IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-トランスファーニードル 図1
  • 特許-トランスファーニードル 図2
  • 特許-トランスファーニードル 図3
  • 特許-トランスファーニードル 図4
  • 特許-トランスファーニードル 図5
  • 特許-トランスファーニードル 図6
  • 特許-トランスファーニードル 図7
  • 特許-トランスファーニードル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】トランスファーニードル
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20231212BHJP
   B65D 39/00 20060101ALI20231212BHJP
   B65D 51/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61J1/20 316B
B65D39/00 200
B65D51/00 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020151101
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045487
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕真
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 満
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-217729(JP,A)
【文献】特開昭49-51788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0193777(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
B65D 39/00
B65D 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容容器および薬剤を収容する薬剤収容容器に穿刺されるトランスファーニードルであって、
前記トランスファーニードルは、
基部と、
前記基部から突出して前記液体収容容器に穿刺可能な少なくとも1つの第1中空針と、
前記基部の前記第1中空針側とは反対側から突出して前記薬剤収容容器に穿刺可能な少なくとも1つの第2中空針とを備え、
前記第1中空針は、前記第1中空針の突出方向先端に位置する第1先端部を有し、
前記トランスファーニードルには、前記基部、前記第1中空針および前記第2中空針の内部を空気が通流可能な第1貫通孔と、前記基部、前記第1中空針および前記第2中空針の内部を液体が通流可能な第2貫通孔とが形成されており、
前記第1貫通孔は、前記第1先端部側に位置する第1中空針側第1開口端を有し、
前記第2貫通孔は、前記第1先端部側に位置し、かつ、前記第1中空針側第1開口端から見て前記基部側に位置する第1中空針側第2開口端を有し、
前記第1中空針のうち前記第1中空針側第2開口端から見て前記第1先端部側に位置する部分の体積は、前記第1貫通孔の容積より大きい、トランスファーニードル。
【請求項2】
前記第1中空針側第1開口端は、前記第1中空針の突出方向に対して斜めに交差するように位置しており、
前記第1中空針側第2開口端は、前記第1中空針の突出方向に対して斜めに交差するように位置しており、
前記第1中空針のうち、前記第1中空針側第2開口端の前記第1先端部側の端部から見て前記第1先端部側に位置する部分の体積は、前記第1貫通孔の、前記第1中空針側第1開口端の前記第1先端部側の端部から前記第2中空針側にかけての容積より大きい、請求項1に記載のトランスファーニードル。
【請求項3】
前記第2中空針は、前記第2中空針の突出方向先端に位置する第2先端部を有し、
前記第1貫通孔は、前記第2先端部側に位置する第2中空針側第1開口端をさらに有し、
前記第2貫通孔は、前記第2先端部側に位置し、かつ、前記第2中空針側第1開口端から見て前記第2先端部側に位置する第2中空針側第2開口端をさらに有する、請求項1または請求項2に記載のトランスファーニードル。
【請求項4】
前記基部の前記第1中空針側から延びて、前記液体収容容器と嵌合可能な第1嵌合部と、
前記基部の前記第2中空針側から延びて、前記薬剤収容容器と嵌合可能な第2嵌合部とをさらに備え、
前記第1嵌合部は、前記第1中空針を中心とする筒状の外形を有しており、
前記第2嵌合部は、前記第2中空針を中心とする筒状の外形を有している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトランスファーニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファーニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスファーニードルの構成を開示した先行文献として、実公平7-53625号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたトランスファーニードルは、通気用と通液用の2穴が平行に配されたニードル本体を具備する。ニードルの本体上部はバイアルの口部のゴム栓に刺入貫通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平7-53625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体を収容するバイアルなどの液体収容容器の内面には、液体本体とは離れた位置に少量の液体が付着している場合がある。液体収容容器がたとえばバイアルである場合には、上記の少量の液体は、ゴム栓の内面側の凹部に位置する。従来のトランスファーニードルにおいては、中空針を液体収容容器に挿通する際に、上記の少量の液体が、中空針に付着し、さらには、通気用の貫通孔に入り込む場合がある。この場合、トランスファーニードルによって液体収容容器から液体を移注するときに、上記の少量の液体によって通気用の貫通孔が閉塞して、液体が液体用の貫通孔を滑らかに流れない。
【0005】
本発明の上記の問題点に鑑みてなされたものであり、空気が通流可能な貫通孔が液体で閉塞することを抑制して、液体収容容器に収容された液体を滑らかに移注できる、トランスファーニードルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づくトランスファーニードルは、液体を収容する液体収容容器および薬剤を収容する薬剤収容容器に穿刺される。トランスファーニードルは、基部と、少なくとも1つの第1中空針と、少なくとも1つの第2中空針とを備えている。第1中空針は、基部から突出して液体収容容器に穿刺可能である。第1中空針は、第1中空針の突出方向先端に位置する第1先端部を有している。第2中空針は、基部の第1中空針側とは反対側から突出して薬剤収容容器に穿刺可能である。トランスファーニードルには、基部、第1中空針および第2中空針の内部を空気が通流可能な第1貫通孔と、基部、第1中空針および第2中空針の内部を液体が通流可能な第2貫通孔とが形成されている。第1貫通孔は、第1先端部側に位置する第1中空針側第1開口端を有している。第2貫通孔は、第1先端部側に位置し、かつ、第1中空針側第1開口端から見て基部側に位置する第1中空針側第2開口端を有している。第1中空針のうち第1中空針側第2開口端から見て第1先端部側に位置する部分の体積は、第1貫通孔の容積より大きい。
【0007】
本発明の一形態においては、第1中空針側第1開口端は、第1中空針の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第1中空針側第2開口端は、第1中空針の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第1中空針のうち、第1中空針側第2開口端の第1先端部側の端部から見て第1先端部側に位置する部分の体積は、第1貫通孔の、第1中空針側第1開口端の第1先端部側の端部から第2中空針側にかけての容積より大きい。
【0008】
本発明の一形態においては、第2中空針は、第2中空針の突出方向先端に位置する第2先端部を有している。第1貫通孔は、第2先端部側に位置する第2中空針側第1開口端をさらに有している。第2貫通孔は、第2先端部側に位置し、かつ、第2中空針側第1開口端から見て第2先端部側に位置する第2中空針側第2開口端をさらに有している。
【0009】
本発明の一形態においては、トランスファーニードルが、第1嵌合部と、第2嵌合部とをさらに備えている。第1嵌合部は、基部の第1中空針側から延びて、液体収容容器と嵌合可能である。第1嵌合部は、第1中空針を中心とする筒状の外形を有している。第2嵌合部は、基部の第2中空針側から延びて、薬剤収容容器と嵌合可能である。第2嵌合部は、第2中空針を中心とする筒状の外形を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気が通流可能な貫通孔が液体で閉塞することを抑制して、液体収容容器に収容された液体を滑らかに移注できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルを第1中空針側から見た底面図である。
図3図2のトランスファーニードルをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第1の状態と液体収容容器とを示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第2の状態と液体収容容器とを示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第3の状態と液体収容容器とを示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第4の状態と液体収容容器とを示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第5の状態と液体収容容器とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルについて図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルを示す斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルを第1中空針側から見た底面図である。図3は、図2のトランスファーニードルをIII-III線矢印方向から見た断面図である。なお、図3においては、トランスファーニードルの断面ととともに液体収容容器の断面も図示している。
【0014】
図1から図3に示すように、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードル1は、基部10と、少なくとも1つの第1中空針20と、少なくとも1つの第2中空針30と、第1嵌合部40と、第2嵌合部50とを備えている。
【0015】
トランスファーニードル1は、液体Lを収容する液体収容容器2および薬剤を収容する薬剤収容容器(図1から図3において図示略)に穿刺される。トランスファーニードル1は、たとえば樹脂で形成されている。液体収容容器2および薬剤収容容器は、たとえば、容器本体と、容器本体の口部を封止する栓部とを有する、バイアルである。栓部は、たとえばブチルゴムなどのゴムで形成されている。液体収容容器2の栓部の内面側には、凹部が形成されていることにより、少量の液体が付着している場合がある。
【0016】
基部10は、トランスファーニードル1の略中央に位置している。基部10は、略円板状の外形を有している。
【0017】
第1中空針20は、基部10から突出して液体収容容器2に穿刺可能である。本実施形態に係るトランスファーニードル1は、第1中空針20を1つのみ備えている。第1中空針20は、基部10の中心軸の軸方向から見て基部10の中心から突出している。第1中空針20は、基部10の中心軸の軸方向に平行に突出している。液体収容容器2がバイアルである場合、第1中空針20は、液体収容容器2の栓部を貫通するように液体収容容器2に穿刺される。第1中空針20は、第1中空針20の突出方向先端に位置する第1先端部21を有している。
【0018】
第2中空針30は、基部10の第1中空針20側とは反対側から突出して薬剤収容容器に穿刺可能である。本実施形態に係るトランスファーニードル1は、第2中空針30を1つのみ備えている。第2中空針30は、基部10の中心軸の軸方向から見て基部10の中心から突出している。第2中空針30は、基部10の中心軸の軸方向に平行に突出している。薬剤収容容器がバイアルである場合、第2中空針30は、薬剤収容容器の栓部を貫通するように薬剤収容容器に穿刺される。また、第2中空針30は、第2中空針30の突出方向先端に位置する第2先端部31を有している。
【0019】
第1嵌合部40は、基部10の第1中空針20側から延びて、液体収容容器2と嵌合可能である。具体的には、第1嵌合部40は、基部10の第1中空針20側において、基部10の中心軸の径方向端部から、中心軸の軸方向に平行に延びている。第1嵌合部40は、第1中空針20を中心とする筒状の外形を有している。すなわち、基部10の中心軸の軸方向から見たときに、第1嵌合部40は、基部10の中心軸の径方向端部において、中心軸の周方向に沿って位置している。
【0020】
第2嵌合部50は、基部10の第2中空針30側から延びて、薬剤収容容器と嵌合可能である。具体的には、第2嵌合部50は、基部10の第2中空針30側において、基部10の中心軸の径方向端部から、中心軸の軸方向に平行に延びている。第2嵌合部50は、第2中空針30を中心とする筒状の外形を有している。すなわち、基部10の中心軸の軸方向から見たときに、第2嵌合部50は、基部10の中心軸の径方向端部において、中心軸の周方向に沿って位置している。
【0021】
トランスファーニードル1には、基部10、第1中空針20および第2中空針30の内部を空気が通流可能な第1貫通孔60と、基部10、第1中空針20および第2中空針30の内部を液体Lが通流可能な第2貫通孔70とが形成されている。
【0022】
第1貫通孔60は、基部10の中心軸の軸方向に平行に延びている。第1貫通孔60は、基部10の中心軸、第1中空針20の中心軸および第2中空針30の中心軸と重ならないように位置している。
【0023】
第1貫通孔60は、第1先端部21側に位置する第1中空針側第1開口端61と、第2先端部31側に位置する第2中空針側第1開口端62とを有している。
【0024】
第1中空針側第1開口端61は、第1先端部21より基部10側に位置している。第1中空針側第1開口端61は、第1中空針20の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第1中空針側第1開口端61の第1先端部21側の端部61aは、基部10の中心軸の軸方向から見たときに上記中心軸の径方向中心側に位置している。
【0025】
第2中空針側第1開口端62は、第2先端部31より基部10側に位置している。第2中空針側第1開口端62は、第2中空針30の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第2中空針側第1開口端62の第2先端部31側の端部62aは、基部10の中心軸の軸方向から見たときに上記中心軸の径方向中心側に位置している。
【0026】
第2貫通孔70は、基部10の中心軸の軸方向に平行に延びている。第2貫通孔70は、基部10の中心軸、第1中空針20の中心軸および第2中空針30の中心軸と重ならないように位置している。第2貫通孔70は、上記中心軸の軸方向から見て、当該中心軸に関して第1貫通孔60と対称に位置している。
【0027】
第2貫通孔70は、第1先端部21側に位置する第1中空針側第2開口端71と、第2先端部31側に位置する第2中空針側第2開口端72とを有している。
【0028】
第1中空針側第2開口端71は、第1中空針側第1開口端61から見て基部10側に位置している。第1中空針側第2開口端71は、第1中空針20の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第1中空針側第2開口端71の第1先端部21側の端部71aは、基部10の中心軸の軸方向から見たときに上記中心軸の径方向中心側に位置している。
【0029】
第2中空針側第2開口端72は、第2先端部31より基部10側に位置している。第2中空針側第2開口端72は、第2中空針側第1開口端62から見て第2先端部31側に位置している。第2中空針側第2開口端72の第2先端部31側の端部72aは、基部10の中心軸の軸方向から見たときに上記中心軸の径方向中心側に位置している。
【0030】
第1中空針20のうち第1中空針側第2開口端71から見て第1先端部21側に位置する部分20P1の体積は、第1貫通孔60の容積より大きい。より具体的には、第1中空針20のうち、第1中空針側第2開口端71の第1先端部21側の端部71aから見て第1先端部21側に位置する部分20P2の体積は、第1貫通孔60の、第1中空針側第1開口端61の第1先端部21側の端部61aから第2中空針30側にかけての容積より大きい。
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードル1に穿刺された液体収容容器2から、液体Lを移注する方法について説明する。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第1の状態と液体収容容器とを示す断面図である。なお、図4以降の図においては、図3と同様の断面視にて図示している。
【0033】
図4に示すように、液体収容容器2の栓部を貫通するように第1中空針20を液体収容容器2に上方から穿刺する。図4に示した穿刺開始直後である第1の状態においては、第1中空針側第1開口端61の第1先端部21側の端部61aが液体収容容器2の内部空間に位置しているが、液体収容容器2の栓部が第1中空針20と密着している状態であるため、液体収容容器2の内部空間は、未だ密閉された状態である。また、第1の状態においては、液体収容容器2の栓部の内面側に付着した液体Lが上記端部61aと接触する。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第2の状態と液体収容容器とを示す断面図である。図5に示すように、第1の状態からさらに深く第1中空針20を液体収容容器2の栓部に穿刺すると、第1中空針側第1開口端61の全体が、液体収容容器2の内部空間に位置する第2の状態となる。第1の状態から第2の状態に移行する間に、液体収容容器2の内部空間は、第1貫通孔60を介して外部空間と連通する。しかしながら、当該第2の状態においては、液体収容容器2の栓部の内面側に付着した液体Lが第1中空針側第1開口端61に付着する場合がある。一方で、液体収容容器2の内部空間は、第1中空針20の侵入により陽圧になっている。このため、第1中空針側第1開口端61に付着した液体Lは、液体収容容器2の内部空間内の陽圧の空気によって、第1貫通孔60の内部に向かって押し上げられる。結果として、第1貫通孔60の内部に位置する液体Lが第1貫通孔を閉塞させる。
【0035】
図6は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第3の状態と液体収容容器とを示す断面図である。図6に示すように、第2の状態からさらに深く第1中空針20を液体収容容器2の栓部に穿刺すると、第1中空針側第2開口端71の第1先端部21側の端部71aが液体収容容器2の内部空間に位置する第3の状態となる。第3の状態においては、第1中空針20の端部71aの周辺部分が液体収容容器2の栓部と密着している。このため、液体収容容器2の内部空間は、第2貫通孔70を介しては外部空間と連通していない。一方で、第2の状態と比較して第1中空針20がさらに液体収容容器2の内部に侵入している。このため、第1貫通孔60の内部を閉塞させているを液体Lは、さらに液体収容容器2の内部空間内の空気によって、第1貫通孔60の第2中空針側第1開口端62に向かって押し上げられる。
【0036】
本実施形態においては、第1中空針20のうち第1中空針側第2開口端71から見て第1先端部21側に位置する部分20P1の体積は、第1貫通孔60の容積より大きい。より具体的には、第1中空針20のうち、第1中空針側第2開口端71の第1先端部21側の端部71aから見て第1先端部21側に位置する部分20P2の体積は、第1貫通孔60の、第1中空針側第1開口端61の、第1先端部21側の端部61aから第2中空針30側にかけての容積より大きい。このように上記部分20P1および上記部分20P2の体積が十分大きいため、本実施形態においては、第1貫通孔60を閉塞させている液体Lは、液体収容容器2の内部空間内の空気によって、第2中空針側第1開口端62近傍まで押し上げられる、または、第2中空針側第1開口端62から排出される。
【0037】
図7は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第4の状態と液体収容容器とを示す断面図である。図7に示すように、第3の状態からさらに深く第1中空針20を液体収容容器2の栓部に穿刺すると、液体収容容器2が基部10に当接するとともに、第1中空針側第2開口端71の全体が、液体収容容器2の内部空間に位置する第4の状態となる。第3の状態から第4の状態に移行する間に、液体収容容器2の内部空間は、第2貫通孔70を介して外部空間と連通する。このため、第4の状態においては、第3の状態からさらに深く第1中空針20が液体収容容器2の内部空間に侵入するが、第4の状態において第1貫通孔60を閉塞させている液体Lの位置は、第3の状態からほとんど変化しない。なお、図7に示すように、第1中空針側第1開口端61は、第4の状態において、液体収容容器2に収容された液体Lの本体に接触しないように位置している。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードルの第5の状態と液体収容容器とを示す断面図である。図7に示した第4の状態のトランスファーニードル1の第2中空針30を、逆さにした(栓部が下方に向いた)状態の薬剤収容容器3に穿刺した後、図8に示すように、第2中空針30が第1中空針20の下方に位置するように、トランスファーニードル1をひっくり返す。これにより、液体収容容器2に収容された液体Lは、第2貫通孔70を通って、第2中空針30が穿刺された薬剤収容容器3に移注される。なお、図8に示すように、第1中空針側第1開口端61は、トランスファーニードル1をひっくり返した第5の状態において、液体収容容器2に収容された液体Lの本体に埋没しないように位置している。
【0039】
このとき、上述したように第1貫通孔60内が液体Lによって閉塞している場合がある。しかしながら、本実施形態に係るトランスファーニードル1においては、第1貫通孔60内の液体Lが第2中空針側第1開口端62近傍に位置している。このため、液体収容容器2に穿刺している状態のままトランスファーニードル1を揺動させることで、液体収容容器2内の空気の弾性振動により、第1貫通孔60内の液体Lは、第2中空針側第1開口端62から容易に排出される。ひいては、液体収容容器2の内部空間に第1貫通孔60を通って空気が侵入可能となるため、液体収容容器2内の内部空間が負圧になることが抑制される。
【0040】
以上の方法により、本実施形態においては、トランスファーニードル1に穿刺された液体収容容器2から、第2貫通孔70を通って液体Lが滑らかに薬剤収容容器3に移注される。
【0041】
なお、薬剤収容容器3内で薬剤が液体Lに溶解することで生成された薬液は、シリンジで吸引してもよい。薬剤収容容器3内の薬液をシリンジによって吸引する場合は、トランスファーニードル1(第2中空針30)が穿刺した状態の薬剤収容容器3内から、第1貫通孔60を介して薬液が吸引されてもよい。第1貫通孔60を介して薬液を吸引する場合には、たとえば、第1中空針20に、筒状のアダプタが一方側から接続される。筒状のアダプタの他方側には、シリンジの先端部が接続される。アダプタの内部には、シリンジ内に異物が混入するのを抑制するための焼結フィルターが位置してもよい。
【0042】
上述のように、本発明の一実施形態に係るトランスファーニードル1は、液体Lを収容する液体収容容器2および薬剤を収容する薬剤収容容器3に穿刺される。トランスファーニードル1は、基部10と、少なくとも1つの第1中空針20と、少なくとも1つの第2中空針30とを備えている。第1中空針20は、基部10から突出して液体収容容器2に穿刺可能である。第1中空針20は、第1中空針20の突出方向先端に位置する第1先端部21を有している。第2中空針30は、基部10の第1中空針20側とは反対側から突出して薬剤収容容器3に穿刺可能である。トランスファーニードル1には、基部10、第1中空針20および第2中空針30の内部を空気が通流可能な第1貫通孔60と、基部10、第1中空針20および第2中空針30の内部を液体Lが通流可能な第2貫通孔70とが形成されている。第1貫通孔60は、第1先端部21側に位置する第1中空針側第1開口端61を有している。第2貫通孔70は、第1先端部21側に位置し、かつ、第1中空針側第1開口端61から見て基部10側に位置する第1中空針側第2開口端71を有している。第1中空針20のうち第1中空針側第2開口端71から見て第1先端部21側に位置する部分20P1の体積は、第1貫通孔60の容積より大きい。
【0043】
これにより、空気を通流可能な第1貫通孔60が液体Lで閉塞することを抑制して、液体Lを、第1中空針20に穿刺した液体収容容器から第2貫通孔70を介して滑らかに移注できる。
【0044】
本実施形態においては、第1中空針側第1開口端61は、第1中空針20の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第1中空針側第2開口端71は、第1中空針20の突出方向に対して斜めに交差するように位置している。第1中空針20のうち、第1中空針側第2開口端71の第1先端部21側の端部71aから見て第1先端部21側に位置する部分20P2の体積は、第1貫通孔60の、第1中空針側第1開口端61の第1先端部21側の端部61aから第2中空針30側にかけての容積より大きい。
【0045】
これにより、空気を通流可能な第1貫通孔60が液体Lで閉塞することをさらに抑制できる。
【0046】
本実施形態においては、第2中空針30は、第2中空針30の突出方向先端に位置する第2先端部31を有している。第1貫通孔60は、第2先端部31側に位置する第2中空針側第1開口端62をさらに有している。第2貫通孔70は、第2先端部31側に位置し、かつ、第2中空針側第1開口端62から見て第2先端部31側に位置する第2中空針側第2開口端72をさらに有している。
【0047】
これにより、第2中空針側第1開口端62から排出された液体Lの残液が、第2中空針側第2開口端72に付着することを抑制できる。
【0048】
本実施形態においては、トランスファーニードル1が、第1嵌合部40と、第2嵌合部50とをさらに備えている。第1嵌合部40は、基部10の第1中空針20側から延びて、液体収容容器2と嵌合可能である。第1嵌合部40は、第1中空針20を中心とする筒状の外形を有している。第2嵌合部50は、基部10の第2中空針30側から延びて、薬剤収容容器と嵌合可能である。第2嵌合部50は、第2中空針30を中心とする筒状の外形を有している。
【0049】
これにより、液体収容容器2および薬剤収容容器がバイアルなどの略円筒状の外形を有している場合には、これらの容器をトランスファーニードル1を容易に嵌合させることができる。ひいては、これらの容器に第1中空針20および第2中空針30を容易に穿刺できる。
【0050】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 トランスファーニードル、2 液体収容容器、3 薬剤収容容器、10 基部、20 第1中空針、21 第1先端部、30 第2中空針、31 第2先端部、40 第1嵌合部、50 第2嵌合部、60 第1貫通孔、61 第1中空針側第1開口端、62 第2中空針側第1開口端、70 第2貫通孔、71 第1中空針側第2開口端、72 第2中空針側第2開口端、L 液体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8