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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/06 20060101AFI20231212BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16D28/00 A
F16D48/06 102
F16D13/52 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020154939
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048887
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅史
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1657(JP,A)
【文献】特開2011-250588(JP,A)
【文献】特開2004-278769(JP,A)
【文献】特開2001-241545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0135317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 48/06
F16D 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により作動するアクチュエータ(2)と、前記アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるトルク伝達部(70)とを備え、前記トルク伝達部が伝達状態のとき第1伝達部(61)と第2伝達部(62)との間でトルクを伝達するトルク伝達装置(1)を制御する制御装置(100)であって、
前記第1伝達部と前記第2伝達部との間で伝達すべきトルクである目標伝達トルクを算出する目標算出部(111)と、
時間経過により前記目標伝達トルクが増大した場合、係合モードであると判定し、時間経過により前記目標伝達トルクが減少した場合、解放モードであると判定し、時間経過によっても前記目標伝達トルクが変化しない場合、定常モードであると判定するモード判定部(112)と、
前記モード判定部により判定されたモードに基づき、前記アクチュエータを制御する制御部(113)と、を備え、
前記制御部は、
前記目標伝達トルクに基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御部(121)、
前記フィードバック制御部によるフィードバック制御に用いるゲインである係合ゲイン、および、前記係合ゲインより小さいゲインである解放ゲインを設定するゲイン設定部(122)、
前記係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、前記解放ゲインに基づき解放Dutyを算出することが可能なDuty算出部(123)、
前記モード判定部により判定されたモードに基づき、前記係合Dutyまたは前記解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力することが可能なDuty出力部(124)、
前記Duty出力部から出力された前記出力Dutyに基づき、前記アクチュエータへの通電を制御する通電制御部(125)、
を含む制御装置。
【請求項2】
前記Duty出力部は、前記フィードバック制御部の演算周期と同じ周期で前記出力Dutyを出力する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記Duty出力部は、前記フィードバック制御部の演算周期より短い周期で前記出力Dutyを出力する請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記Duty出力部は、前記アクチュエータに対する前記トルク伝達部からの反力が0より大きいときに限り、前記係合Dutyまたは前記解放Dutyを切り替えて前記出力Dutyとして出力する請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記Duty出力部は、前記モード判定部により定常モードであると判定されたとき、前記係合Dutyまたは前記解放Dutyの一方に固定して前記出力Dutyとして出力する請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記Duty算出部は、前記モード判定部により判定されたモードに基づき、前記係合ゲインに基づき係合Dutyを算出、または、前記解放ゲインに基づき解放Dutyを算出し、
前記Duty出力部は、前記Duty算出部により算出された係合Dutyまたは解放Dutyを出力Dutyとして出力する請求項1~5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記ゲイン設定部は、前記目標伝達トルクまたは前記トルク伝達部の温度に基づき、前記係合ゲインおよび前記解放ゲインを設定可能である請求項1~6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記アクチュエータは、トルクを出力する電動モータ(20)、および、前記電動モータのトルクにより軸方向に移動し前記トルク伝達部を押圧し前記トルク伝達部の状態を伝達状態または非伝達状態に切り替えることが可能な押圧部(81)を有し、
前記フィードバック制御部は、前記目標伝達トルクと、前記電動モータの回転角、前記押圧部の移動量、前記電動モータの回転数、前記押圧部から前記トルク伝達部に作用する荷重、または、前記電動モータに流れる電流と、に基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する請求項1~7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記フィードバック制御部は、ハードウェアにより構成される回路であり、前記目標伝達トルクと前記電動モータに流れる電流とに基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記トルク伝達部は、前記アクチュエータから出力された押圧力により係合状態または非係合状態に切り替わるクラッチ(70)である請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記クラッチは、他部材に対し一方および他方が相対回転する前記第1伝達部と前記第2伝達部との間を断接し動力を伝達させるタイプ、または、他部材に対し一方が固定され他方が相対回転する前記第1伝達部と前記第2伝達部との間を断接し伝達される動力を弱めたり止めたりするタイプである請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記クラッチは、乾式クラッチまたは湿式クラッチである請求項10または11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記クラッチは、単板クラッチまたは多板クラッチである請求項10~12のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通電により作動するアクチュエータと、アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるトルク伝達部とを備え、トルク伝達部が伝達状態のとき第1伝達部と第2伝達部との間でトルクを伝達するトルク伝達装置が知られている。また、当該トルク伝達装置を制御する制御装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1のトルク伝達装置では、アクチュエータは、電動モータを有し、電動モータの回転運動を並進運動に変換し、トルク伝達部としてのクラッチを押圧しクラッチの状態を伝達状態または非伝達状態に切り替える。特許文献1の制御装置では、アクチュエータをフィードバック制御している。ここで、制御装置は、電動モータの検出電流の大小に応じ、アクチュエータとクラッチとのガタ詰め期間では、電流が小さいため、フィードバック制御に用いるゲインを大きくし、クラッチに接触後の推力制御期間では、電流が大きいため、ゲインを小さくしている。これにより、応答性と制御性との両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-166522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なクラッチシステムでは、伝達状態に移行する係合時と非伝達状態に移行する解放時との応答性が異なるため、係合時と解放時とでゲインまたはゲイン補正量等、同一の制御パラメータを用いた場合、応答性を優先させると係合時または解放時いずれかのオーバーシュートまたはアンダーシュートが増大するおそれがある。また、係合時および解放時両方のオーバーシュートまたはアンダーシュートをなくそうとすると、両方の応答性を抑えた制御パラメータを設定せざるを得ない。
【0006】
例えば、係合応答に特化した制御パラメータでは、係合応答はシステムとしての最大性能を引き出せるものの、解放側が速くなりすぎて、アンダーシュートや発振の原因となるおそれがある。また、解放応答に特化した制御パラメータでは、解放応答は最大性能を引き出せるものの、係合側が遅くなるおそれがある。さらに、係合時と解放時両方のオーバーシュートまたはアンダーシュートをなくした中間どころのゲインでは、係合時および解放時ともに最大限の応答を引き出すことができないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、トルク伝達装置の作動モードに応じて適切に伝達性能を引き出すことのできる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、通電により作動するアクチュエータ(2)と、アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるトルク伝達部(70)とを備え、トルク伝達部が伝達状態のとき第1伝達部(61)と第2伝達部(62)との間でトルクを伝達するトルク伝達装置(1)を制御する制御装置(100)であって、目標算出部(111)とモード判定部(112)と制御部(113)とを備える。
【0009】
目標算出部は、第1伝達部と第2伝達部との間で伝達すべきトルクである目標伝達トルクを算出する。モード判定部は、時間経過により目標伝達トルクが増大した場合、係合モードであると判定し、時間経過により目標伝達トルクが減少した場合、解放モードであると判定し、時間経過によっても目標伝達トルクが変化しない場合、定常モードであると判定する。制御部は、モード判定部により判定されたモードに基づき、アクチュエータを制御する。
【0010】
制御部は、フィードバック制御部(121)、ゲイン設定部(122)、Duty算出部(123)、Duty出力部(124)、通電制御部(125)を含む。フィードバック制御部は、目標伝達トルクに基づき、アクチュエータをフィードバック制御する。ゲイン設定部は、フィードバック制御部によるフィードバック制御に用いるゲインである係合ゲイン、および、係合ゲインより小さいゲインである解放ゲインを設定する。
【0011】
Duty算出部は、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出することが可能である。Duty出力部は、モード判定部により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力することが可能である。通電制御部は、Duty出力部から出力された出力Dutyに基づき、アクチュエータへの通電を制御する。
【0012】
本発明では、係合モードすなわち係合時には、係合ゲインに基づきアクチュエータをフィードバック制御し、解放モードすなわち解放時には、係合ゲインより小さい解放ゲインに基づきアクチュエータをフィードバック制御することができる。そのため、係合時の応答性を向上させつつ、解放時のアンダーシュートや発振を抑制できる。したがって、トルク伝達装置の作動モードに応じて適切に伝達性能を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示す模式図。
図2】第1実施形態によるトルク伝達装置において時間の経過に伴い変化する目標伝達トルクを示す図。
図3】第1実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図4】第1実施形態による制御装置によるアクチュエータの制御に関する処理を示すフローチャート。
図5】第1実施形態による制御装置の作動例を示す図。
図6】比較形態の制御装置の作動例を示す図。
図7】第1実施形態による制御装置の作動例を示す図。
図8】第2実施形態による制御装置の作動例を示す図。
図9】第3実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図10】第4実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図11】第5実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図12】第6実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図13】第6実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示す模式図。
図14】第7実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示す模式図。
図15】第8実施形態によるトルク伝達装置および制御装置の作動を説明するための図であって、クラッチ荷重とストロークとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、複数の実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を図1に示す。トルク伝達装置1は、例えばクラッチ装置であって、車両の内燃機関と変速機との間に設けられ、内燃機関と変速機との間のトルクの伝達を許容または遮断するのに用いられる。制御装置100は、トルク伝達装置1を制御するのに用いられる。
【0016】
トルク伝達装置1は、アクチュエータ2と、「トルク伝達部」としてのクラッチ70とを備えている。アクチュエータ2は、ハウジング10と、電動モータ20と、減速機30と、回転並進部60と、押圧部81と、を備えている。
【0017】
また、トルク伝達装置1は、「第1伝達部」としての入力軸61と、「第2伝達部」としての出力軸62と、を備えている。
【0018】
制御装置100は、例えば電子制御ユニットすなわちECUであって、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM等、入出力手段としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。制御装置100は、車両の各部に設けられた各種センサからの信号等の情報に基づき、ROM等に格納されたプログラムに従い演算を実行し、車両の各種装置および機器の作動を制御する。このように、制御装置100は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行する。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0019】
制御装置100は、各種センサからの信号等の情報に基づき、内燃機関等の作動を制御可能である。また、制御装置100は、後述する電動モータ20の作動を制御可能である。
【0020】
入力軸61は、例えば、図示しない内燃機関の駆動軸に接続され、駆動軸とともに回転可能である。つまり、入力軸61には、駆動軸からトルクが入力される。
【0021】
内燃機関を搭載する車両には、固定フランジ3が設けられる(図1参照)。固定フランジ3は、筒状に形成され、例えば車両のエンジンルームに固定される。入力軸61は、例えばベアリング等を介して固定フランジ3により軸受けされる。
【0022】
固定フランジ3の端部の内周壁と入力軸61の外周壁との間には、ハウジング10が設けられる。ハウジング10は、ハウジング内筒部11、ハウジング板部12、ハウジング外筒部13等を有している。
【0023】
ハウジング内筒部11は、略円筒状に形成されている。ハウジング板部12は、ハウジング内筒部11の端部から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ハウジング外筒部13は、ハウジング板部12の外縁部からハウジング内筒部11と同じ側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、ハウジング内筒部11とハウジング板部12とハウジング外筒部13とは、例えば金属により一体に形成されている。
【0024】
ハウジング10は、ハウジング板部12およびハウジング外筒部13の外壁が固定フランジ3の壁面に当接するよう固定フランジ3に固定される(図1参照)。ハウジング10は、図示しないボルト等により固定フランジ3に固定される。ここで、ハウジング10は、固定フランジ3および入力軸61に対し同軸に設けられる。
【0025】
電動モータ20は、例えば、ハウジング内筒部11とハウジング板部12とハウジング外筒部13との間に設けられている。電動モータ20は、図示しないステータおよびロータを有し、通電によりロータからトルクを出力可能である。
【0026】
制御装置100は、電動モータ20に供給する電力を制御することにより、電動モータ20の作動を制御可能である。
【0027】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、回転角センサ5を備えている。回転角センサ5は、例えば電動モータ20とハウジング板部12との間に設けられている。回転角センサ5は、電動モータ20の回転角を検出し、回転角に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、回転角センサ5からの信号に基づき、電動モータ20の回転角および回転数等を検出することができる。
【0028】
減速機30は、例えば、ハウジング内筒部11とハウジング外筒部13との間において、電動モータ20に対しハウジング板部12とは反対側に設けられている。減速機30には、電動モータ20のトルクが入力される。減速機30は、電動モータ20のトルクを減速して出力する。
【0029】
回転並進部60は、回転部40、並進部50を有している。回転部40は、例えば、環状に形成され、ハウジング内筒部11とハウジング外筒部13との間において、減速機30に対し電動モータ20とは反対側に設けられている。回転部40には、減速機30により減速された電動モータ20のトルクが入力される。回転部40は、減速機30からトルクが入力されると、ハウジング10に対し相対回転する。
【0030】
並進部50は、例えば、筒状に形成され、ハウジング内筒部11の径方向外側において、回転部40に対し減速機30とは反対側に設けられている。並進部50は、回転部40がハウジング10に対し相対回転すると、ハウジング10に対し軸方向に相対移動する。
【0031】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、リターンスプリング55、Cリング57を備えている。リターンスプリング55は、例えば、ハウジング内筒部11の径方向外側において、並進部50に対し回転部40とは反対側に設けられている。Cリング57は、例えば、リターンスプリング55に対し並進部50とは反対側に位置するようハウジング内筒部11の外周壁に設けられている。リターンスプリング55は、一端が並進部50に当接し、他端がCリング57に当接している。リターンスプリング55は、並進部50を回転部40側へ付勢している。
【0032】
出力軸62は、軸部621、板部622、筒部623、摩擦板624を有している(図1参照)。軸部621は、略円筒状に形成されている。板部622は、軸部621の一端から径方向外側へ環状の板状に延びるよう軸部621と一体に形成されている。筒部623は、板部622の外縁部から軸部621とは反対側へ略円筒状に延びるよう板部622と一体に形成されている。摩擦板624は、略円環の板状に形成され、板部622の筒部623側の端面に設けられている。ここで、摩擦板624は、板部622に対し相対回転不能である。
【0033】
入力軸61の端部は、ハウジング内筒部11の内側を通り、並進部50に対し回転部40とは反対側に位置している。出力軸62は、ハウジング10に対し固定フランジ3とは反対側、すなわち、並進部50に対し回転部40とは反対側において、入力軸61と同軸に設けられる。出力軸62は、例えばベアリング等を介して入力軸61により軸受けされる。入力軸61および出力軸62は、ハウジング10に対し相対回転可能である。
【0034】
クラッチ70は、筒部623の内側において入力軸61と出力軸62との間に設けられている。クラッチ70は、内側摩擦板71、外側摩擦板72、係止部701を有している。内側摩擦板71は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。内側摩擦板71は、内縁部が入力軸61の外周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、内側摩擦板71は、入力軸61に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
【0035】
外側摩擦板72は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。ここで、内側摩擦板71と外側摩擦板72とは、入力軸61の軸方向において交互に配置されている。外側摩擦板72は、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、外側摩擦板72は、出力軸62に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。複数の外側摩擦板72のうち最も摩擦板624側に位置する外側摩擦板72は、摩擦板624に接触可能である。
【0036】
係止部701は、略円環状に形成され、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁に嵌合するよう設けられる。係止部701は、複数の外側摩擦板72のうち最も並進部50側に位置する外側摩擦板72の外縁部を係止可能である。そのため、複数の外側摩擦板72、複数の内側摩擦板71は、筒部623の内側からの脱落が抑制される。なお、係止部701と摩擦板624との距離は、複数の外側摩擦板72および複数の内側摩擦板71の板厚の合計よりも大きい。
【0037】
複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに接触、つまり係合した状態である係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力が生じ、当該摩擦力の大きさに応じて内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転が規制される。一方、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに離間、つまり係合していない状態である非係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力は生じず、内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転は規制されない。ここで、「係合状態」は「伝達状態」に対応し、「非係合状態」は「非伝達状態」に対応する。
【0038】
クラッチ70が係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、クラッチ70を経由して出力軸62に伝達される。一方、クラッチ70が非係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、出力軸62に伝達されない。
【0039】
このように、「トルク伝達部」としてのクラッチ70は、入力軸61と出力軸62との間でトルクを伝達する。クラッチ70は、係合している係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を許容し、係合していない非係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を遮断する。
【0040】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、通常、すなわち、電動モータ20への非通電時、非係合状態となる、所謂常開式(ノーマリーオープンタイプ)のトルク伝達装置である。
【0041】
押圧部81は、2つの皿ばねを有している。2つの皿ばねは、軸方向に重なった状態で、並進部50のクラッチ70側の端部の外周壁に形成された段差部501に内縁部が位置するよう設けられている。押圧部81は、軸方向に弾性変形可能である。
【0042】
電動モータ20への非通電時、回転部40と並進部50との距離は、比較的小さく、押圧部81の外縁部とクラッチ70との間には、隙間が形成されている(図1参照)。そのため、クラッチ70は非係合状態であり、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達は遮断されている。
【0043】
ここで、制御装置100の制御により電動モータ20に電力が供給されると、電動モータ20が回転し、減速機30からトルクが出力され、回転部40がハウジング10に対し相対回転する。これにより、並進部50は、リターンスプリング55を圧縮しながらハウジング10に対し軸方向に相対移動、すなわち、クラッチ70側へ移動する。これにより、押圧部81は、クラッチ70側へ移動する。
【0044】
並進部50の軸方向の移動により押圧部81がクラッチ70側へ移動すると、押圧部81とクラッチ70との間の隙間が小さくなり、押圧部81の外縁部は、クラッチ70の外側摩擦板72に接触する。押圧部81がクラッチ70に接触した後さらに並進部50が軸方向に移動すると、押圧部81は、軸方向に弾性変形しつつ、外側摩擦板72を摩擦板624側へ押す。これにより、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに係合し、クラッチ70が係合状態となる。そのため、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達が許容される。
【0045】
制御装置100は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に達すると、電動モータ20の回転を停止させる。これにより、クラッチ70は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に維持された係合保持状態となる。このように、押圧部81は、電動モータ20のトルクにより軸方向に移動しクラッチ70を押圧し、クラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に切り替えることが可能である。
【0046】
出力軸62は、軸部621の板部622とは反対側の端部が、図示しない変速機の入力軸に接続され、当該入力軸とともに回転可能である。つまり、変速機の入力軸には、出力軸62から出力されたトルクが入力される。変速機に入力されたトルクは、変速機で変速され、駆動トルクとして車両の駆動輪に出力される。これにより、車両が走行する。
【0047】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、温度センサ6を備えている。温度センサ6は、例えば出力軸62の筒部623に設けられている。温度センサ6は、クラッチ70およびクラッチ70の潤滑油の温度を検出し、温度に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、温度センサ6からの信号に基づき、クラッチ70および潤滑油の温度を検出することができる。
【0048】
図1に示すように、本実施形態は、通電により作動するアクチュエータ2と、アクチュエータ2の作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わる「トルク伝達部」としてのクラッチ70とを備え、クラッチ70が伝達状態のとき入力軸61と出力軸62との間でトルクを伝達するトルク伝達装置1を制御する制御装置100である。制御装置100は、概念的な機能部として、目標算出部111とモード判定部112と制御部113とを備える。
【0049】
目標算出部111は、入力軸61と出力軸62との間で伝達すべきトルクである目標伝達トルクを算出する。モード判定部112は、時間経過により目標伝達トルクが増大した場合、係合モードであると判定し、時間経過により目標伝達トルクが減少した場合、解放モードであると判定し、時間経過によっても目標伝達トルクが変化しない場合、定常モードであると判定する(図2参照)。制御部113は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、アクチュエータ2を制御する。
【0050】
ここで、「係合モード」とは、アクチュエータ2によって押圧部81をクラッチ70側へ移動させ、クラッチ70を係合状態にする、すなわち、係合させるときのモードである。また、「解放モード」とは、アクチュエータ2によって押圧部81をクラッチ70とは反対側へ移動させ、クラッチ70を非係合状態にする、すなわち、解放させるときのモードである。また、「定常モード」とは、押圧部81を所定の位置に保持し、クラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に保持するときのモードである。
【0051】
制御部113は、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、通電制御部125を含む。フィードバック制御部121は、目標伝達トルクに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。ゲイン設定部122は、フィードバック制御部121によるフィードバック制御に用いるゲインである係合ゲイン、および、係合ゲインより小さいゲインである解放ゲインを設定する。
【0052】
Duty算出部123は、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出することが可能である。Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力することが可能である。通電制御部125は、Duty出力部124から出力された出力Dutyに基づき、アクチュエータ2への通電を制御する。本明細書において、「Duty」とは、信号のパルス幅をパルス期間(周期)で割ったものである「デューティ比」を意味する。
【0053】
図3に示すように、PIDコントローラは、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124を含む。本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルク、および、回転角センサ5により検出した電動モータ20の回転角に基づき、アクチュエータ2の電動モータ20をPID制御する。本実施形態では、ソフトウェアによりフィードバック回路が構成されている。
【0054】
具体的には、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出される。また、目標ストロークに基づき、電動モータ20の目標回転角が算出され、目標回転角と回転角センサ5により検出した電動モータ20の回転角との偏差である回転角偏差がフィードバック制御部121に入力される。また、目標回転角に基づき、目標回転角速度すなわち目標回転数が算出され、フィードバック制御部121に入力される。
【0055】
ゲイン設定部122は、所定値である係合ゲイン、および、係合ゲインより小さい所定値である解放ゲインを設定する。
【0056】
ここで、ゲイン設定部122は、目標クラッチ伝達荷重と負荷マップとに基づき、係合ゲインおよび解放ゲインを設定してもよい。負荷マップとしては、例えば、目標クラッチ伝達荷重が0~100Nのときゲインセットα(係合ゲイン、解放ゲイン)、1000~5000Nのときゲインセットβ(係合ゲイン、解放ゲイン)、5000~10000Nのときゲインセットγ(係合ゲイン、解放ゲイン)のように設定することが考えられる。
【0057】
また、ゲイン設定部122は、クラッチ70の温度と温度マップとに基づき、係合ゲインおよび解放ゲインを設定してもよい。温度マップとしては、例えば、クラッチ70の温度が-40℃のときゲインセットA(係合ゲイン、解放ゲイン)、80℃のときゲインセットB(係合ゲイン、解放ゲイン)、140℃のときゲインセットC(係合ゲイン、解放ゲイン)のように設定することが考えられる。なお、クラッチ70の温度が-40℃より低いとき、-40~80℃のとき、80~140℃のとき、140℃より高いときは、補間により係合ゲインおよび解放ゲインを算出し設定することが考えられる。
【0058】
Duty算出部123は、ゲイン設定部122により設定された係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、ゲイン設定部122により設定された解放ゲインに基づき解放Dutyを算出する。
【0059】
Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。具体的には、係合モードのとき、つまり、目標回転角速度すなわち目標回転数が0より大きいとき、係合Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。解放モードのとき、つまり、目標回転角速度が0より小さいとき、解放Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。定常モードのときは、前回使用したDuty(係合Dutyまたは解放Duty)を出力Dutyとして通電制御部125に出力する。
【0060】
制御装置100によるアクチュエータ2の制御に関する一連の処理を図4に示す。
【0061】
図4に示す一連の処理S100は、例えば車両のイグニッションキーをオンにすると、開始される。
【0062】
S101では、制御装置100は、係合ゲインと解放ゲインを用いて、係合Dutyと解放Dutyとをそれぞれ算出する。S101の後、処理はS102へ移行する。
【0063】
S102では、制御装置100は、目標回転角が更新されたか否かを判断する。具体的には、制御装置100は、目標回転角の今回値θrefnと前回値θrefn-1との差が0でない(≠0)か否かを判断する。目標回転角が更新されたと判断した場合(S102:YES)、処理はS103へ移行する。一方、目標回転角は更新されていないと判断した場合(S102:NO)、処理はS121へ移行する。
【0064】
S103では、制御装置100は、目標回転角が増大側に変化しているか否かを判断する。具体的には、制御装置100は、目標回転角の今回値θrefnが前回値θrefn-1より大きいか否かを判断する。目標回転角が増大側に変化していると判断した場合(S103:YES)、処理はS104へ移行する。一方、目標回転角は増大側に変化していないと判断した場合(S103:NO)、処理はS111へ移行する。
【0065】
S104では、制御装置100は、クラッチ70を係合状態にするため、すなわち、係合させるための指令である係合指令を出力する。S104の後、処理はS105へ移行する。
【0066】
S105では、制御装置100は、係合Dutyを用いてアクチュエータ2を制御する。S105の後、処理は一連の処理S100を抜ける。
【0067】
S111では、制御装置100は、クラッチ70を非係合状態にするため、すなわち、解放させるための指令である解放指令を出力する。S111の後、処理はS112へ移行する。
【0068】
S112では、制御装置100は、解放Dutyを用いてアクチュエータ2を制御する。S112の後、処理は一連の処理S100を抜ける。
【0069】
S121では、制御装置100は、前回のS100における指令時(S104またはS111)に用いたDuty(S105の係合DutyまたはS112の解放Duty)を用いてアクチュエータ2を制御する。S121の後、処理は一連の処理S100を抜ける。
【0070】
S105、S112、S121の後、一連の処理S100を抜けると、再び一連の処理S100が開始される。このように、一連の処理S100は、イグニッションキーがオンの間、繰り返し実行される。
【0071】
制御装置100の作動例を図5に示す。
【0072】
時刻t0以降、制御装置100のDuty算出部123は、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出する。
【0073】
時刻t1で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t2でトルク伝達装置1の作動モードが判定される。この例では、時刻t2の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が増大しているため、モード判定部112は、「係合モード」であると判定する。
【0074】
なお、時刻t2、t4、t6、t8、t10、t12、t14、t16は、フィードバック制御部121の演算周期に対応する時刻である。
【0075】
時刻t2で「係合モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t2以降、係合Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0076】
時刻t3で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t4の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が減少しているため、モード判定部112は、「解放モード」であると判定する。
【0077】
時刻t4で「解放モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t4以降、解放Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0078】
時刻t5で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t6の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が増大しているため、モード判定部112は、「係合モード」であると判定する。
【0079】
時刻t6で「係合モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t6以降、係合Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0080】
時刻t7で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t8の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が減少しているため、モード判定部112は、「解放モード」であると判定する。
【0081】
時刻t8で「解放モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t8以降、解放Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0082】
時刻t9で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t10の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が増大しているため、モード判定部112は、「係合モード」であると判定する。
【0083】
時刻t10で「係合モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t10以降、係合Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0084】
時刻t11で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t12の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が減少しているため、モード判定部112は、「解放モード」であると判定する。
【0085】
時刻t12で「解放モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t12以降、解放Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0086】
時刻t13で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t14の時点で、時間経過によっても目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重は変化していないため、モード判定部112は、「定常モード」であると判定する。
【0087】
時刻t14で「定常モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t12以降、前回(時刻t12~t14)出力したDutyである解放Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0088】
時刻t15で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t16の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が増大しているため、モード判定部112は、「係合モード」であると判定する。
【0089】
時刻t16で「係合モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t16以降、係合Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0090】
比較形態の制御装置の作動例を図6に示す。
【0091】
係合時および解放時に関係なく、係合ゲインのみを用い、係合Dutyのみを出力してアクチュエータ2をフィードバック制御する比較形態の作動例におけるクラッチ伝達荷重を一点鎖線で示す。この例の場合、係合時すなわち係合モード時は、オーバーシュートもなく、高応答である。しかしながら、解放時すなわち解放モード時は、アンダーシュートが大きく、収束が遅くなっている。
【0092】
係合時および解放時に関係なく、解放ゲインのみを用い、解放Dutyのみを出力してアクチュエータ2をフィードバック制御する比較形態の作動例におけるクラッチ伝達荷重を二点鎖線で示す。この例の場合、係合時は、オーバーシュートはないものの、目標荷重への到達が遅くなっている。一方、解放時は、アンダーシュートもなく、収束も速くなっている。
【0093】
本実施形態の制御装置100の作動例を図7に示す。
【0094】
本実施形態では、上述のように、係合時には、係合ゲインを用い、係合Dutyを出力してアクチュエータ2をフィードバック制御し、解放時には、解放ゲインを用い、解放Dutyを出力してアクチュエータ2をフィードバック制御する。
【0095】
そのため、図7に示すように、係合時は、オーバーシュートもなく、高応答である。また、解放時は、アンダーシュートもなく、収束も速くなっている。このように、本実施形態では、上述の比較形態の問題点を解決可能である。
【0096】
以上説明したように、<1>本実施形態では、Duty算出部123は、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出することが可能である。Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力することが可能である。通電制御部125は、Duty出力部124から出力された出力Dutyに基づき、アクチュエータ2への通電を制御する。
【0097】
本実施形態では、係合モードすなわち係合時には、係合ゲインに基づきアクチュエータ2をフィードバック制御し、解放モードすなわち解放時には、係合ゲインより小さい解放ゲインに基づきアクチュエータ2をフィードバック制御することができる。そのため、係合時の応答性を向上させつつ、解放時のアンダーシュートや発振を抑制できる。したがって、トルク伝達装置1の作動モードに応じて適切に伝達性能を引き出すことができる。
【0098】
ところで、特許文献1(特開2017-166522号公報)の制御装置では、電動モータの電流検出に不具合が生じた場合、トルク伝達装置の応答性と制御性との両立を図れなくなるおそれがある。
【0099】
一方、本実施形態では、電動モータ20の電流検出にかかわらず、上述のように、トルク伝達装置1の作動モードに応じてアクチュエータ2を適切に制御し、トルク伝達装置1において適切に伝達性能を引き出すことができる。
【0100】
また、Duty算出部123は、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出することが可能である。そのため、Duty出力部124により、係合Dutyまたは解放Dutyを円滑に切り替えて出力Dutyとして出力することができる。
【0101】
また、本実施形態では、Duty出力は、フィードバック制御の周期のタイミングで更新される。つまり、<2>本実施形態では、Duty出力部124は、フィードバック制御部121の演算周期と同じ周期で出力Dutyを出力する。そのため、Dutyの切り替えタイミングを速くでき、応答性を向上させることができる。
【0102】
また、<7>本実施形態では、ゲイン設定部122は、目標伝達トルクまたはクラッチ70の温度に基づき、係合ゲインおよび解放ゲインを設定可能である。そのため、負荷や温度に応じて応答性や安定性等、最適な伝達性能を引き出すことができる。
【0103】
また、<8>本実施形態では、アクチュエータ2は、トルクを出力する電動モータ20、および、電動モータ20のトルクにより軸方向に移動しクラッチ70を押圧しクラッチ70の状態を伝達状態または非伝達状態に切り替えることが可能な押圧部81を有している。
【0104】
フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、電動モータ20の回転角と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0105】
また、<10>本実施形態では、トルク伝達部は、アクチュエータ2から出力された押圧力により係合状態または非係合状態に切り替わるクラッチ70である。
【0106】
また、<11>本実施形態では、クラッチ70は、「他部材」としての固定フランジ3等に対し一方および他方が相対回転する入力軸61と出力軸62との間を断接し動力を伝達させるタイプである。ここで、クラッチ70は、摩擦板(内側摩擦板71、外側摩擦板72)の摩擦により係合可能な摩擦タイプである。
【0107】
また、<12>本実施形態では、クラッチ70は、ATF等の潤滑油により潤滑等され得る湿式クラッチである。
【0108】
また、<13>本実施形態では、クラッチ70は、複数の摩擦板(内側摩擦板71、外側摩擦板72)を有する多板クラッチである。
【0109】
(第2実施形態)
第2実施形態による制御装置について、図8に基づき説明する。第2実施形態では、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方が第1実施形態と異なる。
【0110】
制御装置100の作動例を図8の中段に示す。
【0111】
時刻t0以降、制御装置100のDuty算出部123は、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出する。
【0112】
時刻t1で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t2でトルク伝達装置1の作動モードが判定される。この例では、時刻t2の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が減少しているため、モード判定部112は、「解放モード」であると判定する。
【0113】
なお、時刻t2、t3、t4、t6、t7、t8は、フィードバック制御部121の演算周期より短い周期に対応する時刻である。また、時刻t5、t9は、フィードバック制御部121の演算周期に対応する時刻である。
【0114】
時刻t2で「解放モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t2以降、解放Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0115】
図8の上段に示すように、本実施形態では、実荷重を目標クラッチ伝達荷重に速やかに追従させることができる。
【0116】
フィードバック制御部121の演算周期でDutyを算出および出力した場合の作動例を図8の下段に示す。
【0117】
時刻t1で目標クラッチ伝達荷重が変更されると、時刻t5でトルク伝達装置1の作動モードが判定される。この例では、時刻t5の時点で、時間経過により目標伝達トルクすなわち目標クラッチ伝達荷重が減少しているため、モード判定部112は、「解放モード」であると判定する。
【0118】
時刻t5で「解放モード」であると判定されたため、Duty出力部124は、時刻t5以降、解放Dutyを出力Dutyとして出力する。
【0119】
図8の上段に示すように、フィードバック制御部121の演算周期でDutyを算出および出力した場合、本実施形態と比べ、実荷重が目標クラッチ伝達荷重に追従するのが遅れる。
【0120】
以上説明したように、本実施形態では、作動モード変更時のDutyの切り替えタイミングは、フィードバック制御の周期よりも速いタイミングである。つまり、<3>本実施形態では、モード判定部112によりモードが判定された後の所定期間、Duty出力部124は、フィードバック制御部121の演算周期より短い周期で出力Dutyを出力する。そのため、目標更新時すなわち作動モード更新時の無駄時間を短縮でき、応答性を向上させることができる。なお、「フィードバック制御部121の演算周期より短い周期」としては、例えば、割り込み処理やAD検出周期等が対応する。
【0121】
(第3実施形態)
第3実施形態による制御装置について、図9に基づき説明する。第3実施形態では、制御装置100の構成、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0122】
本実施形態では、制御装置100は、ストロークセンサ7を備えている。ストロークセンサ7は、例えば、押圧部81の近傍に設けられている。ストロークセンサ7は、ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置を検出し、相対位置に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、ストロークセンサ7からの信号に基づき、ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置および移動量等を検出することができる。
【0123】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出され、目標ストロークとストロークセンサ7により検出した押圧部81の軸方向の移動量すなわちストロークとの偏差であるストローク偏差がフィードバック制御部121に入力される。また、目標ストロークに基づき、目標ストローク速度が算出され、フィードバック制御部121に入力される。
【0124】
Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。具体的には、係合モードのとき、つまり、目標ストローク速度が0より大きいとき、係合Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。解放モードのとき、つまり、目標ストローク速度が0より小さいとき、解放Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。定常モードのときは、前回使用したDuty(係合Dutyまたは解放Duty)を出力Dutyとして通電制御部125に出力する。
【0125】
以上説明したように、<8>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、押圧部81の軸方向の移動量と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0126】
(第4実施形態)
第4実施形態による制御装置について、図10に基づき説明する。第4実施形態では、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0127】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出される。また、目標ストロークに基づき、電動モータ20の目標回転角が算出される。また、目標回転角に基づき、目標回転数が算出され、目標回転数と回転角センサ5により検出した電動モータ20の回転数との偏差である回転数偏差がフィードバック制御部121に入力される。また、目標回転数に基づき、目標回転角加速度が算出され、フィードバック制御部121に入力される。
【0128】
Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。具体的には、係合モードのとき、つまり、目標回転角加速度が0より大きいとき、係合Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。解放モードのとき、つまり、目標回転角加速度が0より小さいとき、解放Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。定常モードのときは、前回使用したDuty(係合Dutyまたは解放Duty)を出力Dutyとして通電制御部125に出力する。
【0129】
以上説明したように、<8>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、電動モータ20の回転数と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0130】
(第5実施形態)
第5実施形態による制御装置について、図11に基づき説明する。第5実施形態では、制御装置100の構成、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0131】
本実施形態では、制御装置100は、荷重センサ8を備えている。荷重センサ8は、例えば、出力軸62の板部622と摩擦板624との間に設けられている。荷重センサ8は、押圧部81からクラッチ70に作用する軸方向の荷重を検出し、荷重に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、荷重センサ8からの信号に基づき、押圧部81からクラッチ70に作用する荷重を検出することができる。
【0132】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出され、目標クラッチ伝達荷重と荷重センサ8により検出した押圧部81からクラッチ70に作用する荷重との偏差である荷重偏差がフィードバック制御部121に入力される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、目標荷重速度が算出され、フィードバック制御部121に入力される。
【0133】
Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。具体的には、係合モードのとき、つまり、目標荷重速度が0より大きいとき、係合Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。解放モードのとき、つまり、目標荷重速度が0より小さいとき、解放Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。定常モードのときは、前回使用したDuty(係合Dutyまたは解放Duty)を出力Dutyとして通電制御部125に出力する。
【0134】
以上説明したように、<8>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、押圧部81からクラッチ70に作用する荷重と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0135】
(第6実施形態)
第6実施形態による制御装置について、図12、13に基づき説明する。第6実施形態では、制御装置100の構成、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0136】
本実施形態では、制御装置100は、電流センサ9を備えている。電流センサ9は、電動モータ20に流れる電流を検出し、電流に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、電流センサ9からの信号に基づき、電動モータ20に流れる電流を検出することができる。
【0137】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出される。また、目標ストロークに基づき、電動モータ20に流すべき電流である目標電流が算出され、目標電流と電流センサ9により検出した電動モータ20に流れる電流との偏差である電流偏差がフィードバック制御部121に入力される。また、目標電流に基づき、目標電流速度が算出され、フィードバック制御部121に入力される。
【0138】
Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。具体的には、係合モードのとき、つまり、目標電流速度が0より大きいとき、係合Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。解放モードのとき、つまり、目標電流速度が0より小さいとき、解放Dutyを使用し、出力Dutyとして通電制御部125に出力する。定常モードのときは、前回使用したDuty(係合Dutyまたは解放Duty)を出力Dutyとして通電制御部125に出力する。
【0139】
図13に示すように、制御装置100は、電子制御器150、ドライバ160を備えている。電子制御器150は、目標算出部111、モード判定部112、制御部113を有している。制御部113は、上述のように、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、通電制御部125を含む。
【0140】
本実施形態では、フィードバック制御部121は、ソフトウェアにより構成される回路、すなわち、ソフトフィードバック回路であり、目標伝達トルクと電動モータ20に流れる電流とに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。
【0141】
ドライバ160は、スイッチング素子171、172、電流センサ9を有している。スイッチング素子171は、電子制御器150とアクチュエータ2と車両のバッテリの正極とに接続されている。スイッチング素子172は、電子制御器150とアクチュエータ2と電流センサ9とに接続されている。電流センサ9は、スイッチング素子172と車両のグランドとに接続されている。
【0142】
通電制御部125は、スイッチング素子171、172の作動を制御することで、アクチュエータ2の電動モータ20への通電を制御可能である。
【0143】
電動モータ20に電流が流れるとき、電流センサ9の一端と他端との間には、電位差が生じる。これにより、制御部113のフィードバック制御部121は、電動モータ20に流れる電流を検出することができる。
【0144】
本実施形態では、電子制御器150の目標算出部111により目標伝達トルクを算出し、電子制御器150の制御部113のDuty算出部123、Duty出力部124により出力Dutyを算出および出力する。
【0145】
以上説明したように、<8>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、電動モータ20に流れる電流と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0146】
(第7実施形態)
第7実施形態による制御装置について、図14に基づき説明する。第7実施形態では、制御装置100の構成等が第6実施形態と異なる。
【0147】
本実施形態では、電子制御器150は、第6実施形態と異なり、制御部113を有していない。ドライバ160は、制御部113をさらに有している。つまり、制御部113は、スイッチング素子171、172、電流センサ9と一体にドライバ160に設けられている。ここで、制御部113は、例えば、IC等のハードウェアにより構成される回路である。制御部113は、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、通電制御部125を含む。
【0148】
本実施形態では、フィードバック制御部121は、ハードウェアにより構成される回路、すなわち、ハードフィードバック回路であり、目標伝達トルクと電動モータ20に流れる電流とに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。
【0149】
制御部113は、電子制御器150とスイッチング素子171、172と電流センサ9とに接続している。
【0150】
制御部113の通電制御部125は、スイッチング素子171、172の作動を制御することで、アクチュエータ2の電動モータ20への通電を制御可能である。
【0151】
制御部113のフィードバック制御部121は、電動モータ20に流れる電流を検出することができる。
【0152】
本実施形態では、電子制御器150の目標算出部111により目標伝達トルクを算出し、制御部113のDuty算出部123、Duty出力部124により出力Dutyを算出および出力する。
【0153】
以上説明したように、<9>本実施形態では、フィードバック制御部121は、ハードウェアにより構成される回路であり、目標伝達トルクと電動モータ20に流れる電流とに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御部113を構成するにあたり安価なドライバICを選択でき、コストを低減できる。
【0154】
(第8実施形態)
第8実施形態による制御装置について、図15に基づき説明する。第8実施形態では、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0155】
ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置、すなわち、押圧部81のストロークと、クラッチ70の実伝達荷重すなわちクラッチ荷重と、の関係を図15に示す。
【0156】
本実施形態では、Duty出力部124は、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0より大きいときに限り、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。
【0157】
図15に示すように、具体的には、押圧部81がクラッチ70に近付き押圧部81とクラッチ70との間の隙間が小さくなる期間であるガタ詰め期間、すなわち、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0以下のとき、Duty出力部124は、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えずに係合Dutyまたは解放Dutyの一方を出力Dutyとして出力する。
【0158】
また、押圧部81がクラッチ70に接触するタッチングポイント以降、押圧部81がクラッチ70を押圧しクラッチ荷重が0より大きくなる推力制御期間、すなわち、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0より大きいとき、Duty出力部124は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。
【0159】
以上説明したように、<4>本実施形態では、Duty出力部124は、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0より大きいときに限り、係合Dutyまたは解放Dutyを切り替えて出力Dutyとして出力する。ガタ詰め期間ではクラッチ70の負荷の影響がないため、上記切り替えの処理を行わず、処理負荷を抑制できる。
【0160】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、Duty出力部124は、モード判定部112により定常モードであると判定されたとき、前回使用したDuty(係合Dutyまたは解放Duty)を出力Dutyとして出力する例を示した(図3~5参照)。これに対し、<5>他の実施形態では、Duty出力部124は、モード判定部112により定常モードであると判定されたとき、係合Dutyまたは解放Dutyの一方に固定して出力Dutyとして出力する。そのため、フェイル時の判定を容易にすることができる。
【0161】
また、上述の実施形態では、Duty算出部123が、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出しつつ、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出する例を示した(図4、5参照)。これに対し、<6>他の実施形態では、Duty算出部123は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、係合ゲインに基づき係合Dutyを算出、または、解放ゲインに基づき解放Dutyを算出し、Duty出力部124は、Duty算出部123により算出された係合Dutyまたは解放Dutyを出力Dutyとして出力することとしてもよい。このように、Duty算出部123で係合Dutyと解放Dutyとを切り替えて算出することによっても、Duty出力部124から係合Dutyと解放Dutyとを切り替えて出力Dutyとして出力することができる。
【0162】
また、他の実施形態では、第2伝達部からトルクを入力し、クラッチを経由して第1伝達部から出力することとしてもよい。また、例えば、第1伝達部または第2伝達部の一方を回転不能に固定した場合、クラッチを係合状態にすることにより、第1伝達部または第2伝達部の他方の回転を止めることができる。<11>この場合、クラッチは、他部材に対し一方が固定され他方が相対回転する第1伝達部と第2伝達部との間を断接し、伝達される動力を弱めたり止めたりするタイプである。ここで、クラッチは、ブレーキとして機能することができる。
【0163】
また、<12>他の実施形態では、クラッチは、乾式クラッチであってもよい。
【0164】
また、<13>他の実施形態では、クラッチは、単板クラッチであってもよい。
【0165】
また、他の実施形態では、トルク伝達部は、アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるのであれば、クラッチに限らず、どのような構成のものであってもよい。
【0166】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【0167】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0168】
1 伝達装置、2 アクチュエータ、61 入力軸(第1伝達部)、62 出力軸(第2伝達部)、70 クラッチ(トルク伝達部)、100 制御装置、111 目標算出部、112 モード判定部、113 制御部、121 フィードバック制御部、122 ゲイン設定部、123 Duty算出部、124 Duty出力部、125 通電制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15