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特許7400678熱硬化性組成物、熱硬化性シート、硬化物、硬化シートおよびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物、熱硬化性シート、硬化物、硬化シートおよびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20231212BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231212BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20231212BHJP
   C08G 18/06 20060101ALI20231212BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20231212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231212BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231212BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08L79/08 A
C08L63/00 A
C08K3/013
C08G73/06
C08G18/06
C08G59/42
C08J5/18 CFG
C08J5/24 CFG
H05K1/03 610N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020161481
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054337
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】阪口 豪
(72)【発明者】
【氏名】田中 基貴
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171101(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062404(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188436(WO,A1)
【文献】特開2008-231420(JP,A)
【文献】特開2009-191253(JP,A)
【文献】特開2009-286706(JP,A)
【文献】特開2008-100979(JP,A)
【文献】特開2019-214721(JP,A)
【文献】特開2021-095570(JP,A)
【文献】特開2015-117278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 73/00-73/26
C08G 18/00-18/87
C08G 59/00-59/72
C08J 5/18、5/24
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価のジアミン残基を表し、前記Xとイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)
で表される構造の繰り返し単位および酸無水物基の分子鎖末端を含み、ガラス転移温度が0~90℃のポリイミド樹脂(A)と、
架橋剤(B)と、を含有する熱硬化性組成物であって、
ポリイミド樹脂(A)中の前記Xは、以下の(I)および(II)の少なくとも一方を満たす構造Sを有するXaを含み、当該X全体を100モル%としたときに、前記Xaの割合が60~100モル%であり、前記Xは、ダイマー構造を有するXdを含み、ポリイミド樹脂(A)中の前記Xは、当該X全体を100モル%としたときに、前記Xdの割合が40~100モル%であり、
ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量は3,000~100,000であり、
ポリイミド樹脂(A)は、前記X を構成する単量体Y の重合性官能基αと、前記X を構成する単量体Y の重合性官能基βの当量比α/βが1.01~5.0の範囲で重合して得たものであり、
架橋剤(B)は、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(b2)、イソシアネート基含有化合物(b3)、キレート化合物(b4)およびカルボジイミド基含有化合物(b5)からなる群から選択される一種以上である熱硬化性組成物。
(I)前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、他方の前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(II)2つの前記イミド環それぞれを構成する、前記X中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に、脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、のいずれかを満たす。
【請求項2】
一般式(1):
【化1】
(X は繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、X は繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価のジアミン残基を表し、前記X とイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)
で表される構造の繰り返し単位および酸無水物基の分子鎖末端を含み、ガラス転移温度が0~90℃のポリイミド樹脂(A)と、
架橋剤(B)と、を含有する熱硬化性組成物であって、
ポリイミド樹脂(A)中の前記X は、以下の(I)および(II)の少なくとも一方を満たす構造Sを有するX aを含み、当該X 全体を100モル%としたときに、前記X aの割合が60~100モル%であり、前記X は、ダイマー構造を有するX dを含み、ポリイミド樹脂(A)中の前記X は、当該X 全体を100モル%としたときに、前記X dの割合が40~100モル%であり、
ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量は3,000~100,000であり、
ポリイミド樹脂(A)の酸無水物価は4.4~48.7であり、
架橋剤(B)は、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(b2)、イソシアネート基含有化合物(b3)、キレート化合物(b4)およびカルボジイミド基含有化合物(b5)からなる群から選択される一種以上である熱硬化性組成物。
(I)前記イミド環を構成する前記X 中の炭素の少なくとも一つが、他方の前記イミド環を構成する前記X 中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(II)2つの前記イミド環それぞれを構成する、前記X 中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に、脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、のいずれかを満たす。
【請求項3】
エポキシ化合物(b1)として、軟化点が30~120℃のエポキシ化合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
更に、フェノール樹脂(d1)、ベンゾオキサジン(d2)、活性エステル樹脂(d3)およびマレイミド化合物(d4)から選択されるいずれか一種以上である化合物(D)を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
化合物(D)がベンゾオキサジン(d2)およびマレイミド化合物(d4)から選択されるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項記載の熱硬化性組成物。
【請求項6】
無機フィラー(C)を含有することを特徴とする請求項1~いずれか記載の熱硬化性組成物。
【請求項7】
180℃、60分の条件で熱硬化した後のガラス転移温度が140~250℃であることを特徴とする請求項1~いずれか記載の熱硬化性組成物。
【請求項8】
溶剤を除く熱硬化性組成物100質量%中、ポリイミド樹脂を9.1~91質量%含むことを特徴とする請求項1~いずれか記載の熱硬化性組成物。
【請求項9】
ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、無機フィラー(C)0~300質量部であることを特徴とする請求項1~5、7、8いずれか記載の熱硬化性組成物。
【請求項10】
ポリイミド樹脂(A)が一般式(2):
【化2】
(Xは4価のテトラカルボン酸残基を表し、前記Xと酸無水物基は互いに結合して酸無水物環を形成し、且つ前記Xとイミド結合は互いに結合してイミド環を形成する。)で表される分子鎖末端を有し、
ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端中の前記Xは、以下の(III)および(IV)の少なくとも一方を満たす構造Tを有するXtを含む請求項1~いずれかに記載の熱硬化性組成物。
(III)前記酸無水物環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(IV)前記酸無水物環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つ、および前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、のいずれかを満たす。
【請求項11】
請求項1~10いずれか記載の熱硬化性組成物を繊維基材に含浸させてなる、熱硬化性シート。
【請求項12】
請求項1~10いずれか記載の熱硬化性組成物を熱硬化させてなる硬化物。
【請求項13】
請求項1記載の熱硬化性シートを熱硬化させてなる、硬化シート。
【請求項14】
基材上に、請求項1記載の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項15】
請求項1記載の硬化シートを用いてなる、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂を含む熱硬化性組成物に関する。また、熱硬化性組成物を含浸させてなる熱硬化性シートおよびその硬化シート、熱硬化性組成物の硬化物、並びにプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は耐熱性および耐薬品性に優れるので、電気絶縁分野、電子分野をはじめとする幅広い分野で多用されている。例えば、特許文献1には、特定の構造を有するアミド酸を含有する熱硬化性インク組成物、並びにこのインク組成物を塗布して塗膜を形成し、硬化処理するポリイミド膜の製造方法が開示されている。また、特許文献2、3には、芳香族テトラカルボン酸類およびダイマージアミンを反応させてなるポリイミド樹脂とエポキシ化合物などの硬化剤を含むポリイミド系接着剤組成物が開示されている。特許文献4には、脂肪族、脂環族および/または芳香族テトラカルボン酸残基と、ダイマージアミンを含むジアミン残基とを含むポリイミド樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ基を硬化することのできる硬化剤を含む樹脂組成物が開示されている。更に、特許文献5では、芳香族テトラカルボン酸類およびダイマージアミンを反応させてなるポリイミド樹脂とジヒドラジド硬化剤からなる接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-032501号公報
【文献】特開2016-191049号公報
【文献】特開2013-199645号公報
【文献】特開2015-117278号公報
【文献】特開2020-056011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の熱硬化性インク組成物によれば、メッキ銅に対する良好な接着性を示すという利点があるものの保存安定性に課題がある。また、高度なハンダ耐熱性が劣るという問題がある。特許文献2、3記載のポリイミド系接着剤組成物によれば、良好な耐熱接着性を示すという利点がある一方で、クラック耐性やレーザー加工性が劣るという課題がある。更に、特許文献4に記載の樹脂組成物によれば、ハンダ耐熱性、吸水率、耐薬品性、引張強度等に優れるという利点がある一方で、長期耐熱性、レーザー加工性に課題がある。また、特許文献5記載の接着剤組成物によれば、良好な誘電特性を示すという利点があるが、ハンダ耐熱性、クラック耐性およびレーザー加工性に課題がある。
【0005】
多層プリント配線板等に用いられる多層基板用プリプレグ、ビルドアップフィルムや層間接着シートにおいては、他の材料との優れた接着性を有する信頼性の高い樹脂材料が求められている。また、製造時には加熱工程が複数あり、製品化後も、自動車、船舶、航空機等をはじめとする産業機械において使用されるので、長期耐熱性のある信頼性の高い樹脂組成物が求められている。
【0006】
更に、昨今の各種基板における小型化、軽量化、高密度化の要求を受けて、薄型化、多層化が求められており、従来にも増して、柔軟性やクラック抑制の向上が求められている。また、例えば、ビルトアップ層などにおいて、開孔径の微細化に伴うレーザー加工性に優れる樹脂材料が切望されている。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みて成されたものであり、接着性、長期耐熱性、クラック耐性およびレーザー加工性に優れる硬化物が得られる熱硬化性組成物、熱硬化性シート、硬化物、硬化シートおよびプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]:一般式(1):
【化1】
(Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価のジアミン残基を表し、前記Xとイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)で表される構造の繰り返し単位および酸無水物基の分子鎖末端を含むポリイミド樹脂(A)と、架橋剤(B)と、を含有する熱硬化性組成物であって、
ポリイミド樹脂(A)中の前記Xは、以下の(I)および(II)の少なくとも一方を満たす構造Sを有するXaを含み、当該X全体を100モル%としたときに、前記Xaの割合が60~100モル%であり、前記Xは、ダイマー構造を有するXdを含み、
架橋剤(B)は、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(b2)、イソシアネート基含有化合物(b3)、キレート化合物(b4)およびカルボジイミド基含有化合物(b5)からなる群から選択される一種以上である熱硬化性組成物。
(I)前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、他方の前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(II)2つの前記イミド環それぞれを構成する、前記X中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に、脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、のいずれかを満たす。
[2]:エポキシ化合物(b1)として、軟化点が30~120℃のエポキシ化合物を含むことを特徴とする[1]記載の熱硬化性組成物。
[3]:更に、フェノール樹脂(d1)、ベンゾオキサジン(d2)、活性エステル樹脂(d3)およびマレイミド化合物(d4)から選択されるいずれか一種以上である化合物(D)を含むことを特徴とする[1]または[2]記載の熱硬化性組成物。
[4]:ポリイミド樹脂(A)中の前記Xは、当該X全体を100モル%としたときに、前記Xdの割合が20~100モル%であることを特徴とする[1]~[3]いずれか記載の熱硬化性組成物。
[5]:無機フィラー(C)を含有することを特徴とする[1]~[4]いずれか記載の熱硬化性組成物。
[6]:180℃、60分の条件で熱硬化した後のガラス転移温度が140~250℃であることを特徴とする[1]~[5]いずれか記載の熱硬化性組成物。
[7]:ポリイミド樹脂(A)が一般式(2):
【化2】
(Xは4価のテトラカルボン酸残基を表し、前記Xと酸無水物基は互いに結合して酸無水物環を形成し、且つ前記Xとイミド結合は互いに結合してイミド環を形成する。)で表される分子鎖末端を有し、ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端中の前記Xは、以下の(III)および(IV)の少なくとも一方を満たす構造Tを有するXtを含む[1]~[6]いずれかに記載の熱硬化性組成物。
(III)前記酸無水物環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(IV)前記酸無水物環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つ、および前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、のいずれかを満たす。
[8]:[1]~[7]いずれか記載の熱硬化性組成物を繊維基材に含浸させてなる、熱硬化性シート。
[9]:[1]~[7]いずれか記載の熱硬化性組成物を熱硬化させてなる硬化物。
[10]:[8]記載の熱硬化性シートを熱硬化させてなる、硬化シート。
[11]:基材上に、[9]記載の硬化物からなる層を有することを特徴とするプリント配線板。
[12]:[10]記載の硬化シートを用いてなる、プリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着性、長期耐熱性、クラック耐性およびレーザー加工性に優れる硬化物が得られる熱硬化性組成物、熱硬化性シート、硬化物、硬化シートおよびプリント配線板を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0011】
本明細書において、「Mw」および「Mn」は、順にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0012】
[[熱硬化性組成物]]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、後述するポリイミド樹脂(A)および架橋剤(B)を少なくとも含有する組成物である。ここで、熱硬化性組成物とは、熱硬化性樹脂を含む組成物をいい、加熱硬化処理により樹脂の三次元架橋構造を形成して硬化する組成物をいう。なお、本明細書において硬化物とは、更に加熱しても実質的に硬化反応が進行しない程度に硬化された状態をいう。熱硬化性組成物をシート等の所望の形状の成形する際に、その一部が硬化反応し得るが、更に加熱すれば硬化し得る状態は、ここでいう硬化物には含まない。熱硬化性組成物の段階で、成分の一部が半硬化したBステージの状態であってもよい。
【0013】
本実施形態に係る熱硬化性組成物によれば、後述する一般式(1)で表される繰り返し単位および酸無水物基の分子鎖末端を含むポリイミド樹脂(A)と、後述する特定の化合物から選択される架橋剤(B)とを含有し、且つ一般式(1)中の2つのイミド環の隣接部に、後述する特定構造Sを有するXaを特定量含ませ、更にダイマー構造を有するXdを含むことにより、その硬化物の接着性および耐熱性に優れる熱硬化性組成物が得られる。また、その硬化物は、長期耐熱性、クラック耐性およびレーザー加工性に優れる。以下、本実施形態の熱硬化性組成物の各成分および製造方法について詳細に説明する。
【0014】
[ポリイミド樹脂(A)]
本実施形態に係るポリイミド樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される構造の繰り返し単位および酸無水物基の分子鎖末端を含む樹脂である。
【化3】
式(1)中のXは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価のジアミン残基を表す。Xとイミド結合は互いに結合して2つのイミド環を形成する。
【0015】
ポリイミド樹脂(A)中の前記Xは、以下の(I)および(II)の少なくとも一方を満たす構造Sを有するXaを含む。また、前記Xは、ダイマー構造を有するXdを含む。
(I)イミド環を構成するX中の炭素の少なくとも一つが、他方のイミド環を構成するX中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(II)2つのイミド環それぞれを構成する、X中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に、脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、のいずれかを満たす。
ポリイミド樹脂(A)を構成するX全体を100モル%としたときに、構造Sを有するXaの割合を60~100モル%とする。
【0016】
本明細書において、「テトラカルボン酸残基」とは、テトラカルボン酸、並びにテトラカルボン酸二無水物およびテトラカルボン酸ジエステル等のテトラカルボン酸誘導体に由来する成分をいい、「ジアミン残基」とはジアミンに由来する成分をいう。また、「イミド結合」とは、1つの窒素原子と2つのカルボニル結合(C=O)からなるものとし、イミド結合と式(1)中のXの一部が互いに結合してイミド環を形成する。「イミド環」は、イミド結合を有する環であり、1つの環を形成する元素数が4以上、7以下である。好適には5又は6である。イミド環は他の環と縮合していてもよい。また、「酸無水物基」とは、-C(=O)-O-C(=O)-で表される基を意味し、「酸無水物環」は、酸無水物基と炭素元素が結合して形成された環をいう。
【0017】
「脂肪族構造」には、置換基を含んでいてもよい、鎖状炭化水素構造および/又は脂環式炭化水素構造がある。「鎖状炭化水素構造」は、不飽和結合を有していてもよい、直鎖状炭化水素構造および/又は分岐状炭化水素構造である。また、「脂環式炭化水素構造」は、不飽和結合を有していてもよい、脂環式炭化水素であり、単環であっても多環であってもよい。前記置換基としては、アルキル基、ハロゲン、カルボニル基等が例示できる。
【0018】
構造Sを有するXaのうち上記(I)を満たす具体例として、化学式(I-a)~(I-d)が例示できる。なお、化学式(I-b)~(I-d)は上記(II)を満たす化合物でもある。式中の*は、イミド基との結合部位を示す。
【化4】
【0019】
構造Sを有するXaのうち上記(II)を満たす具体例として、化学式(II-a)~(II-v)が例示できる。
【0020】
【化5】
【0021】
イミド環を形成するX中の炭素が、脂肪族構造である鎖状炭化水素構造に直結する構造Sを有するXaの例として、化学式(II-a)で表される化合物が例示できる。イミド環を形成するX中の炭素が、構成元素の一つとなる脂肪族構造のうちの脂環式炭化水素構造を含む構造Sを有するXaの例として、化学式(II-b)で表される化合物が例示できる。また、一方のイミド環を形成するXの炭素が、脂肪族構造のうちの脂環式炭化水素構造に直結し、他方のイミド環を形成するX中の炭素が、構成元素の一つとなる脂肪族構造のうちの脂環式炭化水素構造を含む構造Sを有するXaの例として、化学式(II-c)が例示できる。なお、2つのイミド環がそれぞれ独立に、上記(I)および(II)の少なくともいずれかを満たしていればよく、化学式(II-d)に示すように芳香環が含まれていてもよい。
【0022】
「ダイマー構造」とは、脂肪酸の二量体(以下、脂肪酸二量体という)に由来する構造であり、一般式(1)中のXとしてダイマー構造を有するXdを含む。Xdは、ダイマージアミンに由来するジアミン残基である。ダイマージアミンは、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化した化合物を使用できる。転化方法は、例えば、カルボン酸をアミド化させ、ホフマン転位によりアミン化させ、さらに蒸留・精製を行う方法が挙げられる。なお、ダイマー酸は、ダイマー構造を有する多塩基酸であり、脂肪酸二量体である。ダイマージアミンの具体例については後述する。
【0023】
構造Sを有するXaの割合は、ポリイミド樹脂(A)を合成する際に使用する原料モノマーのうち、Xが残基となる全単量体100モル%中に対する、構造Sを有するXaが残基となる単量体の含有率(モル%)より求めることができる。同様に、ダイマー構造を有するXdの割合は、ポリイミド樹脂(A)を合成する際に使用する原料モノマーのうち、X残基となる全単量体100モル%中に対する、ダイマー構造を有するXdが残基となる単量体の含有率(モル%)より求めることができる。
【0024】
構造Sを有するXaの割合は、ポリイミド樹脂(A)を構成するX全体を100モル%としたときに、60~100モル%であり、より好ましい範囲は70~100モル%、更に好ましい範囲は80~100モル%である。また、前記ダイマー構造を有するXdの割合は、ポリイミド樹脂(A)を構成するX全体を100モル%としたときに20~100モル%が好ましく、より好ましい範囲は40~100モル%であり、更に好ましい範囲は60~100モル%である。
【0025】
ダイマー構造は複数の炭化水素鎖や環構造を有している分子鎖間の相互作用が少ない構造であり、ポリイミド樹脂(A)中にダイマー構造を含ませることによって、硬化の際、樹脂組成物内に発生する内部応力を緩和させることができる。ポリイミド樹脂(A)に含まれるダイマー構造による応力緩和により、高温低温の繰り返しにより発生する応力に起因する接着力低下やクラックの発生を抑制できる。
【0026】
なお、ポリイミド樹脂(A)には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、X残基、X残基以外の単量体に由来する残基が含まれていてもよい。
【0027】
ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端に酸無水物基を導入する方法は特に制限されない。簡便な方法として、X残基を構成する単量体Y1の重合性官能基を、X残基を構成する単量体Y2の重合性官能基よりも多く配合する方法が例示できる。なお、単量体Y1、Y2は、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。所望とする重量平均分子量に応じて、例えば単量体Y1の重合性官能基/単量体Y2の重合性官能基の当量比を、1.0を超えて5.0以下の範囲で調整できる。より好ましくは1.01~3.0であり、更に好ましくは1.02~2.0である。前記方法に代えて、単量体Y1の重合性官能基/単量体Y2の重合性官能基の当量比を1若しくは1未満とするポリイミド前駆体を製造した後、末端封止させて末端に酸無水物基を導入してもよい。
【0028】
分子鎖末端の酸無水物基は、一般式(2)で表される分子鎖末端を含むことがより好ましい。
【化6】
式(2)中のXは4価のテトラカルボン酸残基を表し、Xと酸無水物基は互いに結合して酸無水物環を形成し、且つXとイミド結合は互いに結合してイミド環を形成する。
【0029】
ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端中のXは、以下の(III)および(IV)の少なくとも一方を満たす構造Tを有するXtを含む。
(III)前記酸無水物環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つが、前記イミド環を構成する前記X中の炭素の少なくとも一つと互いに直結する。
(IV) 前記酸無水物環を構成するX中の炭素の少なくとも一つ、および前記イミド環を構成するX中の炭素の少なくとも一つが、それぞれ独立に
脂肪族構造と直結する構造を有する、および構成元素の一つとなる脂肪族構造を含む、
のいずれかを満たす構造を有する。
係る構造を有することによって、ポリイミド樹脂(A)のパッキング性を抑制し、柔軟性をより効果的に付与することができる。
【0030】
の好適例として、上記(I-a)から(I-d)および(II-a)~(II-v)で挙げた化合物が例示できる。
【0031】
ポリイミド樹脂(A)には、官能基を有しない分子鎖末端を含めることができる。例えば、分子鎖末端の無水物基の一部をモノアミン化合物で封止し、官能基数を低減することができる。この方法によれば、ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端の酸無水物基の量を容易に調整することができる。なお、ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において酸無水物基以外の官能基を有していてもよい。
【0032】
(ポリイミド樹脂(A)のMw)
ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量は、例えば3,000~200,000の範囲内が好ましく、4,000~150,000の範囲内がより好ましく、5,000~100,000の範囲内が更に好ましい。重量平均分子量が3,000以上であれば、得られる硬化物のクラック耐性が良好となる。一方、200,000以下であれば、硬化物のレーザー加工性が良好となる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0033】
(ポリイミド樹脂(A)のTg)
ポリイミド樹脂(A)のガラス転移温度は、0℃~90℃であることが好ましく、10℃~70℃がより好ましく、20℃~60℃が更に好ましい。ガラス転移温度は、硬化した樹脂組成物を、動的粘弾性測定装置で測定した粘性項を弾性項で除した値(tanδ)が極大を示す温度である。
ガラス転移温度が0℃以上であれば、ポリイミド樹脂(A)に架橋剤(B)やシリカなどの無機フィラー(C)などの他の成分を配合させる工程において、均一な樹脂組成物を得やすい。一方、ガラス転移温度が90℃以下であれば、ポリイミド樹脂(A)を含む樹脂組成物をシート状に成形した際に、シート状の樹脂組成物同士のブロッキングが発生しにくく、ハンドリング性が問題になりにくい。
【0034】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有し、且つ分子鎖末端に酸無水物基を有し、且つ構造Sを有するXaの割合が、Xを構成する成分全体を100モル%としたときに、60~100モル%とし、且つXとしてダイマー構造を有するXdを含むことによって、接着性および耐熱性に優れ、更に長期耐熱性にも優れるのみならず、クラック耐性ならびにレーザー加工性が顕著に優れることがわかった。
【0035】
その理由は定かではないが、構造Sを有するXaおよびダイマー構造を有するXdを導入し、且つ分子鎖末端の酸無水物基による環構造によって、平面性の高いイミド環周辺のパッキング性を阻害すると同時に、分子鎖末端とイミド環との相互作用を高められたことによる相乗効果によって、柔軟性を高めることが可能となり、クラック耐性が顕著に高められたものと考えられる。また、分子鎖末端の酸無水物基の存在によって、ポリイミド樹脂(A)のイミド環周辺のパッキングの抑制をより促進させてイミド環の均一な分散を促し、レーザー加工時にイミド基周辺の局所的加熱の抑制が可能となり、レーザー加工時に開孔径の微細化が可能になったと考えられる。
【0036】
<ポリイミド樹脂(A)の製造方法>
ポリイミド樹脂(A)は、各種公知の方法により製造できる。具体例として、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸樹脂、またはポリアミド酸エステル樹脂を加熱により環化してイミド基に変換する方法が挙げられる。ポリアミド酸樹脂の合成法は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法がある。より具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを含む単量体を溶媒に溶解させて例えば60~120℃の温度で0.1~2時間撹拌して、重合させることでポリイミド前駆体であるポリアミド酸樹脂を製造できる。
【0037】
ポリアミド酸エステル樹脂の合成法は、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、次いで縮合剤の存在下でジアミンと反応させる方法や、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、次いで、残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミンと反応させる方法が例示できる。
【0038】
重合に用いる有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾールが例示できる。溶媒は単独若しくは二種以上を併用して用いられる。キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
【0039】
ポリイミド前駆体をイミド化させてポリイミド樹脂を得る方法は、特に制限されないが、溶媒中で、例えば、80~400℃の温度で0.5~50時間加熱する方法が例示できる。このとき、必要に応じて触媒および/または脱水剤を用いてもよい。
【0040】
反応触媒として、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類等が例示できる。また、脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物が例示できる。
【0041】
イミド化率(イミド環の形成率)は限定されないが、長期耐熱性の効果を効果的に発揮させる観点からは80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95~100%であることが更に好ましい。NMRやIR分析等によりイミド化率を決定できる。
【0042】
(構造Sを有するテトラカルボン酸二無水物)
一般式(1)中のXにおいて構造Sを有するXaの単量体となるテトラカルボン酸二無水物は、上記(I)、(II)の少なくともいずれかを満たしていれば特に限定されない。
具体例として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ペンタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサンテトラカルボン酸等の鎖状炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物が例示できる。
【0043】
また、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、1-カルボキシメチル-2,3,5-シクロペンタントリカルボン酸、3-カルボキシメチル-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸、rel-ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ-9-エン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、5-カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,6-トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,7-テトラカルボン酸、7,8-ジフェニルビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、4,8-ジフェニル-1,5-ジアザビシクロオクタン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、9,14-ジオキソペンタシクロ[8.2.11,11.14,7.02,10.03,8]テトラデカン-5,6,12,13-テトラカルボン酸等のシクロ、ビシクロ、トリシクロテトラカルボン酸;2,8-ジオキサスピロ[4.5]デカン-1,3,7,9-テロトン等のスピロ環含有テトラカルボン酸;1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物が例示できる。
【0044】
(構造Sを有しないテトラカルボン酸二無水物)
一般式(1)中のXにおいて、構造Sを有するXaの単量体以外の単量体、即ち、構造Sを有しないXの単量体となるテトラカルボン酸二無水物として、イミド環と芳香族基が直結または多環構造を形成している化合物が例示できる。具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、以下の一般式(4)で表されるジフタル酸に無水物が例示できる。
【化7】
式中のXは、2価の置換基を有していてもよい有機基(例えば炭素数1~10の炭化水素基)、-O-、-CO-、-SO-、-S-、-SO-、-CONH-、-COO-、又は-OCO-等の連結基を示す。
【0045】
構造Sの有するテトラカルボン酸二無水物および構造Sを有しないテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ独立に、単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、上記単量体の例は、適宜、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が例示できる。また、上記テトラカルボン酸二無水物に代えて、同様の構造を有するテトラカルボン酸、もしくはテトラカルボン酸ジエステル等のテトラカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【0046】
(ダイマー構造を有するダイマージアミン)
一般式(1)中のXにおいてダイマー構造を有するXdの単量体となるダイマージアミンは、前述したようにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化した化合物を使用できる。ダイマー酸は、ダイマー構造を有する多塩基酸であり、脂肪酸の二量体(脂肪酸二量体)である。この脂肪酸二量体は、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物がさらに好ましく、炭素数36~44の化合物がさらに好ましい。脂肪酸二量体は、脂肪酸をディールス-アルダー反応させた分岐構造を有するジカルボン酸化合物が好ましい。前記分岐構造は、脂肪鎖および環構造が好ましく、環構造がより好ましい。前記環構造は、1または2以上の芳香環や脂環構造が好ましく、脂環構造がより好ましい。脂環構造は、環内に二重結合を1つ有する場合、二重結合を有さない場合がある。
【0047】
ダイマージアミンは炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物がさらに好ましく、炭素数36~44の化合物がさらに好ましい。かかる炭素数のダイマージアミンは、入手し易さの観点で好ましい。
【0048】
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。ダイマージアミンは、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0049】
なお、ダイマージアミンを得るためのダイマー構造を有する多塩基酸は、例えば、下記化学式(d1)~化学式(d4)で示す構造が挙げられる。なお、ダイマー構造を有する多塩基酸は、下記構造に限定されないことはいうまでもない。
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
(ダイマー構造を有しないその他のジアミン)
一般式(1)中のXにおいて、ダイマー構造を有するXd残基を形成する単量体以外の単量体、即ち、ダイマー構造を有しないXの単量体となるその他のジアミンは、特に限定されない。具体的には、置換基を有していてもよい、脂肪族構造(不飽和結合が含まれていてもよい、鎖状炭化水素構造および/または脂環式炭化水素構造)、芳香環およびこれらを任意に組み合わせたジアミン化合物がある。その他のジアミンとして、フェノール性水酸基を有するジアミンを用いると、ポリイミド樹脂(A)にフェノール性水酸基を導入することができる。フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂(A)を用いることによって、架橋剤(B)との架橋点を調整し、三次元架橋構造を調整できるので、強靱な硬化物を得ることができる。
【0055】
その他のジアミンは、例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’―ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0056】
ジアミノフェノール化合物は、アミノ基を2つ有するフェノールである。ジアミノフェノールは、例えば、下記一般式(5)で示すジアミンが挙げられる。
【0057】
【化12】
【0058】
式中Rは、直接結合、または炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、またはハロゲンを含む基を示す。前記基は、例えば、炭素数1~30の2価の炭化水素基またはハロゲン原子によって水素の一部若しくは全部が置換されている炭素数1~30の2価の炭化水素基、-(C=O)-、―SO-、-O-、-S-、―NH-(C=O)-、―(C=O)-O-、下記一般式(6)で表される基および下記一般式(7)で示す基が挙げられる。式中、rおよびsはそれぞれ独立に1~20の整数を示し、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
一般式(5)で示すジアミンは、例えば2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビスフェニル等が挙げられる。
【0062】
これらの中でもその他のジアミンとしては、接着力およびヒートサイクル性がより向上する面でイソホロンジアミン、またはノルボルナンジアミンが好ましい。
【0063】
(その他の単量体)
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記以外の単量体を用いてもよい。例えば、アミノ基を3以上有するポリアミン化合物を用いてもよい。アミノ基を3つ以上有するポリアミン化合物としては、例えば、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,4,4’-トリアミノジフェニルエーテルが挙げられる。
【0064】
[架橋剤(B)]
「架橋剤(B)」は、1分子中に2つ以上の反応性官能基を有し、架橋構造を構築できる化合物をいう。架橋剤(B)は、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(b2)、イソシアネート基含有化合物(b3)、キレート化合物(b4)およびカルボジイミド基含有化合物(b5)からなる群から選択される一種以上とする。架橋剤(B)は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0065】
架橋剤(B)は、架橋剤(B)自身が熱硬化性を示す化合物であってもよいし、架橋剤(B)とポリイミド樹脂(A)とが架橋する化合物でもよい。また、架橋剤(B)と後述する化合物(D)が架橋する化合物であってもよい。これらは、任意に組み合わせてもよい。
【0066】
<エポキシ化合物(b1)>
エポキシ化合物(b1)は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物をいい、公知の化合物を用いることができる。耐熱性をより効果的に高める観点からは、Mwが200~3000のエポキシ化合物(b1)がより好ましい。
【0067】
エポキシ化合物(b1)の例として、室温25℃で液状のエポキシ化合物(b1-1)、軟化点が25℃越え、160℃以下のエポキシ化合物(b1-2)等が例示できる。(b1-2)の軟化点は30~150℃がより好ましく、30~120℃が更に好ましい。なお、軟化点は、樹脂であるエポキシ化合物が軟化する温度であり、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS-2817に準拠)により測定した値である。
【0068】
エポキシ化合物(b1-1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール系エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキル変性型エポキシ樹脂、脂環式系およびアルコール系等のグリシジルエーテル、脂環式系およびアルコール系等のグリシジルアミン系、並びに脂環式系およびアルコール系等のグリシジルエステル系樹脂が挙げられる。
【0069】
エポキシ化合物(b1-2)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、後述する化学式(5)~(10)を挙げることができる。
【0070】
これらの中でも、クラック耐性およびレーザー加工性をより良化させる観点からビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、キシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0071】
好適例として、以下の化学式(b1-2-1)~(b1-2-6)のエポキシ樹脂を例示できる。式中のnは整数であり、例えば、1~10が好適である。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0072】
軟化点が30~120℃のエポキシ化合物(b1-2)を用いることにより、接着性および耐熱性をより効果的に発揮させることができる。また、軟化点が30~120℃のエポキシ化合物(b1-2)とエポキシ化合物(b1-1)の併用は、接着性向上の観点において優れている。
【0073】
エポキシ化合物(b1)のエポキシ当量は、100~300g/eq.が好ましく、150~250g/eq.がより好ましい。また、ポリイミド樹脂(A)とエポキシ化合物(b1)の含有比率(質量比)は、(A):(b1)=5:95~50:50であることが好ましく、10:90~30:70がより好ましい。上記比率とすることでクラック耐性およびレーザー加工性をより良化させることができる。
【0074】
エポキシ化合物(b1)は、一種単独または二種以上を用いることができる。二種以上用いることにより、接着性や半田耐熱性をより好適に改良できる。
例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂とキシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂、またはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。なかでも、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂とキシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂、またはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を、質量比で2:8~8:2で組み合わせて使用すると、ポリイミド樹脂(A)と適切な相溶性を有して半田耐熱性がより向上するため好ましい。
【0075】
<シアネートエステル化合物(b2)>
「シアネートエステル化合物(b2)」は、1分子当たりのシアネート基の平均個数(平均シアネート基数)が2つ以上である化合物をいい、具体例としては、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン(ビスフェノールA型シアネート樹脂)、ビス(3,5-ジメチル-4-シアネートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)エタン等またはこれらの誘導体等の芳香族系シアネートエステル化合物が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせてもよい。
【0076】
<イソシアネート基含有化合物(b3)>
「イソシアネート基含有化合物(b3)」は、1分子当たりイソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく特に制限されないが、具体例としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。イソシアネート基含有化合物は、一種単独または二種以上を併用できる。
【0077】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0078】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0079】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12-MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0080】
また、ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0081】
ブロック化イソシアネート化合物しては、前記イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基がε-カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたブロック化イソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、前記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体は、本実施形態に使用した場合、保存安定性は勿論のこと、ポリイミド基材などの樹脂層や銅などの金属層等の接合材に対する接着強度や半田耐熱性に優れるため、非常に好ましい。
【0082】
<キレート化合物(b4)>
「キレート化合物(b4)」は、多座配位子(キレート配位子)が金属イオンに配位して生じた錯体をいい、酸無水物基との架橋基が少なくとも2つ以上有する化合物をいう。具体例としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物が挙げられるが、中心金属が鉄やコバルト、インジウムなど種々の金属でもキレート結合を形成し得るため、特に限定されるものではない。
【0083】
<カルボジイミド基含有化合物(b5)>
「カルボジイミド基含有化合物(b5)」は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有する化合物をいい、具体例としては、日清紡績社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV-01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0084】
[無機フィラー(C)]
熱硬化性組成物には、任意成分として無機フィラー(C)を含有させてもよい。無機フィラー(C)の種類は、難燃性、機械的強度、耐熱性、熱伝導性、吸湿性等の所望とする特性に応じて、一種単独または二種以上を併用して用いることができる。具体例としては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、カ-ボンブラック、シリカ、銅粉、アルミニウム粉および銀粉が例示できる。
【0085】
無機フィラー(C)としてシリカフィラーを含有することにより、クラック耐性、レーザー加工性を高めることができる。シリカフィラーの具体例として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカフィラーが挙げられる。
【0086】
シリカフィラーの平均粒子径D50は0.2~100μmが好ましく、柔軟性、可撓性および高充填のバランスを考慮すると1~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、10~22μmがさらに好ましい。なお、本実施形態においては、平均粒子径D50は、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値とする。
【0087】
シリカフィラーは単一種類でも二種以上を併用してもよいが、接着力を向上させる観点からは二種類以上含むことが好ましい。シリカフィラーを二種類以上含む態様として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカおよび2次凝集シリカの中から任意の二種類以上を併用する態様がある。また、平均粒子径が異なる二種類以上を併用する態様、表面処理が異なる二種類以上のシリカフィラーを併用する態様が例示できる。
【0088】
充填性を高める観点からは、平均粒子径D50が異なる溶融球状シリカを二種類以上組み合わせることが好ましい。この場合の平均粒子径D50の範囲は0.2~10μmと、10~100μmの二種類を含むことが好ましく、それぞれのシリカフィラーの含有比率(質量比)は5:95~95:5が好ましく、更に好ましくは10:90~90:10である。5:95~95:5の範囲の含有比率で使用することで、充填性を高めやすい。シリカフィラーの含有量は用途に応じて選定できる。
【0089】
熱硬化性組成物の硬化物に放熱性が求められる場合には、熱伝導性を有する無機フィラー(C)を含有させることが好ましい。係る無機フィラー(C)の具体例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属酸化物や金属窒化物;水和金属化合物;溶融シリカ、結晶性シリカ、非結晶性シリカ等のシリカ系;炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンドなどの窒化系や炭素系フィラーが例示できる。これらの中でもアルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素がより好ましく、アルミナ、窒化ホウ素が耐熱性、熱伝導性および低誘電率性の観点から特に好ましい。アルミナと窒化ホウ素の併用も好適である。
【0090】
無機フィラー(C)の表面は、例えば、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤などで表面処理を行うことができる。表面処理により、ポリイミド樹脂(A)に対する無機フィラー(C)の分散性を高めることができる。また、ポリイミド樹脂(A)と無機フィラー(C)との界面接着強度を高めることもできる。シリカフィラーの表面処理剤としてはシランカップリング剤が好適である。
【0091】
シランカップリング剤は、加水分解性基と反応性官能基を有する化合物である。加水分解性基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1~6のアルコキシ基;アセトキシ基;2-メトキシエトキシ基等が挙げられる。これらの中でも加水分解によって生じるアルコールなどの揮発成分を除去し易い面でメトキシ基が好ましい。前記反応性官能基は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等が挙げられるが、中でもエポキシ基が好ましい。
【0092】
シランカップリング剤は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、硬化性組成物の優れた接着力およびヒートサイクル性を発現させる観点から、フェニルアミノシラン処理または/およびビニルシラン処理が好ましい。
【0093】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が例示できる。
【0094】
シランカップリング剤によりシリカフィラーを処理する方法は、例えば、溶媒中でシリカフィラーとシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中でシリカフィラーとシランカップリング剤を処理させる乾式法等が挙げられる。シランカップリング剤の処理量は、未処理のシリカフィラー100質量部に対して、シランカップリング剤を0.1~1質量部程度処理することが好ましい。
【0095】
[化合物(D)]
化合物(D)は、任意成分として、硬化剤または硬化促進剤として用いることができる。化合物(D)は、フェノール樹脂(d1)、ベンゾオキサジン(d2)、活性エステル樹脂(d3)およびマレイミド化合物(d4)から選択されるいずれか一種以上である。化合物(D)をさらに用いることで、熱硬化性組成物に含まれる架橋剤(B)の三次元網目構造をより一層促進させたり、三次元網目構造の程度を調整したりすることが容易となる。化合物(D)は、架橋剤(B)の選択肢の中でエポキシ化合物(b1)との組合せがより好ましい。
【0096】
フェノール樹脂(d1)としては、フェノール、クレゾール類、およびビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。具体的には、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、t-ブチルフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、テトラキスフェノール樹脂、ビスフェノールA樹脂、ポリ-p-ビニルフェノール樹脂のレゾール型樹脂やノボラック型樹脂が挙げられる。その他、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール樹脂のレゾール型樹脂は、耐熱性および硬化性の面で非常に優れており、本発明において好適に用いることができる。
【0097】
ベンゾオキサジン化合物(d2)としては、Macromolecules,36,6010(2003)記載の「P-a」、「P-alp」、「P-ala」、「B-ala」、Macromolecules,34,7257(2001)記載の「P-appe」、「B-appe」、四国化成株式会社製「B-a型ベンゾオキサジン」、「F-a型ベンゾオキサジン」、「B-m型ベンゾオキサジン」などが挙げられる。
【0098】
活性エステル樹脂(d3)は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物又はナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
また、ここでいうカルボン酸化合物とは、2つ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸であり、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸や、芳香族化合物の水素原子の2~4個をカルボキシル基で置換した芳香族カルボン酸が挙げられる。多価フェノールとは、2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物であり、芳香族化合物の水素原子の2~4個を水酸基で置換したもの等が挙げられる。
【0099】
マレイミド化合物(d4)は、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3-ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-s-ブチル-3,4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[1-(4-マレイミドフェノキシ)フェノキシ]-2-シクロヘキシルベンゼン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも二種類以上を混合して使用してもよい。
【0100】
架橋剤(B)としてエポキシ化合物(b1)を用いる場合には、化合物(D)の含有量は、エポキシ化合物(b1)100質量部に対して、1~200質量部含むことが好ましく、5~150質量部がより好ましく、10~100質量部がさらに好ましい。
【0101】
[触媒(E)]
本実施形態の熱硬化性組成物は、ポリイミド樹脂(A)の分子鎖末端の酸無水物基と架橋剤(B)の架橋促進するために、任意成分として触媒(E)を含有することができる。触媒(E)の好適例として、イミダゾール系、アミン系、リン系が例示できる。
【0102】
<その他の任意成分>
熱硬化性組成物は、更に本発明の趣旨を逸脱しない範囲で添加剤を含むことができる。例えば、ポリイミド樹脂(A)に該当しないポリイミド樹脂を用いてもよい。また、任意の熱可塑性樹脂(エラストマー)を用いることができる。また、染料、顔料(例えば、カーボンブラック)、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤等が挙げられる。
【0103】
[熱硬化性組成物の製造方法]
熱硬化性組成物は、各配合成分を配合することにより得られる。ポリイミド前駆体ではなく、イミド化したポリイミド樹脂(A)を配合成分として用いる。配合に際して、適宜、溶媒を用いることができる。固形分濃度は、例えば20~60質量部とすることができる。本実施形態のポリイミド樹脂(A)によれば、ダイマー構造を有しているので、各種有機溶剤に容易に溶解させることができる。
【0104】
熱硬化性組成物は、180℃の温度で60分の条件で熱硬化した後のガラス転移温度が30~270℃であることが好ましく、38~260℃がより好ましく、45~255℃が更に好ましい。長期耐熱性をより優れたものとする観点からは、140~250℃であることが好ましい。この場合のより好ましい範囲は、150~240℃であり、更に好ましくは160~230℃である。
【0105】
[硬化物の製造方法]
本実施形態の熱硬化性組成物を熱硬化処理することにより硬化物が得られる。熱硬化性組成物をシート等の所望の形状に成形し、熱硬化処理する方法が例示できる。溶剤を含む熱硬化性組成物を塗布、乾燥することにより簡便に熱硬化性組成物のシートなどの成形体を得ることができる。そして、成形体を熱硬化することにより硬化物を形成する。成形体と硬化のタイミングは同時であってもよい。
【0106】
熱硬化温度は、架橋剤(B)の種類に応じて適宜選定すればよい。例えば、150~230℃の温度で、30~180分加熱処理する方法が例示できる。熱硬化処理により、架橋剤(B)自身の架橋、ポリイミド樹脂(A)と架橋剤(B)の架橋、架橋剤(B)と化合物(D)の架橋など、またはこれらの任意の組合せによる架橋構造が形成され、3次元架橋した硬化物が得られる。
【0107】
[熱硬化性組成物および硬化物の用途等]
本実施形態の熱硬化性組成物は、硬化後に優れた接着性を示すので、接着材料として利用できる。また、電気絶縁性に優れるため、回路基板自体または回路基板上の絶縁層形成材料(プリント配線板のカバーレイ層、ビルトアップ基板等の層間絶縁層、基板形成材料、ボンディングシート等を含む)、アンダーフィル材等の樹脂注型材料、半導体チップの封止材料、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための材料等として好適に用いられる。また、電子回路基板と電子部品等との部品同士の接合材料にも好適である。
【0108】
本実施形態で用いられるポリイミド樹脂(A)は電気絶縁性に優れるので、絶縁性に優れた硬化物を提供できる。また、無機フィラー(C)として導電性フィラーを配合することにより、導電性接着剤シートとして好適に利用できる。更に、無機フィラー(C)として熱伝導性フィラーを用いることにより、放熱性が求められる用途全般に適用できる。例えば、樹脂組成物の成形性を利用して、所望の形状の放熱部品として好適に利用できる。特に、軽薄短小化のために、ファンやヒートシンクを設置できない電子機器(スマートフォン、ダブレット端末等)、電池用外装材の放熱部材として有用である。また、本実施形態の熱硬化性組成物の硬化物は、発熱体とヒートシンクとの接着層あるいはヒートスプレッダーとして好適である。また、基板上に搭載された一種または複数の電子部品を被覆する放熱層として適用できる。
【0109】
熱硬化性組成物は、例えば粉末状、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、ペースト状または液状とすることができる。液状またはペースト状の熱硬化性組成物は、溶剤を用いて粘度を調整することにより容易に得ることができる。また、フィルム状、シート状、板状の熱硬化性組成物は、例えば、液状またはペースト状の熱硬化性組成物を塗工して乾燥することにより形成できる。また、粉末状、ペレット状の熱硬化性組成物は、例えば、前記フィルム状等の熱硬化性組成物を所望のサイズに粉砕または分断することにより得られる。
【0110】
また、電子部品の絶縁性部材に好適に適用できる。電子部品としては、例えば半導体装置、回路基板が例示できる。半導体装置は、例えば、パワー半導体装置、LED、インバーター装置等のパワーモジュールであり、半導体装置には、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、ダイオード、ICチップ等の半導体素子、抵抗、コンデンサ等の各種発熱素子が搭載されている。本実施形態の熱硬化性組成物の硬化物は、半導体装置の基板、絶縁層、封止材、半導体チップパッケージの絶縁層、アンダーフィル材、接着材等に用いられる。回路基板は、プリント配線板、或いはプリント配線板に分類されない金属層、絶縁樹脂層を含む積層体からなる回路基板用積層体等が挙げられる。また、銅張積層板用の熱硬化性組成物、配線板形成用ボンディングシート、フレキシブル基板のカバーコート、プリプレグ等に使用することができる
【0111】
(配線基板)
本実施形態の熱硬化性組成物は、プリント配線板や多層配線基板の接着シート、層間絶縁層として好適に利用できる。本実施形態の熱硬化性組成物から形成した熱硬化性シートの硬化物である絶縁層(硬化シート)、或いは本実施形態の熱硬化性組成物を用いて形成したプリプレグの硬化物からなる絶縁層(硬化シート)は、接着シート或いは層間絶縁層として好適である。これらは、例えば、基材上に本実施形態の熱硬化性組成物を熱硬化させてなる硬化物からなる層を有するプリント配線板として好適に利用できる。
配線基板の片面または両面に形成された本実施形態の絶縁層に対し、ドリル加工やレーザー加工などにより開口部を設け、導電剤を充填してビアを形成することができる。また、本実施形態の層間絶縁層上に回路層を形成することができる。本実施形態の熱硬化性組成物は、接着性、長期耐熱性に優れる上、クラック耐性およびレーザー加工性に優れるので、絶縁層/回路層の構成を複数有する多層回路基板の用途に好適である。
【0112】
(金属張積層板)
本実施形態の熱硬化性組成物は、金属張積層板の部材として利用できる。金属張積層板は、熱硬化性組成物を用いて絶縁層を形成し、絶縁層と金属層の積層構造を含む積層体とすることにより得られる。この絶縁層は、熱硬化性組成物のみから形成された絶縁性シートであってもよいし、前述したプリプレグよりなるシートを用いてもよい。例えば、金属層と本実施形態の熱硬化性組成物からなる絶縁性シートを積層した後、加熱圧着により絶縁性シートを硬化せしめることにより絶縁層とし、金属張積層板を得ることができる。加熱圧着法は、公知の方法を利用できる。例えば、120~200℃の温度で0.5~10MPaの圧力で、0.5~5時間熱プレスすることにより行われる。
【0113】
金属張積層板の積層構成としては、金属層/絶縁層の2層の積層体、金属層/絶縁層//金属層の複層からなる積層体、或いは金属層/絶縁層/金属層/絶縁層/金属層等の交互に積層された多層構造を有する金属張積層板が例示できる。また、本実施形態の熱硬化性組成物より形成した絶縁層以外の絶縁層が積層体に含まれていてもよい。また、絶縁層の厚みを調整するためにプリプレグを複数枚重ねて硬化させることもできる。また、金属層以外の導電層が積層されていてもよい。樹脂シートにはフィラー等が含まれていてもよい。
【0114】
例えば、金属層/絶縁層/金属層の層構成を有する金属張積層板は、絶縁層の両主面上に形成された金属層に回路パターンを形成することにより、回路パターン層を有する回路基板を得ることができる。絶縁層には、レーザー等によりスルーホールやビアを形成してもよい。コア基板にビルドアッププロセスによって、絶縁層を重ね合わせて、ビアを形成し、多層化してもよい。回路基板は、例えば、サブトラクティブ法により金属張積層板の金属層を所望の回路パターンに形成する方法や、アディティブ法により絶縁層の片面または両面に所望の回路パターンを形成することにより得ることができる。
【0115】
絶縁層へのスルーホールの形成は、レーザー加工することにより形成できる。具体的には、UV-YAGレーザー、COレーザーおよびエキシマレーザーが例示できる。
【0116】
(プリプレグ)
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、繊維基材に含浸させることによりプリプレグとして利用できる。プリプレグは、例えば、繊維基材に本実施形態の熱硬化性組成物を含浸させ、続いて、熱硬化性組成物を加熱乾燥せしめて半硬化(Bステージ化)することにより製造できる。
【0117】
熱硬化性組成物の繊維基材に対する固形分付着量は、プリプレグに対する乾燥後の熱硬化性組成物の含有率において20~90質量%とすることが好ましい。より好ましくは、30~80質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。例えば、プリプレグ中の熱硬化性組成物の固形分付着量が20~90質量%となるように、本実施形態の熱硬化性組成物を繊維基材に含浸または塗工した後、例えば40~200℃の温度で1~30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させることにより製造することができる。
【0118】
繊維基材としては、公知の材料を制限なく利用できるが、有機繊維、無機繊維およびガラス繊維が例示できる。有機繊維としては、ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、全芳香族ポリアミドなどが例示できる。無機繊維としては、炭素繊維が例示できる。ガラス繊維としては、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、NEガラスクロス、Lガラスクロス、Tガラスクロス、球状ガラスクロス、低誘電ガラスクロスなどが例示できる。これらのなかでも低熱膨張率の観点からは、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロスおよび有機繊維が好適である。繊維基材は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0119】
繊維基材の形状は、目的とする用途および性能に応じて適宜選択できる。具体例としては、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマットおよびサーフェシングマットが例示できる。織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織りが例示できる。所望の特性に応じて、任意に選択・設計することができる。繊維基材の厚さは、例えば、約0.01~1.0mmの範囲とすることができる。薄膜化の観点からは500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
【0120】
繊維基材は、必要に応じて、所望の特性を引き出すためにシランカップリング剤などで表面処理を施したり、機械的に開繊処理を施すことができる。その他、コロナ処理やプラズマ処理を行ってもよい。シランカップリング剤の表面処理は、アミノシランカップリング処理、ビニルシランカップリング処理、カチオニックシランカップリング処理、エポキシシランカップリング処理等がある。
【0121】
繊維基材に熱硬化性組成物を含浸させる方法は特に限定されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類やエステルエーテル類などの有機溶媒を用いて熱硬化性組成物のワニスを調製し、ワニス中に繊維基材を浸漬する方法、繊維基材にワニスを塗布またはスプレー等により散布する方法、繊維基材の両面を熱硬化性組成物からなる膜でラミネートする方法等が挙げられる。
【実施例
【0122】
本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例で「部」は「質量部」であり、「%」は「質量%」である。表中の配合量は、質量部である。また、実施例45は、本請求項1の範囲に整合させることを目的として参考例45と読み替えるものとする。
【0123】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「GPC-101」を用いた。GPCは溶媒(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「KF-805L」(昭和電工社製:GPCカラム:8mmID×300mmサイズ)を直列に2本接続して用い、試料濃度1質量%、流量1.0mL/min、圧力3.8MPa、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。データ解析はメーカー内蔵ソフトを使用して検量線および分子量、ピーク面積を算出し、保持時間17.9~30.0分の範囲を分析対象として重量平均分子量を求めた。
【0124】
<ポリイミド樹脂(A)のガラス転移温度の測定方法>
ポリイミド樹脂を不揮発分35%になるようにシクロヘキサノンに溶解させ、ポリイミド樹脂ワニスを作製した。このワニスを耐熱性の離形フィルム上にドクターブレード10milで塗工し、130℃で10min乾燥させて、厚さ25μmのポリイミド樹脂のフィルムを得て、ガラス転移温度測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置で-50~200℃の温度範囲でTanδの測定をおこない、ガラス転移温度を求めた。
動的粘弾性測定装置:DVA-200(アイティー計測制御社製)
昇温速度:10℃/min
測定周波数:10Hz
つかみ間長:15mm
幅:5mm
【0125】
<ポリイミド樹脂(A)の官能基価の測定方法>
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
但し、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0126】
<アミン価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解する。これに、別途0.20gのMethyl Orangeを蒸溜水50mLに溶解した液と、0.28gのXylene Cyanol FFをメタノール50mLに溶解した液とを混合して調製した指示薬を2、3滴加え、30秒間保持する。その後、溶液が青灰色を呈するまで0.1Nアルコール性塩酸溶液で滴定する。アミン価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
アミン価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
但し、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性塩酸溶液の力価
【0127】
<酸無水物価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、1,4-ジオキサン溶媒100mLを加えて溶解した。試料中の酸無水物基の量よりも多いオクチルアミン、1,4-ジオキサン、水の混合溶液(質量の混合比は1.49/800/80)を10mL加えて15分攪拌し、酸無水物基と反応させた。その後、過剰のオクチルアミンを0.02M過塩素
酸、1,4-ジオキサンの混合溶液で滴定した。また、試料を加えていない、オクチルアミン、1,4-ジオキサン、水の混合溶液(質量の混合比は1.49/800/80)10mLもブランクとして測定を実施した。酸無水物価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)
酸無水物価(mgKOH/g)=0.02×(B-S)×F×56.11/W
B:ブランクの滴定量(mL)
S:試料の滴定量(mL)
W:試料固形量(g)
F:0.02mol/L過塩素酸の力価
【0128】
<ポリイミド樹脂の合成>
[ポリイミド樹脂(A-1)]
[合成例1]
オイルバスを備えた撹拌棒付き1Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、シクロヘキサノン(200g)を加え、ジアミンとしてダイマージアミン(PRIAMINE1075)を68.6g(68.6質量%)を撹拌しながら加え、続いてテトラカルボン酸二無水物として1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を31.4g(31.4質量%)を加えて室温で30分撹拌した。これを100℃に昇温し、3時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、ワニス状のポリイミド前駆体を得た。その後、ディーンスタークトラップを用いて留出する水を系外に除去しながら、170℃で10時間加熱を行い、イミド化してポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)、Tgおよび官能基化をそれぞれ表1に示す。
【0129】
[合成例2~15、合成例16~20(比較合成例)]
表1、2に記載の単量体を用いた以外は、合成例1と同様の方法によりポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂のMwおよびTgを表1または表2に示す。
【0130】
表1の略称の内容を以下に示す。
BISDA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
PMDA:ピロメリット酸無水物
TDA:4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物
HPMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
BTCA:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物
TTC:4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸
HPMTC:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸
BTC:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸
TMA:トリメリット酸無水物
DDA1:ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン社製)
DDA2:ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1074」、クローダジャパン社製)
DADE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
なお、表1中の官能基価は、合成例1~18は酸無水物価を、合成例19は酸価を、合成例20はアミン価を示す。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
実施例および比較例で使用した材料の詳細を下記に示す。
(架橋剤(B))
HP-7200H:エポキシ化合物1(DIC社製、ジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂、軟化点83℃)
HP-4710:エポキシ化合物2(DIC社製、超高耐熱性エポキシ樹脂、軟化点95℃)
N-660:エポキシ化合物3(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、軟化点40℃以上)
TETRAD-X:エポキシ化合物4(三菱ガス化学社製、4官能グリシジルアミン化合物、室温液状(軟化点は40℃未満))
BA230S75:シアネートエステル化合物(ロンザ社製、多官能シアネートエステル化合物)
BL3175:イソシアネート基含有化合物(住化バイエルウレタン社製、3官能イソシアヌレート型ブロックイソシアネート)
アルミキレートA:キレート化合物(川研ファインケミカル社製、3官能Alキレート化合物)
V-07:カルボジイミド基含有化合物(日清紡社製、多官能ポリカルボジイミド化合物)
デナコールEX-321:液状エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、室温液状)
【0134】
(無機フィラー(C))
SO-C1:シリカ(アドマテックス社製、平均粒径0.25μm)
【0135】
(化合物(D))
H-4:フェノール樹脂(明和化成社製)
P-d型ベンゾオキサジン:ベンゾオキサジン(四国化成社製)
HPC8000-65T:活性エステル樹脂(DIC社製)
リカシッドMH:酸無水物(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化社製)
DPB:マレイミド化合物(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2官能マレイミド化合物)
【0136】
(触媒(E))
2P4MZ:触媒1(四国化成社製、イミダゾール系触媒)
DBU:触媒2(アミン系触媒)
TPP:触媒3(ホスホニウム系触媒)
【0137】
(その他の樹脂)
ザイロンS201A:ポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成社製)
SMA1000:スチレン無水マレイン酸共重合体(CRAYVALLEY製)
HR-15ET:ポリアミドイミド樹脂(東洋紡社製)
【0138】
<軟化点の測定方法>
軟化点の測定は、JIS K-2207に準拠し、環球法により実施する。つまり、規定の環に試料を充填し、水浴またはグリセリン浴中に水平に支え、試料の中央に規定の球を置き、浴温を5℃/分の速度で上昇させ、球を包み込んだ試料が、環台の底板に触れたときの温度を軟化点とする。
【0139】
<硬化物のガラス転移温度の測定方法>
各実施例および比較例の熱硬化性組成物を剥離フィルム上に塗工し、120℃で2分乾燥させ、厚みが約30μmになるように片面剥離フィルム付きの熱硬化性シートを作製した。この片面剥離フィルム付きの熱硬化性シートを180℃、60分の条件で熱硬化させ、剥離フィルムを除去することで、ガラス転移温度測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置で-50~200℃の温度範囲でTanδの測定をおこない、ガラス転移温度を求めた。
動的粘弾性測定装置:DVA-200(アイティー計測制御社製)
昇温速度:10℃/min
測定周波数:10Hz
つかみ間長:15mm
幅:5mm
【0140】
<接着性>
上記のガラス転移温度の測定試験で作製した片面剥離フィルム付きの熱硬化性シートを65mm×65mmの大きさに切り出し、剥離フィルムを除去した上で、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製「カプトン300H」]の間に挟み、80℃でラミネートし、続いて180℃、1.0MPaの条件で30分圧着処理を行った。さらに、この試験片を180℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度300mm/minでTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。この試験は、常温使用時における接着層の接着強度を評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
A・・・「12(N/cm)<接着強度」
B・・・「8(N/cm)<接着強度≦12(N/cm)」
C・・・「5(N/cm)<接着強度≦8(N/cm)」
D・・・「3(N/cm)<接着強度≦5(N/cm)」
E・・・「接着強度≦3(N/cm)」
【0141】
<はんだ耐熱性の評価>
上記の接着性試験と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、23℃相対湿度50%の雰囲気下で24時間以上保管し、その後、各種温度にて溶融半田にポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、硬化接着層(硬化シート)の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、半田接触時における硬化接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、外観が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
A・・・300℃でも外観変化全く無し。
B・・・280℃で外観変化全く無し。300℃では発泡が確認される。
C・・・260℃でも外観変化全く無し。280℃では発泡が確認される。
D・・・240℃でも外観変化全く無し。260℃では発泡が確認される。
E・・・240℃にて発泡が観察される。
【0142】
<長期耐熱性>
上記の接着性試験と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、150℃の空気雰囲気下で1000時間以上保管し、取り出した後、接着力を測定した。常温での接着力からの低下度合いを確認し、結果を次の基準で判断した。
A・・・常温の接着力と比較して、接着力の低下割合が20%未満。
B・・・常温の接着力と比較して、接着力の低下割合が20%以上40%未満。
C・・・常温の接着力と比較して、接着力の低下割合が40%以上60%未満。
D・・・常温の接着力と比較して、接着力の低下割合が60%以上80%未満。
E・・・常温の接着力と比較して、接着力の低下割合が80%以上。
【0143】
<クラック耐性>
保護フィルムを除去した、65mm×65mmの大きさの接着シート(熱硬化性シート)を、厚さが25μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン100H」]とポリイミド上に銅回路が形成された櫛型パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)プリント配線板との間に挟み、80℃でラミネートし、続いて180℃、1.0MPaの条件で30分圧着処理を行った。さらに、この試験片を180℃で2時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。評価用試験片を-65℃と150℃の間で温度サイクルが行われる冷熱サイクル機に入れ、クラック耐性の確認を行った。そして、400サイクル時、600サイクル時、800サイクル時および1000サイクル時の硬化被膜の表面を観察した。判定基準は以下の通りである。
A・・・1000サイクルで異常なし。
B・・・800サイクルで異常なし、1000サイクルでクラック発生。
C・・・600サイクルで異常なし、800サイクルでクラック発生。
D・・・400サイクルで異常なし、600サイクルでクラック発生。
E・・・400サイクルでクラック発生。
【0144】
<レーザー加工性>
両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートから軽剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面を、50μmのポリイミドフィルムの両面に12μmの銅箔が積層されてなる両面銅張積層板の一方の面の銅箔に、仮接着した。
次いで、重剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面に、50μmのポリイミドフィルムと12μmの銅箔とが積層されてなる片面銅張積層板のポリイミドフィルム側を同様に真空ラミネーターにて仮接着した後、熱プレスにて180℃、1時間、2MPaで熱硬化させ、銅箔(1)/ポリイミドフィルム(2)/銅箔(2)/熱硬化性接着シートの硬化物(1)/ポリイミドフィルム(2)/銅箔(3)という積層構成の評価サンプルを得た。
【0145】
上記サンプルに対し、UV-YAGレーザー(Model5330、ESI社製)を用いて、上記銅箔(1)側からレーザーを照射し、接着層と両面銅張積層板との境界まで直径150μmのブラインドビア加工を行った。
次いで、ブラインドビア部の断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-X100)にて倍率20~500倍程度で観察し、熱硬化性接着シートの硬化物に生じたサイドエッチング(設計した開口径以上に水平方向が削られること)の最大長を測定し、以下の基準で評価を行った。
A・・・5μm以下。
B・・・5μmより大きく7μm以下。
C・・・7μmより大きく9μm以下。
D・・・9μmより大きく10μm以下。
E・・・10μmより大きい。
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
表3~表5の結果から実施例1~実施例45の熱硬化性組成物は、接着性、ハンダ耐熱性、長期耐熱性、クラック耐性およびレーザー加工性に優れることがわかる。