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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/06 20060101AFI20231212BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16D28/00 A
F16D48/06 102
F16D13/52 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020154959
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048902
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅史
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1657(JP,A)
【文献】特開2011-255808(JP,A)
【文献】特開2004-278769(JP,A)
【文献】特開2001-241545(JP,A)
【文献】特開2000-35120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0135317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 48/06
F16D 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により作動するアクチュエータ(2)と、前記アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるトルク伝達部(70)とを備え、前記トルク伝達部が伝達状態のとき第1伝達部(61)と第2伝達部(62)との間でトルクを伝達するトルク伝達装置(1)を制御する制御装置(100)であって、
前記第1伝達部と前記第2伝達部との間で伝達すべきトルクである目標伝達トルクを算出する目標算出部(111)と、
時間経過により前記目標伝達トルクが増大した場合、係合モードであると判定し、時間経過により前記目標伝達トルクが減少した場合、解放モードであると判定し、時間経過によっても前記目標伝達トルクが変化しない場合、定常モードであると判定するモード判定部(112)と、
前記モード判定部により判定されたモードに基づき、前記アクチュエータを制御する制御部(113)と、を備え、
前記制御部は、
前記目標伝達トルクに基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御部(121)、
前記フィードバック制御部によるフィードバック制御に用いるゲインを設定するゲイン設定部(122)、
前記ゲインに基づきDutyを算出することが可能なDuty算出部(123)、
前記Duty算出部により算出した前記Dutyを出力Dutyとして出力するDuty出力部(124)、
前記Duty出力部から出力された前記出力Dutyに基づき、前記アクチュエータへの通電を制御する通電制御部(125)、
前記モード判定部により定常モードであると判定された場合、所定の停止条件が成立したとき、前記フィードバック制御部による前記アクチュエータのフィードバック制御を停止する制御停止モードへ移行することが可能なフィードバック制御調整部(126)、
を含み、
前記フィードバック制御調整部は、前記制御停止モードへ移行するとき、前記フィードバック制御部による前記アクチュエータのフィードバック制御を停止する直前のフィードバック制御における積分演算値を記憶し、その後、所定の再開条件が成立したとき、記憶していた前記積分演算値を用いて前記フィードバック制御部による前記アクチュエータのフィードバック制御を再開可能である制御装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御調整部は、前記モード判定部により定常モードであると判定された場合、前記アクチュエータの実際の制御量である実制御量と目標値との偏差が閾値以内となったとき、時間カウントを開始する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御調整部は、前記時間カウントにより所定時間経過したと判断したとき、前記制御停止モードへ移行する請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記フィードバック制御調整部は、前記制御停止モードにおいて、前記モード判定部により定常モードから係合モードまたは解放モードに移行したと判定された場合、前記フィードバック制御部による前記アクチュエータのフィードバック制御を再開する請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記フィードバック制御調整部は、前記制御停止モードにおいて、前記アクチュエータの実際の制御量である実制御量と目標値との偏差が閾値を超えた場合、前記フィードバック制御部による前記アクチュエータのフィードバック制御を再開し、その後、前記偏差が前記閾値以内にある状態が所定時間経過した場合、前記制御停止モードへ移行する請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記Duty出力部は、前記フィードバック制御部の演算周期と同じ周期で前記出力Dutyを出力する請求項1~5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記Duty出力部は、前記フィードバック制御部の演算周期より短い周期で前記出力Dutyを出力する請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記フィードバック制御調整部は、前記目標伝達トルクまたは前記トルク伝達部の温度に基づき、前記閾値を変更可能である請求項3または5に記載の制御装置。
【請求項9】
前記フィードバック制御調整部は、前記目標伝達トルクの変化幅または前記トルク伝達部の温度に基づき、前記所定時間を変更可能である請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記通電制御部は、前記制御停止モードにおいて、前記アクチュエータへの通電を停止するのではなく、前記アクチュエータへの通電量を低下させ所定の通電量を維持する請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、トルクを出力する電動モータ(20)、および、前記電動モータのトルクにより軸方向に移動し前記トルク伝達部を押圧し前記トルク伝達部の状態を伝達状態または非伝達状態に切り替えることが可能な押圧部(81)を有し、
前記フィードバック制御部は、前記目標伝達トルクと、前記電動モータの回転角、前記押圧部の移動量、前記電動モータの回転数、前記押圧部から前記トルク伝達部に作用する荷重、または、前記電動モータに流れる電流と、に基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する請求項1~10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記フィードバック制御部は、ハードウェアにより構成される回路であり、前記目標伝達トルクと前記電動モータに流れる電流とに基づき、前記アクチュエータをフィードバック制御する請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記トルク伝達部は、前記アクチュエータから出力された押圧力により係合状態または非係合状態に切り替わるクラッチ(70)である請求項1~12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記クラッチは、他部材に対し一方および他方が相対回転する前記第1伝達部と前記第2伝達部との間を断接し動力を伝達させるタイプ、または、他部材に対し一方が固定され他方が相対回転する前記第1伝達部と前記第2伝達部との間を断接し伝達される動力を弱めたり止めたりするタイプである請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記クラッチは、乾式クラッチまたは湿式クラッチである請求項13または14に記載の制御装置。
【請求項16】
前記クラッチは、単板クラッチまたは多板クラッチである請求項13~15のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通電により作動するアクチュエータと、アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるトルク伝達部とを備え、トルク伝達部が伝達状態のとき第1伝達部と第2伝達部との間でトルクを伝達するトルク伝達装置が知られている。また、当該トルク伝達装置を制御する制御装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1のトルク伝達装置の制御装置では、通電により作動するアクチュエータのピストンストローク量が指示値に到達した際にアクチュエータの駆動とPID制御とを停止し、かつ、PID制御における積分項を初期化する。その後、ピストンストローク量が所定の閾値を超えるか、PID制御の停止時から所定時間が経過した場合に、PID制御を再開する。これにより、オーバーシュートやアンダーシュートの迅速な収束を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-23668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の制御装置では、PID制御の停止時に積分項を初期化すると、制御再開直後の出力Dutyと、収束後の停止直前の出力Dutyとに差分が発生し、制御再開直後の荷重すなわちストローク挙動にバラつきが生じるおそれがある。
【0006】
例えば、特許文献1の制御装置では、積分項のDutyが+10%で目標へ収束した場合、制御再開直後のDutyは、本来のつり合い点より10%低く出力される。また、積分項のDutyが-10%で目標へ収束した場合、制御再開直後のDutyは、本来のつり合い点より10%高く出力され、制御再開直後の荷重応答が悪化するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、トルク伝達装置のフィードバック制御再開直後の挙動が安定する制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、通電により作動するアクチュエータ(2)と、アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるトルク伝達部(70)とを備え、トルク伝達部が伝達状態のとき第1伝達部(61)と第2伝達部(62)との間でトルクを伝達するトルク伝達装置(1)を制御する制御装置(100)であって、目標算出部(111)とモード判定部(112)と制御部(113)とを備える。
【0009】
目標算出部は、第1伝達部と第2伝達部との間で伝達すべきトルクである目標伝達トルクを算出する。モード判定部は、時間経過により目標伝達トルクが増大した場合、係合モードであると判定し、時間経過により目標伝達トルクが減少した場合、解放モードであると判定し、時間経過によっても目標伝達トルクが変化しない場合、定常モードであると判定する。制御部は、モード判定部により判定されたモードに基づき、アクチュエータを制御する。
【0010】
制御部は、フィードバック制御部(121)、ゲイン設定部(122)、Duty算出部(123)、Duty出力部(124)、通電制御部(125)、フィードバック制御調整部(126)を含む。フィードバック制御部は、目標伝達トルクに基づき、アクチュエータをフィードバック制御する。ゲイン設定部は、フィードバック制御部によるフィードバック制御に用いるゲインを設定する。
【0011】
Duty算出部は、ゲインに基づきDutyを算出することが可能である。Duty出力部は、Duty算出部により算出したDutyを出力Dutyとして出力する。通電制御部は、Duty出力部から出力された出力Dutyに基づき、アクチュエータへの通電を制御する。フィードバック制御調整部は、モード判定部により定常モードであると判定された場合、所定の停止条件が成立したとき、フィードバック制御部によるアクチュエータのフィードバック制御を停止する制御停止モードへ移行することが可能である。
【0012】
フィードバック制御調整部は、制御停止モードへ移行するとき、フィードバック制御部によるアクチュエータのフィードバック制御を停止する直前のフィードバック制御における積分演算値を記憶し、その後、所定の再開条件が成立したとき、記憶していた前記積分演算値を用いてフィードバック制御部によるアクチュエータのフィードバック制御を再開可能である。
【0013】
そのため、トルク伝達装置のフィードバック制御停止直前の出力Dutyと、フィードバック制御再開直後の出力Dutyとの差分を小さくし、フィードバック制御再開直後の荷重挙動のバラつきを抑制できる。したがって、トルク伝達装置のフィードバック制御再開直後の挙動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示す模式図。
図2】第1実施形態によるトルク伝達装置において時間の経過に伴い変化する目標伝達トルクを示す図。
図3】第1実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図4】第1実施形態による制御装置によるアクチュエータの制御に関する処理を示すフローチャート。
図5】第1実施形態による制御装置の作動例を示す図。
図6】第1実施形態による制御装置の別の作動例を示す図。
図7】第1実施形態による制御装置の別の作動例を示す図。
図8】第2実施形態による制御装置の作動例を示す図。
図9】第3実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図10】第4実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図11】第5実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図12】第6実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示すブロック図。
図13】第6実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示す模式図。
図14】第7実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を示す模式図。
図15】第8実施形態によるトルク伝達装置および制御装置の作動を説明するための図であって、クラッチ荷重とストロークとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、複数の実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態によるトルク伝達装置および制御装置を図1に示す。トルク伝達装置1は、例えばクラッチ装置であって、車両の内燃機関と変速機との間に設けられ、内燃機関と変速機との間のトルクの伝達を許容または遮断するのに用いられる。制御装置100は、トルク伝達装置1を制御するのに用いられる。
【0017】
トルク伝達装置1は、アクチュエータ2と、「トルク伝達部」としてのクラッチ70とを備えている。アクチュエータ2は、ハウジング10と、電動モータ20と、減速機30と、回転並進部60と、押圧部81と、を備えている。
【0018】
また、トルク伝達装置1は、「第1伝達部」としての入力軸61と、「第2伝達部」としての出力軸62と、を備えている。
【0019】
制御装置100は、例えば電子制御ユニットすなわちECUであって、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM等、入出力手段としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。制御装置100は、車両の各部に設けられた各種センサからの信号等の情報に基づき、ROM等に格納されたプログラムに従い演算を実行し、車両の各種装置および機器の作動を制御する。このように、制御装置100は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行する。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
【0020】
制御装置100は、各種センサからの信号等の情報に基づき、内燃機関等の作動を制御可能である。また、制御装置100は、後述する電動モータ20の作動を制御可能である。
【0021】
入力軸61は、例えば、図示しない内燃機関の駆動軸に接続され、駆動軸とともに回転可能である。つまり、入力軸61には、駆動軸からトルクが入力される。
【0022】
内燃機関を搭載する車両には、固定フランジ3が設けられる(図1参照)。固定フランジ3は、筒状に形成され、例えば車両のエンジンルームに固定される。入力軸61は、例えばベアリング等を介して固定フランジ3により軸受けされる。
【0023】
固定フランジ3の端部の内周壁と入力軸61の外周壁との間には、ハウジング10が設けられる。ハウジング10は、ハウジング内筒部11、ハウジング板部12、ハウジング外筒部13等を有している。
【0024】
ハウジング内筒部11は、略円筒状に形成されている。ハウジング板部12は、ハウジング内筒部11の端部から径方向外側へ延びるよう環状の板状に形成されている。ハウジング外筒部13は、ハウジング板部12の外縁部からハウジング内筒部11と同じ側へ延びるよう略円筒状に形成されている。ここで、ハウジング内筒部11とハウジング板部12とハウジング外筒部13とは、例えば金属により一体に形成されている。
【0025】
ハウジング10は、ハウジング板部12およびハウジング外筒部13の外壁が固定フランジ3の壁面に当接するよう固定フランジ3に固定される(図1参照)。ハウジング10は、図示しないボルト等により固定フランジ3に固定される。ここで、ハウジング10は、固定フランジ3および入力軸61に対し同軸に設けられる。
【0026】
電動モータ20は、例えば、ハウジング内筒部11とハウジング板部12とハウジング外筒部13との間に設けられている。電動モータ20は、図示しないステータおよびロータを有し、通電によりロータからトルクを出力可能である。
【0027】
制御装置100は、電動モータ20に供給する電力を制御することにより、電動モータ20の作動を制御可能である。
【0028】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、回転角センサ5を備えている。回転角センサ5は、例えば電動モータ20とハウジング板部12との間に設けられている。回転角センサ5は、電動モータ20の回転角を検出し、回転角に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、回転角センサ5からの信号に基づき、電動モータ20の回転角および回転数等を検出することができる。
【0029】
減速機30は、例えば、ハウジング内筒部11とハウジング外筒部13との間において、電動モータ20に対しハウジング板部12とは反対側に設けられている。減速機30には、電動モータ20のトルクが入力される。減速機30は、電動モータ20のトルクを減速して出力する。
【0030】
回転並進部60は、回転部40、並進部50を有している。回転部40は、例えば、環状に形成され、ハウジング内筒部11とハウジング外筒部13との間において、減速機30に対し電動モータ20とは反対側に設けられている。回転部40には、減速機30により減速された電動モータ20のトルクが入力される。回転部40は、減速機30からトルクが入力されると、ハウジング10に対し相対回転する。
【0031】
並進部50は、例えば、筒状に形成され、ハウジング内筒部11の径方向外側において、回転部40に対し減速機30とは反対側に設けられている。並進部50は、回転部40がハウジング10に対し相対回転すると、ハウジング10に対し軸方向に相対移動する。
【0032】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、リターンスプリング55、Cリング57を備えている。リターンスプリング55は、例えば、ハウジング内筒部11の径方向外側において、並進部50に対し回転部40とは反対側に設けられている。Cリング57は、例えば、リターンスプリング55に対し並進部50とは反対側に位置するようハウジング内筒部11の外周壁に設けられている。リターンスプリング55は、一端が並進部50に当接し、他端がCリング57に当接している。リターンスプリング55は、並進部50を回転部40側へ付勢している。
【0033】
出力軸62は、軸部621、板部622、筒部623、摩擦板624を有している(図1参照)。軸部621は、略円筒状に形成されている。板部622は、軸部621の一端から径方向外側へ環状の板状に延びるよう軸部621と一体に形成されている。筒部623は、板部622の外縁部から軸部621とは反対側へ略円筒状に延びるよう板部622と一体に形成されている。摩擦板624は、略円環の板状に形成され、板部622の筒部623側の端面に設けられている。ここで、摩擦板624は、板部622に対し相対回転不能である。
【0034】
入力軸61の端部は、ハウジング内筒部11の内側を通り、並進部50に対し回転部40とは反対側に位置している。出力軸62は、ハウジング10に対し固定フランジ3とは反対側、すなわち、並進部50に対し回転部40とは反対側において、入力軸61と同軸に設けられる。出力軸62は、例えばベアリング等を介して入力軸61により軸受けされる。入力軸61および出力軸62は、ハウジング10に対し相対回転可能である。
【0035】
クラッチ70は、筒部623の内側において入力軸61と出力軸62との間に設けられている。クラッチ70は、内側摩擦板71、外側摩擦板72、係止部701を有している。内側摩擦板71は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。内側摩擦板71は、内縁部が入力軸61の外周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、内側摩擦板71は、入力軸61に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。
【0036】
外側摩擦板72は、略円環の板状に形成され、入力軸61と出力軸62の筒部623との間において、軸方向に並ぶよう複数設けられている。ここで、内側摩擦板71と外側摩擦板72とは、入力軸61の軸方向において交互に配置されている。外側摩擦板72は、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁とスプライン結合するよう設けられている。そのため、外側摩擦板72は、出力軸62に対し相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能である。複数の外側摩擦板72のうち最も摩擦板624側に位置する外側摩擦板72は、摩擦板624に接触可能である。
【0037】
係止部701は、略円環状に形成され、外縁部が出力軸62の筒部623の内周壁に嵌合するよう設けられる。係止部701は、複数の外側摩擦板72のうち最も並進部50側に位置する外側摩擦板72の外縁部を係止可能である。そのため、複数の外側摩擦板72、複数の内側摩擦板71は、筒部623の内側からの脱落が抑制される。なお、係止部701と摩擦板624との距離は、複数の外側摩擦板72および複数の内側摩擦板71の板厚の合計よりも大きい。
【0038】
複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに接触、つまり係合した状態である係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力が生じ、当該摩擦力の大きさに応じて内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転が規制される。一方、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに離間、つまり係合していない状態である非係合状態では、内側摩擦板71と外側摩擦板72との間に摩擦力は生じず、内側摩擦板71と外側摩擦板72との相対回転は規制されない。ここで、「係合状態」は「伝達状態」に対応し、「非係合状態」は「非伝達状態」に対応する。
【0039】
クラッチ70が係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、クラッチ70を経由して出力軸62に伝達される。一方、クラッチ70が非係合状態のとき、入力軸61に入力されたトルクは、出力軸62に伝達されない。
【0040】
このように、「トルク伝達部」としてのクラッチ70は、入力軸61と出力軸62との間でトルクを伝達する。クラッチ70は、係合している係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を許容し、係合していない非係合状態のとき、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達を遮断する。
【0041】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、通常、すなわち、電動モータ20への非通電時、非係合状態となる、所謂常開式(ノーマリーオープンタイプ)のトルク伝達装置である。
【0042】
押圧部81は、2つの皿ばねを有している。2つの皿ばねは、軸方向に重なった状態で、並進部50のクラッチ70側の端部の外周壁に形成された段差部501に内縁部が位置するよう設けられている。押圧部81は、軸方向に弾性変形可能である。
【0043】
電動モータ20への非通電時、回転部40と並進部50との距離は、比較的小さく、押圧部81の外縁部とクラッチ70との間には、隙間が形成されている(図1参照)。そのため、クラッチ70は非係合状態であり、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達は遮断されている。
【0044】
ここで、制御装置100の制御により電動モータ20に電力が供給されると、電動モータ20が回転し、減速機30からトルクが出力され、回転部40がハウジング10に対し相対回転する。これにより、並進部50は、リターンスプリング55を圧縮しながらハウジング10に対し軸方向に相対移動、すなわち、クラッチ70側へ移動する。これにより、押圧部81は、クラッチ70側へ移動する。
【0045】
並進部50の軸方向の移動により押圧部81がクラッチ70側へ移動すると、押圧部81とクラッチ70との間の隙間が小さくなり、押圧部81の外縁部は、クラッチ70の外側摩擦板72に接触する。押圧部81がクラッチ70に接触した後さらに並進部50が軸方向に移動すると、押圧部81は、軸方向に弾性変形しつつ、外側摩擦板72を摩擦板624側へ押す。これにより、複数の内側摩擦板71および複数の外側摩擦板72が互いに係合し、クラッチ70が係合状態となる。そのため、入力軸61と出力軸62との間のトルクの伝達が許容される。
【0046】
制御装置100は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に達すると、電動モータ20の回転を停止させる。これにより、クラッチ70は、クラッチ伝達トルクがクラッチ要求トルク容量に維持された係合保持状態となる。このように、押圧部81は、電動モータ20のトルクにより軸方向に移動しクラッチ70を押圧し、クラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に切り替えることが可能である。
【0047】
出力軸62は、軸部621の板部622とは反対側の端部が、図示しない変速機の入力軸に接続され、当該入力軸とともに回転可能である。つまり、変速機の入力軸には、出力軸62から出力されたトルクが入力される。変速機に入力されたトルクは、変速機で変速され、駆動トルクとして車両の駆動輪に出力される。これにより、車両が走行する。
【0048】
本実施形態では、トルク伝達装置1は、温度センサ6を備えている。温度センサ6は、例えば出力軸62の筒部623に設けられている。温度センサ6は、クラッチ70およびクラッチ70の潤滑油の温度を検出し、温度に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、温度センサ6からの信号に基づき、クラッチ70および潤滑油の温度を検出することができる。
【0049】
図1に示すように、本実施形態は、通電により作動するアクチュエータ2と、アクチュエータ2の作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わる「トルク伝達部」としてのクラッチ70とを備え、クラッチ70が伝達状態のとき入力軸61と出力軸62との間でトルクを伝達するトルク伝達装置1を制御する制御装置100である。制御装置100は、概念的な機能部として、目標算出部111とモード判定部112と制御部113とを備える。
【0050】
目標算出部111は、入力軸61と出力軸62との間で伝達すべきトルクである目標伝達トルクを算出する。モード判定部112は、時間経過により目標伝達トルクが増大した場合、係合モードであると判定し、時間経過により目標伝達トルクが減少した場合、解放モードであると判定し、時間経過によっても目標伝達トルクが変化しない場合、定常モードであると判定する(図2参照)。制御部113は、モード判定部112により判定されたモードに基づき、アクチュエータ2を制御する。
【0051】
ここで、「係合モード」とは、アクチュエータ2によって押圧部81をクラッチ70側へ移動させ、クラッチ70を係合状態にする、すなわち、係合させるときのモードである。また、「解放モード」とは、アクチュエータ2によって押圧部81をクラッチ70とは反対側へ移動させ、クラッチ70を非係合状態にする、すなわち、解放させるときのモードである。また、「定常モード」とは、押圧部81を所定の位置に保持し、クラッチ70の状態を係合状態または非係合状態に保持するときのモードである。
【0052】
制御部113は、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、通電制御部125、フィードバック制御調整部126を含む。フィードバック制御部121は、目標伝達トルクに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。ゲイン設定部122は、フィードバック制御部121によるフィードバック制御に用いるゲインを設定する。
【0053】
Duty算出部123は、ゲインに基づきDutyを算出することが可能である。Duty出力部124は、Duty算出部123により算出したDutyを出力Dutyとして出力する。通電制御部125は、Duty出力部124から出力された出力Dutyに基づき、アクチュエータ2への通電を制御する。本明細書において、「Duty」とは、信号のパルス幅をパルス期間(周期)で割ったものである「デューティ比」を意味する。
【0054】
図3に示すように、PIDコントローラは、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、フィードバック制御調整部126を含む。本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルク、および、回転角センサ5により検出した電動モータ20の回転角に基づき、アクチュエータ2の電動モータ20をPID制御する。本実施形態では、ソフトウェアによりフィードバック回路が構成されている。
【0055】
具体的には、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出される。また、目標ストロークに基づき、電動モータ20の目標回転角が算出され、目標回転角と回転角センサ5により検出した電動モータ20の回転角との偏差である回転角偏差がフィードバック制御部121に入力される。
【0056】
Duty算出部123は、ゲイン設定部122により設定されたゲインに基づきDutyを算出する。
【0057】
Duty出力部124は、Duty算出部123により算出したDutyを出力Dutyとして通電制御部125に出力する。
【0058】
フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、所定の停止条件が成立したとき、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を停止する制御停止モードへ移行することが可能である。ここで、所定の停止条件とは、「アクチュエータ2の実際の制御量である実制御量と目標値との偏差が閾値以内となったとき、時間カウントを開始し、当該時間カウントにより所定時間経過したと判断したとき」である。
【0059】
フィードバック制御調整部126は、制御停止モードへ移行するとき、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を停止する直前のフィードバック制御における積分演算値を記憶し、その後、所定の再開条件が成立したとき、記憶していた前記積分演算値を用いてフィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を再開可能である。ここで、所定の再開条件とは、「制御停止モードにおいて、モード判定部112により定常モードから係合モードまたは解放モードに移行したと判定された場合」である。
【0060】
制御装置100によるアクチュエータ2の制御に関する一連の処理を図4に示す。
【0061】
図4に示す一連の処理S100は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、開始される。
【0062】
S101では、フィードバック制御調整部126は、「目標回転角が同一値、かつ、回転角偏差が閾値A1以内」か否かを判断する。具体的には、フィードバック制御調整部126は、目標回転角が前回の処理時と同一値、かつ、回転角偏差すなわち電動モータ20の回転角θrefnと目標回転角θrefn-1との差の絶対値が閾値A1以内か否かを判断する。「目標回転角が同一値、かつ、回転角偏差が閾値A1以内」であると判断した場合(S101:YES)、処理はS102へ移行する。一方、「目標回転角は同一値、かつ、回転角偏差は閾値A1以内」でないと判断した場合(S101:NO)、処理はS111へ移行する。なお、上記の「目標回転角が同一値、かつ、回転角偏差が閾値A1以内」か否かは、所定の停止条件の一部である「アクチュエータ2の実制御量と目標値との偏差が閾値以内となった」か否かと同様の意味である。
【0063】
S102では、フィードバック制御調整部126は、所定時間T1(s)以上継続したか否かを判断する。所定時間T1以上継続したと判断した場合(S102:YES)、処理はS103へ移行する。一方、所定時間T1以上継続していないと判断した場合(S102:NO)、処理はS101へ戻る。
【0064】
S103では、フィードバック制御調整部126は、その時点すなわちPID制御を停止する直前の積分演算値Xを記憶する。その後、処理はS104へ移行する。
【0065】
S104では、フィードバック制御部121は、アクチュエータ2のフィードバック制御を停止する。その後、処理はS105へ移行する。
【0066】
S105では、フィードバック制御調整部126は、「目標回転角が変化、または、回転角偏差が閾値A1より大きくなった」か否かを判断する。具体的には、フィードバック制御調整部126は、目標回転角が前回の処理時から変化、または、回転角偏差すなわち電動モータ20の回転角θrefnと目標回転角θrefn-1との差の絶対値が閾値A1より大きくなったか否かを判断する。「目標回転角が変化、または、回転角偏差が閾値A1より大きく」なったと判断した場合(S105:YES)、処理はS106へ移行する。一方、「目標回転角は変化、または、回転角偏差は閾値A1より大きく」なっていないと判断した場合(S105:NO)、処理はS105へ戻る。なお、上記の「目標回転角が変化、または、回転角偏差が閾値A1より大きくなった」か否かは、所定の再開条件の一部である「モード判定部112により定常モードから係合モードまたは解放モードに移行したと判定された」か否かと同様の意味である。
【0067】
S106では、フィードバック制御部121は、PID制御を停止する直前の積分演算値、すなわち、S103でフィードバック制御調整部126が記憶した積分演算値を初期値として用い、アクチュエータ2のPID制御すなわちフィードバック制御を再開する。その後、処理は一連の処理S100を抜ける。
【0068】
S111では、フィードバック制御部121は、アクチュエータ2の通常のPID制御すなわちフィードバック制御を継続する。その後、処理は一連の処理S100を抜ける。
【0069】
一連の処理S100を抜けた後、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、一連の処理S100が再開される。
【0070】
制御装置100の作動例を図5に示す。
【0071】
時刻t1で目標クラッチ伝達荷重が増大側に変化すると、モード判定部112により係合モードであると判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2の通常のPID制御すなわちフィードバック制御が開始される。そのため、時刻t1以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する。
【0072】
時刻t1以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0073】
時刻t2で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t2から所定時間T1(s)経過した時刻t3で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止すなわち通電カットする。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。なお、本実施形態では、制御停止モードにおいてアクチュエータ2への通電を停止しても、ハウジング10に対する回転部40および並進部50の相対位置、ならびに、ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置すなわちストロークは保持される。そのため、クラッチ70の状態は保持される。
【0074】
時刻t4で目標クラッチ伝達荷重が増大側に変化すると、モード判定部112により定常モードから係合モードに移行したと判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、PID制御を停止する直前の積分演算値X、すなわち、時刻t3で記憶した積分演算値Xを初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t4以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に追従するよう変化する。
【0075】
時刻t5以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0076】
時刻t6で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t6から所定時間T1(s)経過した時刻t7で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0077】
時刻t8で目標クラッチ伝達荷重が増大側に変化すると、モード判定部112により定常モードから係合モードに移行したと判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、PID制御を停止する直前の積分演算値X、すなわち、時刻t7で記憶した積分演算値Xを初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t8以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する。
【0078】
時刻t8以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0079】
時刻t9で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t9から所定時間T1(s)経過した時刻t10で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0080】
時刻t11で目標クラッチ伝達荷重が減少側に変化すると、モード判定部112により定常モードから解放モードに移行したと判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、PID制御を停止する直前の積分演算値X、すなわち、時刻t10で記憶した積分演算値Xを初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t11以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する。
【0081】
時刻t11以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0082】
時刻t12で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t12から所定時間T1(s)経過した時刻t13で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0083】
時刻t14で目標クラッチ伝達荷重が減少側に変化すると、モード判定部112により定常モードから解放モードに移行したと判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、PID制御を停止する直前の積分演算値X、すなわち、時刻t13で記憶した積分演算値Xを初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t14以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に追従するよう変化する。
【0084】
時刻t15以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0085】
時刻t16で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t16から所定時間T1(s)経過した時刻t17で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0086】
時刻t18で目標クラッチ伝達荷重が減少側に変化すると、モード判定部112により定常モードから解放モードに移行したと判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、PID制御を停止する直前の積分演算値X、すなわち、時刻t17で記憶した積分演算値Xを初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t18以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する。
【0087】
時刻t18以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0088】
時刻t19で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t19から所定時間T1(s)経過した時刻t20で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0089】
<10>通電制御部125は、制御停止モードにおいて(時刻t3~t4、t7~t8、t10~t11、t13~t14、t17~t18)、アクチュエータ2への通電を停止するのではなく、アクチュエータ2への通電量を低下させ所定の通電量を維持することとしてもよい(図5の三点鎖線参照)。この場合、制御停止モードにおいて、ハウジング10に対する回転部40および並進部50の相対位置、ならびに、ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置すなわちストロークを確実に保持できる。そのため、クラッチ70の状態を確実に保持できる。
【0090】
制御装置100の別の作動例を図6に示す。
【0091】
時刻t1で目標クラッチ伝達荷重が増大側に変化すると、モード判定部112により係合モードであると判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が開始される。そのため、時刻t1以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する。
【0092】
時刻t1以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0093】
時刻t2で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t2から所定時間T1(s)経過した時刻t3で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値X1を記憶し、アクチュエータ2への通電を停止すなわち通電カットする。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0094】
時刻t4で外乱が印加され、時刻t5でアクチュエータ2の実制御量(実荷重)と目標値(目標クラッチ伝達荷重)との偏差が閾値A1を超えると、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、フィードバック制御を停止する直前の積分演算値X1、すなわち、時刻t3で記憶した積分演算値X1を初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t5以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に追従するよう変化する。なお、出力DutyとしてDuty出力部124から出力されるDutyは、時刻t3における積分演算値X1と時刻t5における比例演算値Yaとに基づき算出される。
【0095】
時刻t6で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t6から所定時間T1(s)経過した時刻t7で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値X2を記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0096】
時刻t8で目標クラッチ伝達荷重が減少側に変化すると、モード判定部112により定常モードから解放モードに移行したと判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が再開される。ここで、フィードバック制御部121は、フィードバック制御を停止する直前の積分演算値X2、すなわち、時刻t7で記憶した積分演算値X2を初期値として用い、アクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。時刻t8以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する。なお、出力DutyとしてDuty出力部124から出力されるDutyは、時刻t7における積分演算値X2と時刻t8における比例演算値Ybとに基づき算出される。
【0097】
時刻t8以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、上述の一連の処理S100が開始される。
【0098】
時刻t9で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t9から所定時間T1(s)経過した時刻t10で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値X3を記憶し、アクチュエータ2への通電を停止する。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0099】
なお、通常のPI(D)制御では、収束後の微小偏差により、積分項すなわち積分演算値は、単調増加または単調減少するよう変化する(時刻t3~t4、t7~t8、t10~)。
【0100】
<8>フィードバック制御調整部126は、目標伝達トルクまたはクラッチ70の温度に基づき、閾値A1を変更してもよい。
【0101】
また、<9>フィードバック制御調整部126は、目標伝達トルクの変化幅またはクラッチ70の温度に基づき、所定時間T1を変更してもよい。
【0102】
本実施形態の制御装置100の別の作動例を図7に示す。
【0103】
本実施形態では(図7の実線参照)、時刻t4において、フィードバック制御を停止する直前の時刻t3で記憶した積分演算値を用いてフィードバック制御を再開する。そのため、時刻t4以降、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に速やかに近付くよう変化する。
【0104】
一方、制御停止モードが無いシステムの場合(図7の一点鎖線参照)、時刻t3以降、積分演算値が蓄積し、時刻t4以降、積分飽和により動き出しが遅くなり、クラッチ70の実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くのが遅くなる。
【0105】
また、積分演算値をリセットするシステムの場合(図7の二点鎖線参照)、時刻t4以降、動き出しがバラつき、クラッチ70の実荷重が目標クラッチ伝達荷重に収束するのが遅くなる。
【0106】
このように、本実施形態は、フィードバック制御再開後の実荷重の挙動の安定性の点で、制御停止モードが無いシステム、および、積分演算値をリセットするシステムに対し特に有利である。
【0107】
以上説明したように、<1>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、所定の停止条件が成立したとき、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を停止する制御停止モードへ移行することが可能である。
【0108】
フィードバック制御調整部126は、制御停止モードへ移行するとき、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を停止する直前のフィードバック制御における積分演算値を記憶し、その後、所定の再開条件が成立したとき、記憶していた前記積分演算値を用いてフィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を再開可能である。
【0109】
そのため、トルク伝達装置1のフィードバック制御停止直前の出力Dutyと、フィードバック制御再開直後の出力Dutyとの差分を小さくし、フィードバック制御再開直後の荷重挙動のバラつきを抑制できる。したがって、トルク伝達装置1のフィードバック制御再開直後の挙動を安定させることができる。
【0110】
また、<2>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、アクチュエータ2の実際の制御量である実制御量と目標値との偏差が閾値以内となったとき、制御停止モードへ移行するまでの時間カウントを開始する。
【0111】
また、<3>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、前記時間カウントにより所定時間経過したと判断したとき、制御停止モードへ移行する。
【0112】
上記は、所定の停止条件について具体的な例を示すものである。
【0113】
また、<4>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、制御停止モードにおいて、すなわち、アクチュエータ2のフィードバック制御を停止しているとき、モード判定部112により定常モードから係合モードまたは解放モードに移行したと判定された場合、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を再開する。
【0114】
上記は、所定の再開条件について具体的な例を示すものである。
【0115】
また、<5>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、制御停止モードにおいて、すなわち、アクチュエータ2のフィードバック制御を停止しているとき、アクチュエータ2の実際の制御量である実制御量と目標値との偏差が閾値を超えた場合、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を再開し、その後、前記偏差が前記閾値以内にある状態が所定時間経過した場合、制御停止モードへ移行する。そのため、外乱等で制御停止モードが解除されても、所定の再開条件を満たせば、制御停止モードに再度移行できる。これにより、省電力の状態を継続できる。
【0116】
また、本実施形態では、Duty出力は、フィードバック制御の周期のタイミングで更新される。つまり、<6>本実施形態では、Duty出力部124は、フィードバック制御部121の演算周期と同じ周期で出力Dutyを出力する。そのため、制御停止モードに移行するための処理タイミングを速くでき、応答性を向上させることができる。
【0117】
また、<8>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、目標伝達トルクまたはクラッチ70の温度に基づき、前記閾値を変更可能である。
【0118】
また、<9>本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、目標伝達トルクの変化幅またはクラッチ70の温度に基づき、前記所定時間を変更可能である。
【0119】
そのため、負荷や温度に応じて応答性や安定性等、最適な伝達性能を引き出すことができる。
【0120】
また、<10>本実施形態では、通電制御部125は、制御停止モードにおいて、アクチュエータ2への通電を停止するのではなく、アクチュエータ2への通電量を低下させ所定の通電量を維持することが可能である。そのため、制御停止モードにおいて、クラッチ70の状態を確実に保持できる。
【0121】
また、<11>本実施形態では、アクチュエータ2は、トルクを出力する電動モータ20、および、電動モータ20のトルクにより軸方向に移動しクラッチ70を押圧しクラッチ70の状態を伝達状態または非伝達状態に切り替えることが可能な押圧部81を有している。
【0122】
フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、電動モータ20の回転角と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0123】
また、<13>本実施形態では、トルク伝達部は、アクチュエータ2から出力された押圧力により係合状態または非係合状態に切り替わるクラッチ70である。
【0124】
また、<14>本実施形態では、クラッチ70は、「他部材」としての固定フランジ3等に対し一方および他方が相対回転する入力軸61と出力軸62との間を断接し動力を伝達させるタイプである。ここで、クラッチ70は、摩擦板(内側摩擦板71、外側摩擦板72)の摩擦により係合可能な摩擦タイプである。
【0125】
また、<15>本実施形態では、クラッチ70は、ATF等の潤滑油により潤滑等され得る湿式クラッチである。
【0126】
また、<16>本実施形態では、クラッチ70は、複数の摩擦板(内側摩擦板71、外側摩擦板72)を有する多板クラッチである。
【0127】
(第2実施形態)
第2実施形態による制御装置について、図8に基づき説明する。第2実施形態では、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方が第1実施形態と異なる。
【0128】
本実施形態では、作動モード変更時のDutyの切り替えタイミングは、フィードバック制御の周期よりも速いタイミングである。
【0129】
制御装置100の作動例を図8に示す。
【0130】
時刻t1で目標クラッチ伝達荷重が増大側に変化すると、モード判定部112により係合モードであると判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2の通常のPID制御すなわちフィードバック制御が開始される。そのため、時刻t1以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する(図8の一点鎖線参照)。
【0131】
時刻t1以降、目標クラッチ伝達荷重は変化しないため、モード判定部112により定常モードであると判定される。これにより、一連の処理S100が開始される。
【0132】
時刻t4で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t4から所定時間T1(s)経過した時刻t6の後の時刻t7で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止すなわち通電カットする。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0133】
なお、時刻t2、t7は、フィードバック制御部121の演算周期より短い周期に対応する時刻である。また、時刻t3、t9は、フィードバック制御部121の演算周期に対応する時刻である。
【0134】
次に、作動モード変更時のDutyの切り替えタイミングが、フィードバック制御の周期と同じタイミングの場合の作動例について説明する。
【0135】
時刻t3で目標クラッチ伝達荷重が増大側に変化すると、モード判定部112により係合モードであると判定され、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2の通常のPID制御すなわちフィードバック制御が開始される。そのため、時刻t3以降、ゲインに基づき算出されたDutyが出力DutyとしてDuty出力部124から出力される。これにより、クラッチ70の実際の伝達荷重である実荷重が目標クラッチ伝達荷重に近付くよう変化する(図8のニ点鎖線参照)。
【0136】
時刻t5で回転角偏差が閾値A1以内に収束し、時刻t5から所定時間T1(s)経過した時刻t8の後の時刻t9で、制御停止モードに移行する。フィードバック制御調整部126は、制御停止モードに移行する直前の積分演算値Xを記憶し、アクチュエータ2への通電を停止すなわち通電カットする。これにより、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御が停止する。
【0137】
上述したように、本実施形態では、モード変更時のDutyの切り替えタイミングがフィードバック制御の周期と同じタイミングの場合と比べ、クラッチ70の実荷重を目標値に速やかに近付けることができるとともに、制御停止モードへの移行タイミングを早めることができる。
【0138】
以上説明したように、本実施形態では、作動モード変更時のDutyの切り替えタイミングは、フィードバック制御の周期よりも速いタイミングである。つまり、<7>本実施形態では、モード判定部112によりモードが判定された後の所定期間、Duty出力部124は、フィードバック制御部121の演算周期より短い周期で出力Dutyを出力する。そのため、目標更新時すなわち作動モード更新時の無駄時間を短縮でき、応答性を向上させることができる。なお、「フィードバック制御部121の演算周期より短い周期」としては、例えば、割り込み処理やAD検出周期等が対応する。
【0139】
(第3実施形態)
第3実施形態による制御装置について、図9に基づき説明する。第3実施形態では、制御装置100の構成、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0140】
本実施形態では、制御装置100は、ストロークセンサ7を備えている。ストロークセンサ7は、例えば、押圧部81の近傍に設けられている。ストロークセンサ7は、ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置を検出し、相対位置に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、ストロークセンサ7からの信号に基づき、ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置および移動量等を検出することができる。
【0141】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出され、目標ストロークとストロークセンサ7により検出した押圧部81の軸方向の移動量すなわちストロークとの偏差であるストローク偏差がフィードバック制御部121に入力される。
【0142】
以上説明したように、<11>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、押圧部81の軸方向の移動量と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0143】
(第4実施形態)
第4実施形態による制御装置について、図10に基づき説明する。第4実施形態では、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0144】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出される。また、目標ストロークに基づき、電動モータ20の目標回転角が算出される。また、目標回転角に基づき、目標回転数が算出され、目標回転数と回転角センサ5により検出した電動モータ20の回転数との偏差である回転数偏差がフィードバック制御部121に入力される。
【0145】
以上説明したように、<11>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、電動モータ20の回転数と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0146】
(第5実施形態)
第5実施形態による制御装置について、図11に基づき説明する。第5実施形態では、制御装置100の構成、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0147】
本実施形態では、制御装置100は、荷重センサ8を備えている。荷重センサ8は、例えば、出力軸62の板部622と摩擦板624との間に設けられている。荷重センサ8は、押圧部81からクラッチ70に作用する軸方向の荷重を検出し、荷重に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、荷重センサ8からの信号に基づき、押圧部81からクラッチ70に作用する荷重を検出することができる。
【0148】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出され、目標クラッチ伝達荷重と荷重センサ8により検出した押圧部81からクラッチ70に作用する荷重との偏差である荷重偏差がフィードバック制御部121に入力される。
【0149】
以上説明したように、<11>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、押圧部81からクラッチ70に作用する荷重と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0150】
(第6実施形態)
第6実施形態による制御装置について、図12、13に基づき説明する。第6実施形態では、制御装置100の構成、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0151】
本実施形態では、制御装置100は、電流センサ9を備えている。電流センサ9は、電動モータ20に流れる電流を検出し、電流に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、制御装置100は、電流センサ9からの信号に基づき、電動モータ20に流れる電流を検出することができる。
【0152】
本実施形態では、目標伝達トルクに基づき、クラッチ70によって伝達すべき荷重である目標クラッチ伝達荷重が算出される。また、目標クラッチ伝達荷重に基づき、押圧部81の軸方向の目標移動量である目標ストロークが算出される。また、目標ストロークに基づき、電動モータ20に流すべき電流である目標電流が算出され、目標電流と電流センサ9により検出した電動モータ20に流れる電流との偏差である電流偏差がフィードバック制御部121に入力される。
【0153】
図13に示すように、制御装置100は、電子制御器150、ドライバ160を備えている。電子制御器150は、目標算出部111、モード判定部112、制御部113を有している。制御部113は、上述のように、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、通電制御部125、フィードバック制御調整部126を含む。
【0154】
本実施形態では、フィードバック制御部121は、ソフトウェアにより構成される回路、すなわち、ソフトフィードバック回路であり、目標伝達トルクと電動モータ20に流れる電流とに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。
【0155】
ドライバ160は、スイッチング素子171、172、電流センサ9を有している。スイッチング素子171は、電子制御器150とアクチュエータ2と車両のバッテリの正極とに接続されている。スイッチング素子172は、電子制御器150とアクチュエータ2と電流センサ9とに接続されている。電流センサ9は、スイッチング素子172と車両のグランドとに接続されている。
【0156】
通電制御部125は、スイッチング素子171、172の作動を制御することで、アクチュエータ2の電動モータ20への通電を制御可能である。
【0157】
電動モータ20に電流が流れるとき、電流センサ9の一端と他端との間には、電位差が生じる。これにより、制御部113のフィードバック制御部121は、電動モータ20に流れる電流を検出することができる。
【0158】
本実施形態では、電子制御器150の目標算出部111により目標伝達トルクを算出し、電子制御器150の制御部113のDuty算出部123、Duty出力部124により出力Dutyを算出および出力する。
【0159】
フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、所定の停止条件が成立したとき、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を停止する制御停止モードへ移行することが可能である。
【0160】
以上説明したように、<11>本実施形態では、フィードバック制御部121は、目標伝達トルクと、電動モータ20に流れる電流と、に基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御対象によらず、様々な制御に対応できる。
【0161】
(第7実施形態)
第7実施形態による制御装置について、図14に基づき説明する。第7実施形態では、制御装置100の構成等が第6実施形態と異なる。
【0162】
本実施形態では、電子制御器150は、第6実施形態と異なり、制御部113を有していない。ドライバ160は、制御部113をさらに有している。つまり、制御部113は、スイッチング素子171、172、電流センサ9と一体にドライバ160に設けられている。ここで、制御部113は、例えば、IC等のハードウェアにより構成される回路である。制御部113は、フィードバック制御部121、ゲイン設定部122、Duty算出部123、Duty出力部124、通電制御部125、フィードバック制御調整部126を含む。
【0163】
本実施形態では、フィードバック制御部121は、ハードウェアにより構成される回路、すなわち、ハードフィードバック回路であり、目標伝達トルクと電動モータ20に流れる電流とに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。
【0164】
制御部113は、電子制御器150とスイッチング素子171、172と電流センサ9とに接続している。
【0165】
制御部113の通電制御部125は、スイッチング素子171、172の作動を制御することで、アクチュエータ2の電動モータ20への通電を制御可能である。
【0166】
制御部113のフィードバック制御部121は、電動モータ20に流れる電流を検出することができる。
【0167】
本実施形態では、電子制御器150の目標算出部111により目標伝達トルクを算出し、制御部113のDuty算出部123、Duty出力部124により出力Dutyを算出および出力する。
【0168】
フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、所定の停止条件が成立したとき、フィードバック制御部121によるアクチュエータ2のフィードバック制御を停止する制御停止モードへ移行することが可能である。
【0169】
以上説明したように、<12>本実施形態では、フィードバック制御部121は、ハードウェアにより構成される回路であり、目標伝達トルクと電動モータ20に流れる電流とに基づき、アクチュエータ2をフィードバック制御する。そのため、制御部113を構成するにあたり安価なドライバICを選択でき、コストを低減できる。
【0170】
(第8実施形態)
第8実施形態による制御装置について、図15に基づき説明する。第8実施形態では、制御装置100によるアクチュエータ2の制御の仕方等が第1実施形態と異なる。
【0171】
ハウジング10に対する押圧部81の軸方向の相対位置、すなわち、押圧部81のストロークと、クラッチ70の実伝達荷重すなわちクラッチ荷重と、の関係を図15に示す。
【0172】
本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0より大きいときに限り、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、制御停止モードへ移行する。
【0173】
図15に示すように、具体的には、押圧部81がクラッチ70に近付き押圧部81とクラッチ70との間の隙間が小さくなる期間であるガタ詰め期間、すなわち、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0以下のとき、フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合でも、制御停止モードへ移行しない。
【0174】
また、押圧部81がクラッチ70に接触するタッチングポイント以降、押圧部81がクラッチ70を押圧しクラッチ荷重が0より大きくなる推力制御期間、すなわち、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0より大きいとき、フィードバック制御調整部126は、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、制御停止モードへ移行する。
【0175】
以上説明したように、本実施形態では、フィードバック制御調整部126は、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が0より大きいときに限り、モード判定部112により定常モードであると判定された場合、制御停止モードへ移行可能である。ガタ詰め期間ではクラッチ70の負荷の影響がないため、上記制御停止モードへの移行処理を行わず、処理負荷を抑制できる。また、推力制御期間では、アクチュエータ2に対するクラッチ70からの反力が大きいため、制御停止モードが無いシステムや積分演算値をリセットするシステムの場合、フィードバック制御再開直後の荷重挙動がバラつくおそれがあるものの、本実施形態では、制御停止モードの後のフィードバック制御再開直後の荷重挙動のバラつきを抑制できるため、好適である。
【0176】
(他の実施形態)
他の実施形態では、第2伝達部からトルクを入力し、クラッチを経由して第1伝達部から出力することとしてもよい。また、例えば、第1伝達部または第2伝達部の一方を回転不能に固定した場合、クラッチを係合状態にすることにより、第1伝達部または第2伝達部の他方の回転を止めることができる。<14>この場合、クラッチは、他部材に対し一方が固定され他方が相対回転する第1伝達部と第2伝達部との間を断接し、伝達される動力を弱めたり止めたりするタイプである。ここで、クラッチは、ブレーキとして機能することができる。
【0177】
また、<15>他の実施形態では、クラッチは、乾式クラッチであってもよい。
【0178】
また、<16>他の実施形態では、クラッチは、単板クラッチであってもよい。
【0179】
また、他の実施形態では、トルク伝達部は、アクチュエータの作動により伝達状態または非伝達状態に切り替わるのであれば、クラッチに限らず、どのような構成のものであってもよい。
【0180】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【0181】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0182】
1 伝達装置、2 アクチュエータ、61 入力軸(第1伝達部)、62 出力軸(第2伝達部)、70 クラッチ(トルク伝達部)、100 制御装置、111 目標算出部、112 モード判定部、113 制御部、121 フィードバック制御部、122 ゲイン設定部、123 Duty算出部、124 Duty出力部、125 通電制御部、126 フィードバック制御調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15