フィルタ142を挟んで両側に分かれて配置されている。
【0030】
本実施形態では、空気流生成部Gは、吸引口141から塵埃を吸引する吸引空気流Fi(
図3参照)と、排出口161から塵埃を排出する排出空気流Fo(
図4参照)と、を発生させるように構成されている。本例では、空気流生成部Gは、ファンGaと、ファンGaを駆動する駆動部Gbと、を含んで構成されている。
【0031】
本実施形態では、空気流生成部Gは、本体部11の内部空間において上下方向に沿う空気流を発生させる。本例では、ファンGaは、その回転軸心が上下方向に沿うように配置されている。これにより、本体部11の内部空間において上下方向に沿う空気流を発生させることができる。本実施形態では、空気流生成部Gが吸引空気流Fiを発生させた状態で、本体部11の内部空間では、上方から下方へ向かう空気流が発生する。また、空気流生成部Gが排出空気流Foを発生させた状態で、本体部11の内部空間では、下方から上方へ向かう空気流が発生する。なお、本例では、本体部11の内部空間において、上方から下方へ向けて順番に、貯留部15、フィルタ142、空気流生成部Gが並んで配置されている。
【0032】
図3に示すように、空気流生成部Gは、ファンGaを回転させることによって、吸引空気流Fiを発生させる。空気流生成部Gが吸引空気流Fiを発生させることで、吸引口141と空気流生成部Gとを繋ぐ吸引流路Wiが形成される。本実施形態では、貯留部15及びフィルタ142は、吸引口141と空気流生成部Gとを繋ぐ吸引流路Wiに配置されている。そして、貯留部15は、吸引流路Wiにおける、フィルタ142よりも吸引口141側の領域に設けられている。これにより、空気流生成部Gが吸引空気流Fiを発生させた状態で、吸引口141から吸引されて吸引流路Wiを流れる塵埃が、フィルタ142によって捕捉される。フィルタ142によって捕捉された塵埃は、フィルタ142よりも吸引流路Wiの上流側に配置された貯留部15に貯留される。
【0033】
図4に示すように、空気流生成部Gは、吸引空気流Fiを発生させる場合とは逆方向にファンGaを回転させることによって、吸引空気流Fiとは反対方向の空気流である排出空気流Foを発生させる。空気流生成部Gが排出空気流Foを発生させることで、排出口161と空気流生成部Gとを繋ぐ排出流路Woが形成される。本実施形態では、貯留部15及びフィルタ142は、排出口161と空気流生成部Gとを繋ぐ排出流路Woに配置されている。そして、貯留部15は、排出流路Woにおける、フィルタ142よりも排出口161側の領域に設けられている。これにより、空気流生成部Gが排出空気流Foを発生させた状態で、吸引時にフィルタ142に補足されて貯留部15に貯留された塵埃が、フィルタ142から剥離すると共に排出流路Woを流れて、排出口161から清掃車1の外部に排出される。
【0034】
以上のように、本実施形態では、吸引部14は、走行経路Rに向けて開口するように形成されていると共に貯留部15に接続された吸引口141と、吸引口141から塵埃を吸引する吸引空気流Fiを発生させる空気流生成部Gと、フィルタ142と、を備えている。換言すれば、吸引口141、空気流生成部G、及びフィルタ142は、吸引部14の一部を構成している。そして、吸引部14は、空気流生成部Gによって吸引空気流Fiを発生させることにより、レールRaに堆積した塵埃を吸引口141から吸引してフィルタ142により捕捉すると共に貯留部15に貯留する。
【0035】
また、本実施形態では、排出部16は、貯留部15に接続された排出口161と、吸引部14と共用の空気流生成部Gと、を備えている。換言すれば、排出口161及び空気流生成部Gは、排出部16の一部を構成している。そして、排出部16は、空気流生成部Gによって吸引空気流Fiを発生させる場合とは反対方向の空気流である排出空気流Foを発生させることにより、フィルタ142に捕捉されて貯留部15に貯留された塵埃を排出口161から排出する。
【0036】
ここで、上述のように、吸引流路Wiは、空気流生成部Gと吸引口141とを繋ぐ流路であり、排出流路Woは、空気流生成部Gと排出口161とを繋ぐ流路である。本実施形態では、吸引流路Wiと排出流路Woとは、一部が重複している。そして、清掃車1は、吸引流路Wiと排出流路Woとを分岐させる分岐部Pdを備えている。本例では、吸引流路Wiは、本体部11の内部空間における空気流生成部Gからフィルタ142と貯留部15の全体とを含む領域と、第1配管P1の全体の領域と、を含んでいる。排出流路Woは、本体部11の内部空間における空気流生成部Gからフィルタ142と貯留部15の全体とを含む領域と、第1配管P1における貯留部15との接続部分から分岐部Pdまでの領域と、第2配管P2の全体の領域と、を含んでいる。
【0037】
本実施形態では、清掃車1は、分岐部Pdに配置された流路切替機構17を更に備えている。流路切替機構17は、吸引口141と貯留部15とを連通させると共に排出口161と貯留部15との連通を遮断する第1状態(
図3参照)と、吸引口141と貯留部15との連通を遮断すると共に排出口161と貯留部15とを連通させる第2状態(
図4参照)と、に切り替え可能に構成されている。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、流路切替機構17は、電気エネルギを機械運動に変換するソレノイド部と、流路を開閉する弁部と、を備えた電磁弁として構成されている。電磁弁としては、公知の様々な方式を採用することができる。
【0038】
図3に示すように、流路切替機構17が第1状態となることで、吸引流路Wiの全体が連通する。本実施形態では、空気流生成部Gは、流路切替機構17の第1状態において、吸引空気流Fiを発生させる。これにより、レールRa上に堆積した塵埃が、吸引口141から吸引されて吸引流路Wiを流れる。吸引流路Wiを流れた塵埃は、貯留部15に貯留される。
【0039】
図4に示すように、流路切替機構17が第2状態となることで、排出流路Woの全体が連通する。本実施形態では、空気流生成部Gは、流路切替機構17の第2状態において、排出空気流Foを発生させる。これにより、貯留部15に貯留された塵埃が、フィルタ142から上方に剥離して排出流路Woを流れる。排出流路Woを流れた塵埃は、排出口161から清掃車1の外部へ排出される。
【0040】
本実施形態では、清掃車1は、貯留部15における塵埃の貯留状態を検出する貯留状態検出部18を更に備えている。これにより、貯留部15における塵埃の貯留状態を把握可能となっている。清掃車1は、貯留部15から塵埃を排出する必要がある排出必要状態である場合には、排出部16によって貯留部15内の塵埃を排出する。
【0041】
本実施形態では、貯留状態検出部18は、本体部11の内部空間における圧力を検出する圧力センサを備えて構成されている。そして、当該圧力センサにより、本体部11の内部空間の圧力を検出することにより、貯留部15における塵埃の貯留状態を検出する。本例では、貯留状態検出部18は、塵埃の貯留状態として、吸引空気流Fiの発生中における、吸引流路Wiのフィルタ142よりも空気流生成部G側の圧力を検出するように構成されている。これについて説明を加えると、貯留部15に貯留された塵埃が多くなると、フィルタ142に多量の塵埃が付着して、吸引空気流Fiがフィルタ142を通過し難くなるため、フィルタ142よりも空気流生成部G側の圧力が低下する。貯留状態検出部18は、吸引空気流Fiの発生中における圧力低下(圧力変化)を検出する。フィルタ142よりも空気流生成部G側において、吸引空気流Fiの発生中の圧力が低下するに従って、フィルタ142に付着した塵埃の量が多くなっており、多量の塵埃が貯留部15に貯留されていると判断することができる。本実施形態では、清掃車制御装置C1は、貯留状態検出部18により検出された圧力が規定値以下である場合に排出必要状態であると判定する。この規定値は、圧力センサとしての貯留状態検出部18が圧力を計測する空間の大きさ、空気流生成部Gが発生する吸引力(吸引空気流Fiの圧力)、フィルタ142の種類等によって異なり、実験等により定められる。なお、圧力センサとしては、公知の様々な種類のものを用いることができる。
【0042】
上記のように、清掃車1は、塵埃の吸引と排出とを行うように構成されている。
図1に示すように、清掃車1は、塵埃の吸引については走行経路R上の任意の箇所で行うが、塵埃の排出については、走行経路Rに設定された保守用停止位置Aにおいて行う。上述のように、保守用停止位置Aには保守設備2が設けられており、この保守設備2が、清掃車1によって集められた塵埃の処理を行う。
【0043】
〔保守設備〕
以下、
図1、
図5、及び
図6を主に参照して、保守設備2の構成について説明する。
【0044】
上述のように、保守設備2は、走行経路Rに設定された保守用停止位置Aに設けられている。本実施形態では、保守用停止位置Aは、走行経路Rにおける、搬送車3による物品8の搬送経路とは異なる経路に設定されている。これにより、保守用停止位置Aに停止した清掃車1や搬送車3が、搬送先に向けて走行中の搬送車3の妨げとなることを回避できるようになっている。なお、保守設備2は、清掃車1だけでなく、搬送車3の保守も行うように構成されており、搬送車3の保守が必要な場合には、搬送車3は、保守用停止位置Aまで走行して、保守設備2による保守を受けることができる。
【0045】
図1及び
図5に示すように、保守設備2は、保守装置21と、保守装置21を囲む筐体22と、を備えている。保守設備2は、筐体22の内部において、保守装置21によって清掃車1又は搬送車3の保守を行う。
【0046】
図5に示すように、筐体22は、保守装置21の上方を覆う上面パネル22Uと、保守装置21の側方を覆う4つの側面パネル22Sと、を備えている。4つの側面パネル22Sのうち、走行経路Rと重複する側面パネル22Sには、走行経路Rを走行する清掃車1又は搬送車3が通過可能な開口部221が形成されている。本例では、4つの側面パネル22Sのうち1つのみに、開口部221が形成されている。
【0047】
本実施形態では、保守設備2は、筐体22の側面パネル22Sに形成された開口部221を開閉自在なシャッタ222を備えている。シャッタ222は、開口部221を閉じる閉位置と開口部221を開く開位置との間で開閉動作するシャッタ本体222Aと、シャッタ本体222Aを駆動して開閉させる開閉用モータ(不図示)と、を備えている。シャッタ本体222Aが開位置にある状態で、清掃車1又は搬送車3が筐体22の内部に進入可能となる。
【0048】
保守装置21は、筐体22によって囲まれた空間に配置されている。
図6に示すように、保守装置21は、複数のフレーム材が互いに連結されて枠状に形成された支持体211と、支持体211に支持されて、清掃車1又は搬送車3を案内するレール体Rbと、を備えている。レール体Rbは、レールRaの延長線上に設けられており、レールRaを走行する清掃車1又は搬送車3を筐体22の内部に案内する。本実施形態では、レール体Rbは、走行経路Rの一部を構成しており、当該レール体Rbに保守用停止位置Aが設定されている。従って、清掃車1の走行輪10A及び搬送車3の走行輪30Aは、レール体Rb上を転動可能となっており、清掃車1及び搬送車3は、レールRaから連続してレール体Rbを走行可能となっている。
【0049】
本実施形態では、保守設備2は、保守用停止位置Aにおいて、清掃車1及び搬送車3の洗浄を行う洗浄部213を備えている。本実施形態では、洗浄部213は、保守装置21に設けられている。洗浄部213は、空気を噴出する複数のノズル213aを備えており、保守用停止位置Aに停止した清掃車1又は搬送車3(以下、これらをまとめて「対象車」と称する場合がある。)に空気を吹き付けるように構成されている。これにより、洗浄部213は、対象車に付着した塵埃を取り除く。
【0050】
本実施形態では、洗浄部213は、複数のノズル213aを支持するノズル支持部213bを備えている。本例では、ノズル支持部213bは、走行方向Xに沿って延在する軸状部材により構成されており、走行方向Xに沿って並んで配置された複数のノズル213aを支持している。複数のノズル213aのそれぞれは、それぞれに形成された空気噴出口が保守用停止位置Aに停止した対象車に向く姿勢で、ノズル支持部213bに支持されている。そして、ノズル支持部213bは、走行方向Xに沿う軸心まわりに回転自在に、支持体211に支持されている。ノズル支持部213bは、回転用モータ213m(ノズル駆動部)によって駆動されて、走行方向Xに沿う軸心まわりに回転する。ノズル支持部213bが回転することにより、当該ノズル支持部213bに支持された複数のノズル213aのそれぞれは、ノズル支持部213bの回転量に応じた上下方向の範囲で、対象車に対して空気を吹き付ける。
【0051】
本実施形態では、洗浄部213は、上記のようなノズル支持部213bを複数備えている。複数のノズル支持部213bは、一対のレール体Rbに対して幅方向Yの両側に配置されている。より詳細には、一対のレール体Rbに対する幅方向Yの両側において、複数のノズル支持部213bの一部が一対のレール体Rbよりも上側に配置され、複数のノズル支持部213bの他の一部が一対のレール体Rbよりも下側に配置されている。本例では、合計で4つのノズル支持部213bが設けられており、そのうち2つのノズル支持部213bが、一対のレール体Rbよりも上側に配置され、残りの2つのノズル支持部213bが、一対のレール体Rbよりも下側に配置されている。
【0052】
図8に示すように、対象車が清掃車1である場合、一対のレール体Rbよりも上側に配置されたノズル支持部213bによって支持された複数のノズル213aは、清掃車1の走行機構10に対して空気を吹き付ける。また、一対のレール体Rbよりも下側に配置されたノズル支持部213bによって支持された複数のノズル213aは、清掃車1の本体部11(
図2参照)及びカバー部12に対して空気を吹き付ける。これにより、清掃車1の全体を清掃可能となっている。各ノズル支持部213bに支持された複数のノズル213aは、対象車が搬送車3である場合であっても、清掃車1に空気を吹き付ける場合と同様の箇所に対して空気を吹き付ける。洗浄部213によって対象車から取り除かれた塵埃は、筐体22の内部空間で飛散する。
【0053】
保守設備2は、筐体22の内部空間の塵埃を収集する集塵部214を備えている。本実施形態では、集塵部214は、保守装置21に設けられている。集塵部214は、洗浄部213よりも下方に設けられている。本例では、集塵部214は、支持体211の下端部に支持されている。
【0054】
集塵部214は、ファンとフィルタとを備えたファンフィルタユニット214aを含んで構成されている。図示の例では、2つのファンフィルタユニット214aが幅方向Yに並んで配置されている。集塵部214は、筐体22の内部空間の空気をファンにより吸引して外部に排出すると共に、吸引の際に筐体22の内部空間の塵埃をフィルタにより捕捉する。これにより、集塵部214は、洗浄部213によって清掃車1又は搬送車3から取り除かれた塵埃を収集する。
【0055】
ここで、上述のように、清掃車1は、走行経路Rで吸引した塵埃を、保守用停止位置Aにおいて排出する。集塵部214は、保守用停止位置Aに停止した清掃車1の排出部16によって貯留部15から外部に排出された塵埃を収集するように構成されている。すなわち、保守設備2は、保守用停止位置Aに停止した清掃車1の排出部16によって貯留部15から外部に排出された塵埃を収集する集塵部214を備えている。
【0056】
このように、本開示に係る清掃システムによれば、清掃車1は、走行経路Rの塵埃を吸引した後、自ら保守用停止位置Aまで走行し、当該保守用停止位置Aにおいて貯留部15に溜まった塵埃を外部に排出することができる。そして、保守設備2の集塵部214により、清掃車1から排出された塵埃を自動的に収集することができる。すなわち、清掃システムでは、清掃車1により収集した塵埃の処理を自動的に行うことが可能となっている。また、搬送車3の保守(洗浄)を行う保守設備2において、清掃車1により収集した塵埃の処理を行うことができることから、例えば、保守設備2を備えた既存の物品搬送設備に対して当該清掃システムを導入し易い。
【0057】
また、本実施形態では、保守設備2は、保守用停止位置Aに清掃車1が停止した場合に、清掃車1の洗浄を洗浄部213によって行うことと並行して、当該清掃車1から排出された塵埃を集塵部214によって収集する。これにより、清掃車1の洗浄と、清掃車1によって収集された塵埃の処理とを、並行して行うことができる。これにより、清掃車1により収集した塵埃の処理中に、清掃車1自体を洗浄することができる。
【0058】
〔制御構成〕
次に、物品搬送設備および清掃システムの制御構成について、
図7を主に参照して説明する。
【0059】
図7に示すように、物品搬送設備は、設備全体を管理する統括制御装置Ctと、搬送車3を制御する搬送車制御装置C3と、清掃車1を制御する清掃車制御装置C1と、保守設備2を制御する保守設備制御装置C2と、を備えている。搬送車制御装置C3は搬送車3に備えられており、清掃車制御装置C1は清掃車1に備えられており、保守設備制御装置C2は保守設備2に備えられている。これらの制御装置は、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0060】
統括制御装置Ctは、搬送車制御装置C3、清掃車制御装置C1、及び保守設備制御装置C2のそれぞれに対して、搬送指令、清掃指令、洗浄指令、塵埃収集指令などの各種指令を行う。搬送車制御装置C3及び清掃車制御装置C1は、自車位置及び自車の動作状況を示す信号を統括制御装置Ctに対して送信する。また、保守設備制御装置C2は、保守設備2の動作状況を示す信号を統括制御装置Ctに対して送信する。このように、統括制御装置Ctは、設備内の各装置の状況を把握可能となっており、各装置の状況に基づいて各制御装置に各種指令を行う。
【0061】
搬送車制御装置C3は、統括制御装置Ctからの搬送指令等に基づいて、走行機構30及び移載機構31の動作を制御するように構成されている。
【0062】
清掃車制御装置C1は、統括制御装置Ctからの清掃指令等に基づいて、走行機構10、空気流生成部G、及び流路切替機構17の動作を制御する。
【0063】
本実施形態では、清掃車制御装置C1は、走行経路Rにおいて清掃車1に吸引部14による塵埃の吸引を行わせる場合に、流路切替機構17を第1状態にすると共に空気流生成部Gにより吸引空気流Fiを発生させる(
図3参照)。これにより、走行経路R、より詳細にはレールRaに堆積した塵埃が吸引されて貯留部15に貯留される。
【0064】
また、本実施形態では、清掃車制御装置C1は、貯留状態検出部18による検出結果に基づいて、貯留部15から塵埃を排出する必要がある排出必要状態であるか否かを判定し、排出必要状態であると判定した場合に、清掃車1を保守用停止位置Aまで走行させて停止させ、保守用停止位置Aにおいて排出部16による塵埃の排出を行わせる。上述のように、本例では、貯留状態検出部18により検出された圧力が予め定められた規定値以下である場合に、排出必要状態であると判定される。
【0065】
本実施形態では、清掃車制御装置C1は、保守用停止位置Aにおいて清掃車1に排出部16による塵埃の排出を行わせる場合に、流路切替機構17を第2状態にすると共に空気流生成部Gにより排出空気流Foを発生させる(
図4参照)。これにより、
図8に示すように、排出口161を介して、清掃車1の外部に塵埃が排出される。清掃車1の外部に排出された塵埃は、筐体22の内部に放出され、集塵部214によって収集される。
【0066】
本実施形態では、清掃車制御装置C1は、清掃車1に保守用停止位置Aにおいて排出部16による塵埃の排出を行わせた後、貯留状態検出部18による検出を行い、当該検出結果に基づいて排出必要状態ではないと判定した場合に、清掃車1を保守用停止位置Aから発進させて走行経路Rの清掃を再開させる。本例では、清掃車制御装置C1は、清掃車1に保守用停止位置Aにおいて排出部16による塵埃の排出を行わせた後、流路切替機構17を第1状態にすると共に空気流生成部Gにより吸引空気流Fiを発生させた状態で(
図3参照)、貯留状態検出部18による検出を行う。そして清掃車制御装置C1は、貯留状態検出部18により検出された圧力が予め定められた規定値よりも大きい場合には、排出必要状態ではないと判定し、清掃車1に走行経路Rの清掃を再開させる。なお、清掃車制御装置C1は、貯留状態検出部18による検出結果に基づいて排出必要状態であると判定した場合には、再度、清掃車1に排出部16による塵埃の排出を行わせる。
【0067】
保守設備制御装置C2は、統括制御装置Ctからの塵埃収集指令あるいは洗浄指令に基づいて、シャッタ222、洗浄部213、及び集塵部214の動作を制御するように構成されている。
【0068】
本実施形態では、保守設備制御装置C2は、
図5に示すように、塵埃収集指令の対象となる清掃車1(洗浄指令の場合には搬送車3であっても良い。)が保守用停止位置Aに到着する前までに、シャッタ222のシャッタ本体222Aを開位置として側面パネル22Sの開口部221を開かせる。なお、
図5は、シャッタ本体222Aが閉位置にある状態を示している。本実施形態では、保守設備制御装置C2は、清掃車1が保守用停止位置Aの手前、すなわち筐体22の手前で停止している場合に、シャッタ本体222Aを開位置として開口部221を開かせる。保守設備制御装置C2は、清掃車1が保守用停止位置Aの手前で停止している状態を、清掃車制御装置C1(洗浄指令の場合には搬送車制御装置C3であっても良い。)或いは統括制御装置Ctとの通信により把握するように構成されている。但し、センサによって、清掃車1が保守用停止位置Aの手前で停止している状態を検出する構成であっても良い。保守設備制御装置C2は、清掃車1が筐体22の内部に進入して保守用停止位置Aで停止した場合には、シャッタ222のシャッタ本体222Aを閉位置として側面パネル22Sの開口部221を閉じさせる。
【0069】
そして、保守設備制御装置C2は、
図8に示すように、塵埃収集指令の対象となる清掃車1(洗浄指令の場合には搬送車3であっても良い。)が保守用停止位置Aで停止した後、洗浄部213に清掃車1の洗浄を行わせると共に、集塵部214に塵埃の収集を行わせる。そして、保守設備制御装置C2は、清掃車制御装置C1が排出必要状態でないと判定した場合には、シャッタ222のシャッタ本体222Aを開位置として側面パネル22Sの開口部221を開かせる(
図5参照)。保守設備制御装置C2は、清掃車制御装置C1が排出必要状態でないと判定したことを、当該清掃車制御装置C1あるいは統括制御装置Ctとの通信により把握するように構成されている。
【0070】
次に、
図9のフローチャートを用いて、清掃システムが行う塵埃の処理手順について簡単に説明する。
【0071】
清掃車1は、走行経路Rの塵埃を吸引して、走行経路Rを清掃する(#1)。そして、清掃車制御装置C1は、貯留部15の状態が排出必要状態であるか否かを判定する(#2)。この排出必要状態であるか否かの判定は、例えば一定期間が経過する毎、或いは、清掃車1が一定距離を走行する毎に行われると良い。清掃車制御装置C1が排出必要状態でないと判定した場合には(#2:N)、清掃車1は走行経路Rの清掃を継続して行う(#1)。清掃車制御装置C1が排出必要状態であると判定した場合には(#2:Y)、清掃車1は保守用停止位置Aまで走行する(#3)。
【0072】
清掃車1が保守用停止位置Aまで走行して停止した後は、排出部16が塵埃の排出を行う(#4)。そして、保守設備2が、洗浄部213による清掃車1の洗浄と集塵部214による集塵(塵埃の収集)とを行う(#5、#6)。その後、清掃車制御装置C1は、排出必要状態が解消されたか否かを判定する(#7)。清掃車制御装置C1が、排出必要状態が解消されていないと判定した場合には(#7:N)、塵埃の排出(#4)を再開すると共に、清掃車1の洗浄(#5)、及び集塵(#6)を引き続き行う。清掃車制御装置C1が、排出必要状態が解消されたと判定した場合には(#7:Y)、清掃車1は走行経路Rの清掃を再開する(#8)。
【0073】
〔その他の実施形態〕
次に、清掃システムのその他の実施形態について説明する。
【0074】
(1)上記の実施形態では、吸引口141を有する第1配管P1と排出口161を有する第2配管P2とが、分岐部Pdにより接続されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1配管P1と第2配管P2とは、それぞれ独立して設けられ、互いに接続されていなくても良い。この場合、第1配管P1における吸引口141とは反対側の端部、及び、第2配管P2における排出口161とは反対側の端部の双方が、貯留部15に開口するように構成される。そして、第1配管P1の全体が、吸引流路Wiの一部を構成する。また、第2配管P2の全体が、排出流路Woの一部を構成する。
【0075】
(2)上記の実施形態では、空気流生成部Gが、ファンGaと、ファンGaを駆動する駆動部(不図示)と、を含んで構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば、空気流生成部Gは、ファンGaを備えないポンプなどを用いて構成されていても良い。
【0076】
(3)上記の実施形態では、空気流生成部Gが、吸引部14と排出部16とで共用されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、吸引部14が吸引空気流Fiを発生させる専用の空気流生成部Gを備え、それとは別に、排出部16が排出空気流を発生させる専用の空気流生成部Gを備えていても良い。また、この場合、排出空気流Foは、吸引空気流Fiに対して反対方向の空気流であることに限定されない。排出空気流Foが流れる方向と吸引空気流Fiが流れる方向との関係は、それぞれの空気流を発生させる空気流生成部Gの配置位置によって異なり、任意に設定することができる。
【0077】
(4)上記の実施形態では、貯留状態検出部18が、塵埃の貯留状態として、吸引空気流Fiの発生中における、吸引流路Wiのフィルタ142よりも空気流生成部G側の圧力を検出するように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、貯留状態検出部18は、吸引空気流Fiの発生中における、吸引流路Wiのフィルタ142よりも吸引口141側の圧力を検出するように構成されていても良い。塵埃によりフィルタ142が詰まって吸引空気流Fi全体の流れが滞った場合には、吸引流路Wiのフィルタ142よりも空気流生成部G側だけでなく、吸引口141側の圧力も変化する。上記の別例では、このような圧力変化を利用して、塵埃の貯留状態を検出することもできる。
【0078】
(5)上記の実施形態では、貯留状態検出部18が、本体部11の内部空間における圧力を検出する圧力センサとして構成されており、本体部11の内部空間の圧力を検出することにより、貯留部15における塵埃の貯留状態を検出する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば、貯留状態検出部18は、吸引部14による走行経路Rの塵埃の吸引が開始されてからの経過時間を計測し、経過時間に応じて貯留部15における塵埃の貯留状態を検出するように構成されていても良い。経過時間が長くなるほど、貯留部15における塵埃の貯留量が多くなると判断することができる。上記の場合、清掃車制御装置C1(制御部)は、貯留状態検出部18により計測された上記経過時間が予め定められた規定時間を超えた場合に排出必要状態であると判定すると好適である。また、例えば、貯留状態検出部18が、透過型の光センサを用いて構成され、フィルタ142を透過する光の量を計測し、当該光の量が規定量以下となった場合に、排出必要状態であると判定する構成としても好適である。
【0079】
(6)上記の実施形態では、保守設備2が、清掃車1の洗浄を洗浄部213によって行うことと並行して、当該清掃車1から排出された塵埃を集塵部214によって収集する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、保守設備2は、洗浄部213による清掃車1の洗浄と、集塵部214による塵埃の収集とを、別々のタイミングで行っても良い。すなわち、保守設備2は、洗浄部213による清掃車1の洗浄のみを行っても良いし、集塵部214による塵埃の収集のみを行っても良い。
【0080】
(7)上記の実施形態では、清掃車制御装置C1が、「制御部」に相当し、貯留状態検出部18による検出結果に基づいて、貯留部15から塵埃を排出する必要がある排出必要状態であるか否かを判定して清掃車1を制御する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば、設備全体を管理する統括制御装置Ctが、清掃車制御装置C1から受信した情報に基づいて、排出必要状態であるか否かを判定しても良い。この場合、統括制御装置Ctが「制御部」に相当する。なお、清掃車制御装置C1及び統括制御装置Ctの双方を合せたものが「制御部」に相当する構成であっても良い。
【0081】
(8)上記の実施形態では、清掃システムが、物品搬送設備としての天井搬送設備に適用される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、清掃システムが適用される物品搬送設備は、例えば、床面上で物品8を搬送する設備であっても良い。この場合、搬送車3は、床面に設けられた走行経路Rに沿って走行して物品8を搬送するように構成される。そして、清掃車1は、床面に設けられた走行経路Rを清掃するように構成される。
【0082】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0083】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した清掃システムについて説明する。
【0084】
清掃システムは、
規定の走行経路に沿って走行して前記走行経路の清掃を行う清掃車と、
前記走行経路に設定された保守用停止位置に設けられた保守設備と、を備え、
前記清掃車は、前記走行経路の塵埃を吸引する吸引部と、吸引した塵埃を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留された塵埃を外部に排出する排出部と、を備え、
前記保守設備は、前記保守用停止位置に停止した前記清掃車の前記排出部によって前記貯留部から外部に排出された塵埃を収集する集塵部を備える。
【0085】
本構成によれば、清掃車は、走行経路の塵埃を吸引した後、自ら保守用停止位置まで走行し、当該保守用停止位置において貯留部に溜まった塵埃を外部に排出することができる。そして、保守設備の集塵部により、清掃車から排出された塵埃を自動的に収集することができる。このように本構成によれば、清掃車により収集した塵埃の処理を自動的に行うことができる。従って、清掃車により収集した塵埃の処理に際して、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0086】
ここで、
前記吸引部は、前記走行経路に向けて開口するように形成されていると共に前記貯留部に接続された吸引口と、前記吸引口から塵埃を吸引する吸引空気流を発生させる空気流生成部と、フィルタと、を備え、
前記貯留部及び前記フィルタは、前記吸引口と前記空気流生成部とを繋ぐ吸引流路に配置され、
前記貯留部は、前記吸引流路における、前記フィルタよりも前記吸引口側の領域に設けられている、と好適である。
【0087】
本構成によれば、吸引空気流によって吸引口から吸引されて吸引流路を流れてくる塵埃をフィルタによって捕捉することができる。従って、吸引流路におけるフィルタよりも吸引口側の領域に設けられた貯留部に、塵埃を適切に貯留することができる。
【0088】
また、
前記排出部は、前記貯留部に接続された排出口と、前記吸引部と共用の前記空気流生成部と、を備え、
前記排出部は、前記空気流生成部によって前記吸引空気流を発生させる場合とは反対方向の空気流である排出空気流を発生させることにより、前記フィルタに捕捉されて前記貯留部に貯留された塵埃を前記排出口から排出する、と好適である。
【0089】
本構成によれば、塵埃を吸引する場合と排出する場合とで空気流生成部を共用できるため、清掃車の部品点数を削減して小型化を図り易い。また、本構成によれば、空気流生成部が共用されていることで、塵埃を吸引する場合と同じ位置から、吸引空気流とは反対方向の排出空気流を発生させることができるため、吸引時にフィルタに捕捉された塵埃を、排出空気流によりフィルタから剥離させて適切に排出口から排出させ易い。
【0090】
また、
前記清掃車は、
前記吸引流路と、前記排出口と前記空気流生成部とを繋ぐ排出流路と、を分岐させる分岐部と、
前記分岐部に配置された流路切替機構と、を更に備え、
前記流路切替機構は、前記吸引口と前記貯留部とを連通させると共に前記排出口と前記貯留部との連通を遮断する第1状態と、前記吸引口と前記貯留部との連通を遮断すると共に前記排出口と前記貯留部とを連通させる第2状態と、に切り替え可能である、と好適である。
【0091】
本構成によれば、流路切替機構の第1状態において、吸引口と貯留部とが連通し、且つ、排出口と貯留部との連通が遮断されるため、吸引中の塵埃を、排出口を通って排出させることなく貯留部に適切に貯留することができる。また、流路切替機構の第2状態において、吸引口と貯留部との連通が遮断され、且つ、排出口と貯留部とが連通するため、排出中の塵埃を、吸引口を通って意図しない箇所から排出させることなく排出口から適切に排出することができる。また、このような流路の切り替えを、分岐部に設けた切替機構という比較的簡易な構成により実現することができる。
【0092】
また、
前記清掃車を制御する制御部を更に備え、
前記清掃車は、前記貯留部における塵埃の貯留状態を検出する貯留状態検出部を更に備え、
前記制御部は、前記貯留状態検出部による検出結果に基づいて、前記貯留部から塵埃を排出する必要がある排出必要状態であるか否かを判定し、前記排出必要状態であると判定した場合に、前記清掃車を前記保守用停止位置まで走行させて停止させ、前記保守用停止位置において前記排出部による塵埃の排出を行わせる、と好適である。
【0093】
本構成によれば、制御部が、貯留状態検出部による検出結果に基づいて排出必要状態であると判定した場合に、清掃車を保守用停止位置に向かわせ、塵埃の排出を行わせる。一方、制御部が排出必要状態であると判定するまでは、清掃車による走行経路の塵埃の収集を継続させることができる。従って、本構成によれば、清掃車による走行経路の塵埃の収集及び排出を効率的に行うことができる。
【0094】
また、
前記貯留状態検出部は、前記貯留状態として、前記吸引空気流の発生中における、前記吸引流路の前記フィルタよりも前記空気流生成部側の圧力を検出し、
前記制御部は、前記貯留状態検出部により検出された圧力が規定値以下である場合に前記排出必要状態であると判定する、と好適である。
【0095】
貯留部に貯留された塵埃が多くなると、フィルタに多量の塵埃が付着して、吸引空気流がフィルタを通過し難くなるため、フィルタよりも空気流生成部側の圧力が低下する。これを利用して、本構成では、吸引流路におけるフィルタよりも空気流生成部側の圧力が規定値以下である場合に、制御部が、排出必要状態であると判定する。このように本構成によれば、圧力センサ等によって比較的容易に検出可能な圧力変化によって、排出必要状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0096】
また、
前記制御部は、前記清掃車に前記保守用停止位置において前記排出部による塵埃の排出を行わせた後、前記貯留状態検出部による検出を行い、当該検出結果に基づいて前記排出必要状態ではないと判定した場合に、前記清掃車を前記保守用停止位置から発進させて前記走行経路の清掃を再開させる、と好適である。
【0097】
本構成によれば、塵埃の排出後の清掃車による走行経路の清掃の再開を、自動で行うことができる。従って本構成によれば、走行車による清掃の再開に際しても、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0098】
また、
清掃システムは、物品を搬送する搬送車を備えた物品搬送設備に備えられ、
前記保守設備は、前記保守用停止位置において、前記清掃車及び前記搬送車の洗浄を行う洗浄部を備え、前記保守用停止位置に前記清掃車が停止した場合に、前記清掃車の洗浄を前記洗浄部によって行うことと並行して、当該清掃車から排出された塵埃を前記集塵部によって収集する、と好適である。
【0099】
本構成によれば、清掃車の洗浄と、清掃車によって収集された塵埃の処理とを、並行して行うことができる。また、この清掃システムを、例えば既存の物品搬送設備に利用し易い。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示に係る技術は、規定の走行経路に沿って走行して前記走行経路の清掃を行う清掃車を備えた清掃システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 :清掃車
14 :吸引部
15 :貯留部
16 :排出部
17 :流路切替機構
18 :貯留状態検出部
141 :吸引口
142 :フィルタ
161 :排出口
2 :保守設備
213 :洗浄部
214 :集塵部
3 :搬送車
G :空気流生成部
Fi :吸引空気流
Fo :排出空気流
Wi :吸引流路
Wo :排出流路
Pd :分岐部
8 :物品
R :走行経路
A :保守用停止位置